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【発明の名称】 電気車の制御方法および制御装置
【発明者】 【氏名】渡邉 朝紀

【要約】 【課題】従来と同等の諸元の主電動機を用いて、電気制動時には従来より大きい制動トルクの得られる電気車の制御方法および制御装置を提供する。

【解決手段】主電動機13のU、V、Wの各相巻線を、力行時にはスター結線とし、電気制動時にはデルタ結線に切り換えることにより、また、スター結線とデルタ結線とを切り換えるスター・デルタ切換器14を備えることにより、上記課題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】外部より供給される直流電源をスイッチングするインバータにより制御される三相交流電動機を備えた電気車の制御方法であって、前記三相交流電動機をスター結線として前記インバータに接続し、このインバータにより生成される正のすべり周波数の交流電圧を印加して電気車を駆動する段階と、前記三相交流電動機をデルタ結線として前記インバータに接続し、このインバータにより生成される負のすべり周波数の交流電圧を印加して前記電気車を電気制動する段階とを備えたことを特徴とする電気車の制御方法。
【請求項2】請求項1に記載の電気車の制御方法であって、前記電気制動する段階において、前記インバータは、デルタ結線される前記三相交流電動機の各端子をそれぞれU、V、W相とするとき、U相を前記直流電源の正側に接続し、V相、W相を前記直流電源の負側に接続する段階と、U相、V相を前記直流電源の正側に接続し、W相を前記直流電源の負側に接続する段階と、V相を前記直流電源の正側に接続し、U相、W相を前記直流電源の負側に接続する段階と、U相を前記直流電源の負側に接続し、V相、W相を前記直流電源の正側に接続する段階と、U相、V相を前記直流電源の負側に接続し、W相を前記直流電源の正側に接続する段階と、U相、W相を前記直流電源の正側に接続し、V相を前記直流電源の負側に接続する段階とを順次、もしくはU、V、W相の全てを前記直流電源の正側または負側の何れかに接続する段階を交えて順次、繰り返す3アームオンスイッチングにより制御されることを特徴とする電気車の制御方法。
【請求項3】請求項1に記載の電気車の制御方法であって、前記電気制動する段階において、前記インバータは、デルタ結線される前記三相交流電動機の各端子をそれぞれU、V、W相とするとき、U相を前記直流電源の正側に接続し、V相を中立とし、W相を前記直流電源の負側に接続する段階と、U相を中立とし、V相を前記直流電源の正側に接続し、W相を前記直流電源の負側に接続する段階と、U相を前記直流電源の負側に接続し、V相を前記直流電源の正側に接続し、W相を中立とする段階と、U相を前記直流電源の負側に接続し、V相を中立とし、W相を前記直流電源の正側に接続する段階と、U相を中立とし、V相を前記直流電源の負側に接続し、W相を前記直流電源の正側に接続する段階と、U相を前記直流電源の正側に接続し、V相を前記直流電源の負側に接続し、W相を中立とする段階とを順次、もしくはU、V、W相の全てを中立に制御する段階を交えて順次、繰り返す2アームオンスイッチングにより制御されることを特徴とする電気車の制御方法。
【請求項4】請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電気車の制御方法であって、さらに、前記電気制動する段階における途中の速度域で、前記三相交流電動機を前記デルタ結線から前記スター結線に切り換える段階を備えたことを特徴とする電気車の制御方法。
【請求項5】請求項2に記載の電気車の制御方法であって、さらに、前記電気制動する段階における途中の速度域で、前記インバータを前記3アームオンスイッチングによる制御から2アームオンスイッチングによる制御に切り換える段階を備え、前記2アームオンスイッチングによる制御においては、前記インバータは、U相を前記直流電源の正側に接続し、V相を中立とし、W相を前記直流電源の負側に接続する段階と、U相を中立とし、V相を前記直流電源の正側に接続し、W相を前記直流電源の負側に接続する段階と、U相を前記直流電源の負側に接続し、V相を前記直流電源の正側に接続し、W相を中立とする段階と、U相を前記直流電源の負側に接続し、V相を中立とし、W相を前記直流電源の正側に接続する段階と、U相を中立とし、V相を前記直流電源の負側に接続し、W相を前記直流電源の正側に接続する段階と、U相を前記直流電源の正側に接続し、V相を前記直流電源の負側に接続し、W相を中立とする段階とを順次、もしくはU、V、W相の全てを中立に制御する段階を交えて順次、繰り返すことを特徴とする電気車の制御方法。
【請求項6】請求項5に記載の電気車の制御方法であって、さらに、前記電気制動する段階において、前記インバータを前記2アームオンスイッチングにより制御する段階の途中の速度域で、前記インバータを前記2アームオンスイッチングによる制御から前記3アームオンスイッチングによる制御に切り換えるとともに、前記三相交流電動機を前記デルタ結線から前記スター結線に切り換える段階を備えたことを特徴とする電気車の制御方法。
【請求項7】請求項6に記載の電気車の制御方法であって、さらに、前記電気制動する段階において、前記三相交流電動機を前記スター結線として前記インバータに接続し、前記インバータを前記3アームオンスイッチングにより制御する段階の途中の速度域で、前記インバータを前記3アームオンスイッチングによる制御から前記2アームオンスイッチングによる制御に切り換える段階を備えたことを特徴とする電気車の制御方法。
【請求項8】請求項5に記載の電気車の制御方法であって、さらに、前記電気制動する段階において、前記2アームオンスイッチングにより制御する段階の途中の速度域で、前記三相交流電動機を前記デルタ結線から前記スター結線に切り換える段階を備えたことを特徴とする電気車の制御方法。
【請求項9】外部より供給される直流電源をスイッチングするインバータにより制御される三相交流電動機を備えた電気車の制御装置であって、このインバータにより生成される正のすべり周波数の交流電圧を印加して電気車を駆動する場合には、前記三相交流電動機をスター結線として前記インバータに接続し、このインバータにより生成される負のすべり周波数の交流電圧を印加して前記電気車を電気制動する場合には、前記三相交流電動機をデルタ結線として前記インバータに接続するスター・デルタ切換器を備えたことを特徴とする電気車の制御装置。
【請求項10】請求項9に記載の電気車の制御装置であって、前記電気制動する場合に、前記インバータは、デルタ結線される前記三相交流電動機の各端子をそれぞれU、V、W相とするとき、U相を前記直流電源の正側に接続し、V相、W相を前記直流電源の負側に接続する段階と、U相、V相を前記直流電源の正側に接続し、W相を前記直流電源の負側に接続する段階と、V相を前記直流電源の正側に接続し、U相、W相を前記直流電源の負側に接続する段階と、U相を前記直流電源の負側に接続し、V相、W相を前記直流電源の正側に接続する段階と、U相、V相を前記直流電源の負側に接続し、W相を前記直流電源の正側に接続する段階と、U相、W相を前記直流電源の正側に接続し、V相を前記直流電源の負側に接続する段階とを順次、もしくはU、V、W相の全てを前記直流電源の正側または負側の何れかに接続する段階を交えて順次、繰り返す3アームオンスイッチングにより制御されることを特徴とする電気車の制御装置。
【請求項11】請求項9に記載の電気車の制御装置であって、前記電気制動する場合に、前記インバータは、デルタ結線される前記三相交流電動機の各端子をそれぞれU、V、W相とするとき、U相を前記直流電源の正側に接続し、V相を中立とし、W相を前記直流電源の負側に接続する段階と、U相を中立とし、V相を前記直流電源の正側に接続し、W相を前記直流電源の負側に接続する段階と、U相を前記直流電源の負側に接続し、V相を前記直流電源の正側に接続し、W相を中立とする段階と、U相を前記直流電源の負側に接続し、V相を中立とし、W相を前記直流電源の正側に接続する段階と、U相を中立とし、V相を前記直流電源の負側に接続し、W相を前記直流電源の正側に接続する段階と、U相を前記直流電源の正側に接続し、V相を前記直流電源の負側に接続し、W相を中立とする段階とを順次、もしくはU、V、W相の全てを中立に制御する段階を交えて順次、繰り返す2アームオンスイッチングにより制御されることを特徴とする電気車の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インバータ制御される三相交流電動機によって駆動される電気車の制御方法および制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体素子の発達に伴い、保守や制御の容易性等の利点を持つ三相電圧形インバータを利用した交流モータが普及し、電気車の主電動機にも広く用いられるようになっている。
【0003】図8は従来のこのような電気車の構成を示す概念図で、符号11はパンタグラフ、符号12は三相インバータまた符号13は主電動機を示す。架線からパンタグラフ11を経由して供給される直流電源は三相インバータ12により三相交流電源に変換され主電動機13に供給される。この時、制御装置(図示せず)により、三相インバータを介して、供給電源の周波数、実効電圧を制御することにより主電動機の出力トルクを制御している。なお、一般には一組の三相インバータ12から複数の主電動機に給電されるが、図8の主電動機13はこの複数の主電動機を代表しているものとする。図9は、このような電気車の力行時の、例えば誘導電動機からなる、主電動機13のトルク制御を説明する特性図で、一般に起動時には、供給電源の周波数と主電動機の回転周波数の差であるすべり周波数fsを出力効率の良い比較的低い値に固定し、誘導電動機に印加される実効電圧Eを速度に比例して増加するようPWM(パルス幅変調)制御することにより駆動トルクTがほぼ一定となるような制御が行われる(図9、定トルク領域91)。
【0004】実効電圧Eが架線電圧により定まる最高値Emに達するとすべり周波数fsを速度に比例して上昇させ、出力∝トルク×速度がほぼ一定となるよう制御される(定電力領域92)。この速度領域では駆動トルクTは速度に略反比例する。
【0005】定電力領域92では、速度の上昇に伴いすべり周波数fsを増加していくが、すべり周波数fsが最大トルク(停動トルク)を与える値以上になるとトルクがかえって低下し制御が不安定となるため、すべり周波数fsは、例えば停動トルクとなるすべり周波数の90%程度の値を上限として、それ以上の速度領域ではこの上限値に保たれる(特性領域93)。この速度領域では駆動トルクTは速度の2乗にほぼ反比例する。
【0006】図10は、印加電圧を一定とした場合のすべり周波数fsと、トルクT、電動機電流Iおよび出力効率efとの関係を示す特性図で、図9の定トルク領域91ではすべり周波数fsは例えば出力効率の良いfs=A点に保持され、定電力領域92ではA点<fs<B点に制御され、特性領域93ではfs=B点に保持される。
【0007】以上、電気車の力行時の交流電動機のトルク制御について略述したが、電気制動時の制動トルクもほぼ同様の特性となる。電気制動時は図10の特性図に見られるように、すべり周波数fsを負に制御する、すなわち電源周波数を回転子の回転数より低く制御することによって負のトルクを発生させるが、この場合もすべり周波数fsの絶対値の最大値は停動トルクとなる値の90%程度(図10、C点)に保持される。従って電源電圧、走行速度が同一であれば得られる制動トルクの最大値は、(電動機損失相当分大きくなるものの)得られる駆動トルクの最大値とほぼ同等の値となる。
【0008】以上述べたように、電源電圧の最大値が架線電圧で定まる電気車では、得られる駆動トルク、制動トルクの最大値はほぼ同等の値となり、走行速度が高くなるほど小さくなる。高速領域での高加速度をあまり必要としない電気車では、駆動トルクのこのような制御特性は特に問題なく、従来より、定格最高速度において駆動トルクが走行抵抗に拮抗するよう主電動機その他の諸元が定められてきた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電気車の運転速度の向上のためには、高速領域において十分な制動力が得られることが必要であるが、従来の電気車においては、上記制動トルクの特性から、定格最高速度において駆動トルクが走行抵抗に拮抗するよう諸元を定めた場合、電気制動時には高速領域において十分な制動トルクを得ることが出来ないという問題点があった。また、電気制動時に要求される制動トルクにあわせて主電動機その他の諸元を定めた場合には、力行時に高速領域の駆動トルクが過剰になってしまう問題点があった。
【0010】本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、従来と同等の諸元の主電動機を用いて、電気制動時には従来より大きい制動トルクの得られる電気車の制御方法および制御装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に係る、外部より供給される直流電源をスイッチングするインバータにより制御される三相交流電動機を備えた電気車の制御方法は、前記三相交流電動機をスター結線として前記インバータに接続し、このインバータにより生成される正のすべり周波数の交流電圧を印加して電気車を駆動する段階と、前記三相交流電動機をデルタ結線として前記インバータに接続し、このインバータにより生成される負のすべり周波数の交流電圧を印加して前記電気車を電気制動する段階とを備えたことを特徴とする。また、本発明に係る電気車の制御装置は、上記電気車の制御方法を実施するために、前記電気車を駆動する場合には、前記三相交流電動機を前記スター結線として前記インバータに接続し、前記電気車を回生制御駆動する場合には、前記三相交流電動機を前記デルタ結線として前記インバータに接続するスター・デルタ切換器を備えたことを特徴とする。
【0012】ここで、前記電気制動段階では、前記インバータを3アームオンスイッチングまたは2アームオンスイッチングにより制御するのが好ましい。また、前記電気制動段階では、途中の速度域で、前記三相交流電動機の前記インバータへの接続を前記デルタ結線から前記スター結線に切り換えるのが好ましい。また、前記電気制動段階において、前記三相交流電動機を前記デルタ結線として前記インバータに接続している時、途中の速度域で、前記インバータを前記3アームオンスイッチングによる制御から前記2アームオンスイッチングによる制御に切り換えるのが好ましい。
【0013】さらに、これに続いて、途中の速度域で、前記三相交流電動機の前記インバータへの接続を前記デルタ結線から前記スター結線に切り換えるとともに前記インバータを前記2アームオンスイッチングによる制御から前記3アームオンスイッチングによる制御に切り換えるのが好ましく、さらに、これに続いて、途中の速度域で、前記インバータを前記3アームオンスイッチングによる制御から前記2アームオンスイッチングによる制御に切り換えるのが好ましい。なお、前記電気制動段階において、前記三相交流電動機が前記デルタ結線として前記インバータに接続されており、前記インバータが前記2アームオンスイッチングにより制御されている時、さらにこれに続いて、途中の速度域で、前記三相交流電動機の前記インバータへの接続を前記デルタ結線から前記スター結線に切り換えるのが好ましい。
【0014】従って、例えばスター結線時、デルタ結線時共に3アームオンスイッチングによりインバータを制御する場合には、電気制動時には力行時に比べて√3倍の実効電圧を、また、デルタ結線時2アームオンスイッチングによりインバータを制御する場合には、電気制動時には力行時に比べて1.5倍の実効電圧を、三相交流電動機に印加することができ、従来と同様の諸元の三相交流電動機を用いて高速域での電気制動時にも十分な制動トルクを得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明に係る電気車の制御方法および制御装置を添付の図面に示す好適な実施の形態を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明に係る電気車の制御方法の原理を示し、本発明の電気車の制御装置の概略構成を示す概念図であり、図8の従来の電気車の構成に加え、従来の制御装置(図示せず)により制御され、主電動機(三相交流電動機)13のU、V、Wの各相巻線をスター結線もしくはデルタ結線に切り換えるスター・デルタ切換器14を備えている。
【0016】本発明の電気車の制御方法においては、力行時にはスター・デルタ切換器14はスター結線側に制御され、インバータ12は従来と同様、例えば図9の特性図に従って制御される。一般にスター結線負荷の場合には、三相インバータ12は、負荷3相の内1相を入力直流電源の一方に接続し、負荷3相の他の2相を入力直流電源の他方に接続するスイッチング状態を、負荷3相のそれぞれ、および入力直流電源の正負の組合わせの6通りについて、負荷3相を何れも入力直流電源のいずれか一方に接続する零電圧状態を交えて順次切換える、3アームオンスイッチングにより回転する空間電圧ベクトルを発生するよう制御される。
【0017】図2は、このようなスター結線負荷の3アームオンスイッチングを説明する図であり、負荷3相(U,V,W)のスイッチング状態について、直流電源の正側に接続されている状態を+1で、負側に接続されている状態を−1で表し、例えば負荷のU相が正側に、残りのV、W相が負側に接続されているとき、(+1,−1,−1)の様に表している。直流電源電圧をEdとするとき、スイッチング状態が(+1、−1、−1)の場合、図3に示すように、中性点を基準電位にとると、スター結線された主電動機13のU、V、W相の各巻線には、それぞれ2Ed/3、−Ed/3、−Ed/3の電圧が印加される。各相は互いに空間的に120°相違しているので、合成ベクトルは、U相方向に向かう大きさEdの空間電圧ベクトルとなる。従って、例えば図2のV1 欄からV6 欄に示すように、順次スイッチング状態を変化させることにより、反時計回りに回転する電圧ベクトルが生成される。また、V7 およびV0 欄に示すように出力3相を全て直流電源の正側もしくは負側に接続することにより零電圧ベクトルが生成される。
【0018】図4は このような3アームオンスイッチングによるPWM制御の一例を示す波形図である。本例では三角波搬送波と、図4のa相〜c相に示す、三角波搬送波の3倍の周期を持ちそれぞれ位相を120°異にする3つの正弦波を用いてスイッチング信号を生成している。すなわち本例では、a相正弦波信号波≧三角搬送波なら、as =1a相正弦波信号波<三角搬送波なら、as =−1となるように、各相について制御信号as 、bs 、cs を生成し、この制御信号as 、bs 、cs を用いて、それぞれが1の場合、出力U、V、W各相を直流電源の正側に接続し、それぞれが−1の場合にU、V、W各相のそれぞれを直流電源の負側に接続するようインバータ12を制御し、図2に示すV0 〜V7 の各電圧ベクトルを生成している。
【0019】主電動機13の回転周波数をfvとするとき、例えば図9の定トルク領域91では、正弦波信号波の周波数fは、すべり周波数fs=f−fv=一定(const)(図10、A点)を保つよう制御される。また、正弦波信号波の振幅は 回転周波数fvの上昇に従って三角搬送波の振幅まで増加するよう制御され、零電圧ベクトルV7 、V0 のパルス幅が減少し、主電動機13に印加される実効電圧Eが上昇する。正弦波信号波の振幅が三角搬送波の振幅に達した時点で零電圧ベクトルV7 、V0 のパルス幅は0となる。この時、主電動機13の各相に印加される電圧の合成ベクトルの大きさは直流電源電圧Edと等しいので、2相換算した実効電圧Eの最大値Emは、(2/3)1/2 Edとなる。
【0020】定電力領域92では、正弦波信号波の周波数fをさらに増加することにより、すべり周波数fs=f−fvが、停動トルクに向けて増加され、特性領域93では、すべり周波数fsは図10、B点に達した時点で保持される。
【0021】一方、正弦波信号波の周波数fを回転周波数fvより低く、例えばすべり周波数fs=f−fv= const(図10、C点)<0なるよう制御することにより、主電動機13より制動トルクを発生し電気制動が行われる。さらに 本発明に係る電気車の制御方法では、電気制動時、スター・デルタ切換器14はデルタ結線側に制御される。従って、インバータ12を力行時と同様に3アームオンスイッチングにより制御する場合には、直流電源電圧をEdとするとき、スイッチング状態が(+1、−1、−1)の場合、図5に示すように、デルタ結線された主電動機13のU、V、W相の各巻線にはそれぞれEd、0、−Edの電圧が印加される。各相は互いに空間的に120°相違しているので、合成ベクトルとして、V相に直角な方向に向かう大きさ√3Edの空間電圧ベクトルが得られる。従って、2相換算した実効電圧Eの最大値Emは、√2Edとなり、力行時の√3倍の実効電圧を印加することができ、従来の制御方式に比べて、3倍の制動トルクを得ることができる。
【0022】以上、電気制動時インバータ12を力行時と同様に3アームオンスイッチングにより制御する実施例について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば負荷3相のうち、1相を直流電源の正側に接続し、他の1相を直流電源の負側に接続し、残りの1相を中立に制御する2アームオンスイッチングにより、インバータ12を制御することとしてもよい。
【0023】2アームオンスイッチングでは、直流電源負荷3相(U,V,W)のスイッチング状態を、直流電源の正側に接続されている状態を+1、負側に接続されている状態を−1、中立状態を0で表すとき、例えば(+1、0、−1)、(0、+1、−1)、(−1、+1、0)、(−1、0、+1)、(0、−1、+1)および(1、−1、0)の各スイッチング状態を順次切換えて回転する電圧ベクトルを発生する。また(0、0、0)のスイッチング状態により零電圧ベクトルを生成する。
【0024】直流電源電圧をEdとするとき、例えばスイッチング状態が(+1、0、−1)の場合、図6に示すように、デルタ結線された主電動機13のU、V、W相の各巻線にはそれぞれEd、−Ed/2、−Ed/2の電圧が印加される。各相は互いに空間的に120°相違しているので、合成ベクトルとして、U相方向に向かう大きさ3Ed/2の空間電圧ベクトルが得られる。従って、2相換算した実効電圧Eの最大値Emは、(3/2)1/2 Edとなり、力行時の1.5倍の実効電圧を印加することができ、従来の制御方式に比べて、2.25倍の制動トルクを得ることができる。
【0025】なお、上述した例では、電気制動時には、スター・デルタ切換器14をデルタ結線側に制御し、インバータ12を力行時と同様に3アームオンスイッチングまたは2アームオンスイッチングにより制御することにより、力行時に比べて大きな実効電圧レベルを得、大きな制動トルクを得て電気車の制動を行っているが、本発明はこれに限定されず、この制動により、電気車の速度が低下していく過程で必要な制動トルクや実効電圧レベルも低下していくので、途中の速度域で、スター・デルタ切換器14をデルタ結線側からスター結線側に切換制御し、適正な制動トルクや適正な実効電圧レベルを得るようにしても良い。
【0026】また、上述した例のように、電気制動時に、スター・デルタ切換器14をデルタ結線側に制御し、インバータ12を力行時と同様に3アームオンスイッチングにより制御している場合には、同様に電気車の速度が低下していく過程での途中の速度域で、インバータ12の3アームオンスイッチングによる制御を2アームオンスイッチングによる制御に切り換えて、適正な制動トルクや適正な実効電圧レベルを得るようにしても良い。さらに、この状態から、さらに、電気車の速度が低下していく過程での途中の速度域で、上述したように、スター・デルタ切換器14をデルタ結線側からスター結線側に切換制御するとともに、インバータ12の2アームオンスイッチングによる制御を3アームオンスイッチングによる制御に切り換えても良いし、さらに、これに続けて、インバータ12の3アームオンスイッチングによる制御を2アームオンスイッチングによる制御に切り換えても良い。または、上述したスター・デルタ切換器14をデルタ結線側に、インバータ12を2アームオンスイッチングに切り換えて制御している電気制動状態から、電気車の速度が低下していく過程での途中の速度域で、直接、スター・デルタ切換器14をデルタ結線側からスター結線側に切換制御しても良い。このように、スター・デルタ切換器14によるデルタ結線側からスター結線側への切り換え、およびインバータ12の3アームオンスイッチングによる制御と2アームオンスイッチングによる制御との間の切り換えを組み合わせることにより、電気車の速度の低下に合わせて、適正な制動トルクや適正な実効電圧レベルを得るようにしても良い。
【0027】以上、一つのインバータ12に一つまたは複数接続される主電動機13の接続を一つのスター・デルタ切換器14で切り換えるとして説明したが、図7に示すように直/並列される主電動機13を適宜グループ分けしてグループ毎にスター・デルタ切換器14を設けてもよい。図7(a)は並列接続された4個の主電動機13のそれぞれにスター・デルタ切換器14を設けた例を、図7(b)は2個づつ並列接続された2組の主電動機13の各組毎にスター・デルタ切換器14を設けた例を、また図7(c)は2個づつ直並列接続された2組の主電動機13を一つのスター・デルタ切換器14で切り換える例を示す。
【0028】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に係る電気車の制御方法および制御装置によれば、力行時には主電動機をスター結線としてインバータ制御し、電気制動時には主電動機をデルタ結線としてインバータ制御することにより、電気制動時には、力行時に比べて1.5〜√3倍高い実効電圧を主電動機に印加することができ、従来と同等の諸元の主電動機を用いて高速域での電気制動時にも十分な制動トルクを得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【出願日】 平成12年8月10日(2000.8.10)
【代理人】 【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔 (外1名)
【公開番号】 特開2002−58108(P2002−58108A)
【公開日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願番号】 特願2000−242437(P2000−242437)