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【発明の名称】 モノレールの保守管理システム
【発明者】 【氏名】関谷 武利

【氏名】竪谷 裕貴

【氏名】高井 英夫

【要約】 【課題】小規模のローカル鉄道やモノレールの運営会社の鉄道車両の保守に関して、スケールメリツトをもたらすことのできる保守管理システムを提供する。

【解決手段】鉄道事業者が運行管理する鉄道車両についての保守管理を前記鉄道事業者から委託された保守管理業者が行うための保守管理システムであって、前記鉄道事業者は、複数の鉄道事業者からなり、前記各鉄道事業者、保守管理業者、及び関連する製造会社もしくは保守会社を相互に接続する通信ネットワークと、前記各鉄道事業者が運行する鉄道車両の走行記録及び該鉄道車両の搭載機器の動作情報を前記通信ネットワーク上にアップする手段と、前記保守管理業者の管理下にあって、前記動作情報を基に、前記鉄道車両の搭載機器の履歴を記録するとともに監視し、所定の保守基準に従って保守情報を生成して、前記通信ネットワーク上にアップするための保守管理装置とを備えた保守管理システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】鉄道事業者が運行管理する鉄道車両についての保守管理を前記鉄道事業者から委託された保守管理業者が行うための保守管理システムであって、前記鉄道事業者は、複数の鉄道事業者からなり、前記各鉄道事業者、保守管理業者、及び関連する製造会社もしくは保守会社を相互に接続する通信ネットワークと、前記各鉄道事業者が運行する鉄道車両の走行記録及び該鉄道車両の搭載機器の動作情報を前記通信ネットワーク上にアップする手段と、前記保守管理業者の管理下にあって、前記動作情報を基に、前記鉄道車両の搭載機器の履歴を記録するとともに監視し、所定の保守基準に従って保守情報を生成して、前記通信ネットワーク上にアップするための保守管理装置、とを備えたことを特徴とする鉄道車両の保守管理システム。
【請求項2】鉄道事業者が運行管理する鉄道車両についての保守管理を前記鉄道事業者から委託された保守管理業者が行うための保守管理システムであって、前記鉄道事業者は、複数の鉄道事業者からなり、前記各鉄道事業者、保守管理業者、及び関連する製造会社もしくは保守会社を相互に接続する通信ネットワークと、前記各鉄道事業者が運行する鉄道車両の走行記録及び該鉄道車両の搭載機器の動作情報を前記通信ネットワーク上にアップする手段と、前記保守管理業者の管理下にあって、前記動作情報を基に所定の保守基準に従って保守情報を生成する保守管理装置とを備え、該保守管理装置は、前記保守情報に従って前記製造会社もしくは保守会社に対して必要な部品発注または保守人員の手配指示を行う、ことを特徴とする鉄道車両の保守管理システム。
【請求項3】複数の鉄道事業者が運行管理する鉄道車両についての保守管理を前記鉄道事業者から委託された保守管理業者が行うための保守管理システムであって、通信ネットワークを介して前記各鉄道事業者が運行する鉄道車両の走行記録及び該鉄道車両の搭載機器の動作情報をモニタしたデータを基に、前記鉄道車両の搭載機器の履歴を記録するとともに監視する手段と、前記モニタしたデータを基に、所定の保守基準に従って保守情報を生成して、前記通信ネットワーク上にアップするための手段、とを含むことを特徴とする鉄道車両の保守管理システム。
【請求項4】請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記保守管理装置は、前記鉄道車両の各搭載機器の法定点検作業期限に基づく定期的な保守管理処理を行う法定保守管理プログラムと、前記鉄道車両のいずれかの搭載機器に異常がある時に臨時に保守管理処理を行う異常対策管理プログラムと、前記搭載機器の故障がある程度予測される時に保守管理処理を行う予防保全プログラムを含むことを特徴とする鉄道車両の保守管理システム。
【請求項5】請求項4において、前記保守管理装置は、前記異常対策管理プログラムの実行処理のために鉄道車両の特定条件の運転情報が必要であると判断した場合に、保守管理のための特定条件の運転を前記鉄道車両運営会社に依頼し前記保守管理装置は、前記運転により得られたデータに基づいて保守管理処理を行うことを特徴とする鉄道車両の保守管理システム。
【請求項6】請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記保守管理装置は、前記各鉄道事業者別の点検スケジュール、部品交換スケジュール、部品発注スケジュール及び保守要員派遣スケジュールを含む保守スケジュールデータベースを保有していることを特徴とする鉄道車両の保守管理システム。
【請求項7】請求項1ないし6のいずれかにおいて、前記保守管理装置は、前記設備の保守管理を行う少なくとも1つの保守管理プログラムと、アクセス権限を付与された前記鉄道事業者もしくは前記製造会社もしくは保守会社の端末からのアクセスにより前記保守管理プログラムを起動する制御部とを備えており、前記端末は、前記保守管理装置から要求のあったデータを前記保守管理装置に送信し、前記保守管理装置から結果を受け取ることを特徴とする鉄道車両の保守管理システム。
【請求項8】請求項6において、前記保守管理装置は、前記各鉄道事業者別に前記部品交換スケジュールを算出するための、各線路条件に基づく部品の消耗率のデータを備えていることを特徴とする鉄道車両の保守管理システム。
【請求項9】請求項6において、前記保守管理装置は、前記各鉄道事業者別に前記部品交換スケジュールを算出するための、各線路毎の乗客数による負荷率に基づく部品の消耗率のデータを備えていることを特徴とする鉄道車両の保守管理システム。
【請求項10】鉄道事業者が運行管理する鉄道車両についての保守管理を前記鉄道事業者から委託された保守管理業者が行うための鉄道車両の保守管理方法であって、前記鉄道事業者として、複数の鉄道車両運営会社を対象とし、前記各鉄道事業者が運行する鉄道車両の走行記録及び該鉄道車両の搭載機器の動作情報をモニタしたデータを前記通信ネットワーク上にアップし、前記保守管理業者の管理下にある保守管理装置により、前記モニタしたデータを基に、前記鉄道車両の搭載機器の履歴を記録するとともに監視し、所定の保守基準に従って保守情報を生成して、前記通信ネットワーク上にアップする、ことを特徴とする鉄道車両の保守管理方法。
【請求項11】請求項10において、前記保守情報に従って前記製造会社もしくは保守会社に対して必要な部品発注または保守人員の手配指示を行う、ことを特徴とする鉄道車両の保守管理方法。
【請求項12】請求項10または11において、前記各鉄道事業者別に各線路条件に基づく部品の消耗率のデータを用いて前記部品交換スケジュールを設定することを特徴とする鉄道車両の保守管理方法。
【請求項13】請求項10または11において、前記各鉄道事業者別に各線路毎の乗客数による負荷率に基づく部品の消耗率のデータを用いて前記部品交換スケジュールを設定することを特徴とする鉄道車両の保守管理方法。
【請求項14】請求項12または13において、前記部品交換スケジュールは、部品交換のための先行備期間を含めて決定されることを特徴とする鉄道車両の保守管理方法。
【請求項15】請求項10ないし14のいずれかにおいて、前記各鉄道事業者のいずれかの部品に関して発生した不具合に関する情報に基づき、同種の部品を採用している他の鉄道事業者の保守管理を行うことを特徴とする鉄道車両の保守管理方法。
【請求項16】請求項10において、鉄道車両がモノレールであり、該モノレールの各タイヤの外径の変化に基づき、タイヤの交換時期を判定することを特徴とする鉄道車両の保守管理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モノレールを含む鉄道車両の保守管理システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】公共の交通機関である鉄道車両やその搭載機器に関しては、安全性確保のために、鉄道車両を運行管理する者に対して厳格な法定点検作業が義務付けられている。
【0003】鉄道車両搭載機器の保守管理は、上記法定の点検作業に伴い定期的に交換する場合のほか、異常や故障があったときに修理あるいは交換する場合もある。しかし、異常や故障が発生してから保守をしていたのでは、鉄道車両の運行に支障を来すことになって適切でない。また、法定点検作業において各搭載機器を定期的に全て交換することは、使用可能なものまで交換するため無駄が生じ、コストが嵩むことになる。
【0004】これを解決する手段として、特開平8−251702号公報には、保守のため、搭載機器の動作履歴を記録するようにした鉄道車両搭載機器の管理装置であって、機器情報伝送手段と、モニタ部と、地上伝送手段と、地上設備とを備え、前記搭載機器の保守の対象に機器特定番号が付され、保守管理特性値の記録部が設けられ、前記機器情報伝送手段は、前記モニタ部と前記搭載機器との間の情報を媒介し、前記モニタ部は前記機器情報伝送手段からの情報を受け、管理する搭載機器の情報を整理して記録し、前記地上伝送手段は前記モニタ部に整理して記録された情報を前記地上設備に伝送し、前記地上設備は管理する搭載機器の履歴を記録するとともに監視し、保守基準に従って保守情報を発する鉄道車両搭載機器の管理装置が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記特開平8−251702号公報に記載のものも含めて、従来は、鉄道車両を運行管理する鉄道事業者が自ら自己の車両の搭載機器を常時きめ細かく監視し、保守基準に従って部品の交換時期を判断していた。モノレールに関しても同様に、各モノレール運営会社が自前で保守管理を行なっていた。
【0006】ところで、小規模のローカル鉄道やモノレールの運営会社は、運用する車両数が少ないため、鉄道車両の保守を行う場合に、人的にも物的(部品、設備、試験機)にもスケールメリットが出てこないと考えられる。すなわち、以下のようなことが予想される。
(1)通常、モニタされた保守管理特性値の詳細については、鉄道車両の運営会社以外には公表されない。これらの保守管理特性値の中には、故障しにくく保守し易い製品、部品に改良するために有効な情報も多く含まれていると考えられる。しかし、個々の車両メーカーや部品製造会社自体は直接保守を行わないので、製品、部品に関する保守情報の全てがフィードバックされるわけではなく、製品開発への保守情報の反映が必ずしも十分とは言えない。
(2)部品は各運営会社が各部品メーカーに個別に発注し購入しているので市場規模が小さく、各部品メーカーの生産対象となる部品の数量が少ない。一方で、安全性確保のために各部品には高い信頼性が要求される。そのため、部品の価格低減を図り難い環境にある。
(3)鉄道車両の各運営会社は独自に保守体制を組織しており個別に保守を行っているので、保守のノウハウが各会社個別のものとなる。小規模の鉄道事業者にとっては、運用する車両数が少ないため、保守のノウハウ蓄積の機会が乏しく、保守のノウハウが向上しにくい面がある。一方、保守に関して高度な専門知識を有する人や、高性能の診断機器を集めることに伴う、運営会社の経済的な負担は大きくなる。
【0007】本発明の目的は、小規模のローカル鉄道やモノレールの運営会社の鉄道車両の保守に関して、スケールメリットをもたらすことのできる保守管理システムを提供することにある。
【0008】本発明の他の目的は、小規模のローカル鉄道やモノレールの運営会社の鉄道車両の保守に関して、コストを低減しつつ信頼性の高い保守サービスを提供することのできる保守管理システムを提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は、小規模のローカル鉄道やモノレールの運営会社の鉄道車両の保守に関して、製品開発への保守情報の反映を図ることのできる保守管理システムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴は、鉄道事業者が運行管理する鉄道車両についての保守管理を前記鉄道事業者から委託された保守管理業者が行うための保守管理システムであって、前記鉄道事業者は、複数の鉄道事業者からなり、前記各鉄道事業者、保守管理業者、及び関連する製造会社もしくは保守会社を相互に接続する通信ネットワークと、前記各鉄道事業者が運行する鉄道車両の走行記録及び該鉄道車両の搭載機器の動作情報を前記通信ネットワーク上にアップする手段と、前記保守管理業者の管理下にあって、前記動作情報を基に、前記鉄道車両の搭載機器の履歴を記録するとともに監視し、所定の保守基準に従って保守情報を生成して、前記通信ネットワーク上にアップするための保守管理装置とを備えたことにある。
【0011】本発明の他の特徴は、保守管理装置が、前記保守情報に従って前記製造会社もしくは保守会社に対して必要な部品発注または保守人員の手配指示を行うことにある。
【0012】本発明の他の特徴は、前記保守管理装置が、前記各鉄道事業者別の点検スケジュール、部品交換スケジュール、部品発注スケジュール及び保守要員派遣スケジュールを含む保守スケジュールデータベースを保有していることにある。
【0013】本発明の他の特徴は、前記保守管理装置が、前記設備の保守管理を行う少なくとも1つの保守管理プログラムと、アクセス権限を付与された前記鉄道事業者もしくは前記製造会社もしくは保守会社の端末からのアクセスにより前記保守管理プログラムを起動する制御部とを備えており、前記端末は、前記保守管理装置から要求のあったデータを前記保守管理装置に送信し、前記保守管理装置から結果を受け取ることにある。
【0014】本発明の他の特徴は、前記各鉄道事業者別に各線路条件に基づく部品の消耗率のデータを用いて前記部品交換スケジュールを設定することにある。
【0015】本発明の他の特徴は、前記各鉄道事業者別に各線路毎の乗客数(あるいは乗車人員)による負荷率に基づく部品の消耗率のデータを用いて前記部品交換スケジュールを設定することにある。
【0016】本発明の他の特徴は、前記各鉄道事業者のいずれかの部品に関して発生した不具合に関する情報に基づき、同種の部品を採用している他の鉄道事業者の保守管理を行うことにある。
【0017】本発明によれば、通信ネットワークを介して接続された複数の鉄道事業者の鉄道車両の保守管理を保守管理業者が一括して行うため、小規模のローカル鉄道の運行管理者やモノレール運営会社の鉄道車両の保守に関して、鉄道事業者のみならず製造会社や保守会社にとってもスケールメリットのある保守管理システムを提供することができる。
【0018】また、保守管理業者の取得、生成した情報が各鉄道事業者及び関連する製造会社もしくは保守会社へ通信ネットワークを介して提供されるため、製品開発への保守情報の反映を図ることができる。さらに、小規模のローカル鉄道の運行管理者やモノレール運営会社の鉄道車両の保守に関して、機器の診断や車両の保守技術の質的向上を図ることができる。
【0019】また、複数の鉄道事業者の鉄道車両の保守管理を1つの保守管理業者が一括して行うため、小規模のローカル鉄道の運行管理者やモノレール運営会社の鉄道車両の保守に関して、コストを低減しつつ信頼性の高い保守サービスを提供することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の鉄道車両の保守管理システムを、モノレールの保守管理に適用した保守管理システムの全体構成を示すブロック図である。このシステムは、保守管理業者100が保守管理システム110を用いて、委託された鉄道事業社A300や鉄道事業社B、C(400)の各モノレールや関連設備の状況を監視し、鉄道事業社に代わって定期的あるいは異常発生時に、保守管理を実行するためのシステムである。保守管理業者100は、モノレールの製造メーカー或いはサービス会社、あるいは複数の鉄道事業社の中の1社等が考えられる。
【0021】保守管理業者100の保守管理システム110は、社内ネットワーク120を介して保守スケジュールデータベース140、実績データベース150及び在庫データベース160に接続されている。
【0022】保守管理業者100の保守管理システム110は、社内ネットワーク120、サーバーやファイヤーウォールシステムを備えたネットワーク接続装置130、インターネット200等の通信ネットワークを介して、複数の鉄道事業社A、B、C、−−、N、少なくとも1つの保守会社500(500〜500N)、車両メーカーや部品会社等の製造会社600(600〜600N)、及び決済を行うための少なくとも1つの金融機関700に接続されている。
【0023】なお、本発明の対象とする鉄道事業社A、B、C、−−、Nには、モノレールのみならず、狭義の鉄道や路面電車、ケーブルカー等、走行用の専用軌道を有する広義の鉄道事業を含めることができる。以下の実施例ではモノレールを対象にして説明するが、広義の鉄道事業を含める場合、保守管理システムやデータベースの構成内容を、管理対象に応じて適宜修正すればよい。
【0024】保守管理システム110は、各鉄道事業社の鉄道車両の走行記録などの実績記録集計機能112、異常対策手配機能114、法定点検作業手配機能116、部品在庫管理機能118を備えている。これらの各機能は、それぞれ特定のプログラムをコンピュータで実行し、データベースの情報を処理することにより実現される。
【0025】実績データベース150は、各鉄道事業社毎の運行実績データベース151、故障実績データベース152、保守実績データベース153、異常対策データベース154等を保有している。在庫データベース160は、予備品在庫データベース161、消耗品在庫データベース162などを保有している。
【0026】各鉄道事業社A、B、Cは、保守管理業者100のシステムと同様な構成の保守管理システム310(312〜318)、実績データベース350(351〜353)、在庫データベース360(361〜362)を有している。これらの保守管理システムは、各鉄道事業社A、B、Cが自己の車両を運行管理する各社独自の車両運行システムと、データの一部を共用するように構成しても良い。保守会社500や製造会社600も、必要な範囲で同様な構成の保守管理システムやデータベースを保有している。保守会社500は、作業要員や作業用の機器510を保有している。
【0027】各社の保守管理システムやデータベースの構成を統一化しておくことにより、システムの運用が円滑になる。各鉄道事業社A、B、C、保守会社500、製造会社600は、予め保守管理業者100と契約し、サーバーを経由して相互にアクセスして必要な情報を送受し、自社のデータベースへ記録あるいは更新できる範囲及びその実行手順などを決めておくものとする。
【0028】また、保守管理業者100のシステムには、保守スケジュールデータベース140があり、各鉄道事業社の車両の保守点検を保守管理業者100が行うスケジュールに関するデータが記録される。なお、保守スケジュールデータベース140に関しても、そのデータの一部について、各鉄道事業社や保守会社、製造会社が契約した範囲でアクセス可能になっている。
【0029】スケールメリットを確保するために、保守管理業者100の管理対象となっている各鉄道事業社A、B、Cの使用する車両や部品は、仕様を統一化し、共通の部品を使用できるようにしておくのが望ましい。
【0030】この保守管理システムでは、モノレール800及びその付帯設備の保守業務が保守管理業者の管理下にある。従って、故障診断やデータ更新の対象となる鉄道事業社A(300)のモノレール800及びその付帯設備が、情報伝達手段380を介して鉄道事業社Aの保守管理システム310に接続されている。そして、保守管理システム310は社内ネットワーク320、サーバーやファイヤーウォールシステムを備えたネットワーク接続装置330を介してインターネット200に接続されており、各鉄道事業社の鉄道車両のモノレール800及びその付帯設備のモニタ情報は、保守管理者である保守管理システム110の実績記録集計機能112などにネットワークを介して逐一送信され記録される。
【0031】なお、保守管理装置110及び310、各社のネットワーク接続装置(130、330など)、インターネット200、及びモノレール800の機器の間の接続には、一般の電話回線や専用の通信回線、光ケーブルによる通信回線等が用いられる。また、保守管理業者100と各鉄道事業社及び保守会社、製造会社間の通信のために、予め、各機器毎にIPアドレスや特定のID番号等を付与しておくことは言うまでもない。
【0032】また、保守管理システムは、コンピュータにより構成されており、入出力手段としてキーボードやマウス等の操作部やディスプレイが接続されている。ネットワーク接続装置としてのサーバーは、インターネットにアクセスし、他社のサーバーに接続するための閲覧ソフト(WWWブラウザ)を持っている。また、保守管理システムはセキュリティ判定手段を備えており、データの提供範囲を決定する。さらに、機密性を保持しつつ必要なデータを提供するために、情報の形式を変更する情報形式変更手段も備えている。
【0033】保守管理業者100や各鉄道事業社の保守管理システム110、310は、CPUやメモリ及びプログラムを備えたコンピュータによって構成され、社内ネットワークを介して、各種データベースに接続されている。保守管理システムの代表的な機能としては、実績記録集計機能(112、312)、故障処置手配機能(114、314)、法定点検作業手配機能(116、316)、部品在庫管理、手配機能(118、318)等がある。実績記録集計機能(112、312)には、各車両の走行、故障、点検等のデータを実績データベース150、350に記録、管理する機能が含まれる。故障処置手配機能(114、314)や法定点検作業手配機能(116、316)には、各鉄道事業社の車両の保守点検を行うスケジュールに関するデータ各車両の保守に関する保守のスケジュールを保守スケジュールデータベース140に記録、管理し、また、保守等の処理実績を実績データベース150、350に記録、管理する機能が含まれる。部品在庫管理、手配機能(118、318)には、在庫データベース(160、360)を用いて部品を管理する機能が含まれる。
【0034】鉄道事業社Aのモノレール800は、モニタ装置810を具備しており、このモニタ装置810が、車内ネットワーク812を介してモノレール800の各搭載機器や走行に関する情報をモニタ収集し、情報伝達手段380を介して保守管理システム310及び110に送信する。
【0035】モノレール800の搭載機器としては、主制御器820、補助電源822、ATC/ATO、ブレーキ装置などがある。また、センサー828により、ベアリング、ブレーキライニングの状況などがモニタされる。一方、地上にも、軌道に沿ってセンサー830が設置され、モノレール800のタイヤの外径やパンタグラフのすり板等の変化をモニタし、情報伝達手段380を介して保守管理システム310及び110に送信する。
【0036】次に、図1のシステムの動作について説明する。まず、保守スケジュールデータベース140の各鉄道事業社別の保守スケジュール表に、保守点検の時期や、保守点検の追加事項が記録される。すなわち、図2に示すように、保守点検事項のデータベースに各鉄道事業社別の法定点検事項が記録、更新され、また、予防保全スケジュールデータベースに各鉄道事業社別の予防保全事項が記録、更新される(S1100〜1110)。
【0037】モノレールの車両に関する法定点検事項としては、次のようなものがある。
【0038】(a)列車検査(b)月検査(c)重要部検査(d)全般検査(e)新製した車輌の検査(f)使用を休止した車輌の検査(g)検査の表記と記録この他、電気、土木、駅舎等の保守点検事項もある。
【0039】予防保全事項として、法的規則によらず自主的に行う予防保全業務もある。例えば、タイヤやブレーキライニングあるいはパンタグラフのすり板などは、定期的に交換され、保全期限が記録される。また、クーラーも定期的な点検、整備が必要である。なお、タイヤの交換時期に関しては、センサー830によりタイヤの外径の変化をモニターして、異常消耗など実際のタイヤの状態に基づく交換時期を判定するのが望ましい。
【0040】このような法定点検事項や予防保全事項と期限を纏め、図3の法定点検スケジュールデータベース及び図4の予防保全スケジュールデータベースを作成する。
【0041】また、図5に示すような、異常発生時の対応事項を記録した異常対策データベースも作成される。これにはタイヤのパンク検知の誤動作、過電流などの具体的な項目と、再確認期限が記録される。このデータ作成には、定期点検時以外の時期に処置された保守実績データベースの記録も参照される。
【0042】なお、法定点検スケジュールデータベース、予防保全スケジュールデータベース、異常対策データベースの各内容については、所定の処理がなされ、保守管理業者100のネットワーク接続装置130(サーバー)にアップされ、各鉄道事業社や製造会社、保守会社がインターネットを介してアクセスし、自社に関係する個所のみを閲覧可能となっている。
【0043】このように、保守管理業者の取得、生成した情報が各鉄道事業者及び関連する製造会社もしくは保守会社へ通信ネットワークを介して提供されるため、製品開発への保守情報の反映を図ることができる。さらに、これらの情報の活用は、機器の診断や車両の保守技術の質的向上に有益である。
【0044】次に、保守管理システム110の動作について説明する。図6は、保守管理システム110の動作を示すフローチャートである。
【0045】最初に、各鉄道事業社毎の保守スケジュールが決定される。図3、図4に示した各社別の保守スケジュール表に保守点検の時期や、保守点検の追加事項がデータベースとして記録されている。
【0046】このデータベースから必要事項を抽出して利用することにより図7、図8に示すような各社毎の保守点検事項のデータベースを生成する(S1202〜1206)。仮に、A社の保守を先に行うとした場合、A社の保守に関するデータベースを読み出し、保守要員、保守機器の要否により、グルーピングを行う(S1208)。そして、A社の保守に関する具体的なスケジューリングを行う(S1210)。この場合、保守作業を行う間のA社の配車についても調整する(S1212)。保守に関する具体的なスケジューリングが決まったら、保守要員の派遣のスケジューリングを行い(S1214、1220)、保守要員の手配を行う(S1221)。保守要員は、スケールメリット確保、特に高度な専門知識を持つ人材確保のために、原則として全員1つの保守会社に帰属するのが望ましいが、状況に応じて各鉄道事業社や製造企業の人材を活用するようにしても良い。
【0047】さらに、保守に必要な機器の運用のスケジューリングを行い(S1216、1218)、保守機器の手配を行う(S1222)。なお、保守機器はスケールメリット確保、特に高性能の機器を活用できるようにするために、保守管理業者100が一括保有し管理する。保守要員の派遣先や機器の運用のスケジューリングは、鉄道事業社A社だけでなく、他社の保守状況や保守要員、機器の状況も勘案して決定する。
【0048】図9は、保守要員派遣スケジュールの一例である。保守要員毎に、派遣先、期間、作業項目が明記されている。保守要員派遣スケジュールは、保守会社も閲覧可能になっている。また、各鉄道事業社も、自社に関係する個所を閲覧可能となっている。
【0049】また、図10は、保守機器運用スケジュールの一例である。保守要員毎に、派遣先、期間、作業項目が明記されている。
【0050】図6に戻り、さらに保守に必要な部品の手配要求を行い、部品調達スケジューリングを行い(S1224、1226)、部品会社(または車両メーカー)に部品の発注を行う(S1228)。また、A社に駐在している保守要員がいる場合には、その運用のスケジューリングを行う(S1230)。
【0051】図11は、部品発注スケジュールの一例である。納期、納先、数量などが明記されている。部品発注スケジュールは部品会社などの製造会社が、自社に関係する個所を閲覧可能となっている。このように、複数の鉄道事業者の鉄道車両の保守管理を1つの保守管理業者が一括して行うため、小規模のローカル鉄道の運行管理者やモノレール運営会社の鉄道車両を対象とするにも関わらず、スケールメリットを享受しコストを低減しつつ信頼性の高い部品を提供することができる。
【0052】以上のようにして、設定されたスケジュールに基づき、A社の保守作業を実施する(S1232)。保守作業については、内容についてA社の確認を得た上で終了する(S1234)。作業が終了したら、その結果を保守実績として記録する(S1236)。このデータは保守実績データベース1270に記録される(S1270)。
【0053】B社についても、A社と同様にして、各種のスケジューリングを行い、保守作業を行う(S12140〜1266)。
【0054】なお、図11に示した部品発注スケジュールは、以下のような観点で生成される。すなわち、モノレールに関して、消耗が激しく保安上の観点からも、交換の頻度や重要性が高いのは、タイヤ、ベアリング、ブレーキライニング、パンタグラフのすり板などである。これらの部品については、部品メーカーの製造時期だけでなく、例えばA社でスケジュールに従って実際に作業でき、しかもA社の車両の運用に支障をきたさないよう適切な余裕期間(リードタイム)を確保するために、部品メーカーからA社までの輸送期間、納期、取り付け工期、交換時期などのデータを作成する。
【0055】また、各部品の交換時期は、図12に示すように、各社ごと、例えばA社の線路条件を考慮して、決定する。さらに、図13に示すように、車両に対する負荷率、即ち、A社の「乗客数」あるいは「乗車人員」数のデータも考慮して決定する。すなわち、各部品の交換時期は、「線路条件」×「車両に対する負荷率」を考慮して決定する。
【0056】図14は、同じ部品に関して、図12や図13のデータを踏まえた、A社とB社の交換時期のタイミングを示すものである。
【0057】車両のある部品について、交換必要な時期は、部品の実際のデータを監視し、その部品ごとに設定される交換判定基準に対して、データの正規分布の下限値で判定するものとする。この交換判定基準で得られる時期は、その部品の使用限度に対して適切なリードタイムになるように設定する。
【0058】また、この例では、仮に、A社とB社の車両のある部品について、同時に新品に交換したとしても、B社の部品の消耗が激しく、交換時期が早くなる。ただし、A社に関しては、遠隔地にあるため現地までの輸送時間や人員派遣に時間を要するので、B社に比べてリードタイムが長くなっている。
【0059】図6で述べた各種のスケジューリング(S1224、1226、S1228等)は、このような各社間の種々の状況を踏まえた上で、行うものとする。このようにして保守交換の時期を決定し、実行することにより、各鉄道事業社は、保守点検のために車両を運休させる期間を極短期間にでき、しかも信頼性の高い保守サービスを受けることが可能になる。
【0060】このように、複数の鉄道事業者の鉄道車両の保守管理を1つの保守管理業者が一括して行うため、小規模のローカル鉄道の運行管理者やモノレール運営会社の鉄道車両の保守に関して、鉄道事業者のみならず製造会社や保守会社にとってもスケールメリットのある保守管理システムを提供することができる。さらに、鉄道車両の保守に関して、機器の診断や車両の保守技術の質的向上を図ることができる。
【0061】次に、図15は、保守管理システム110の他の処理として、A社の部品の保守に関する不具合情報を、B社の部品の保守に反映させる、水平展開処理の例を示すものである。まず、保守実績データベースや異常対策データベースから不具合を抽出し(S1270、1272、1400)、その不具合が他社の車両または同じ会社の他の車両に関係するか、判定する。例えば、不具合の原因となった部品が他社の車両にも採用されていれば、対策の必要性を検討するのが望ましい。次に、恒久的な対策の有無を検討する。あれば、恒久対策を手配し、結果を保守実績データベースに記録して終了する(S1276、1278、1290)。無ければ、暫定的な対策を検討し(S1280、1286)、暫定対策を手配し、結果を保守実績データベースに記録し(S1282、1284)、さらに恒久対策を検討、手配し、結果を保守実績データベースに記録して終了する(S1288、1278、1290)。
【0062】本発明によれば、異常対策データベースの内容についても、一定の範囲で関係する他社に公開されるので、製品、部品に関する保守情報のフィードバックが適切になされ、製品開発へ保守情報を十分に反映出来るようになる。
【0063】図16は、保守管理システム110の他の処理として、不定期の保守、換言すると異常時処理の例を示すものである。鉄道事業社の機器、設備に異常が発生すると、保守管理業者の保守管理システムに対応処置の要求が発生すると共に、異常内容のデータが送付されてくる(S1300、1302)。保守管理システムでは、保守実績データベースや運行実績データベースの記録を抽出し、事故原因の解析を行う(S1304)。原因が究明されたら、対策を検討し、鉄道事業社に連絡する(S1306〜1312)。保守管理システムは異常対策に際して、保守要員の派遣、部品の手配が必要か判断し、必要な処置を行う(S1314〜1324)と共に、その結果を異常対策実績データベースに記録する(S1326、1400)。鉄道事業社では、この連絡、手配に基づいて必要な対策を講ずる(S1330)。
【0064】事故原因の解析を行って原因が究明できない場合、不足データを検討し、必要なデータの取得交渉を鉄道事業社に対して行う(S1332〜1336)。例えば、故障した車両を他の条件で運転することにより原因が究明されることが考えられる。そして、原因究明(及び対策)のために保守要員の派遣が必要か判断し(S1338)、必要な場合、保守会社に要員の派遣を要請する(S1340〜1342)。このようにして鉄道事業社から必要なデータが得られたら(S1344)、再度、原因究明を行い(S1346)、必要な対策を講ずる(S1306〜1312)。
【0065】このようにして、定期検査外の時の異常事故にも、迅速に対処できる。特に、小規模のローカル鉄道やモノレールの運営会社の鉄道車両の保守に関して、信頼性の高い保守サービスを迅速に提供することが可能になる。
【0066】
【発明の効果】以上述べたとおり、本発明によれば、通信ネットワークを介して接続された複数の鉄道事業者の鉄道車両の保守管理を保守管理業者が一括して行うため、小規模運営会社の鉄道車両の保守に関して、鉄道事業者のみならず製造会社や保守会社にとってもスケールメリットのある保守管理システムを提供することができる。
【0067】また、保守管理業者の取得、生成した情報が各鉄道事業者及び関連する製造会社もしくは保守会社へ通信ネットワークを介して提供されるため、製品開発への保守情報の反映を図ることができる。さらに、小規模のローカル鉄道の運行管理者やモノレール運営会社の鉄道車両の保守に関して、機器の診断や車両の保守技術の質的向上を図ることができる。
【0068】また、複数の鉄道事業者の鉄道車両の保守管理を1つの保守管理業者が一括して行うため、小規模のローカル鉄道の運行管理者やモノレール運営会社の鉄道車両の保守に関して、コストを低減しつつ信頼性の高い保守サービスを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成13年1月11日(2001.1.11)
【代理人】 【識別番号】100068504
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男
【公開番号】 特開2002−209303(P2002−209303A)
【公開日】 平成14年7月26日(2002.7.26)
【出願番号】 特願2001−3979(P2001−3979)