| 【発明の名称】 |
電気自動車の制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】清水 浩
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| 【要約】 |
【課題】走行安定性を向上できる、タンデム式車輪全輪にモータを組み込んだインホイール式ドライブを備えた各駆動輪を独立に駆動可能な電気自動車の制御装置を提供する。
【解決手段】対応するモータの出力トルクにてそれぞれ回転駆動される駆動輪をタンデムサスペンション構造を単位として8個を有する電気自動車に搭載され、各モータに対し出力トルク値を指令する駆動制御装置において、各駆動輪を現在スリップが生じているか否かによりスリップ輪と非スリップ輪とに弁別するスリップ輪検出手段と、非スリップ輪が車体の左側及び右側に少なくとも1個ずつある時に、車体に新たなヨー方向モーメントが作用しないよう調整を施した上で、各モータに対し出力トルク値を指令する8輪駆動制御手段とを備える。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 対応するモータの出力トルクにてそれぞれ回転駆動される駆動輪をタンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系を含めて8個有する電気自動車に搭載され、前記タンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系によって車輪の支持荷重を小さくした状態で、各モータに対し出力トルク値を指令する駆動制御装置において、各駆動輪を現在スリップが生じているか否かによりスリップ輪と非スリップ輪とに弁別するスリップ輪検出手段と、前記非スリップ輪が車体の左側及び右側に少なくとも1個ずつある場合に、車体に新たなヨー方向モーメントが作用しないように調整を施した上で、前記各モータに対し出力トルク値を指令する8輪駆動制御手段とを備えることを特徴とする電気自動車の駆動制御装置。 【請求項2】 対応するモータの出力トルクにてそれぞれ回転駆動される駆動輪をタンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系を含めて8個有する電気自動車に搭載され、前記タンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系によって車輪の支持荷重を小さくした状態で、各モータに対し出力トルク値を指令する駆動制御装置において、各駆動輪を現在スリップが生じているか否かによりスリップ輪と非スリップ輪とに弁別するスリップ輪検出手段と、前記非スリップ輪が車体の左側に1個もないとき及び右側に1個もない場合に、スリップ輪のスリップ状態に応じ調整を施した上で、前記各モータに対し出力トルク値を指令するTRC/ABS相当制御手段とを備えることを特徴とする電気自動車の駆動制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、2輪がタンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系を有し、6輪以上の駆動輪を有し、各駆動輪をインホイール式ドライブとした電気自動車に搭載され、スリップ時における走行安定性を向上させるように各モータ制御する電気自動車の制御装置に関するものである。 【0002】図7に示すように、電気自動車とは、電動機101の駆動力のみを用いて走行が可能な車であり、その電動機101に供給する電力源として、二次電池(バッテリー)を用いるものを狭義の電気自動車A、エンジン発電機を用いるものをシリーズハイブリッド車B、燃料電池を用いるものを燃料電池車Cと呼ぶことにする。なお、図7において、102は車輪、103はコントローラ、104は二次電池、201はエンジン、202は発電機、301は水素供給部、302は燃料電池である。 【0003】このように、電気自動車とは、回転式電気電動機の駆動力のみを用いて走行が可能な車であり、その電気電動機に供給する電力源として、二次電池、燃料電池、内燃機関を用いた発電機、太陽電池等およびこれらを組み合わせたものを使用した車と定義する。ただし、以下の説明では、二次電池のみを用いた電気自動車を念頭におくが、燃料電池、内燃機関発電機、太陽電池を電力源とする車も当然に含まれる。 【0004】 【従来の技術】モータリゼーションによる空気汚染を防止する一つの決め手として電気自動車の開発が急務となってきている。自然環境の保全は21世紀の大きな目標であることを認識して、本出願の発明者は1980年代からその研究に着手し、その成果をあげつつある。 【0005】例えば、電池に貯えられた電気エネルギーが走行用の回転式電動機に供給され、該回転式電動機によって車輪が駆動されるようになっている電気自動車において、前記自動車の床構造体は、軸方向に中空の複数のフレームから構成され、それによって前記床構造体の剛性が高められていると共に、電池は前記床構造体に収納され、前記回転式電動機の少なくとも一部は、車輪のホイール部分に収納され、前記回転式電動機と床構造体は懸架装置を介して接続されるようにしている(特開平10−278596号公報参照)。 【0006】また、4輪全輪にモータを組み込んだインホイール式ドライブを備えた各駆動輪独立駆動型電気自動車において、各駆動輪におけるスリップ又はその傾向の発生状況、特にスリップ又はその傾向を呈している駆動輪(スリップ輪)とその他の駆動輪(非スリップ輪)の位置及び個数に応じて出力トルクの指令値を決定することにより、モータトルク制御による4WDを実現するとともに、スリップ輪及び非スリップ輪の位置及び個数に応じ、適宜、在来エンジン車におけるTRC(Truction Control)又はABS(Antilock Break System)に相当する制御をモータトルク制御にて実現するようにした技術は、特開平10−295004号公報に示されている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記技術は、4輪車を対象にした技術であり各車輪毎の支持荷重は比較的大きくなっている。各輪毎の支持荷重を少なくでき、それに見合うTRC又はABS制御ができれば、スリップ等を少なくでき、走行安定性を向上できる。 【0008】本発明は、上記状況に鑑みて、走行安定性を向上できる制御を採用し、タンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系を有し、車輪全輪にモータを組み込んだインホイール式ドライブを備えた各駆動輪を独立して駆動可能な電気自動車の駆動制御装置を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、タンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系を有し、車輪全輪(8個)にモータを組み込んだインホイール式ドライブを備えた各駆動輪を独立して駆動可能な電気自動車に搭載され、タンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系によって車輪の支持荷重を小さくした状態で、各モータに対し出力トルク値を指令する駆動制御装置において、各駆動輪毎に現在スリップが生じているか否かを判別したデータを基に各タンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系毎にスリップ輪と非スリップ輪とに弁別するスリップ輪検出手段と、非スリップ輪が車体の左側及び右側に少なくとも1個ずつある場合に、車体に新たなヨー方向モーメントが作用しないように調整を施した上で、各モータに対し出力トルク値を指令する車輪駆動制御手段と、非スリップ輪が車体の左側に1個もなく、かつ右側に1個もないときに、スリップ輪のスリップ状態に応じ調整を施した上で、各モータに対し出力トルク値を指令するTRC/ABS相当制御手段を備えることを特徴とする。 【0010】本発明では、非スリップ輪が車体の左側及び右側に少なくとも1個ずつあれば、各モータの出力トルク制御(例えばスリップ輪に対応するモータの出力トルクをカットし、非スリップ輪のみにて要求加減速を実現できるよう、各モータの出力トルクを制御すること)によって、ヨー方向モーメントの発生を防ぎながら8WDを実現している。 【0011】これにより、スリップ時に迅速に走行安定性を回復できる信頼性の高い走行安定性制御が実現される。 【0012】また、出力トルク値に関する指令の調整によりTRC/ABS相当制御が実現されるため、制動用流体の圧力、例えば油圧の操作なしで、従って、そのためのバルブ、ボンプ等を設けることなしに、スリップ時に走行安定性を迅速に回復できる。また、スリップ輪及び非スリップ輪の位置及び個数に応じてTRC/ABS相当制御が起動されるため、適切な状況下でTRC/ABS相当制御が動作し、従って信頼性の高い走行安定性制御が実現される。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。 【0014】(1)システム構成図1に本発明の実施例を示す8輪駆動自動車の概略構成を、図2に本発明の実施例を示す電気自動車のシステム構成をそれぞれ示す。 【0015】本発明においては、前後両車輪系がタンデムホイール式サスペンションで支持された車輪系である必要はなく、前または後の車輪系のみがタンデムホイール式サスペンションで支持された車輪系であってもよい。 【0016】これらの図に示す電気自動車はインホイルモータ型の8輪駆動電気自動車である。すなわち、車体70の下部にはセンターフレーム71及びサイドフレーム72を具備するとともに、タンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系を有し、車輪全輪(8個)にモータを組み込んだインホイール式ドライブを備えた各駆動輪独立駆動型電気自動車であり、各車輪毎の支持荷重を少なくでき、それに見合うTRC又はABS制御を行い、スリップ等を少なくし、走行安定性を向上させる。 【0017】タンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系は、右前部前輪RFF40、右前部後輪RFR41、左前部前輪LFF42、左前部後輪LFR43、右後部前輪RRF44、右後部後輪RRR45、左後部前輪LRF46および左後部後輪LRR47に、それぞれモータ30,31,32,33,34,35,36および37が組み込まれている。 【0018】バッテリー6は、各モータへの駆動電力供給源であり、その出力はインバータ10,10′を介しモータ30,31に、インバータ11,11′を介しモータ32,33に、インバータ12,12′を介しモータ34,35に、そしてインバータ13,13′を介しモータ36,37に、それぞれ給電されている。なお、各インバータ10〜13′は各車輪毎に備えられるようになっている。 【0019】インバータ10,10′は、車両制御部1に制御されるモータ制御部2の制御のもとに、バッテリー6の出力をモータ30,31にトルク制御または速度制御を行うために電力変換(この図では三相交流に変換)して給電する。インバータ11,11′,12,12′および13,13′も同様に動作する。 【0020】モータ制御部2はトルク指令TRFに応じて、モータ制御部3はトルク指令TLFに応じて、モータ制御部4はトルク指令TRRに応じて、モータ制御部5はトルク指令TLRに応じて、それぞれ対応するインバータを制御して、モータをトルク制御する。モータ制御部2,3,4および5に与えられるトルク指令は、全て車両制御部1から出力される。各モータに対するインバータの制御は、電流センサ(図示なし)から得たモータの各相電流検出値に基づき、あるいはロータ角度位置等から求めたモータの各相電流推定値に基づき行う。 【0021】車両制御部1は、各モータの出力トルクの制御、車載各コンポーネントの状態監視・制御、車両乗員への車両状態の報知、その他の機能を担う電子制御ユニット(ECU)よりなり、特徴あるソフトウエアを有する。車両制御部1には、車輪速センサ50,51,52,53,54,55,56および57、ブレーキセンサ14、舵角センサ15、シフトポジションスイッチ16およびアクセルセンサ17の検出出力が入力される。 【0022】各車輪毎に設けられている車輪速センサ(例えばレゾルバ)は、それぞれの車輪の車輪速VRFF、VRFR、VLFF、VLFR、VRRF、VRRR、VLRFおよびVLRRを示す信号(例えば微小角度位置変位毎のパルス信号)を生成し、車両制御部1に供給する。 【0023】アクセルセンサ17は、アクセルペダル(図示なし)の踏み込み量を示す信号を、ブレーキセンサ14は、ブレーキペダル20の踏み込み量を示す信号を、シフトポジションスイッチ16は、シフトレバー(図示なし)の投入レンジ(及びエンジンブレーキレンジ等では当該レンジ内でのシフトレバー位置)すなわちシフトポジションを示す信号を、それぞれ発生させる。舵角センサ15は、ハンドルの舵角検出の結果を示す信号例えば舵角δtを示す信号を発生させる。 【0024】これらのセンサの出力は、いずれも、車両制御部1に入力されるにあたって、車両制御部1にて処理可能な形式のデータに変換される。車両制御部1は、変換後のデータを用いて、トルク指令の決定、制御方法の切り換え等を実行する。 【0025】本発明では、安全性を確保する設計方針により、タンデム式前後左右各論を油圧及び回生双方にて制動する制動システムが用いられている。すなわち、ブレーキペダル20が踏まれると、これに応じてマスタシリンダ21にて発生した油圧が、それぞれの車輪に設けられているホイルシリンダを介してブレーキホイルBW60,BW61,BW62,BW63,BW64,BW65,BW66およびBW67に作用し、車輪に制動トルクが付与される。他方で、ブレーキセンサ14を用いて検出されたブレーキ力(マスタシリンダ21の油圧)FBに応じ車両制御部1が回生にかかるトルク指令TRF,TLF,TRRおよびTLRを発生させる。 【0026】従って、図2に示す車両における制動力配分は、ブレーキ力FBの増大に伴い油圧回生双方が増大する配分となる。 【0027】このように油圧系統と回生系統がブレーキセンサ14以降は分離しているため、油圧及び回生のいずれか一方が誤動作したとしても他方にて車両を退避させることができる。更に、油圧系統にはボンプが設けられておらず、またバルブとしては油圧制動力を前後に配分するためのプロポーショニングバルブが設けられているのみであるのでシステム構成が簡素になる。 【0028】なお、油圧系統にポンプを設ける必要がなく、また、油圧系統上のバルブの個数を最低限に抑えることができる理由の一つは、後述するように、モータFR,FL,モータRR及びモータRLの出力トルクの制御を利用して走行安定性制御を行うという本実施形態の特徴的構成にある。 【0029】(2)本実施形態における車両制御部の制御機能を図3のフローチャートを用いて説明する。 【0030】車両制御部1は、まず車体速VSの検出を実行する(ステップS1)。 【0031】車体速VSの検出手順としては様々な手順を採用することができるが、例えば、図4に示すような手順を採用するのが好ましい。図4においては、車両制御部1は、まずタンデム構造に成っている2輪毎に1セットとして車体速センサSMから検出値Vを読み込み(ステップS30)、その車輪角加速度dω/dtを演算する(ステップS31)。車輪角加速度の演算式としては、次の式dω/dt←(1/R)・dV/dtを用いることができる。ここで、Rは車輪半径であり、V及びωは、現在車輪角加速度を求めようとしている車輪にかかる車輪速及び車輪角速度である。車両制御部1は、このようにして求めた車輪角加速度dω/dtの絶対値が所定の閾値を上回っているか上記1セットについて比較し、1セットの内2輪とも(全輪とも)車輪角加速度dω/dtの絶対値が閾値を上回っているときはスリップNSと判定し、1セットの内1輪が閾値を上回っているがもう1輪が閾値を上回らない場合は、非スリップと判断すると共に閾値を上回らない方の車輪速Vをそのセットの車輪速として保持し、1セットの内2輪とも(全輪とも)車輪角加速度dω/dtの絶対値が閾値を上回らないときは非スリップと判定すると共に大きい値の車輪速をそのセットの車輪速として保持する(ステップS32)。 【0032】その1セットの車輪について非スリップと判定したときは、変数VSにその車輪の車輪速Vを積算する(ステップS33)。逆に、その1セットの車輪についてスリップと判定したときは、角加速度dω/dtの絶対値が所定の閾値を上回っているのであれば、その車輪についてはスリップ又はその傾向が発生しているとみなすことができるため、スリップ又はその傾向が生じているとみなせる車輪(スリップ輪)の個数をカウントするための変数であるNSを1インクリメントさせる(ステップS34)。 【0033】そして、車両制御部1は、ステップS33又はステップS34を実行した後、その1セットの車輪の位置及び車輪速Vを内蔵するメモリ等に記憶する(ステップS35)。車両制御部1は、ステップS31〜ステップS35にかかる手順を、全てのタンデム構造の車輪を含むすべての駆動輪について実行する(ステップS36)。 【0034】車両制御部1は、このようにして全ての駆動輪についてスリップ輪かそれとも非スリップ輪かの判定を行った後に、スリップ輪の個数NSが4に等しいか否かすなわち全ての駆動輪がスリップしているのかそうでないのかを判定する(ステップS37)。通常は、全ての駆動輪が同時にスリップ又はその傾向を示しはしないため、車両制御部1は、ステップS33の繰り返し実行によりVSに積算された値を4−NSすなわち非スリップ輪の個数にて除すことにより、車体速VSを算出する(ステップS38)。 【0035】逆に、NS=4が成立しているときには、過去においてステップS35を実行した際に記憶した情報を利用して、最後にスリップし始めた駆動輪がどの車輪であるのかをサーチする(ステップS39)。車両制御部1は、このサーチの結果発見された駆動輪すなわち最後にスリップし始めた車輪が、スリップし始める直前に有していた車輪速Vの値を、車体速VSとして用いることとする(ステップS40)。 【0036】このように、本実施形態においては、原則として非スリップ輪の車輪速のみから車体速VSを求めることにより、車体速VSを比較的正確に決定することを可能にしており、ひいては後述する手順にて仮確定されるトルク指令値を適切なものとしている。 【0037】また、タンデムサスペンション構造であることから、8個の車輪全てがスリップ又はその傾向を示すことは極めてまれな状態ということになるが、そのときにも、最後にスリップし始めた車輪がスリップし始める直前から所定時間内に有していた車輪速の平均をもって車体速VSとしているため、比較的信頼性のおける車体速情報をトルク指令値の仮確定に利用することができる。ステップS38又はステップS40の実行後は、車両制御部1の動作は、図3のステップS2に戻る。 【0038】図3においては、車体速VSを検出した後、まず操舵の状態を判断するために、舵角δtの絶対値が所定の閾値と同じかまたはそれ以上かの判定が実行される(ステップS2)。舵角が閾値より大きい場合で、スリップ(ステップS12)がないとき、車両制御部1は目標ヨーレイト適合制御や目標すべり角度適合制御(例えばすべり角度0制御)を実行する(ステップS3)。 【0039】例えば、舵角センサ15で検出される舵角δtの絶対値が所定の閾値以上であるときに、すなわち車両操縦者が操舵を行っていると判断されるときに、操舵に伴う車体の走行不安定性の発生を防止乃至抑制すべく、目標ヨーレイト適合制御乃至目標すべり角度適合制御を実行する。 【0040】目標ヨーレイト適合制御乃至目標すべり角度適合制御の手順の一例を、図5に示す。 【0041】図5に示すフローにおいては、車両制御部1は、まずアクセルセンサ17の出力に基づき判定できるアクセルオン/オフ状態、シフトポジションスイッチ16にて与えられるシフトポジション、舵角センサ15から与えられる舵角δt及びこれに基づき算出できるdδt/dt等に基づき、結合係数群(経験に基づく式)を選択している(ステップS50)。車両制御部1は、更に、タンデムサスペンション構造の各車輪毎に、車輪加速度dV/dtを求めこれに基づき路面摩擦係数μ(経験に基づく式)を演算する(ステップS51)。 【0042】車両制御部1は、路面摩擦係数μ及び舵角δtに基づき、かつ、ステップS50で選択した結合係数群を用いて補正係数kを車輪毎に決定する(ステップS52)。車両制御部1は、アクセルがオンしている時には(ステップS53)、車輪速V、アクセル開度VA及びシフトポジションに基づき力行トルクマップから(ステップS54)、またアクセルがオフしている時には(ステップS53)、車輪速V、ブレーキ力FB及びシフトポジションに基づき回生トルクマップから、各車輪毎にトルク指令を仮確定する(ステップS55)。力行トルクマップは回転数及びトルクが共に正の領域におけるモータの回転数トルク特性を表すマップであり、回生トルクマップは回転数が正、トルクが負の領域におけるモータの回転数トルク特性を示すマップであり、経験で求めておく。 【0043】車両制御部1は、ステップS54又はステップS55にて仮確定したトルク指令に、ステップS52にて決定した補正係数kを乗ずることによりトルク指令を決定し(ステップS56)、決定したトルク指令を対応するモータ制御部に出力する(ステップS57)。 【0044】従って、ステップS50にて選択対象となる結合係数群の値や、ステップS52における補正係数kの設定手法次第では、目標ヨーレイト適合制御乃至目標すべり角度適合制御を実行している時のトルク指令が採り得る範囲は、アクセルオン時でも回生領域に属する値となることがあり、またアクセルオフ時でも力行領域に属する値となることがある。このような制御を行うことで、本実施形態では、操舵時における車体の走行安定性を向上させている。 【0045】なお、目標ヨーレイト適合制御や目標すべり角度適合制御に関しては、特開平10−210604号公報の開示を参照されたい。また、目標ヨーレイト適合制御や目標すべり角度適合制御に代えて、車体に作用するヨーレイトを含め車両の運動状態を示す複数の状態量を用いて走行行安定性制御を実行する手法を採用してもよい。 【0046】この手法に関しては、特開平10−271613号公報を参照されたい。目標ヨーレイト適合制御や目標すべり角度適合制御を終了した後は、車両制御部1の動作は、図3に戻る。 【0047】車両制御部1は、ステップS1に戻り動作を繰り返す。また、車体速VSを検出した後実行されるステップS2において、目標ヨーレイト適合制御や目標すべり角度適合制御を実行する必要がないと認められる場合、即ち舵角の絶対値が閾値より小さいとき、車両制御部1は、原則として8WD制御にかかる手順を実行する(ステップS6)。車両制御部1は、この8WD制御(ステップS6)を開始するに際して、まず、車体速VSを検出する手順にて検出したタンデムサスペンション構造での車輪1セットに対応するスリップ輪の個数NSに関する判定・分類処理を実行する。 【0048】すなわち、検出されたスリップ輪の個数NSが4に等しいときすなわち全ての駆動輪がスリップしているとき(ステップS7)や、スリップ輪の個数NSが3に等しいときすなわちスリップ又はその傾向を示していないタンデムサスペンション構造の駆動輪が1個(1セット)しかない時には(ステップS8)、車両制御部1の動作は8WD制御(ステップS6)ではなくTRC/ABS相当制御に移行する(ステップS9)。 【0049】また、スリップ輪の個数NSが2に等しいときすなわちスリップ又はその傾向を示していないタンデムサスペンション構造の駆動輪が2個存在しているときであっても(ステップS10)、検出されたスリップ輪が共に左側の車輪である場合や共に右側の車輪である場合には(ステップS11)、TRC/ABS相当制御へと移行する(ステップS9)。 【0050】更に、前述のステップS2において目標ヨーレイト適合制御乃至目標すべり角度適合制御が必要とみられる状態であると判定された時であっても、スリップ輪の個数NSが非0であるときすなわちいずれかのタンデムサスペンション構造の駆動輪がスリップ又はその傾向を示していると認められる時には(ステップS12)、やはりTRC/ABS相当制御へと移行する(ステップS9)。 【0051】ここで、TRC/ABS相当制御の手順の一例を図6に示す。 【0052】TRC/ABS相当制御を実行するに際しては、車両制御部1は、まず、各車輪の車輪速Vの高/低や、アクセルオン/オフ等に応じて、結合係数群、制御定数群等を選択する(ステップS60)。ここでいう結合係数群は、後述の角加速度判定に使用する閾値群を決定するために使用する係数の集合であり、制御定数群は、フィードバックトルクを決定する際に使用する定数の集合である。 【0053】車両制御部1は、アクセルがオンしている時には(ステップS61)、車輪速V、アクセル開度VA及びシフトポジションに応じ力行トルクマップから(ステップS62)、アクセルがオフしている時には(ステップS62)車輪速V、ブレーキ力FB及びシフトポジションに応じ回生トルクマップから(ステップS63)、トルク指令を仮確定する。 【0054】車両制御部1は、更に、アクセルがオンしている時には(ステップS62)アクセル開度VA及びステップS60にて選択した結合係数群とに基づき(ステップS64)、またアクセルがオフしているときには(ステップS62)ブレーキ力FBとステップS60にて選択した結合係数群とに基づき(ステップS65)、閾値群を決定する。 【0055】車両制御部1は、ステップS64又はステップS65にて決定した閾値群を基準として、各車輪の角加速度dω/dtを分類する(ステップS66)。車両制御部1は、分類の結果に応じ、異なる演算式等を使用してフィードバックトルクを決定する。 【0056】例えば、車輪角加速度dω/dtが第1の範囲に属するときには第1の演算式によるフィードバックトルク決定処理を(ステップS67−1)、第2の範囲に属する時には第2の演算式に基づくフィードバックトルク決定処理を(ステップS67−2)、第3の範囲に属するときには第3の演算式によるフィードバックトルク決定処理を(ステップS67−3),…第nの範囲に属するときには第nの演算式に基づくフィードバックトルク決定処理を(ステップS67−n)というように、各車輪毎にその回転角加速度dω/dtの属する範囲に応じた演算式にてフィードバックトルクを決定する。 【0057】更に、ステップS67−1,S67−2,S67−3.…S67−nにかかる演算式中の定数は、ステップS60にて選択した制御定数群にかかる値とする。 【0058】車両制御部1は、このようにして決定したフィードバックトルクを、ステップS62又はステップS63にて仮確定したトルク指令値から減ずることによりトルク指令値を確定し(ステップS68)、確定したトルク指令値を対応するモータ制御部に出力する(ステップS69)。 【0059】このような手順を採用することによって、各駆動輪に作用するトルクを適宜変動させることができ、在来エンジン車両におけるTRC/ABS制御に相当する機能を実現することができる。なお、TRC/ABS相当制御に関しては、特開平8−182119号公報や、特開平10−210604号公報による開示を参照されたい。図6に示す手順を終了した後は、車両制御部1の動作は図3に示すステップS4に移行する。 【0060】車両制御部1は、目標ヨーレイト適合制御乃至目標すべり角度適合制御への移行条件やTRC/ABS 相当制御への移行条件がいずれも成立しない時、すなわち舵角δtの絶対値が閾値以上となっておらず、タンデムサスペンション構造のスリップ輪の個数NS(セット数)が2以下であって、かつ左側の2個の車輪又は右側の2個の車輪がいずれもスリップ輪となってはいない時に、8WD制御ステップS6にかかる手順を実行する。 【0061】その際に、車両制御部1は、まず、上記スリップ輪の個数NSが1であるか否かを判定する(ステップS13)。通常の走行路では、NS=0であるので、車両制御部1の動作はステップS14及びステップS15に移行する。ステップS14では、車両制御部1は、タンデムサスペンション構造の全ての駆動輪を配分輪として決定する。ここでいう配分輪とは、実際にトルク出力を配分する駆動輪である。ステップS15では、車両制御部1は、各配分輪に対するトルク出力の配分の比重を通常値に設定する。 【0062】例えば、全ての駆動輪に対し、配分の比重=1を設定する。ただし、この配分の比重は、車両積載重量に応じて変化させてもよいし、車体の構造に応じて前後の車輪間で異なる所定比重としても構わない。 【0063】逆に、ステップS13においてNS=1であると判定した時や、ステップS11においてTRC/ABS相当制御への移行条件が成立していないと判定された時には、車両制御部1スリップ輪以外の車輪を配分輪として決定する(ステップS16)。 【0064】更に、実際にトルクを出力したときに車体重心を中心としたヨー方向のモーメントが新たに車体に作用することとならないよう、すなわち左右がバランスするように、各車両に対する配分比重を調整する(ステップS17)。 【0065】例えば、ステップS16において配分輪に選択されなかった駆動輪すなわちスリップ輪についてはトルク指令が与えられないよう配分比重を0とし、左側及び右側のうちスリップ輪が属する側の非スリップ輪の配分比重には、スリップしていなければスリップ輪に配分されるはずであったトルク出力に相当する配分比重を上乗せする。 【0066】車両制御部1は、ステップS15又はステップS17を実行した後、アクセルがオンしていれば(ステップS18)車体速VS、アクセル開度VA及びシフトポジションに応じ力行トルクマップから(ステップS19)、アクセルがオフしていれば(ステップS18)車体速VS、ブレーキ力FB及びシフトポジションに応じ回生トルクマップから(ステップS20)トルク指令を仮確定する。車両制御部1は、ステップS19又はステップS20を実行した後、ステップS15又はステップS17で予め設定乃至調整されている配分比重に応じて、ステップS19又はステップS20にて仮確定したトルク指令値に調整を施し(例えば配分比重を乗算し)、これにより各車輪に対するトルク指令値を確定する(ステップS21)。 【0067】車両制御部1は、ステップS21にて確定した各トルク指令値をそれぞれ対応するモータ制御部へと出力し(ステップS22)、その後ステップS4に移行する。 【0068】従って、本実施形態では、タンデムサスペンション構造の各車輪のスリップ状態に応じて、制御状態が切り替わる。まず、タンデムサスペンション構造の2輪を1個の単位とすると、4個の車輪のうち1個のみがスリップしている時すなわちNS=1である時には、スリップしていなければ当該スリップ輪にてさせるはずであったトルク指令が、このスリップ輪と同じ側にある他の駆動輪にて出力されることになる。 【0069】また同様にNS=2である時のうち、スリップ輪が左右に1個ずつ存在している時には、左右1個ずつ残っている非スリップ輪にてトルク指令が実現される。さらに、NS=2であり、かつスリップ輪がいずれも左側(又は右側)にある時には、TRC/ABS相当制御が実行される。更に、NS=3である時や、NS=4である時には、やはり、TRC/ABS相当制御が実行される。 【0070】このように、本発明によれば、各車輪におけるスリップ又はその傾向の発生状況、特にスリップ輪の個数や位置に応じて、車両制御部1による各モータ出力の制御モードや各車輪に対するトルク配分比重を切り換え又は変更するようにしているため、インホイールモータ型の8輪駆動電気自動車において好適な8WD制御やTRC/ABS相当制御を実現し、走行安定性を維持改善することができる。 【0071】なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。 【0072】 【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下の様な効果を奏することができる。 【0073】(A)走行安定性を向上できる制御を採用し、タンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系を有し、車輪全輪にモータを組み込んだインホイール式ドライブを備えた各駆動輪を独立に駆動可能な電気自動車を提供することができる。 【0074】(B)タンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系を有し、車輪全輪にモータを組み込んだインホイール式ドライブを備えた各駆動輪独立駆動型電気自動車において、走行安定性を向上できる制御を採用したので、各輪毎の支持荷重を少なくでき、それに見合うTRC又はABS制御ができるので、スリップ等を少なくでき、走行安定性を向上でき、また、非スリップ輪が車体の左側及び右側に少なくとも1個ずつある時に、車体に新たなヨー方向モーメントが作用しないよう調整を施した上で、各モータに対し出力トルク値を指令するようにしたため、ヨー方向モーメントの発生を防ぎながら8WDを実現でき、スリップ時における信頼性の高い走行安定性制御を実現できる。 【0075】(C)タンデムホイール式サスペンションで支持される車輪系を有し、車輪全輪にモータを組み込んだインホイール式ドライブを備えた各駆動輪独立駆動型電気自動車において、走行安定性を向上できる制御を採用したので、スリップ等を少なくでき、走行安定性を向上でき、また、非スリップ輪が車体の左側に1個もないとき及び右側に1個もないときに、スリップ輪のスリップ状態に応じ調整を施した上で、各モータに対し出力トルク値を指令するようにしたため、TRC/ABS相当制御を制動用流体の圧力操作のための部材なしで実現でき、かつTRC/ABS相当制御が適切な状況下で動作するため、スリップ時における信頼性の高い走行安定性制御を実現できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】396020800 【氏名又は名称】科学技術振興事業団
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| 【出願日】 |
平成12年12月18日(2000.12.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089635 【弁理士】 【氏名又は名称】清水 守
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| 【公開番号】 |
特開2002−186107(P2002−186107A) |
| 【公開日】 |
平成14年6月28日(2002.6.28) |
| 【出願番号】 |
特願2000−384090(P2000−384090) |
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