| 【発明の名称】 |
4輪駆動電気自動車およびその制御方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】畑 祐志
【氏名】小嶋 昌洋
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| 【要約】 |
【課題】駆動系が共振した際に駆動系機器に生じ得る損傷を防止すると共に前後輪の動力の分配をより適正に行なう。
【解決手段】前輪の駆動系を構成するエンジンやプラネタリギヤ,二つのモータの運転ポイントに基づいて前輪の駆動系の共振を推定し(S200)、後輪の駆動系を構成するモータの運転ポイントに基づいて後輪の駆動系の共振を推定する(S202)。そして、共振が推定された駆動系の軸に出力する駆動トルクまたは回生トルクを減少すると共に共振が推定されなかった駆動系の軸に出力する駆動トルクまたは回生トルクを増加する(S210〜S216)。この結果、共振が推定された駆動系の共振を抑制したり、共振のエネルギを小さくすることができる。しかも、前後輪トルク比DTを修正するだけで前輪と後軸とに出力される全体としてのトルクは変更されないから車両の動特性を変更しない。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前輪と後輪とに動力の出力が可能な4輪駆動電気自動車であって、前輪に動力の出力が可能な第1電動機を有する前輪系動力出力手段と、後輪に動力の出力が可能な第2電動機を有する後輪系動力出力手段と、駆動系の共振を推定する共振推定手段と、該共振推定手段により推定された共振に基づいて前記前輪系動力出力手段により前輪に出力される動力と前記後輪系動力出力手段により後輪に出力される動力の比である動力前後比を調整する動力前後比調整手段とを備える4輪駆動電気自動車。 【請求項2】 請求項1記載の4輪駆動電気自動車であって、前記共振推定手段は、前輪の駆動系の共振と後輪の駆動系の共振と推定する手段であり、前記動力前後比調整手段は、前記共振推定手段により前輪の駆動系の共振を推定したときには前記前輪系動力出力手段により前輪に出力される動力の割合が小さくなるよう前記動力前後比を調整し、前記共振推定手段により後輪の駆動系の共振を推定したときには前記後輪系動力出力手段により後輪に出力される動力の割合が小さくなるよう前記動力前後比を調整する手段である4輪駆動電気自動車。 【請求項3】 請求項1または2記載の4輪駆動電気自動車であって、前記共振推定手段は、加速時の共振と制動時の共振とを推定する手段であり、前記動力前後比調整手段は、前記共振推定手段により加速時の共振を推定したときには前記動力前後比として前記前輪系動力出力手段により前輪に出力される加速トルクと前記後輪系動力出力手段により後輪に出力される加速トルクとの加速トルク比を調整し、前記共振推定手段により制動時の共振を推定したときには前記動力前後比として前記前輪系動力出力手段により前輪に出力される制動トルクと前記後輪系動力出力手段により後輪に出力される制動トルクとの制動トルク比を調整する手段である4輪駆動電気自動車。 【請求項4】 前記共振推定手段は、車速,要求動力,前記前輪系動力出力手段の動力出力状態,前記後輪系動力出力手段の動力出力状態等の駆動系の駆動状態に基づいて駆動系の共振を推定する手段である請求項1ないし3いずれか記載の4輪駆動電気自動車。 【請求項5】 請求項1ないし4いずれか記載の4輪駆動電気自動車であって、前記前輪系動力出力手段は、前記第1電動機に連結されると共に前輪の駆動軸に連結された第1伝達軸と、出力軸を有する内燃機関と、前記内燃機関の出力軸と前記第1伝達軸と動力分割統合軸の三つの回転軸に接続され該三つの回転軸のうちのいずれかの回転軸から動力が入力されたときには該動力を定トルク比で他の二つの回転軸に分割すると共に該三つの回転軸のうちのいずれか二つの回転軸から動力が入力されたときには該入力された動力を統合して他の回転軸に出力する動力分割統合手段と、前記動力分割統合軸に連結された発電可能な分割統合用電動機と、要求動力と前記動力前後比とに基づいて演算される目標前輪動力が前輪に出力されるよう前記内燃機関と前記分割統合用電動機と第1電動機とを駆動制御する前輪用駆動制御手段とを備え、前記後輪系動力出力手段は、前記第2電動機に連結されると共に後輪の駆動軸に連結された第2伝達軸と、要求動力と前記動力前後比とに基づいて演算される目標後輪動力が後輪に出力されるよう前記第2電動機を駆動制御する後輪用駆動制御手段とを備える4輪駆動電気自動車。 【請求項6】 前輪に動力の出力が可能な第1電動機を有する前輪系動力出力手段と、後輪に動力の出力が可能な第2電動機を有する後輪系動力出力手段とを備える4輪駆動電気自動車の制御方法であって、前輪の駆動系の共振と後輪の駆動系の共振のいずれかを推定し、前記前輪系動力出力手段により前輪に出力される動力と前記後輪系動力出力手段により後輪に出力される動力の比である動力前後比を、前輪の駆動系の共振が推定されたときには前輪に出力される動力の割合が小さくなるよう調整し、後輪の駆動系の共振が推定されたときには後輪に出力される動力の割合が小さくなるよう調整する4輪駆動電気自動車の制御方法。 【請求項7】 前記駆動系の共振の推定は、車速,要求動力,前記前輪系動力出力手段の動力出力状態,前記後輪系動力出力手段の動力出力状態等の駆動系の駆動状態に基づいて行なう請求項6記載の4輪駆動電気自動車の制御方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、4輪駆動電気自動車およびその制御方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、この種の4輪駆動電気自動車としては、4輪に各々取り付けられた4つの電動機の温度に基づいてモータトルクを制御するものが提案されている(例えば、特開平3−203502号公報など)。この4輪駆動電気自動車では、制動時に各電動機の温度を検出し、検出した温度が許容値を超えるような場合には、対応する電動機の駆動力、即ち回生力を抑制する方向に修正することにより、電動機の損傷を防止すると共により適正な回生力を得ることができる、とされている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、こうした4輪駆動電気自動車では、電動機の温度に基づく電動機の損傷は防止できるが、車両の走行状態に基づいて駆動系が共振した際に電動機などの駆動系機器に生じ得る損傷については防止することができない。 【0004】本発明の4輪駆動電気自動車およびその制御方法は、駆動系が共振した際に駆動系機器に生じ得る損傷を防止することを目的の一つとする。また、本発明の4輪駆動電気自動車およびその制御方法は、駆動系が共振した際の前後輪の動力の分配をより適正に行なうことを目的の一つとする。 【0005】 【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本発明の4輪駆動電気自動車およびその制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。 【0006】本発明の4輪駆動電気自動車は、前輪と後輪とに動力の出力が可能な4輪駆動電気自動車であって、前輪に動力の出力が可能な第1電動機を有する前輪系動力出力手段と、後輪に動力の出力が可能な第2電動機を有する後輪系動力出力手段と、駆動系の共振を推定する共振推定手段と、該共振推定手段により推定された共振に基づいて前記前輪系動力出力手段により前輪に出力される動力と前記後輪系動力出力手段により後輪に出力される動力の比である動力前後比を調整する動力前後比調整手段とを備えることを要旨とする。 【0007】この本発明の4輪駆動電気自動車では、駆動系の共振が推定されたときには、推定された共振に基づいて前輪系動力出力手段により前輪に出力される動力と後輪系動力出力手段により後輪に出力される動力の比である動力前後比を調整するから、共振による生じ得る前輪系動力出力手段や後輪系動力出力手段等の駆動系の機器の損傷を抑制することができると共に前後輪の動力の配分をより適正なものとすることができる。 【0008】こうした本発明の4輪駆動電気自動車において、前記共振推定手段は前輪の駆動系の共振と後輪の駆動系の共振とを推定する手段であり、前記動力前後比調整手段は、前記共振推定手段により前輪の駆動系の共振を推定したときには前記前輪系動力出力手段により前輪に出力される動力の割合が小さくなるよう前記動力前後比を調整し、前記共振推定手段により後輪の駆動系の共振を推定したときには前記後輪系動力出力手段により後輪に出力される動力の割合が小さくなるよう前記動力前後比を調整する手段であるものとすることもできる。こうすれば、共振が推定された駆動系に出力される動力の割合が小さくなるから、共振により生じ得る駆動系の機器の損傷を抑制することができる。しかも、動力前後比を調整するだけで全体として出力する動力を変更しないから、車両としての動特性を変更することがない。 【0009】また、本発明の4輪駆動電気自動車において、前記共振推定手段は加速時の共振と制動時の共振とを推定する手段であり、前記動力前後比調整手段は、前記共振推定手段により加速時の共振を推定したときには前記動力前後比として前記前輪系動力出力手段により前輪に出力される加速トルクと前記後輪系動力出力手段により後輪に出力される加速トルクとの加速トルク比を調整し、前記共振推定手段により制動時の共振を推定したときには前記動力前後比として前記前輪系動力出力手段により前輪に出力される制動トルクと前記後輪系動力出力手段により後輪に出力される制動トルクとの制動トルク比を調整する手段であるものとすることもできる。こうすれは、加速時に生じる共振と制動時に生じる共振とに応じた動力前後比の調整を行なうことができる。 【0010】さらに、本発明の4輪駆動電気自動車において、前記共振推定手段は、車速,要求動力,前記前輪系動力出力手段の動力出力状態,前記後輪系動力出力手段の動力出力状態等の駆動系の駆動状態に基づいて駆動系の共振を推定する手段であるものとすることもできる。 【0011】あるいは、本発明の4輪駆動電気自動車において、前記前輪系動力出力手段は、前記第1電動機に連結されると共に前輪の駆動軸に連結された第1伝達軸と、出力軸を有する内燃機関と、前記内燃機関の出力軸と前記第1伝達軸と動力分割統合軸の三つの回転軸に接続され該三つの回転軸のうちのいずれかの回転軸から動力が入力されたときには該動力を定トルク比で他の二つの回転軸に分割すると共に該三つの回転軸のうちのいずれか二つの回転軸から動力が入力されたときには該入力された動力を統合して他の回転軸に出力する動力分割統合手段と、前記動力分割統合軸に連結された発電可能な分割統合用電動機と、要求動力と前記動力前後比とに基づいて演算される目標前輪動力が前輪に出力されるよう前記内燃機関と前記分割統合用電動機と第1電動機とを駆動制御する前輪用駆動制御手段とを備え、前記後輪系動力出力手段は、前記第2電動機に連結されると共に後輪の駆動軸に連結された第2伝達軸と、要求動力と前記動力前後比とに基づいて演算される目標後輪動力が後輪に出力されるよう前記第2電動機を駆動制御する後輪用駆動制御手段とを備えるものとすることもできる。 【0012】本発明の4輪駆動電気自動車の制御方法は、前輪に動力の出力が可能な第1電動機を有する前輪系動力出力手段と、後輪に動力の出力が可能な第2電動機を有する後輪系動力出力手段とを備える4輪駆動電気自動車の制御方法であって、前輪の駆動系の共振と後輪の駆動系の共振のいずれかを推定し、前記前輪系動力出力手段により前輪に出力される動力と前記後輪系動力出力手段により後輪に出力される動力の比である動力前後比を、前輪の駆動系の共振が推定されたときには前輪に出力される動力の割合が小さくなるよう調整し、後輪の駆動系の共振が推定されたときには後輪に出力される動力の割合が小さくなるよう調整することを要旨とする。 【0013】この本発明の4輪駆動電気自動車の制御方法によれば、共振が推定された駆動系に出力される動力の割合を小さくすることにより、共振による生じ得る駆動系の機器の損傷を抑制することができる。しかも、動力前後比を調整するだけで全体として出力する動力を変更しないから、車両としての動特性を変更することがない。 【0014】こうした本発明の4輪駆動電気自動車の制御方法において、前記駆動系の共振の推定は、車速,要求動力,前記前輪系動力出力手段の動力出力状態,前記後輪系動力出力手段の動力出力状態等の駆動系の駆動状態に基づいて行なうものとすることもできる。 【0015】 【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド4輪駆動電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車は、図示するように、主にエンジン22と、エンジン22のクランクシャフト24に連結されエンジン22からの動力を定トルク比でサンギヤ軸33とリングギヤ軸37に分割可能なギヤユニット30と、ギヤユニット30のサンギヤ軸33に連結された発電可能なモータMG1と、リングギヤ軸37に連結されると共に前輪54,56の前軸50に連結された発電可能なモータMG2と、後輪64,66の後軸60に連結された発電可能なモータMG3と、モータMG1,MG2,MG3の各々と電力のやり取りが可能な二次電池70と、これら全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(以下、ハイブリッドECUという)80とを備える。 【0016】エンジン22は、ガソリンで駆動する内燃機関として構成されており、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)28により運転制御される。エンジンECU28によるエンジン22の運転制御は、ハイブリッドECU80から入力されるエンジン出力目標値Pe*に基づいてエンジン22からエンジン出力目標値Pe*を出力可能な運転ポイントのうち最も効率の良い運転ポイントでエンジン22が運転されるよう燃料噴射量の制御や吸入空気量の制御を行なうことによりなされる。 【0017】ギヤユニット30は、サンギヤ32とリングギヤ36とその間に複数設けられたプラネタリピニオンギヤ34とからなるプラネタリギヤ31を中心として構成されている。プラネタリギヤ31のプラネタリピニオンギヤ34を連結するキャリア35にはダンパ26を介してエンジン22のクランクシャフト24が接続されており、サンギヤ32にはサンギヤ軸33を介してモータMG1が接続されている。リングギヤ36は、クラッチC1やクラッチC2の係合状態によりキャリア35やリングギヤ軸37に接続されるようになっている。リングギヤ軸37には、モータMG2の回転軸40に設けられたギヤ42とベルト44により連結されたギヤ38が取り付けられている。モータMG2の回転軸40はギヤ46とディファレンシャルギヤ52とを介して前軸50に接続されているから、リングギヤ軸37は前輪54,56の前軸50に連結されていることになる。 【0018】モータMG1,MG2,MG3は、いずれも永久磁石が外周面に貼り付けられたロータと三相コイルが巻き付けられたステータとを備えるPM型の同期発電電動機として構成されており、二次電池70の端子に接続された電力ラインL1,L2を正極母線および負極母線とするインバータ回路72,74,76が各々備える6つのスイッチング素子のスイッチングにより生成される擬似的な三相電流が三相コイルに印加されることにより駆動する。なお、インバータ回路72,74,76の各スイッチング素子のスイッチング制御、即ちモータMG1,MG2,MG3の駆動制御はモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)78により行なわれる。モータECU78によるモータMG1,MG2,MG3の駆動制御は、ハイブリッドECU80から入力されるモータMG1,MG2,MG3のトルク指令Tm1*,Tm2*,Tm3*に基づいてモータMG1,MG2,MG3からトルク指令Tm1*,Tm2*,Tm3*に相当するトルクが出力されるようインバータ回路72,74,76のスイッチング素子をスイッチング制御することにより行なわれる。 【0019】二次電池70は、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池などのように充放電可能な単電池を複数直列に接続してなる組電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)71により管理されている。バッテリECU71による二次電池70の管理としては、二次電池70の出力端子に接続された図示しない電流センサや電圧センサにより検出される充放電電流や端子間電圧に基づいて行なわれる残容量SOCの演算や、同じく電流センサや電圧センサにより検出される充放電電流や端子間電圧に基づいて行なわれる単電池の均等化、二次電池70に取り付けられた図示しない温度センサにより検出される電池温度に基づいて行なわれる冷却管理などが含まれる。 【0020】ハイブリッドECU80は、図示しないがCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶するROMや一時的にデータを記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートなどを備える。ハイブリッドECU80の通信ポートは、エンジンECU28やバッテリECU71,モータECU78の通信ポートと接続されており、エンジンECU28やバッテリECU71,モータECU78と種々のデータのやり取りが可能となっている。また、ハイブリッドECU80には、車速センサ81からの車速Vやイグニッションスイッチ82からのイグニッション信号,シフトレバー83のポジションを検出するシフトポジションセンサ84からのシフトポジションSP,アクセルペダル85のポジション(踏み込み量)を検出するアクセルペダルポジションセンサ86からのアクセルペダルポジションAP,ブレーキペダル87のポジション(踏み込み量)を検出するブレーキペダルポジションセンサ88からのブレーキペダルポジションBP,前輪54,56や後輪64,66の各々に取り付けられた車輪速センサ55,57,65,67からの各車輪の車輪速Vw1〜Vw4などが入力ポートを介して入力されている。さらに、ハイブリッドECU80からは、クラッチC1,C2への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。 【0021】次に、こうして構成された実施例のハイブリッド4輪駆動電気自動車20の動作、特に駆動系の共振への対応を含めた駆動制御について説明する。図2は実施例のハイブリッド4輪駆動電気自動車20のハイブリッドECU80により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、所定時間毎(例えば、8msec毎)に繰り返し実行される。 【0022】駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッドECU80の図示しないCPUは、まず、車速センサ81により検出される車速Vやアクセルペダルポジションセンサ86により検出されるアクセルペダルポジションAP,ブレーキペダルポジションセンサ88により検出されるブレーキペダルポジションBP,バッテリECU71により演算されるバッテリSOCなどを入力ポートや通信ポートを介して読み込む処理を実行する(ステップS100)。ここで、車速Vについては車速センサ81により検出されるものを用いたが、車輪速センサ55,57,65,67により検出される車輪速Vw1〜Vw4から算出するものとしてもよい。 【0023】次に、読み込んだアクセルペダルポジションAPやブレーキペダルポジションBP,車速Vに基づいて車両の駆動軸に要求されるトルクとしての駆動軸要求トルクTd*を計算する(ステップS102)。実施例では、アクセルペダルポジションAPとブレーキペダルポジションBPと車速Vと駆動軸要求トルクTd*との関係を予め定めてマップとしてハイブリッドECU80の図示しないROMに記憶しておき、アクセルペダルポジションAPやブレーキペダルポジションBP,車速Vの入力に対してマップから対応する駆動軸要求トルクTd*を導出するものとした。アクセルペダルポジションAPとブレーキペダルポジションBPと車速Vと要求トルクTd*との関係の一例を示すマップを図3に示す。なお、実施例では、アクセルペダル85が踏み込まれたときに駆動軸要求トルクTd*が正の値となり、ブレーキペダル87が踏み込まれたときに駆動軸要求トルクTd*が負の値となるよう正負を定めた。 【0024】こうして駆動軸要求トルクTd*を求めると、求めた駆動軸要求トルクTd*と車速VとバッテリSOCとに基づいて運転モードを設定する(ステップS104)。運転モードの設定は、実施例では、駆動軸要求トルクTd*が負の値のときにはモータMG2とモータMG3を回生制御を行なって前軸50および後軸60に制動力を出力する制動駆動モードを設定し、駆動軸要求トルクTd*が正の値で車速Vが比較的遅い速度Vs以下のときにはエンジン22からの動力を用いずに二次電池70からの放電電力によりモータMG2とモータMG3から前軸50と後軸60に駆動力を出力する電動機駆動モードを設定し、車速Vが速度Vsより大きくバッテリSOCが70%以上のときにはエンジン22からの動力と二次電池70からの放電電力を用いて前軸50と後軸60とに駆動力を出力する放電駆動モードを設定し、バッテリSOCが40%未満のときにはエンジン22からの動力を用いて二次電池70を充電しながら前軸50と後軸60とに駆動力を出力する充電駆動モードを設定し、それら以外のときにはエンジン22からの動力をトルク変換して二次電池70の充放電を伴わずに前軸50と後軸60とに駆動力を出力する通常駆動モードを設定するものとした。この運転モードの設定は、実施例における基本的な設定の一例であり、運転条件により例外的に変更される場合がある。また、こうした運転モードの設定の手法については実施例の設定に限定されるものではない。 【0025】こうして運転モードが設定されると、設定された運転モードに基づいてクラッチC1,C2を設定する(ステップS106)。例えば、電動機駆動モードや制動駆動モードでは、基本的にはクラッチC1を係合すると共にクラッチC2を非係合としてリングギヤ軸37をプラネタリギヤ31から切り離して、前軸50には単にモータMG2からの動力が出力されるだけの状態とされ、通常駆動モードや充電駆動モード,放電駆動モードでは、基本的にはクラッチC1を非係合とする共にクラッチC2を係合してリングギヤ軸37をプラネタリギヤ31のリングギヤ36に接続し、前軸50にはエンジン22の動力の一部がプラネタリギヤ31を介して直接出力されると共にモータMG2からも動力の出力が可能な状態とされる。 【0026】クラッチC1,C2が設定されると、運転モードや駆動軸要求トルクTd*や車速Vに基づいて最適な前後輪トルク比DTを設定する(ステップS108)。前後輪トルク比DTは、前軸50に出力される前輪トルクT1と後軸60に出力される後輪トルクT2との比(DT=T2/T1)として表わされ、車両の発進時や加速時には発進や加速に最適な前後輪トルク比が設定され、車両の制動時には制動に最適な前後輪トルク比が設定される。実施例では、実験により運転モードと駆動軸要求トルクTd*や車速Vと最適な前後輪トルク比DTとの関係を求めてマップとして予めハイブリッドECU80のROMに記憶しておき、運転モードと駆動軸要求トルクTd*や車速Vが与えられると、マップから対応する前後輪トルク比DTを導出するものとした。 【0027】前後輪トルク比DTを設定すると、設定した前後輪トルク比DTや駆動軸要求トルクTd*,車速V,プラネタリギヤ31のギヤ比ρに基づいてエンジン出力目標値Pe*やモータ目標回転数Nm1*,モータトルク指令値Tm1*,Tm2*,Tm3*を設定する(ステップS110)。エンジン出力目標値Pe*やモータ目標回転数Nm1*,モータトルク指令値Tm1*,Tm2*,Tm3*の設定は、運転モードが電動機駆動モードや制動駆動モードのときには、基本的にはリングギヤ軸37がプラネタリギヤ31から切り離されることから、値0をエンジン出力目標値Pe*とモータ目標回転数Nm1*とモータトルク指令値Tm1*に設定し、駆動軸要求トルクTd*が前後輪トルク比DTで前軸50と後軸60とに出力されるようモータトルク指令値Tm2*,Tm3*を設定する。また、運転モードが通常駆動モードや充電駆動モード,放電駆動モードのときには、リングギヤ軸37がプラネタリギヤ31のリングギヤ36に接続された状態となるから、基本的には二次電池70の充放電電力と前軸50および後軸60に出力する動力の和として計算される動力をエンジン出力目標値Pe*として設定し、エンジン22からエンジン出力目標値Pe*を出力する際に最も効率よくエンジン22が運転される運転ポイントであるエンジン目標トルクTe*とエンジン目標回転数Ne*に基づいてモータ目標回転数Nm1*とモータトルク指令値Tm1*とを設定し、エンジン22からの動力のうちリングギヤ軸37に直接出力されるトルクTrを考慮しながら駆動軸要求トルクTd*が前後輪トルク比DTで前軸50と後軸60とに出力されるようモータトルク指令値Tm2*,Tm3*を設定する。 【0028】そして、設定したエンジン出力目標値Pe*,モータ目標回転数Nm1*,モータトルク指令値Tm1*,Tm2*,Tm3*を用いて駆動系の共振による前後輪トルク比DTの修正処理を行なう。この処理は、図4に例示する前後輪トルク比修正処理ルーチンにより行なわれる。このルーチンが実行されると、まず、運転モードや車速V、クラッチC1,C2の状態,エンジン目標トルクTe*,サンギヤ軸33の回転数Ns,リングギヤ軸37の回転数Nr,モータトルク指令値Tm1*,Tm2*に基づいて前軸50の駆動系の共振を推定する(ステップS200)。この推定は、実施例では、実験に各運転モードにおける各クラッチC1,C2の状態の車速V,エンジン目標トルクTe*,サンギヤ軸33の回転数Ns,リングギヤ軸37の回転数Nr,モータトルク指令値Tm1*,Tm2*をパラメータとすると共に各パラメータを順次変更して前軸50の駆動系が共振する領域を求め、これをマップとして予めハイブリッドECU80のROMに記憶しておき、各パラメータが与えられたときにマップから前軸50の駆動系が共振する領域にあるか否かを判定することにより行なうものとした。続いて、車速Vとモータトルク指令値Tm3*とに基づいて後軸60の駆動系の共振を推定する(ステップS202)。この推定も、実施例では、実験により車速Vとトルク指令値Tm3*とをパラメータとすると共に各パラメータを順次変更して後軸60の駆動系が共振する領域を求め、これをマップとして予めハイブリッドECU80のROMに記憶しておき、各パラメータが与えられたときにマップから後軸60の駆動系が共振する領域にあるか否かを判定することにより行なうものとした。 【0029】そして、前軸50の駆動系の共振や後軸60の駆動系の共振が推定されたか否かを判定すると共に加速時であるか制動時であるかを判定し(ステップS204〜S208)、加速時に前軸50の駆動系に共振が推定されたときには前輪駆動トルクを減少すると共に後輪駆動トルクを増加するよう前後輪トルク比DTを修正し(ステップS210)、制動時に前軸50の駆動系に共振が推定されたときには前輪回生トルクを減少すると共に後輪回生トルクを増加するよう前後輪トルク比DTを修正し(ステップS212)、加速時に後軸60の駆動系に共振が推定されたときには前輪駆動トルクを増加すると共に後輪駆動トルクを減少するよう前後輪トルク比DTを修正し(ステップS216)、制動時に後軸60の駆動系に共振が推定されたときには前輪回生トルクを増加すると共に後輪回生トルクを減少するよう前後輪トルク比DTを修正して(ステップS214)、本ルーチンを終了する。前後輪トルク比DTの修正量は、実験などにより前軸50や後軸60の共振を抑制可能な量や共振のエネルギを許容範囲内とする量を求めて用いるものとしてもよいし、共振に係る軸のトルクを10〜50あるいは70%または80%までの範囲で設定してもよい。なお、前軸50の駆動系の共振と後軸60の駆動系の共振とが共に推定されたときや共に推定されなかったときには、そのまま本ルーチンを終了する。 【0030】図2の駆動制御ルーチンに戻って、駆動系の共振による前後輪トルク比DTの修正処理が終了すると、前後輪トルク比DTが修正されたか否かを判定し(ステップS114)、前後輪トルク比DTが修正されたときには、修正された前後輪トルク比DTに基づいてモータトルク指令値Tm2*,Tm3*を修正設定する(ステップS116)。そして、設定または修正設定されたエンジン出力目標値Pe*,モータ目標回転数Nm1*,モータトルク指令値Tm1*,Tm2*,Tm3*をエンジンECU28やモータECU78に出力して(ステップS118)、本ルーチンを終了する。実施例では、モータトルク指令値Tm1*,Tm2*,Tm3*およびモータMG1の目標回転数Nm1*を受け取ったモータECU78は、モータMG1が目標回転数Nm1*で駆動するようにトルク指令値Tm1*を用いながらモータMG1を回転数制御すると共にモータMG2およびモータMG3からトルク指令値Tm2*およびトルク指令値Tm3*に相当するトルクが各々出力されるようにモータMG2およびモータMG3を駆動制御する。また、エンジン出力目標値Pe*を受け取ったエンジンECU28は、エンジン22がエンジン出力目標値Pe*に設定された運転ポイント、即ちエンジン目標トルクTe*とエンジン目標回転数Ne*とにより設定される運転ポイントで運転されるようエンジン22の運転制御を行なう。これにより駆動軸要求トルクTd*が前後輪トルク比DTをもって前軸50と後軸60から出力される。 【0031】以上説明した実施例のハイブリッド4輪駆動電気自動車20によれば、エンジン22の運転ポイントやモータMG1,MG2,MG3の運転ポイントを設定したときに、設定した運転ポイントに基づいて前軸50の駆動系の共振や後軸60の駆動系の共振を推定し、共振が推定されたときには、共振が推定された駆動系の軸に出力するトルクを減少すると共に共振が推定されなかった駆動系の軸に出力するトルクを増加するから、共振を抑制したり、共振のエネルギを小さくすることができる。この結果、共振が推定された駆動系の機器の共振により生じ得る破損を防止することができる。しかも、前後輪トルク比DTを修正するだけで駆動軸要求トルクTd*を変更しないから、前軸50と後軸60とに出力される全体としてのトルクは変更されない。この結果、車両としての動特性、即ち加速特性や制動特性に大きな影響を与えることはない。 【0032】実施例のハイブリッド4輪駆動電気自動車20では、キャリア35とリングギヤ36との接続と接続の解除を行なうクラッチC1やリングギヤ軸37とリングギヤ36との接続と接続の解除を行なうクラッチC2とを備えるものとしたが、図5に例示する変形例のハイブリッド4輪駆動電気自動車20Bの一部に示すようにクラッチC1やクラッチC2を備えないギヤユニット30Bを備えるものとしてもよい。この場合、運転モードとして電動機駆動モードや制動駆動モードが設定されたときには、クランクシャフト24やサンギヤ軸33を連れ回して駆動するものとなる。 【0033】実施例のハイブリッド4輪駆動電気自動車20では、エンジン22,ギヤユニット30,モータMG1,モータMG2の出力軸としての回転軸40を前軸50に接続し、後軸60にモータMG3を接続したが、エンジン22,ギヤユニット30,モータMG1,モータMG2の出力軸としての回転軸40を後軸60に接続し、前軸500にモータMG3を接続するものとしてもよい。 【0034】実施例では、駆動系の共振に基づいて前後輪トルク比を調整する本発明を、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ31により分割して前軸50に直接出力可能でモータMG2とモータMG3とから前軸50と後軸60に動力の出力が可能ないわゆる機械分配式のハイブリッド4輪駆動電気自動車に適用したが、前輪に動力の出力が可能な前輪用の電動機を有する前輪系の動力出力装置と後輪に動力の出力が可能な後輪用の電動機を有する後輪系の動力出力装置とを備える4輪駆動電気自動車であれば、如何なるタイプの電気自動車にも適用することができる。例えば、エンジンの出力軸に接続された第1ロータとこの第1ロータに対して相対的に回転可能で前輪または後輪の駆動軸に接続された第2ロータを有する対ロータ電動機と前輪の駆動軸に接続された前輪用電動機と後輪の駆動軸に接続された後輪用電動機とを備えるいわゆる電気分配式のハイブリッド4輪駆動車やエンジンの出力軸に接続された発電機とこの発電機の発電電力により充電される二次電池とこの二次電池から電力の供給を受けて駆動する前輪の駆動軸および後輪の駆動軸に各々接続された前輪用電動機と後輪用電動機とを備えるいわゆるシリーズ型のハイブリッド4輪駆動電気自動車,本明細書の従来技術で取り上げた4輪に各々電動機を取り付けて構成された4輪駆動電気自動車など種々の4輪駆動電気自動車に適用することができる。 【0035】以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年8月28日(2000.8.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075258 【弁理士】 【氏名又は名称】吉田 研二 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−78110(P2002−78110A) |
| 【公開日】 |
平成14年3月15日(2002.3.15) |
| 【出願番号】 |
特願2000−257040(P2000−257040) |
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