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【発明の名称】 補機駆動装置
【発明者】 【氏名】守屋 一成

【氏名】稲熊 幸雄

【氏名】佐々木 正一

【氏名】社本 純和

【氏名】石川 哲浩

【氏名】杉浦 浩

【要約】 【課題】燃料電池車両の補機駆動系を簡略化する。

【解決手段】燃料電池(FC)システム10に補機ポンプ26を用いて燃料ガスを供給する。補機ポンプ26はプラネタリギヤ装置のリングギヤ24に接続され、サンギヤ20にポンプモータ22が接続され、ピニオンギヤ18には駆動モータ12の動力の一部が入力される。ポンプモータ22だけでなく、駆動モータ12の動力の一部を利用することで、ポンプモータ22を小型化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 動力源と、前記動力源を駆動するための補機系と、前記補機系を駆動する補機駆動源と、前記動力源からの動力の一部を前記補機系に伝達する動力合成分配機構と、を有し、前記動力源からの動力の一部を用いて前記補機系を駆動することにより前記補機駆動源の負荷を低減することを特徴とする補機駆動装置。
【請求項2】 請求項1記載の装置において、前記動力合成分配機構は遊星歯車であり、前記遊星歯車装置のサンギアに前記補機駆動源または前記補機系が接続され、前記遊星歯車装置のキャリアに前記動力源からの動力の一部が入力され、前記遊星歯車装置のリングギヤに前記補機系または前記補機駆動源が接続されることを特徴とする補機駆動装置。
【請求項3】 請求項1、2のいずれかに記載の装置において、前記動力源は燃料電池車両の燃料電池及び駆動モータを含み、前記補機系は前記燃料電池に燃料ガスを供給するポンプを含み、前記補機駆動源は前記ポンプを駆動するモータを含み、前記駆動モータの出力の一部が前記動力合成分配機構に入力されることを特徴とする補機駆動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は補機駆動装置、特に動力源を駆動するための補機系の駆動機構に関する。
【0002】
【従来の技術】特開平6-229447号公報には、エンジンの回転駆動を変速してエンジンの補機に伝達するエンジン補機駆動用変速装置が開示されている。この技術では、補機の駆動軸に回転自在に支持され、外周面に入力係合部を有し、内周面に遊星歯車が回転自在に取り付けられた中空回転体と、駆動軸に固着され中空回転体内で遊星歯車に噛み合う第1歯車と、駆動軸に回転自在に取り付けられ中空回転体内で遊星歯車に噛み合う第2歯車と、補機の固定部と第2歯車とを係合離脱し第2歯車に制動力を与えるクラッチを有している。そして、クラッチが開放状態にあるときには第2歯車の回転は拘束されず中空回転体の回転は遊星歯車の公転のみとなり、補機は中空回転体と同一回転速度で同一方向に回転するが、クラッチが係合状態にあるときには第2歯車の回転は拘束され、第1歯車は遊星歯車の公転と同一速度の回転に遊星歯車の自転による回転が加えられた増速回転速度で回転し、補機は増速されて回転することになる。したがって、クラッチの係合状態を適宜調整することで、補機の回転速度を調整することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、補機の駆動力をクラッチを用いて調整する構成では、クラッチが完全係合と完全開放の間にあるとき、いわゆるすべり状態にあるときにはすべりによる損失が生じるため、補機駆動の効率が低下する問題もある。
【0004】また、補機駆動用の別の駆動源を搭載して補機を駆動することも考えられるが、十分な動力を提供するために駆動源が大型化し、コストも増大する問題もある。特に、最近では燃料電池車両の実用化が進められているが、燃料電池用補機を駆動するために多数のモータやインバータが必要となってシステムが大型化、複雑化しており、補機駆動系の簡略化が重要な課題となっている。
【0005】本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、補機駆動系を簡略化することができ、これによりシステムのコスト低減を図ることができる装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の補機駆動装置は、動力源と、前記動力源を駆動するための補機系と、前記補機系を駆動する補機駆動源と、前記動力源からの動力の一部を前記補機系に伝達する動力合成分配機構とを有し、前記動力源からの動力の一部を用いて前記補機系を駆動することにより前記補機駆動源の負荷を低減することを特徴とする。
【0007】本発明において、前記動力合成分配機構として遊星歯車(プラネタリギヤ)装置を用いることができ、前記プラネタリギヤ装置のサンギアに前記補機駆動源または前記補機系が接続され、前記プラネタリギヤ装置のキャリアに前記動力源からの動力の一部が入力され、前記プラネタリギヤ装置のリングギヤに前記補機系または前記補機駆動源が接続される。
【0008】また、本発明において、前記動力源は燃料電池車両の燃料電池及び駆動モータを含み、前記補機系は前記燃料電池に燃料ガスを供給するポンプを含み、前記補機駆動源は前記ポンプを駆動するモータを含み、前記駆動モータの出力の一部が前記動力合成分配機構に入力されることが好適である。
【0009】さらに、本発明において、前記動力合成分配機構は差動歯車とすることもできる。
【0010】このように、本発明においては、動力源からの動力の一部を用いて補機系を駆動することにより補機駆動源に要求されるパワーを低減するものであるが、動力源からの動力の一部をプラネタリギヤ装置を巧みに用いて伝達することで、動力伝達損失をなくして効率的に補機系を駆動することができる。補機駆動源に要求されるパワーが低減することで、補機駆動源を小型化あるいは簡易化することができる。なお、補機駆動源は任意であるが、その代表例はモータである。
【0011】プラネタリギヤ装置において、定常状態では一般にキャリアトルク>リングギアトルク>サンギヤトルクが成立する。したがって、サンギヤに補機駆動源を接続し、キャリアに動力源からの動力を入力することで補機駆動源のトルクを小さくすることができる。動力源の動力は、車両においては走行用動力を用いることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明の実施形態について、燃料電池車両を例にとり説明する。
【0013】図1は、本実施形態に係る燃料電池車両の要部構成図である。燃料電池(FC)システム10が車両に搭載され、走行に必要な電力を駆動モータ12に供給する。駆動モータ12の出力軸は車輪14に接続される一方、プラネタリギヤ装置のキャリア16にも接続される。すなわち、駆動モータ12の動力は車輪14に伝達される一方、プラネタリギヤ装置にも伝達される。
【0014】プラネタリギヤ装置はキャリア16上のピニオンギヤ18、サンギヤ20及びリングギヤ24を含んで構成される。サンギヤ20、ピニオンギヤ18及びリングギヤ24は互いに噛合しており、サンギヤ20は中心軸回りに回転自在に軸支され、ピニオンギヤ18はサンギヤ20の回りを公転しながら自転できるように支持される。また、リングギヤ24はサンギヤ20と同一中心軸の回りに回転自在に軸支される。
【0015】プラネタリギヤ装置のピニオンギヤ18には上述したように駆動モータ12からの動力の一部が伝達されるが、図2の詳細図に示されるように、プラネタリギヤ装置のサンギヤ20には補機駆動源としてのポンプモータ22が接続される。また、プラネタリギヤ装置のリングギヤ24には燃料電池システム10に燃料ガスを供給するための補機ポンプ26が接続されており、ポンプモータ22は補機電池28からの電力で駆動される。
【0016】本実施形態において、ポンプモータ22を駆動することでサンギヤ20を駆動し、これによりピニオンギヤ18さらにはリングギヤ24を駆動して補機ポンプ26を作動させて補機動作を行うことが可能であるが、補機ポンプ26に要求されるパワーを得るために駆動源としてのポンプモータ22が大型化する問題がある。
【0017】そこで、本実施形態では、駆動モータ12の動力の一部をプラネタリギヤ装置のキャリア16に供給し、これによりポンプモータ22のトルクアシストを行ってポンプモータ22の負荷低減を図っている。
【0018】以下、本実施形態の動作について詳細に説明する。
【0019】補機ポンプ26は、概ね車速に応じた運転を行うので、車速を制御する駆動モータ12の出力軸とリンクさせておくことが可能となる。この事実が制御の前提となる。以下のように記号を定めることとする。
【0020】
【表1】

定常状態であると仮定すると、【数1】

【数2】

が成立する。
【0021】図3には、図2に示されたプラネタリギヤ装置の回転数制限図が示されている。図において、横軸Pは補機ポンプ(エアーポンプ)26の速度、縦軸Mtは駆動モータ(負荷モータ)12の速度である。図中斜線部分が、サンギヤ20を駆動するポンプモータ(エアーポンプ)22とピニオンギヤ18を駆動する駆動モータ(負荷モータ)12とリングギヤ24に接続される補機ポンプ26それぞれの動作範囲で規定される、プラネタリギヤ装置としての作動範囲である。
【0022】低常時のトルクの関係は、ギヤ比をρ=(サンギヤの歯数)/(リングギヤの歯数)とすると、【数3】

【数4】

となる。また、回転数の関係は、【数5】

となる。補機ポンプ26の駆動トルクは、ポンプ回転数に比例するとし、【数6】

とする。但し、τpは補機ポンプ26の負荷トルク(<0)、ωpは補機ポンプ26の回転数、αは比例係数(<0)とする。
【0023】今、ポンプモータ(エアーポンプ駆動モータ)22を駆動して補機ポンプ26を任意に駆動する場合を想定する。車速と必要なポンプパワーが与えられたとすると(図示しない制御装置で計算することができる)、駆動モータ12の角速度をωc1、ポンプパワーをPp1(Pp1<0)とすると、(6)式より【数7】

すなわち、【数8】

となる。したがって、【数9】

【数10】

となる。このとき、駆動モータ12、ポンプモータ22のトルクはそれぞれ(3)式、(4)式より【数11】

となる。さらに、これを用いると、【数12】

となり、それぞれのトルクが定まることになる。
【0024】一方、回転速度は、(5)式、(10)式より【数13】

となる。この式と、(12)式よりポンプモータ22のパワーを算出すると【数14】

となる。ポンプモータ22のパワーをPsとすると、【数15】

となる。
【0025】図4には、(15)式を用いて算出された、駆動モータ12の角速度とポンプモータ22のパワーの関係が補機ポンプ26のパワーをパラメータとして示されている。図において、横軸は駆動モータ12の角速度であり、縦軸はポンプモータ22のパワーである。ポンプモータ22のパワーは、切片−Pp1、傾き−(1+ρ)(αPp1)0.5の直線で与えられることになり、Pp1を変えることにより切片と傾きがともに変化することになる。駆動モータ12の角速度が0の場合(駆動モータ12によるトルクアシストを行わない場合と等価)とそうでない場合(例えば角速度が400rad/s)の場合とでは、同一ポンプパワーを得るのに必要なポンプモータパワーは異なり、駆動モータ12を駆動させた角速度400rad/sの方が少なくて済むことが分かる。
【0026】図4において、ρとαを調整することにより、図5のような特性を実現することが可能となる。図5では、図4よりも傾きが急峻となっており、駆動モータ12の角速度が0の場合とそうでない場合のポンプモータ22のパワー差異が顕著となる。このことは、駆動モータ12のトルクアシストにより、ポンプモータ22に要求されるパワーがより少なくて済むことを示している。なお、図5において、駆動モータ12の角速度に対する必要な補機ポンプ26のパワーをプロットすることで、ポンプモータ22の定格パワーを一義的に決定することができる。
【0027】具体的な制御としては、駆動モータ12には出力軸に必要なトルク(走行に必要なトルク)が与えられるから、このトルクに(11)式で定まるトルクを加算したものを駆動モータ12の目標トルクとして図示しない制御装置でトルク制御を行う一方、ポンプモータ22は、(13)式で定まる目標回転数となるようにトルク制御を行えばよい。
【0028】このように、本実施形態では、燃料電池システム10を駆動するために必要な補機ポンプ26のパワーに対し、ポンプモータ22のパワーを低減することができ、ポンプモータ22並びにインバータを小型化することができる。
【0029】また、駆動モータ12の動力の一部を補機系に伝達する際に、クラッチではなくプラネタリギヤ装置を用いているため、動力損失がほとんどなく、効率的に補機ポンプ26を駆動することができる。
【0030】なお、本実施形態において、駆動モータ12は十分なトルクを有しているため、補機駆動分だけ余分なトルクが必要となっても駆動モータ12本体あるいはインバータの容量増大はほとんど無視できる。
【0031】また、本実施形態では、燃料電池車両を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、動力源を駆動するための補機系を備える任意のシステムに適用することができる。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば補機駆動系を簡略でき、これによりコスト低減を図ることができる。
【0033】また、本発明においては、すべりを伴うクラッチを用いるのではなく、プラネタリギヤ装置を用いて動力を伝達しているため、効率良く補機系を駆動することができる。
【出願人】 【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成13年2月22日(2001.2.22)
【代理人】 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二 (外2名)
【公開番号】 特開2002−247701(P2002−247701A)
【公開日】 平成14年8月30日(2002.8.30)
【出願番号】 特願2001−46376(P2001−46376)