| 【発明の名称】 |
車両の回生制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】小島 正清
|
| 【要約】 |
【課題】車両走行時にモータジェネレータを回生制御してバッテリを充電するとともに車両に所定の制動力を作用させる際に、エンジンを連れ廻ししながら回生制御を行う場合にも優れた発電効率が得られるようにする。
【解決手段】エンジンが連れ廻りさせられる接続状態(S3がYES)とエンジンが切り離される遮断状態(S3がNO)とで、別々の基準に従って変速機の変速制御を行う。すなわち、遮断状態ではステップS8でモータジェネレータの発電効率が所定の条件下で最大になるように変速制御を行う一方、接続状態ではステップS5でエンジンの回転抵抗が所定の条件下で最低になるように変速制御を行う。また、接続状態であっても、モータジェネレータ等の故障で回生制御が不可の場合には、ステップS7でエンジンの回転抵抗に基づいて所定の制動力が得られるように変速制御を行う。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 変速比を変更可能な変速機を介して駆動輪に連結されている内燃機関と、該内燃機関と前記変速機との間の動力伝達を接続、遮断する断続装置と、前記変速機を介して前記駆動輪に連結されているとともに少なくとも発電機として機能する回転機と、車両走行時に前記回転機を回生制御して発電するとともに車両に制動力を作用させる回生制御手段と、を備えている車両の回生制御装置において、前記回生制御手段による回生制御時に、前記断続装置が接続状態か遮断状態かによって前記変速機の変速比を別々の基準で制御する回生時変速制御手段を有することを特徴とする車両の回生制御装置。 【請求項2】 前記回生時変速制御手段は、前記断続装置が遮断状態の場合には前記回転機の発電効率が大きくなるように前記変速比を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両の回生制御装置。 【請求項3】 前記回生時変速制御手段は、前記断続装置が接続状態の場合には前記内燃機関の回転抵抗が小さくなるように前記変速比を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の車両の回生制御装置。 【請求項4】 前記回生時変速制御手段は、前記断続装置が接続状態であっても前記回転機の故障時には前記内燃機関の回転抵抗が大きくなるように前記変速比を制御することを特徴とする請求項3に記載の車両の回生制御装置。 【請求項5】 前記変速機は無段変速機であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の回生制御装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は車両の回生制御装置に係り、特に、回転機を回生制御して発電する際の変速機の変速制御に関するものである。 【0002】 【従来の技術】(a) 変速比を変更可能な変速機を介して駆動輪に連結されている内燃機関と、(b) その内燃機関と前記変速機との間の動力伝達を接続、遮断する断続装置と、(c) 前記変速機を介して前記駆動輪に連結されているとともに少なくとも発電機として機能する回転機と、(d) 車両走行時に前記回転機を回生制御して発電するとともに車両に制動力を作用させる回生制御手段と、を備えている車両が知られている。特開平8−251708号公報に記載されているハイブリッド車両はその一例で、回転機として発電機および電動モータの両方の機能を有するモータジェネレータが用いられているとともに、変速機としてベルト式無段変速機が用いられており、回生制御手段による回生制御時には、モータジェネレータが最も発電効率の良い回転速度で回転するように変速機を変速制御するようになっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようにモータジェネレータの発電効率だけで変速制御を行った場合、断続装置が接続状態で内燃機関が連れ廻りさせられると、内燃機関のポンプ作用やフリクションロスなどによる回転抵抗で制動力が発生するため、その分だけモータジェネレータの発電量(回生制動トルク)が低下してエネルギー効率が悪化する。回生制御時には、断続装置を遮断して内燃機関を切り離すようにすれば良いが、例えば電動モータでは十分な駆動力が得られない高速走行時などの再加速時に速やかに内燃機関による駆動力が得られるようにしたい場合など、断続装置を接続して内燃機関を連れ廻ししながら回生制御を行う場合も考えられる。 【0004】本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、内燃機関を連れ廻ししながら回生制御を行う場合にも優れた発電効率が得られるようにすることにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 変速比を変更可能な変速機を介して駆動輪に連結されている内燃機関と、(b) その内燃機関と前記変速機との間の動力伝達を接続、遮断する断続装置と、(c) 前記変速機を介して前記駆動輪に連結されているとともに少なくとも発電機として機能する回転機と、(d) 車両走行時に前記回転機を回生制御して発電するとともに車両に制動力を作用させる回生制御手段と、を備えている車両の回生制御装置において、(e) 前記回生制御手段による回生制御時に、前記断続装置が接続状態か遮断状態かによって前記変速機の変速比を別々の基準で制御する回生時変速制御手段を有することを特徴とする。 【0006】第2発明は、第1発明の車両の回生制御装置において、前記回生時変速制御手段は、前記断続装置が遮断状態の場合には前記回転機の発電効率が大きくなるように前記変速比を制御することを特徴とする。 【0007】第3発明は、第1発明または第2発明の車両の回生制御装置において、前記回生時変速制御手段は、前記断続装置が接続状態の場合には前記内燃機関の回転抵抗が小さくなるように前記変速比を制御することを特徴とする。 【0008】第4発明は、第3発明の車両の回生制御装置において、前記回生時変速制御手段は、前記断続装置が接続状態であっても前記回転機の故障時には前記内燃機関の回転抵抗が大きくなるように前記変速比を制御することを特徴とする。 【0009】第5発明は、第1発明〜第4発明の何れかの車両の回生制御装置において、前記変速機は無段変速機であることを特徴とする。 【0010】 【発明の効果】このような車両の回生制御装置においては、内燃機関が連れ廻りさせられる接続状態と内燃機関が切り離される遮断状態とで別々の基準に従って変速機の変速制御が行われるため、それぞれの状態において優れたエネルギー効率で回転機を回生制御することができる。すなわち、内燃機関が切り離される遮断状態の場合には、第2発明のよう回転機の発電効率が大きくなるように変速制御、すなわち回転機の回転速度制御を行うことにより、従来と同様に高いエネギー効率で発電することができる。また、内燃機関が連れ回りさせられる接続状態の場合には、第3発明のように内燃機関の回転抵抗が小さくなるように変速制御、すなわち内燃機関の回転速度制御を行うことにより、内燃機関の回転抵抗によるエネルギーロスが低減されて、それだけ回転機の回生制御で回収できる発電量が増大する。 【0011】ここで、内燃機関の回転抵抗に基づいて変速制御を行うと、回転機の発電効率が低下するが、内燃機関の回転抵抗の変動に比較して回転機の発電効率の変動は小さく、内燃機関の回転抵抗が小さくなるように変速制御が行われることにより、トータルとして回転機の発電量を増大させることができる。但し、内燃機関の回転抵抗を小さくすることを基本として、回転機の発電効率の変動を加味することにより、トータルとして更に高いエネルギー効率で発電できるように変速制御することも可能である。また、回転機の発電効率だけでなく、電気エネルギーを蓄積するバッテリの充電効率なども考慮して変速制御、すなわち回転機の回転速度制御を行うこともできる。 【0012】第4発明では、断続装置が接続状態であっても回転機の故障時には内燃機関の回転抵抗が大きくなるように変速比を制御するため、回転機の故障で回生制御による制動力が得られない場合でも、内燃機関の回転抵抗に基づいて制動力が発生させられ、回生制動力の有無によって生じる違和感が軽減され、或いは解消する。 【0013】第5発明では無段変速機が用いられているため、車速変化に応じて変速比を連続的に変化させることにより、常に高いエネルギー効率で回転機を回生制御することができる。 【0014】 【発明の実施の形態】ここで、変速機としてはベルト式やトロイダル式等の無段変速機が好適に用いられるが、有段の変速機を有する車両にも適用され得る。断続装置は、摩擦係合式のクラッチやブレーキが好適に用いられ、例えば変速機に連結された回転機と内燃機関との間の動力伝達を接続、遮断するように配設され、接続時には回転機および内燃機関が一体回転させられるように構成されるが、歯車式差動装置(遊星歯車装置など)の3つの回転要素のうちの1つがブレーキによって固定されることにより、他の2つの回転要素に連結された回転機と内燃機関とが相対回転させられるとともに、それ等の合成トルクが変速機側へ出力される場合など、種々の態様が可能である。 【0015】本発明は、車両の駆動源として内燃機関の他に電動モータを備えているハイブリッド車両に好適に適用され、回転機として発電機および電動モータの両方の機能を有するモータジェネレータが好適に用いられるが、内燃機関のみで走行する車両や、回転機の発電による回生制動トルクを反力として内燃機関で走行する車両などにも適用され得る。また、発電機として用いられる回転機とは別に、車両駆動用の電動モータ或いはモータジェネレータを備えているハイブリッド車両にも適用され得る。 【0016】回生制御手段は、例えば車両の前進走行時にアクセル操作量などの運転者の出力要求量が0になった場合やフットブレーキが踏込み操作された場合などに、回転機を回生制御するように構成されるが、後進走行時に回生制御することも可能である。回転機の回生制動トルクは、予め一定値が定められても良いが、フットブレーキの踏込み操作力などのブレーキ要求量や変速機の変速比などをパラメータとして、回転機の回生制動トルクが求められるようになっていていも良いなど、種々の態様が可能である。また、このような回生制御時には、内燃機関はフューエルカットされるのが普通であるが、例えばアイドル状態などで作動が継続されるようになっていても良い。 【0017】第2発明の回生時変速制御手段は、断続装置が遮断状態の場合に、例えば要求制動トルクおよび車速に応じて要求制動仕事率(制動パワー)を求め、その要求制動仕事率が得られる回転機の回転速度−制動トルク線上で、且つ変速機の変速制御で可能な回転速度範囲内において、発電効率が最大になる目標回転速度を予め定められたマップなどから求め、回転機の回転速度がその目標回転速度になるように変速制御を行うように構成されるが、何らかのガードなどで発電効率が制限されたり、バッテリの充電効率を加味して目標回転速度を設定したりすることも可能である。なお、回転機が最も発電効率の良い予め定められた一定の回転速度、回生制動トルクで作動するように変速制御を行うようにしても良いなど、種々の態様を採用できる。 【0018】第3発明の回生時変速制御手段は、断続装置が接続状態の場合に、例えば内燃機関の回転抵抗が最小になるように、変速機の変速制御で可能な内燃機関の回転速度の範囲内で最低(内燃機関がアイドル状態で作動している場合はアイドル回転速度)になるように変速制御が行われるが、内燃機関が停止状態(フューエルカット)の場合に回転速度が低くなり過ぎると直ちに再始動できなくなるため、所定の下限値(例えば1200rpmなど)を設けることが望ましく、内燃機関の回転速度がその下限値以上で且つ変速機の変速制御で可能な最低回転速度になるように変速制御を行うことが望ましい。また、回生制御手段は、例えば前記要求制動仕事率から内燃機関の回転抵抗による制動仕事率を差し引いた制動仕事率が得られるように、その時の回転機の回転速度から回生制動トルクを求め、その回生制動トルクで回転機を回生制御するように構成されるが、予め定められた一定の回生制動トルクで回生制御したり、上記変速制御で定まる回転速度で最も発電効率の良い回生制動トルクで回生制御したりするなど、種々の態様が可能である。 【0019】第4発明の回生時変速制御手段は、例えば内燃機関の回転抵抗に基づいて前記要求制動トルクが得られるように変速制御を行うことが望ましい。第4発明は、断続装置が接続状態の場合のものであるが、回転機が故障で回生制御不可の場合には、常に断続装置を接続して内燃機関を連れ廻りさせることにより、所定の制動力が得られるようにすることも可能である。なお、回転機の故障は、回転機やインバータの機械的な故障だけでなく、その電気系統の故障も含むもので、実質的に回生制御が不可の場合である。 【0020】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明が適用されたハイブリッド駆動制御装置10を説明する概略構成図で、図2は変速機12を含む骨子図であり、このハイブリッド駆動制御装置10は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジン14、電動モータおよび発電機として用いられるモータジェネレータ16、およびダブルピニオン型の遊星歯車装置18を備えて構成されており、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両などに横置きに搭載されて使用される。遊星歯車装置18のサンギヤ18sにはエンジン14が連結され、キャリア18cにはモータジェネレータ16が連結され、リングギヤ18rは第1ブレーキB1を介してケース20に連結されるようになっている。また、キャリア18cは第1クラッチC1を介して変速機12の入力軸22に連結され、リングギヤ18rは第2クラッチC2を介して入力軸22に連結されるようになっている。エンジン14は内燃機関に相当し、モータジェネレータ16は回転機に相当する。また、遊星歯車装置18は歯車式差動装置で、第2クラッチC2および第1ブレーキB1と共にエンジン14と変速機12との間の動力伝達を接続、遮断する断続装置を構成している。 【0021】上記クラッチC1、C2および第1ブレーキB1は、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる湿式多板式の油圧式摩擦係合装置で、油圧制御回路24から供給される作動油によって摩擦係合させられるようになっている。図3は、油圧制御回路24の要部を示す図で、電動ポンプを含む電動式油圧発生装置26で発生させられた元圧PCが、マニュアルバルブ28を介してシフトレバー30(図1参照)のシフトポジションに応じて各クラッチC1、C2、ブレーキB1へ供給されるようになっている。シフトレバー30は、運転者によって操作されるシフト操作部材で、本実施例では「B」、「D」、「N」、「R」、「P」の5つのシフトポジションに選択操作されるようになっており、マニュアルバルブ28はケーブルやリンク等を介してシフトレバー30に連結され、そのシフトレバー30の操作に従って機械的に切り換えられるようになっている。 【0022】「B」ポジションは、前進走行時に変速機12のダウンシフトなどにより比較的大きな動力源ブレーキが発生させられるシフトポジションで、「D」ポジションは前進走行するシフトポジションであり、これ等のシフトポジションでは出力ポート28aからクラッチC1およびC2へ元圧PCが供給される。第1クラッチC1へは、シャトル弁31を介して元圧PCが供給されるようになっている。「N」ポジションは動力源からの動力伝達を遮断するシフトポジションで、「R」ポジションは後進走行するシフトポジションで、「P」ポジションは動力源からの動力伝達を遮断するとともに図示しないパーキングロック装置により機械的に駆動輪の回転を阻止するシフトポジションであり、これ等のシフトポジションでは出力ポート28bから第1ブレーキB1へ元圧PCが供給される。出力ポート28bから出力された元圧PCは戻しポート28cへも入力され、上記「R」ポジションでは、その戻しポート28cから出力ポート28dを経てシャトル弁31から第1クラッチC1へ元圧PCが供給されるようになっている。 【0023】クラッチC1、C2、およびブレーキB1には、それぞれコントロール弁32、34、36が設けられ、それ等の油圧PC1、PC2、PB1が制御されるようになっている。クラッチC1の油圧PC1についてはON−OFF弁38によって調圧され、クラッチC2およびブレーキB1についてはリニアソレノイド弁40によって調圧されるようになっている。 【0024】そして、上記クラッチC1、C2、およびブレーキB1の作動状態に応じて、図4に示す各走行モードが成立させられる。すなわち、「B」ポジションまたは「D」ポジションでは、「ETCモード」、「直結モード」、「モータ走行モード(前進)」の何れかが成立させられ、「ETCモード」では、第2クラッチC2を係合するとともに第1クラッチC1および第1ブレーキB1を開放した状態、言い換えればサンギヤ18s、キャリア18c、およびリングギヤ18rが相対回転可能な状態で、エンジン14およびモータジェネレータ16を共に作動させてサンギヤ18sおよびキャリア18cにトルクを加え、リングギヤ18rを回転させて車両を前進走行させる。「直結モード」では、クラッチC1、C2を係合するとともに第1ブレーキB1を開放した状態で、エンジン14を作動させて車両を前進走行させる。また、「モータ走行モード(前進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16を作動させて車両を前進走行させる。「モータ走行モード(前進)」ではまた、フットブレーキの踏込み操作時(ブレーキON時)などにモータジェネレータ16を回生制御することにより、車両の運動エネルギーで発電してバッテリ42(図1参照)を充電するとともに車両に制動力を作用させることができる。 【0025】図5は、上記前進モードにおける遊星歯車装置18の作動状態を示す共線図で、「S」はサンギヤ18s、「R」はリングギヤ18r、「C」はキャリア18cを表しているとともに、それ等の間隔はギヤ比ρ(=サンギヤ18sの歯数/リングギヤ18rの歯数)によって定まる。具体的には、「S」と「C」の間隔を1とすると、「R」と「C」の間隔がρになり、本実施例ではρが0.6程度である。また、(a) のETCモードにおけるトルク比は、エンジントルクTe:CVT入力軸トルクTin:モータトルクTm=ρ:1:1−ρであり、モータトルクTmはエンジントルクTeより小さくて済むとともに、定常状態ではそれ等のモータトルクTmおよびエンジントルクTeを加算したトルクがCVT入力軸トルクTinになる。CVTは無段変速機の意味であり、本実施例では変速機12としてベルト式無段変速機が設けられている。 【0026】図4に戻って、「N」ポジションまたは「P」ポジションでは、「ニュートラル」または「充電・Eng始動モード」の何れかが成立させられ、「ニュートラル」ではクラッチC1、C2および第1ブレーキB1の何れも開放する。「充電・Eng始動モード」では、クラッチC1、C2を開放するとともに第1ブレーキB1を係合し、モータジェネレータ16を逆回転させてエンジン14を始動したり、エンジン14により遊星歯車装置18を介してモータジェネレータ16を回転駆動するとともに発電制御することにより、電気エネルギーを発生させてバッテリ42(図1参照)を充電したりする。 【0027】「R」ポジションでは、「モータ走行モード(後進)」または「フリクション走行モード」が成立させられ、「モータ走行モード(後進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16を逆方向へ回転駆動してキャリア18c、更には入力軸22を逆回転させることにより車両を後進走行させる。「フリクション走行モード」は、上記「モータ走行モード(後進)」での後進走行時にアシスト要求が出た場合に実行されるもので、エンジン14を始動してサンギヤ18sを正方向へ回転させるとともに、そのサンギヤ18sの回転に伴ってリングギヤ18rが正方向へ回転させられている状態で、第1ブレーキB1をスリップ係合させてそのリングギヤ18rの回転を制限することにより、キャリア18cに逆方向の回転力を作用させて後進走行をアシストするものである。 【0028】前記変速機12はベルト式無段変速機で、その出力軸44からカウンタ歯車46を経て差動装置48のリングギヤ50に動力が伝達され、その差動装置48により左右の駆動輪(本実施例では前輪)52に動力が分配される。 【0029】本実施例のハイブリッド駆動制御装置10は、図1に示すHVECU60によって制御されるようになっている。HVECU60は、CPU、RAM、ROM等を備えていて、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を実行することにより、電子スロットルECU62、エンジンECU64、M/GECU66、T/MECU68、前記油圧制御回路24のON−OFF弁38、リニアソレノイド弁40、エンジン14のスタータ70などを制御する。電子スロットルECU62はエンジン14の電子スロットル弁72を開閉制御するもので、エンジンECU64はエンジン14の燃料噴射量や可変バルブタイミング機構、点火時期などによりエンジン出力を制御するもので、M/GECU66はインバータ74を介してモータジェネレータ16の力行トルクや回生制動トルク等を制御するもので、T/MECU68は変速機12の変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout )やベルト張力などを制御するものである。前記油圧制御回路24は、変速機12の変速比γやベルト張力を制御するための回路を備えている。スタータ70はモータジェネレータで、ベルト或いはチェーンなどの動力伝達装置を介してエンジン14のクランクシャフトに連結されている。 【0030】上記HVECU60には、アクセル操作量センサ76からアクセル操作部材としてのアクセルペダル78の操作量θacを表す信号が供給されるとともに、シフトポジションセンサ80からシフトレバー30のシフトポジションを表す信号が供給される。また、エンジン回転速度センサ82、モータ回転速度センサ84、入力軸回転速度センサ86、出力軸回転速度センサ88、ABS等のブレーキ制御装置90から、それぞれエンジン回転速度(回転数)Ne、モータ回転速度(回転数)Nm、入力軸回転速度(入力軸22の回転速度)Nin、出力軸回転速度(出力軸44の回転速度)Nout 、要求制動トルクTB を表す信号がそれぞれ供給される。出力軸回転速度Nout は車速Vに対応する。この他、バッテリ42の蓄電量SOCなど、運転状態を表す種々の信号が供給されるようになっている。蓄電量SOCは単にバッテリ電圧であっても良いが、充放電量を逐次積算して求めるようにしても良い。アクセル操作量θacは運転者の出力要求量に相当する。 【0031】図6は、前進走行時にモータジェネレータ16を回生制御して発電するとともに車両に所定の制動力を作用させる回生制御を説明するフローチャートで、HVECU60やM/GECU66、T/MECU68の信号処理により所定のサイクルタイムで繰り返し実行される。図6のステップS6およびS9はM/GECU66によって実行されるもので、回生制御手段として機能しており、ステップS5、S7、およびS8はT/MECU68によって実行されるもので、回生時変速制御手段として機能している。 【0032】図6のステップS1では、ブレーキ制御装置90から減速要求があるか否か、すなわち要求制動トルクTB を表す信号が供給されているか否かを判断し、要求制動トルクTB を表す信号が供給されている場合はステップS2以下を実行する。要求制動トルクTB は、例えば「B」または「D」ポジションでの前進走行中にフットブレーキが踏込み操作された場合に、車輪に設けられた制動装置と合わせて所望の制動力が得られるように、その踏込み操作力(運転者のブレーキ要求量)などに応じて求められる。 【0033】ステップS2では所定の回生許可条件を満足するか否かを判断し、満足する場合にはステップS3以下を実行する。回生許可条件は、例えばバッテリ42の蓄電量SOCが所定値以下で充電可能であること、モータジェネレータ16の温度やインバータ74の温度が所定値以下で回生制御が可能なこと、車速Vが所定値(例えば10km/h)以上で回生制御により運転フィーリングが損なわれる恐れがないとともにクリープ制御などの複雑な制御が不要であること、などである。 【0034】ステップS3では、エンジン14が直結状態か否か、すなわち第1クラッチC1および第2クラッチC2が共に係合している「直結モード」か否かを判断し、直結の場合はステップS4以下を実行するが、直結でない場合、すなわち第2クラッチC2が開放している「モータ走行モード(前進)」の場合はステップS8以下を実行する。回生制御時には、車両の運動エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換するため、第2クラッチC2を開放してエンジン14を切り離すことが望ましいが、例えば車速Vが所定値(例えば55km/h)以上の高速走行時や、バッテリ42の蓄電量SOCが所定値以下の場合など、再加速時にエンジン14を動力源として走行する必要がある場合は、エンジン14による駆動力が速やかに得られるようにすることが望ましく、そのような一定の条件下で第2クラッチC2を係合してエンジン14を連れ廻りさせるようになっている。なお、このような回生制御時、すなわちフットブレーキのON時には、エンジン14はフューエルカットされており、切離し状態では回転停止する。 【0035】ステップS4では、モータジェネレータ16やインバータ74、或いはその電気系統が故障で回生制御が不可か否かを、例えばモータジェネレータ16に対する制御指令とモータ回転速度Nmとの関係やダイアグノーシスなどで判断し、故障でなければステップS5で、エンジン14のフリクションロスやポンプ作用による回転抵抗が最小になるように変速機12の変速比γを制御する。エンジン14の回転抵抗は、その回転速度Neが低い程小さくなるため、変速機12の変速制御で可能なエンジン回転速度Ne(入力軸回転速度Ninと同じ)の範囲内で最低になるように変速比γを最小にすれば良いが、エンジン回転速度Neが低くなり過ぎると直ちに再始動できなくなるため、本実施例では燃料噴射や点火などで直ちに始動できる所定の下限値Nemin (例えば1200rpmなど)を設け、その下限値Nemin 以上で且つ変速機12の変速制御で可能な最低回転速度になるように変速制御を行うようになっている。 【0036】また、次のステップS6では、前記要求制動トルクTB および車速Vに応じて求められる要求制動仕事率(制動パワー)PB からエンジン14の回転抵抗分を差し引いた制動仕事率を発生するように、モータジェネレータ16の回生制動トルクTEBを制御する。図7の(b) は、ステップS5の変速制御で入力軸回転速度Nin(=Ne=Nm)が下限値Nemin とされた場合で、例えば要求制動仕事率PB が得られるモータジェネレータ16の回転速度Nm−制動トルクTEB線Aとその時のモータ回転速度Nm(=Nemin )との交点の回生制動トルクTEB1 を求め、そこからエンジン14の回転抵抗トルクを差し引くことにより、モータジェネレータ16の回生制動トルクTEB2 を求めることができる。要求制動仕事率PB は、要求制動トルクTB と車速Vとを掛算すれば良く、交点の回生制動トルクTEB1 は、要求制動仕事率PB をその時のモータ回転速度Nm(=Nemin )で割算すれば良く、エンジン14の回転抵抗トルクは回転速度Neをパラメータとして予め定められたマップや演算式から求められる。これにより、車両にはモータジェネレータ16の回生制御およびエンジン14の回転抵抗に基づいて要求制動トルクTB が発生させられ、車輪の制動装置と合わせて所望の制動力が得られる。 【0037】モータジェネレータ16等の故障で回生制御不可の場合には、前記ステップS4に続いてステップS7を実行し、エンジン14のフリクションロスやポンプ作用による回転抵抗を大きくすることにより、その回転抵抗に基づいて前記要求制動トルクTB が得られるように変速機12の変速比γを制御する。具体的には、例えば要求制動トルクTB および車速Vに応じて求められる要求制動仕事率PBが得られるエンジン回転速度Neを予め定められたマップや演算式などから算出し、そのエンジン回転速度Neになるように変速比γを制御する。これにより、車両にはエンジン14の回転抵抗に基づいて要求制動トルクTB が発生させられ、車輪の制動装置と合わせて所望の制動力が得られる。但し、エンジン14のオーバ回転を防止するために上限値Nemax のガードが設定されるとともに、変速比γを最大値γmax にしても目的とするエンジン回転速度Neに達しない場合は、その最大値γmax とする。 【0038】一方、第2クラッチC2が開放されてエンジン14が切り離されている場合に実行する前記ステップS8では、モータジェネレータ16の発電効率が最大になるように変速機12の変速比γを制御する。すなわち、図7の(a) に示すように、要求制動トルクTB および車速Vに応じて求められる要求制動仕事率PB が得られるモータジェネレータ16の回転速度Nm−制動トルクTEB線A上で、且つ変速機12の変速制御で可能な回転速度範囲内において、予め定められた効率マップ(図7(a) における細線)から発電効率が最大になる動作点Bを求め、その動作点Bにおける回転速度Nmを目標回転速度Nm* に設定して、入力軸回転速度Nin(=Nm)が目標回転速度Nm* になるように変速機12の変速比γを制御する。 【0039】また、次のステップS9では、上記動作点Bにおける回生制動トルクTEBでモータジェネレータ16を回生制御する。これにより、最大エネルギー効率で発電してバッテリ42を充電できるとともに、車両にはモータジェネレータ16の回生制御に基づいて要求制動トルクTB が発生させられ、車輪の制動装置と合わせて所望の制動力が得られる。 【0040】このように、本実施例のハイブリッド駆動制御装置10においては、モータジェネレータ16を回生制御してバッテリ42を充電するとともに車両に所定の制動力を作用させる際に、エンジン14が連れ廻りさせられる接続状態(直結モード)とエンジン14が切り離される遮断状態(モータ走行モード)とで、ステップS5、S8において別々の基準に従って変速機12の変速制御が行われるため、それぞれの状態において優れたエネルギー効率でモータジェネレータ16を回生制御することができる。 【0041】すなわち、本実施例では、エンジン14が切り離される遮断状態では、ステップS8でモータジェネレータ16の発電効率が所定の条件下で最大になるように変速制御が行われ、従来と同様に高いエネギー効率で発電してバッテリ42を充電することができる。また、エンジン14が連れ回りさせられる接続状態では、ステップS5でエンジン14の回転抵抗が所定の条件下で最低になるように変速制御が行われ、エンジン14の回転抵抗によるエネルギーロスが最小になって、それだけモータジェネレータ16の回生制御で回収できる電気エネルギーが増大する。 【0042】ここで、エンジン14の回転抵抗に基づいて変速制御を行うと、モータジェネレータ16の発電効率が低下するが、エンジン14の回転抵抗の変動に比較してモータジェネレータ16の発電効率の変動は小さく、エンジン14の回転抵抗が小さくなるように変速制御が行われることにより、トータルとしてモータジェネレータ16の発電量を増大させることができる。すなわち、接続状態において例えば図7の(a) における目標回転速度Nm* になるように変速制御を行うと、エンジン14の回転抵抗が大きいため、モータジェネレータ16が負担する回生制動トルクTEBが少なくなり、それに伴って発電量も低下するのである。但し、エンジン14の回転抵抗を小さくすることを基本として、モータジェネレータ16の発電効率の変動を加味することにより、トータルとして更に高いエネルギー効率で発電できるように変速制御することも可能である。また、モータジェネレータ16の発電効率だけでなく、バッテリ42の充電効率なども考慮して変速制御、すなわちモータジェネレータ16の回転速度制御を行うこともできる。 【0043】また、本実施例では、エンジン14が連れ廻りさせられる接続状態(直結モード)であっても、モータジェネレータ16等の故障で回生制御が不可の場合には、ステップS7でエンジン14の回転抵抗に基づいて基本的に要求制動トルクTB が得られるように変速機12の変速比γを制御するため、モータジェネレータ16による回生制動トルクが得られない場合でも、エンジン14の回転抵抗に基づいて所定の制動力が発生させられ、モータジェネレータ16による回生制動トルクの有無によって生じる違和感が軽減され、或いは解消する。 【0044】また、本実施例では変速機12としてベルト式の無段変速機が用いられているため、車速Vの変化に応じて変速比γを連続的に変化させることにより、常に高いエネルギー効率でモータジェネレータ16を回生制御することができる。 【0045】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年11月30日(2000.11.30) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100085361 【弁理士】 【氏名又は名称】池田 治幸
|
| 【公開番号】 |
特開2002−171601(P2002−171601A) |
| 【公開日】 |
平成14年6月14日(2002.6.14) |
| 【出願番号】 |
特願2000−364299(P2000−364299) |
|