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【発明の名称】 電気車の電気ブレーキ装置
【発明者】 【氏名】加藤 宏和

【要約】 【課題】コストアップと車両の重量増加を殆どもたらさないで、中高速域における電気ブレーキ力を増加させること。

【解決手段】フィルタコンデンサ8には、ブレーキチョッパ装置9とブレーキ抵抗との直列体を並列接続する。ブレーキ抵抗11には抵抗制御用チョッパ装置14を並列接続する。遮断器4とインバータ装置6の非接地側入力端子との間にはフィルタコンデンサ電圧昇圧時遮断器5を挿入する。ブレーキチョッパ装置9とブレーキ抵抗11との接続点と遮断器4とフィルタコンデンサ電圧昇圧時遮断器5との接続点との間には逆流防止ダイオードを挿入する。そして、フィルタコンデンサ8の両端電圧を検出する電圧検出器12と、電圧検出器12の検出電圧と前記速度センサー17からの回転速度信号に基づいてブレーキチョッパ装置9と抵抗制御用チョッパ装置14をオンオフ制御する制御器13を設けた。これにより、回生ブレーキ時にモータの端子間電圧を架線電圧以上に上昇させ、中高速域における電気ブレーキ力を増加させた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 架線からパンタグラフと高速遮断器と遮断器とを介して供給された直流がインバータ装置で交流に変換されてモータに供給される電気車の電気ブレーキ装置において、インバータの入力端子間に並列接続されたフィルタコンデンサと、このフィルタコンデンサに並列に接続されたブレーキチョッパ装置とブレーキ抵抗との直列体と、前記ブレーキ抵抗に並列接続された抵抗制御用チョッパ装置と、前記遮断器と前記インバータ装置の非接地側入力端子との間に挿入されたフィルタコンデンサ電圧昇圧時遮断器と、前記ブレーキチョッパ装置とブレーキ抵抗との接続点と前記遮断器とフィルタコンデンサ電圧昇圧時遮断器との接続点との間に挿入された逆流防止ダイオードと、前記フィルタコンデンサの両端電圧を検出する電圧検出器と、モータの回転速度を検出する速度センサーと、前記電圧検出器の検出電圧と前記速度センサーからの回転速度信号に基づいて電圧検出器の検出電圧に基づいてブレーキチョッパ装置と前記抵抗制御用チョッパ装置をオンオフ制御する制御器とで構成したことを特徴とする電気車の電気ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、架線からパンタグラフを通して供給された直流をインバータ装置で交流に変換しモータを駆動するインバータ式電気車の電気ブレーキ装置に関し、特に、ブレーキ抵抗とブレーキチョッパ装置とを備えた電気ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ブレーキ抵抗とブレーキチョッパ装置を備えた電気ブレーキ装置は、図3に示す如く、インバータの入力端子間に並列接続されたフィルタコンデンサ8と、フィルタコンデンサ8に並列に接続されたブレーキチョッパ装置9とブレーキ抵抗11と逆流防止ダイオード10との直列体と、フィルタコンデンサ8の両端電圧を検出する電圧検出器12と、電圧検出器12の検出電圧に基づいてブレーキチョッパ装置9を制御する制御器13とから構成されたものである。そして、ブレーキ抵抗とブレーキチョッパ装置を備えた電気ブレーキ装置は、回生ブレーキ中に、力行中の電気車が消費できない余剰電力をブレーキ抵抗11に消費させ、安定したブレーキ制御を可能とするものである。
【0003】ところで、架線からパンタグラフを通して供給された直流をインバータ装置で交流に変換し、電気車のモータを駆動するインバータ式電気車において、そのインバータ装置の出力は力行性能を基本として設計されている。この設計においては、モータの定トルク領域を最高速度よりかなり低い低速域で設定し、中高速域では弱め磁束領域とする。中高速域では速度が上がるに従いモータの出力トルクは低下するが、最高速度で或る程度加速できる余力を持っていれば十分であるとされている。
【0004】このような力行性能を基本とした設計手法は、電気機器の経済的な設計手法として、電気ブレーキが使われる以前から広く用いられてきた。しかし、ブレーキは殆どの在来線においては低速から高速まで一定のブレーキ力が要求されているので、力行の裏返しである電気ブレーキでその全てをまかなうことは不可能であり、不足するブレーキ力を機械ブレーキ力に頼っている。
【0005】因みに、この力行性能を基本として設計されたインバータを備えた鉄道用電気車の一例においては、図5に示す如く、そのモータの出力トルクは速度80km/hまでは一定の1260Nmであるが、これを超えると速度の2乗に反比例して減少し、最高速度の130km/hでは450Nmとなっている。これは低速域では速度に比例して増加してきたインバータ電圧が、低速域の或る速度で架線電圧により制限される最大値に達し、その後は速度を上げても増加しないからである。図5においては、速度55km/hで最大値1300Vに達し、その後の中高速域でも前記最大値が保持されている。従って、高速域では斜線部分で示す如くブレーキ力が不足することになり、この不足を機械ブレーキで補っているのである。
【0006】ところが、機械式ブレーキはブレーキライニング交換等のメンテナンスが必要である。このため、機械式ブレーキのメンテナンスコストが高いという問題があった。
【0007】このため、機械式ブレーキの負担を軽減するために、高速域におけるモータの出力トルクを低下させないようにすることが要求されてきた。モータの端子間電圧が架線電圧に制限されている従来のインバータ式電気車では、前記要求に応える方法は2つ考えられる。1つはモータ電流を増加させる方法と、他の1つは列車編成全体に占める電気車の比率を増加させる方法である。
【0008】しかしながら、モータ電流を増加させる方法は、インバータ装置、モータ等の電気機器の電流容量の増加を伴うので、大幅なコストアップをもたらす。また、列車編成全体に占める電気車の比率を増加させる方法は、インバータ装置、モータ等の電気機器の数量の増加を伴うので、これも大幅なコストアップとなる。
【0009】そこで、ブレーキ時にフィルタコンデンサの電圧を上昇させモータトルクを増大させる特開2001−37004号公報に開示の技術を参考にして、図2の如きブレーキ抵抗とブレーキチョッパ装置を備えた電気ブレーキ装置を構成し、インバータ装置、モータ等の電気機器の電流容量も数量も増加させないで、中高速域におけるモータの出力トルクを低下させないようにすることが実現できた。
【0010】即ち、図2の電気ブレーキ装置は、図3の回路に遮断器5、抵抗制御チョッパ装置14、逆流防止ダイオード15、電圧上昇用抵抗16を追加し、制御器13で抵抗制御用チョッパ装置14のオンオフ制御するように構成したものである。このような構成において、回生ブレーキ時に、制御器13はフィルタコンデンサ8の両端電圧の上限値を目標値として抵抗制御用チョッパ装置14をオンオフ制御し、抵抗16を等価的な可変抵抗器とし、抵抗16にかかる電圧を所望の大きさに制御する。これによってフィルタコンデンサ8の両端電圧を抵抗16が負担する電圧分だけ、架線電圧よりも高くすることができる。従って、回生ブレーキ時に、インバータ電圧であるモータの端子間電圧を架線電圧により制限される電圧よりも高くすることができ、中高速域における電気ブレーキ力を増加させることができた。
【0011】しかしながら、図2の回路構成では、ブレーキ抵抗11の他に電圧上昇用抵抗16が必要である。このため、電圧上昇用抵抗16の追加分だけ、車両重量の増加がもたらされるという問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】解決しようとする第1の課題は、大幅なコストアップを伴わない簡単な回路構成によって、回生ブレーキ時にモータの端子間電圧を架線電圧に制限される電圧以上に上昇させ、中高速域における電気ブレーキ力を増加させることである。解決しようとする第2の課題は、コストアップと車両の重量増加を殆どもたらさないで、中高速域における電気ブレーキ力を増加させることである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、ブレーキ抵抗とブレーキチョッパ装置を備えた電気ブレーキ装置において、インバータに直列に電圧上昇用抵抗と抵抗制御用チョッパ装置の並列回路を挿入し、且つフィルタコンデンサの端子間電圧を目標値と比較しながら前記抵抗制御用チョッパ装置のオンオフ制御を行い、前記電圧上昇用抵抗の抵抗値を可変とし、その両端の電圧を所望の値に制御するようにした。そして、前記ブレーキ抵抗を前記電圧上昇用抵抗に兼用するように回路を構成した。
【0014】より具体的に構成を記述すれば、本発明は架線からパンタグラフと高速遮断器と遮断器とを介して供給された直流がインバータ装置で交流に変換されてモータに供給される電気車の電気ブレーキ装置において、インバータの入力端子間に並列接続されたフィルタコンデンサと、このフィルタコンデンサに並列に接続されたブレーキチョッパ装置とブレーキ抵抗との直列体と、前記ブレーキ抵抗に並列接続された抵抗制御用チョッパ装置と、前記遮断器と前記インバータ装置の非接地側入力端子との間に挿入されたフィルタコンデンサ電圧昇圧時遮断器と、前記ブレーキチョッパ装置とブレーキ抵抗との直列体との接続点と前記遮断器とフィルタコンデンサ電圧昇圧時遮断器との接続点との間に挿入された逆流防止ダイオードと、前記フィルタコンデンサの両端電圧を検出する電圧検出器と、モータの回転速度を検出する速度センサーと、前記電圧検出器の検出電圧と前記速度センサーからの回転速度信号に基づいてブレーキチョッパ装置と前記抵抗制御用チョッパ装置をオンオフ制御する制御器とで構成したことを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態の回路図である図1において、電気車のモータ7にはインバータ装置6の交流出力が供給されている。直流を交流に変換するインバータ装置6の入力端子には、架線からパンタグラフ1と高速遮断器2と遮断器3と遮断器4とを介して直流の架線電圧が供給されている。
【0016】電気ブレーキ装置は、インバータ装置6の入力端子間に接続されたフィルタコンデンサ8を含む。このフィルタコンデンサ8には、ブレーキチョッパ装置9とブレーキ抵抗11との直列体が並列接続されている。
【0017】ブレーキ抵抗11には抵抗制御用チョッパ装置14が並列接続されている。遮断器4とインバータ装置6の非接地側入力端子との間にはフィルタコンデンサ電圧昇圧時遮断器5が挿入されている。ブレーキチョッパ装置9とブレーキ抵抗11との接続点と前記遮断器4とフィルタコンデンサ電圧昇圧時遮断器5との接続点との間には、逆流防止ダイオード15が挿入されている。
【0018】更に、電気車の電気ブレーキには、フィルタコンデンサ8の両端電圧を検出する電圧検出器12と、モータの回転速度を検出する速度センサ17と、電圧検出器12の検出電圧と速度センサー17からの回転速度信号に基づいてブレーキチョッパ装置9と前記抵抗制御用チョッパ装置14をオンオフ制御する制御器13が設けられている。
【0019】上述の如く構成された本発明に係る電気車の電気ブレーキ装置は、回生ブレーキ時で且つモータ端子間電圧を架線電圧で制限される電圧より上昇させる場合に、フィルタコンデンサ電圧昇圧時遮断器5を開放する。そして、ブレーキ抵抗11に並列接続した抵抗制御用チョッパ装置14の通流率を制御器13で制御することにより、ブレーキ抵抗11を等価的に可変抵抗とする。これによって、制御器13は、フィルタコンデンサ8の端子間電圧を常時検出している電圧検出器12の出力電圧と、予め設定されているフィルタコンデンサ8の端子間電圧の上限値とを比較し、且つ速度センサー17からの回転速度信号を参照しながら、抵抗制御用チョッパ装置14をオンオフ制御し、その通流率を制御する。これによって、フィルタコンデンサ8の両端電圧を架線電圧により制限される電圧よりも上昇させることができ、モータ電圧を従来より上昇させることができる。なお、モータ端子間電圧を上昇させる必要がない速度域、及び力行中はフィルタコンデンサ電圧昇圧時遮断器5を投入し、通常通り運転する。これにより半導体素子のロスを減らすことができる。
【0020】上述の如く制御することによって、本発明に係る電気車の電気ブレーキ装置は、図4に一例を示す如く、その特性を改善できた。即ち、本発明においては、フィルタコンデンサ8の両端電圧をブレーキ抵抗11と抵抗制御用チョッパ装置14の作用によって架線電圧より高い2000Vとすることにより、モータ電圧の最大値を従来の1300Vから1560Vまで上昇できた。モータ電流は通常、モータ端子間電圧が最大値になる速度域でトルクを低下させないよう増加させるが、モータ端子間電圧を従来の架線電圧に制限される値より上昇させることができたことにより、モータ電流を増加させる速度域をより高速側にすることができた。この結果、中高速域におけるモータトルクは、図4の斜線部分である機械ブレーキ負担分が減少していることからも分かるように、従来よりも大きく増加した。つまり、電気ブレーキの不足分を補っていた機械ブレーキの負担を減らすことができ、磨耗部品の交換等のメンテナンスを軽減できるようになった。
【0021】なお、ブレーキチョッパ装置と抵抗制御用チョッパ装置14がオンにもかかわらずフィルタコンデンサ8の電圧が上昇する場合、即ち、回生電力を消費する力行車が同一き電区内に存在しない等の理由により回生できない場合は、ブレーキチョッパ装置9をオンにすることにより、フィルタコンデンサ8の両端電圧を一定値、例えば2000Vに保つことができる。なお、フィルタコンデンサ電圧昇圧時遮断器5は遮断器4で代用できるならば、不要とすることが可能である。
【0022】
【発明の効果】本発明に係るブレーキ抵抗とブレーキチョッパ装置とを備えた電気ブレーキ装置は、従来装置に比べて僅かなコストアップと重量増加だけで、中高速域における電気ブレーキ力を確実に増加させることが可能になった。従って、本発明係るブレーキ抵抗とブレーキチョッパ装置とを備えた電気ブレーキ装置では、機械ブレーキの負担が軽減され、ブレーキシューの取替えなどのメンテナンス費用も軽減されるようになった。
【出願人】 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【出願日】 平成13年6月4日(2001.6.4)
【代理人】 【識別番号】100079212
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 義治
【公開番号】 特開2002−369306(P2002−369306A)
【公開日】 平成14年12月20日(2002.12.20)
【出願番号】 特願2001−168140(P2001−168140)