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【発明の名称】 ハイブリッド車両の制御装置
【発明者】 【氏名】鈴木 武彦

【氏名】服部 雅士

【氏名】竹本 和雄

【氏名】和久田 聡

【氏名】犬塚 武

【要約】 【課題】オイルポンプの吐出量が十分でない状態でダウンシフトが行われた際に、適切にトルクアシストを行う。

【解決手段】ベルト式の無段変速機1が搭載された、電気モータ4と内燃機関を動力源とするハイブリッド車両において、ダウンシフトの判定に基づいて、電気モータ4によるトルクアシストを行なうトルクアシスト実行手段31、39、ATPを設け、ベルト挟持力算出手段31、ATPなどにより算出された最大アシストトルクTorq_assist_maxが、トルクアシスト実行手段によるアシストトルクT_assistよりも小さな場合に、トルクアシストを制限する。ベルト挟持力が小さな場合にトルクアシストを制限するので、トルクアシストがベルトの挟持力を上回ることが防止され、ベルトスリップが防止されると共に、トルクアシストによりプーリの慣性に妨げられることなく迅速に速度変化が行われ、加速レスポンスの向上が図られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 プライマリプーリとセカンダリプーリとの間に掛け渡されたベルトを有し、前記プライマリプーリとセカンダリプーリのプーリ比を変化させることにより変速を行う、ベルト式の無段変速機が搭載された、モータと内燃機関を動力源とするハイブリッド車両において、ダウンシフトを判定するダウンシフト判定手段を設け、前記ダウンシフト判定手段によるダウンシフトの判定に基づいて、前記モータによるトルクアシストを行なうトルクアシスト実行手段を設け、前記無段変速機のプライマリプーリとセカンダリプーリによる前記ベルトの挟持力を算出するベルト挟持力算出手段を設け、前記ベルト挟持力算出手段により算出されたベルト挟持力から算出される伝達可能な許容入力トルクと前記内燃機関のトルクから算出される、最大アシストトルクが、前記トルクアシスト実行手段によるアシストトルクよりも小さな場合に、前記トルクアシスト実行手段によるトルクアシストを制限するトルクアシスト制限手段を設けて構成した、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】 前記トルクアシスト制限手段は、前記トルクアシスト実行手段によるトルクアシストの開始時期を遅らせることによりトルクアシストを制限することを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】 前記トルクアシスト制限手段は、前記トルクアシスト実行手段によるトルクアシスト量を制限することによりトルクアシストを制限することを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】 前記トルクアシスト実行手段は、モータの特性から、該モータによるアシスト可能トルクを演算し、該演算されたアシスト可能トルクに基づいてトルクアシストを実行することを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】 前記ベルト挟持力算出手段は、オイルポンプ回転数に基づいて前記プライマリプーリとセカンダリプーリのベルトの挟持力を演算することを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】 前記ダウンシフト判定手段は、運転者によるダウンシフト要求を判定することを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ベルト式の無段変速機が搭載された、モータと内燃機関をを動力源とするハイブリッド車両の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のハイブリッド車両において、キックダウン時などのダウンシフト時に、電気モータなどのモータによるトルクアシストを行い、無段変速機のプーリの慣性による回転遅れを防止し、変速速度及び加速の向上を図ることが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、オイルポンプの吐出量が十分でないエンジン回転数領域でダウンシフト時のトルクアシストを行うと、オイルポンプの吐出量不足からベルト挟持力が十分に得られず、ベルトスリップを生じる恐れがある。ベルトスリップが生じると、ベルト及びシープの耐久性を損なうので、何らかの対策が望まれる。
【0004】本発明は、オイルポンプの吐出量が十分でない状態でダウンシフトが行われた際に、適切にトルクアシストを行うことの出来る、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、プライマリプーリ(50)とセカンダリプーリ(51)との間に掛け渡されたベルト(57)を有し、前記プライマリプーリとセカンダリプーリのプーリ比を変化させることにより変速を行う、ベルト式の無段変速機(1)が搭載された、モータ(4)と内燃機関を動力源とするハイブリッド車両において、ダウンシフトを判定するダウンシフト判定手段(35、31)を設け、前記ダウンシフト判定手段によるダウンシフトの判定に基づいて、前記モータ(4)によるトルクアシストを行なうトルクアシスト実行手段(31、39、ATP)を設け、前記無段変速機のプライマリプーリとセカンダリプーリによる前記ベルトの挟持力(inTorq_max)を算出するベルト挟持力算出手段(31、ATP)を設け、前記ベルト挟持力算出手段により算出されたベルト挟持力から算出される伝達可能な許容入力トルクと前記内燃機関のトルクから算出される、最大アシストトルクが、前記トルクアシスト実行手段によるアシストトルク(T_assist)よりも小さな場合に、前記トルクアシスト実行手段によるトルクアシストを制限するトルクアシスト制限手段(31、ATP)を設けて構成される。
【0005】請求項2の発明は、前記トルクアシスト制限手段は、前記トルクアシスト実行手段によるトルクアシストの開始時期を遅らせる(図6の時点T1から時点T4に遅らせる)ことによりトルクアシストを制限することを特徴として構成される。
【0006】請求項3の発明は、前記トルクアシスト制限手段は、前記トルクアシスト実行手段によるトルクアシスト量を制限することによりトルクアシストを制限することを特徴として構成される。
【0007】請求項4の発明は、前記トルクアシスト実行手段は、モータの特性から、該モータによるアシスト可能トルクを演算し(図5(b)参照)、該演算されたアシスト可能トルクに基づいてトルクアシストを実行することを特徴として構成される。
【0008】請求項5の発明は、前記ベルト挟持力算出手段は、オイルポンプ回転数に基づいて前記プライマリプーリとセカンダリプーリのベルトの挟持力を演算する(図5(d)、(e)参照)ことを特徴として構成される。
【0010】請求項6の発明は、前記ダウンシフト判定手段は、運転者によるダウンシフト要求(例えば、キックダウン要求)を判定することを特徴として構成される。
【0011】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、トルクアシスト制限手段(31、ATP)が、ベルト挟持力算出手段により判定されたベルト挟持力から算出される伝達可能な許容入力トルクと前記内燃機関のトルクから算出される、最大アシストトルクが、前記トルクアシスト実行手段によるアシストトルク(T_assist)よりも小さな場合に、前記トルクアシスト実行手段によるトルクアシストを制限するので、モータ(4)によるトルクアシストがベルトの挟持力を上回ることが防止され、トルクアシスト時のベルトスリップが防止されると共に、トルクアシストによりプライマリプーリ(50)とセカンダリプーリ(51)の慣性に妨げられることなく迅速に速度変化が行われ、変速速度及び加速レスポンスの向上が図られる。従って、ベルトがスリップにより損傷したり耐久性が損なわれることが無くなり、信頼性の高い無段変速機の提供が可能となる。
【0012】請求項2の発明によれば、トルクアシストの開始時期を遅らせることにより、ダウンシフトに伴うエンジン回転数の増加によりオイルポンプの吐出量が増大して、それだけベルトの挟持力を上げることが出来、ベルトスリップを防止しつつ、大きなアシストトルクで良好な加速レスポンスを得ることが出来る。
【0013】請求項3の発明によれば、トルクアシスト量を制限することにより、オイルポンプの吐出量の増大を待つことなく、ベルトの挟持力に見合ったトルクアシスト量でトルクアシストを直ちに開始することが出来、迅速な変速動作が可能となる。
【0014】請求項4の発明によれば、モータの現在の回転状態に適したアシスト可能トルクでトルクアシストが可能となるので、迅速なトルクアシストが可能となる。
【0015】請求項5の発明によれば、オイルポンプ回転数に基づいて前記プライマリプーリとセカンダリプーリのベルトの挟持力を演算することにより、正確なベルト挟持力の推定が可能となる。
【0017】請求項6の発明によれば、運転者のダウンシフト要求を判定して、トルクアシストを開始することにより、トルクアシストが最も必要な運転状態でのトルクアシストが可能となる。
【0018】なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【0019】
【発明の実施の形態】図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両に搭載される自動変速機の一例を示す断面図。図2は、本発明が適用される制御装置のブロック図の一例。図3は、図1の自動変速機のスケルトン。図4は、アシストトルク制御プログラムの一例を示すフローチャート。図5は、図4の制御に使用される、各種マップを示す図。図6は、エンジン回転数、トルク及びスロットル開度の関係を示すフローチャート。
【0020】本発明が適用される車両用自動無段変速機1は、図1及び図3に示すように、電気モータ4、流体継手(トルクコンバータ)2と、前後進切換装置3と、ベルト式無段変速装置(CVT)5と、ディファレンシャル装置6と、を備えている。また、これらの流体継手2等は分割式のケース7に収納されている。
【0021】このうち、流体継手2は、電気モータ4の出力軸を介して入力軸9に連結されたポンプインペラ10及びオイルポンプ14と、前後進切換装置3の入力軸3aに連結されたタービンライナー11と、入力軸3aと入力軸9とを直結するロックアップクラッチ12と、を有している。
【0022】また、前後進切換装置3は、入力軸3aに固定されたサンギヤ15、回転自在に支持されたリングギヤ16、これらに噛合されるピニオンギヤ17、及び該ピニオンギヤ17を支持するキャリヤ19からなるプラネタリギヤ20を備えている。
【0023】そして、入力軸3aとキャリヤ19との間には、油圧アクチュエータ21にて操作されるダイレクトクラッチ22が介装されており、このダイレクトクラッチ22を係合させることに基づき入力軸3aとキャリヤ19とを直結状態にするようになっている。また、キャリヤ19の他端は固定シーブ52にスプライン連結されている。
【0024】さらに、リングギヤ16にはリバースブレーキ25が連結されており、このリバースブレーキ25を油圧アクチュエータ23にて作動させることによりリングギヤ16の回転を停止できるように構成されている。
【0025】一方、CVT5は、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ51とを有しており、これらのプーリ50,51の間には金属製のベルト57が巻き掛けられている。
【0026】このうち、プライマリプーリ50は固定シーブ52及び、可動シーブ55を有しており、可動シーブ55が、該固定シーブ52の軸方向に移動し得ると共に該固定シーブ52と一体的に回転するようになっている。また、この可動シーブ55は、ダブルピストンタイプの油圧アクチュエータ70によって軸方向に移動されるように構成されている。
【0027】他方のセカンダリプーリ51も、プライマリプーリ50とほぼ同様の構造であって、ケース7に回転自在に支持された固定シーブ53を有している(図1参照)。また、この固定シーブ53にはボールスプライン91を介して可動シーブ56が支持されており、可動シーブ56が、該固定シーブ53の軸方向に移動し得ると共に該固定シーブ53と一体的に回転するようになっている。さらに、この可動シーブ56は、その背面に配置された油圧アクチュエータ92によって軸方向に移動されるように構成されている。
【0028】さらに、固定シーブ53のボス部53aには出力ギヤ93が固定されており、この出力ギヤ93の下方には減速ギヤ機構95とディファレンシャル装置6とが配置されている。このうち、減速ギヤ機構95は、一体的に回転するように同軸上に配置された大ギヤ95a及び小ギヤ95bを有しており、ディファレンシャル装置6は、デフケース62と一体的に回転するように該ケース62に固定されたリングギヤ63と、デフケース62内にシャフトを介して支持されている一対のデフギヤ65,65と、これらのデフギヤ65,65にそれぞれ噛合されたサンギヤ66,66と、を有しており、各サンギヤ66,66は、車両の左右前車軸96,96にそれぞれ連結されて差動回転を出力するようになっている。そして、固定シーブ側の出力ギヤ93は、減速ギヤ機構95の大ギヤ95aに噛合され、その小ギヤ95bは、ディファレンシャル装置6のリングギヤ63に噛合されている。
【0029】一方、車両用自動無段変速機1の制御装置30は、図2に示すように、CPU等の演算装置が組み込まれた制御ユニット31を有しており、制御ユニット31には、入力軸の回転数を検出する回転センサ32、車速センサ33、スロットル開度センサ35、エンジントルク検出部36、ソレノイド指令部37及びモータートルク指令部39が接続しいている。
【0030】車両用自動無段変速機1は、以上のような構成を有するので、エンジン回転に基づくオイルポンプ14の起動により、所定油圧が発生し、この油圧から、プーリ比及び入力トルクに基づき演算される制御ユニット31からの信号により、ソレノイド指令部37を介して制御される図示しないソレノイドバルブなどに基づきライン圧PL及びセカンダリ圧Psが調圧される。
【0031】Dレンジにあっては、ダイレクトクラッチ22が接続する。この状態では、電気モータ4及びエンジンの回転は、トルクコンバータ2、入力軸3a及びダイレクトクラッチ22により直結状態となっているプラネタリギヤ20を介してプライマリプーリ50に伝達され、さらに適宜変速されるCVT5を介してセカンダリプーリ51に伝達され、そして減速ギヤ機構95、ディファレンシャル装置6を介して左右車軸96、96に伝達される。
【0032】また、R(リバース)レンジでは、リバースブレーキ25が係合し、プラネタリギヤ20のリングギヤ16が係止され、入力軸3aからのサンギヤ15の回転は、キャリヤ19に逆回転として取り出され、この逆回転がプライマリプーリ50に伝達される。
【0033】前述のCVT5は、セカンダリプーリ51の油圧アクチュエータ92にライン圧PLが供給されており、入力トルク及び変速比に応じたベルト挟持力を作用する。一方、制御ユニット31からの変速信号に基づきソレノイド指令部37を介して制御された油圧がプライマリプーリ50のダブルピストンからなる油圧アクチュエータ70に供給され、これによりCVT2の変速比が適宜制御される。
【0034】そして、エンジン及び電気モータ4からのトルクは、トルクコンバータ2を介して入力軸3aに伝達され、特に発進時にあっては、このトルクコンバータ2によりトルク比が高くなるように変速されて入力軸3aに伝達され、滑らかに発進する。また、トルクコンバータ2は、ロックアップクラッチ12を有しており、高速安定走行時にあっては、このロックアップクラッチ12が係合して、エンジン及び電気モータ4と入力軸3aとが直結状態となって、トルクコンバータ2の油流による動力損失を減少させている。
【0035】ところで、キックダウン時などのダウンシフトが行われる際には、図示しないキックダウンスイッチやスロットル開度センサ35からの信号を制御ユニット31が監視しており、キックダウンスイッチ、スロットル開度及びスロットル開度の変化速度から、図6の時点T1で、キックダウンなどの運転者からのダウンシフト要求が有るものと制御ユニット31が判定した場合には、図4に示すアシストトルク制御プログラムATPに基づいて、電気モータ4によるトルクアシストを行い、ダウンシフトに伴ってCVT5のプライマリプーリ50が迅速に回転数を上昇させることが出来るように、トルクを供給する。
【0036】即ち、アシストトルク制御プログラムATPは、ステップS1で、電気モータ4による必要なアシストトルクの量を設定する。制御ユニット31は、図示しないメモリに格納された図5(a)に示すアシストトルク設定マップTSMを読み出して、現在のスロットル開度と、スロットル開度の変化速度から、必要なアシストトルク(T_assist)を求める。なお、マップ中の2本の線は、スロットル開度の変化速度をパラメータとしたものである。
【0037】必要なアシストトルク(T_assist)がアシストトルク量設定マップTSMより求められたところで、電気モータ4の特性を考慮して、現在の電気モータ4の回転数においてアシスト可能なトルクである、モータアシスト可能トルク(mgTorque_max)を求める。即ち、制御ユニット31は、図示しないメモリから、図5(b)に示すアシスト可能トルクマップPTMを読み出し、該アシスト可能トルクマップPTMに示されたモータの回転数とモータアシスト可能トルク(mgTorque_max)との関係から、現時点における電気モータ4によるアシスト可能トルク(mgTorque_max)を演算推定する。しかし、必要なアシストトルク(T_assist)が、現時点におけるモータアシスト可能トルク(mgTorque_max)を上回っている場合には、実際には必要なアシストトルク(T_assist)でのトルクアシストは、直ちには出来ないことから、制御ユニット31は、必要なアシストトルク(T_assist)をモータアシスト可能トルク(mgTorque_max)以内に再設定する。即ち、 T_assist=MIN(T_assist、mgTorque_max) ……(1)
と設定する。
【0038】こうして、アシストトルク(T_assist)が、現在の電気モータ4の回転数に応じたものに再設定されたところで、制御ユニット31は、アシストトルク制御プログラムATPのステップS2に入り、回転センサ32の出力から、オイルポンプ14の吐出量、即ち、ライン圧を演算する。即ち、図示しないメモリから、図5(c)に示すオイルポンプ回転数−ライン圧マップOLMを読み出して、現在のオイルポンプ回転数から現在のライン圧を演算推定する。
【0039】こうして、再設定された、必要なアシストトルク(T_assist)及び現在のライン圧が求められたところで、今度はCVT5の状態が、電気モータ4による、再設定されたアシストトルク量(T_assist)でのアシストが可能か否かを判定する。即ち、制御ユニット31は、図示しないメモリから、図5(d)に示す、プライマリプーリ50側の許容入力トルク−必要オイルポンプ回転数マップPIM及び、図5(e)に示す、セカンダリプーリ51側の許容入力トルク−必要オイルポンプ回転数マップSIMを読み出して、該許容入力トルク−必要オイルポンプ回転数マップPIM、SIMから現在のライン圧(オイルポンプ回転数)及びプーリ比における許容される最大入力トルクをそれぞれ演算し、それらの最小値を、プライマリプーリ50及びセカンダリプーリ51でクランプ出来る、従って、電気モータ4によるトルクアシストを行っても、ベルト57がスリップしない、最大入力トルクinTorq_maxとして演算する。図5(d)及び(e)の2本の線は、一方がCVT5のプーリ比が1を越えたオーバードライブ(O/D)状態で、他方がCVT5のプーリ比が1を下回るアンダードライブ(U/D)状態である。
【0040】次に、CVT5のトルク比(torqueRatio)、現在のエンジントルク(engineTorque)から、現在の電気モータ4による、CVT5にスリップが生じない状態でのノンスリップアシスト可能トルク(最大アシストトルク)(Troq _assist_max)を、以下の式より、演算する。
【0041】
Troq_assist_max=inTorq_max÷ torqueRatio− engineTorque ……(2)
即ち、ベルト挟持力から算出されるベルトがスリップしないでトルク伝達可能なトルクコンバータへの許容入力トルク(プーリへの最大入力トルクをトルク比で割ったもの)から、エンジンの出力トルクを減算して求める。制御ユニット31は、アシストトルク制御プログラムATPのステップS4に入り、前述の再設定された、必要なアシストトルク(T_assist)がノンスリップアシスト可能トルク(Troq_assist_max)を越えないように、制限する形で、再度アシストトルク(T_assist)を設定する。
【0042】
T_assist=MIN(T_assist、Troq_assist_max) ……(3)
このアシストトルク(T_assist)で、アシストトルク制御プログラムATPのステップS4において、制御ユニット31はモータトルク指令部39を介して電気モータ4を駆動してトルクアシストする。これにより、現在の電気モータ4の回転状態によりアシスト可能な範囲で、かつCVT5のプライマリプーリ50とセカンダリプーリ51でベルト57が、ライン圧不足によるスリップが生じることなく適正に挟圧保持された状態で、ダウンシフトが実行される。
【0043】また、ステップS3で、ノンスリップアシスト可能トルク(Troq_assist_max)がステップS1で設定されたアシストトルク(T_assist)よりも大きい場合には、現在の電気モータ4の回転状態では、CVT5にスリップが生じることはないので、ステップS3からステップS5に直ちに入り、制御ユニット31はモータトルク指令部39を介して電気モータ4により、ステップS1で設定された、T_assist=MIN(T_assist、mgTorque_max)、即ち、現在の電気モータ4によるモータアシスト可能トルク(mgTorque_max)以下のトルクで、かつ必要なアシストトルク(T_assist)の範囲でトルクアシストを実行する。
【0044】これにより、入力回転数は、図6に示すように、電気モータ4によるトルクアシストにより、制御開始時点T1から、図中破線で示すエンジン単独の場合よりも速やかに上昇し、更に入力トルクも図中破線で示すエンジン単独の場合よりも大幅に増加した形でCVT5に入力され、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ51は、ベルトスリップが防止された形で、それらプーリの慣性に妨げられることなく迅速に速度変化が行われ、変速速度及び加速レスポンスの向上が図られる。従って、ベルトがスリップにより損傷したり耐久性が損なわれることが無くなり、信頼性の高い無段変速機の提供が可能となる。
【0045】こうして、図6に示す所定時間T2のトルクアシストが完了した時点で、アシストトルク制御プログラムATPのステップS6及びS7で一定の変化率で電気モータ4によるアシストを減少させ、ステップS8でアシストトルクがゼロとなった時点T3で、アシストトルク制御プログラムATPに基づく制御を終了する。
【0046】なお、上述の実施例は、現在のライン圧が低く、CVT5にスリップが生じない状態でのノンスリップアシスト可能トルク(Troq _assist_max)が小さい場合に、スロットルの開度が高くなってキックダウンが判定された時点である、制御開始時点T1から電気モータ4によるトルクアシストを(3)式に基づいて制限しつつ行った場合について述べた。しかし、電気モータ4によるトルクアシストは、必ずしも時点T1から行う必要はなく、スロットル開度が変化してエンジン回転数が増加し、それに伴ってオイルポンプ回転数が増加してライン圧がトルクアシストを行ってもベルトを十分に挟持し得る程度にまで上昇する時点T4まで、電気モータ4によるトルクアシストを保留し、その時点T4から開始するようにしてもよい。
【0047】また、本発明によるトルクアシスト時の制御は、キックダウン時に限らず、上り坂などにおけるダウンシフト時などにも適用して、迅速な変速を実現するようにすることも当然可能である。
【0048】更に、電気モータ4が配置される位置は、図1に示すように、トルクコンバータ2とエンジンとの間の、変速機ケース7内に配置される他に、変速機ケースとは独立して配置されても良く、また、変速機内のセカンダリプーリ51側に配置するようにしてもよい。
【出願人】 【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
【出願日】 平成12年10月5日(2000.10.5)
【代理人】 【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫 (外1名)
【公開番号】 特開2002−118901(P2002−118901A)
【公開日】 平成14年4月19日(2002.4.19)
【出願番号】 特願2000−306891(P2000−306891)