トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 制動回生エネルギの制御方法及び制御装置
【発明者】 【氏名】小川 豊

【要約】 【課題】電気2重層コンデンサに充電された回生エネルギを効率良く利用することができるようにした制動回生エネルギの制御方法及び制御装置を提供する。

【解決手段】車両の制動力を発電装置2により電気エネルギに変換し走行用モータ3の電源として保存する方法において、発電装置2からの電力を電気2重層コンデンサ4に充電する充電モードと、電気2重層コンデンサ4に充電された電力を車両停止時に蓄電池1へ充電する停止充電モードと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】車両の制動力を発電手段により電気エネルギに変換し走行用モータの電源として保存する方法において、発電手段からの電力を電気2重層コンデンサに充電する充電モードと、電気2重層コンデンサに充電された電力を車両停止時に蓄電池へ充電する停止充電モードと、を有する制動回生エネルギの制御方法。
【請求項2】車両の発進時及び初期加速状態において電気2重層コンデンサに充電されている電力を優先的に走行用モータに供給することを特徴とする請求項1記載の制動回生エネルギの制御方法。
【請求項3】蓄電池を備え、車両の制動力を発電手段により電気エネルギに変換し走行用モータの電源として保存する制御装置において、充電を制御する充電制御部を有し、この充電制御部には、発電手段と電気2重層コンデンサと蓄電池と走行用モータとが接続され、前記充電制御部は、発電手段からの起電力を電気2重層コンデンサに蓄積し、車両停止時に電気2重層コンデンサから蓄電池へ充電するとともに、発進及び初期走行時においては電気2重層コンデンサに蓄積された電力を優先的に走行用モータに供給することを特徴とする制動回生エネルギの制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両における制動回生エネルギの制御方法と制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、省エネルギーの機運の高まりによって自動車の燃費改善が要請されている。しかし、内燃機関の燃費改善には限界があり、またハイブリッド自動車や電気自動車でもエネルギ変換効率には限界がある。
【0003】そこで、自動車においても地下鉄のような制動回生エネルギの利用が提案されている。例えば、ハイブリッド車のエネルギ回生装置として、発電兼用のモータ(走行用モータ)から発生する制動時の電力(回生エネルギ)を電気2重層コンデンサに充電し、充電された電力をリチウム電池(モータ駆動用)に充電する装置が挙げられる。
【0004】電気2重層コンデンサを介在して充電する理由は、回生エネルギを直接モータ駆動用電池に充電する場合に問題を生ずるからである。すなわち、回生エネルギは制動に伴って発生するものであるため、比較的大電力短時間の発電エネルギであると考えられる。これをそのままモータ駆動用電池に充電しようとしても、モータ駆動用電池が受け入れ可能な電力には限界があり、大半が無駄になってしまう。これは現在のモータ駆動用電池が化学変化を基礎として電力の蓄積と放出をする原理になっているからである。
【0005】そこで、制動に伴い発生した電力を、化学変化を伴わず大電力の充電と放電とを極めて短時間で行うことができる電気2重層コンデンサに一旦充電し、これをモータ駆動用電池に充電することで能率的な電力回収を図るようにした装置が考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記した従来のものでは、電力回収効率という点ではさらなる改善の余地がある。
【0007】すなわち、回生エネルギを電気2重層コンデンサに充電した段階では高い能率が得られるものの、これをモータ駆動用電池に充電する段階では常に高い能率で充電できるとは限らないという問題がある。これは、通常走行中にはモータ駆動用電池が既に充電状態にあり(充電可能な時間あたり最大エネルギ吸収量が上限に達している)、電力の受容(充電)が困難であるからである。
【0008】本発明は前記事項に鑑みなされたものであり、電気2重層コンデンサに充電された回生エネルギを無駄なく利用することができるようにした制動回生エネルギの制御方法及び装置を提供することを技術的課題とする。
【0009】さらに、モータ駆動用電池への頻繁な充放電を抑制し、電池寿命の改善を図る制動回生エネルギの制御方法及び装置を提供することを技術的課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は制動回生エネルギの制御方法であり、前述した技術的課題を解決するために以下のような方法を採った。
【0011】すなわち、車両の制動力を発電手段2により電気エネルギに変換し走行用モータ3の電源として保存する方法において、発電手段2からの電力を電気2重層コンデンサ4に充電する充電モードと、電気2重層コンデンサ4に充電された電力を車両停止時に蓄電池1へ充電する停止充電モードと、を含んでいる。
【0012】車両の発進時及び初期加速状態等において電気2重層コンデンサ4に充電されている電力を優先的に走行用モータ3に供給することで、電力の有効利用が図られるとともに蓄電池1への無駄な充放電が抑制される。これは電気2重層コンデンサ4が急速で深い充放電にも強く、これに蓄積された電力を優先して消費することで蓄電池1に対してある種のバッファとして作動させることができるからである。
【0013】また本発明は、前記した方法を実施するために以下の装置を採用した。すなわち、蓄電池1を備え、車両の制動力を発電手段2により電気エネルギに変換し走行用モータ3の電源として保存する制御装置において、充電を制御する充電制御部5を有し、この充電制御部5には、発電手段2と電気2重層コンデンサ4と蓄電池1と走行用モータ3とが接続され、充電制御部5は、発電手段2からの起電力を電気2重層コンデンサ4に蓄積し、車両停止時に電気2重層コンデンサ4から蓄電池1へ充電するとともに、走行負荷が大きいときに電気2重層コンデンサ4から走行用モータ3へ電力を供給する。
【0014】ここで、走行負荷が大きいときとは具体的に発進時、加速時、登坂時であるが、主に発進時に電気2重層コンデンサ4の電力を使い切って加速を行う。その後、蓄電池1からの電源供給に切り替わり走行用モータ3への電源供給を継続する。
【0015】電気2重層コンデンサは、2枚の集電体を向かい合わせて設け、夫々の対向する面に活性炭電極層を形成し、夫々の活性炭電極層間を電解液で満たした構造となっている。
【0016】そして、2枚の集電体に電源(回生エネルギを発生する発電機)を接続すると活性炭電極は夫々電源の極性に帯電する。すると、電解液中の電子が正極側に集まり充電状態となる。この電気2重層コンデンサは電池として作用するが、蓄電に化学変化を伴わないため高速充放電が可能であり、その回数は数十万回以上の耐久性がある。
【0017】しかも電気二重層コンデンサは、(1)大電流の深い充放電(ディープサイクル)が可能なため、能率が極めて高い、(2)主材料が無害な炭素であり、有害な鉛やカドミウムを使用しないため環境への影響が少ない、(3)端子電圧が残容量を正確に反映するため電池残量の把握が容易である、(4)使用温度範囲は摂氏マイナス20度から70度と広い、という特徴がある。
【0018】電気二重層コンデンサの電池特性は現在のところ、体積エネルギ密度が6.5Wh/L、質量エネルギ密度が4.3wh/kgのものがあるが、日々向上している。
【0019】なお、電気2重層コンデンサは電解液の違いにより、水溶液系と有機溶液系の2つの形式がある。水溶液系は(a)イオン移動度が高く大電流充放電に適している、(b)大気中で安定している、(c)不燃性である、(d)製造コストが安い、等の特徴がある。
【0020】一方、有機溶液系は(A)耐電圧が高い、(B)小型で高エネルギー密度が得られる、(C)セルに金属を使用することができる、(D)使用温度範囲が広い、(E)抵抗率が高い、という特徴がある。
【0021】これらの特性を回生エネルギの回収用電池として考察すると、急激に立ち上がる回生エネルギを100%電気エネルギとして回収することができるという利点がある。
【0022】そして前記したように、この電気2重層コンデンサの電力を先に放電するため、リチウムやニッケルカドミウムなどの蓄電池(主電池)への頻繁な充放電が少なくなり主電池の寿命も伸びる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の制動回生エネルギの制御装置を図1〜図6に示される実施形態について更に詳細に説明する。なお、制御方法については装置の動作説明とともに説明する。
【0024】図1は装置のブロック図を示しており、本装置は電気自動車に搭載されている。蓄電池1は大容量のリチウム電池であり、充電制御部5に接続されている。充電制御部5はマイクロプロセッサ5a、I/O5b、RAM(random access memory)5c、ROM(read only memory)5d、電力制御ユニット5eから構成されている。
【0025】前記蓄電池1は電力制御ユニット5eに接続されている。この電力制御ユニット5eには発電装置(発電手段)2を備えた走行用モータ3、電気2重層コンデンサ4が接続されている。充電制御部5は、車速信号、アクセルペダル操作信号、電気2重層コンデンサ4と蓄電池1の夫々の電圧情報、並びに、発電装置2と走行用モータ3からの夫々の出力情報に基づいて、蓄電池1、電気2重層コンデンサ4、発電装置2を備えた走行用モータ3の接続関係をスイッチングするものである。
【0026】このスイッチングモードを図3〜図6により説明する。まず、車両の定常走行モードにおいては図3の矢示(電力の流れ)に示すように、蓄電池1から充電制御部5を介して、発電装置2を備えた走行用モータ3に電力が供給され、車輪7を回転させるようになっている。
【0027】ここで、ブレーキをかけると図4に示す回生制動モードとなり、発電装置2を備えた走行用モータ3から充電制御部5を介して、電気2重層コンデンサ4に充電される。
【0028】そして、車両が停止すると図5に示す停車充電モードとなり、電気2重層コンデンサ4から蓄電池1へ充電される。また、電気2重層コンデンサ4の電力を車両の発進に用いるモードが図6に示す発進走行モードである。このモードは、電気2重層コンデンサ4の電力を優先して使用するものである。
【0029】図2は、以上述べた各モードにおける電力収支を説明するためのタイムチャートである。図2において車両の発進時(A1)には蓄電池1は放電状態(C1)、走行用モータ3は駆動状態(B1)となっている。すなわち、走行用モータ3は、充電制御部5の制御により、蓄電池1からの電力によりモータを駆動して車輪を回転させて、車両を発進させる。なお、このとき、電気2重層コンデンサ4の蓄電量はないものとする。
【0030】車両走行中にブレーキをかけると(A2)、蓄電池1から走行用モータ3への電力供給が停止(C2)されると共に、発電装置2は発電を開始し(B2)、この発電された電力は電気2重層コンデンサ4に充電(D1)される。そして、車両の停止中(A3)に、電気2重層コンデンサ4の電力が蓄電池1に充電される(C3、D2)。このとき、蓄電池1の蓄電容量を越えて充電しきれない電気エネルギは、電気2重層コンデンサ4に充電されたままとなる。また、電気2重層コンデンサ4から蓄電池1への充電中に運転者が発進操作を行い、充電が中断されて電気2重層コンデンサ4に電気エネルギが残る場合もある。
【0031】次に車両が発進したとき(A4)、充電制御部5は、車両の発進時及び初期走行時においては、走行用モータ3を、電気2重層コンデンサ4の電力のみで駆動する(B3、D3)。
【0032】そして、電気2重層コンデンサ4の電力を使い切った場合は、蓄電池1からの電力に切り替えて(C4)、走行用モータ3を駆動する。また、アクセルペダル操作量に基づき充電制御部5にて判断された、運転者の要求する加速度あるいは走行速度に、電気2重層コンデンサ4の電力のみでは対応できなくなった場合にも、蓄電池1からの電力に切り替えて、走行用モータ3を駆動する。
【0033】走行中に再びブレーキ操作が行われると(A5)、走行用モータ3は停止すると共に発電装置2が発電し(B4)、電気2重層コンデンサ4に充電がなされる(D4)。
【0034】そして、車両走行に伴いこのようなサイクルを繰り返し、効率の良いエネルギ回生を行う。なお、車両停止時に電気2重層コンデンサ4から蓄電池1に充電するにあたって、蓄電池1の蓄電量にかかわらず、所定の電力を電気2重層コンデンサ4に残すようにしてもよい。電気2重層コンデンサ4に残す前記所定電力は、発進時及び初期走行時に必然的に使用する電力に基づき設定するとよい。
【0035】以上のように本実施形態にて説明した制動回生エネルギの制御方法及び制御装置によれば、エネルギ回生モードでは蓄電池1に充電しきれない回生エネルギを、時間当たりの充電能力が高い電気2重層コンデンサ4に充電するので、回生エネルギを無駄なく全量蓄積することが可能となる。
【0036】また、車両の発進及び初期走行時においては、電気2重層コンデンサ4からの電力により走行用モータ3を駆動するので、電気2重層コンデンサ4を優先して放電させるものである。このため、回生エネルギの発生前(発進後最初のブレーキ操作前)に、電気2重層コンデンサ4の充電残量を可能な限り少なくして、制動回生時の電気2重層コンデンサ4への充電容量を高めておくことができる。
【0037】この結果、必ずしも充電効率の良くない蓄電池1への充電頻度を少なくすることもでき、装置全体のエネルギ効率及び蓄電池1の寿命を向上させることができる。なお、本装置はハイブリッド型自動車に適用することもできる。
【0038】
【発明の効果】本発明によれば、車両停止時に、電気2重層コンデンサに充電された回生エネルギを蓄電池に充電するようにしたので、回生エネルギを無駄なく利用することができる。また、電気2重層コンデンサに充電された回生エネルギを車両の発進時等に利用するため、モータ駆動用電池への頻繁な充放電を抑制することができ、電池寿命の改善を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000145541
【氏名又は名称】株式会社曙ブレーキ中央技術研究所
【出願日】 平成13年2月6日(2001.2.6)
【代理人】 【識別番号】100089244
【弁理士】
【氏名又は名称】遠山 勉 (外2名)
【公開番号】 特開2002−238108(P2002−238108A)
【公開日】 平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願番号】 特願2001−29662(P2001−29662)