| 【発明の名称】 |
前後輪駆動車両の制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】内山 直樹
【氏名】天沼 弘勝
【氏名】須合 泰彦
|
| 【要約】 |
【課題】比較的小型の電気モータおよび蓄電装置を用いながら、電気エネルギの回収を車速にかかわらず過不足なく行うことができ、蓄電装置の充電残量を適量に維持することができる前後輪駆動車両の制御装置を提供する。
【解決手段】前輪をエンジン3で、後輪を電気モータ4でそれぞれ駆動する前後輪駆動車両2の制御装置1は、ECU20を備える。ECU20は、バッテリ9の充電残量SOCを算出し、電気エネルギの回収の際、クラッチ10の締結力FCLを、車速Vcarが第1リミット値VLMT1以下のときにはクラッチ10が滑りのない状態で締結される値に、車速Vcarが第2リミット値VLMT2以上のときには充電残量SOCに応じてクラッチ10が滑りのある状態で締結される値にそれぞれ制御することより、電気エネルギの回収量を制御する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前後の駆動輪の一方をエンジンで駆動し、他方を電気モータで駆動するとともに、前記電気モータの発電により、走行エネルギを前記電気モータを駆動するための電気エネルギとして回収可能に構成され、当該回収した電気エネルギを蓄電装置に充電する前後輪駆動車両の制御装置であって、前記他方の駆動輪と前記電気モータとの間を締結・遮断するとともに、当該締結力を可変に構成されたクラッチと、前記蓄電装置の充電残量を検出する充電残量検出手段と、前記前後輪駆動車両の車速を検出する車速検出手段と、前記電気エネルギの回収中における前記クラッチの締結力を、前記検出された車速が所定値未満のときには、前記クラッチが滑りのない状態で締結される値に設定し、前記検出された車速が前記所定値以上のときには、前記検出された充電残量に応じて、前記クラッチが滑りのある状態で締結される値に設定するクラッチ締結力設定手段と、前記設定された締結力で前記クラッチを締結することにより、前記電気エネルギの回収量を制御するクラッチ制御手段と、を備えることを特徴とする前後輪駆動車両の制御装置。 【請求項2】 前記電気モータの回転数を検出するモータ回転数検出手段をさらに備え、前記クラッチ締結力設定手段は、前記車速が前記所定値以上のときには、前記検出された前記電気モータの回転数が前記充電残量に応じた目標値になるように、前記クラッチの締結力を設定することを特徴とする請求項1に記載の前後輪駆動車両の制御装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、前後の駆動輪の一方をエンジンで駆動し、他方を電気モータで駆動するとともに、電気モータの発電により、走行エネルギを電気モータを駆動するための電気エネルギとして回収する前後輪駆動車両の制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、この種の制御装置として、特開2000−79833号公報に記載されたものが知られている。この前後輪駆動車両では、前輪がこれに接続されたエンジンにより駆動されるとともに、後輪がこれにリヤ差動機構を介して接続された電気モータにより駆動される。この制御装置では、前後輪駆動車両の減速走行時などに、電気モータがジェネレータとして発電動作を行うことにより、走行エネルギが電気エネルギとして回収され、キャパシタに充電されるとともに、充電時以外では、このキャパシタの電気エネルギにより、電気モータが必要に応じて駆動される。 【0003】また、他の前後輪駆動車両の制御装置として、特開平11−291774号公報に記載されたものが知られている。この前後輪駆動車両では、エンジンが前輪に接続され、電気モータが、減速機構、クラッチおよびリヤ差動機構を介して、後輪に接続されている。この制御装置では、発進時、クラッチを締結し、電気モータによる後輪の駆動のみを実行することにより、前後輪駆動車両を発進させるとともに、発進後、アクセル開度が所定開度よりも大きくなったときに、エンジンが始動され、前輪の駆動が開始される。そして、走行中、クラッチの出力側の回転速度がその入力側の回転速度を上回ったとき、すなわち車速が電気モータの回転による後輪の回転速度を上回ったときには、クラッチにより、後輪と電気モータとの間が遮断される。さらに、エンジンによる前輪の駆動を開始した後、車速が所定値を超えたときに、電気モータが停止される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記の前者の制御装置では、比較的小型の電気モータを用いて、要求される後輪駆動力を確保しようとすると、リヤ差動機構の減速比を大きい値に設定しなければならない。そのようにした場合、電気モータは、発進から最高速度までの広範囲の速度域での走行中、リヤ差動機構の減速比により、後輪よりも高い回転数で常に回転することになるので、電気モータの回転領域を極めて広くせざるを得ないことから、耐久性の点で無理がある。したがって、電気モータの耐久性を確保するために、電気モータが必然的に大型化してしまい、製造コストの上昇を招くとともに、取付スペースが確保しにくくなくなる。また、電気モータの大型化に伴い、その電力の回生能力が上昇することで、蓄電装置の容量を増大させる必要が生じ、これも大型化してしまう。 【0005】以上の問題を解消をするために、前者の制御装置に上記の後者の制御装置を適用することが考えられる。すなわち、電気モータと後輪の間にクラッチを設けるとともに、クラッチを制御することにより、車速が所定値未満のときには、電気モータと電気モータの間を締結し、車速が所定値以上に達したときには、後輪と電気モータとの間を遮断することが考えられる。そのようにした場合、電気モータの回転領域をより狭く設定できることから、より小型の電気モータを用いることが可能になる。しかし、クラッチの遮断により、所定値以上の車速域での電力回生が不可能となるため、蓄電装置に蓄えられている電力量(以下「充電残量」という)が不足している場合でも、車速が所定値未満に低下するまで電力回生を行うことができない。その結果、車速が所定値未満に低下したときに、クラッチを締結したとしても、電気モータによる駆動力を適切に確保できないおそれがある。 【0006】本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、前後輪の一方をエンジンで、他方を電気モータでそれぞれ駆動する場合において、比較的小型の電気モータおよび蓄電装置を用いながら、電気エネルギの回収を車速にかかわらず過不足なく行うことができ、蓄電装置の充電残量を適量に維持することができ、それにより電気モータの駆動力を適切に確保することができる前後輪駆動車両の制御装置を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、本発明の請求項1に係る発明は、前後の駆動輪の一方(例えば実施形態における(以下、この項において同じ)前輪WFL,WFR)をエンジン3で駆動し、他方(後輪WRL,WRR)を電気モータ4で駆動するとともに、電気モータ4の発電により、走行エネルギを電気モータ4を駆動するための電気エネルギとして回収可能に構成され、回収した電気エネルギを蓄電装置(バッテリ9)に充電する前後輪駆動車両2の制御装置1であって、他方の駆動輪(後輪WRL,WRR)と電気モータ4との間を締結・遮断するとともに、締結力FCLを可変に構成されたクラッチ10と、蓄電装置(バッテリ9)の充電残量SOCを検出する充電残量検出手段(ECU20、ステップ6)と、前後輪駆動車両2の車速Vcarを検出する車速検出手段(ECU20、車輪回転数センサ22)と、電気エネルギの回収中におけるクラッチ10の締結力FCLを、検出された車速Vcarが所定値未満のとき(第1リミット値VLMT1以下のとき)には、クラッチ10が滑りのない状態で締結される値に設定し、検出された車速Vcarが所定値(第2リミット値VLMT2)以上のときには、検出された充電残量SOCに応じてクラッチ10が滑りのある状態で締結される値に設定するクラッチ締結力設定手段(ECU20、ステップ4,8)と、設定された締結力FCLでクラッチ10を締結することにより、電気エネルギの回収量を制御するクラッチ制御手段(アクチュエータ16、ECU20)と、を備えることを特徴とする。 【0008】この前後輪駆動車両の制御装置によれば、クラッチ締結力設定手段により、電気エネルギの回収中におけるクラッチの締結力が、車速が所定値未満のときにはクラッチが滑りのない状態で締結される値に、検出された車速が所定値以上のときには検出された充電残量に応じてクラッチが滑りのある状態で締結される値にそれぞれ設定され、また、クラッチ制御手段により、このように設定されたクラッチ締結力でクラッチが締結される。このように、車速が所定値未満のとき、すなわち電気モータが過回転のおそれのない回転領域で回転するときには、クラッチが滑りのない状態で締結されるので、電気エネルギの回収を迅速に行うことができる。また、車速が所定値以上のときには、クラッチが充電残量に応じて滑りのある状態で締結されるので、電気モータの回転領域をより狭く設定できることによって、比較的小型の電気モータを用いながら、電気エネルギの回収を行うことができ、それに伴い、蓄電装置も小型化できる。さらに、車速が所定値以上のときには、クラッチ締結力が充電残量に応じて設定されるので、電気エネルギの回収量を充電残量に応じて適切に得ることができる。以上のように、比較的小型の電気モータおよび蓄電装置を用いながら、電気エネルギを車速にかかわらず常に回収し、蓄電装置の充電残量を適量に維持することができ、それにより、車両の駆動力を適切に確保できる。 【0009】請求項2に係る発明は、請求項1に記載の前後輪駆動車両2の制御装置1において、電気モータ4の回転数NMOTを検出するモータ回転数検出手段(ECU20、モータ回転角度位置センサ21)をさらに備え、クラッチ締結力設定手段は、車速Vcarが所定値(第2リミット値VLMT2)以上のときには、検出された電気モータ4の回転数NMOTが充電残量SOCに応じた目標値(目標モータ回転数NMOTCMD)になるように、クラッチ10の締結力FCLを設定することを特徴とする。 【0010】この前後輪駆動車両の制御装置によれば、電気モータ回転数検出手段により電気モータの回転数が検出され、クラッチ締結力設定手段により、車速が所定値以上のときには、検出された電気モータの回転数が充電残量に応じた目標値になるように、クラッチの締結力が設定される。したがって、比較的小型の電気モータを用いたときでも、高速走行中、発電中の電気モータの回転数を最大許容回転数よりも低い値に保持しながら、モータによる発電を安定した状態で継続して実行することができる。 【0011】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る制御装置について説明する。図1は、本発明による制御装置1を適用した前後輪駆動車両(以下「車両」という)2の概略構成を示している。同図に示すように、この車両2は、左右の前輪WFL、WFR(一方の駆動輪)をエンジン3で駆動するとともに、左右の後輪WRL、WRR(他方の駆動輪)を電気モータ(以下「モータ」という)4で駆動するものである。 【0012】エンジン3は、車両2の前部に横置きに搭載されており、図示しないトルクコンバータを有する自動変速機5、減速ギヤ(図示せず)を有するフロントディファレンシャル6、左右の前駆動軸7,7および左右の等速ジョイント8,8などを介して、左右の前輪WFL、WFRに接続されている。 【0013】モータ4は、サーボモータで構成され、その駆動源であるバッテリ9に後述するPDU15を介して接続されているとともに、クラッチ10、中間駆動軸11、減速ギヤ(図示せず)を有するリヤディファレンシャル12、左右の後駆動軸13,13および左右の等速ジョイント14,14などを介して、左右の後輪WRL、WRRに接続されている。モータ4がバッテリ9で駆動されており、かつクラッチ10が締結されているときに、後輪WRL、WRRが駆動され、このとき、車両2は四輪駆動状態になる。このモータ4は、所定の最大許容回転数NMOTLMT以下の回転数で連続運転可能であるとともに、その出力は、最大出力(例えば12kW)以下の範囲内で任意に変更することが可能である。 【0014】また、モータ4は、車両2の走行エネルギにより回転駆動されているときに発電(すなわち回生)を行うジェネレータとしての機能を有しており、発電された電気エネルギは、PDU15を介してバッテリ9(蓄電装置)に充電される。このバッテリ9の充電残量SOCは、検出されたバッテリ9の電流・電圧値に基づき、後述するECU20によって算出される。 【0015】さらに、モータ4は、PDU15を介して、ECU20に接続されており、後述するように、モータ4による発電を実行する際には、ECU20によりモータ4の回転数NMOTが制御される。このPDU15は、インバータなどからなる電気回路で構成されている。また、モータ4には、レゾルバからなるモータ回転角度位置センサ21が設けられており、このモータ回転角度位置センサ21(モータ回転数検出手段)は、モータ4の回転角度位置に応じた検出信号をECU20に出力する。この検出信号により、ECU20は、モータ回転数NMOTを算出する。 【0016】クラッチ10は、多数のクラッチ・ディスク10a(1つのみ図示)および多数のクラッチ・プレート10b(1つのみ図示)を櫛歯状に交互に配置した湿式多板クラッチで構成されている。これらのクラッチ・ディスク10aはモータ4の回転軸4aに連結され、クラッチ・プレート10bは中間駆動軸11に連結されている。 【0017】また、クラッチ10には、アクチュエータ16(クラッチ制御手段)が設けられている。このアクチュエータ16は、駆動回路18を介してECU20に電気的に接続されたリニアソレノイドバルブと、コイルばね(いずれも図示せず)などで構成されている。また、このリニアソレノイドバルブには、油圧供給機構30が接続されている。 【0018】この油圧供給機構30は、オイルポンプ31およびアキュムレータ32などで構成されている。このオイルポンプ31は、駆動軸13に連結されており、駆動軸13の回転に伴い、昇圧した油圧をアキュムレータ32に供給する。アキュムレータ32は、オイルポンプ31が昇圧した油圧を蓄えるとともに、蓄えた油圧をリニアソレノイドバルブに供給する。 【0019】また、アクチュエータ16は、ECU20からの駆動信号によりリニアソレノイドバルブが駆動されているときには、アキュムレータ32から供給された油圧により、コイルばねの付勢力に抗しながらクラッチ・ディスク10aをクラッチ・プレート10bに押し付け、クラッチ10を締結する。このクラッチ10の締結力は、リニアソレノイドバルブへの駆動信号のデューティ比を制御することによって制御され、連続的に変化させることが可能である。一方、リニアソレノイドバルブが駆動されていないときには、アキュムレータ32からの油圧の供給が停止され、コイルばねの付勢力によりクラッチ・ディスク10aとクラッチ・プレート10bの間が切り離され、クラッチ10が遮断される。 【0020】一方、左右の前輪WFL、WFRおよび後輪WRL、WRRには、磁気ピックアップ式の車輪回転数センサ22(車速検出手段)がそれぞれ設けられており、これらの車輪回転数センサ22から、左右の前輪回転数N_FL,N_FRおよび左右の後輪回転数N_RL,N_RRを表す検出信号(パルス信号)が、ECU20にそれぞれ出力される。ECU20は、これらの検出信号に基づき、車速Vcarおよび中間駆動軸11の回転数(以下「駆動軸回転数」という)NDRVを算出する。また、ECU20には、アクセル開度センサ23から、アクセルペダル17のオン/オフを含む開度を表す検出信号が入力される。 【0021】上記ECU20(充電残量検出手段、車速検出手段、クラッチ締結力設定手段、クラッチ制御手段、モータ回転数検出手段)は、RAM、ROM、CPUおよびI/Oインターフェースなどからなるマイクロコンピュータ(いずれも図示せず)で構成されている。ECU20は、前記各種のセンサ21〜23からの検出信号に基づき、後述するように、アクチュエータ16を駆動してクラッチ10の締結・遮断およびその締結力FCLを制御するとともに、モータ回転数NMOTおよび回生トルクTRQ_MOTを制御することにより、モータ4による発電を制御する。 【0022】以下、図2のフローチャートを参照しながら、モータ4による発電を行うための制御処理について説明する。この処理は、登坂走行時以外でかつアクセルペダル17がオフされていることを実行条件とするものであり、モータ4による発電を行うためにクラッチ10の締結・遮断やモータ回転数NMOTなどを制御するものである。この処理は、所定の時間(例えば10msec)ごとに実行される。この処理では、以下に述べるように、低速走行中にステップ2〜4のモータ回転数同期制御および低速時クラッチ制御処理が実行され、高速走行中にクラッチ10の締結条件が成立したときには、ステップ7〜9の高速時クラッチ制御処理が実行される。 【0023】まず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、車速Vcarが第1リミット値VLMT1以下であるか否かを判別する。この第1リミット値VLMT1は、車速Vcarの上限値であり、クラッチ10を最大締結力で滑りのない状態すなわち直結状態で締結しても、モータ4が最大許容回転数NMOTLMTを超えないような値(例えば65km/h)に設定される。この判別結果がYESのとき、すなわち車速Vcarがクラッチ10を直結可能な範囲にあるときには、ステップ2に進み、モータ回転数NMOTを、駆動軸回転数NDRVに同期(一致)させるモータ回転数同期制御を実行する。この処理の具体的な説明は省略するが、駆動軸回転数NDRVを目標値として、モータ回転数NMOTのPIDフィードバック制御が実行される。 【0024】次に、ステップ3に進み、モータ回転数NMOTと駆動軸回転数NDRVとの回転偏差ENMOTを算出するとともに、この回転偏差ENMOTの絶対値|ENMOT|が所定値ENLMT(例えば500rpm)以下であるか否かを判別する。この回転偏差ENMOTは、モータ4と中間駆動軸11との回転差、すなわちクラッチ・ディスク10aとクラッチ・プレート10bとの回転差を示す。この判別結果がNOのとき、すなわちクラッチ・ディスク10aとクラッチ・プレート10bとの回転差が大きいときには、クラッチ10を締結不能な状態にあるとして、そのまま本処理を終了する。 【0025】一方、ステップ3の判別結果がYESのとき、すなわちクラッチ・ディスク10aとクラッチ・プレート10bとの回転差が小さいときには、クラッチ・ディスク10aとクラッチ・プレート10bが同期したとして、ステップ4に進み、アクチュエータ16のリニアソレノイドバルブを駆動することにより、クラッチ10を最大締結力で直結させて、本処理を終了する。以上の低速時クラッチ制御処理に加えて、モータ4の回生トルクTRQ_MOTの制御を実行することにより、低速走行中、モータ4による発電が行われる。 【0026】一方、ステップ1の判別結果がNOのとき、すなわちVcar>VLMT1のときには、ステップ5に進み、車速Vcarが第2リミット値VLMT2以上であるか否かを判別する。この第2リミット値VLMT2(所定値)は、上記第1リミット値VLMT1に所定のヒステリシスを付加した値(例えば70km/h)であり、このような値を用いることにより、車速Vcarの変動による制御のハンチングが防止される。この判別結果がNOのときには、車速Vcarがクラッチ10を直結可能な範囲にあるとして、そのまま本処理を終了する。 【0027】一方、ステップ5の判別結果がYESのとき、すなわちVcar≧VLMT2のときには、ステップ6に進み、バッテリ9の充電残量SOCが所定の判定値SOC1(例えば95%)以下であるか否かを判別する。この判別結果がNOのときには、バッテリ9が充電の不要な状態にあるとして、本処理を終了する一方、判別結果がYESのときには、バッテリ9を充電するべき状態にあって、クラッチ10の締結条件が成立しているとして、以下のステップ7〜9の高速時クラッチ制御処理を実行する。 【0028】すなわち、充電残量SOCに基づき、目標モータ回転数NMOTCMDを算出し(ステップ7)、この目標モータ回転数NMOTCMDからクラッチ締結力FCLを算出する(ステップ8)とともに、クラッチ締結力FCLから、アクチュエータ16のリニアソレノイドバルブに出力する駆動信号のデューティ比IOUT1を算出する(ステップ9)。そして、このデューティ比IOUT1に基づいた駆動信号をアクチュエータ16に出力することにより、クラッチ10をクラッチ締結力FCLに応じた滑り状態で締結して、本処理を終了する。 【0029】次に、図3に示すブロック図を参照しながら、上記ステップ7〜9の高速時クラッチ制御と、モータ4の高速時回生トルク制御について詳細に説明する。最初に、高速時クラッチ制御処理について説明すると、まず、充電残量SOCに基づき、図4に一例を示すSOC−NMOTCMDテーブルを検索することにより、目標モータ回転数NMOTCMD(目標値)を算出する。同図に示すように、このテーブルでは、目標モータ回転数NMOTCMDは、充電残量SOCが少ないほど大きい値になるようにリニアに設定されている。具体的には、目標モータ回転数NMOTCMDは、充電残量SOCが値0のときに、所定の最大回転数NMOT1に設定されているとともに、充電残量SOCが前記判定値SOC1以上の範囲では、充電の必要がないため、値0に設定されている。これにより、充電残量SOCが少ないほど、モータ4による発電速度をより大きくでき、それによりバッテリ9をより迅速に充電することができる。また、上記最大回転数NMOT1は、モータ4の過回転を防止するため、最大許容回転数NMOTLMTよりも若干、小さい値に設定されている。 【0030】次に、モータ回転角度位置センサ21の検出信号に基づき、モータ回転数NMOTを算出した後、目標モータ回転数NMOTCMDとモータ回転数NMOTとの偏差にP項ゲインを乗算することにより、P項PNMOTを算出する。 【0031】次いで、目標モータ回転数NMOTCMDとP項PNMOTの和を、目標モータ回転数NMOTCMDの補正値NMOTCMDXとして算出した後、この補正値NMOTCMDXに基づき、図5に一例を示すNMOTCMD−FCLテーブルを検索することにより、クラッチ締結力FCLを算出する。同図に示すように、このテーブルでは、目標モータ回転数NMOTCMDが大きいほど、クラッチ締結力FCLが大きい値に設定されている。これは、前述したように、充電残量SOCが少ないほど、バッテリ9をより迅速に充電するためである。また、テーブルは、車速Vcarに応じて複数種のものが設定されており、これらのテーブルでは、クラッチ締結力FCLは、高車速Vcar用のものほど、同じ目標モータ回転数NMOTCMDに対してより小さい値に設定されている。例えば、同図に実線で示すクラッチ締結力FCLのテーブル値は、Vcar=VLMT2用のものであり、破線で示すテーブル値は、Vcar=VLMT3(>VLMT2)用のものである。また、車速VcarがVLMT2とVLMT3の間にあるときには、補間演算によりクラッチ締結力FCLが算出される。 【0032】次に、算出したクラッチ締結力FCLから、アクチュエータ16のリニアソレノイドバルブの駆動信号のデューティ比IOUT1を算出し、これに基づく駆動信号をリニアソレノイドバルブに出力することにより、クラッチ10をアクチュエータ16を介してクラッチ締結力FCLで締結させる。これにより、クラッチ10はクラッチ締結力FCLに応じた滑り状態で締結され、それにより、中間駆動軸11の回転力がクラッチ10を介してモータ4に所定の割合で伝達される。このとき、前述したように、目標モータ回転数NMOTCMDが最大許容回転数NMOTLMTよりも小さい値に設定されるので、モータ4は最大許容回転数NMOTLMTを超えることなく、これよりも低い回転数で駆動される。以上の制御により、モータ4は、その回転数NMOTが目標モータ回転数NMOTCMDに収束するように制御される。これにより、モータ4による発電が行われる。 【0033】次に、前記高速時回生トルク制御について説明する。この制御は、モータ回転数NMOTに基づいてモータ4の回生トルクTRQ_MOTを制御することにより、モータ4による発電量すなわち電気エネルギの回収量を制御するものである。 【0034】まず、モータ回転数NMOTに基づき、図6に一例を示すテーブルを検索することにより、モータ4の回生トルクTRQ_MOT(負値)を算出する。同図に示すように、回生トルクTRQ_MOTの絶対値|TRQ_MOT|は、モータ回転数NMOTが所定値NMOT2以上で、これよりも大きい所定値NMOT3以下の範囲では、モータ回転数NMOTが大きいほど小さい値に設定されている。これは、モータ回転数NMOTが高いほど、モータ4が発電する単位時間当たりの電気エネルギが大きくなるためである。また、絶対値|TRQ_MOT|は、所定値NMOT2未満では所定値TRQ1に設定され、所定値NMOT3より大きい範囲では値0に設定されている。なお、同図のテーブルは、モータ4が最大出力で運転されるときのものであり、所定値NMOT3は、モータ4の過回転を防止するため、最大許容回転数NMOTLMTよりも小さい値に設定されている。 【0035】次に、回生トルクTRQ_MOTを電流値に換算した値を目標値とし、モータ4への実際の指令値IOUT2をフィードバック値とする電流フィードバック比例制御を行う。すなわち、回生トルクTRQ_MOTと指令値IOUT2との偏差DIを算出し、この偏差DIにP項ゲインを乗算することにより、モータ4への指令値IOUT2を算出する。そして、この指令値IOUT2に基づいた制御信号によりモータ4が制御された状態で発電が行われることによって、それに応じた回収量で電気エネルギがバッテリ9に充電される。 【0036】以上のように、本実施形態の制御装置1によれば、車速Vcarが第2リミット値以上で、すなわち高速走行中で、バッテリ9の充電残量SOCが少ないときに、それに応じて算出したクラッチ締結力FCLでクラッチ10を締結し、モータ回転数NMOTを制御するとともに、このモータ回転数NMOTに基づいて、モータ4の回生トルクTRQ_MOTを制御することにより、モータ4の発電量すなわち電気エネルギの回収量が制御される。一方、車速Vcarが第1リミット値以下で、すなわち低速走行中で、バッテリ9の充電残量SOCが少ないときに、クラッチ10が最大締結力で締結される。したがって、比較的小型のモータ4を用いながら、電気エネルギを車速Vcarにかかわらず回収することができるとともに、モータ4の小型化に伴って、バッテリ9の容量も小型化することができる。また、上記の理由により、高速走行中、バッテリ9の充電残量SOCすなわち充電の必要の度合に応じて、電気エネルギを過不足なく回収することができ、バッテリ9の充電残量SOCを適切に制御することができる。それにより、高速走行での電気エネルギの回収中、走行エネルギの低下を最小限に抑制しながら、車両2の駆動力を確保できる。以上のように、比較的小型のモータ4およびバッテリ9を用いながら、電気エネルギを車速Vcarにかかわらず常に回収し、バッテリ9の充電残量SOCを適量に維持することができ、それにより、車両2の駆動力を適切に確保できる。また、高速走行中、モータ4の回転数NMOTが最大許容回転数NMOTLMTよりも小さい目標モータ回転数NMOTCMDになるように、クラッチ10の締結力FCLが制御されるので、比較的小型のモータ4を用いながら、高速走行中に発電動作を安定した状態で継続して実行することができる。 【0037】なお、本発明は、エンジン3により前輪WFL,WFRを、モータ4により後輪WRL,WRRをそれぞれ駆動する実施形態の前後輪駆動車両に限らず、これとは逆に構成した、すなわちエンジン3およびモータ4により後輪WRL,WRRおよび前輪WFL,WFRをそれぞれ駆動する前後輪駆動車両に適用してもよい。さらに、モータ4と後輪WRL、WRRの間を締結・遮断するクラッチ10は、実施形態の湿式多板クラッチタイプのものに限らず、伝達容量を制御可能なクラッチであればよく、例えば単板クラッチまたは電磁クラッチを採用してもよい。また、高速走行中にモータ4による発電を実行する条件として、実施形態の車速Vcarおよび充電残量SOCに適切な他の条件を加えてもよい。例えば、ステアリングの操舵角が所定角度以下であることを実行条件に加えてもよく、それにより、走行安定性を向上させることができる。さらに、モータ4が発電した電気エネルギを蓄える構成は、実施形態のバッテリ9に限らず、キャパシタなどの電気エネルギを蓄えることが可能なものであればよい。 【0038】また、高速走行時にモータ4による回生を行うためにクラッチ10を制御する手法は、実施形態のものに限らず、充電残量SOC、車両の運転状態や回生の実行時間などをパラメータとする他の制御手法でもよく、それにより最適な回生を行うことが可能である。例えば以下の■〜■のような手法を採用してもよい。 【0039】■高速走行時、充電残量SOCに応じてモータ4の回生トルクTRQ_MOTを設定し、この回生トルクTRQ_MOTに応じて目標モータ回転数NMOTCMDを設定するとともに、モータ回転数NMOTが目標モータ回転数NMOTCMDになるように、クラッチ10の締結力FCLを制御する。 ■高速走行時、充電残量SOCに応じてモータ4による回生を行うか否かを判別し、回生を行うと判別されたときには、目標モータ回転数NMOTCMDを一定値(例えばNMOT1)に設定し、かつモータ4の回生トルクTRQ_MOTを運転状態(例えば車速やアクセルオフ時などの減速走行状態)に応じて設定するとともに、モータ回転数NMOTが目標モータ回転数NMOTCMDになるように、クラッチ10の締結力FCLを制御する。 ■高速走行時、充電残量SOCに応じてモータ4による回生を行うか否かを判別し、回生を行うと判別されたときには、モータ4の回生トルクTRQ_MOTを一定値(例えばTRQ1)に設定し、かつ目標モータ回転数NMOTCMDを運転状態(例えば車速やアクセルオフ時などの減速走行状態)に応じて設定するとともに、モータ回転数NMOTが目標モータ回転数NMOTCMDになるように、クラッチ10の締結力FCLを制御する。 【0040】 【発明の効果】以上のように、本発明によれば、比較的小型の電気モータおよび蓄電装置を用いながら、電気エネルギを車速にかかわらず常に回収し、蓄電装置の充電残量を適量に維持することができ、それにより、車両の駆動力を適切に確保できる。また、比較的小型の電気モータを用いたときでも、高速走行中、発電中の電気モータの回転数を最大許容回転数よりも低い値に保持しながら、モータによる発電を安定した状態で継続して実行することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000005326 【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成13年8月24日(2001.8.24) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100095566 【弁理士】 【氏名又は名称】高橋 友雄
|
| 【公開番号】 |
特開2002−171605(P2002−171605A) |
| 【公開日】 |
平成14年6月14日(2002.6.14) |
| 【出願番号】 |
特願2001−255270(P2001−255270) |
|