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【発明の名称】 電動車両駆動用電動機の制御装置
【発明者】 【氏名】島崎 充由

【氏名】稲葉 豊

【要約】 【課題】電動機の過負荷時に電機子コイルの温度が異常上昇するのを防ぐことができるようにした電動車両用電動機の制御装置を提供する。

【解決手段】スロットル開度が所定の判定開度以上になっている状態で、ブラシレス直流電動機1の回転速度が設定されたロック開始回転速度以下になっている状態が所定の判定時間の間継続したときに電動機がロック状態にあると判定する機能と、電動機がロック状態にあると判定されたときに、電動機の駆動電流をロック時制限値まで暫減させる制御を行う機能とをコントローラ13に持たせ、フルスロットル時に電動機1の回転速度が低下して、電機子コイルLu〜Lwの温度が上昇しやすい状況が生じたときに電機子コイルの異常な温度上昇が生じるのを防ぐようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スロットル操作部材の変位量であるスロットル開度に対して電動車両駆動用電動機の出力を制御する電動車両駆動用電動機の制御装置において、前記スロットル開度を検出して該スロットル開度に相応した大きさのスロットル信号を出力するスロットルセンサと、前記電動機の回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記スロットル開度に対して前記電動機の出力を調節すべく前記スロットル信号に応じて前記電動機の駆動電流を制御する定常時駆動電流制御手段と、前記スロットル信号から検出されたスロットル開度が設定されたロック判定開度以上で、かつ前記回転速度検出手段により検出された回転速度が設定されたロック開始回転速度以下になっている状態または前記回転速度が零になっている状態が設定されたロック開始判定時間の間継続したときに前記電動機がロック状態にあると判定し、前記スロットル開度が前記ロック判定開度未満になっている状態、または前記回転速度が前記ロック開始回転速度よりも高く設定されたロック解除回転速度以上になっている状態が設定されたロック解除判定時間の間継続したときにロック状態が解除されたと判定するロック状態判定手段と、前記電動機がロック状態にあると判定されているときに、前記駆動電流の制御モードをロックモードとして、前記駆動電流を前記定常時駆動電流制御手段により決められる値からロック時制限値まで減少させて駆動電流の最大値をロック時制限値以下に制限する駆動電流制限制御を行い、前記ロック状態が解除されたと判定されたときに前記駆動電流を前記ロック時制限値から前記定常時駆動電流制御手段により決められる値まで増加させて前記駆動電流制限制御を解除するロック時駆動電流制御手段と、を具備したことを特徴とする電動車両駆動用電動機の制御装置。
【請求項2】 スロットル操作部材の変位量であるスロットル開度に対して電動車両駆動用電動機の出力を制御する電動車両駆動用電動機の制御装置において、前記スロットル開度を検出して該スロットル開度に相応した大きさのスロットル信号を出力するスロットルセンサと、前記電動機の回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記スロットル開度に対して前記電動機の出力を調節すべく前記スロットル信号に応じて前記電動機の駆動電流を制御する定常時駆動電流制御手段と、前記スロットル信号から検出された前記スロットル開度が設定されたロック判定開度以上で、かつ前記回転速度検出手段により検出された回転速度が設定されたロック開始回転速度以下になっている状態または前記回転速度が零になっている状態が設定されたロック開始判定時間の間継続したときに前記電動機がロック状態にあると判定し、前記スロットル開度が前記ロック判定開度未満になっている状態、または前記回転速度が前記ロック開始回転速度よりも高く設定されたロック解除回転速度以上になっている状態が設定されたロック解除判定時間の間継続したときにロック状態が解除されたと判定するロック状態判定手段と、前記電動機が前記ロック状態にあると判定されたときに、前記駆動電流の制御モードをロックモードとして、前記駆動電流の値を前記定常時駆動電流制御手段により決められる値からロック時制限値まで設定されたロック開始制御時間をかけて漸減させて、前記駆動電流の最大値を前記ロック時制限値以下に制限する駆動電流制限制御を行い、前記ロック状態が解除されたと判定されたときに前記駆動電流の値を前記ロック時制限値から前記定常時駆動電流制御手段により決められる値まで設定されたロック解除制御時間をかけて漸増させて前記駆動電流制限制御を解除するロック時駆動電流制御手段と、を具備したことを特徴とする電動車両駆動用電動機の制御装置。
【請求項3】 界磁を有するロータとn相(nは2以上の整数)の電機子コイルを有するステータとを備えた電動車両駆動用ブラシレス直流電動機の出力をスロットル操作部材の変位量であるスロットル開度に対して制御する電動車両駆動用電動機の制御装置において、前記スロットル開度を検出して該スロットル開度に相応した大きさのスロットル信号を出力するスロットルセンサと、前記電動機の回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記ロータのステータに対する回転角度位置を検出する位置検出器と、直流電源から前記電機子コイルに駆動電流を流す相を切り換えるために前記直流電源と電機子コイルとの間に設けられたスイッチ回路と、前記スロットル信号に対して前記駆動電流のデューティ比を演算するデューティ比演算手段と、前記ロータを回転させるべく前記位置検出器の出力に応じて決定した相の電機子コイルに前記デューティ比演算手段により演算されたデューティ比を有するPWM波形の駆動電流を流すように前記スイッチ回路を構成するスイッチ素子を制御するスイッチ制御手段と、前記スロットル信号から検出された前記スロットル操作部材の増速側への変位量をスロットル開度として該スロットル開度が設定されたロック判定開度以上で、かつ前記回転速度検出手段により検出された回転速度が設定されたロック開始判定回転速度以下になっている状態または前記回転速度が零になっている状態が設定されたロック開始判定時間の間継続したときに前記電動機がロック状態にあると判定し、前記スロットル開度が前記ロック判定開度未満になったとき、または前記回転速度が前記ロック開始回転速度よりも高く設定されたロック解除回転速度以上になっている状態が設定されたロック解除判定時間の間継続したときに前記ロック状態が解除されたと判定するロック状態判定手段と、前記電動機がロック状態にあると判定されているときに、前記駆動電流のデューティ比を前記デューティ比演算手段により演算された値からロック時制限デューティ比まで減少させて前記駆動電流の最大値を前記ロック時制限値以下に制限する駆動電流制限制御を行い、前記ロック状態が解除されたと判定されたときに前記駆動電流のデューティ比を前記ロック時制限値から前記デューティ比演算手段により演算された値まで増加させて前記駆動電流制限制御を解除するロック時駆動電流制御手段と、を具備したことを特徴とする電動車両駆動用電動機の制御装置。
【請求項4】 界磁を有するロータとn相(nは2以上の整数)の電機子コイルを有するステータとを備えた電動車両駆動用ブラシレス直流電動機の出力をスロットル操作部材の変位量であるスロットル開度に対して制御する電動車両駆動用電動機の制御装置において、前記スロットル開度を検出して該スロットル開度に相応した大きさのスロットル信号を出力するスロットルセンサと、前記電動機の回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記ロータのステータに対する回転角度位置を検出する位置検出器と、直流電源から前記電機子コイルに駆動電流を流す相を切り換えるために前記直流電源と電機子コイルとの間に設けられたスイッチ回路と、前記スロットル信号に対して前記駆動電流のデューティ比を演算するデューティ比演算手段と、前記ロータを回転させるべく前記位置検出器の出力に応じて決定した相の電機子コイルに前記デューティ比演算手段により演算されたデューティ比を有するPWM波形の駆動電流を流すように前記スイッチ回路を構成するスイッチ素子を制御するスイッチ制御手段と、前記スロットル信号から検出された前記スロットル操作部材の増速側への変位量をスロットル開度として該スロットル開度が設定されたロック判定開度以上で、かつ前記回転速度検出手段により検出された回転速度が設定されたロック開始判定回転速度以下になっている状態または前記回転速度が零になっている状態が設定されたロック開始判定時間の間継続したときに前記電動機がロック状態にあると判定し、前記スロットル開度が前記ロック判定開度未満になったとき、または前記回転速度が前記ロック開始回転速度よりも高く設定されたロック解除回転速度以上になっている状態が設定されたロック解除判定時間の間継続したときに前記ロック状態が解除されたと判定するロック状態判定手段と、前記電動機が前記ロック状態にあると判定されたときに、前記駆動電流の制御モードをロックモードとして、前記駆動電流のデューティ比を前記デューティ比演算手段により演算された値からロック時制限デューティ比まで設定されたロック開始制御時間をかけて漸減させて、前記駆動電流の最大値をロック時制限値以下に制限する駆動電流制限制御を行い、前記ロック状態が解除されたと判定されたときに前記駆動電流のデューティ比を前記ロック時制限値から前記デューティ比演算手段により演算された値まで設定されたロック解除制御時間をかけて漸増させて前記駆動電流制限制御を解除するロック時駆動電流制御手段と、を具備したことを特徴とする電動車両駆動用電動機の制御装置。
【請求項5】 前記スイッチ回路を構成するスイッチ素子の温度を検出する温度センサと、前記温度センサにより検出された温度が許容値を超えたときに、前記ロック状態判定手段による判定結果の如何に係わりなく前記駆動電流のデューティ比を予め設定された制限値以下に制限する制御を行うスイッチ回路保護用制御手段と、を更に備えている請求項3または4に記載の電動車両駆動用電動機の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電動スクータや、電気自動車等の電動車両の駆動源として用いる電動機を制御する制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に電動機は、界磁を有するロータとn相(nは2以上の整数)の電機子コイルを有するステータとを備えていて、電機子コイルに流す駆動電流をコントローラにより制御することにより、回転速度を制御するようにしている。近年コントローラしては、CPUを用いたものが多く用いられている。
【0003】また電動車両を駆動する電動機としては、ブラシレス直流電動機が多く用いられている。周知のように、ブラシレス直流電動機は、磁石界磁を有するロータと、2相以上の多相の電機子コイルを有するステータとを備えていて、ロータのステータに対する回転角度位置に応じて電機子コイルの励磁相を切り換えていくことによりロータを回転させる。
【0004】この種の電動機を駆動する駆動装置は、ロータのステータに対する回転角度位置を検出する位置検出器と、直流電源から電機子コイルに駆動電流を流す相を切り換えるために直流電源と電機子コイルとの間に設けられたスイッチ回路と、電動機の出力を調節する際に操作されるスロットル操作部材と、スロットル操作部材の変位量をスロットル開度として検出して該スロットル開度に相応した大きさのスロットル信号を出力するスロットルセンサと、ロータを回転させるべく位置検出器の出力に応じて駆動電流を流す相を切り換えるようにスイッチ回路を制御するコントローラとにより構成される。
【0005】コントローラは、CPUを備えていて、該CPUに所定のプログラムを実行させることにより、スロットル信号の値に対して駆動電流のデューティ比を演算するデューティ比演算手段と、駆動電流をデューティ比演算手段により演算されたデューティ比を有するPWM波形の電流とするようにスイッチ回路を制御するPWM制御手段と、駆動電流を流す相の切換角度をスロットル信号に対して演算された制御進み角だけ位置検出器の出力により決まる基準の切換角度に対してシフトさせるように制御する制御進み角制御手段とを構成する。
【0006】ここで駆動電流のデューティ比は、駆動電流のオンオフの周期に対するオン時間の割合を示すもので、駆動電流が流れる時間をton、駆動電流が零になる時間をtoff 、オンオフの周期をT(=ton+toff )とした場合、デューティ比DFは、DF=(ton/T)×100[%]で定義される。
【0007】電動車両においては、アクセルグリップやアクセルペダル等のスロットル操作部材を変位させることにより電動機の出力を調節するが、車両の運転感覚を良好にし、スムースな運転を行わせるためには、スロットル操作部材の変位量(スロットル開度)αに対してのみ駆動電流のデューティ比DFを制御するのではなく、スロットル操作部材に対するデューティ比DFの変化率を電動機の回転速度N[rpm]に応じて変化させるように、デューティ比DFをスロットル開度αと回転速度Nとの双方に対して制御している。
【0008】上記のようにデューティ比DFをスロットル開度αと回転速度Nとに対して制御する場合には、スロットル開度αと回転速度Nと駆動電流のデューティ比DFとの間の関係を与える3次元マップをROMに記憶させておいて、このマップを用いて、CPUにより回転速度N及びスロットル開度αに対してデューティ比DFを演算し、演算されたデューティ比DFで駆動電流を断続させるように、スイッチ回路のスイッチ素子をオンオフ制御する手法がとられる。
【0009】またブラシレス直流電動機においては、駆動電流を流す電機子コイルの相を切り換える切換角度(電気角)を、電動機の機械的な構成により決まる理論的な切換角度に対して所定の角度だけシフトさせている。駆動電流を流す相の切換角度と理論的な切換角度との位相差を制御進み角γと呼んでおり、この制御進み角γは一般には進み側に設定される。
【0010】ブラシレス直流電動機においては、上記制御進み角γにより発生トルク及び最高回転速度が変化し、トルクを大きくするように制御進み角γを設定すると最高回転速度が低くなり、制御進み角γを進角させていくと最高回転速度が高くなるが発生トルクは小さくなっていく。
【0011】通常、電動車両の駆動源としてブラシレス直流電動機を用いる場合には、低速時に十分に大きなトルクを得ることができる制御進み角γを正規の制御進み角γo として設定しておいて、回転速度が設定値を超える領域で回転速度の上昇に応じて制御進み角γを正規の制御進み角γo に対して進角させ、回転速度が設定された進角終了回転速度を超える領域では制御進み角の進角量を最大値に保持するようにしている。
【0012】上記のような、制御進み角制御を行う場合には、スロットル操作部材の変位量(スロットル開度)αと回転速度Nと制御進み角γとの間の関係を与える3次元マップをROMに記憶させておいて、このマップを用いてスロットル開度の検出値と回転速度の検出値とに対して制御進み角γを演算し、電動機の制御進み角を演算された制御進み角に等しくするように制御する。
【0013】上記のように、回転速度が設定値を超える領域で制御進み角γを正規の制御進み角γo よりも進角させる制御を行う場合、スロットル操作部材の増速側への変位量を最大にした状態(フルスロットルの状態)で上り坂等を走行しているときに、制御進み角γの進角量が最大値に保たれた状態になり、電動機の駆動電流は定格値を超えた状態になる。このような状態が長時間続くと、電機子コイルの温度が上昇して許容値を超えることがある。特に、上り坂等において電動機の回転速度が極端に低下した場合には、電動機の駆動電流の転流に要する時間が長くなるため、電動機の特定の相の電機子コイルの温度が急上昇し、該電機子コイルが焼損するおそれがある。また上り坂等で電動機の回転が停止した場合には、ロータの停止位置により決まる特定の相の電機子コイルに大きな駆動電流が流れ続けるため、その電機子コイルの温度が急上昇して焼損する。
【0014】そのため、従来の電動車両用ブラシレス直流電動機の制御装置では、電機子コイルの温度を検出する温度センサを設けて、該温度センサにより異常な温度上昇が検出されたときに、駆動電流を制限することにより電動機の出力を制限して、電機子コイルの温度上昇を抑制する温度上昇抑制制御を行なわせている。
【0015】しかしながら、温度上昇時に駆動電流を制限しても、制御進み角が進角したままであると、無効電流が多く流れるため温度を十分に下げることができないという問題が生じる。このような問題を解決するため、電機子コイルの温度の異常上昇が検出されたときに無効電流を少なくするために制御進み角を遅角させる制御と、駆動電流のデューティ比を減少させる制御とを併せて行うこともある。
【0016】上記の説明では、駆動電流のデューティ比と制御進み角とを制御するとしたが、制御進み角の制御を行わない場合も、フルスロットル状態で負荷が過大になって、電動機の回転速度が極端に低下したり、電動機の回転が停止したりすると、電機子コイルの温度が異常上昇してコイルが焼損するため、電機子コイルの温度を検出してその温度上昇を抑制するように電動機の出力を制限する制御を行うことが必要になる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来の電動車両用ブラシレス直流電動機の制御装置では、多相の電機子コイルのうちの1相の電機子コイルに対してのみ温度センサを設けて、該温度センサにより検出された温度が許容範囲を超えたときに電動機の出力を制限することにより電機子コイルの温度上昇を抑制する温度上昇抑制制御を行うようにしていた。
【0018】しかしながら、このように、多相の電機子コイルのうちの1相の電機子コイルの温度のみを検出した場合には、特定の相の電機子コイルでのみ温度の異常上昇が生じた場合に、その温度の異常上昇を検出することができないことがあるため、電機子コイルの保護を適確に図ることができない。
【0019】例えば、ブラシレス直流電動機において、フルスロットル状態で電動機が過負荷により停止した場合には、駆動電流の転流が行われなくなるため、特定の相の電機子コイルに他の相の電機子コイルよりも大きな電流が流れる状態が継続してその温度が上昇し、コイルが焼損する。このような状態が生じるのを防ぐために、1つの相の電機子コイルに対してのみ温度センサを設けて温度上昇抑制制御を行うようにした場合には、電動機のロータの停止位置によっては、電機子コイルの温度の異常上昇を検出することができないことがあるため、電機子コイルの保護を適確に図ることができない。
【0020】また電動機がロックしないまでも、その回転速度が非常に低くなって停止間際の状態になり、駆動電流の転流に要する時間が長くなったときには、特定の相の電機子コイルに大きな駆動電流が流れる時間が長くなるため、ロック状態と同じような状態になって特定の相の電機子コイルが過熱し、焼損する恐れがある。このような場合にも、1つの相の電機子コイルの温度のみを検出するようにした場合には、電機子コイルの温度の異常上昇を検出できないことがあるため、電動機の保護を適確に図ることができない。
【0021】そこで、多相の電機子コイルのすべての相の温度を検出するために、各相の電機子コイル毎に温度センサを設けることが考えられるが、すべての相の電機子コイルに対して温度センサを設けるとコストが高くなるのを避けられない。
【0022】また電機子コイルがロータ側に設けられている場合には、電機子コイルの温度を検出する温度センサを設けることができないため、電機子コイルの温度を検出して温度上昇抑制制御を行うことができない。
【0023】本発明の目的は、電機子コイルの温度を検出することなく、過負荷により電動機の回転が停止したり、停止間際の極低回転状態になったときに、電機子コイルの温度が異常上昇するのを防いで、電機子コイルの保護を図ることができるようにした電動車両駆動用電動機の制御装置を提供することにある。
【0024】本発明の他の目的は、電機子コイルがロータ側に設けられている場合にも、電機子コイルの異常な温度上昇を防ぐことができるようにした電動車両駆動用電動機の制御装置を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明は、スロットル操作部材の変位量であるスロットル開度に対して電動車両駆動用電動機の出力をマイクロコンピュータを用いて制御する電動車両駆動用電動機の制御装置に係わるものである。
【0026】本発明においては、電動車両駆動用電動機において、電機子コイルの温度が異常上昇するのは、スロットル開度をある程度大きくした状態で運転中に、電動機の負荷が過大になって、電動機の回転が停止するか、または回転速度が極めて低い低回転状態になったときであることに着目して、スロットル開度が所定の判定開度以上になっている状態で、電動機の回転が停止した状態及び、電動機の回転速度がロック開始回転速度以下に低下した状態をロック状態として検出し、このロック状態が検出されたときに電動機の出力を制限する制御を行わせることにより、電機子コイルの温度が異常上昇するのを防ぐようにしたものである。
【0027】通常電動機のロック状態とは、その回転が完全に停止した状態を言うが、本明細書では、電動機の回転が完全に停止した状態だけでなく、電動機の回転速度が極めて低い値まで低下した状態をもロック状態と呼ぶ。
【0028】本発明においては、上記の思想を具現するため、スロットル開度を検出して該スロットル開度に相応した大きさのスロットル信号を出力するスロットルセンサと、電動機の回転速度を検出する回転速度検出手段と、スロットル開度に対して電動機の出力を調節すべくスロットル信号に応じて電動機の駆動電流を制御する定常時駆動電流制御手段と、スロットル信号から検出されたスロットル開度が設定されたロック判定開度以上で、かつ回転速度検出手段により検出された回転速度が設定されたロック開始回転速度以下になっている状態または回転速度が零になっている状態が設定されたロック開始判定時間の間継続したときに電動機がロック状態にあると判定し、スロットル開度が前記ロック判定開度未満になっている状態、または回転速度がロック開始回転速度よりも高く設定されたロック解除回転速度以上になっている状態が設定されたロック解除判定時間の間継続したときにロック状態が解除されたと判定するロック状態判定手段と、電動機がロック状態にあると判定されているときに、駆動電流の制御モードをロックモードとして、駆動電流を定常時駆動電流制御手段により決められる値からロック時制限値まで減少させて駆動電流の最大値をロック時制限値以下に制限する駆動電流制限制御を行い、ロック状態が解除されたと判定されたときに駆動電流をロック時制限値から定常時駆動電流制御手段により決められる値まで増加させて駆動電流制限制御を解除するロック時駆動電流制御手段とを設ける。
【0029】上記のように、スロットル開度が所定の判定開度以上になっている状態で、電動機の回転が停止した状態、及び回転速度が設定されたロック開始回転速度以下に低下した状態をロック状態として検出して、このロック状態が検出されたときに電動機の駆動電流をロック時制限値以下に制限するようにすると、ロック時制限値を適当な値に設定しておくことにより、電機子コイルの温度が異常に上昇する状態が生じるのを防ぐことができる。
【0030】この場合、電機子コイルの温度を検出する必要がなく、またロック状態判定手段及びロック時駆動電流制御手段は、ソフトウェア上で構成できるため、コストの上昇を招くことなく、電機子コイルの保護を図ることができる。
【0031】また本発明によれば、電機子コイルの温度を検出する必要がないため、電動車両駆動用電動機において電機子コイルがロータ側に設けられる場合にも、電機子コイルを過熱から保護することができる。
【0032】なお、ロック状態が開始されたことを検出するために設定するロック開始判定時間は、いかなる場合もその判定時間内に電機子コイルの温度が異常上昇することがないように、十分に短く設定しておく。
【0033】またロック状態が開始されたことを判定するために用いるロック開始回転速度は、スロットル開度が最大のとき(フルスロットル時)に、各相の電機子コイルに駆動電流が継続的に流れる時間(各相の電機子コイルに駆動電流が流れ始めてから、駆動電流が他の相に転流するまでの時間で、電動機の回転速度により決まる。)が許容限界値(電機子コイルの温度が許容上限値に達するまでに要する通電時間)に達するときの回転速度よりも僅かに高い値に設定しておく。即ち、電動機の回転速度がロック開始回転速度よりも高く、比較的短い終期で駆動電流の転流が行われる状態では、各相の電機子コイルに駆動電流が流れる時間が十分に短いため、フルスロットル状態でも各相の電機子コイルの温度が許容値を超えることはないが、電動機の回転速度がロック開始回転速度以下になると、各相の電機子コイルに駆動電流が流れる時間が長くなって特定の相の電機子コイルの温度が異常上昇するように、ロック開始回転速度を設定しておく。
【0034】また駆動電流のロック時制限値は、各相の電機子コイルの温度を異常上昇させることなく、各相の電機子コイルに流し続けることができる駆動電流の上限値以下の値で、しかも電動機からある程度のトルクを発生させることができるような値に設定する。
【0035】上記のように、電動機がロック状態にあるときにも、電機子コイルにある程度の駆動電流を流して、電動機からトルクを発生させ続けるようにしておくと、例えば坂道で電動機がロック状態になって停止したときに、電動機のトルクが失われて車両が逆走するのを防ぐことができる。
【0036】上記ロック時駆動電流制御手段は、電動機がロック状態にあると判定されたときに、駆動電流の制御モードをロックモードとして、駆動電流の値を定常時駆動電流制御手段により決められる値からロック時制限値まで設定されたロック開始制御時間をかけて漸減させて、駆動電流の最大値をロック時制限値以下に制限する駆動電流制限制御を行い、ロック状態が解除されたと判定されたときに前記駆動電流の値を前記ロック時制限値から前記定常時駆動電流制御手段により決められる値まで設定されたロック解除制御時間をかけて漸増させて駆動電流制限制御を解除するように構成するのが好ましい。
【0037】ロック時駆動電流制御手段を上記のように構成して、ロック状態になったときに電動機の駆動電流をロック時制限値まで徐々に低下させ、ロック状態が解除されたときに駆動電流を徐々に増加させるようにすると、電機子コイルを保護するために駆動電流を制限する制御動作とその解除とを急激なトルク変動を伴うことなく行わせることができるため、運転者を驚かすことなく、保護動作を行わせることができる。
【0038】界磁を有するロータとn相(nは2以上の整数)の電機子コイルを有するステータとを備えたブラシレス直流電動機を電動車両駆動用電動機として用いる場合には、前記スロットルセンサ及び回転速度検出手段の他に更に、ロータのステータに対する回転角度位置を検出する位置検出器と、直流電源から電機子コイルに駆動電流を流す相を切り換えるために直流電源と電機子コイルとの間に設けられたスイッチ回路とが設けられる。また、スロットル開度に対して駆動電流を制御するため、スロットル信号に対して駆動電流のデューティ比を演算するデューティ比演算手段と、ロータを回転させるべく位置検出器の出力に応じて決定した相の電機子コイルに前記デューティ比演算手段により演算されたデューティ比を有するPWM波形の駆動電流を流すように前記スイッチ回路を構成するスイッチ素子を制御するスイッチ制御手段とが設けられる。
【0039】この場合も、ロック状態判定手段は、スロットル信号から検出されたスロットル操作部材の増速側への変位量をスロットル開度として該スロットル開度が設定されたロック判定開度以上で、かつ回転速度検出手段により検出された回転速度が設定されたロック開始判定回転速度以下になっている状態または回転速度が零になっている状態が設定されたロック開始判定時間以上継続したときに電動機がロック状態にあると判定し、スロットル開度がロック判定開度未満になったとき、または回転速度がロック開始回転速度よりも高く設定されたロック解除回転速度以上になっている状態が設定されたロック解除判定時間の間継続したときにロック状態が解除されたと判定するように構成する。
【0040】またロック時駆動電流制御手段は、電動機がロック状態にあると判定されているときに、駆動電流のデューティ比をデューティ比演算手段により演算された値からロック時制限デューティ比まで減少させて駆動電流の最大値をロック時制限値以下に制限する駆動電流制限制御を行い、ロック状態が解除されたと判定されたときに駆動電流のデューティ比をロック時制限値からデューティ比演算手段により演算された値まで増加させて駆動電流制限制御を解除するように構成する。この場合も、ロック時駆動電流制御手段は、電動機がロック状態にあると判定されたときに、駆動電流のデューティ比をデューティ比演算手段により演算された値からロック時制限デューティ比まで設定されたロック開始制御時間をかけて漸減させて、駆動電流の最大値をロック時制限値以下に制限する駆動電流制限制御を行い、ロック状態が解除されたと判定されたときに駆動電流のデューティ比をロック時制限値からデューティ比演算手段により演算された値まで設定されたロック解除制御時間をかけて漸増させて駆動電流制限制御を解除するように構成するのが好ましい。
【0041】また電動車両駆動用電動機としてブラシレス直流電動機を用いる場合には、スイッチ回路を構成するスイッチ素子の温度を検出する温度センサと、温度センサにより検出された温度が許容値を超えたときに、ロック状態判定手段による判定結果の如何に係わりなく駆動電流のデューティ比を予め設定された制限値以下に制限する制御を行うスイッチ回路保護用制御手段とを設けるのが好ましい。
【0042】このように構成しておくと、過電流によりスイッチ回路のスイッチ素子の温度が上昇してスイッチ素子が破損するのを防ぐことができる。
【0043】上記温度センサは、例えばスイッチ素子を取り付けるヒートシンクの温度を検出するように設ければよい。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、図1ないし図4を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0045】図1は本発明に係わる制御装置のハードウェアの構成例を示したもので、同図において、1はロータ2とステータ3とからなるアウタロータ型のブラシレス直流電動機である。ロータ2は、強磁性材料によりほぼカップ状に形成されたヨーク201と、ヨーク201の周壁部の内周に取り付けられた永久磁石202とからなっていて、永久磁石202が径方向に着磁されて、2極の磁石界磁203が構成されている。
【0046】なお磁石界磁は、2極に限られるものではなく、一般には2m極(mは1以上の整数)に構成することができる。
【0047】図示の例では、ロータ2の正規の回転方向を図示の矢印CCL方向(図1において反時計方向)としている。
【0048】ステータ3は、環状の継鉄部から3個の歯部Pu〜Pwを放射状に突出させたステータ鉄心301と、該ステータ鉄心の歯部Pu〜Pwにそれぞれ巻回された3相の電機子コイルLu〜Lwとからなっており、電機子コイルLu〜Lwは3相星形結線されている。ステータ鉄心301の歯部Pu〜Pwのそれぞれの先端の外周部がステータ磁極302となっていて、これらのステータ磁極が磁石界磁203に所定のギャップを介して対向させられている。
【0049】なお図示の例ではステータ鉄心を3極に構成しているが、ステータに設ける電機子コイルの相数を3とする場合、一般にはステータ鉄心に3n(nは1以上の整数)個の歯部を設けて、該3n個の歯部に3相の電機子コイルを巻回する構成をとることができる。
【0050】ヨーク201は、その底壁部の中央にボス(図示せず。)を備えていて、該ボスが電動車両の駆動輪の車軸に直接取り付けられるか、または該ボスに締結された回転軸が電動車両の駆動輪の車軸に減速機を介して結合される。
【0051】ロータ2のステータ3に対する回転角度位置を検出するため、ステータ鉄心301に、U,V,W3相の位置検出器hu,hv及びhwが取り付けられている。
【0052】各位置検出器は、各相の電機子コイルに流す駆動電流の通電角(電気角)やロータの回転方向に応じて適宜の位置に配置される。例えば、図示の例で、ロータの回転方向を反時計方向とし、ロータ2の回転に伴って電機子コイルLu〜Lwにそれぞれ誘起する無負荷誘起電圧がピークに達する位置(磁石界磁203から各相の電機子コイルが巻回された歯部を通してながれる磁束が零点を通過する位置)の前後90度(電気角)の区間各相の電機子コイルに駆動電流を流す「180度スイッチング制御」を行って電動機を回転させる場合には、3相の電機子コイルLu〜Lwがそれぞれ巻回されている歯部Pu,Pv及びPwの先端の磁極部の中心位置がロータ2の磁石界磁の各磁極の中心位置に一致するときのロータの回転角度位置を検出するように(該回転角度位置で位置検出器のレベルを変化させるように)、各相の位置検出器が取り付けられる。図示の例では、ステータ鉄心301の歯部Pv,Pw及びPuにそれぞれU,V,W3相の位置検出器hu,hv及びhwを取付けることにより、歯部Pu,Pv及びPwの先端の磁極部の中心位置がロータ2の磁石界磁の各磁極の中心位置に一致するときのロータの回転角度位置を検出するようにしている。
【0053】図示のように、3つの歯部Pu〜Pwにそれぞれ電機子コイルLu〜Lwが巻回されていて、位置検出器hu〜hwとしてホールICが用いられる場合には、歯部Pu〜Pwのそれぞれの磁極の中心に対して電気角で90度位相が進んだ位置に位置検出器hu〜hwを配置して、これらの位置検出器の出力により決まる駆動相(駆動電流を流す電機子コイルの相)の切換角度を基準の切換角度とし、この基準の切換角度に対して実際の切換角度を進角または遅角させるように制御進み角を演算する。
【0054】10は電機子コイルLu〜Lwと直流電源11との間に設けられて電機子コイルの励磁相を切り換えるスイッチ回路である。このスイッチ回路は、一端が共通接続された上段のスイッチ素子10uないし10wと、これらの上段のスイッチ素子の他端にそれぞれ一端が接続され、他端が共通接続された下段のスイッチ素子10x〜10zとからなるスイッチ素子のブリッジ回路からなっていて、上段のスイッチ素子10u〜10wの一端の共通接続点及び下段のスイッチ素子10x〜10wの他端の共通接続点がそれぞれ直流電源11の正極端子及び負極端子に接続されている。
【0055】スイッチ回路を構成するスイッチ素子としては、MOSFET、電力用トランジスタ,IGBT等のオンオフ制御が可能な任意のスイッチ素子を用いることができるが、図示の例では、各スイッチ素子がMOSFETからなっている。
【0056】電動車両の制動時に回生電流を流すため、上段のスイッチ素子10u〜10w及び下段のスイッチ素子10x〜10zにそれぞれ帰還用ダイオード12u〜12w及び12x〜12zが並列接続される。図示のように各スイッチ素子としてMOSFETを用いる場合には、これらの帰還用ダイオードとしてFETのドレインソース間に形成されている寄生ダイオードを用いることができる。
【0057】図示の直流電源11は、バッテリBと、該バッテリの両端に接続されたコンデンサC1 とからなっている。
【0058】スイッチ回路10を制御するため、マイクロコンピュータと入出力インターフェースとを備えたコントローラ13と、コントローラ13から与えられる信号に応じてスイッチ回路のスイッチ素子10u〜10w及び10x〜10zにそれぞれ駆動信号(スイッチ素子をオン状態にするための信号)Su〜Sw及びSx〜Szを与えるドライバ回路14とが設けられ、位置検出器hu〜hwからそれぞれ得られる位置検出信号Hu〜Hwがコントローラ13に入力されている。
【0059】15は電動車両の速度を調節するアクセルグリップやアグセルペタル等のスロットル操作部材の変位量をスロットル開度αとして検出するスロットルセンサである。図示のスロットルセンサ15は、スロットル操作部材に可動接触子15aが連結されたポテンショメータからなっている。スロットルセンサ15を構成するポテンショメータの両端には、図示しない定電圧直流電源回路から得られる直流定電圧Eが印加されていて、該ポテンショメータの可動接触子15aと接地間にスロットル開度αに比例したスロットル信号Vαが得られるようになっている。スロットルセンサ15から得られるスロットル信号はコントローラ13に入力されている。スロットル信号はコントローラ13内に設けられたA/D変換器によりデジタル値Vthに変換されてマイクロコンピュータのCPUに読み込まれる。
【0060】また図示の例では、スイッチ回路10を構成するスイッチ素子の温度を検出するため、スイッチ回路10の構成素子が取り付けられているヒートシンクに感温抵抗素子Rts(図1参照)が熱的に結合され、この感温抵抗素子Rtsによりスイッチ回路用の温度センサが構成されている。コントローラ13には、感温抵抗素子Rtsの両端に一定の直流電圧を印加する電圧印加回路(図示せず。)が設けられていて、感温抵抗素子Rtsの両端に得られる温度検出信号Vtsが、コントローラ13のCPU(図示せず)に設けられたアナログ入力ポートに入力されている。感温抵抗素子Rtsは正の温度係数を有するものでもよく、負の温度係数を有するものでもよい。
【0061】コントローラ13は、例えば、位置検出器hu〜hwがそれぞれ発生する矩形波状の位置検出信号の発生間隔を計測することにより電動機の回転速度N[rpm]を演算し、この回転速度Nと、スロットル信号の値(デジタル値)Vthから得られるスロットル開度情報とに基づいてブラシレス直流電動機1の電機子コイルに供給する駆動電流のデューティ比DFと、制御進み角(駆動電流を流す電機子コイルの相を切り換える実際の切換角度と位置検出器の配置により決まる基準の切換角度との位相差)γとを演算する。デューティ比DF及び制御進み角γの演算は、それぞれ回転速度Nとスロットル開度とデューティ比DFとの間の関係を与えるデューティ比演算用3次元マップ及び回転速度Nとスロットル開度と制御進み角γとの間の関係を与える制御進み角演算用3次元マップ(いずれのマップもROMに記憶されている)を用いて補間法により行われる。
【0062】コントローラ13を構成するマイクロコンピュータが実行するプログラムのうち、上記回転速度を演算する過程により電動機の回転速度を検出する回転速度検出手段が実現される。また上記デューティ比演算用マップを用いてデューティ比を演算する過程により、スロットル信号の値と回転速度とに対して駆動電流のデューティ比を演算するデューティ比演算手段が構成され、上記制御進み角演算用マップを用いてスロットル信号に対して制御進み角を演算する過程により、制御進み角演算手段が構成される。
【0063】コントローラ13はまた、ロータ2を所定の方向に回転させるべく、位置検出器hu〜hwの出力信号に基づいて駆動電流を流す相を決定して、決定した相の電機子コイルに、制御進み角演算手段により演算された制御進み角を有する切換え角度で駆動電流を流す相を切り換えながら、デューティ比演算手段により演算されたデューティ比で断続するPWM波形の駆動電流を所定の相の電機子コイルに流すべく、スイッチ回路10の所定のスイッチ素子に駆動信号を与えることを指令する指令信号をドライバ回路14に与えるスイッチ制御手段を実現する。上記デューティ比演算手段と、スイッチ制御手段とにより、スロットル開度に対して電動機の出力を調節すべくスロットル信号に応じて電動機の駆動電流を制御する定常時駆動電流制御手段が構成される。
【0064】ドライバ回路14は、コントローラ13から与えられる指令信号に応じてスイッチ回路の所定のスイッチ素子に駆動信号(スイッチ素子をオン状態にするための信号)を与える。
【0065】図2(A)ないし(I)は、図1に示したブラシレス直流電動機を、180度スイッチング制御を行って駆動する場合の位置検出信号の波形と、スイッチ回路10の各スイッチ素子のオンオフ動作波形とを示した波形図である。図2(A)ないし(C)はそれぞれ位置検出器hu〜hwが発生する位置検出信号Hu〜Hwの一例を示し、図2(D)ないし(F)はそれぞれ、駆動電流を流す電機子コイルの相を切り換える角度を基準の切換角度とした場合の、スイッチ回路10の上段のスイッチ素子10uないし10wのオンオフ動作を示している。また図2(G)ないし(I)はそれぞれスイッチ回路10の下段のスイッチ素子10x〜10zのオンオフ動作を示している。
【0066】コントローラ13は、図2(A)ないし(C)に示された位置検出信号に論理演算を施すことにより、スイッチ回路10の各スイッチ素子をオン状態にする区間とオフ状態にする区間とを決定し、各スイッチ素子をオン状態にする区間そのスイッチ素子に駆動信号を与える。駆動電流をPWM制御するため、図示の例では、下段のスイッチ素子10x〜10zに与える駆動信号を、デューティ比演算手段により演算されたデューティ比で断続する波形として、下段のスイッチ素子を所定のデューティ比でオンオフさせている。
【0067】図2に示した例では、コントローラのCPUが実行するプログラムのうち、スイッチ素子10x〜10zに与える駆動信号をデューティ比演算手段により演算されたデューティ比で断続させる過程により、駆動電流をスロットル信号に対して演算されたデューティ比を有するPWM波形の電流とするようにスイッチ回路10を制御するPWM制御手段が構成される。
【0068】ブラシレス直流電動機においては、制御進み角γによって最大発生トルク及び最高回転速度が変化する。一般には、電動機の用途や要求されるトルク特性、或いは必要とされる最高回転速度等に応じて制御進み角の大きさを設定している。電動車両を駆動するブラシレス直流電動機の場合は、電動機の回転速度が設定値以下であるときに制御進み角γを正規の制御進み角γo に固定し、電動機の回転速度が設定された進角開始回転速度を超える範囲で制御進み角γを回転速度の上昇に伴って正規の制御進み角γo よりも進角させ、電動機の回転速度が設定された進角終了回転速度以上になる範囲では制御進み角の進角量を設定された最大値に固定するように、制御進み角γを制御することが多い。
【0069】制御進み角γを制御する場合には、駆動電流を流す相を切り換える切換角度をスロットル信号に対して演算された制御進み角だけ位置検出器の出力により決まる基準の切換角度に対してシフトさせるように制御する制御進み角制御手段がコントローラ13に設けられる。
【0070】この制御進み角制御手段は、コントローラ13のCPUが実行するプログラムの一連の過程のうち、制御進み角演算手段により演算された制御進み角と位置検出器の出力により決定される基準の切換角度とから、駆動電流を流す相を切り換えるタイミングを決定する過程により構成される。
【0071】正規の制御進み角γo をどのように設定するかは任意であるが、一般には、電動車両の発進時のトルクを大きくするために、最大トルクが得られる制御進み角を正規の制御進み角γo とする。
【0072】回転速度Nが設定値を超える領域で制御進み角γを正規の制御進み角γo よりも進角させる制御を行う場合、上り坂等でスロットル操作部材の増速側への変位量を最大にした状態(フルスロットルの状態)で運転しているときに、制御進み角γの進角量が最大値に保たれた状態になり、電動機の駆動電流は定格値を超えた状態になる。このような状態で、電動機の回転速度が極端に低下し、各相の電機子コイルに駆動電流が流れ続ける状態が長い時間の間継続するようになると、電機子コイルの温度が上昇して許容値を超えるおそれがある。
【0073】そこで、本発明においては、スロットル開度をある程度大きくした状態で運転しているときに、電機子コイルの温度が許容値を超えて上昇するおそれがある電動機の低回転状態及び電動機の回転が停止した状態をロック状態として、このロック状態を検出するロック状態検出手段と、ロック状態が検出されたときに電動機の駆動電流を制限する制御を行うロック時駆動電流制御手段とを設ける。
【0074】ロック状態判定手段は、スロットル信号から検出されたスロットル操作部材の増速側への変位量をスロットル開度として該スロットル開度が設定されたロック判定開度以上になっている状態で、回転速度検出手段により検出された回転速度Nが設定されたロック開始判定回転速度NLS以下になっている状態、または回転速度が零になっている状態が設定されたロック開始判定時間tLSの間継続したときに電動機がロック状態にあると判定し、スロットル開度がロック判定開度未満になったとき、または回転速度Nがロック開始回転速度NLSよりも高く設定されたロック解除回転速度NLC以上になっている状態が設定されたロック解除判定時間tLCの間継続したときにロック状態が解除されたと判定する。
【0075】またロック時駆動電流制御手段は、電動機がロック状態にあると判定されたときに、駆動電流の制御モードをロックモードとして、駆動電流のデューティ比をデューティ比演算手段により演算された値からロック時制限デューティ比まで設定されたロック開始制御時間をかけて漸減させて、駆動電流の最大値をロック時制限値以下に制限する駆動電流制限制御を行い、ロック状態が解除されたと判定されたときに駆動電流のデューティ比をロック時制限値からデューティ比演算手段により演算された値まで設定されたロック解除制御時間をかけて漸増させて駆動電流制限制御を解除する制御を行う。
【0076】図3は、本発明に係わる制御装置において、スロットル操作部材の開度が最大の状態に保たれているとき(フルスロットル時)の、駆動電流のデューティ比DFの変化の一例と、電動機の回転速度Nの変化の一例とを時間tに対して示したもので、図示の例では、時刻t1 で電動機の回転速度がロック開始判定回転速度NLS以下になった後、回転速度がロック開始判定回転速度以下になっている状態がロック開始判定時間tLSの間継続した時に(時刻t2 において)電動機がロック状態にあると判定されている。時刻t2 で電動機がロック状態にあると判定された後、設定されたロック開始制御時間ts1をかけて、デューティ比DFをロック時制限値まで減少させている。また負荷の減少により、時刻t4 において電動機の回転速度がロック開始回転速度NLSよりも高く設定されたロック解除回転速度NLCまで上昇した後、時刻t5 で設定されたロック解除判定時間tLCが経過した時にロック状態が解除されたと判定して、駆動電流のデューティ比DFを設定されたロック解除制御時間ts2をかけて、ロック時制限値からデューティ比演算手段により演算されている値(図示の例では100%)まで増加させている。
【0077】図4は、上記ロック状態判定手段を実現するためにコントローラ13内のマイクロコンピュータに実行させるプログラムのアルゴリズムの一例を示したものである。この例では、マルチタスクの手法により、所定の機能を実現するための複数のタスクを一定の時間間隔で順次実行させて、電動機を制御するために必要な各手段(回転速度演算手段、デューティ比演算手段、定常時駆動電流制御手段等)を実現するようにしている。図4はロック状態判定手段を実現する一つのタスクのアルゴリズムの一例を示したもので、このタスクは例えば30msec毎に実行される。
【0078】図4に示したタスクが開始されると、そのステップ1において、スロットルセンサ15により検出されている現在のスロットル開度Thrをロック判定開度Thr.Lと比較し、現在のスロットル開度Thrがロック判定開度Thr.L以上になっているか否かを判定する。その結果、現在のスロットル開度Thrがロック判定開度Thr.L以上になっている場合には、ステップ2に進んで、制御モードがロックモードであるか否かを判定し、ロックモードでない場合には、ステップ3においてロック解除制御が行われているか否かを判定する。その結果、ロック解除制御が行われていないと判定されたときには、ステップ4に進んで、図示しない回転速度演算手段により演算されている現在の回転速度Nがロック開始回転速度NLS以下であるか否かを判定する。その結果、現在の回転速度Nがロック開始回転速度NLSを超えているときには、ステップ5で制御モードをロック解除制御モードとしてロック解除制御を開始させる。
【0079】ロック解除制御では、駆動電流のデューティ比をロック時制限値からデューティ比演算手段により演算される値まで、所定のロック解除制御時間ts2をかけて暫増させて、デューティ比の制限(駆動電流の制限)を解除する。
【0080】ステップ4で回転速度Nがロック開始回転速度NSL以下であると判定されたときには、ステップ6に進んでロック開始制御が行われているか否かを判定し、ロック開始制御が未だ行われていないときには、ステップ7に進んでロック開始制御(回転速度Nがロック開始回転速度NLS以下になっている状態の継続時間を計測するための制御)を開始させる。
【0081】ステップ6においてロック開始制御が行われていると判定されたときには、ステップ8に進んでスタートカウンタの計数値を1つインクリメントし、ステップ9に移行する。ステップ9では、スタートカウンタの計数値とロック開始判定時間tLSを与える計数値とを比較して、スタータカウンタの計数値がロック開始判定時間tLSを与える値に達しているか否かを判定し、スタータカウンタの計数値がロック開始判定時間tLSを与える値に達しているとき(回転速度がロック開始回転速度以下になったことが検出された後ロック開始判定時間tLSが経過している時)には、ステップ10に進んで駆動電流の制御モードをロックモードとする。
【0082】このロックモードにおいては、図3に示したように、駆動電流のデューティ比をデューティ比演算手段により演算されている値(図3の例では100%)から予め設定されたロック時制限値までロック開始制御時間ts1をかけて暫減させて、デューティ比をロック時制限値以下に制限する。
【0083】ステップ9において、スタートカウンタの計数値がロック開始判定時間tLSを与える値に達していないと判定されたときには、何もしないでこのタスクを終了する。
【0084】ステップ1において、現在のスロットル開度がロック判定角度よりも小さいと判定されたときには、ステップ11においてロック解除制御モードとして、図示のタスクを終了する。
【0085】またステップ2において、制御モードがロックモードにあると判定されたときには、ステップ12に進んで現在の回転速度Nがロック解除回転速度NLC以上であるか否かを判定し、回転速度Nがロック解除回転速度NLC以上になっている場合には、ステップ13に進んで、ロック解除制御を行わせる。ステップ12において回転速度Nがロック解除回転速度NLCよりも低いと判定されたときには、何もしないでこのタスクを終了する。
【0086】またステップ3において、ロック解除制御が行われていると判定されたときには、ステップ14に進んで回転速度Nがロック開始回転速度NLS以下であるか否かを判定し、その結果、回転速度Nがロック開始回転速度NLS以下であると判定されたときには、制御モードをロックモードとしてこのタスクを終了する。
【0087】ステップ14において回転速度Nがロック開始回転速度NLSを超えていると判定されたときには、ステップ16でキャンセルカウンタの計数値を1インクリメントし、次いでステップ17でキャンセルカウンタの計数値をロック解除判定時間tLCを与える値に達しているか否かを判定する。その結果、キャンセルカウンタの計数値がロック解除判定時間tLCを与える値に達していないと判定されたとき(ロック解除制御が開始された後ロック解除判定時間tLCが経過していないとき)には、何もしないでタスクを終了する。またステップ17において、キャンセルカウンタの計数値がロック解除判定時間tLCを与える値に達していると判定されたとき(回転速度がロック解除回転速度以上になった後、ロック解除判定時間tLCが経過しているとき)にはステップ18に進んで駆動電流の制御モードをロック解除モードとし、このタスクを終了する。
【0088】ロック解除モードでは、駆動電流のデューティ比をロック時制限値からデューティ比演算手段により演算されている値にまで、所定のロック解除制御時間をかけて暫増させて、駆動電流の制限を解除する。
【0089】図4に示した例では、ステップ10及び18により、ロック時駆動電流制御手段が実現され、その他のステップによりロック状態判定手段が実現される。
【0090】また本実施形態では、スイッチ回路10に対して設けられた感温抵抗素子(温度センサ)Rtsによりスイッチ回路を構成するスイッチ素子の温度が該スイッチ回路に対して設定された許容値を超えたときに、ロック状態判定手段による判定結果の如何に係わりなく駆動電流のデューティ比を予め設定された制限値以下に制限する制御を行うスイッチ回路保護用制御手段が設けられている。
【0091】上記の例では、駆動電流制御モードをロックモードとしたときに、駆動電流を定常時駆動電流制御手段により決められる値からロック時制限値まで時間をかけて暫減させて駆動電流を制限し、ロック解除制御を行う際には、駆動電流を時間をかけてロック時制限値から定常時駆動電流制御手段により決められる値まで時間をかけて暫増させて制限を解除するようにしたが、本発明は、このように駆動電流を暫減させたり暫増させたりする場合に限定されるものではなく、ロック状態が検出されたときに駆動電流を直ちにロック時制限値まで減少させるようにしたり、ロック状態が解除されたことが検出されたときに、駆動電流を定常時の値に直ちに復帰させるようにしてよい。
【0092】上記の例では、スイッチ回路の下段のスイッチ素子をオンオフさせることによりPWM波形の駆動電流を得るようにしているが、スイッチ回路の上段のスイッチ素子をオンオフさせることによりPWM波形の駆動電流を得るようにしてもよく、上段のスイッチ素子と下段のスイッチ素子との双方をオンオフさせることによりPWM波形の駆動電流を得るようにしてもよい。
【0093】上記の例では、位置検出器を構成するホールICを各相の電機子コイルが巻回された歯部の中心に対して電気角で90°進んだ位置に配置したが、位置検出器はロータのステータに対する回転角度位置を検出すれば良く、その配設位置は上記の例に限定されない。
【0094】上記の例では、180度スイッチング制御を行わせているが、ブラシレス直流電動機の駆動の仕方は上記の例に限られるものではなく、例えば各相の電機子コイルが巻回された歯部を通して流れる磁束が零点を通過する位置の前後60度(電気角)の区間各相の電機子コイルに駆動電流を流す「120度スイッチング制御」を行って電動機を回転させる場合にも本発明を適用することができる。
【0095】また上記の例では、位置検出器としてホールICを用いているが、ホールICに代えて、フォトエンコーダ等の位置検出器を用いるようにしてもよい。
【0096】本発明を適用する電動車両は、電動機の出力を車両の駆動輪に直接伝達する構造のものでもよく、電動機の出力を減速機を介して駆動輪に伝達するようにしたものでもよい。
【0097】上記の例では、3相のブラシレス電動機を例にとったが、本発明において電機子コイルの相数nは2以上であればよい。また電動車両駆動用電動機として、ブラシレス直流電動機以外の電動機が用いられる場合にも本発明を適用することができる。
【0098】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、スロットル開度が所定の判定開度以上になっている状態で、電動機の回転が停止した状態、及び回転速度が設定されたロック開始回転速度以下に低下した状態をロック状態として検出して、このロック状態が検出されたときに電動機の駆動電流をロック時制限値以下に制限するようにしたので、ロック時制限値を適当な値に設定しておくことにより、電機子コイルの温度が異常に上昇する状態が生じるのを防ぐことができる利点がある。
【0099】また本発明によれば、電機子コイルの温度を検出する必要がなく、またロック状態判定手段及びロック時駆動電流制御手段は、ソフトウェア上で構成できるため、コストの上昇を招くことなく、電機子コイルの保護を図ることができる。
【0100】更に本発明によれば、電機子コイルの温度を検出する必要がないため、電動車両駆動用電動機において電機子コイルがロータ側に設けられる場合にも、電機子コイルを過熱から保護することができる利点がある。
【出願人】 【識別番号】000001340
【氏名又は名称】国産電機株式会社
【出願日】 平成13年2月19日(2001.2.19)
【代理人】 【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
【公開番号】 特開2002−247704(P2002−247704A)
【公開日】 平成14年8月30日(2002.8.30)
【出願番号】 特願2001−41985(P2001−41985)