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【発明の名称】 動力伝達制御装置
【発明者】 【氏名】山口 公一

【氏名】永松 茂隆

【氏名】山田 良則

【要約】 【課題】電動発電機2基を内燃機関に連結して、アンダードライブ、オーバドライブ時のトルク変換を行うとともに、アシスト走行あるいは回生制動を行う動力伝達制御装置において、電動発電機の電気系または制御系に予期しない故障が発生した場合にも、内燃機関を利用して車両を相応に走行させることができるようにする。

【解決手段】二つの電動発電機の回転軸を駆動出力軸3に操作または制御により結合させるクラッチ31を設ける。このクラッチ31を結合状態とすることにより内燃機関10の出力軸を駆動出力軸3に直結して車両を走行させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】原動機と、この原動機の出力軸に第一ロータが結合され駆動出力軸に第二ロータが結合された第一の電動発電機と、第二の電動発電機と、この第二の電動発電機のロータと前記駆動出力軸との間に設けられた切替クラッチとを備え、前記第一の電動発電機は、前記第一ロータと前記第二ロータとが機械的に同軸構造であって互いに自在に回転可能であり、前記第一ロータの巻線に供給される多相交流電流によりこの第一ロータとこの第二ロータとの間が同期回転機として作用する構造であり、前記第二の電動発電機は、そのステータの巻線に供給される多相交流電流によりそのロータが同期回転機として作用する構造であり、前記切替クラッチは、前記第二の電動発電機のロータを前記駆動出力軸に結合する第一モードと、前記第二の電動発電機のロータを前記駆動出力軸から切り離しこの第二の電動発電機のロータを前記第一の電動発電機の第一ロータに結合する第二モードとが切り換えられる構造である動力伝達制御装置において、操作により前記原動機の出力軸を前記駆動出力軸に結合させる動力伝達手段を備えたことを特徴とする動力伝達制御装置。
【請求項2】前記動力伝達手段として、前記切替クラッチに前記第一の電動発電機の第一ロータを前記駆動出力軸に結合させる第三モードを設けた請求項1記載の動力伝達制御装置。
【請求項3】前記原動機と前記第一の電動発電機の第一ロータとの結合位置に、運転操作にしたがって半クラッチ操作ができる発進用クラッチを設けた請求項2記載の動力伝達制御装置。
【請求項4】前記動力伝達手段は機械式クラッチであり、操作による半クラッチ制御が可能なリリース機構を含む請求項1記載の動力伝達制御装置。
【請求項5】前記原動機は内燃機関であり、その内燃機関には独立の始動電動機を備えた請求項1記載の動力伝達制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の内燃機関出力を駆動車軸に伝達する装置として開発されたものであるが、内燃機関など原動機の回転速度に対応してトルク制御を行う動力伝達制御装置として、自動車の駆動力制御以外にも広く利用することができる。本発明は、クラッチ・モータを含む動力伝達制御装置の改良に関する。本発明は、動力伝達制御装置の制御系その他が故障したときに、原動機の出力を駆動出力軸に直結して動力を伝達することができるようにする改良に関する。
【0002】
【従来の技術】本願共同出願人の一人は、原動機の出力軸に結合された2個の電動発電機を利用して、駆動車軸に動力を伝達する装置を開示した(特許第 3099713号、特開平10-75501号公報、特開2000- 227035号公報参照) 。はじめにこの従来例装置の構造および動作を簡単に説明する。
【0003】図4は上記従来例装置の原理構造を説明するための模式図である。原動機10(この例では内燃機関とする)の出力軸に、第一の電動発電機1の第一ロータ11が連結され、その第一の電動発電機1の第二ロータ12は駆動出力軸3に連結されている。この第一ロータ11および第二ロータ12は、機械的には一つの中心軸の軸まわりに同軸構造をなし、それぞれ独立に回転することができる。そして、この第一ロータ11と第二ロータ12との間は、第一ロータ11の巻線に回転トランス13を介して供給される三相交流により、同期回転機となるように構成されている。この同期回転機は、二つのロータ11および12の相対回転速度および供給される三相交流の位相回転速度に応じて、電動機または発電機として作用する。
【0004】第二ロータ12が連結された駆動出力軸3は、トランスファ4を介して、ディファレンシャルギヤから駆動車軸に連結される。トランスファ4は減速比をもつとともに、前進、後退を切替えるための装置である。
【0005】第二の電動発電機2は、ステータ21とロータ22とを備え、このステータ21とロータ22との間はステータ21の巻線に供給される三相交流により、同期回転機となるように構成されている。この同期回転機は、ロータ22の回転速度およびステータ21に供給さる三相交流の位相回転速度に応じて、電動機または発電機として作用する。
【0006】第一の電動発電機1と第二の電動発電機2との間には切替クラッチ31を備える。この切替クラッチ31により、第二電動発電機2のロータ22は、駆動出力軸3または第一の電動発電機1の第一ロータ11のいずれかに切替えて結合される。すなわち図4を参照して、切替クラッチ31は、矢印で示すように駆動出力軸3に平行に移動し、第二の電動発電機2のロータ22が駆動出力軸3に結合され、このロータ22が第一の電動発電機1の第一ロータ11から切り離される第一モードと、第一の電動発電機1の第一ロータ11が第二の電動発電機2のロータ22に結合され、このロータ22が駆動出力軸3から切り離される第二モードとのいずれかの状態に設定される。図4は、ロータ22が駆動出力軸3に結合された第一モードにあるときを示す。
【0007】第一の電動発電機1には回転トランス13が設けられている。この回転トランス13は、その固定側巻線と第一ロータ11と共に回転する回転側巻線とが、回転軸まわりに対向するように構成され、回転側巻線は第一の電動発電機1の第一ロータ11の巻線に接続されている。この回転トランス13の固定側巻線および第二の電動発電機2のステータ21の巻線には、インバータ5から、それぞれ独立に位相および周波数が制御された三相交流が供給される。インバータ5から出力される三相交流の位相は、第一の電動発電機1の第一ロータ11の回転、第二ロータ12の回転、第二の電動発電機2のロータ22の回転、および運転操作情報を取り込む制御回路6に応じて制御される。インバータ5の直流側端子には蓄電手段(電池または大容量コンデンサ)7が接続されていて、これが二つの電動発電機1または2に供給する三相交流のエネルギ源となるとともに、二つの電動発電機1または2に発生する余剰電気エネルギをインバータ5を介して直流に変換し、蓄電手段7に蓄積することができる。
【0008】この構造の装置は、原動機10の回転速度が駆動出力軸3の回転速度と等しくないときに、第一の電動発電機1を原動機10から駆動出力軸3に回転トルクを伝達するためのクラッチ・モータとして作用させることができる。また第二の電動発電機2には電気エネルギを供給して、駆動出力軸3を駆動するアシスト・モータとして作用させることができる。
【0009】この装置にはいくつかの動作モードがあるが、本発明に関係のあるその代表的な動作モードを説明すると、動作モードの第一は原動機10を停止させて電動機で車両を走行させる電気走行モードである。このとき切替クラッチ31は図4に示すように、駆動出力軸3を第二の電動発電機2のロータ22に結合し、駆動出力軸3を第一の電動発電機1の第一ロータ11から切り離された状態に設定する(第一モード)。そしてこの電気走行モードでは、第二の電動発電機2のステータ21に、第二の電動発電機2が電動機となるような回転位相で三相交流の電流を供給し、第一の電動発電機1には電気エネルギを供給しない。すなわち蓄電手段7から供給される直流電流をインバータ5により変換して、第二の電動発電機2のステータ21に、そのロータ22の機械的な回転速度よりわずかに回転速度の大きい回転位相となる周波数の電流を供給すると、第二の電動発電機2は電動機となり、ロータ22を駆動回転させ駆動出力軸3を回転させる。この電気走行モードでは、原則として原動機10を停止させておくが、走行以外の条件によってはアイドリング状態としておくこともできる。
【0010】動作モードの第二は内燃機関の始動である。車両停車中(または上記電気走行モードで走行中)に、インバータ5から回転トランス13に三相交流電流を送り、第一の電動発電機1の第一ロータ11をその第二ロータ12に追従回転させる。第一ロータ11の回転は原動機10を強制的に回転させ、原動機10に始動に必要な燃料を供給することにより原動機10を始動させることができる。
【0011】動作モードの第三はアンダードライブ(UD)である。原動機10は供給される燃料流量に応じて、その回転速度−出力トルク特性にしたがう回転速度で回転する。このアンダードライブは、車両速度に対応する駆動出力軸3の回転速度がこの原動機10の回転速度より小さい場合である。このとき第一の電動発電機1の二つのロータ11および12の間に回転速度差が生じ、第一の電動発電機1はクラッチ・モータとして作用する。この回転速度差に対応する回転トルクを補うために、切替クラッチ31を第一モードに、すなわち第二の電動発電機2のロータ22を駆動出力軸3に結合させる図4の状態に設定し、第二の電動発電機2に供給する三相交流の位相を制御して、第二の電動発電機2を電動機(アシスト・モータ)として作用させる。第一の電動発電機1は、二つのロータの間の回転速度差により実質的に発電機として作動し、その発生した電気エネルギを第二の電動発電機2が必要とする電気エネルギの一部として供給することができる。この第一の電動発電機1が発生する電気エネルギで不足する分は、蓄電手段7から電気エネルギとして供給される。このように二つの電動発電機1および2は、実質的に原動機10と駆動出力軸3との間のトルク変換装置として作用する。
【0012】動作モードの第四はオーバドライブ(OD)である。オーバドライブは、駆動出力軸3の回転速度が原動機10の回転速度を上回る場合である。この場合には、切替クラッチ31を転換して、第二の電動発電機2のロータ22を駆動出力軸3から切り離し、第一の電動発電機の第一ロータ11に結合する(第二モード)。そして第一の電動発電機1の回転トランス13に供給する三相交流の位相を制御して、第一の電動発電機1を電動機(クラッチ・モータ)として作用させる。それと同時に、第二の電動発電機2のステータに供給する三相交流の位相を制御して、第二の電動発電機2を発電機として作用させる。第二の電動発電機2で発生する電気エネルギは第一の電動発電機1に供給され、第一の電動発電機1が必要とするエネルギの一部となる。この場合にも、不足する電気エネルギは蓄電手段7から供給される。このときも、二つの電動発電機1および2は、原動機10と駆動出力軸3の間のトルク変換装置として作用する。
【0013】動作モードの第五は電気制動である。このときは切替クラッチ31は駆動出力軸3を第二の電動発電機2のロータ22に連結する第一モードに制御し、第二の電動発電機2を発電機として作用させる。駆動出力軸3の回転駆動力により第二の電動発電機2が電気エネルギを発生し、駆動出力軸3には制動力を与えることになる。その電気エネルギはインバータ5により直流に変換され、これは蓄電手段7に蓄積させることができる。このとき、第一の電動発電機1の第一ロータ11と第二ロータ12の間は、エネルギのやりとりのない空転状態とする、または回転速度差により発電機として作動し、その発生した電気エネルギはインバータ5により直流に変換され蓄電手段7に蓄積される。
【0014】なお、この装置のさらに詳しい構成および動作特性については、上記従来例として示す公報の記載を参照されたい。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本願発明者らは、上述のような装置についてさまざまな試験を行ったところ、この装置が何らかの原因により正常な動作をしなくなったときに、原動機(内燃機関)10が正常な状態であっても、原動機10の出力により車両を運行させることができない場合があることがわかった。
【0016】いまかりに、第一の電動発電機1またはその制御系が、何らかの原因により正常な動作をしなくなったとする。このときには、切替クラッチ31を上記第一モードに、すなわち第二の電動発電機2のロータ22を駆動出力軸3と結合させ(図4に示す状態)、第一の電動発電機1の電気系をオフ状態とし、第二の電動発電機2を電動機として動作させれば、第二の電動発電機2を用いて上述の電気走行モードとして車両を走行させることができる。
【0017】しかし、この走行は、蓄電手段7に蓄えられている電気エネルギを利用するものであるから、蓄電手段7の容量によっては、道路から適当な場所までの退避程度の走行が可能であっても、いつでも基地または修理可能な工場までの走行ができるとはかぎらない。これを可能にするには、相応の大容量の蓄電手段を搭載するとともに、装置が正常に動作中であっても、つねにその充電容量を所定量だけ残存させるように制御しなければならない。
【0018】二つの電動発電機のうち第二の電動発電機2またはその制御系が故障した場合には、第二の電動発電機2の電気系をオフ状態にして、そのロータ22が空転可能な状態としても、第一の電動発電機1を電動機として作動させて走行することは不可能である。すなわち、第一の電動発電機1の第一ロータ11は原動機10の駆動軸に連結されていてステータとはならない。また、このとき原動機10が正常に作動しているならば一時的な走行が可能であるが、上述の場合と同様に蓄電手段7の充電エネルギを使うので長い距離の走行は不可能である。すなわち、原動機10を運転しその回転出力を利用するには、第一の電動発電機1をクラッチモータとして作動させるとともに、このクラッチモータをほぼロック状態に制御することになり、このために蓄電手段7の充電エネルギを消費することになってしまう。
【0019】また、この従来例装置は第一の電動発電機1をクラッチ・モータとして利用する構造であるから、第一の電動発電機1の電気系が正常な動作をしなくなると、半クラッチの操作が不能になり、原動機10の出力を駆動出力軸3に伝達して円滑に車両を発進させる動作を行うことができなくなる。
【0020】さらに、第一の電動発電機1またはその制御系が故障した場合に、原動機10が停止しているときには前記始動モードを設定することができない。第一の電動発電機1の二つのロータ11および12は互いに空転することになり、原動機10が始動するためのクランク軸の回転力を与えることができず、原動機10を始動させることができなくなる。
【0021】本発明は、このような背景に行われたものであって、上述のように電動発電機を2基備えた動力伝達制御装置において、クラッチ・モータとして作用する電動発電機の電気系、またはその制御系になんらかの故障が発生したときにも、原動機の出力を利用して、回転駆動出力をとりだすことができる装置を提供することを目的とする。本発明は、この装置が車両の動力伝達制御装置として利用されている場合には、その電気系または制御系などに予期しない故障が発生しても、原動機出力を利用して相応の走行を行うことが可能であり、修理のできる基地まで車両を移動させることができる装置を提供することを目的とする。本発明は、クラッチ・モータとして作用する電動発電機が故障した場合にも、原動機出力を利用して車両を円滑に発進させることができる装置を提供することを目的とする。本発明は、クラッチモータとして作用する電動発電機が予期しない故障に陥った場合にも、原動機(内燃機関)を始動させることができる装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明は、クラッチモータとして作用する電動発電機を実質的にバイパスさせ、操作により原動機の出力軸を前記駆動出力軸に結合させる動力伝達手段を備えたことを最大の特徴とする。これは、アンダードライブ(UD)およびオーバドライブ(OD)を切替える切替クラッチに、第一の電動発電機の第一ロータを駆動出力軸に固定的に連結させる第三モードを設け、操作によりこの第三モードを設定する構成により簡単に実現することができる。
【0023】すなわち本発明は、原動機(10)と、この原動機(10)の出力軸に第一ロータ(11)が結合され駆動出力軸(3)に第二ロータ(12)が結合された第一の電動発電機(1)と、第二の電動発電機(2)と、この第二の電動発電機(2)のロータ(22)と駆動出力軸(3)との間に設けられた切替クラッチ(31)とを備え、前記第一の電動発電機(1)は、第一ロータ(11)と第二ロータ(12)とが機械的に同軸構造であって互いに自在に回転可能であり、第一ロータ(11)の巻線に供給される多相交流電流によりこの第一ロータ(11)とこの第二ロータ(12)との間が同期回転機として作用する構造であり、前記第二の電動発電機(2)は、そのステータ(21)の巻線に供給される多相交流電流によりそのロータ(22)が同期回転機として作用する構造であり、前記切替クラッチ(31)は、第二の電動発電機(2)のロータ(22)を駆動出力軸(3)に結合する第一モードと、第二の電動発電機(2)のロータを駆動出力軸(3)から切り離しこの第二の電動発電機(2)のロータ(22)を前記第一の電動発電機(1)の第一ロータ(11)に結合する第二モードとが切り換えられる構造である動力伝達制御装置において、操作により原動機(10)の出力軸を駆動出力軸(3)に結合させる動力伝達手段を備えたことを特徴とする。
【0024】この動力伝達手段として、切替クラッチ(31)に第一の電動発電機(1)の第一ロータ(11)を駆動出力軸(3)に結合させる第三モードを設ける構成とすることができる。
【0025】この構成により、この動力伝達制御装置の電気系あるいは制御系に何らかの故障があり、原動機が正常であるにもかかわらず、その原動機の動力を駆動出力軸に連結することができないような事態を回避することができる。
【0026】上述のように、アンダードライブ(UD)とオーバードライブ(OD)とを切替える切替クラッチ(31)を装備している装置では、この切替クラッチに上記第三モードを設けることにより、原動機(10)の出力を駆動出力軸(3)に連結するための機構をわずかな装置の変更により簡単に実現することができる。
【0027】上記括弧内の数字は、あとから説明する実施例図面の参照符号である。これは本発明の構成を理解しやすいように付すものであって、本発明を実施例に限定して理解するためのものではない。以下の記述においても同様である。
【0028】上記切替クラッチ(31)に第三モードを設ける場合には、原動機(10)と第一の電動発電機(1)の第一ロータ(11)との結合位置に、運転操作にしたがって半クラッチ操作ができるリリース機構を有する、発進用クラッチ(32)を設ける構成とすることがよい。すなわち、原動機(10)と第一の電動発電機(1)との間には、原動機(10)の出力軸にその出力側から加わる衝撃を吸収するために、ダンパ機構が設けられているから、このダンパ機構にリリース機構を追加する構成は簡単に実現することができる。
【0029】上記切替クラッチに第三モードを設ける構造に代えて、前記動力伝達手段としてこれを機械式クラッチを追加する構成により実現し、この機械式クラッチに操作による半クラッチ制御が可能なリリース機構を含む構成とすることによっても、半クラッチ制御が可能な装置を実現することができる。
【0030】原動機(10)が内燃機関であるときに、クラッチモータとなる電動発電機が故障したときに、その原動機(10)が駆動出力軸(3)から回転力を受けることができない場合にも、その内燃機関が動力伝達制御装置とは独立に始動することができるように、始動電動機を装備する構成とすることが望ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】実施例構造を図面を用いてさらに詳しく説明する。図1は本発明実施例装置の構成図である。この装置は本発明を自動車の動力伝達制御装置として実施した例である。すなわち、原動機(この実施例では内燃機関である)10の回転出力を、第一の電動発電機1および第二の電動発電機2によりトルク変換して、駆動出力軸3に伝達する。駆動出力軸3はトランスファ4を介して自動車の駆動車軸に伝達される。トランスファ4は減速比を有するとともに、前進、後退を切替えるためのギヤを備えている。
【0032】二つの電動発電機1および2はそれぞれ独立の三相交流回転機であり、供給される三相交流の回転位相速度にしたがって発電機または電動機として作用する。第一の電動発電機1は第一ロータ11および第二ロータ12を備え、この二つのロータは同軸構造であり、互いに独立に回転することができる。第一の電動発電機1にはステータはない。第一の電動発電機1の第二ロータ12はこの装置の駆動出力軸3に直結されている。第二の電動発電機2はステータ21およびロータ22を備える。
【0033】インバータ5から、位相制御された三相交流が回転トランス13を介して第一の電動発電機1の第一ロータ11に供給され、さらに独立に位相制御された三相交流が第二の電動発電機2のステータ21に供給される。インバータ5は、第一の電動発電機1の第一ロータ11の回転、第二の電動発電機2のロータ22の回転および駆動出力軸3(第一の電動発電機1の第二ロータ22と同じ)の回転、さらに運転操作入力を取り込み制御回路6により制御される。
【0034】この装置は、二つの電動発電機1および2にそれぞれロータの回転速度に対応して供給される三相交流の回転位相にしたがって、それぞれ発電機として作用しあるいは電動機として作用する。第一の電動発電機1がクラッチモータとして作用し、第二の電動発電機2がアシストモータとして作用するように制御すると、クラッチモータの回転差により電気エネルギを発生させて、この電気エネルギをアシストモータで必要な電気エネルギの一部として利用することができる。また、第二の電動発電機2が発電機として作用し駆動出力軸3に制動力を与えているときに、第二の電動発電機2から発生した発電エネルギを、クラッチモータとして作用する第一の電動発電機1の必要なエネルギの一部として供給することができる。
【0035】また、原動機10の運転を停止させて、第二の電動発電機2を電動機と動作させ、蓄電手段7(この実施例では蓄電池)の出力を利用して電気自動車として走行することができる。この装置の正常時の動作については、図4を用いて説明した上記従来例装置と同等であるから説明の繰り返しを省略する。さらに特性図表を用いた詳しい説明については、上記従来例技術に述べた公報の記載を参照されたい。
【0036】ここで本発明の第一の特徴は、操作により、第一の電動発電機1の第一ロータ11を駆動出力軸3に連結する動力伝達手段を設けたところにある。これは、切替クラッチ31に操作により設定できる第三モードを設けることにより実現された。
【0037】すなわちこの実施例の特徴は、切替クラッチ31に、図1に示すように、第一の電動発電機1の第一ロータ11および第二の電動発電機のロータ22ならびに駆動出力軸3(第一の電動発電機1の第二ロータ12と同じ)を結合する第三モードを設けたところにある。この第三モードでは、原動機10の出力軸は、第一の電動発電機1の第一ロータ11および切替クラッチ31を介して駆動出力軸3に連結された状態となる。
【0038】この構成により、上述のように何らかの原因により二つの電動発電機1、2の電気系または制御系に故障が発生したときに、操作にしたがってこの第一のクラッチ31を第三モードに設定することにより、原動機10の回転出力を直接に駆動出力軸に伝達することができるようになる。第三モードへの転換は運転者がレバー操作により行う構成とする。
【0039】さらに本発明の第二の特徴は、発進用クラッチ32を設けたところにある。第二のクラッチ32は、内燃機関の出力クランク軸と第一の電動発電機1の第一ロータ11との結合部分に設ける。ここにはもとより内燃機関に対する回転緩衝機構が設けられている部分であり、ここに機械式クラッチを実装して、運転席からペダル操作により半クラッチ操作が可能なように構成した。この構成により、切替クラッチ31が、単純な開閉クラッチであって半クラッチ操作が不能であっても、この発進用クラッチ32を利用して半クラッチ操作を行い、円滑に自動車の発進操作を行うことができる。この発進用クラッチ32を設けることにより、自然な運転操作により車両を基地あるいは修理可能な工場などまで運行させることができる。
【0040】本発明の第三の特徴は、原動機10に始動電動機33を装備することにある。この動力伝達制御装置が正常に作動しているときには、原動機10の始動は第一の電動発電機1により行うことができるが、この構成により、第一の電動発電機1に何らかの故障が発生しても、原動機10を自律的に始動させることが可能になる。
【0041】上記は、図1を用いて本発明の特徴である切替クラッチ31に第三のモードを設けることから説明したが、切替クラッチ31のほかのモードについて説明する。図2は、切替クラッチ31が第一モードにある状態を示す。第一モードは、第二の電動発電機2のロータ22を駆動出力軸3に、すなわち第一の電動発電機1の第二ロータ12に連結するモードであり、この場合には第一の電動発電機1は内燃機関出力のクラッチモータとして作用し、第二の電動発電機2はアシストモータとして作用する(アンダードライブ)。
【0042】図3は切替クラッチ31が第二モードにある状態を示す。第二モードでは、第二の電動発電機2のロータ22を第一の電動発電機1の第一ロータ11に結合する。この場合には第一の電動発電機1はクラッチ・モータとして作用し、第二の電動発電機2は電気制動用発電機として作用する(オーバードライブ)。
【0043】切替クラッチ31の第一モードおよび第二モードでは、いずれの場合にも、第一の電動発電機1の第一ロータ11は駆動出力軸3から解離している。このように第一のクラッチ31の第一モードおよび第二モードは、上で説明した従来例装置の第一クラッチの第一モードおよび第二モードと実質的に同等である。
【0044】上記実施例では、切替クラッチ31に三つのモードを設け、さらに発進用クラッチ32を設ける構成について説明したが、別の考え方として、上記発進用クラッチ32を設ける代わりに、切替クラッチ31に追加する第三モードで接続状態となる機構部分に、リリース機構を持たせる構成とすることもできる。すなわち、第一の電動発電機1の第一ロータ11を第二の電動発電機2のロータ22に接触させるクラッチ機構にリリース機構を追加し、このリリース機構を運転操作により手操作で、あるいは足操作により、半クラッチ操作ができるように構成することができる。
【0045】図4で説明した従来例装置の切替クラッチ31のほかに、単に第一の電動発電機1の二つのロータ11および12を結合または解離する単独のクラッチを増設することによっても、同様に本発明を実施することができる。この場合には、この増設するクラッチにリリース機構を設け、半クラッチ操作が可能なように構成することができる。
【0046】また、一つのクラッチに三つのモードを設ける代わりに、第一の電動発電機1の第一ロータ11と第二の電動発電機2のロータ22とを結合または解離するクラッチ、第二の電動発電機2のロータ22を駆動出力軸3に結合または解離するクラッチ、および第一の電動発電機1の第一ロータ11をその第二ロータ12(または駆動出力軸3)に結合または解離するクラッチの三つのクラッチの組み合わせによっても、実質的に上で説明した三つの切替クラッチのモードを実現することができる。この構成によっても同様の作用および効果が得られる。
【0047】
【発明の効果】本発明により、クラッチ・モータとして作用する電動発電機の電気系、またはその制御系に何らかの故障が発生したときにも、原動機の出力を利用して、回転駆動出力をとり出すことができる。本発明により、この装置が車両の動力伝達制御装置として利用されている場合に、その電気系または制御系などに予期しない故障が発生しても、原動機出力を利用して相応の走行を行うことが可能であり、車両を自力で修理のできる基地まで車両を移動させることができる。
【出願人】 【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成13年3月6日(2001.3.6)
【代理人】 【識別番号】100078237
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 直孝 (外1名)
【公開番号】 特開2002−271910(P2002−271910A)
【公開日】 平成14年9月20日(2002.9.20)
【出願番号】 特願2001−62229(P2001−62229)