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【発明の名称】 制動回生装置
【発明者】 【氏名】小川 豊

【要約】 【課題】ブレーキ力を有効に回生することができるようにした制動回生装置を提供する。

【解決手段】エンジン1で後輪2を駆動する方式の車両において、発電兼用の駆動モータ3を設けて前輪4を駆動せしめ、この駆動モータ3に電力制御部5を介してバッテリ6を接続し、この電力制御部5はエンジン1の高負荷状態を検出して駆動モータ3に電力を供給するよう構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】エンジンで後輪を駆動する方式の車両において、発電兼用の駆動モータを設けて前輪を駆動せしめ、この駆動モータに電力制御部を介してバッテリを接続し、この電力制御部はエンジンの高負荷状態を検出して駆動モータに電力を供給するよう構成されていることを特徴とする制動回生装置。
【請求項2】エンジンで後輪を駆動する方式の車両において、発電兼用の駆動モータを設けて前輪を駆動せしめ、この駆動モータに電力制御部を介してバッテリを接続し、各車輪の回転数を検出するとともに電力制御部に信号を出力する回転数センサを設け、各車輪のブレーキを制御するブレーキ制御部を設け、前記電力制御部はエンジンの高負荷状態及び後輪のスリップを検出して駆動モータに電力を供給するとともに、ブレーキ制御部を制御して車輪のスリップを抑制するよう構成されていることを特徴とする制動回生装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は制動回生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、省エネルギーと環境保護の要請から従来の内燃機関に代わる動力の開発が急がれている。そのような中で内燃機関とモータを併用した、いわゆるハイブリッド車が実用性の点で注目されている。
【0003】また、更なる能率向上のためブレーキ力を回収して走行エネルギに変換する回生エネルギシステムが実用化されている。これはブレーキ力をモータ発電力として吸収させ、この電力をバッテリに充電することで再加速のためのエネルギ源とするものである。
【0004】また、図4に示すように、運動エネルギを圧力として回収するようにしたものがある。これは、FF(フロントエンジンフロントドライブ)方式の車両に適用したものであり、後輪側に圧力モータを利用した駆動装置を設けたものである。
【0005】すなわち、前輪80はエンジン81に接続され、一方、後輪82は油圧ポンプモータ83に接続されている。油圧ポンプモータ83は電磁切替弁84を介してアキュムレータ85に接続されている。後輪はアキュムレータ85に蓄圧された作動油が油圧ポンプモータ83に供給され、後輪82が駆動されるようになっている。
【0006】これによりブレーキ時に蓄積したエネルギを発進の際に使用することができ、エネルギの有効利用を図ることができるものとなっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記した図4に示す装置では、常時はFFで走行し、後輪側でエネルギ回生と駆動アシストとを行うようになっているため下記のような問題がある。
【0008】すなわち、自動車の制動に際しては、ブレーキ力の60%から80%を前輪で負担し、残りを後輪で負担することが知られている。そして、従来の方式では後輪側で制動回生が行われるため、ミラーバーン状態のように路面との摩擦係数が極端に低い場合にあっては後輪のスリップを生ずるか、あるいは、ほとんど回生がなされない程度の低い負荷(制動力)を車輪に与えることができるに過ぎない。
【0009】本発明は前記事項に鑑みなされたものであり、ブレーキ力を有効に回生することができるようにした制動回生装置を提供することを技術的課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は制動回生装置であり、前述した技術的課題を解決するために以下のように構成されている。
【0011】すなわち、エンジン1で後輪2を駆動する方式の車両において、発電兼用の駆動モータ3を設けて前輪4を駆動せしめ、この駆動モータ3に電力制御部5を介してバッテリ6を接続し、この電力制御部5はエンジン1の高負荷状態を検出して駆動モータ3に電力を供給するよう構成されている。
【0012】バッテリ6としてはリチウム、ニッケル水素、ニッケルカドミウム等の2次電池が適する。また、このような2次電池は化学変化により充放電が行われるため、急速な大電流充電や深い放電には適さない。そこで、補助充電地として電気2重層コンデンサを併用してもよい。
【0013】電気2重層コンデンサは、2枚の集電体を向かい合わせて設け、夫々の対向する面に活性炭電極層を形成し、夫々の活性炭電極層間を電解液で満たした構造となっている。
【0014】そして、2枚の集電体に電源(回生エネルギを発生する発電機)を接続すると活性炭電極は夫々電源の極性に帯電する。すると、電解液中の電子が正極側に集まり充電状態となる。この電気2重層コンデンサは電池として作用するが、蓄電に化学変化を伴わないため高速充放電が可能で、その回数は数十万回以上の耐久性がある。
【0015】しかも大電流の深い充放電(ディープサイクル)が可能なため能率が極めて高い。さらに主材料が無害な炭素であり、有害な鉛やカドミウムを使用しないため環境への影響が少ない。また、端子電圧が残容量を正確に反映するため電池残量の把握が容易である。使用温度範囲は−20度から70度と広い。という特徴がある。
【0016】電池特性は現在のところ、体積エネルギ密度が6.5Wh/L、質量エネルギ密度が4.3wh/kgのものがあるが、日々向上している。なお、電気2重層コンデンサは電解液の違いにより、水溶液系と有機溶液系の2つの形式がある。
【0017】水溶液系は(1)イオン移動度が高く大電流充放電に適している、(2)大気中で安定している、(3)不燃性である、(4)製造コストが安い、等の特徴がある。
【0018】一方、有機溶液系は(1)耐電圧が高い、(2)小型で高エネルギー密度が得られる、(3)セルに金属を使用することができる、(4)使用温度範囲が広い、(5)抵抗率が高い、という特徴がある。
【0019】これらの特性を回生エネルギの回収用電池として考察すると、急激に立ち上がる回生エネルギを100%電気エネルギとして回収することができるという利点がある。
【0020】そして前記したように、この電力を先に放電すれば、リチウムやニッケルカドミウムなどのバッテリ(主電池)への頻繁な充放電が少なくなりバッテリの寿命も伸びる。
【0021】ここで、エンジン1の負荷が大きいときとは具体的に、発進時、加速時、登坂時等であるが、主に発進時に電気2重層コンデンサの電力を使い切って加速のアシストを行う。その後、バッテリ6からの電源供給に切り替わり走行用モータへの電源供給を継続する。
【0022】バッテリ6への充電は定常走行とブレーキ回生時になされるが、ブレーキ回生時の最大発生電流は車輪と路面との摩擦係数に依存しており、車輪がスリップしては充電することができないばかりか危険ですらある。本発明では制動時に路面とのスリップ限界が大幅に向上する前輪でブレーキ回生が行われるため、スリップの可能性はほとんどなく極めて能率的な回生(発電)が可能となる。
【0023】また、第2の構成として、エンジン1で後輪2を駆動する方式の車両において、発電兼用の駆動モータ3を設けて前輪4を駆動せしめ、この駆動モータ3に電力制御部5を介してバッテリ6を接続し、各車輪の回転数を検出するとともに電力制御部5に信号を出力する回転数センサ7を設け、各車輪のブレーキ8を制御するブレーキ制御部9を設け、前記電力制御部5はエンジン1の高負荷状態及び後輪2のスリップを検出して駆動モータ3に電力を供給するとともに、ブレーキ制御部9を制御して車輪のスリップを抑制するよう構成した。
【0024】このような構成としたことでアイスバーンでの発進のように駆動輪がスリップした場合には直ちに前輪も駆動力を発揮し、4輪駆動車としての走破性が得られる。
【0025】このため、フルタイム4輪駆動車(ビスカスカップリング等で前輪と後輪を連結した常時4輪駆動車)よりも優れた軽快感と優れた燃費が得られる。さらに、電力による駆動アシストであるため、長時間の駆動力が得られ、圧力を利用したものに比較してより実際の4輪駆動車に近い走行性能が得られる。すなわち、発進時ばかりでなく、例えば高速道路での横風などのような不安定要素にも4輪駆動として対応することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の制動回生装置を図1〜図3に示される実施形態について更に詳細に説明する。
【0027】図1はブロック図を示し、エンジン1は車体の後部に設置されており、トランスミッション(トルクコンバータ)を介して後輪2を駆動するようになっている。後輪2にはブレーキ8と車輪の回転数を計測する回転数センサ7が設けられている。
【0028】一方、車両の前輪4はデファレンシャルギア10、電磁クラッチ3aを介して発電兼用の駆動モータ3に接続されている。駆動モータ3には電力制御部5を介してバッテリ6と電気2重層コンデンサ6aが接続されている。
【0029】また、前輪4、4にも回転数センサ7とブレーキ8が設けられている。電力制御部5はマイクロプロセッサ5aにより制御されており、充放電の最適化が図られている。マイクロプロセッサ5aは、I/O5bから入力される各種情報に基づいて演算を行うようになっている。
【0030】I/O5bにはブレーキ強度、アクセル開度、吸入負圧、バッテリ電圧、電気2重層コンデンサ電圧、シフト情報(ギア位置情報)等が入力されるようになっている。
【0031】各車輪に設けられた回転数センサ7は、アンチロックブレーキ制御のためのものであり、路面摩擦係数の低下などにより車輪がロックあるいはロックしそうになった場合、当該車輪のブレーキ力を解除してグリップを回復させるものである。このようなアンチロックブレーキ制御を行うためにブレーキ制御部9が設けられている。
【0032】前記電力制御部5の基本的な動作としては、エンジン1の高負荷状態及び後輪2のスリップを検出して駆動モータ3に電力を供給するものであり、これを図2により説明すると、車速がA1で加速状態にあるとき、マイクロプロセッサ5aはアクセル開度等からこれを検知し、駆動モータ3に電力を供給して加速のアシストを行う(C1)。そして、定常状態(定速走行状態、A2)ではアシストを停止する。
【0033】そして、ブレーキが踏まれて車速が落ちる(A3)と同時に駆動モータ3が発電機として作用(回生)しバッテリ6への充電がなされる(C2)。ここで停車状態にある車両を急加速状態(A4)にすると、後輪2がスリップを起こす。すると、前輪と後輪とで回転速度の差が生ずる(B1)ため回転数センサ7からの情報によりマイクロプロセッサ5aが強力なアシストが必要と判断し、通常加速よりも大きな電流(C3)を駆動モータ3に供給する。
【0034】続いて、減速(A5)を行うと駆動モータ3が発電機として作用しバッテリ6(あるいは電気2重層コンデンサ6a)への充電がなされる(C4)。なお、このとき制動力が車輪と路面との摩擦を上回った場合はスリップを生ずるため、前記したアンチロックブレーキ制御がなされる。
【0035】これを図3に示すフローチャートで説明すると、ステップ100において車両が発進状態にあるか否かが判別され、肯定枝のみ次ステップ101に移行し、アクセル開度に見合った出力で駆動モータ3が作動する。
【0036】ここでブレーキがかかると(ステップ102)、肯定枝はステップ103ヘ移行し駆動モータ3が発電機として作用してエネルギの回収がなされる。一方、ステップ102の否定枝は後輪2が空転しているか否かが判別されるステップ104に移行する。ステップ104の肯定枝では駆動モータ3に大電流を供給してアシストを行う。後輪2が空転していない場合(ステップ104の否定枝)はステップ105で定常走行がなされる。
【0037】なお、前記した電磁クラッチ3aは駆動モータ3が駆動または回生状態にあるときだけ、駆動モータ3を駆動系に接続するものである。駆動モータ3が常時接続されていると騒音等の点で不利であるが、必ずしも動力が切断できる構造になっていなくてもよい。
【0038】なお、電気2重層コンデンサ6aは短時間大容量での充放電に適しているため、回生エネルギをすべて電気2重層コンデンサ6aに充電しておき、この電力を車両の発進時に優先的に使用することで、バッテリ6への無駄な充放電がなくなりさらに能率を向上させることができる。
【0039】また、アンチロックブレーキ制御は必ずしも4輪独立(4チャンネル)である必要はなく、前輪2チャンネル、後輪1チャンネルの合計3チャンネルにしてもよい。また、前輪4の駆動は駆動モータ3によって行うものであるため、加速時のアンチスリップ制御も容易である。すなわち、前輪4がスリップを起こした場合、駆動モータ3への電力供給を制御するだけでスリップ状態を解消することができる。
【0040】さらに、一般のフルタイム4輪駆動車では、前後いずれかの車輪、例えば後輪がエンジンと直結され、残りの前輪はビスカスカップリングなどのスリップ許容デバイスを介して接続されている。このことは前輪の回転トルクは後輪のそれを上回ることはないことを示しており、操縦性に様々な影響を与えている。
【0041】本発明では前輪側が電動で駆動されるため、そのトルクスプリットが任意であり、操縦性という観点から幅広い設定が可能となる。また、前後の車輪で駆動源が全く独立しているため、交差点や踏切内で何らかのエンジントラブルが発生した場合でも電動で安全な場所まで自走することができ安全性にも優れている。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、発電兼用の駆動モータを設けて前輪を駆動せしめ、この駆動モータに電力制御部を介してバッテリを接続し、この電力制御部はエンジンの高負荷状態を検出して駆動モータに電力を供給するよう構成したので、通常は後輪駆動で走行し、発進時やエンジン負荷が高いときにだけ前輪のアシストを行うことができる。
【0043】また、エネルギの回生は前輪側で行えるので発電可能な電力を高く設定することができ、ブレーキ力を有効に回生することができる。
【出願人】 【識別番号】000145541
【氏名又は名称】株式会社曙ブレーキ中央技術研究所
【出願日】 平成13年1月16日(2001.1.16)
【代理人】 【識別番号】100089244
【弁理士】
【氏名又は名称】遠山 勉 (外2名)
【公開番号】 特開2002−218601(P2002−218601A)
【公開日】 平成14年8月2日(2002.8.2)
【出願番号】 特願2001−7590(P2001−7590)