| 【発明の名称】 |
ハイブリッド式車両制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】冨川 三朗
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| 【要約】 |
【課題】エンジン駆動輪とモータ駆動輪とからなる4輪駆動車において、駆動力配分の切換時におけるエンジンの応答性による車両走行性の悪化を防止する。
【解決手段】エンジン駆動輪の目標駆動トルクtTrは、目標総駆動トルクtTに後輪駆動力配分率を乗じて算出する。モータ駆動輪の目標駆動トルクtTfは、エンジン駆動輪の目標駆動トルクtTrに基づいてその実際の駆動トルクeTrを推定し、この推定値eTrを目標総駆動トルクtTから減じることにより、算出する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】エンジン駆動輪を駆動するエンジンと、該エンジンから機械的に独立した非エンジン駆動輪を駆動する電気モータと、を含んで構成されるハイブリッド式車両制御装置であって、前記エンジン駆動輪及び前記非エンジン駆動輪の目標総駆動トルクを設定する目標総駆動トルク設定手段と、設定した目標総駆動トルクのうちエンジン駆動輪に発生すべき目標駆動トルクである目標エンジントルクを設定する目標エンジントルク設定手段と、目標エンジントルクが変化した場合に、前記目標総駆動トルクのうち非エンジン駆動輪に発生すべき配分率に応じた前記電気モータの目標駆動トルクの変化に対して、前記電気モータに対するトルク指令値を、遅れを持たせて設定するモータ指令値設定手段と、を備えることを特徴とするハイブリッド式車両制御装置。 【請求項2】前記モータ指令値設定手段は、変化後の目標エンジントルクに収束する過程におけるエンジン駆動輪の実際の駆動トルクである実エンジントルクを推定する実エンジントルク推定手段と、推定した実エンジントルクを前記目標総駆動トルクから減じる減算手段と、を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式車両制御装置。 【請求項3】前記実エンジントルク推定手段は、実エンジントルクを、前記エンジンの回転速度、吸気圧力及びスロットル開度のうち少なくとも1つに基づく遅れ時定数に基づいて推定することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド式車両制御装置。 【請求項4】前記モータ指令値設定手段は、加速要求時において、非加速時と比べて前記電気モータに対するトルク指令値を大きめに設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のハイブリッド式車両制御装置。 【請求項5】前記モータ指令値設定手段は、前記実エンジントルク推定手段が加速要求時において実エンジントルクを小さめに推定することにより、前記電気モータに対するトルク指令値を大きめに設定することを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド式車両制御装置。 【請求項6】前記エンジン駆動輪のスリップ時において、前記電気モータに対するトルク指令値を、非スリップ時と比べて小さな値に調整するモータ指令値調整手段を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のハイブリッド式車両制御装置。 【請求項7】前記モータ指令値調整手段は、前記スリップの発生を、エンジン駆動輪と非エンジン駆動輪との回転速度差に基づいて検出することを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド式車両制御装置。 【請求項8】前記モータ指令値設定手段は、非エンジン駆動輪のスリップ時において、設定した目標総駆動トルクのうち非エンジン駆動輪に発生すべき配分率に応じた前記電気モータの目標駆動トルクを、前記電気モータに対するトルク指令値とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のハイブリッド式車両制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、第1の車輪を回転させるエンジンと、該エンジンから機械的に独立した第2の車輪を回転させる電気モータと、を含んで構成されるハイブリッド式車両制御装置に関し、特に、第1及び第2の車輪の総駆動力に対してエンジンが負担すべき駆動トルクが変化した際における車両走行性の安定化に関する。 【0002】 【従来の技術】第1の車輪(例えば、後輪)及び第2の車輪(例えば、前輪)の双方を、ともにエンジンによって駆動する4輪駆動式の車両制御装置は、よく知られているところである。このような伝統的な4WDシステムでは、エンジンの駆動トルクが、多板クラッチ機構を含んで構成されるトランスファによって前後輪に配分されるので、この駆動トルクの配分率が変化しても、総駆動トルクは一定に保たれる。 【0003】近年、新たに、一方の車輪をエンジンにより回転させ、他方の車輪を電気モータにより回転させるハイブリッド式4WDシステムが提案されている(特開平8−300965号公報参照)。このものにあっては、前後両輪の間に物理的な結合が存在しないので、各駆動輪に対して伝達される駆動トルクを、総駆動トルクが一定となるように調整しなければならないという、走行上の新たな問題が提起される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ここで、エンジンは、電気モータと比較して、概して出力の面で有利ではあるものの応答性の面で不利があり、それに起因して次に述べるような数々の問題が生じる。例えば、スリップの発生などにより前輪及び後輪に対する駆動力配分が変更された(後輪に100%の駆動トルクを伝達させていた状態から、前後両輪に50%ずつの駆動トルクを伝達する状態に切り換える)場合を考える。ここで、駆動力配分に応じたそれぞれの目標駆動トルクに対して、エンジンと電気モータとを無関係に収束させたとすると、電気モータの駆動トルクは速やかに増大する一方で、エンジンの駆動トルクの減少には相当の時間を要するため、総駆動トルクが一時的に増大し、加速感が出てしまう。 【0005】また、駆動形態を4WD方式からエンジン駆動輪のみによる2WD方式に切り換える場合を考えると、電気モータの駆動トルクは速やかに消滅する一方で、エンジンの駆動トルクの上昇には相当の時間を要するため、総駆動トルクが一時的に減少し、失速感が出てしまう。このような実状に鑑み、本発明は、エンジンの応答性に合わせた電気モータのトルク制御により、以上のような駆動力配分の切換時における車両走行性の悪化を防止することができるハイブリッド式車両制御装置を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】このため、請求項1に記載の発明に係るハイブリッド式車両制御装置は、エンジン駆動輪を駆動するエンジンと、該エンジンから機械的に独立した非エンジン駆動輪を駆動する電気モータと、を含んで構成されるハイブリッド式車両制御装置であって、前記エンジン駆動輪及び前記非エンジン駆動輪の目標総駆動トルクを設定する目標総駆動トルク設定手段と、設定した目標総駆動トルクのうちエンジン駆動輪に発生すべき目標駆動トルクである目標エンジントルクを設定する目標エンジントルク設定手段と、目標エンジントルクが変化した場合に、前記目標総駆動トルクのうち非エンジン駆動輪に発生すべき配分率に応じた前記電気モータの目標駆動トルクの変化に対して、前記電気モータに対するトルク指令値を、遅れを持たせて設定するモータ指令値設定手段と、を備えることを特徴とする。 【0007】請求項2に記載の発明に係るハイブリッド式車両制御装置は、前記モータ指令値設定手段が、変化後の目標エンジントルクに収束する過程におけるエンジン駆動輪の実際の駆動トルクである実エンジントルクを推定する実エンジントルク推定手段と、推定した実エンジントルクを前記目標総駆動トルクから減じる減算手段と、を含んで構成されることを特徴とする。 【0008】請求項3に記載の発明に係るハイブリッド式車両制御装置は、前記実エンジントルク推定手段が、実エンジントルクを、前記エンジンの回転速度、吸気圧力及びスロットル開度のうち少なくとも1つに基づく遅れ時定数に基づいて推定することを特徴とする。請求項4に記載の発明に係るハイブリッド式車両制御装置は、前記モータ指令値設定手段が、加速要求時において、非加速時と比べて前記電気モータに対するトルク指令値を大きめに設定することを特徴とする。 【0009】請求項5に記載の発明に係るハイブリッド式車両制御装置は、前記モータ指令値設定手段が、前記実エンジントルク推定手段が加速要求時において実エンジントルクを小さめに推定することにより、前記電気モータに対するトルク指令値を大きめに設定することを特徴とする。請求項6に記載の発明に係るハイブリッド式車両制御装置は、前記エンジン駆動輪のスリップ時において、前記電気モータに対するトルク指令値を、非スリップ時と比べて小さな値に調整するモータ指令値調整手段を備えることを特徴とする。 【0010】請求項7に記載の発明に係るハイブリッド式車両制御装置は、前記モータ指令値調整手段が、前記スリップの発生を、エンジン駆動輪と非エンジン駆動輪との回転速度差に基づいて検出することを特徴とする。請求項8に記載の発明に係るハイブリッド式車両制御装置は、前記モータ指令値設定手段が、非エンジン駆動輪のスリップ時において、設定した目標総駆動トルクのうち非エンジン駆動輪に発生すべき配分率に応じた前記電気モータの目標駆動トルクを、前記電気モータに対するトルク指令値とすることを特徴とする。 【0011】 【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、スリップ時や4WD切換時などに駆動力配分を切り換える際に、電気モータに対するトルク指令値が、その目標駆動トルクの変化に対して遅れを持たせて設定されるように構成したので、応答遅れを含んで比較的緩やかに変化するエンジンの駆動トルクに合わせて電気モータの駆動トルクが発生されることとなり、加速感や失速感の発生を緩和ないしは防止することが可能となる。 【0012】請求項2に記載の発明によれば、電気モータのトルク指令値が目標総駆動トルクから実エンジントルクを減じることにより算出されるように構成したので、総駆動トルクを一定に保つことが可能となる。請求項3に記載の発明によれば、実エンジントルクを容易に推定することができる。 【0013】請求項4、5に記載の発明によれば、加速要求時において、比較的応答性の良い電気モータの出力要求が大きめとなるので、エンジンの駆動トルクが低めにばらついたとしても、減速感を緩和することができる。請求項6に記載の発明によれば、エンジン駆動輪のスリップ時に総駆動トルクが減少し、減速感が出るので、ドライバーにスリップの発生を認識させることができる。 【0014】請求項7に記載の発明によれば、スリップの発生を容易に検出することができる。請求項8に記載の発明によれば、非エンジン駆動輪のスリップ時には、電気モータの駆動トルクが、電気モータ本来の応答性で変化することとなるので、非エンジン駆動輪の駆動トルクを速やかに減少させることができ、スリップを早期に収めることができる。 【0015】 【発明の実施の形態】以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド式車両制御装置を備える車両の駆動伝達系構成の概略を示している。なお、進行方向は、図の左向きであり、向かって左側に前輪が、その逆の右側に後輪が位置している。 【0016】本車両では、エンジン1の出力側に、発電機としての機能を兼ね備える電気モータ(以下「モータジェネレータ」という。)2を直結し、さらに、エンジン1及びモータジェネレータ2に対して、トルクコンバータ3及び変速機4を接続している。そして、変速機4の出力側に接続された動力伝達軸(プロペラシャフト)5により、後輪側差動装置6を介してエンジン駆動輪(ここでは、後輪7,7)の車輪駆動軸8,8が駆動されるようにしている。 【0017】ここで、モータジェネレータ2は、エンジン1のアシスト装置として機能し、エンジン1の始動時又は車両の発進時には、エンジン1のクランキングを行う始動手段として用いられる。また、減速運転時には、モータジェネレータ2を発電機として機能させ、制動エネルギーを回生して発電を行い、バッテリの充電のために使用することが可能である。 【0018】一方、非エンジン駆動輪である前輪9,9に対しては、モータジェネレータ10が設けられており、その出力側に接続された動力伝達軸(比較的小型のプロペラシャフト)11及び前輪側差動装置12を介して、モータジェネレータ10により発生された駆動トルクが前輪(「モータ駆動輪」ともいう。)の車輪駆動軸13,13に伝達され、もって前輪側からも駆動力が得られるようにしている。 【0019】モータジェネレータ10は、その電力源を構成するバッテリ14に対してインバータ15bを介して接続されており、モータジェネレータ10から駆動トルクが得られている状態では、バッテリ14の放電電力がインバータ15によって三相交流電力に変換され、モータジェネレータ10に供給される。一方、モータジェネレータ2は、バッテリ14に対してインバータ15aを介して接続されており、モータジェネレータ2から駆動トルクが得られている状態では、バッテリ14の放電電力がインバータ15aによって三相交流電力に変換され、モータジェネレータ2に供給される。 【0020】ここで、後輪駆動軸8,8と前輪駆動軸13,13との間には物理的な結合がなく、すなわち、前後の駆動軸に対してそれぞれ無関係に駆動トルクを伝達することが可能であり、後輪駆動軸8,8へは、エンジン1及びモータジェネレータ2により、また、前輪駆動軸13,13へは、モータジェネレータ10により、それぞれ駆動トルクが伝達される。 【0021】そして、通常走行モードでは、後輪7,7のみを駆動輪としてFR方式により車両の駆動力を発生するが、ドライバーの選択などに基づいて4輪駆動状態とする場合には、前輪9,9に対してモータジェネレータ10の駆動トルクが伝達されることにより前後両方を駆動輪とし、4WD方式を成立させることが可能である。 【0022】次に、制御系について大まかに説明すると、エンジン1、モータジェネレータ2及び10の統合コントローラとしてのハイブリッドコントロールモジュール(以下「HCM」という。)21には、アクセル開度センサ41からアクセル開度APOが、車速センサ42から車速Vが、前後の各車輪9,9,7,7に対してそれぞれ取り付けられた車輪速センサ43〜46から前右輪回転数Nfr、前左輪回転数Nfl、後右輪回転数Nrr及び後左輪回転数Nrlが、エンジン1の回転速度センサ47からエンジン回転数NEが、エンジン1の吸気通路内に設置された圧力センサ48から吸気圧力Piが、エンジン1のスロットル開度センサ49からスロットル開度TVOが、モータジェネレータ10の回転速度センサ50からモータ回転数NMが入力される。また、車室内に設けられた4WD切換スイッチ61から走行モード切換信号が入力される。 【0023】HCM21は、これらの情報を含む各種運転条件に基づいて、エンジンコントロールモジュール(以下「ECM」という。)31、モータジェネレータ2及び10の各制御装置(モータコントローラ、以下「M/C」という。)32及び33に対して、通信ライン71を介して制御指令を発生する。なお、本発明に係る目標総駆動トルク設定手段、目標エンジントルク設定手段、モータ指令値設定手段(実エンジントルク推定手段及び減算手段を含む。)及びモータ指令値調整手段は、HCM21が備えている。各手段の詳細については、後述する。 【0024】次に、HCM21が4輪駆動走行時に行う制御内容について、図2及び3に示すブロック図を参照して説明する。図2は、本制御の全体的な構成を示したものである。同図を参照して説明すると、HCM21は、まず、アクセル開度APOに基づいて、ドライバーが意図する車両の駆動力を発生するための目標総駆動トルクtTを算出する。なお、総駆動トルクとは、エンジン1、モータジェネレータ2及び10の全ての動力源から得られる駆動トルクの和に相当する。 【0025】そして、車速V、平均後輪回転速度Nr及び平均前輪回転速度Nfに基づいて、ドライバーが意図する車両の駆動力のうち、後輪7,7、すなわちエンジン駆動輪が負担すべき比率である後輪駆動力配分率を設定し、算出した目標総駆動トルクtTとの積により、目標後輪駆動トルク(本発明に係る「目標エンジントルク」に相当する。)tTrを算出する。 【0026】HCM21は、この目標後輪駆動トルクtTrをギヤ比Rgr及びトルクコンバータ3のトルク比Rtcで除し、その結果得られるトルク値に基づいて、トルク指令値設定部101において、エンジン1の制御指令であるエンジントルク指令値tTeと、モータジェネレータ2の制御指令であるモータトルク指令値tTm1とを設定するとともに、これらの指令値を、ECM31及びM/C32にそれぞれ出力する。 【0027】HCM21は、また、実後輪駆動トルク推定部102において、エンジントルク指令値tTe及びモータトルク指令値tTm1に基づいて後輪駆動軸8,8に実際に伝達される実後輪駆動トルク(本発明に係る「実エンジントルク」に相当する。)eTrを、目標後輪駆動トルクtTrに基づいて推定する。そして、前輪スリップ判定部103により前輪9,9がスリップしていないと判定されたことを条件として、この推定値eTrを減算部104に入力し、これを目標総駆動トルクtTから減ずることにより、目標前輪駆動トルクtTfを算出する。一方、前輪9,9がスリップしていると判定された場合には、減算部104へは、目標後輪駆動トルクtTrが入力される。 【0028】目標前輪駆動トルクtTfは、リミット処理部105に入力され、モータ回転数NMに基づいて推定されるモータジェネレータ10の出力限界(以下「モータトルク上限値」という。)LTMを超える目標前輪駆動トルクtTfが入力された場合には、リミット処理により、その上限値LTMを超える目標前輪駆動トルクtTfの出力を回避する。 【0029】リミット処理部105を経た目標前輪駆動トルクtTfは、モータ出力調整部106に入力される。ここで、後輪7,7がスリップしている場合には、モータ出力調整部106において、目標前輪駆動トルクtTfにスリップの度合いに応じた所定のゲインGb1(0<Gb1<1)を乗じることにより、M/C33に対して、非スリップ時と比べて小さなモータトルク指令値tTm2が出力されるようにする。 【0030】次に、図3を参照して、実後輪駆動トルク推定部102の構成を詳細に説明する。実後輪駆動トルク推定部102は、目標後輪駆動トルクtTrが入力されると加速判定を行い、その結果、ドライバーから所定のレベルを超える加速要求が出されていないと判定した場合には、その目標後輪駆動トルクtTrを、遅れ処理部201に入力する。 【0031】一方、この加速判定において、ドライバーから所定のレベルを超える加速要求が出されていると判定された場合には、推定値調整部202において目標後輪駆動トルクtTrに所定のゲインGa1(0<Ga1<1)を乗じたものを、遅れ処理部201に入力する。遅れ処理部201には、エンジン回転数NE、吸気圧力Pi及びスロットル開度TVOが入力され、遅れ処理部201は、これらの入力情報に基づいて目標後輪駆動トルクtTr又はこれにゲインGa1を乗じて得られたトルク値に遅れを持たせることにより、実後輪駆動トルクeTrを推定する。 【0032】以上の制御内容をより明確に理解するために、次に、図4〜7に示すフローチャートに基づいて説明する。ステップ(以下、単に「S」と表記する。)1では、運転状態検出パラメータとして、アクセル開度APO、車速V、前右輪回転数Nfr、前左輪回転数Nfl、後右輪回転数Nrr及び後左輪回転数Nrlを読み込む。 【0033】S2では、アクセル開度APOを基に、マップを参照して目標総駆動トルクtTを算出する。なお、S2は、目標総駆動トルク設定手段に相当する。S3では、車速Vに応じた後輪駆動力配分率Aを、図のように車速Vの増大に伴って増加する傾向を示すマップを参照して算出する。ここで、後輪駆動力配分率Aは、燃料消費や、車速Vに応じた最大トラクションを考慮したものとし、例えば、車速Vがほぼ0のときに50%となり、車速Vの増大とともに駆動力が後輪7,7側に徐々にシフトされ、最終的に高速運転時において100%まで増加するように設定するとよい。 【0034】S4では、後前輪回転速度差ΔNrに応じた後輪駆動力配分率Bを、マップを参照して算出する。ここでは、後前輪回転速度差ΔNrとして、後輪7,7の平均回転速度Nr(=(Nrr+Nrl)/2)と、前輪9,9の平均回転速度Nf(=Nfr+Nfl)/2)との差Nr−Nfを求め、参照するマップは、後輪駆動力配分率Bがこの差Nr−Nfの増加に伴って減少する傾向を有している。 【0035】また、後輪駆動力配分率Bは、後輪7,7のスリップ量が大きくなるほど駆動力が前後両輪からより均一に得られるように、例えば、後前輪回転速度差ΔNrがほぼ0のときに100%となり、後前輪回転速度差ΔNrの増加とともに駆動力が前輪9,9側に徐々にシフトされ、最終的に50%まで減少するように設定するとよい。 【0036】S5では、後輪駆動力配分率Aが後輪駆動力配分率Bより大きいか否かを判定し、AがBより大きい(A>B)と判定された場合には、S6へ進み、それ以外の場合には、S7へ進む。S6では、目標後輪駆動トルクtTrを、目標総駆動トルクtTに後輪駆動力配分率Bを乗じることにより算出する(tTr=tT×B)。後輪駆動力配分率Aを下回る後輪駆動力配分率Bの算出は、換言すれば、後前輪回転速度差ΔNrが増加し、許容しがたいスリップが発生していることを示すので、たとえ高速走行中であっても、後輪駆動力配分率を低く設定することにより駆動力を前後輪に配分し、スリップの抑制に努めるのである。 【0037】S7では、目標後輪駆動トルクtTrを、目標総駆動トルクtTに後輪駆動力配分率Aを乗じることにより算出し(tTr=tT×A)、効率的な燃料消費を優先させる。なお、S3〜7は、目標エンジントルク設定手段を構成する。図5に示すフローチャートに移り、S11では、運転状態検出パラメータとして、エンジン回転数NE、吸気圧力Pi、スロットル開度TVO及びモータ回転数NMを読み込む。 【0038】S12では、前輪スリップ判定として、平均前輪回転速度Nfと平均後輪回転速度Nrとの差Nf−Nrが所定の許容限界としての閾値SNfより大きいか否かを判定する。その結果、この差Nf−Nrが閾値SNfより大きいと判定した場合には、前輪9,9がスリップしているものと判断して、S13ヘ進む。それ以外の場合、すなわち、差Nf−Nrが閾値SNf以下であると判定した場合には、前輪9,9はスリップしていないものと判断して、S14へ進む。 【0039】S13では、目標後輪駆動トルクtTrを減算部104への入力値Aに設定する。一方、S14では、アクセル開度APOに基づいて、ドライバーから所定のレベルを超える加速要求が出されているか否かを判定する。ここで、アクセル開度APOが所定値θより大きい場合には、この加速要求が出されているものと判断して、S15ヘ進む。それ以外の場合には、ドライバーからそのような加速要求は出されていないものと判断して、S16へ進む。 【0040】S15では、目標後輪駆動トルクtTrに所定のゲインGa1を乗じる。かかる処理の結果として、加速要求時において、減算部104へは、実後輪駆動トルクeTrが比較的小さな値として入力されることとなるので、減算部104から出力される目標前輪駆動トルクtTfは、比較的大きな値として算出される。従って、M/C33へは、比較的大きなモータトルク指令値tTm2が出力されることとなるので、実際のエンジン出力がエンジントルク指令値tTeに応じた出力より減少方向にばらついたとしても、この誤差による減速感の発生を緩和することができる。 【0041】なお、ドライバーから所定のレベルを超える加速要求が出されていない場合にそのままS16に進むことで、定常走行時などにおける飛び出し感の発生を防いでいる。S16では、エンジン回転数NE、吸気圧力Pi及びスロットル開度TVOに基づいて、エンジン1の出力応答の遅れ時定数Tsを算出する。この遅れ時定数Tsは、エンジン回転数NEが低いほど、吸気圧力Piが低い(吸気負圧が大きい)ほど、また、スロットル開度TVOが小さいほど、大きな値として算出される。 【0042】S17では、算出した遅れ時定数Tsに基づいて、目標後輪駆動トルクtTrの変化に対して遅れを持たせることにより、実後輪駆動トルクeTrを推定する。なお、かかる推定に際して、エンジン1のスロットル弁の機種や、その作動範囲に応じた遅れも考慮するとよい。なお、S16及び17は、実エンジントルク推定手段を構成する。 【0043】S18では、実後輪駆動トルクeTrを減算部104への入力値Aに設定する。図6に示すフローチャートに移り、S21では、入力値A(前輪9,9のスリップに応じて目標後輪駆動トルクtTr又は実後輪駆動トルクeTrが選択される。)を目標総駆動トルクtTから減ずることにより、目標前輪駆動トルクtTf(=tT−A)を算出する。なお、S21は、減算手段を構成する。 【0044】S22では、モータ回転数NMに基づいて、現在の運転状態におけるモータトルク上限値LTMを推定する。モータトルク上限値LTMは、モータジェネレータ10の高回転域において低下する傾向がある。また、モータトルク上限値LTMを推定するためのパラメータとして、モータ回転数NMの他、バッテリ14の容量やモータジェネレータ10の温度などを考慮するとよい。 【0045】S23では、目標前輪駆動トルクtTfがモータトルク上限値LTMより小さいか否か、すなわち、現段階において設定されているモータジェネレータ10の目標駆動トルクがモータジェネレータ10の出力限界に達していないか否かを判定する。この結果、目標前輪駆動トルクtTfがモータトルク上限値LTMより小さいと判定された場合には、モータジェネレータ10はその目標前輪駆動トルクtTfを発生させることが可能であるので、その目標前輪駆動トルクtTfを出力する。それ以外の場合には、S24に進み、モータトルク上限値LTMを目標前輪駆動トルクtTfとし、モータジェネレータ10の非効率的な運転を回避する。 【0046】なお、図5及び6に示すフローチャート全体、すなわちS11〜18及びS21〜24がモータ指令値設定手段を構成する。図7に示すフローチャートに移り、S31では、後輪スリップ判定として、平均後輪回転速度Nrと平均前輪回転速度Nfとの差Nr−Nfが所定の許容限界としての閾値SNrより大きいか否かを判定する。その結果、この差Nr−Nfが閾値SNrより大きいと判定された場合には、後輪7,7がスリップしているものと判断して、S32ヘ進む。それ以外の場合、すなわち、差Nr−Nfが閾値SNr以下であると判定された場合には、前輪7,7はスリップしていないものと判断して、S33ヘ進む。 【0047】S32へ進む場合には、S32において、目標前輪駆動トルクtTfにスリップ量に応じた所定のゲインGb1を乗じることによりモータトルク指令値tTm2を算出し、本ルーチンをリターンする。一方、S33へ進む場合には、目標前輪駆動トルクtTfをモータトルク指令値tTm2として、本ルーチンをリターンする。 【0048】かかる処理の結果として、後輪スリップ発生時において、前輪駆動トルクが減少して、車両の駆動力が減少するので、ドライバーに対して、失速感を与えてスリップの発生を認識させることができる。なお、図7に示すフローチャート全体(S31〜33)が、モータ指令値調整手段を構成する。 【0049】次に、本発明の効果について、図8を参照して説明する。同図は、後輪駆動力配分率が100%である2輪駆動状態から時刻t0において前後輪駆動力配分が切り換えられて、4輪駆動状態に移行する際における総駆動トルク、後輪駆動トルク及び前輪駆動トルクの変化を簡単に示したものである。 【0050】この図により、まず、スリップ発生時について説明する。例えば、後輪駆動力配分率を100%としての走行中に、スリップが発生したため時刻t0において駆動力配分切換指令が出て、後輪駆動力配分率が50%に切り換えられたとする。ここで、前輪駆動トルク及び後輪駆動トルクを、各目標駆動トルクに向けてそれぞれ無関係に制御したとすると、モータジェネレータ10の駆動トルクは速やかに上昇する(図の曲線C参照)一方で、後輪駆動トルクの減少にはエンジン1の応答性により相当の時間が必要であるので、エンジン1の駆動トルクがその目標値に収束するまでの間、総駆動トルクとして図の斜線部Ar1に示す駆動トルクが過剰に発生し、ドライバーに対して、意図しない加速感を与えることとなる。 【0051】また、スリップの解除により再び2輪駆動状態に戻るべく、後輪駆動力配分率を100%に切り換える場合も同様であり、この場合には、モータジェネレータ10の駆動トルクが速やかに消滅する(図の曲線C参照)一方で、エンジン1の駆動トルクの上昇には相当の時間が必要であるので、総駆動トルクとして図の斜線部Ar2に示す駆動トルクが不足し、ドライバーに対して、一時的な失速感を与えることとなる。 【0052】本発明によれば、モータジェネレータ10の駆動トルクの目標値への収束が、エンジン1の応答性に合わせてなされるので、前輪駆動トルクを後輪駆動トルクの変化に合わせて変化させ、上記の総駆動トルクの一時的な過不足を防ぐことができる。このことは、2WD走行から4WD切換スイッチ61をオンすることにより4WD走行に以降する際においても全く同様である。 【0053】例えば、後輪駆動力配分率を100%としての走行中に、時刻t0において4WD切換スイッチ61がオンされ、後輪駆動力配分率が50%に切り換えられた場合に、エンジン1の応答性に合わせてモータジェネレータ10の駆動トルクが上昇するので、総駆動トルクを一定に保つことができる。従って、本発明によれば、エンジン1とモータジェネレータ10とにより夫々別々の車輪を駆動する形態の4輪駆動車において、スリップ発生時や4WD切換時に、ドライバーの意図しない総駆動力の過不足を可及的に排除し、車両の走行安定性を向上することができる。 【0054】また、前輪スリップ発生時には、前輪スリップ判定部103(フローチャートでは、S12及び13)の機能により、モータジェネレータ10の駆動トルクがその本来の応答性で変化するので、スリップを早期に収めることができる。なお、以上の説明では、加速要求時においてモータジェネレータ10に対するトルク指令値を大きめに設定するため、実後輪駆動トルクeTrを小さめに推定する例を示したが、この方法に限らず、図9に示すように減算部104の出力側にモータ出力調整部301を設け、加速要求時に目標前輪駆動トルクtTfに所定のゲインGa2(1<Ga2)を乗じることによっても、モータトルク指令値tTm2を大きめに設定することができる。 【0055】また、後輪7,7のスリップ時においてモータジェネレータ10に対するトルク指令値を小さめに設定するための制御は、モータ出力調整部106によるばかりでなく、図10に示す推定値調整部401において、実後輪駆動トルク推定部102の出力に、スリップの度合いに応じたゲインGb2(1<Gb2)を乗じることによっても可能である。これにより、減算部104に大きめの実後輪駆動トルクeTrが入力されるので、目標前輪駆動トルクtTfが比較的小さな値として算出され、ドライバーに対して減速感を与えることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年2月5日(2001.2.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100078330 【弁理士】 【氏名又は名称】笹島 富二雄
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| 【公開番号】 |
特開2002−233006(P2002−233006A) |
| 【公開日】 |
平成14年8月16日(2002.8.16) |
| 【出願番号】 |
特願2001−28820(P2001−28820) |
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