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【発明の名称】 車両のモータトルク制御装置
【発明者】 【氏名】ケビン ウォルターズ

【氏名】佐野 喜亮

【要約】 【課題】ブレーキ操作に応じた適切なクリープトルクを発生させて、違和感のない円滑な運転を実現できる車両のモータトルク制御装置を提供する。

【解決手段】ブレーキ油圧センサにて検出されたブレーキ油圧に基づいてブレーキ力Fbkを推定し、そのブレーキ力Fbkから求めた制動側のトルク(Fbk×Rtyre)に応じてクリープトルクcreepTを減少補正する(ステップS4)。ブレーキ力Fbkに応じてクリープトルクcreepTが無段階に補正されることから、常に運転状態に沿ったクリープトルクcreepTが実現され、例えば信号待ちから発進すべくブレーキ操作を中止したときには、ブレーキ力の減少に応じて緩やかにクリープトルクcreepTが立ち上げられて、車両を円滑に発進できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 動力源としてモータを備えた車両のモータトルク制御装置において、車速を検出する車速検出手段と、道路勾配を検出する道路勾配検出手段と、車両のブレーキ力を検出するブレーキ力検出手段と、運転者のアクセル操作が行われていないときに、上記モータを制御してクリープトルクを発生させると共に、該クリープトルクを、上記車速検出手段にて検出された車速、及び上記道路勾配検出手段にて検出された道路勾配に基づいて補正すると共に、上記ブレーキ力検出手段にて検出されたブレーキ力の増加に伴って減少側に補正するモータトルク制御手段とを備えたことを特徴とする車両のモータトルク制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両に動力源として搭載されたモータを制御するモータトルク制御装置に関するものである。
【0002】
【関連する背景技術】一般に電気自動車やハイブリッド車両では駆動源であるモータを任意に停止可能なため、例えば自動変速機付き内燃機関を備えた車両のような所謂クリープ現象、即ち、停車時等にトルクコンバータを介したトルク伝達によって車両が僅かに前進する現象は基本的に生じない。しかしながら、このクリープ現象は、渋滞時に車両を容易に微速前進できること、或いは登坂路での発進の際にブレーキからアクセルに踏み代えても後退を防止できること等の利点があるため、運転操作の面からは好ましい特性とされており、しかも、このようなクリープ現象を生ずる車両が広く普及している現状では、逆にクリープ現象を生じないとユーザに違和感を抱かれる可能性もある。そこで、このような要望に答えるべく、アクセルオフ時においてもモータに微小なトルクを付与してクリープ現象を発生させるようにした車両が提案されている。
【0003】ところが、例えば信号待ち等でクリープ現象をブレーキ操作により抑制している状態では、運転者に無用なブレーキ操作を強要している上に、無駄に電力を消費させていることになり、クリープ現象を発生させることは却ってデメリットに直結する。そこで、例えば特開平11−8912に記載の電気自動車では、ブレーキ操作されていないときのみにクリープトルクを発生させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、公報に記載された電気自動車ではブレーキ操作時に一義的にクリープトルクを0とすることから、必ずしも運転状態に沿った制御とは言えない。例えば、信号待ちから発進すべくブレーキ操作を中止すると、急にクリープトルクが立ち上げられて車両を唐突に発進させてしまい、運転者に違和感を与えてしまう。又、渋滞等で微速前進しながら先行車との距離をブレーキにより調整しているときには、ブレーキ操作の有無に応じてクリープトルクが断続的に発生することから、円滑な距離調整ができない上に、上記と同じく違和感の原因となってしまう。
【0005】そこで、本発明の目的は、ブレーキ操作に応じた適切なクリープトルクを発生させて、違和感のない円滑な運転を実現することができる車両のモータトルク制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明では、動力源としてモータを備えた車両のモータトルク制御装置において、車速を検出する車速検出手段と、道路勾配を検出する道路勾配検出手段と、車両のブレーキ力を検出するブレーキ力検出手段と、運転者のアクセル操作が行われていないときに、モータを制御してクリープトルクを発生させると共に、クリープトルクを、車速検出手段にて検出された車速、及び道路勾配検出手段にて検出された道路勾配に基づいて補正すると共に、ブレーキ力検出手段にて検出されたブレーキ力の増加に伴って減少側に補正するモータトルク制御手段とを備えた。
【0007】従って、例えばクリープ現象を必要とする所定車速以下でクリープトルクを発生させたり、登坂路の勾配が急であるほどクリープトルクを増加させたりする上に、ブレーキ力の増加に伴ってクリープトルクは減少されることになる。その結果、ブレーキ操作により消費される無駄なトルクを減算した必要最小限のクリープトルクが設定されて、モータの消費電力が低減されると共に、車両の停止保持に要するブレーキ力が減少することから、運転者の労力が軽減される。
【0008】そして、このようにブレーキ力に応じて無段階にクリープトルクを補正していることから、常に運転状態に沿ったクリープトルクが実現され、例えば信号待ちから発進すべくブレーキ操作を中止したときには、ブレーキ力の減少に応じて緩やかにクリープトルクが立ち上げられて、車両を円滑に発進可能であり、又、渋滞時で微速前進しながら先行車との距離をブレーキにより調整しているときにも、ブレーキ力に応じてクリープトルクが緩やかに増減して、円滑な距離調整が可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明をハイブリッド車両のモータトルク制御装置に具体化した一実施形態を説明する。図1は本実施形態のハイブリッド車両のトルク制御装置を示す全体構成図であり、この図に示すように、本実施形態のハイブリッド車両は、エンジン1側とモータ2側とを駆動系を含めて相互に独立して構成しており、前輪3aをエンジン1により駆動し、後輪3bをモータ2により駆動するようになっている。詳述すると、車両のフロント側に搭載されたガソリンエンジン1にはクラッチ4を介して自動変速機5が連結され、この自動変速機5及びディファレンシャル6を介してエンジン1の回転が前輪3a側に伝達される。自動変速機5の基本的な構成は、手動で変速操作する一般的な機械式変速機と同様であるが、後述するように変速操作、クラッチ操作、及びエンジン1のスロットル操作を自動化することにより、自動変速が可能なように構成されている。
【0010】又、車両のリア側に搭載されたモータ2には遊星ギア式の減速機7が接続され、この減速機7及びディファレンシャル8を介してモータ2の回転が駆動輪としての後輪3b側に伝達される。モータ2にはインバータ9を介して走行用バッテリ10が接続され、インバータ9によりモータ2の回転が制御される。一方、車室内には、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたECU11(電子制御ユニット)が設置されている。ECU11の入力側には、運転者によるアクセル操作量APSを検出するアクセルセンサ12、エンジン1のスロットル開度TPSを検出するスロットルセンサ13、クラッチ4の出力側(変速機側)の回転速度Ncを検出するクラッチ回転速度センサ14(尚、このセンサ14に代えて、車速Vからクラッチ回転速度Ncを推定してもよい)、ブレーキの油圧Pbkを検出するブレーキ力検出手段としてのブレーキ油圧センサ15、車速Vを検出する車速検出手段としての車速センサ16等の各種センサ類が接続されている。又、ECU11の出力側には、自動変速機5の変速操作を行う変速用アクチュエータ17、クラッチ2の断接操作を行うクラッチ用アクチュエータ18、エンジン1のスロットルバルブを開閉駆動するスロットル用アクチュエータ19、及び前記インバータ9等が接続されている。
【0011】そして、本実施形態のハイブリッド車両では、基本的に発進はモータ2で行い、その後の走行はエンジン1で行う。但し、走行用バッテリ10の充電量が所定値以下の場合には、発進もエンジン1で行う。又、走行用バッテリ10の充電は、通常の走行時においては路面を介してエンジン1の駆動力をモータ2側に伝達して行い、減速時においてはクラッチ4を遮断してモータ2を回生させることで行う。
【0012】上記した走行時等において、エンジン1のスロットル制御は図示しないスロットル制御用マップに従って行われ、ECU11はアクセル操作量APSに基づいてマップから求めた目標スロットル開度tgtTPSを達成するように、スロットル用アクチュエータ19を駆動制御する。又、変速制御については図示しない変速制御用マップに従って行われ、ECU11はアクセル操作量APS及び車速Vに基づいてマップから求めた目標変速段を達成するように、前記変速用、クラッチ用、スロットル用の各アクチュエータ17〜19を駆動制御する。
【0013】次に、このように構成されたハイブリッド車両のモータトルク制御装置がモータ走行時に行うモータトルクの制御状況を説明する。図2は目標モータトルク設定ルーチンを示すフローチャートであり、ECU11はこのルーチンを所定の制御インターバルで実行する。まず、ECU11はステップS2で下式(1),(2)よりアクセルトルクapsTを算出する。
【0014】
MTR1=tgti×defi/moti………(1)apsT=apsET×MTR1………(2)ここで、MTR1はエンジン1側のトルクをモータ2側のトルクに換算するための係数であり、tgtiは変速制御で設定される目標変速段のギア比、defiはデファレンシャル6のギア比、motiはモータ2側の減速機7及びディファレンシャル8の総合的なギア比である。又、apsETはアクセル相当エンジントルクであり、エンジン1の特性から設定されたトルクマップに基づいて、クラッチ回転速度Ncとアクセル操作量APSとから求められる。
【0015】つまり、トルクマップはエンジン回転速度とスロットル開度TPSとで規定されるが、モータ走行中にはクラッチ遮断によりエンジン1を前輪3a側から切り離して停止させているため、上記のようにエンジン回転速度に代えてクラッチ回転速度Ncを適用している。又、スロットル開度TPSはスロットル制御用マップを介してアクセル操作量APSと相関することから、この相関関係をトルクマップに反映させた上で、スロットル開度TPSに代えて直接アクセル操作量APSを適用している。このようにして求めたアクセル相当エンジントルクapsETは、現在のアクセル操作量APSによりエンジン走行時に達成されるエンジントルクを意味し、そのエンジントルクにより前輪3aに発生する駆動力と同等の駆動力を後輪に発生可能なモータトルクが、アクセルトルクapsTとして算出される。
【0016】続くステップS4では下式(3),(4)よりクリープトルクcreepTを算出する。
MTR2=1/moti………(3) creepT={[(K+g×sinθ)×W−Fbk]×Rtyre}×MTR2………(4)ここで、MTR2は後輪3bのトルクをモータトルクに換算するための係数、Kは平坦路でのクリープ時の目標加速度、gは重力加速度、sinθは車両が走行中の道路の勾配、Wは予め判明している車両重量、Fbkは前後輪3a,3bに作用するブレーキ力、Rtyreはタイヤ半径である。
【0017】尚、クリープ時の目標加速度Kは図3のマップから求められ、クリープ現象を必要とする所定値以下の車速Vで設定される。又、詳細は説明しないが道路勾配sinθは、例えば特開平11−8912号公報に記載のように、車両の駆動力と車両に作用する加速抵抗や走行抵抗等の各種抵抗との差に基づいて算出される(道路勾配検出手段)。又、ブレーキ力Fbkは、上記したブレーキ油圧センサ15にて検出されたブレーキ油圧Pbk(ブレーキ力Fbkと相関する)に基づき、予め設定されたマップから求められる(ブレーキ力検出手段)。
【0018】つまり、本実施形態では、クリープ現象を発生させるために後輪3bに作用させるべき本来のクリープトルク(上式(4)の[(K+g×sinθ)×W]×Rtyre)から、ブレーキ力Fbkより求めた制動側のトルク(Fbk×Rtyre)を減算している。結果としてブレーキ操作により消費される無駄なトルクを減算した値が、正味のクリープトルクcreepTとして算出される(モータトルク制御手段)。
【0019】次いで、ステップS6で下式(5)より仮モータトルク0-MTを算出する。
0-MT=apsT×gainC+creepT×(1−gainC)………(5)ここで、gainCは重み付け係数であり、図4のマップに従ってアクセル操作量APSに基づいて設定される。図に示すように、アクセル操作量APSが小の領域では小さな重み付け係数gainC(<0.5)が設定されて、アクセルトルクapsTよりクリープトルクcreepTに近い値が仮モータトルク0-MTとして算出される。そして、アクセル操作量APSの増加に伴って重み付け係数gainCも所定の勾配をもって増加し、それに応じてアクセルトルクapsTに近い値が仮モータトルク0-MTとして算出され、所定値以上のアクセル操作量APSでは重み付け係数gainCが1.0に設定されて、アクセルトルクapsTが仮モータトルク0-MTとして算出される。
【0020】続くステップS8ではアクセルトルクapsTと仮モータトルク0-MTとを比較して、値の大きい方を目標モータトルクtgtMTとして設定し、その後にルーチンを終了する。そして、以上のように設定された目標モータトルクtgtMTに基づいて、インバータ9により変速時のモータトルクが制御される。以上の処理により、例えば平坦路での信号待ち等による停車時には、アクセル操作量APS及び車速Vが共に0であることから、上式(2)によりアクセルトルクapsTが0若しくは微小な値に設定される一方、上式(4)によりクリープトルクcreepTが最大値に設定される。そして、上式(5)では小さな重み付け係数gainCが適用されて、クリープトルクcreepTに近い仮モータトルク0-MTが算出され、その仮モータトルク0-MTが目標モータトルクtgtMTとして設定される。従って、クリープトルクcreepTに近いモータトルクが発生してクリープ現象が奏される。
【0021】一方、この停車状態から車両を発進させるべくアクセルを踏み込むと、アクセル操作量APSの増加に伴ってアクセルトルクapsTが増加する一方、車速Vの増加に伴ってクリープトルクcreepTが減少する。そして、アクセル操作量APSの増加に伴って重み付け係数gainCが増加することから、上式(5)で算出される仮モータトルク0-MTは、次第にクリープトルクcreepTからアクセルトルクapsTに近い値へと変化する。仮モータトルク0-MTはアクセル操作量APSや車速V等によって定まる値に平衡し、例えば発進から定速走行に移行した後には、アクセル操作量APSの増加に伴って1.0付近の重み付け係数gainCが設定されて、仮モータトルク0-MTはアクセルトルクapsTに平衡する。このようにしてアクセルトルクapsTがモータトルクに反映されて、アクセル操作に応じた発進が実現される。
【0022】ここで、アクセル操作量APSや車速V等の諸条件によっては、仮モータトルク0-MTが過渡的に運転者のアクセル操作量APSより小さな値に設定されることもあり得る。例えば、車速Vの増加によりクリープトルクcreepTが減少すると、仮モータトルク0-MTに過渡的な落込みが発生する。このときには、ステップS8で運転者の要求トルクを意味するアクセルトルクapsTが選択されて、モータトルクの一時的な落込みが未然に防止される。
【0023】そして、本実施形態では上式(4)により、クリープトルクcreepTに道路勾配sinθのみならずブレーキ力Fbkも考慮され、ブレーキ力Fbkから求めた制動側のトルク(Fbk×Rtyre)に応じてクリープトルクcreepTが減少補正される。その結果、常にブレーキ操作により消費される無駄なトルクを減算した必要最小限のクリープトルクcreepTが設定されて、モータ2の消費電力が低減されると共に、車両の停止保持に要するブレーキ力Fbkが減少することから、運転者の労力が軽減される。
【0024】しかも、このようにブレーキ力Fbkに応じて無段階にクリープトルクcreepTを補正していることから、常に運転状態に沿ったクリープトルクが実現される。例えば信号待ちから発進すべくブレーキ操作を中止したときには、ブレーキ力Fbkの減少に応じて緩やかにクリープトルクcreepTが立ち上げられて、車両を円滑に発進可能であり、又、渋滞時で微速前進しながら先行車との距離をブレーキにより調整しているときにも、ブレーキ力Fbkに応じてクリープトルクcreepTが緩やかに増減して、円滑な距離調整が可能となる。その結果、本実施形態の車両のモータトルク制御装置によれば、ブレーキ操作に応じた適切なクリープトルクを発生させて、違和感のない円滑な運転を実現することができる。
【0025】以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、前輪3aをエンジン1で、後輪3bをモータ2で相互に独立して駆動するハイブリッド車両として具体化したが、車両の構成はこれに限らず、例えばエンジン1により後輪3bを駆動すると共に、そのエンジン1の変速機5にモータ2を連結して、モータ2でも後輪3bを駆動できるようにしたハイブリッド車両に具体化してもよい。又、ハイブリッド車両に代えて、電気自動車のモータトルク制御装置として具体化してもよい。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明の車両のモータトルク制御装置によれば、ブレーキ操作に応じた適切なクリープトルクを発生させて、違和感のない円滑な運転を実現することができる。
【出願人】 【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
【出願日】 平成12年11月6日(2000.11.6)
【代理人】 【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
【公開番号】 特開2002−142310(P2002−142310A)
【公開日】 平成14年5月17日(2002.5.17)
【出願番号】 特願2000−337624(P2000−337624)