トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 交流電気車の駆動制御装置
【発明者】 【氏名】矢島 敦

【氏名】長沼 克範

【要約】 【課題】架線側電力変換装置で発生する高調波電流の発生周波数と、線路側の信号周波数との競合を避けることができる交流電気車の駆動制御装置を得ることである。

【解決手段】交流架線から単相交流電力変圧器で降圧させ、降圧された単相二次電圧を、架線側電力変換装置で搬送波の位相をずらしてPWM制御により直流電圧に変換する。この場合の搬送波は、パルスモード切換部で切り換えられて選択された周波数の搬送波である。そして、駆動側電力変換装置は、架線側電力変換装置により変換された直流電圧を三相交流に変換し、誘導電動機に供給する。これにより、架線側電力変換装置の主回路素子のスイッチングによって発生する高調波電流の発生周波数をずらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 交流架線から単相交流電力を一次側へ入力し降圧する主変圧器と、前記主変圧器の複数個の二次巻線に接続され、前記変圧器で降圧された単相二次電圧を搬送波の位相をずらしてPWM制御により直流電圧に変換する架線側電力変換装置と、前記架線側電力変換装置により変換された直流電圧を三相交流に変換する駆動側電力変換装置と、前記駆動側電力変換装置により変換された三相交流により駆動される誘導電動機とを備えた交流電気車を駆動制御する交流電気車の駆動制御装置において、前記架線側電力変換装置のPWM制御の搬送波周波数を切り換えるパルスモード切換部を備えたことを特徴とする交流電気車の駆動制御装置。
【請求項2】 前記架線側電力変換装置の故障を検出する故障検出部を設け、前記パルスモード切換部は、前記故障検出部が前記架線側電力変換装置の故障を検出したときは正常な前記架線側電力変換装置のPWM制御の搬送波周波数を切り換えることを特徴とする請求項1に記載の交流電気車の駆動制御装置。
【請求項3】 前記パルスモード切換部は、前記架線側電力変換装置の主回路素子のスイッチングにより発生する高調波電流周波数が前記交流電気車の線路側にて使用している信号周波数帯から外れるように、PWM制御の搬送波周波数を切り換えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の交流電気車の駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、単相交流電力を一旦直流に変換しさらに三相交流電力に変換して交流電気車を駆動制御する交流電気車の駆動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】交流電気車では交流架線から電力の供給を受け、架線側電力変換装置にて単相交流電力を直流電力に変換し、駆動側電力変換装置にて直流電力を三相交流電力に変換して、複数台の誘導電動機を駆動している。
【0003】図5は、そのような交流電気車の駆動制御装置のブロック図である。交流架線からパンタグラフ10を介して単相交流電力を変圧器11の一次側へ入力する。変圧器11の二次巻線には架線側電力変換装置12が接続され、変圧器11で降圧された単相二次電圧を直流電圧に変換する。図5では2個の二次巻線が設けられ、一つの変圧器11から2個の架線側電力変換装置12に単相交流電力が供給されているものを示している。
【0004】架線側電力変換装置12により変換された直流電圧は駆動側電力変換装置13で三相交流に変換され、誘導電動機14に供給される。これにより、交流電気車が駆動される。
【0005】架線側電力変換装置12ではパルス幅変調制御(PWM制御)による電力変換制御を行っており、主回路素子にGTOサイリスタやIGBT素子を使用してスイッチング制御している。一般に、主回路素子のスイッチング周波数(搬送波周波数)は架線周波数の整数倍に設定されており、主回路素子からの発生損失や電流制御能力、スイッチングにより発生する帰線電流高調波発生周波数により各条件を満足するように決定している。
【0006】また、帰線電流高調波はPWM制御を行う電力変換装置として、高調波発生周波数をfh、搬送波周波数をfc,架線電源周波数をfsとすると、理論的に次の周波数が現れる。
【0007】fh=n・fc±m・fs (n=偶数、m=奇数)
例えば、n=2、m=1とし、搬送波周波数fcを500Hzにすると、高調波発生周波数fhは1000Hzとなり、1000Hz付近での高調波電流値が最大値となる。
【0008】ここで、交流電気車では1台の主変圧器11と複数個Nの巻線(図5ではN=2)に接続された架線側電力変換装置12にて構成されるグループ(以下1ユニットとする)内で架線側電力変換装置12の搬送波位相差を複数台Nの回路間にて均等間隔にずらして多重動作を行っている。すなわち、変圧器11で降圧された単相二次電圧を、搬送波の位相をずらしてPWM制御により直流電圧に変換している。この場合には、高調波電流値の高調波発生周波数はfh×N倍を中心に現れる。つまり、図5のように、N=2である場合には2000Hzとなる。
【0009】一方、線路側においては、電力供給以外にも所定の周波数帯の信号電流を流して保安情報等を車両に伝えるようにしている。この周波数は、lkHz〜5kHzの領域が多い。この周波数帯は架線側電力変換装置12の多重運転の周波数領域と競合するため、架線側電力変換装置12では、発生高調波周波数がこの信号周波数領域の特定周波数を避けるように、搬送波周波数を予め決定している。
【0010】図6は、従来の架線側電力変換装置12の制御ブロック図である。架線側電力変換装置12は交流電力を直流電力に変換するために、以下に示すパルス幅変調制御(PWM制御)を行っている。
【0011】電圧制御部15は、直流電力を求めるために、出力直流電圧検出値VDと直流電圧指令値VDRとの偏差をとり交流入力電流値Imを演算する。この交流入力電流値量Imは電流制御部16に入力される。電流制御部16では、交流入力電流値量Imに位相同期部17からの架線電圧VSに同期したsin波が乗算され二次電流指令値ImRを求め、さらに、この二次電流指令値ImRと入力電流検出値ISとの偏差を求めて出力電圧指令値VCRを得る。出力電圧指令値VCRはPWM信号生成部18に入力される。
【0012】一方、位相同期部17では、架線電圧VSを電源位相同期信号演算手段19に入力し、架線電圧の電源位相の同期信号を取り出して位相同期信号synを演算し、架線電圧VSと電流制御の位相を同期させる。この位相同期信号synによりsin波生成部20にてsin波を発生させ、電流制御部16で交流入力電流値量Imに乗じて二次電流指令値ImRを得る。
【0013】また、搬送波の演算は以下のように行われる。架線電圧検出値VSから求めた位相同期信号synにパルスモードPMを乗じ、基準搬送波演算手段21により基準搬送波fcRefを求める。編成内の各号車の位相は号車認識コード等により行われ、位相設定部22は号車設定を入力すると、編成内のN台の架線側電力変換装置12の各々の位相角設定値を演算する。この各位相設定値carと基準搬送波fcRefとにより搬送波fcRを演算する。PWM信号生成部18は、この搬送波fcRと出力電圧指令値VCRによりPWM制御を行い、主回路素子のスイッチング論理を得る。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、編成内の交流電気車の架線側電力変換装置12の何らかの故障により、多重運転での搬送波位相差の均等性が崩れると、高調波電流値の増加に繋がる。この場合には、残った架線側電力変換装置12にて、再度、等間隔にて変調波位相差を再設定することになる。
【0015】主変圧器11と複数個の架線側電力変換装置12で構成される1ユニット単位での架線側電力変換装置12の数や架線側電力変換装置12の搬送波周波数の設定値によっては、避けられない周波数帯もあった。
【0016】本発明の目的は、架線側電力変換装置で発生する高調波電流の発生周波数と線路側の信号周波数との競合を避けることができる交流電気車の駆動制御装置を得ることである。
【0017】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係わる交流電気車の駆動制御装置は、交流架線から単相交流電力を一次側へ入力し降圧する主変圧器と、前記主変圧器の複数個の二次巻線に接続され、前記変圧器で降圧された単相二次電圧を搬送波の位相をずらしてPWM制御により直流電圧に変換する架線側電力変換装置と、前記架線側電力変換装置により変換された直流電圧を三相交流に変換する駆動側電力変換装置と、前記駆動側電力変換装置により変換された三相交流により駆動される誘導電動機とを備えた交流電気車を駆動制御する交流電気車の駆動制御装置において、前記架線側電力変換装置のPWM制御の搬送波周波数を切り換えるパルスモード切換部を備えたことを特徴とする。
【0018】請求項1の発明に係わる交流電気車の駆動制御装置においては、交流架線から単相交流電力変圧器で降圧させ、降圧された単相二次電圧を、架線側電力変換装置で搬送波の位相をずらしてPWM制御により直流電圧に変換する。この場合の搬送波は、パルスモード切換部で切り換えられて選択された周波数の搬送波である。そして、駆動側電力変換装置は、架線側電力変換装置により変換された直流電圧を三相交流に変換し、誘導電動機に供給する。これにより、架線側電力変換装置の主回路素子のスイッチングによって発生する高調波電流の発生周波数をずらす。
【0019】請求項2の発明に係わる交流電気車の駆動制御装置は、請求項1の発明において、前記架線側電力変換装置の故障を検出する故障検出部を設け、前記パルスモード切換部は、前記故障検出部が前記架線側電力変換装置の故障を検出したときは正常な前記架線側電力変換装置のPWM制御の搬送波周波数を切り換えることを特徴とする。
【0020】請求項2の発明に係わる交流電気車の駆動制御装置においては、請求項1の発明の作用に加え、故障検出部が架線側電力変換装置の故障を検出したときは、パルスモード切換部は、自動的に正常な架線側電力変換装置のPWM制御の搬送波周波数を切り換える。
【0021】請求項3の発明に係わる交流電気車の駆動制御装置は、請求項1または請求項2の発明において、前記パルスモード切換部は、前記架線側電力変換装置の主回路素子のスイッチングにより発生する高調波電流周波数が前記交流電気車の線路側にて使用している信号周波数帯から外れるように、PWM制御の搬送波周波数を切り換えることを特徴とする。
【0022】請求項3の発明に係わる交流電気車の駆動制御装置は、請求項1または請求項2の発明の作用に加え、架線側電力変換装置の主回路素子のスイッチングにより発生する高調波電流周波数が前記交流電気車の線路側にて使用している信号周波数帯から外れるように、PWM制御の搬送波周波数を切り換える。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に係わる交流電気車の駆動制御装置のブロック図である。この実施の形態は、図5に示した従来例に対し、架線側電力変換装置12内にPWM制御の搬送波周波数を切り換えるパルスモード切換部23を設けたものである。
【0024】図1では、主変圧器11の2個の二次巻線にそれぞれか線側電力変換装置12が接続された1ユニット単位の構成を示している。このような1ユニット単位では、交流架線10からの交流電力を主変圧器11にて降圧し、2個の架線側電力変換装置12に電力を供給し、それぞれ直流電力に変換する。それぞれの架線側電力変換装置12には、PWM制御の搬送波周波数を切り換えるパルスモード切換部23が設けられており、いずれかの架線側電力変換装置12に故障が生じた場合には、正常な架線側電力変換装置12のパルスモード切換部23にて搬送波周波数を切り換える。
【0025】図2は、本発明の実施の形態における架線側電力変換装置12の制御ブロック図である。電圧制御部15は、直流出力電圧をその指令値に追従させるものであり、出力直流電圧検出値IDと直流電圧指令値VDRとの電圧偏差を演算し、交流入力電流値Imとして電流制御部16に出力する。
【0026】電流制御部16では、電圧制御部15からの交流入力電流値量Imに位相同期部17からの架線電圧VSに同期したsin波を乗算し、二次電流指令値ImRを求め、さらに、この二次電流指令値ImRと入力電流検出値ISとの偏差を求めて出力電圧指令値VCRを得る。出力電圧指令値VCRはPWM信号生成部18に入力される。
【0027】一方、位相同期部17は交流入力電流と架線電圧との位相を同期させると共に、搬送波周波数を演算するものである。すなわち、位相同期部17では、架線電圧VSを電源位相同期信号演算手段19に入力し、架線電圧の電源位相の同期信号を取り出して位相同期信号synを演算し、架線電圧VSと電流制御の位相を同期させる。この位相同期信号synによりsin波生成部20にてsin波を発生させ、電流制御部16で交流入力電流値量Imに乗じて二次電流指令値ImRを得る。
【0028】また、位相同期部17の基準搬送波演算手段21は、架線電圧検出値VSから求めた位相同期信号synにパルスモード切換部23からのパルスモードPMを乗じ、基準搬送波演算手段21により基準搬送波fcRefを求める。
【0029】パルスモード切換部23は、基準搬送波fcRefの周波数を決定するものであり、複数個のパルスモードPMの設定値を持ち、1ユニット内の各号車の運転状況により、搬送波周波数の切り換えを可能としている。すなわち、同一編成内において、他号車の架線側電力変換装置12が故障したときには、そのパルス数を切り換えることによって、架線側電力変換装置12の主回路素子のスイッチングによって発生する高調波電流の発生周波数ををずらす。
【0030】これにより、架線側電力変換装置12の主回路素子のスイッチングによって発生する高調波電流の発生周波数を、保安情報等を車両に伝える信号電流の周波数とずらすようにしている。
【0031】位相設定部22は、編成内の自号車を認識してその号車の初期位相を設定するものであり、編成内の各号車の位相は号車認識コード等により行われ、位相設定部22は号車設定を入力すると、編成内のN台の架線側電力変換装置12の各々の位相角設定値を演算する。この各位相設定値carと基準搬送波fcRefとにより搬送波fcRを演算する。PWM信号生成部18は、この搬送波fcRと出力電圧指令値VCRによりPWM制御を行い、主回路素子のスイッチング論理を得る。
【0032】ここで、図3に示すように、架線側電力変換装置12にその故障を検出する故障検出部24を設け、他号車の故障検出部24がその架線側電力変換装置12の故障を検出したときは自号車の正常な架線側電力変換装置12のパルスモード切換部12に故障信号を送信して、PWM制御の搬送波周波数を切り換えるようにしても良い。
【0033】すなわち、それぞれの架線側電力変換装置12で互いの故障信号を入力して、搬送波周波数を切り換える。これにより、パルスモード切換部23の切換を自動切換と、ユニット内の他号車の故障信号を入力したときは、パルスモードPMを自動的に切り換える。
【0034】図4は、本発明の実施の形態に係わる交流電気車の監視制御装置の特性を示す特性図である。図4(a)は、ユニット内の2個の架線側電力変換装置12が両者とも健全な状態での帰線電流高調波の発生状態を示す。
【0035】いま、架線周波数fsを50Hzとし、パルスモードPMを30パルスとし(搬送波周波数fc=fs×PM=50×30=1500Hz)、n=2、m=1であるとする。また、線路側の保安信号の周波数帯が3kHz付近に設定されているとする。2台の架線側電力変換装置12(N=2)であるから、発生高調波fhは、下式で示される。
【0036】
fh=(nfC±mfs)・N=(2・1500Hz±1・50Hz)・2=6kHz従って、発生高調波fhは6kHzを中心に発生し、線路側の保安信号の周波数帯が3kHz付近に設定されているので、2台の架線側電力変換装置12は線路側の保安信号の周波数帯と競合することはない。
【0037】この状態で、ユニット内の1台の架線側電力変換装置12が故障等により停止した場合には、帰線電流高調波の発生状態は、図4(b)に示すように、3kHzを中心に発生することになる。従って、1台の架線側電力変換装置12が停止すると、帰線電流高調波は3kHzを中心に発生することになり、帰線電流高調波と保安信号の周波数とが一致して、保安信号に障害を与える可能性がある。
【0038】そこで、このような場合に、パルスモード切替部4にてパルスモードPMを30パルスから25パルスに切り換える。従って、図4(c)に示すように、発生する帰線電流高調波が2.5kHzとなり、線路側の保安信号周波数との競合が回避できる。
【0039】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、架線側電力変換装置の故障によって、架線側電力変換装置の搬送波周波数を切り換えるので、高調波電流の発生周波数帯を変化させることができ、線路側の信号周波数との競合を避けることができる。従って、高調波電流による悪影響を避けることができる。
【出願人】 【識別番号】000221177
【氏名又は名称】東芝トランスポートエンジニアリング株式会社
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成13年3月8日(2001.3.8)
【代理人】 【識別番号】100083231
【弁理士】
【氏名又は名称】紋田 誠
【公開番号】 特開2002−271906(P2002−271906A)
【公開日】 平成14年9月20日(2002.9.20)
【出願番号】 特願2001−64221(P2001−64221)