トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 補機用バッテリの保護構造
【発明者】 【氏名】柳田 賢二

【要約】 【課題】部品点数が少なく、組付性の制限の少ないコストの安い補機用バッテリの保護構造を提供すること。

【解決手段】補機用バッテリ60を車両のリヤホイルハウス52の後方に配置する電気自動車あるいはハイブリッド車等の車両において、リヤホイルハウス52の後方に取り付けた緩衝ブラケット20とバッテリブラケット11の前方に取り付けた縦壁12との間隙に、高電圧バッテリ冷却装置30に接続する排気ダクト34を配設した。車両に大きな衝撃が掛かって補機用バッテリ60が前方へ移動しても、補機用バッテリ60が排気ダクト34を押し潰しながら移動するため、排気ダクト34により衝撃エネルギを吸収できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気自動車あるいはハイブリッド車などに搭載される高電圧バッテリの近傍に搭載される補機用バッテリの保護構造であって、補機用バッテリを載置するバッテリブラケットの前方に立設した縦壁と、該縦壁の前方に所定間隔をおいて車体要部に設けた、該縦壁と対向する面を有する緩衝ブラケットとの間にエネルギ吸収部材を介在させた補機用バッテリの保護構造において、前記バッテリブラケットの縦壁と緩衝ブラケットの対向面との間に、前記高電圧バッテリを冷却する冷却装置に連通する中空の通気ダクトを配設したことを特徴とする補機用バッテリの保護構造。
【請求項2】 請求項1に記載の補機用バッテリの保護構造において、前記車体要部は、車両のリヤホイルハウスの後部であり、前記緩衝ブラケットは該リヤホイルハウスの後半部に設けられていることを特徴とする補機用バッテリの保護構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気自動車あるいはハイブリッド車などに搭載される高電圧バッテリの近傍に搭載される補機用バッテリの取付構造に関し、特に車両の衝突などの際に、補機用バッテリに掛かる衝撃荷重を吸収することができる補機用バッテリの保護構造に関する。
【0002】
【従来の技術】電気自動車あるいはハイブリッド車などの車両はその動力源となる高電圧バッテリを搭載している。該高電圧バッテリは、電圧が高く、車両のランプやホーン、小型モータや電磁アクチュエータなどの補機を動作させる電源としては使用できないため、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのような従来のエンジンを動力源とした車のように、電気自動車あるいはハイブリッド車にも小型の補機用のバッテリが搭載される。
【0003】しかも、その搭載位置は、高電圧バッテリとの充放電のやりとりを行うため、従来のエンジン車のようにエンジンルームに搭載するのではなく、高電圧バッテリの近傍が望ましい。そして、電気自動車あるいはハイブリッド車としての乗用車あるいはバン型自動車では、高電圧バッテリは車室内(客室あるいはラッゲージルーム)に搭載される場合が多い。したがって、補機用バッテリも車室内に搭載される。この場合の車室内は主にリヤホイルハウスの後側のスペースが利用される。
【0004】ところで、車両が他物と衝突などして車両に大きな衝撃が掛かったような場合、補機用バッテリが移動したり破損したりすると、該補機用バッテリが車室内に搭載されているため、漏液により車室内を腐食する恐れがある。そこで、従来は、補機用バッテリ60を衝撃から保護するための取付構造として、図6に示すように、リヤホイルハウス52後部の床面55に補機用バッテリ60を搭載するバッテリブラケット511を取り付け、このバッテリブラケット511の前部に設けた縦壁512に衝撃吸収ブラケット562が取り付けられている。さらに、その衝撃吸収ブラケット562の前部とリヤホイルハウス52の後部に設けた緩衝ブラケット56との間の空間には、チップウレタン製の緩衝材563が取り付けられている。この衝撃吸収ブラケット562と緩衝材563とにより、車両への衝撃により補機用バッテリ60が移動したときに、その衝撃エネルギを吸収するエネルギ吸収部材を構成している。
【0005】前記衝撃吸収ブラケット562は、図7に示すように、平面視ハット断面の金属製の金具で、両フランジ部でバッテリブラケット511の縦壁512にスポット溶接により取り付けられている。ハット断面の頂部と、リヤホイルハウス52に設けた緩衝ブラケット56との間に、長方形ブロックのチップウレタン製の緩衝材563が貼り付けられている。
【0006】一方、車室内(ラッゲージルーム内)に搭載された高電圧バッテリの冷却装置の吸入ダクト533あるいは排気ダクト534などの通気ダクトは、この補機用バッテリ60の上部を通って配管されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のようなリヤホイルハウス52に設けた緩衝ブラケット56と補機用バッテリ60との間に衝撃吸収ブラケット562と緩衝材563を設けて、車両への衝撃力による補機用バッテリ60の衝撃エネルギを吸収する保護構造では、衝撃吸収ブラケット562と緩衝材563の二部品を必要とし、コスト高、重量増という問題が生じていた。また、リヤホイルハウス52に設けた緩衝ブラケット56と衝撃吸収ブラケット562との間に緩衝材563を組み付ける際に、作業スペースが狭く組付けが容易ではなかった。このため、緩衝材563を取り付けるために、例えば該緩衝材563の材質を塗装工程の乾燥炉の熱で膨張するようなものにしたり、または、高電圧バッテリの冷却装置の通気ダクト533(534)の取付工程よりも前工程にするなど、組付手順を制限する必要があった。
【0008】そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、部品点数が少なく、組付性の制限の少ないコストの安い補機用バッテリの保護構造を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る補機用バッテリの保護構造は、電気自動車あるいはハイブリッド車などに搭載される高電圧バッテリの近傍に配置される補機用バッテリの保護構造であって、補機用バッテリを載置するバッテリブラケットの前方に立設した縦壁と、該縦壁の前方に所定間隔をおいて車体要部に設けた、該縦壁と対向する面を有する緩衝ブラケットとの間にエネルギ吸収部材を介在させた補機用バッテリの保護構造において、前記バッテリブラケットの縦壁と緩衝ブラケットの対向面との間に、前記高電圧バッテリを冷却する冷却装置に連通する中空の通気ダクトを配設したことを特徴とする。よって、高電圧バッテリの冷却用の通気ダクトを補機用バッテリの保護用のエネルギ吸収材として利用できるので、わざわざ個別の緩衝材を設ける必要が無く、通気ダクトを配管すれば自ずから緩衝材とすることができ、コスト、重量、組付性を改善することができる。
【0010】また、本発明に係る補機用バッテリの保護構造は、前記車体要部が、車両のリヤホイルハウスの後部であり、前記緩衝ブラケットは該リヤホイルハウスの後半部に設けられていることを特徴とする。よって、車両へ衝撃荷重が掛かり、補機用バッテリを前方へ移動させる衝撃荷重が掛かった場合に、リヤホイルハウスという大きな強度部材がその衝撃力を受け止めるため、前記緩衝ブラケットは小型・軽量のものとすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る補機用バッテリの保護構造の一の実施の形態について図面を参照して以下に説明する。本実施の形態の補機用バッテリの保護構造は、バン型車両のハイブリッド車に設けられたものである。ここで、図1は本発明に係る補機用バッテリの保護構造を適用した車両の要部平面図であり、図2は補機用バッテリの保護構造の拡大側面図であり、図3は同じくその平面図である。
【0012】(構成)本発明に係る補機用バッテリの保護構造の構成について説明する。まず、高電圧バッテリは、図1に示すように、バン型車の左右のリヤホイルハウス52、52の間に設けられたバッテリ収納室57に、高電圧バッテリ冷却装置30を介して収納されている。すなわち、高電圧バッテリを収容したケース31に冷却用空気を供給する吸入ファン32と、該吸入ファン32とケース31を連結する吸気ダクト33を設け、さらに、ケース31内を循環して高電圧バッテリを冷却したあとの暖気を排気する排気ダクト34を設けて、排気ダクト34の先端を車外に開口している。そして、補機用バッテリ60は、このリヤホイルハウス52後部のトリム53と外板54に囲まれるスペース50に配置されている。
【0013】そして、本発明に係る補機用バッテリ60の保護構造10は、該補機用バッテリ60を搭載するバッテリブラケット11と、車両のリヤホイルハウス52後部に設け、後面に縦壁561を有する側面視ハット断面の緩衝ブラケット56と、これらバッテリブラケット11と緩衝ブラケット56との間に配置された高電圧バッテリ冷却装置30の吸気ダクト33あるいは排気ダクト34とから構成される。なお、本実施の形態では、排気ダクト34を配設している。
【0014】さらに詳しくは、図2、図3の拡大図に示すように、上記スペース50において、補機用バッテリ60を搭載するバッテリブラケット11は、車両のフレーム51上に三カ所でネジ止めするように、その天板111から3本の脚部112を下方に張り出し、3カ所の取付孔113でフレーム51に取り付ける。
【0015】バッテリブラケット11の天板111は平面視で略平行四辺形を呈し、車両の前後方向に略平行な二辺と、該二辺のうち外側の辺が車両後側に後退して、内側の辺と前後の傾斜辺で結ばれて平行四辺形となっている。前方の傾斜辺の端部に近い二カ所の位置に、それぞれ脚部112、112が下方にZ字状に張り出し、該脚部112の平面部がフレーム51上に当接して、その平面部に設けた取付孔113、113によりボルトでフレーム51に取り付けられている。
【0016】同様に、後方の傾斜辺の車両内側の端部に近い一カ所の位置に、後方の脚部112が下方にZ字状に張り出し、該脚部112の平面部がフレーム51上に当接して、その平面部に設けた取付孔113によりボルトでフレーム51に取り付けられている。したがって、このバッテリブラケット11は、三カ所の脚部によりフレーム51に取り付けられ、この三カ所の取付孔113を結ぶ三角形内に補機用バッテリ60の重心Gが位置するようにバッテリブラケット11の形状を設定する。
【0017】バッテリブラケット11の前部の二つの脚部112、112の間に、側面視L字形の縦壁12が、その横部122によりバッテリブラケット11の天板111に設けた凹部にスポット溶接により取り付けられ、その縦部121は補機用バッテリ60の前面より若干離間して位置するように、且つ、補機用バッテリ60の前面と平行になるように取り付けられている。
【0018】また、バッテリブラケット11の車両外側の辺には、縦方向に補機用バッテリ60の高さと釣り合う高さの細長いステー15が取り付けられ、一方、バッテリブラケット11の車両内側の辺の天板111から下向きに曲がる垂直フランジに長孔が設けられ、この長孔に長尺ボルト14の下端のJ字状のフック部が引っ掛けられ、一端を前述のステー15の上端にボルト締めし、他端を長尺ボルト14の上端のネジ部を挿通して、補機用バッテリ60の上面を橋渡しして締め付けるバッテリサポート13により、補機用バッテリ60が車両に取り付けられる。
【0019】なお、補機用バッテリ60は全密閉型の所謂シールドバッテリであるため、その上面は平坦面である。また、バッテリブラケット11の天板111と補機用バッテリ60の底面との間に合成樹脂製のバッテリトレイ61を介在させて、多少のバッテリの液漏れに対して、金属製のバッテリブラケット11やフレーム51等が腐食しないようにしてある。
【0020】次に、車両のリヤホイルハウス52の後面の、前記バッテリブラケット11に取り付けた縦壁12と略同じ高さで対向する位置に、側面視でハット断面の緩衝ブラケット20が、その上下の脚部202、203でリヤホイルハウス52の後面にスポット溶接され、ハット断面の頂部は対向面201としてバッテリブラケット11の縦壁12と間隔を置いて対向している。
【0021】そして、バッテリブラケット11の縦壁12と緩衝ブラケット20の対向面201との間の略同一高さ位置には、前述した高電圧バッテリ冷却装置30に連結された排気ダクト34が、車両室内側から室外側に向かって配設されている。排気ダクト34は、合成樹脂をブロー成形したもので、略矩形断面を呈し、その板厚は約1.5mmから2.0mmである。
【0022】(作用)以上のように構成した本発明の補機用バッテリの保護構造の一の実施の形態の作用について説明する。車両の通常の走行状態では、補機用バッテリ60は図2の側面図に示すようにバッテリブラケット11上の所定の位置、即ち、補機用バッテリ60の前面がバッテリブラケット11に取り付けた縦壁12から若干離れた位置に取り付けられているが、車両に軽い衝撃が掛かった場合に、補機用バッテリ60は、図4に示すように、バッテリブラケット11に取り付けたステー15や長尺ボルト14による補機用バッテリ60上面へのバッテリサポート13を介しての締め付けにも拘わらず、従来と同様にバッテリブラケット11に対してバッテリトレイ61とともに前方へ移動し、バッテリブラケット11に取り付けた縦壁12の縦部121に当接して止まる。
【0023】しかし、車両に大きな衝撃が掛かった場合は、補機用バッテリ60は、図5に示すように、バッテリブラケット11に対してバッテリトレイ61とともに前述よりさらに前方へ移動し、バッテリブラケット11に取り付けた縦壁12を押し倒して乗り上げ、高電圧バッテリ冷却装置30の排気ダクト34を押し潰して止まる。補機用バッテリ60が縦壁12を押し倒すこと、ならびに排気ダクト34を押し潰すことにより、衝撃エネルギーが吸収されて補機用バッテリ60は何ら障害を受けることはなく、したがって漏液もなく衝撃による被害を最小限に押さえることができる。
【0024】このように、補機用バッテリ60を車両のリヤホイルハウス52の後方に配置する電気自動車あるいはハイブリッド車等の車両において、リヤホイルハウス52の後方に取り付けた緩衝ブラケット20とバッテリブラケット11の前方に取り付けた縦壁12との間隙に、高電圧バッテリ冷却装置30に接続する排気ダクト34を配設したので、車両に大きな衝撃が掛かって補機用バッテリ60が前方へ移動しても、補機用バッテリ60が排気ダクト34を押し潰しながら移動するため、その衝撃エネルギを吸収して止まる。したがって、補機用バッテリ60は何ら損傷することがなく、衝撃による被害を最小限に押さえることができ、その後の車両の修理・復旧も最小限で行うことが可能になり、修理費用の低減が可能となった。
【0025】なお、本発明は前記実施の形態のものに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、前記実施の形態では、緩衝ブラケットとバッテリブラケットに取り付けた縦壁との間隙に、高電圧バッテリ冷却装置に接続する排気ダクトを配置したが、これに限られず、吸気ダクトでも可能である。また、補機用バッテリは車両の左右いずれに配置したものであってもよい。
【0026】
【発明の効果】本発明に係る補機用バッテリの保護構造は、電気自動車あるいはハイブリッド車などに搭載される高電圧バッテリの近傍に搭載される補機用バッテリの保護構造であって、補機用バッテリを載置するバッテリブラケットの前方に立設した縦壁と、該縦壁の前方に所定間隔をおいて車体要部に設けた、該縦壁と対向する面を有する緩衝ブラケットとの間にエネルギ吸収部材を介在させた補機用バッテリの保護構造において、前記バッテリブラケットの縦壁と緩衝ブラケットの対向面との間に、前記高電圧バッテリを冷却する冷却装置に連通する中空の通気ダクトを配設したので、車両に大きな衝撃が掛かって補機用バッテリが移動したときに、バッテリブラケットの縦壁と通気ダクトを変形・押しつぶしながら移動するため、衝撃エネルギを吸収して、補機用バッテリの損傷を最小限に押さえることができ、部品点数が少なく、組付性の制限が少なく、かつコストが安く、補機用バッテリの保護が可能となった。
【出願人】 【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
【出願日】 平成12年12月14日(2000.12.14)
【代理人】 【識別番号】100097009
【弁理士】
【氏名又は名称】富澤 孝 (外2名)
【公開番号】 特開2002−186101(P2002−186101A)
【公開日】 平成14年6月28日(2002.6.28)
【出願番号】 特願2000−380347(P2000−380347)