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【発明の名称】 動力伝達装置
【発明者】 【氏名】木間 康夫

【要約】 【課題】複数の原動機を備える装置の変速ショックを低減することを目的とする。

【解決手段】第1の原動機(エンジン)1と、第2の原動機(モータ)2とを駆動源として有する装置の変速機において、第1の変速段から第2の変速段への変速に際して、前記第1の原動機(エンジン)1の回転数の増減と、前記第2の原動機(モータ)2の回転数の増減とが、逆になるように構成されたことを特徴とする。また、第1の変速段から第2の変速段への変速に際して、一方の原動機(エンジン)1の慣性トルクと相殺するトルクを、他方の原動機(モータ)2に出力させるように制御されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の原動機と、第2の原動機とを駆動源として有する装置の動力伝達装置において、第1の変速段から第2の変速段への変速に際して、前記第1の原動機の回転数の増減と、前記第2の原動機の回転数の増減とが、逆になるように構成されたことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】 前記第1の原動機の第1の変速段から第2の変速段への変速と、前記第2の原動機の第1の変速段から第2の変速段への変速とは、ほぼ同時になされることを特徴とする前記請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項3】 前記第1の原動機又は前記第2の原動機の少なくとも1つがモータであり、第1の変速段から第2の変速段への変速に際し、その変速の前後における第1の原動機側の駆動部品の慣性トルクと第2の原動機側の駆動部品の慣性トルクとが相殺されるように、前記モータの出力トルクが制御されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】 第1の原動機と、第2の原動機とを駆動源として有する装置の動力伝達装置において、第1の変速段から第2の変速段への変速に際して、一方の原動機の慣性トルクと相殺するトルクを、他方の原動機に出力させるように制御されることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項5】 プラネタリギヤセットと、前記プラネタリギヤセットの各回転要素に連結された原動機、モータ及び出力軸と、を有する動力伝達装置において、第1の変速段から第2の変速段への変速に際し、前記原動機の回転数の増減と、前記モータの回転数の増減とが逆の関係にあるとともに、前記原動機と前記モータの慣性トルクが互いに相殺されるように前記モータの出力が制御されることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項6】 プラネタリギヤセットと、第1の変速部と、前記プラネタリギヤセットに前記第1の変速部を介して連結される原動機と、前記プラネタリギヤセットに連結されるモータ及び第2の変速部と、前記第1の変速部及び第2の変速部と連結される出力軸とを備える動力伝達装置において、前記第2の変速部は、前記プラネタリギヤセットのサンギヤ、リングギヤ及びキャリアの三つの回転要素のうち、一の回転要素を固定すると他の二つの回転要素が互いに逆方向に回転するように選択した前記一の回転要素に連結され、前記原動機及びモータは、それぞれ前記他の二つの回転要素のいずれか一つに連結されることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項7】 プラネタリギヤセットと、第1の変速部と、前記プラネタリギヤセットに前記第1の変速部を介して連結される原動機と、前記プラネタリギヤセットに連結されるモータ及び第2の変速部と、前記第1の変速部及び第2の変速部と連結される出力軸とを備える動力伝達装置において、前記第2の変速部は、前記プラネタリギヤセットのサンギヤ、リングギヤ及びキャリアの三つの回転要素のうち、一の回転要素を固定すると他の二つの回転要素が互いに逆方向に回転するように選択した前記一の回転要素に連結され、前記原動機及びモータは、それぞれ前記他の二つの回転要素のいずれか一つに連結され、第1の変速段から第2の変速段への変速に際し、前記第1の変速部と、前記第2の変速部とがほぼ同時に変速されるように制御されるとともに、前記原動機と前記モータの慣性トルクが互いに相殺されるように前記モータの出力が制御されることを特徴とする動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガソリンエンジンやモータ等の複数の原動機を搭載した動力伝達装置に関し、特に変速段及び原動機の制御により変速ショックを低減させ、若しくは無くした動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】エンジンとモータを搭載した動力伝達装置に関しては、従来、特開平9−158998号公報に記載された発明等が知られている。この発明には、エンジンとモータジェネレータと変速機と、前記エンジンに発進クラッチを介して連結されるとともに、前記モータジェネレータ及び変速機に連結されたプラネタリギヤとを備える車両用駆動装置及びその制御装置が記載されている。この車両用駆動装置は、プラネタリギヤをエンジンとモータの駆動力の合成分配機構として使用し、発進クラッチの係合に先行してモータジェネレータを駆動させることにより、モータジェネレータの回転の立ち上がりの遅れによるイナーシャトルクの発生を低減させることを特徴としている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特開平9−158998号公報に記載された発明は、発進時のモータジェネレータの回転上昇の遅れを防止するものに過ぎず、ローギヤから2速、2速から3速等の各変速段の変速の際の変速ショックを低減させることはできなかった。そこで、本発明では、ガソリンエンジンやモータ等の複数の原動機を有する装置の動力伝達装置において、発進時、及び各変速段の変速の際の変速ショックを低減させ、若しくは無くすことを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記した課題を解決するため、本発明では、変速の際に、第1の原動機と、第2の原動機の慣性トルク並びに出力トルクが互いに相殺されることにより、変速ショックを低減するように動力伝達装置を構成するようにした。即ち、本発明の請求項1では、第1の原動機と、第2の原動機とを駆動源として有する装置の動力伝達装置において、第1の変速段から第2の変速段への変速に際して、前記第1の原動機の回転数の増減と、前記第2の原動機の回転数の増減とが、逆になるように構成されたことを特徴とした。
【0005】原動機を1つしか備えない車両では、変速の際に原動機の回転数が変化するため、その変化が完了してから出力軸と原動機を連結したり、その連結の際に徐々に連結したりすることにより変速ショックを少なくしている。ところが、請求項1の発明では、少なくとも2つの原動機を有する装置において、一方の原動機が変速の際に回転数が落ちるならば、他方の原動機の回転数が上がるようにギヤ等を連結することによって、一方の余った慣性エネルギを他方の原動機の運動エネルギとして吸収させることができるため、変速ショックを低減させ、若しくは無くすことができる。
【0006】また、本発明の請求項2では、請求項1記載の動力伝達装置において、前記第1の原動機の第1の変速段から第2の変速段への変速と、前記第2の原動機の第1の変速段から第2の変速段への変速とは、ほぼ同時になされることを特徴とした。
【0007】請求項1の発明において、一方の原動機の変速と、他方の原動機の変速とのタイミングにずれが生じてしまうと、一方若しくは他方の原動機しか変速してないときは、両者の慣性エネルギが相殺されないので、なるべく同時に回転数が変化していくことが望ましい。従って、請求項2のような制御がされる動力伝達装置によれば、より効果的に変速ショックを低減させ、若しくは無くすことができる。
【0008】また、本発明の請求項3では、請求項1又は請求項2に記載の動力伝達装置において、前記第1の原動機又は前記第2の原動機の少なくとも1つがモータであり、第1の変速段から第2の変速段への変速に際し、その変速の前後における第1の原動機側の駆動部品の慣性トルクと第2の原動機側の駆動部品の慣性トルクとが相殺されるように、前記モータの出力トルクが制御されることを特徴とした。
【0009】モータは、ガソリンエンジン等の原動機に比べると、出力トルクの応答性が良く、制御しやすい。従って、このように原動機の1つとしてモータを用い、一方の原動機の変速時の慣性トルクを、他方のモータにより相殺するようにモータの出力トルクを制御すれば、変速ショックをほぼ完全に無くすことができる。なお、モータの出力トルクは、発生させる必要があるときもあれば、回生発電に利用するなどして、負荷として働かせる必要がある場合もある。
【0010】また、本発明の請求項4では、第1の原動機と、第2の原動機とを駆動源として有する装置の動力伝達装置において、第1の変速段から第2の変速段への変速に際して、一方の原動機の慣性トルクと相殺するトルクを、他方の原動機に出力させるように制御されることを特徴とした。
【0011】このようにすることにより、請求項3の場合と同様、一方の原動機の変速時の慣性トルクが、他方の原動機の出力により相殺されるので、変速ショックをほぼ完全に無くすことができる。
【0012】また、本発明の請求項5では、プラネタリギヤセットと、前記プラネタリギヤセットの各回転要素に連結された原動機、モータ及び出力軸と、を有する動力伝達装置において、第1の変速段から第2の変速段への変速に際し、前記原動機の回転数の増減と、前記モータの回転数の増減とが逆の関係にあるとともに、前記原動機と前記モータの慣性トルクが互いに相殺されるように前記モータの出力が制御されることを特徴とした。
【0013】このようにすることにより、請求項3の場合と同様、一方の原動機の変速時の慣性トルクが、他方のモータの出力により相殺されるので、変速ショックをほぼ完全に無くすことができる。また、原動機の変速と、モータの変速のタイミングを機械的にとることができる。
【0014】また、本発明の請求項6では、プラネタリギヤセットと、第1の変速部と、前記プラネタリギヤセットに前記第1の変速部を介して連結される原動機と、前記プラネタリギヤセットに連結されるモータ及び第2の変速部と、前記第1の変速部及び第2の変速部と連結される出力軸とを備える動力伝達装置において、前記第2の変速部は、前記プラネタリギヤセットのサンギヤ、リングギヤ及びキャリアの三つの回転要素のうち、一の回転要素を固定すると他の二つの回転要素が互いに逆方向に回転するように選択した前記一の回転要素に連結され、前記原動機及びモータは、それぞれ前記他の二つの回転要素のいずれか一つに連結されることを特徴とした。
【0015】このような動力伝達装置によれば、第1の変速部により、出力軸の回転数が原動機に伝達され、原動機の回転数を変化させるとともに、その原動機の回転数の変化がプラネタリギヤセットを介してモータの回転数を変化させる。また、第2の変速部を固定した時に原動機とモータとは互いに逆の方向へ回転することから、出力軸に連結された第2の変速部が一定回転で回っている時に、原動機の回転数の増減と、モータの回転数の増減とは逆の関係になるように動作する。従って、出力軸の回転が第1の変速部を介して原動機の回転数を増減させ、原動機の回転数変化がモータの回転数を増減させる際に、前記関係より原動機の慣性トルクと、モータの慣性トルクとが互いに相殺されるので変速ショックが低減される。
【0016】また、本発明の請求項7では、プラネタリギヤセットと、第1の変速部と、前記プラネタリギヤセットに前記第1の変速部を介して連結される原動機と、前記プラネタリギヤセットに連結されるモータ及び第2の変速部と、前記第1の変速部及び第2の変速部から動力を伝達される出力軸とを備える動力伝達装置において、前記第2の変速部は、前記プラネタリギヤセットのサンギヤ、リングギヤ及びキャリアの三つの回転要素のうち、一の回転要素を固定すると他の二つの回転要素が互いに逆方向に回転するように選択した前記一の回転要素に連結され、前記原動機及びモータは、それぞれ前記他の二つの回転要素のいずれか一つに連結され、第1の変速段から第2の変速段への変速に際し、前記第1の変速部と、前記第2の変速部とがほぼ同時に変速されるように制御されるとともに、前記原動機と前記モータの慣性トルクが互いに相殺されるように前記モータの出力が制御されることを特徴とした。
【0017】このような動力伝達装置によれば、第1の変速部により、出力軸の回転数が原動機に伝達され、原動機の回転数を変化させるとともに、その原動機の回転数の変化がプラネタリギヤセットを介してモータの回転数を変化させる。また、第2の変速部を固定した時に原動機とモータとは互いに逆の方向へ回転することから、出力軸に連結された第2の変速部が一定回転で回っている時に、原動機の回転数の増減と、モータの回転数の増減とは逆の関係になるように動作する。従って、出力軸の回転が第1の変速部を介して原動機の回転数を増減させ、原動機の回転数変化がモータの回転数を増減させる際に、前記関係より原動機の慣性トルクと、モータの慣性トルクとが互いに相殺されるので変速ショックが低減される。さらに、第1の変速部と第2の変速部がほぼ同時に変速されることから、慣性トルクの発生と相殺がほぼ同時に行われるとともに、相殺し切れなかった分の慣性トルクについて、相殺するようにモータの出力が制御されるので、実質的に変速ショックを無くすことができる。
【0018】なお、請求項において、原動機とは、モータを含むものとする。また、連結とは、歯車などによる連結、軸による連結を含む動力の伝達が可能な状態を意味する。また、第1の変速段から第2の変速段とは、ローギヤから2速ギヤの意味にとどまらず、あるギヤから他のギヤへの意味であり、2速ギヤから3速ギヤ、4速ギヤから2速ギヤ等も含む意味である。また、プラネタリギヤセットは、サンギヤ、リングギヤ、キャリアを有するものをいうが、プラネタリギヤ(ピニオンギヤ)は、1つのみのものでもよく、2つ以上の複数個を有するものでもよい。ちなみに、プラネタリギヤが1つのプラネタリギヤセットの場合には、請求項6又は請求項7で第2の変速部に連結される回転要素としては、キャリアが該当し、原動機及びモータは、それぞれサンギヤ、リングギヤのいずれかに連結されていれば良い。また、プラネタリギヤが2つのプラネタリギヤセットの場合には、請求項6又は請求項7で第2の変速部に連結される回転要素としては、リングギヤが該当し、原動機及びモータは、それぞれ、キャリア、サンギヤのいずれかに連結されていればよい。
【0019】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の動力伝達装置のシステム構成を示すブロック図である。なお、以下の説明において、かっこ内に記載した用語を略語として適宜使用する。この動力伝達装置は、第1の原動機であるエンジン(ENG)1と、電気エネルギにより駆動軸の駆動補助を行うとともに、前記駆動軸の運動エネルギから電気エネルギに変換する回生機能を有する第2の原動機であるモータ2と、変速機(T/M)3と、モータ2及び変速機3を制御するモータ・トランスミッション電子制御ユニット(ECU)4とから構成される。ECU4は、制御のための情報検出手段として、エンジン回転数センサ81、アクセル開度センサ82、モータ回転数センサ83、シフトポジションセンサ84、バッテリ(BATT)残量センサ85などを備えている。モータ2は、バッテリ(BATT)6を電源とし、ECU4の信号に基づきインバータ(INV)5を介して制御される。また、変速機3は、ECU4により、図示しない油圧制御手段を介して制御される。なお、ECU4による制御は、ECU4内に記憶されたプログラムが実行されることにより行われる。このようなシステム構成を有する本発明の動力伝達装置のうち、機械式のマニュアル変速機がベースとなっている自動マニュアル変速機型の動力伝達装置と、オートマチック変速機がベースとなっている4速オートマチック変速機型の動力伝達装置の2つの例について以下に説明する。
【0020】[AMT動力伝達装置]図2は、本発明の第1の実施の形態に係る自動マニュアル変速機型(AMT)の動力伝達装置のギヤ構成を示す図である。第1の実施の形態に係るAMT動力伝達装置10は、基本構成として、その両端にエンジン1とモータ2が配置されるメインシャフト11と、メインシャフト11からの動力を各ギヤを介して受けるとともに、ファイナルギヤ29を介して駆動輪へ動力を伝えるカウンタシャフト12から構成される。メインシャフト11はさらに、エンジンの出力軸であるENG出力軸13と、メインプライマリシャフト(MPS)14と、モータクラッチ32を介してモータの動力を伝えるモータ出力軸15と、メインセカンダリシャフト(MSS)16とから構成される。
【0021】ENG出力軸13は、軸端がプラネタリギヤセット20のリングギヤ20aに連結されており、エンジン寄りに位置するメインクラッチ31を介してMPS14へ動力を伝えるようになっている。MPS14は、エンジン出力軸13からの動力を受け、五速ギヤ25、二速ギヤ22、プライマリ三速ギヤ23aを介してカウンタシャフト12へ動力を伝えるようになっている。また、MPS14のエンジンと反対側の一端は、134ワンウェイクラッチ(134O/W)34と、134シンクロメッシュ35を介して、プラネタリギヤセット20のキャリア20bと連結されている。134O/W34はエンジン1側からの入力がフォワード方向に伝達可能となっている。モータ出力軸15は、モータクラッチ32を介してモータ2の動力を受け、エンジン1側の軸端がプラネタリギヤセット20のサンギヤ20dに連結されている。MSS16は、一端がキャリア20bに連結され、ローギヤ21、セカンダリ三速ギヤ23b、四速ギヤ24、リバースギヤ26を介してカウンタシャフト12と動力の伝達が可能になっている。このうち、ローギヤ21とリバースギヤ26とはロー・リバースドグクラッチ(LowRVSDOG)33がシフトすることによりいずれかが連結可能となっている。なお、キャリア20bはスタータワンウェイクラッチ30に接続され、前進方向にしか回らないようになっている。
【0022】カウンタシャフト12は、ローギヤ21、二速ギヤ22、プライマリ三速ギヤ23a、セカンダリ三速ギヤ23b、四速ギヤ24、五速ギヤ25、リバースギヤ26により、メインシャフト11と連結可能であるとともに、ファイナルギヤ29を介して車軸への動力の伝達が可能となっている。なお、カウンタシャフト12は、エンジン1と、二速ギヤ22、プライマリ三速ギヤ23a、五速ギヤ25を介して連結されており、請求項にいう出力軸に相当する。また、二速ギヤ22、プライマリ三速ギヤ23a、五速ギヤ25は、請求項にいう第1の変速部に相当する。
【0023】ローギヤ21は、ツーウェイクラッチ(2WAY)39を介してカウンタシャフト12へ連結されている。二速ギヤ22と五速ギヤ25は、25シンクロメッシュ36のシフトにより、いずれかが、カウンタシャフト12と連結可能になっている。プライマリ三速ギヤ23aは、3シンクロメッシュ37を介してカウンタシャフト12と連結可能になっている。セカンダリ三速ギヤ23bと四速ギヤ24は、34ドグクラッチ(34DOG)38のシフトにより、いずれかがカウントシャフト12と連結可能になっている。リバースギヤ26は、カウンタシャフト12とLowRVSDOG33により連結されている。
【0024】なお、プラネタリギヤセット20は、リングギヤ20aと、プラネタリギヤ20cと、サンギヤ20dと、プラネタリギヤ20cの公転をMSS16へ伝えるキャリア20bとから構成される。また、ドグクラッチが使用される個所は、適宜シンクロメッシュを代わりに使用することができ、シンクロメッシュが使用される個所も、回転の同期をうまく行うことができれば、適宜ドグクラッチを代わりに使用することができる。
【0025】次に、以上のような構成を有するAMT動力伝達装置10における動作について説明する。
《始動》図3は、AMTの動力伝達装置において、すべてのドグクラッチ及びシンクロメッシュをオフにした状態、即ちニュートラルの状態を示す。このニュートラル状態で、エンジン1が停止している時においても、モータを正回転させ、四速ギヤ24を介することにより、図示しないACコンプレッサを駆動することは可能である。なお、以下の説明において、モータクラッチ32は、常につながっている(オン)ものとする。エンジン1を始動するには、図3のニュートラルの状態において、モータ2を逆転させる。キャリア20bは、スタータワンウェイクラッチ30により逆転しないことから回転せず、リングギヤ20aが正回転することによりエンジン1を正回転させる。エンジン回転数Neが始動回転数まで上がれば、エンジン1が始動する。なお、以上は、ギヤがニュートラルの状態でエンジン1を始動する場合であるが、LowRVSDOG33がLowに入ったままエンジン1が停止している状態、例えば信号待ち等で車両が停止した場合にも、2WAY39を後退側開放(RER)にしておくことにより、同様にエンジン1の始動が可能である。また、エンジン1が停止している状態で、車両が上り坂にあった場合には、スタータワンウェイクラッチ30が逆転を防止しているため、ローギヤ21が入っていれば、車両のずり下がりが防止される。従って、余分なクリープ動力を消費することもない。
【0026】《発進》図11は、AMT動力伝達装置における、発進時の制御フローを示し、図10は、AMT動力伝達装置において、車両を加速していった場合のギヤの選択及び各要素の速度を示したグラフである。図10の下側のグラフは、加速過程におけるエンジン回転数Ne(実線)、車速V(二点鎖線)、モータ回転数Nm(点線)の変化を示し、上側は、下側のグラフに対応して、各クラッチのオン・オフの状態を示している。時間軸上の符号t1,t2,・・・は、AMT動力伝達装置10の状態を指すものとして以下の説明で使用する。
【0027】図11及び図10を参照しつつ、車両の発進制御を説明する。図10のt0→t1においてはエンジン1が始動後アイドリングしており、モータ2が逆転している。車両を発進させる場合には、LowRVSDOG33をローギヤ21側へシフトし(S101)、2WAY39を前進側(FWD)にする(S102)。この状態で、バッテリ残量が十分な場合には(S103)、エンジン1に対し逆転しているモータ2のモータ回転数Nmをエンジン回転数Neに徐々に近づけて同期させる(S104,t1→t2)。エンジン回転数Neとモータ回転数Nmが一致すると(S108,t2)、リングギヤ20a、キャリア20b、サンギヤ20dが一体となって回転する。一方、バッテリ残量が十分でなかった場合には、バッテリ6に負担をかけないために、なるべくエンジン1の駆動力を使用してモータ回転をエンジン回転に同期させることもできる。即ち、134シンクロメッシュ35をオンにして(S105)、メインクラッチ31をオンにすることにより(S106)、リングギヤ20aとキャリア20bの回転が同期していき、これに伴いサンギヤ20dの回転数も同期していくので、モータ回転数Nmがエンジン回転数Neに近づいていく(S107)。モータ回転数Nmと、エンジン回転数Neが完全に一致すると(S108)、ローギヤへの変速が完了する。このときのギヤのかみ合いを示したのが図4である。このように、本発明のAMTでは、モータ2を駆動してモータ回転をエンジン回転に同期させていくことにより、発進クラッチ機構及びトルクコンバータ機構を使用せずに滑らかに発進させることができる。ローギヤによる加速は、通常短い時間と考えられるので、モータ回転とエンジン回転を同期させたまま加速していく(t2→t3)。
【0028】《ロー→2速》次に、図12のフローチャート及び図10を参照しながら、ローから2速への変速動作を説明する。メインクラッチ31がオンであった場合には(S110)メインクラッチ31をオフにしてから(S111)、メインクラッチ31がオフであった場合(S110)には、そのまま、25シンクロメッシュ36を2速側へ入れる(S112)。その後、メインクラッチ31をオンにする(S113)。なお、メインクラッチ31を一度切るのは、25シンクロメッシュ36のシフトを容易にするためである。メインクラッチをオンにした後(S113)、エンジンの動力が二速ギヤ22へ完全に移行する(S114)と同時に2WAY39を後退側へ入れる(S115)。この状態で、ギヤのかみあいとしては2速が完了しているが、エンジン1及びモータ2の回転数が車速にあっていないので、これを同期させる必要がある。
【0029】t3の状態において、エンジン1の回転数Neは、1速の時の回転数のままであるので、2速としてあるべき回転数よりは回転数が高い状態にある。従って、エンジン1はそれ自身の回転数を落としつつ、カウンタシャフト12を加速する方向にトルクを発生しようとする。ところが、ローギヤ21は入ったままであることと、2WAY39を後退側へいれたことにより、カウンタシャフト12を加速しようとするトルクは、ローギヤ21を通じてモータ2を加速するために消費される(t3→t4)。従って、エンジン回転数Neが2速の回転数に落ちるときに余るエネルギは、モータ2を加速するエネルギとして吸収され、変速時のショックが緩和される。t3→t4間におけるエンジン1側駆動部品の慣性トルクと、モータ2側駆動部品の慣性トルクが、完全に互いを相殺する関係にある場合には、モータ2に特にトルクを発生させたりしなくとも、変速ショックを低減、若しくは無くすことができる。一方、これらのイナーシャ変化量に差があった場合には、その差に応じて、モータ2でプラスのトルクTmを発生させるか、回生用のマイナスのトルクTmを発生させるようにモータ2を制御することにより変速ショックを低減、若しくは無くすことができる(S116)。このトルクTmの制御量は、前記した2速の状態でのエンジン1側の駆動部品のイナーシャとモータ2側の駆動部品のイナーシャと、エンジン回転数Neのデータより予め決めることができるので、動力伝達装置ごとにマップを作っておいてもよいし、その都度演算することにより求めてもよい。以上の動作により2速への変速が完了する。このときのギヤのかみ合いの状態を示したのが図5である。2速の変速完了の後、そのまま加速すると、ローギヤ21がかみ合っていることから、エンジン1の加速に応じ、モータ2の回転も上昇する(t4→t5)。
【0030】《2速→3速》次に、図13のフローチャート及び図10を参照しながら、2速から3速への変速動作について説明する。t5において、2WAY39を前進に切換えると同時にローギヤ21をオフする(S120)。ここで、2WAY39を前進に切換えるのは、ローギヤ21が回転することによる摩擦損失を無くして動力伝達の効率を良くするためであり、必ずしも切換えなくてもよい。ローギヤ21が切れたことによりモータ回転が遅くなるとともに、セカンダリ三速ギヤ23bの速度がカウンタシャフト12の回転と同期するようにモータを制御する(S121)。セカンダリ三速ギヤ23bの同期が完了したならば(t5)、34DOG38をセカンダリ三速ギヤ23b側へシフトして(S122)、3速への変速の準備が完了する。モータ2のトルクを制御し、3速出力相当のトルクを加えられた時点で、メインクラッチ31を切ると同時に25シンクロメッシュ36を切る(S123)。このときのギヤのかみ合いを示したのが図6である。この瞬間、キャリア20bからセカンダリ三速ギヤ23b、カウンタシャフト12の部分は、3速の回転数になっているのに対して、エンジン1の回転数は2速のままになっている。バッテリ残量が十分であれば(S124)モータ駆動制御により、モータ回転数Nmをエンジン回転数Neに近づける(S125)。モータ回転数Nmとエンジン回転数Neが一致した時点で、3速への変速が完了する(S126)。この時、油圧クラッチによる変速の熱容量定期時間制限がないため、モータ2により、ある程度時間をかけた変速ができるため、変速ショックを低減若しくは無くすことが可能となる。また、バッテリ残量が少ない場合は(S124)、134シンクロメッシュ35をオンにした後(S127)、メインクラッチ31をオン(S128)することにより、機械的にモータ回転数Nmと、エンジン回転数Neを一致させることができる(S126)。以上のように2速から3速への変速の際には、エンジン1側の駆動部品の慣性トルクと、モータ2側の駆動部品の慣性トルクが相殺されることにより、変速時のショックを低減若しくは無くすことができる。それぞれのイナーシャ変化量に差がある場合には、その差に応じたモータトルクTm、エンジントルクTeの制御を行えばよい。
【0031】《3速→4速》次に、図14のフローチャートと図10を参照しながら、3速から4速への変速動作について説明する。メインクラッチ31がオンかどうかを判断し(S130)、オンであったならば、オフにしてから(S131)、オフであったならば、そのまま、3シンクロメッシュ37をオンにする(S132)。次に、メインクラッチ31をつなぎ(S133)、34DOG38をオフにする(S134)。以上により、3速のギヤをセカンダリシャフト側からプライマリシャフト側へ持ち変えたことになる。
【0032】次に、モータ2を制御することにより四速ギヤ24をカウンタシャフト12に同期させる(S135)。同期が完了したら、34DOG38を四速ギヤ24側へシフトする(S136)。モータ制御により、四速ギヤ24に4速出力相当のトルクを加えられた時点で、メインクラッチ31をオフにすると同時に3シンクロメッシュ37をオフにする(S137)。このときの、ギヤのかみ合いの状態を示したのが図7である。
【0033】この瞬間、キャリア20bから4速ギヤ24、カウンタシャフト12は、4速に切換わっているが、エンジン1の回転数は3速のままである。バッテリ残量が十分であれば(S138)、モータ駆動制御により、モータ回転数Nmをエンジン回転数Neに近づける(S139)。モータ回転数Nmとエンジン回転数Neが一致した時点で、4速への変速が完了する。この時、油圧クラッチによる変速の熱容量定期時間制限がないため、モータにより、ある程度時間をかけた変速ができるため、変速ショックを低減若しくは無くすことが可能となる。また、バッテリ残量が少ない場合は(S138)、134シンクロメッシュ35をオンにした後、メインクラッチ31をオンする(S139−a)ことにより機械的にモータ回転数Nmとエンジン回転数Neを一致させることができる(S139)。以上のように3速から4速への変速の際には、エンジン1側の駆動部品の慣性トルクと、モータ2側の駆動部品の慣性トルクが相殺されることにより、変速時のショックを低減若しくは無くすことができる。それぞれのイナーシャ変化量に差がある場合には、その差に応じたモータトルクTm、エンジントルクTeの制御を行えばよい。
【0034】エンジン回転とモータ回転が同期した後は、134シンクロメッシュ35をオンしたのち、メインクラッチ31をオンする(S139−a)。これにより、リングギヤ20aと、キャリア20bが一体となって回転する。この時のメインクラッチ31の係合の際のショックは、既に回転が同期した後であるので、極めて少ない。なお、バッテリ残量が十分であったときには、モータ2を回し続けてエンジン回転と同期させておいてもよい。
【0035】《4速→5速》次に、図15のフローチャートと図10を参照しながら、4速から5速への変速動作について説明する。4速から5速に際しては、メインクラッチ31をオフし(S140)、25DOG36を5速側へシフトすると同時に134シンクロメッシュ35及び134O/W34をオフする(S141)。以上のシフト動作が済んだならば、メインクラッチ31を再びつなぐ(S142)。この状態で、エンジン1側の駆動部品と、モータ2側の駆動部品は、まだ4速のままであるので、5速の回転数へ移行する必要がある。エンジン1側の駆動部品は、回転数がおちることによりカウンタシャフト12を加速するように慣性トルクを与え、一方、プラネタリギヤセット20を介してつながるモータ2側の駆動部品は、回転数が上がっていくことにより、前記慣性トルクを吸収する。エンジン1側の駆動部品の慣性トルクと、モータ2側の駆動部品の慣性トルクが完全に相殺する関係にあれば、特にモータ2にトルク制御をすることなく変速ショックがなくなるし、両者の慣性トルクに差があれば、その分のトルクをモータ2が発生するように制御すれば(S143)、変速ショックを低減若しくはなくすことができる。各駆動部品が5速へ完全に移行したならば、34DOG38をオフし(S144)、5速への変速が完了する。このときのギヤのかみ合いを示したのが図8である。
【0036】《後退》次に、図9を参照しながら、AMT動力伝達装置10において、車両を後退させるときのギヤ動作について説明する。まず、停止している状態から、LowRVSDOG33を後退側へ入れれば、後退ギヤとなる。停止しているときには、エンジン1に対し、モータ2が逆転し、キャリア20bは回転していない。モータ2を徐々に減速して、正回転側へ回転させることにより、キャリア20bが回転し、リバースギヤ26を介してカウンタシャフト31が逆転される。このようにして、発進クラッチ機構及びトルクコンバータ機構をもたずして、車両を後退させることができる。なお、バッテリ残量が十分でなかったときには、134シンクロメッシュ35をオンにすることにより、クラッチ制御により、発進させることも可能である。また、エンジン1が停止している状態で、車両が上り坂にあった場合には、スタータワンウェイクラッチ30が逆転を防止しているため、リバースギヤ26が入っていれば、車両のずり下がりが防止される。従って、余分なクリープ動力を消費することもない。
【0037】以上のように、本発明のAMT動力伝達装置では、プラネタリギヤを介してエンジンとモータが連結される車両において、変速時に、エンジン側の駆動部品の慣性トルクをモータ側の駆動部品の慣性トルクに吸収させることにより、変速時のショックを低減させることができる。なお、前記実施の形態において、LowRVSDOG33、34DOG38、25シンクロメッシュ36、134シンクロメッシュ35、3シンクロメッシュ37は、モータの制御等により、うまく回転数を合わせて、かみ合わせることができるようにすれば、ドグクラッチを用いた方が良い。ドグクラッチを用いる場合は、滑りロスがないためより効率的な動力の伝達が可能である。
【0038】[4AT動力伝達装置]次に、本発明の第2の実施の形態に係る4速オートマチック変速機型(4AT)の動力伝達装置について説明する。図16は第2の実施の形態に係る4AT動力伝達装置のギヤ構成を示す図である。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と実質的に同一な部分は、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第2の実施の形態に係る4AT動力伝達装置50は、基本構成として、その両端に第1又は第2の原動機であるエンジン1とモータ2が配置されるメインシャフト51と、メインシャフト51からの動力を各ギヤを介して受けるとともに、ファイナルギヤ69を介して駆動輪へ動力を伝えるカウンタシャフト52とから構成される。
【0039】メインシャフト51はさらに、エンジンの出力軸であるENG出力軸53と、メインプライマリシャフト(MPS)54と、モータドグクラッチ72を介してモータの動力を伝えるモータ出力軸55と、メインセカンダリシャフト(MSS)56とから構成される。
【0040】ENG出力軸53は、湿式クラッチである四速(4TH)クラッチ74を介してプラネタリギヤセット60のリングギヤ60aに連結されている。そして、エンジン寄りに位置するメインクラッチ71を介してMPS54へ動力を伝えるようになっている。MPS54は、メインクラッチ71を介してエンジン出力軸53からの動力を受け、軸端がエンジンドグクラッチ(EngDOG)73を介して、四速ギヤ63並びにリバースギヤ64のセットへ、若しくはリングギヤ60aへ連結されるようになっている。モータ出力軸55と、MSS56は、モータドグクラッチ72のシフトにより、モータ2との連結が選択できるようになっている。このうち、モータ出力軸55は、モータドグクラッチ72を介してモータ2の動力を受け、エンジン1側の軸端がリングギヤ60aに連結されている。また、MSS56は、モータドグクラッチ72を介してモータ2の動力を受け、エンジン1側の軸端がプラネタリギヤセット60のサンギヤ60dに連結されている。さらに、ローリアクタドグクラッチ(L−RDOG)77を介して、ローリアクタギヤ61とも連結可能になっている。さらに、MSS56は、23メインクラッチ76を介して23シンクロメッシュ75へ連結可能であり、23シンクロメッシュ75の選択により、プラネタリギヤセット60のキャリア60bと123ギヤ62のセット、又はグランドアースと連結可能となっている。
【0041】なお、プラネタリギヤセット60は、リングギヤ60aと、プラネタリギヤ60cと、サンギヤ60dと、プラネタリギヤ60cの公転を123ギヤ62へ伝えるキャリア60bとから構成される。また、ドグクラッチが使用される個所は、適宜シンクロメッシュを代わりに使用することができ、シンクロメッシュが使用される個所も、回転の同期をうまく行うことができれば、適宜ドグクラッチを代わりに使用することができる。
【0042】カウンタシャフト52は、ローリアクタギヤ61、123ギヤ62、四速ギヤ63、リバースギヤ64により、メインシャフト51と連結可能であるとともに、ファイナルギヤ69を介して車軸へ動力の伝達が可能となっている。なお、カウンタシャフト52は、エンジン1と、四速ギヤ63、リバースギヤ64を介して連結されており、請求項にいう出力軸に相当する。また、四速ギヤ63、リバースギヤ64は、請求項にいう第1の変速部に相当する。
【0043】ローリアクタギヤ61は、負荷部材となるヴィスカス(VC)92を介し、さらにリバースドグクラッチ(RVSDOG)79のシフトにより12ワンウェイクラッチ91を介してカウンタシャフト52へ連結可能となっている。なお、12ワンウェイクラッチ91はドライブシャフト側を入力として、前進側にのみ動力の伝達が可能である。123ギヤ62は、キャリア60bの動力を受け、カウンタシャフト52と常時連結されている。123ギヤ62は、オイルポンプ93とも連結されてオイルの循環を可能にしている。四速ギヤ63と、リバースギヤ64は、4Rドグクラッチ(4RDOG)78のシフトによりいずれかがカウンタシャフト52と連結可能になっている。
【0044】次に、以上のような構成を有する4AT動力伝達装置50における動作について説明する。
《発進・始動》図23は、4AT動力伝達装置における、発進時の制御フローを示し、図22は、4AT動力伝達装置において、車速を加速していった場合のギヤの選択及び各要素の速度を示したグラフである。図22の下側のグラフは、加速過程におけるエンジン回転数Ne(太実線)、車速V(二点鎖線)、モータ回転数Nm(破線)、サンギヤ回転数Ns(点線)、キャリア回転数Nc(細実線)の変化を示し、上側は、下側のグラフに対応して、各クラッチのオンオフの状態を示している。符号t1,t2,・・・は、モータ2の状態を指すものとして以下の説明で使用する。
【0045】まず、図22及び図23のフローチャートを参照しつつ、車両の発進制御を説明する。発進する際には、すべてのクラッチをオフにした状態で、図16において、モータドグクラッチ72を右(R)側へ、EngDOG73を右(R)側へ、L−RDOG77を左(L)側へシフトして(S150)、モータ2を正回転させる(S151)。モータ2に連結されたリングギヤ60aは正回転し、サンギヤ60dが逆転、キャリア60bが正回転して、カウンタシャフト52が正回転して車両が発進する(t0→t1)。リングギヤ60aに連結されたMPS54の回転数Nmpsがアイドル回転数以上となってから(S152)、メインクラッチ71を徐々に結合してエンジンを始動させる(S153,t1)。この状態でローギヤが完了し、このときのギヤのかみ合いを示したのが図17である。このように、4AT動力伝達装置50では、車両停止状態から、モータ2で車両を発進させた後、エンジン1を始動することで、不要なアイドリングにより燃料が消費されることがない。なお、上記発進動作において、L−RDOG77をオフにすれば、停止したままでエンジン1の始動及びアイドリングが可能である。車両停止状態においても、エンジン1の始動後モータ2を発電機として使用すれば、バッテリ残量の減少時にバッテリ6の充電が可能である。
【0046】《ロー→2速》次に、図22及び図24のフローチャートを参照しつつ、ローから2速への変速動作を説明する。ローから2速に変速する前に、モータ2の駆動トルクを0として(S160)、モータドグクラッチ72をリングギヤ60aに連結しているモータ出力軸55から抜いてオフし(S161)、モータ2を制御してモータ回転数Nmをサンギヤ回転数Nsに合わせた後(S162)、モータドグクラッチ72をサンギヤ60dに噛み込ませてモータ出力をサンギヤ60dへ切換える(S163,t2→t3)。なお、モータ2の駆動トルクを0としたのは、モータドグクラッチ72を抜きやすくするためである。
【0047】この状態で、ギヤのかみ合いとしては、2速になっているが、エンジン1の回転数としては、回転数が高いままである。そこで、バッテリ残量が十分であった場合には(S164)、モータ2を制御して、モータ2の回転を正回転方向に加速することにより、モータ2の回転数を0に近づけていく(t4,S166)。このとき、バッテリ残量が十分でなかった場合には(S164)、23シンクロメッシュ75をグランドアース側に入れ(S165)、グランドアースされた23メインクラッチ76を徐々につないでいくことによりモータ2の回転を押し上げて回転数を0に近づけてもよい(S166)。モータ回転数Nmが0になれば(S167)、ローから2速への変速が完了する。このときのギヤのかみ合いを示したのが図18である【0048】ここで、モータトルクによる変速制御では、油圧クラッチでの変速での熱容量に起因する変速時間制限がないため、変速時間を長くすることができるため、変速時間に比例して変速ショックを低減することができる。
【0049】なお、2速での走行時には、グランドアースされた23メインクラッチ76により、サンギヤ60dを停止させたままでも良いが、エンジン1の運転領域によっては、モータ2によりサンギヤ60dの回転を制御して、エンジン1の運転領域を高効率域へ維持することも可能である。
【0050】《2速→3速》次に、図22及び図25のフローチャートを参照しつつ、2速から3速への変速動作を説明する。23メインクラッチ76によりサンギヤ60dを停止させている状態であったならば(S170)、モータ2によりサンギヤ60dを制御する状態にし(S171)、23メインクラッチ76をオフにする(S172)。次に、23シンクロメッシュ75をキャリア60b側(L側)へシフトさせる(S173)。23メインクラッチ76が既にオフになっていたならば(S170)、そのまま23シンクロメッシュ75をL側へシフトさせる(S173)。この状態から、23メインクラッチ76をつないでいくと(t5,S174)、サンギヤ60dの回転数Nsが高くなり、キャリア60bの回転数Ncと一致してくる。一方、サンギヤ60dとキャリア60bの相対的な回転はなくなっていくことから、リングギヤ60aに連結されたエンジン1の回転数も一致してくる。モータ2のトルクTmを制御しつつ(S175)、サンギヤ回転数Nsとモータ回転数Nmが一致したところで(S176)、23メインクラッチ76を完全につなげ、3速への変速が完了する(t6)。このときの、ギヤのかみ合いの状態を示したのが図19である。
【0051】以上の過程で、23メインクラッチ76がつながる際には、モータ2の回転数が上がっていくのに対して、エンジン1の回転数が下がっていくので、両者の慣性トルクは互いに相殺する関係にある。従って、両者の慣性トルクの差を補う分だけのモータ2のトルクTmを制御すれば、2速から3速への変速の際の変速ショックを低減若しくは無くすことができる。また、エンジン1側の駆動部品のイナーシャと、モータ2側の駆動部品のイナーシャのバランスを適当に設定すれば、モータ2のトルク制御をすること無く、両者の慣性トルクを相殺させることも可能である。
【0052】《3速→4速》次に、図22及び図26のフローチャートを参照しつつ、3速から4速への変速動作を説明する。3速から、4速への変速に際しては、まずメインクラッチ71を切り離す(S180)。次に、モータ2のトルクTmを0として(S181)、モータドグクラッチ72をサンギヤ60dから抜いてオフにする(S182)。なお、モータ2のトルクTmを0とする理由は、モータドグクラッチ72を抜きやすくするためである。次に、変動するイナーシャを調整するため、L−RDOG77をR側にシフトし(S183)、サンギヤと、ローリアクタギヤ61から切り離して、変速時のモータ2側の駆動部品のイナーシャを軽くする。次に、モータ2を制御して、リングギヤ回転数Nrにモータ回転数Nmを合わせていき(S184)モータドグクラッチ72をリングギヤ60a側へシフトする(S185)。次に、EngDOG73をL側へシフトして(S186)、四速(4TH)クラッチ74をオンする(S187)。なお、これらの動作はごく短い時間で完了する。最後に、メインクラッチ71を徐々につないでいくとともに、23メインクラッチ76をオフしていくことにより(S188)、4速への変速が完了する(t8)。このときのギヤのかみ合いの状態を示したのが図20である。
【0053】以上の変速過程において、メインクラッチ71をつないでいく際には、エンジン1とモータ2の回転数が落ちていく。従って、変速ショックがおきないようにするため、モータ2側の駆動部品のイナーシャがメインクラッチ71をつなぐ前のイナーシャを保つようにモータ2のトルクTmを制御することにより、四速ギヤ63が発生する加速方向の慣性トルクと、123ギヤ62が発生する減速方向の慣性トルクが相殺するため、変速ショックを低減することができる。
【0054】より具体的には、リングギヤ60a側のエンジン1を主とするイナーシャImと、サンギヤ60d側の23メインクラッチ76を主とするイナーシャIrとのイナーシャ比率をIr=Im×i4/(Z3/Z1)2/((Z1+Z3)/Z3×i123−i4)
ただし、Z1:サンギヤの歯数Z3:リングギヤの歯数i123:123ギヤレシオi4:四速ギヤレシオに設定することにより、四速ギヤ63に発生する加速トルクと、123ギヤ62に発生する減速トルクが相殺して、変速ショックを無くすことができる。
【0055】《後退》次に、4AT動力伝達装置50において、車両を後退させるときのギヤ動作について説明する。車両及びエンジン1の停止状態において、モータドグクラッチ72をリングギヤ側へシフトさせ、L−RDOG77をオンさせる。なお、L−RDOG77の係合はなされなくともよい。EngDOG73をリバースギヤ側(L側)、4RDOG78もリバースギヤ側(R側)へシフトさせる。モータ2を正回転させると、リングギヤが正回転し、リバースギヤ64を介してカウンタシャフト52を駆動し、車両を後退させる。リングギヤの回転がエンジン1のアイドル回転数以上となった時にエンジン1を点火して始動させる。このときのギヤのかみ合い状態を示したのが図21である。
【0056】以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前記実施の形態には限定されない。例えば、実施の形態においては、AMT動力伝達装置10と4AT動力伝達装置50のいずれについてもシフトアップする場合について述べたが、シフトダウンする場合にも変速ショックを低減若しくは無くすことができる。即ち、従来の動力伝達装置では、シフトダウン中の駆動力が、エンジンを増速させるための回転エネルギーとして消費されるため、駆動力が途切れたり、減少したりしていたが、本動力伝達装置においては、シフトアップ時に増速して反力要素に蓄えられた回転エネルギーを、シフトダウン中に放出するため、前変速段からのシフトダウンに対して駆動力の途切れ、減少を無くし、変速ショックを低減若しくは無くすことができ、かつ、スムーズなシフトダウンが実現できる。
【0057】
【発明の効果】以上詳述したとおり、本発明によれば次の顕著な効果を奏する。請求項1記載の発明によれば、車両の変速時において、第1の原動機の慣性トルクと、第2の原動機の慣性トルクが相殺されて、変速ショックを低減させることができる。また、請求項2記載の発明によれば、変速動作を第1の原動機と、第2の原動機とをほぼ同時に行うことにより、より効果的に変速ショックを低減させることができる。また、請求項3記載の発明によれば、原動機の少なくとも1つに、トルク制御性の良いモータを用い、相殺しきれなかった慣性トルクを、モータのトルクを制御することでさらに相殺するので、実質的に変速ショックを無くすことができる。また、請求項4記載の発明によれば、車両の変速時において、一方の原動機の慣性トルクと相殺するトルクを他方の原動機に出力するように制御されるので、変速ショックを低減させることができる。また、請求項5乃至請求項7記載の発明によれば、プラネタリギヤセットを介して原動機並びにモータ並びに出力軸を連結させた動力伝達装置により、出力軸の回転数を一定に維持したまま、原動機並びにモータの回転数を変えることができるので、本発明の動力伝達装置を容易に構成でき、さらに、請求項5及び請求項7記載の発明では、制御性の良いモータにより、変速時の慣性トルクが相殺されるように制御されるので、変速ショックを実質的に無くすことができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成12年11月24日(2000.11.24)
【代理人】 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
【公開番号】 特開2002−165304(P2002−165304A)
【公開日】 平成14年6月7日(2002.6.7)
【出願番号】 特願2000−358320(P2000−358320)