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【発明の名称】 車両の駆動トルク制御装置
【発明者】 【氏名】長谷川 悟

【要約】 【課題】不適切なブレーキ操作とアクセル操作とがなされた場合に、運転者の誤操作を考慮して安全を確保する。

【解決手段】走行レンジの場合、アクセル信号を入力してアクセル開度が0%より大きいか否かを調べ、アクセル開度>0%の場合、ブレーキSWがONか否かを判断する。そして、アクセルとブレーキとが共に踏まれている場合、出力トルク指令値を0或いはクリープトルクとし(S14)、READYランプを点滅或いは点灯する(S15)。そして、ブレーキSWがON或いはアクセル開度>0%である限り、クリープトルク以下への制限を継続し(S16〜S19、S14)、ブレーキSWがOFF且つアクセル開度=0%になると、トルク制限を解除する。これにより、ブレーキとアクセルとを踏み込んだ後にブレーキを開放しても、車両の駆動トルクがクリープトルク以下に制限され、安全が確保される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 変速ポジションを判断する手段と、アクセル操作を判断する手段と、ブレーキ操作を判断する手段と、変速ポジションが走行レンジにあり、ブレーキとアクセルとを共に踏んだとき、車両の走行駆動源に対する出力トルク指令値をクリープトルク以下にトルク制限し、このトルク制限をブレーキとアクセルとを共に開放したときに解除する手段とを備えたことを特徴とする車両の駆動トルク制御装置。
【請求項2】 上記トルク制限の実施中、報知手段により運転者に報知することを特徴とする請求項1記載の車両の駆動トルク制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、誤操作に対する安全性を向上する車両の駆動トルク制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、モータやガソリンエンジンを走行駆動源とする自動車においては、自動変速機のシフトポジションが走行レンジにある場合、アクセル開放状態であってもクリープトルクを発生し、登坂路での車両後退を回避する等している。
【0003】例えば、特開平7−184304号公報には、電気自動車において、アクセル操作が無いときにもモータを回転させておき、登坂路でブレーキを外したときも車両が後退することを防止する技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の先行技術では、ブレーキ操作がなされていないことを前提としているため、運転者の誤操作によりブレーキとアクセルとを共に踏み込んだ後、ブレーキを開放すると、アクセルの踏み込み量に応じた駆動トルクが発生してしまい、意図しない走行状態となる虞がある。
【0005】すなわち、誤操作によってブレーキを踏んだ状態からアクセルを踏み込んでも、ブレーキ操作が検出されて駆動トルクが発生しないため、誤操作に気づかずにアクセルを踏み込んだままブレーキを開放してしまう可能性があり、特に、低速域から高トルクを出力可能な電気自動車においては、思わぬ車両発進や走行状態を招く虞がある。
【0006】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、不適切なブレーキ操作とアクセル操作とがなされた場合に、運転者の誤操作を考慮して安全を確保することのできる車両の駆動トルク制御装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、変速ポジションを判断する手段と、アクセル操作を判断する手段と、ブレーキ操作を判断する手段と、変速ポジションが走行レンジにあり、ブレーキとアクセルとを共に踏んだとき、車両の走行駆動源に対する出力トルク指令値をクリープトルク以下にトルク制限し、このトルク制限をブレーキとアクセルとを共に開放したときに解除する手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記トルク制限の実施中、報知手段により運転者に報知することを特徴とする。
【0009】すなわち、請求項1記載の発明は、変速ポジション、アクセル操作、ブレーキ操作を判断し、変速ポジションが走行レンジでブレーキとアクセルとを共に踏んだとき、車両の走行駆動源に対する出力トルク指令値をクリープトルク以下にトルク制限し、このトルク制限をブレーキとアクセルとを共に開放したときに解除することで、誤操作に気づかずにアクセルを踏んだままブレーキを開放しても駆動トルクの上昇を抑えて運転者の意図しない走行状態となることを回避し、安全を確保する。
【0010】その際、請求項2記載の発明のように、トルク制限の実施中は、ランプやブザー等の報知手段により運転者に報知することが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図4は本発明の実施の一形態に係わり、図1は駆動制御系のブロック図、図2及び図3は出力トルク制御ルーチンのフローチャート、図4はシフトポジションとアクセル操作とブレーキスイッチと出力トルク指令値との関係を示すタイムチャートである。
【0012】図1において、符号10は、車両の駆動トルク制御を担う電子制御装置(ECU)であり、本形態においては電気自動車の走行駆動源であるモータ1の出力トルクを制御する例について説明する。ECU10は、マイクロコンピュータを中心として構成され、車速計算部11、アクセル開度計算部12、シフトポジション判断部13、イグニッション判断部14、ブレーキ判断部15、出力トルク指令値計算部16によって主要な機能が代表される。
【0013】車速計算部11は、モータ1の回転を検出するモータ回転センサ2からの信号、トランスミッション出力軸の回転に応じてパルスを発生するトランスミッション回転センサ3からの信号に基づいて、車両の走行速度を計算する。また、アクセル開度計算部12は、アクセルペダルが開放状態のときにONするアクセルペダルSW(スイッチ)4からの信号、アクセルペダルの踏み込み量に応じた信号を出力するアクセル開度センサ5からの信号に基づいて、アクセル全閉状態を含むアクセル開度を計算する。
【0014】シフトポジション判断部13は、変速操作位置(シフトポジション)がP(パーキング)レンジ又はN(ニュートラル)レンジのときにONし、D(前進)レンジ,R(後退)レンジ等の走行レンジにセレクトされているときにOFFするインヒビタSW6からの信号に基づいて、シフトポジションを判断する。また、イグニッション判断部14は、イグニッションSW7からの信号を入力し、イグニッションSW7の各操作位置、すなわち、OFF(停止;電源断)、ACC(アクセサリー)、IG(走行)等を判断する。更に、ブレーキ判断部15は、ブレーキペダルの踏み込みによってONするブレーキSW8からの信号に基づいて、運転者によるブレーキ操作の有無を判断する。
【0015】出力トルク指令値計算部16は、イグニッション判断部14によるイグニッションONの判断結果を受けて走行可の状態を示すREADY(レディ)ランプ22をランプ駆動回路21を介して点灯させ、その後、シフトポジション判断部13で判断したシフトポジションが走行レンジにある場合、車速計算部11で計算した車速とアクセル開度計算部12で計算したアクセル開度とに基づいて、モータ1への出力トルク指令値を計算する。そして、ブレーキ判断部15からのブレーキ情報を併用し、トルク出力回路20を介してモータ1の出力トルクを制御する。
【0016】また、出力トルク指令値計算部16では、ブレーキ判断部15で判断したブレーキ操作の有無とアクセル開度計算部で計算したアクセル開度との安全適合性をチェックし、シフトポジションが走行レンジにあり、ブレーキとアクセルとが共に踏み込まれた場合、モータ1への出力トルク指令値を0或いはクリープトルクに制限する。そして、このクリープトルク以下への制限を、ブレーキとアクセルとが共に開放されるまで継続することで、誤操作に対する安全を確保する。同時に、アクセルの踏み込みに応じたモータ駆動トルクが得られないことが故障ではないことを運転者に報知するため、READYランプ22を報知手段として用い、ランプ駆動回路21を介してREADYランプ22を点滅(或いは点灯)させて運転者の注意を喚起する。尚、この場合、ブザーや音声出力等を用いて運転者に報知するようにしても良い。
【0017】以下、ECU10による出力トルク制御について、図2,3に示す出力トルク制御ルーチンのフローチャートを用いて説明する。
【0018】このルーチンがスタートすると、先ず、ステップS1で、システムの初期設定を行い、ステップS2で、イグニッションSW7からの信号を入力し、次いで、ステップS3で、イグニッションSW7がONか否かを調べる。そして、イグニッションOFFの場合には、ステップS2へ戻って再度イグニッションSW7からの信号を入力してイグニッションONか否かを調べるループを繰り返し、イグニッションONになると、ステップS3からステップS4へ進んで、モータ回転センサ2及びトランスミッション回転センサ3からの信号に基づいて車速を計算する。
【0019】次に、ステップS5へ進み、インヒビタSW6からのシフトポジション信号を入力すると、ステップS6で、シフトポジション信号から現在のシフトポジションがDレンジ或いはRレンジであるか否かを調べる。その結果、D,Rレンジでない場合、すなわち、非走行レンジ(P,Nレンジ)である場合には、ステップS7へ進んでモータ1に対する出力トルク指令値を0としてステップS2へ戻る。
【0020】また、ステップS6において、現在のシフトポジションがD,Rレンジの走行レンジである場合には、ステップS6からステップS8へ進んでアクセルペダルSW4及びアクセル開度センサ5からのアクセル信号を入力し、ステップS9で、アクセル開度が0%以上か、すなわちアクセルペダルが踏み込まれた状態か否かを調べる。
【0021】その結果、アクセルペダルSW4がONであり、アクセル開度=0%のアクセル開放の場合には、ステップS9からステップS10へ進んでモータ1に対する出力トルク指令値をクリープトルクとしてステップS2へ戻る。また、アクセル開度>0%でアクセルペダルが踏み込まれている場合、ステップS9からステップS11へ進み、ブレーキSW8からの信号を入力する。尚、アクセル開放時の出力トルク指令値は、クリープトルクではなく、0としても良い。
【0022】次いで、ステップS11からステップS12へ進み、ブレーキSW8がONか否かを調べる。そして、ブレーキSW8がOFFであり、ブレーキペダルが踏まれていない場合には、ステップS12からステップS13へ進み、車速及びアクセル開度に応じた出力トルク指令値を計算し、トルク出力回路20へトルク指令を与えてモータ1を駆動し、ステップS2へ戻る。
【0023】一方、ステップS12において、ブレーキSW8がONの場合、すなわち、アクセルペダルとブレーキペダルとを同時に踏んでいる場合には、ステップS14へ進んで出力トルク指令値を0或いはクリープトルクとしてモータ1のトルクを制限し、ステップS15でREADYランプ22を点滅(或いは点灯)し、ステップS16へ進む。すなわち、ブレーキを踏んだままアクセルを踏んでもモータ1のトルクがクリープトルク以下に制限され、同時にREADYランプ22の点滅(或いは点灯)により、ブレーキとアクセルとを同時に踏んでいることを運転者に報知して注意を喚起する。
【0024】ステップS16では、再度、ブレーキSW8からの信号を入力し、ステップS17で、ブレーキSW8がONか否かを調べる。その結果、ブレーキSW8がONであり、依然としてブレーキが踏まれている場合には、ステップS14へ戻ってモータ1の出力トルクをクリープトルク以下に維持し、また、READYランプ22の点滅(或いは点灯)を継続する。
【0025】その後、運転者がブレーキペダルを放してブレーキを開放すると、ステップS17におけるブレーキSW8のOFF判定により、ステップS17からステップS18へ進んで、再度アクセルペダルSW4及びアクセル開度センサ5からのアクセル信号を入力し、ステップS9で、アクセル開度が0%以上か、すなわちアクセルペダルが踏み込まれたままであるか否かを調べる。
【0026】そして、アクセル開度>0%であり、ブレーキを開放してもアクセルは踏まれたままである場合には、ステップS19からステップS14へ戻って、出力トルクのクリープトルク以下への制限、READYランプ22の点滅(或いは点灯)を継続し、運転者がブレーキ及びアクセルを戻して両者を開放し、アクセル開度=0%になると、ステップS19からステップS20へ進んで、READYランプ22を消灯してステップS2へ戻る。以後、アクセル開度に応じたモータ1への駆動トルクの出力が可能となる。
【0027】すなわち、図4に示すように、運転者がシフトポジションを非走行レンジから走行レンジにシフトし、ブレーキを踏んだままアクセルON(踏み込み)するといった誤操作をしても、モータ1のトルクをクリープトルク以下に制限し、安全を確保する。同時に、READYランプ21の点滅(或いは点灯)により、ブレーキとアクセルとの同時操作に対する注意を喚起する。更に、この状態では、ブレーキ及びアクセルの両者を開放しない限りトルク制限が継続され、アクセルを踏んでいることに気付かずにブレーキを開放するといった操作をしても、駆動トルクがアクセル開度に応じて急激に増大することがなく、安全である。そして、ブレーキ及びアクセルの両者が開放された場合に、初めてアクセル開度に応じた駆動トルクの出力が可能となる。
【0028】このように、本実施の形態においては、走行レンジにフトした状態で、ブレーキとアクセルとを同時に踏み込んでも、モータ1の駆動トルクがクリープトルクを越えて上昇することがなく、このクループトルク以下の状態がブレーキとアクセルとを共に開放しない限り維持されるため、走行を意図しない誤操作に対して安全を確保することができる。特に、低速域から高トルクを出力可能な電気自動車においては、思わぬ車両発進や走行状態となることを防止して円滑な走行を可能とし、より効果的に安全性を向上することができる。
【0029】尚、以上説明した実施の形態では、電気自動車を例に取って説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ガソリンエンジンにより走行する自動車にも適用できることは言うまでもない。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、走行レンジでブレーキとアクセルとを共に踏んだ状態では車両の駆動トルクがクリープトルク以下に制限され、このクループトルク以下の状態がブレーキとアクセルとを共に開放しない限り維持されるため、不適切なブレーキ操作とアクセル操作に対しても、安全を確保し、意図しない車両発進や走行状態となることを防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成13年3月6日(2001.3.6)
【代理人】 【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
【公開番号】 特開2002−271917(P2002−271917A)
【公開日】 平成14年9月20日(2002.9.20)
【出願番号】 特願2001−62097(P2001−62097)