| 【発明の名称】 |
車両用制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】吉野 太容
【氏名】中島 祐樹
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| 【要約】 |
【課題】発電機の運転状態やバッテリ入出力許容電力が異なっても、電動機出力制限値が変動しないようにし、電動機の出力応答に影響が出るのを防止する。
【解決手段】車両は、エンジン1と、エンジン1に接続されエンジン1の出力を回生する発電機2と、発電機2の発電電力の供給を受けて駆動輪を駆動する電動機4と、電動機4への供給電力が不足するときに放電を行い、余ったとき余剰電力を蓄電するバッテリ9とを備える。コントローラ10、11,12は、電動機4の消費電力に発電機2の発電電力を一致させるようにエンジン1及び発電機2を制御すると仮定した場合の発電電力である仮想発電電力推定値を算出し、この仮想発電電力推定値に基づいて電動機4の出力制限値を算出し、電動機4の出力を制限する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】エンジンと、前記エンジンに接続され前記エンジンの出力を回生する発電機と、前記発電機の発電電力の供給を受けて駆動輪を駆動する電動機と、前記電動機への供給電力が不足するときに前記電動機に電力を供給し、供給電力が余ったとき余剰電力を蓄電するバッテリと、を備えた車両の車両用制御装置において、車両の走行状態に応じて一義的に決まる前記電動機の消費電力に前記発電機の発電電力を一致させるよう前記エンジン及び発電機を制御すると仮定した場合の前記発電機の推定発電電力を仮想発電電力推定値として算出する手段と、前記仮想発電電力推定値に基づいて前記電動機の出力制限値を算出する手段と、前記電動機出力制限値に基づいて前記電動機の出力ないしトルクを制限することを特徴とする車両用制御装置。 【請求項2】前記仮想発電電力推定値を算出する手段は、前記車両の走行状態から前記エンジン及び発電機の仮想制御目標値をそれぞれ算出する手段と、前記仮想制御目標値に対する前記エンジン及び発電機の動作応答をそれぞれ推定する手段と、前記仮想応答推定値に基づいて前記仮想発電電力推定値を算出する手段と、で構成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。 【請求項3】前記仮想制御目標値を算出する手段は、前記車両の走行状態から前記電動機の目標出力を算出し、前記電動機目標出力に基づいて前記エンジン及び発電機の仮想制御目標値をそれぞれ算出することを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。 【請求項4】前記電動機出力制限値を算出する手段は、前記バッテリの入出力許容電力の下限値と前記仮想発電電力推定値とから前記電動機出力制限値を算出することを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。 【請求項5】前記電動機出力制限値を算出する手段は、高い加減速応答が要求される運転領域で前記電動機出力制限値を変更することを特徴とする請求項4に記載の車両用制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、車両用制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、低公害性と航続距離、およびエネルギ供給のインフラ等の要求から、エンジンと発電/電動機を組合せて搭載したハイブリッド車両(以下、HEV)の実用化が進められている。 【0003】HEVには大きくシリーズ式、パラレル式に分かれるが、いずれもエンジンの運動エネルギの全部あるいは一部が発電機により一旦電気エネルギに変換される。その電気エネルギは、一部が直接電動機ヘ供給され、余剰な電気エネルギはバッテリに蓄積される。また、電動機ヘは発電機およびバッテリの両者から電気エネルギが供給される。電動機で電気エネルギは運動エネルギに変換され車両を駆動する。エンジンが発生した運動エネルギが、発電機、バッテリ、電動機を経由する際の損失が小さくないため、エンジン出力で直接車両を駆動する手段を有するパラレル式HEVの方が、現在は効率が良いために主流になっている。 【0004】しかし、電動機で消費するエネルギを、過不足なく発電機から供給することができれば、バッテリにおける充放電の際の損失を大幅に低減することができ、シリーズ式HEVであっても効率の向上が望める。 【0005】そこで、特開平11-146503および本出願人による特願平11-172426では、シリーズ式HEVにおける効率向上を狙いとして、車両走行状態に基づき必要な電力を発電する技術が提案されている。走行状態の変化に伴い電動機の出力は時々刻々変化するが、その出力変化に対応して過不足なく電力をリアルタイムに発電機から供給することができれば、バッテリにおける電力損失を最小限にとどめ、エンジンの出力を効率良く電動機へ伝達することができる。ただし、走行状態が急変して電動機の消費電力が急変した場合、これに発電電力を追随させるべくエンジン及び電動機の制御を行っても、エンジン及び電動機の応答遅れによって実際の発電電力に遅れが生じることは避けられず、このような過渡時においては電動機の消費電力に対し発電電力が過不足となる状況が発生する。 【0006】そこで、特願2000-104497では、エンジンおよび発電機の運転状態に基づいて実際の発電電力を推定し、この推定値に基づいて電動機の出力を制限することにより、過渡時においても電動機の消費電力と発電機の発電電力との電力差を所定値以下に抑え、バッテリにおける電力損失を抑えている。 【0007】 【発明が解決しようとしている問題点】しかしながら、上記車両においても、バッテリが適温状態にあり充電状態(SOC)も十分に余裕がある場合、上記の様に電動機で必要とされる電力を全てリアルタイムに発電機により賄うのではなく、バッテリから供給することが考えられる。すなわち、バッテリの充放電損失を考慮してもなおそれ以上の燃費向上を図ることが可能な場合、エンジンをより効率の良い運転点で定常運転したり、出力を絞ったりし、不足する電力をバッテリから供給するようにする。この場合、電動機の消費電力と発電機の発電電力とが一致しない運転状態が発生する。 【0008】しかし、上記車両においては、電動機出力と発電電力の両者を一致させようとして運転している場合しか想定されておらず、両者が一致しない状態をも想定した制限値の設定方法に関し検討の余地が残っていた。仮に、上記の方法をそのまま用いると、走行状態が同じであっても、発電機の運転状態やバッテリ入出力許容電力が異なるときは電動機出力制限値が異なり、結果として電動機の出力応答、すなわち運転性にまで影響を及ぼすという問題が生じる。 【0009】本発明は、かかる技術的課題を鑑みてなされたものであり、発電機の運転状態やバッテリ入出力許容電力の変動を受けて電動機出力制限値が変動しないようにし、常に良好な運転性を確保することを目的とする。 【0010】 【問題点を解決するための手段】第1の発明は、エンジンと、前記エンジンに接続され前記エンジンの出力を回生する発電機と、前記発電機の発電電力の供給を受けて駆動輪を駆動する電動機と、前記電動機への供給電力が不足するときに前記電動機に電力を供給し、供給電力が余ったとき余剰電力を蓄電するバッテリと、を備えた車両の車両用制御装置において、車両の走行状態に応じて一義的に決まる前記電動機の消費電力に前記発電機の発電電力を一致させるよう前記エンジン及び発電機を制御すると仮定した場合の前記発電機の推定発電電力を仮想発電電力推定値として算出する手段と、前記仮想発電電力推定値に基づいて前記電動機の出力制限値を算出する手段と、前記電動機出力制限値に基づいて前記電動機の出力ないしトルクを制限することを特徴とするものである。 【0011】第2の発明は、第1の発明において、仮想発電電力推定値を算出する手段が、前記車両の走行状態から前記エンジン及び発電機の仮想制御目標値をそれぞれ算出する手段と、前記仮想制御目標値に対する前記エンジン及び発電機の動作応答をそれぞれ推定する手段と、前記仮想応答推定値に基づいて前記仮想発電電力推定値を算出する手段とで構成されることを特徴とするものである。 【0012】第3の発明は、第2の発明において、仮想制御目標値を算出する手段が、前記車両の走行状態から前記電動機の目標出力を算出し、前記電動機目標出力に基づいて前記エンジン及び発電機の仮想制御目標値をそれぞれ算出することを特徴とするものである。 【0013】第4の発明は、第1の発明において、電動機出力制限値を算出する手段が、前記バッテリの入出力許容電力の下限値と前記仮想発電電力推定値とから前記電動機出力制限値を算出することを特徴とするものである。 【0014】第5の発明は、第4の発明において、電動機出力制限値を算出する手段が、高い加減速応答が要求される運転領域で前記電動機出力制限値を変更することを特徴とするものである。 【0015】 【作用及び効果】したがって、第1の発明によれば、電動機の出力ないしトルクが電動機出力制限値によって制限されるが、このとき用いられる出力制限値は発電機の実際の発電電力ではなく、車両の走行状態に応じて一義的に決まる仮想発電電力推定値(例えば、電動機の消費電力を全て発電機の発電電力で賄うと仮定した場合の発電機の発電電力)に基づき算出される。 【0016】仮想発電電力推定値に基づいた出力制限値により電動機出力を制限するようにすれば、電動機の消費電力を全て発電機の発電電力で賄う運転を行っているか発電電力とバッテリ電力の双方を使う運転を行っているかバッテリ電力だけを使う運転を行っているかに関わらず、電動機の出力応答を一定に保ち、車両の運転性を良好に保つことができる。 【0017】なお、電動機の消費電力に発電機の発電電力を一致させるようエンジン及び発電機を制御すると仮定した場合の発電機の推定発電電力を仮想発電電力推定値とすれば、この仮想発電電力は実際の発電機の制御とバッテリからの電力供給あるいはバッテリへの電力供給(充電)によって常に実現可能な電力となる。 【0018】また、第2の発明によれば、推定されたエンジン及び発電機の動作応答に基づいて仮想発電電力推定値が算出されるので、過渡時においても時々刻々の仮想発電電力推定値をマップ等を用いて求める場合と比べて精度良く算出することができる。 【0019】また、第3の発明によれば、電動機の消費電力に発電機の発電電力を一致させるよう発電機を制御する場合の目標発電電力と、エンジン及び発電機の応答推定値から仮想発電電力推定値を求めるので、バッテリ入出力電力が最小でかつ電動機の出力応答の低下を最小限に抑える電動機出力制限値を精度よく算出することができる。 【0020】また、第4の発明によれば、バッテリ入出力許容電力の下限値と仮想発電電力推定値とから電動機の出力制限値が算出される。この下限値は、バッテリを通常の使用条件下で使用しているときの入出力許容電力の最小値である。 【0021】バッテリ(車両)が使用される温度の範囲は一定範囲(通常想定される外気温度の変化範囲)に限られており、また、バッテリの充電状態も一定範囲(例えば30%〜80%)に制御されるのが一般的である。このような通常の使用条件下における入出力許容電力の最小値を仮想発電電力推定値に加減して出力制限値を設定しても、車両が通常の条件下で運転されている限り電動機の出力応答を一定に保つことが可能であり、さらに、仮想発電電力推定値そのものを出力制限値として設定するよりも高い出力応答を保持することができる。なお、仮想発電電力推定値そのものを出力制限値として設定すれば車両がいかなる条件下で運転されているときも電動機の出力応答を一定に保つことが可能である。 【0022】また、第5の発明により、高い加減速応答が要求される運転領域で前記電動機出力制限値が変更するようにすれば、車両の加減速応答を高めたい運転領域(例えば、低車速域)で加減速応答を高め、運転性をさらに向上させることができる。 【0023】 【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。 【0024】図1は本発明が適用される車両のシステム構成図である。この車両では、従来の機械式変速機に代えて、無段変速機として機能する電機パワートレイン5がエンジン1に接続されている。電機パワートレイン5は、主に発電機として使用される第1の回転電機(以下、発電機)2と主に電動機として使用される第2の回転電機(以下、電動機)4とで構成され、発電機2のロータ軸がエンジン1のクランク軸に連結される一方、電動機4のロータ軸(以下、出力軸)6は減速機を介して駆動軸(駆動輪が取付けられる回転軸)に連結される。 【0025】発電機2、電動機4は永久磁石式交流同期モータ等の交流機であり、それぞれインバータ8に接続されている。インバータ8にはさらにバッテリ9(リチウムバッテリあるいはニッケル水素バッテリ等)が接続されている。 【0026】発電機2と電動機4の間にはクラッチ3が介装されており、クラッチ3が締結されるとエンジン1と出力軸6が直結状態となってエンジン1で直接出力軸6を駆動することができる。クラッチ3は例えば電気パワートレイン5の入力軸回転速度と出力軸回転速度が一致したときに締結され、発電機2と電動機4における損失を抑制して車両の燃費性能を向上させることができる。 【0027】また、電機パワートレイン5には、発電機2のロータ回転速度(以下、入力軸回転速度)Niを検出する入力軸回転速度センサ24と、電動機4のロータ回転速度(以下、出力軸回転速度)Noを検出する出力軸回転速度センサ21とが取付けられている。 【0028】一方、エンジン1の吸気管には電子制御式スロットル弁14が設けられており、スロットル弁14は必要とされる発電電力に応じて設定される目標エンジントルクが実現されるよう運転者のアクセル操作とは独立して開閉制御される。エンジン1にはこの他、吸入空気量を検出するエアフローメータ13、クランク角を検出するクランク角センサ23が設けられている。 【0029】統合コントロールユニット10は、基本的には、検出されたアクセル操作量等に基づき運転者が要求する駆動力を求め、要求駆動力が実現されるようにトランスミッションコントロールユニット12を介して電動機4のトルク制御を行なう。また、電動機4の駆動出力(消費電力)に見合った発電電力が得られるようにトランスミッションコントロールユニット12を介しての発電機2の回転速度制御及びエンジンコントロールユニット11を介してのエンジン1のトルク制御も併せて行なう。 【0030】図2は、統合コントロールユニット10の制御内容を示したブロック図であり、図中破線で囲んだ部分が統合コントロールユニット10に対応する。 【0031】統合コントロールユニット10には、アクセル操作量センサ22の信号であるアクセル操作量APO[deg]と、車速センサ26の信号である車速VSP[km/h]と、発電要求値tPg[W]とが入力される。また、トランスミッションコントロールユニット12を介して入力軸回転速度センサ24の信号である入力軸回転速度Ni[rpm]が入力される。なお、車速VSPは出力軸回転速度センサ21の信号である出力軸回転速度No[rpm]から演算によって求めることも可能であり、その場合は車速センサ26を省略することができる。 【0032】目標駆動力演算部B1は、車両の走行状態を示すアクセル操作量APOと車速VSPとに基づき、所定のマップを参照して目標駆動力tFdO[N]を演算する。目標駆動力tFdOは車両の駆動輪が路面に伝える力の目標値を示す。乗算器B2は、定数G1=1000/3600によって単位換算([km/h]から[m/s])された車速VSPと目標駆動力tFdOとの乗算を行なって目標駆動出力の基本値tPo00[W]演算する。 【0033】フィルタB3は、目標駆動出力基本値tPo00に対してフィルタ処理を施し、目標駆動出力基本値のフィルタ処理値tPoO[W]を求める。このフィルタ処理は例えば2次フィルタを用いた遅れ処理であり、電動機4の見かけ上の応答を遅らせることで元々応答の遅いエンジンと応答性を一致させるために行なう。 【0034】電動機出力制限部B4は、目標駆動出力基本値フィルタ処理値tPo0に対して制限処理を施し、目標駆動出力tPo[W]を求める。この制限処理は、発電要求値tPgの大小や正負に関わらず車両の加減速応答を常に一定とするために行なう処理である。この処理については後で詳しく説明する。 【0035】除算器B5は、目標駆動出力tPoを出力軸回転速度No[rad/s]で除し、目標出力軸トルクtTo[Nm]を演算する。なお、ここでは車速VSP[m/s]に定数G4=(出力軸6から駆動軸までの減速比)/(駆動輪有効半径)を乗じて求めた出力軸回転速度Noを使用しているが、出力軸回転速度センサ21の信号である出力軸回転速度No[rpm]をトランスミッションコントロールユニット12を介して入力し、この値を単位換算して使用することも可能である。 【0036】演算された目標出力軸トルクtToはトランスミッションコントロールユニット12へ送信される。トランスミッションコントロールユニット12は目標出力軸トルクtToに応じてインバータ8を制御し、電動機4の出力軸トルクをtToに一致させる。 【0037】一方、除算器B7は、目標駆動出力基本値tPo00を電動機4の効率EFFmで除し、電動機要求電力tPo1[W]を演算する。ここで、電動機4の効率EFFmは、電動機効率演算部B10で電動機4の運転状態(目標出力軸トルクtTo及び出力軸回転速度N o)に基づき所定のマップから参照した値を使用する。電動機要求電力tPo1は、電動機4の出力をtPo00とするために電動機4に供給すべき電力を示す。 【0038】除算器B8は、電動機要求電力tPo1を発電機2の効率EFFgで除し、発電機要求駆動出力tPi[W]を演算する。ここで、発電機2の効率EFFgは、発電機効率演算部B11で発電機2の運転状態(目標エンジントルクtTe及び入力軸回転速度Ni)に基づき所定のマップから参照した値を使用する。発電機要求駆動出力tPiは、発電機2の発電電力をtPo1とするために発電機2に供給すべき駆動出力を示す。 【0039】加算器B9は、発電機要求駆動出力tPiに外部からの発電要求値tPgを加え、目標エンジン出力tPe[W]を演算する。ここで、発電要求値tPgは車両に搭載された各種の電装品で必要とされる電力であり、エンジン1は、車両を駆動するために必要な出力tPiに各種の電装品が必要とする電力を発電するための出力tPgを上乗せしたtPeを目標出力として運転される。 【0040】なお、バッテリ9の充電状態(SOC)によってはある程度の電力をバッテリ9から供給(放電)しても良い場合があり、そのようなときは、バッテリ入出力許容電力に応じて発電要求値tPgを負の値に設定しても良い。発電要求値tPgを負の値に設定するとエンジン1の出力が、車両を駆動するために必要な出力tPiよりも小さくなり、電動機4で不足する電力がバッテリ9から供給される。このような設定を行なうことにより、車速の低い定速運転時等にエンジン1の運転を停止してバッテリ9の電力だけで車両を駆動することも可能となる。 【0041】除算器B12は、目標エンジン出力tPeを車速VSPで除し、第2目標駆動力tFdを演算する。目標入力軸回転速度演算部B13は、第2目標駆動力tFdと車速VSPとに基づき、所定のマップを参照して目標入力軸回転速度の基本値tNi0[rpm]を演算する。ここで使用するマップには、一定以上の効率で目標エンジン出力tPeを達成する入力軸回転速度が設定されており、かつ、車速VSPが低いほど入力軸回転速度も低くなるようになっている。エンジン1と発電機2の効率を常に最高に維持しようとした場合、目標エンジン出力tPeから直接目標入力軸回転速度を演算した方が良いが、その場合は車速VSPと入力軸回転速度(=エンジン回転速度)とが無関係となり、車両の運転者に違和感を与える可能性がある。これを回避するため上記のような方法で目標入力軸回転速度基本値tNiOの演算を行なっている。なお、目標エンジン出力tPeから直接目標入力軸回転速度基本値tNi0を演算する場合は除算器B12が不要となる。 【0042】フィルタB14は、目標入力軸回転速度基本値tNiOに対してフィルタ処理を施し、目標入力軸回転速度tNi[rpm]を求める。このフィルタ処理はフィルタB3で行なう処理と同じ遅れ処理であり、発電機2の見かけ上の応答を遅らせることでもともと応答の遅いエンジン1と応答性を一致させるために行なう。 【0043】演算された目標入力軸回転速度tNiはトランスミッションコントロールユニット12へ送信される。トランスミッションコントロールユニット12は目標入力軸回転速度tNiに応じてインバータ8を制御し、発電機2の回転速度をtNiに一致させる。 【0044】また、除算器B15は、目標エンジン出力tPeを入力軸回転速度Ni[rad/s]で除し、目標エンジントルクtTe[Nm]を演算する。ここで、入力軸回転速度Niは、入力軸回転速度センサ24の信号である入力軸回転速度Ni[rpm]を定数G3=2×π/60によって単位換算した値を使用している。演算された目標エンジントルクtTeはエンジンコントロールユニット11へ送信される。エンジンコントロールユニット11は目標エンジントルクtTeに応じて電子制御式スロットル弁14を制御し、エンジン1のトルクをtTeに一致させる。 【0045】図3は、図1の仮想制御目標値演算部B16における処理内容を示したブロック図である。ここでは、エンジン1の出力を常に発電機要求駆動出力tPiに一致させる制御を行なう、すなわち電動機4の消費電力が全て発電機2の発電電力によって賄われると仮定した場合の発電機2の仮想目標入力軸回転速度t Ni_d[rpm]とエンジン1の仮想目標エンジントルクtTe_d[Nm]とを演算する。実際の目標入力軸回転速度tNi0と目標エンジン出力tPeは、車両の走行状態(アクセル操作量APOと車速VSP)が同一であっても発電要求値tPgの大小や正負によって様々な値を取るが、ここで演算される仮想目標入力軸回転速度tNi_dと仮想目標エンジントルクtTe_dは、車両の走行状態が決まれば一義的に定まる。 【0046】除算器B161は、発電機要求駆動出力tPiを車速VSPで除し、仮想第2目標駆動力tFd_d[N]を演算する。 【0047】仮想目標入力軸回転速度演算部B162は、仮想第2目標駆動力tFd_dと車速VSPとに基づき、B13で参照するマップと同一のマップを参照して仮想目標入力軸回転速度の基本値tNi0_d[rpm]を演算する。 【0048】フィルタB163は、仮想目標入力軸回転速度基本値tNiO_dにB14と同じフィルタ処理を施して仮想目標入力軸回転速度tNi_dを求める。除算器B164は、発電機要求駆動出力tPiを仮想目標入力軸回転速度tNi_dで除し、仮想目標エンジントルクtTe_dを演算する。ただし、ここで使用する仮想目標入力軸回転速度tNi_dは、前回の値(演算周期TJOB前の値)に定数G3を乗じて単位を[rad/s]に換算した値である。 【0049】次に、図1の電動機出力制限部B4における処理内容について説明する。 【0050】電動機出力制限部B4では、エンジン1の出力を常に発電機要求駆動出力tPiに一致させる制御を行なうと仮定した場合に発電機2が実際に発電すると想定される電力(以下、仮想発電電力推定値)Pg_d[W]に基づいて目標出力軸トルクtTo算出に使用する目標駆動出力tPoを適切に制限する。 【0051】なお、エンジン1の出力を常に発電機要求駆動出力tPiに一致させる制御を行なったとしても、仮想発電電力推定値Pg_dを電動機要求電力tPo1と常に一致させることは出来ない。これは、例えばエンジン1の回転速度が上昇している場合、エンジン出力の一部がエンジン1と発電機2の回転部の運動エネルギの上昇のために使われるためである。なお、加減速のない定常運転中はPg_d=tPo1となる。 【0052】ここで、Te:エンジントルクTg:発電機トルクIe:エンジン回転部の慣性モーメントIg:発電機回転部の慣性モーメントPg:発電機出力(値が負のとき発電電力)Po:電動機出力(駆動出力)Pb:バッテリ出力(値が正のとき放電)η:発電機効率とすると、エンジン1及び発電機2の回転部の運動方程式は、次式(1)、【0053】 【数1】
で表される。ω'はエンジン1及び発電機2の角速度ωの微分値(角加速度)である。また、発電機出力Pgは、次式(2)、【0054】 【数2】
で表される。さらに発電機2、電動機4及びバッテリ9の出力の関係は、次式(3)、【0055】 【数3】
で表される。ここでバッテリ9の出力許容範囲を、【0056】 【数4】
とすると、上式(1)から(4)より、【0057】 【数5】
の関係式が導かれる。電動機出力(駆動出力)Poはこの関係式(5)を満たす必要がある。したがって、目標発電電力tPoは、【0058】 【数6】
を満たすように制限する必要がある。 【0059】図4を参照しながら電動機出力制限部B4の具体的な処理内容を説明する。 【0060】演算器B41は、エンジン1の慣性モーメントIe[kgm2]と発電機2の慣性モーメントIg[kgm2]との和、仮想目標入力軸回転速度tNi_d、仮想目標入力軸回転速度の変化量ΔtNi_d、演算周期TJOB[sec]、発電機効率EFFgに基づき、式(6)の第2項に相当するP2[W]を次式(7)によって算出する。P2は、エンジン1と発電機2の回転部の運動エネルギ変化に相当する仕事率を示す。なお、発電機効率EFFgは仮想目標入力軸回転速度tNi_dと後述するエンジントルク推定値Te_cに基づきB11で用いられるマップと同じマップを参照して演算される。 【0061】 【数7】
エンジントルク推定部B42は、仮想目標エンジントルクtTe_dと仮想目標入力軸回転速度tNi_dとに基づき、エンジン1の出力を常に発電機要求駆動出力tPiに一致させる制御を行なうと仮定した場合の現時点におけるエンジントルクの推定値Te_c[Nm]を演算する。エンジントルク推定部B42の具体的な構成については後述する。 【0062】演算器B43は、仮想目標入力軸回転速度tNi_d、エンジントルク推定値Te _c、発電機効率EFFgに基づき、式(6)の第1項に相当するP1[W]を次式よって算出する。 【0063】 【数8】
演算器B44は、P1からP2を減じ、仮想発電電力推定値Pg_dを算出する。仮想目標入力軸回転速度tNi_dと仮想目標エンジントルクtTe_dが走行状態に応じて一義的に決まることから、仮想発電電力推定値Pg_dも走行状態に応じて一義的に決まる。 【0064】演算器B45は、仮想発電電力推定値Pg_dに電動機効率EFFmを乗じ、仮想電動機出力相当値Po_d[W]を演算する。 【0065】演算器B46は、仮想電動機出力相当値Po_dから電動機出力許容変動幅MPLIMを減じ、目標駆動出力の下限値tPo_L1を演算する。ここで電動機出力許容変動幅MPLIMはバッテリ9の入出力許容電力の下限値に対応する固定値である。 【0066】演算器B47は、仮想電動機出力相当値Po_dに電動機出力許容変動幅MPLIMを加え、目標駆動出力の上限値tPo_L2を演算する。 【0067】比較器B48は、目標駆動出力基本値フィルタ処理値tPoOと目標駆動出力下限値tPo_L1の大きい方の値を出力する。比較器B49は、比較器B48の出力と目標駆動出力の上限値tPo_L2の小さい方の値を目標駆動出力tPoとして出力する。 【0068】なお、演算器B46、B47で使用される電動機出力許容変動幅MPLIMは固定値であるが、例えば車速VSPに応じて可変設定しても良い。この場合、例えば、車両の加減速応答を高めたい運転領域(発進加速が行われる低車速域等)で出力許容変動幅MPLIMが大きくなるよう設定する。 【0069】図5は、エンジントルク推定部B42における処理内容を示したブロック図である。エンジントルク推定部B42は、応答時定数演算部B421とトルク推定値演算部B422とから構成される。 【0070】応答時定数演算部B421は、図6に示すように、仮想目標エンジントルクtTe_dと仮想目標入力軸回転速度tNi_dの前回値とからエンジン1の体積効率を演算する体積効率演算部B4211、演算した体積効率と仮想目標入力軸回転速度tNi_dの前回値とからエンジン1のシリンダ内の新気割合を演算する新気割合演算部B4212、エンジン1の吸気系容積と排気量と演算した新気割合と仮想目標入力軸回転速度tNi_dの前回値とからエンジン1の応答時定数T_engを演算する演算器B4213から構成される。演算器B4213での演算は、エンジン1の吸気系モデルに基づく次式(9)による演算である。 【0071】 【数9】
Vm:吸気系容積Ve:排気量ηn:新気割合トルク推定値演算部B422は、図7に示すように、仮想目標エンジントルクtTe_dに一定のむだ時間処理を施すむだ時間処理部B4221、むだ時間処理後の仮想目標エンジントルクに応答時定数T_engを用いた1次遅れ処理を施してエンジントルク推定値Te_cを求める1次遅れ処理部B4222から構成される。 【0072】次に、全体的な作用について説明する。 【0073】上記制御装置を備えた車両においては、発電機2で発電された電力が電動機4に供給され駆動輪が駆動されるのであるが、バッテリ9の入出力電力を抑えて充放電損失を抑えるべく、基本的には、電動機4の消費電力に発電機2の発電電力が一致するようにエンジン1及び発電機2が制御される。 【0074】しかし、バッテリ9の充電状態(SOC)に余裕があり、バッテリ9の充放電損失を考慮してもバッテリ9から電動機4に電力を供給する方が発電機2から直接電力を供給するよりも燃費向上等の観点からみて有利である場合には、発電機2の発電電力を減らし、その分の電力をバッテリ9から供給する場合がある。また、エンジン1を燃費のよい運転点で定常運転したり、出力を絞ったりする場合もある。 【0075】この場合、電動機4の消費電力と発電機2の発電電力は一致しなくなるのであるが、本発明の適用により、電動機4の消費電力に発電機2の発電電力を一致させるようにエンジン1及び発電機2が制御されると仮定した場合の発電機2の発電電力(仮想発電電力推定値)に基づき電動機の出力制限値を演算して、電動機4の出力を制限すると、仮想発電電力推定値が一義的に決まることから、電動機出力制限値も車両の走行状態に応じて一義的に決まることになり、発電機2の運転状態の変化を受けて出力制限値が変化することが無くなり、電動機4の出力応答が変化するのが防止される。 【0076】さらに、電動機出力制限値は、仮想発電電力推定値と電動機出力の出力許容変動幅とに基づき設定されるが、出力許容変動幅はバッテリ入出力許容電力の下限値に基づき設定される固定値であるので、バッテリ入出力許容電力の変動を受けて出力許容変動幅が変動することはなく、電動機出力制限値が変動して電動機4の出力応答が変動するのを防止できる。このとき、電動機出力制限値を運転領域に応じて変化させるように構成すれば、高い加減速応答が要求される運転領域で電動機2の応答性を高め、運転性をさらに高めることもできる。 【0077】なお、電動機4の消費電力と発電機2の発電電力が一致するようにエンジン1及び発電機2の運転が制御される運転条件下では、上記仮想発電電力推定値と実発電電力はほぼ一致するとことになるので、従来技術と同様に電動機4の消費電力と発電機2の発電電力はほぼ一致し、バッテリ9への負荷は最小限に抑えられる。 【0078】以上、本発明の実施の形態について説明したが、上記実施形態は本発明が適用される車両の構成の一例を示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。特に、図2以降に示したブロック図はそれぞれ数多くの変形例が考えられる。また、上記実施形態では電動機の出力を制限する構成としているが、電動機のトルクを制限する構成としてもよく、この場合も同様の作用効果が奏される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年11月22日(2000.11.22) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075513 【弁理士】 【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−165307(P2002−165307A) |
| 【公開日】 |
平成14年6月7日(2002.6.7) |
| 【出願番号】 |
特願2000−355759(P2000−355759) |
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