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【発明の名称】 四輪駆動車両の制御装置
【発明者】 【氏名】福田 俊彦

【氏名】平川 三昭

【氏名】内山 直樹

【氏名】喜多野 和彦

【要約】 【課題】簡便な構成により、振動特性の経時変化などを吸収しながら、広範囲の周波数域にわたり、電気モータの振動を十分に抑制できる四輪駆動車両の制御装置を提供する。

【解決手段】前後の駆動輪の一方WFL、WFRをエンジン3で駆動し、他方WRL、WRRを電気モータ4で駆動する四輪駆動車両の制御装置であって、車両2の運転状態に応じてモータ駆動力TRQ_MOTを設定するモータ駆動力設定手段11と、検出された車速Vcarに基づき、電気モータ4が車速Vcarに対応して安定した状態で回転した場合に得られるべき回転数をモータ目標回転数NOBJとして算出するモータ目標回転数算出手段11と、電気モータ4の回転数Nmotを検出するモータ実回転数検出手段15と、モータ目標回転数NOBJとモータ実回転数Nmotとの偏差DN_CLUCH_Rに基づき、モータ駆動力TRQ_MOTを補正するモータ駆動力補正手段11と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前後の駆動輪の一方をエンジンで駆動し、他方を電気モータで駆動する四輪駆動車両の制御装置であって、当該車両の運転状態に応じて前記電気モータの駆動力を設定するモータ駆動力設定手段と、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、当該検出された車速に基づき、前記電気モータが当該車速に対応して安定した状態で回転した場合に得られるべき回転数をモータ目標回転数として算出するモータ目標回転数算出手段と、前記電気モータの実際の回転数を検出するモータ実回転数検出手段と、前記算出されたモータ目標回転数と前記検出されたモータ実回転数との偏差に基づいて、前記設定されたモータ駆動力を補正するモータ駆動力補正手段と、を備えていることを特徴とする四輪駆動車両の制御装置。
【請求項2】 前記モータ駆動力補正手段は、前記モータ駆動力を、前記モータ実回転数が前記モータ目標回転数よりも大きいときには減少側に、前記モータ実回転数が前記モータ目標回転数よりも小さいときには増加側に、前記偏差の大きさに応じた度合で補正することを特徴とする、請求項1に記載の四輪駆動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、前後の駆動輪の一方をエンジンで駆動し、他方を電気モータで駆動する四輪駆動車両の制御装置に関し、特に電気モータの振動を抑制するための制振制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の制御装置として、例えば特開2000−115911号公報に開示されたものが知られている。この四輪駆動車両は、エンジンと電気モータを相互に駆動可能に連結したタイプのものである。この制御装置では、エンジン始動時における電気モータの振動を抑制するために、電気モータのトルク制御が行われる。具体的には、電気モータのトルク指令値Stが、St=基本出力トルクTa+回転振動抑制トルクTb×補償係数Ktとして算出される。ここで、基本出力トルクTaは、エンジンの始動クランキングに必要なトルクを表し、始動後の経過時間に応じてあらかじめ設定され、回転振動抑制トルクTbは、エンジンの主軸上に現れる脈動的なトルクを相殺するためのものであって、実験により、クランク角に応じてあらかじめ設定されており、また、補償係数Ktは、回転振動抑制トルクTbを、振動が発生する特定の回転域、例えばエンジンマウントの共振周波数域の近傍でのみ付与するためのものであり、エンジン回転数に応じてあらかじめ設定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した制御装置では、振動を抑制するためのパラメータである回転振動抑制トルクTbおよび補償係数Ktを、あらかじめ設定する必要がある。上述したように、回転振動抑制トルクTbは実験で求められるとともに、補償係数Ktを設定するには、例えばエンジンマウントの共振周波数が必要である。このため、電気モータの規格や車両への搭載方法などが変更されるごとに、実験や、共振周波数を決定するための詳細な解析を行って、上記パラメータを再設定しなければならない。また、このような煩雑な手法で上記パラメータを適切に設定したとしても、例えばエンジンマウントの経時変化や温度変化などが生じた場合には、その影響を受けてしまい、振動を十分に抑制することができない。さらに、実際の振動周波数は広範囲にわたるのに対し、上記の従来の手法では、特定の周波数を対象としているため、これにも対応できない。
【0004】本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、簡便な構成により、振動特性の経時変化や温度変化を吸収しながら、広範囲の周波数域にわたって電気モータの振動を十分に抑制することができる四輪駆動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、本発明の請求項1に係る発明は、前後の駆動輪の一方(実施形態における(以下、本項において同じ)前輪WFL、WFR)をエンジン3で駆動し、他方(後輪WRL、WRR)を電気モータ4で駆動する四輪駆動車両の制御装置であって、車両2の運転状態に応じて電気モータ4の駆動力(モータ駆動トルクTRQ_MOT)を設定するモータ駆動力設定手段(ECU11、図2のステップ25)と、車両2の速度(車速Vcar)を検出する車速検出手段(車輪回転数センサ12)と、検出された車速Vcarに基づき、電気モータ4が車速Vcarに対応して安定した状態で回転した場合に得られるべき回転数をモータ目標回転数NOBJとして算出するモータ目標回転数算出手段(ECU11、図2のステップ23)と、電気モータ4の実際の回転数(モータ実回転数Nmot)を検出するモータ実回転数検出手段(モータ回転数センサ15)と、算出されたモータ目標回転数NOBJと検出されたモータ実回転数Nmotとの偏差(回転数偏差DN_CLUCH_R)に基づいて、設定されたモータ駆動力を補正するモータ駆動力補正手段(ECU11、補正トルクKPTRQ、図4のステップ44)と、を備えていることを特徴とする。
【0006】この四輪駆動車両の制御装置によれば、まず、車両の運転状態に応じてモータ駆動力を設定する。また、検出された車速に基づき、電気モータが車速に対応して安定した状態で回転した場合に得られるべき回転数を、モータ目標回転数として算出する。そして、算出したモータ目標回転数と検出された実際のモータ実回転数との偏差に基づいて、モータ駆動力を補正する。
【0007】以上のように、この制御装置によれば、モータ目標回転数は、検出された実際の車速に対応して本来安定して回転した場合の電気モータの回転数を表す。したがって、このモータ目標回転数とモータ実回転数との偏差に基づいて、モータ駆動力を補正することによって、電気モータの実際の回転数をモータ目標回転数近傍に、すなわち安定回転状態に維持でき、それにより、電気モータの振動を十分に抑制することができる。このように、本発明の制御装置では、電気モータの実際の回転挙動を監視し、本来あるべきモータ目標回転数との関係に応じて、モータ駆動力を随時、補正することで、振動を抑制するので、従来の場合と比較し、構成が簡便で、汎用性に優れ、振動特性の経時変化や温度変化による影響を吸収しながら、広範囲の周波数域にわたって振動を十分に抑制することができる。
【0008】また、請求項2に係る発明は、請求項1の制御装置において、モータ駆動力補正手段は、モータ駆動力を、モータ実回転数Nmotがモータ目標回転数NOBJよりも大きいときには減少側に、モータ実回転数Nmotがモータ目標回転数NOBJよりも小さいときには増加側に、偏差の大きさに応じた度合で補正する(図4のステップ39)ことを特徴とする。
【0009】この構成によれば、モータ実回転数がモータ目標回転数よりも大きいときには、モータ駆動力を減少側に、すなわちモータ実回転数の減少方向に補正し、小さいときには、モータ駆動力を増加側に、すなわちモータ実回転数の増加方向に補正する。このように、モータ実回転数を、その実際のずれの方向に合わせて、モータ目標回転数側に引き戻す方向に補正するので、モータ目標回転数に適切に収束させることができる。また、モータ駆動力を、モータ目標回転数とモータ実回転数との偏差の大きさに応じた度合で補正するので、制御の応答性を高めることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。図1は、本発明による制御装置1を適用した四輪駆動車両(以下「車両」という)2の概略構成を示している。同図に示すように、この車両2は、左右の前輪WFL、WFR(以下、総称する場合は「WF」という)をエンジン3で駆動するとともに、左右の後輪WRL、WRR(以下、総称する場合は「WR」という)をモータ4で駆動するものである。
【0011】エンジン3は、車両2の前部に横置きに搭載されており、トルクコンバータ5aを有する自動変速機5、およびフロントディファレンシャル6を介して、前輪WFに接続されている。
【0012】モータ4は、その駆動源であるバッテリ7に接続されるとともに、電磁クラッチを含む減速機構8とリヤディファレンシャル9を介して、後輪WRに接続されている。モータ4がバッテリ7で駆動され、かつ減速機構8の電磁クラッチが接続されているときに、後輪WRがモータ4で駆動される。このとき、車両2は、モータ4によりアシストされた四輪駆動状態になる(駆動モード)。一方、モータ4がバッテリ7で駆動されていないときや、電磁クラッチが遮断されているときには、車両2は二輪駆動状態になる。なお、モータ4は比較的小型のものであり、車速Vcarが大きい高速運転時には、モータ4が後輪WRに追随して回転することが困難になるため、電磁クラッチが遮断されるようになっている。モータ4の出力は、例えば最大12kWの範囲内で任意に変更することが可能である。一方、モータ4は、車両2の制動エネルギーにより回転駆動されているときなどに発電を行い(減速回生モード)、発電した電力をバッテリ7に充電するジェネレータとしての機能を有している。このバッテリ7の充電残量SOCは、検出されたバッテリ7の電流・電圧値に基づき、後述するECU11によって算出される。
【0013】モータ4は、モータドライバー10を介して、ECU11に接続されており、モータ4の駆動モードと減速回生モードの間の切換え、駆動トルク、駆動モード時における最大出力の設定、および減速回生モード時における回生充電量などは、ECU11の制御により、モータドライバー10によって制御される。減速機構8の電磁クラッチの接続・遮断もまた、そのソレノイド(図示せず)への電流の供給・停止がECU11で制御されることによって、制御される。
【0014】左右の前輪WFL、WFRおよび後輪WRL、WRRには、磁気ピックアップ式の車輪回転数センサ12(車速検出手段)がそれぞれ設けられており、これらの車輪回転数センサ12から、各車輪回転数N_FL、N_FR、N_RL、N_RRを表すパルス信号がECU11にそれぞれ出力される。ECU11は、これらのパルス信号から、前輪速度V_FF、後輪速度V_RRや車速Vcarなどを算出する。
【0015】また、エンジン3のクランクシャフト(図示せず)には、所定のクランク角ごとにクランクパルス信号CRKを出力するクランク角センサ13が、自動変速機5のカウンタシャフト5bには、その回転数Ncounterを表すパルス信号を出力する磁気ピックアップ式のメイン・カウンタシャフト回転数センサ14aが設けられており、これらの信号もまた、ECU11に出力される。ECU11は、クランクパルス信号CRKに基づいて、エンジン回転数NEを算出する。また、モータ4には、レゾルバによるモータ回転数センサ15(モータ実回転数検出手段)が設けられており、モータ4の回転数Nmotを表すパルス信号がECU11に出力される。
【0016】また、ECU11には、アクセル開度センサ16から、アクセルペダル17のON/OFFを含む開度(アクセル開度)θAPを表す検出信号が入力される。ECU11にはさらに、ブレーキのマスタシリンダ(図示せず)に取り付けたブレーキ圧センサ19からブレーキ圧PBRを表す検出信号が、操舵角センサ20からハンドル(図示せず)の操舵角θSTRを表す検出信号が、加速度センサ22、23から前後の車輪WF、WRの加速度GF、GRを表す検出信号が、それぞれ入力される。
【0017】上記ECU11は、本実施形態において、モータ駆動力設定手段、モータ目標回転数算出手段およびモータ駆動力補正手段を構成するものであり、RAM、ROM、CPUおよびI/Oインターフェースなどからなるマイクロコンピュータ(いずれも図示せず)で構成されている。ECU11は、上述した各種センサからの検出信号に基づいて、車両2の走行状態を判別するとともに、アクセル開度θAPおよび車速Vcarに基づき、車両2全体の目標駆動力を算出する。また、検出された操舵角θSTR、車速Vcar、ブレーキ圧PBR、および前後の車輪加速度GF、GRなどに応じて、前後の駆動力配分を算出し、その結果および車両2の目標駆動力から、エンジン目標駆動力およびモータ目標駆動力を算出する。そして、算出したエンジン目標駆動力に基づく駆動信号DBW_THを、DBW式のアクチュエータ24に出力することによって、スロットル弁25の開度(スロットル弁開度θTH)を制御し、エンジン3の駆動力を制御する。また、モータ目標駆動力に基づき、モータ駆動トルクTRQ_MOT(モータ駆動力)を算出し、それに基づく駆動信号をモータドライバー10に出力することによって、モータ4の駆動力を制御する。
【0018】図2は、ECU11で実行されるモータ4の制振制御処理のメインフローを示すフローチャートである。このプログラムは、例えば所定時間(例えば10ms)ごとに実行される。この処理ではまず、ステップ21(「S21」と図示。以下同じ)において、車速Vcarを算出する。この車速Vcarの算出は、例えば後輪速度V_RRに基づいて行われる。なお、車速Vcarは、路面の摩擦係数μや車輪加速度GF、GRに応じて補正してもよく、また、車体に設けられたGセンサ(図示せず)により検出される車体加速度に応じて補正してもよく、あるいは前輪速度V_FFをも加味して求めてもよい。
【0019】次いで、モータ回転数センサ15からの検出信号に基づき、モータ4の実際の回転数(モータ実回転数)Nmotを算出する(ステップ22)。次に、モータ4の目標回転数(モータ目標回転数)NOBJを算出する(ステップ23)。このモータ目標回転数NOBJは、上記ステップ21で算出した車速Vcarに対応して、モータ4がぶれやずれのない安定した状態で回転した場合に得られるべき回転数を表すものであり、具体的には、車速Vcarならびに減速機構8およびリヤディファレンシャル9の減速比に基づいて、算出される。
【0020】次いで、上記ステップ23、22でそれぞれ算出したモータ目標回転数NOBJとモータ実回転数Nmotとの偏差(回転数偏差)DN_CLUCH_R(=NOBJ−Nmot)を算出する(ステップ24)。次に、この回転数偏差DN_CLUCH_Rを用い、モータ駆動トルクTRQ_MOTを後述するようにして算出する(ステップ25)。最後に、このモータ駆動トルクTRQ_MOTに基づく駆動信号をモータドライバー10に出力する(ステップ26)ことによって、モータ4の駆動力を制御し、本プログラムを終了する。
【0021】図3および図4は、図2のステップ25で実行されるモータ駆動トルクの算出サブルーチンを示す。この算出処理ではまず、図3のステップ31〜36において、モータ4の制振制御の実行条件が成立しているか否かを判定する。まず、モータ実回転数Nmotが、所定の下限回転数NLMTLよりも大きいか否かを判別する(ステップ31)。この下限回転数NLMTLは、制御ハンチングを防止するためのヒステリシス付きのものであり、例えば1000、900rpmに設定されている。この答がNO、すなわちモータ実回転数Nmotが下限回転数NLMTL以下のときには、モータ4が低回転域にあり、そのトルクが大きいことで、共振を生じるおそれが極めて少ないとして、制振制御を実行しないものとし、そのことを表すために制振制御許可フラグF_ADDTRQを「0」にセットする(ステップ35)。
【0022】前記ステップ31の答がYES、すなわちNmot>NLMTLのときには、モータ実回転数Nmotが、ヒステリシス付きの所定の上限回転数NLMTH(例えば2900、3000rpm)よりも小さいか否かを判別する(ステップ32)。この答がNO、すなわちモータ実回転数Nmotが上限回転数NLMTH以上のときには、モータ4が高回転域にあり、アクセルペダル17のON/OFFなどによるトルクの変動が小さいことで、やはり振動が増幅するおそれが極めて少ないとして、制振制御を実行しないものとし、前記ステップ35に進み、制振制御許可フラグF_ADDTRQを「0」にセットする。以上の2つのステップ31、32の判別により、制振制御のためのモータ4の余分な電力消費を防止できる。
【0023】前記ステップ32の答がYES、すなわちNmot<NLMTHのときには、前輪速度V_FFの変動値ΔV_FFが、その基準値ΔVREFよりも小さいか否かを判別する(ステップ33)。この答がNO、すなわち前輪速度変動値ΔV_FFが基準値ΔVREF以上のときには、エンジン3で駆動される前輪速度V_FFの変動が大きいため、制振制御の基準となるモータ目標回転数NOBJが適切に設定されておらず、制振制御によりモータ4の振動を助長するおそれがあるとして、制振制御を実行しないものとし、前記ステップ35を実行する。
【0024】前記ステップ33の答がYES、すなわちΔV_FF<ΔVREFのときには、バッテリ7の充電残量SOCが、その基準値SOCREF(例えば20%)よりも大きいか否かを判別する(ステップ34)。この答がNO、すなわち充電残量SOCが基準値SOCREF以下のときには、制振制御により電力消費量が増大するのを回避するために、制振制御を実行しないものとし、前記ステップ35を実行する。
【0025】一方、前記ステップ31〜34の答がすべてYESのときには、制振制御の実行条件が成立しているとして、そのことを表すために制振制御許可フラグF_ADDTRQを「1」にセットする(ステップ36)。
【0026】次いで、前記ステップ35または36に続くステップ37では、制振制御許可フラグF_ADDTRQが「1」であるか否かを判別する。この答がNO、すなわち制振制御の実行条件が成立していないときには、補正トルクKPTRQを値0に設定し(ステップ38)、後述するステップ44に進む。一方、ステップ37の答がYES、すなわち制振制御の実行条件が成立しているときには、図2のステップ24で算出した回転数偏差DN_CLUCH_Rを用い、補正トルクKPTRQを次式(1)によって算出する(ステップ39)。KPTRQ = DN_CLUCH_R*KPADDTRQ ……(1)ここで、KPADDTRQは、補正係数であり、車両の機種ごとに実験などに基づいてあらかじめ設定される。
【0027】次に、ステップ40〜43において、上記ステップ39で算出した補正トルクKPTRQのリミット処理を行う。このリミット処理は、算出した補正トルクKPTRQが過大になることにより振動をむしろ助長するのを防止するために実行される。まず、補正トルクKPTRQがその上限値KPTRQLMTH(例えば0.05Nm)よりも大きいか否かを判別し(ステップ40)、その答がYESで、上限値KPTRQLMTHをオーバーしているときには、補正トルクKPTRQを上限値KPTRQLMTHに保持する(ステップ41)。また、ステップ40の答がNOのときには、補正トルクKPTRQがその下限値KPTRQLMTL(負値、例えば−0.05Nm)よりも小さいか否かを判別し(ステップ42)、その答がYESで、下限値KPTRQLMTLをオーバーしているときには、補正トルクKPTRQを下限値KPTRQLMTLに保持する(ステップ43)。一方、ステップ42の答がNOで、KPTRQLMTL≦KPTRQ≦KPTRQLMTHのときには、次のステップ44に進み、ステップ39で算出した補正トルクKPTRQをそのまま用いる。
【0028】次に、前記ステップ38、39、41または43で算出した補正トルクKPTRQを用い、モータ駆動トルクTRQ_MOTを次式(2)によって算出する(ステップ44)。TRQ_MOT = TRQ_MOT+KPTRQ ……(2)ここで、右辺のTRQ_MOTは、車両2の目標駆動力および前後の駆動力配分に基づいて算出された、モータ4に要求されるモータ駆動トルクである。
【0029】次に、ステップ45〜48において、ステップ44で算出したモータ駆動トルクTRQ_MOTのリミット処理を行う。このリミット処理は、算出した補正後のモータ駆動トルクTRQ_MOTを、モータ4の出力可能な範囲内に収めるために実行される。まず、モータ駆動トルクTRQ_MOTが、駆動側の上限値TMOT_MAXDよりも大きいか否かを判別し(ステップ45)、その答がYESのときには、モータ駆動トルクTRQ_MOTを上限値TMOT_MAXDに保持する(ステップ46)。また、ステップ45の答がNOのときには、モータ駆動トルクTRQ_MOTが、引きずり側の下限値TMOT_MAXR(負値)よりも小さいか否かを判別し(ステップ47)、その答がYESのときには、モータ駆動トルクTRQ_MOTを下限値TMOT_MAXRに保持する(ステップ48)。一方、ステップ47の答がNOで、TMOT_MAXR≦TRQ_MOT≦TMOT_MAXDのときには、本プログラムを終了し、ステップ44で算出したモータ駆動トルクTRQ_MOTをそのまま用いる。
【0030】図5は、これまでに説明した制振制御処理によって得られる動作例を、模式的に表したものである。この例は、車速Vcarが車両2の発進時からリニアに増大するとともに、その走行中、車両2が例えばマンホールの段差を通ったことによる外乱によって、モータ4の回転数が変動した場合を示している。上述した制振制御処理では、上記のような車速Vcarの変化に伴い、図2のステップ23により、モータ目標回転数NOBJはリニアに増大するように算出される(同図(a))とともに、モータ4の回転数変動は、モータ実回転数Nmotとして検出される(同図(b))。次いで、図2のステップ24で、両者の回転数偏差DN_CLUCH_R(=NOBJ−Nmot)が算出され(同図(c))、図4のステップ39において、補正トルクKPTRQが回転数偏差DN_CLUCH_Rに比例する値として算出される(同図(d))。そして、図4のステップ44において、算出した補正トルクKPTRQをモータ駆動トルクTRQ_MOT(同図(e))に加算することによって、補正後のモータ駆動トルクTRQ_MOT(同図(f))が得られる。
【0031】以上のように、本実施形態によれば、モータ目標回転数NOBJは、検出された実際の車速Vcarに対応して本来安定して回転した場合のモータ4の回転数を表す。したがって、このモータ目標回転数NOBJとモータ実回転数Nmotとの回転数偏差DN_CLUCH_Rに基づいて、モータ駆動トルクTRQ_MOTを補正することによって、モータ4の実際の回転数をモータ目標回転数NOBJ近傍に、すなわち安定回転状態に維持でき、それにより、モータ4の振動を十分に抑制することができる。このように、本実施形態では、モータ4の実際の回転挙動を監視し、本来あるべきモータ目標回転数NOBJとの関係に応じて、モータ駆動トルクTRQ_MOTを随時、補正することで、振動を抑制するので、従来の場合と比較し、構成が簡便で、汎用性に優れ、振動特性の経時変化や温度変化による影響を吸収しながら、広範囲の周波数域にわたって振動を十分に抑制することができる。
【0032】また、図5の説明から明らかなように、補正トルクKPTRQは、モータ実回転数Nmotがモータ目標回転数NOBJよりも大きいときには、負値、すなわちモータ駆動トルクTRQ_MOTの減少側に設定され、小さいときには、正値、すなわちモータ駆動トルクTRQ_MOTの増加側に設定される。これにより、モータ実回転数Nmotを、その実際のずれの方向に合わせて、モータ目標回転数NOBJ側に引き戻す方向に補正でき、したがって、モータ目標回転数NOBJに適切に収束させることができる。また、補正トルクKPTRQは、回転数偏差DN_CLUCH_Rの大きさに応じた値に設定されるので、制御の応答性を高めることができる。
【0033】なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態は、前輪をエンジンで駆動し、後輪をモータで駆動するタイプの前後輪駆動車両に、本発明を適用した例であるが、本発明は、これに限らず、エンジンおよびモータによる駆動を前後輪逆に行う車両にも、同様に適用することが可能である。また、実施形態では、回転数偏差DN_CLUCH_Rに基づき補正トルクKPTRQを算出する際の補正係数KPADDTRQとして、固定値を用いているが、これを変数としてもよい。例えば、モータ4を含むモータ駆動系の共振回転数をあらかじめ求め、この共振回転数を含む特定回転数領域において、補正係数KPADDTRQをモータ実回転数Nmotに応じて変更するようにしてもよい。それにより、モータ駆動系の共振をより確実に防止することができる。さらに、図5の動作例を、マンホールの段差による外乱によってモータの回転数が変動した例として説明したが、本発明は、車両の急激な加減速によるトルク変動や、自動変速機の変速によるトルク変動などにより、モータの回転数が変動した場合にも、もちろん有効に適用できる。
【0034】
【発明の効果】以上のように、本発明の請求項1による四輪駆動車両の制御装置によれば、電気モータの実際の回転数を、モータ目標回転数近傍の安定回転状態に維持するので、構成が簡便で、汎用性に優れ、振動特性の経時変化や温度変化による影響を吸収しながら、広範囲の周波数域にわたって振動を十分に抑制することができる。
【0035】また、請求項2による四輪駆動車両の制御装置によれば、モータ実回転数をモータ目標回転数に適切に収束させるとともに、その応答性を高めることができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成12年11月30日(2000.11.30)
【代理人】 【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
【公開番号】 特開2002−171607(P2002−171607A)
【公開日】 平成14年6月14日(2002.6.14)
【出願番号】 特願2000−364868(P2000−364868)