| 【発明の名称】 |
車両の走行制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】中林 精一
【氏名】瀬尾 宣英
【氏名】高椋 健治
【氏名】若山 敬平
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| 【要約】 |
【課題】減速時に後輪モータにより後輪の回生制動を行なう回生制動手段を備えたものであって、後輪のスリップが推定(予測または判定も含む)された時、上記回生制御手段による後輪の回生制動度合を非推定時よりも減少させることで、スリップの非発生時である通常の減速時は、後輪モータによる回生エネルギの回収を最大限に増大させると共に、スリップ発生時またはスリップ発生の可能性が大きい時は、後輪のスリップを抑制することができる車両の走行制御装置の提供を目的する。
【解決手段】車両の後輪3をモータ駆動する後輪駆動手段2と、減速時には上記モータ2によって後輪13の回生制動を行なう回生制動手段20と、減速時には車両の前輪9に制動力を与える前輪制動手段20とを備えた車両の走行制御装置であって、上記後輪13のスリップ状態を推定する推定手段20と、上記推定手段20により後輪13のスリップが推定された時、上記回生制動手段20による後輪13の回生制動度合を非推定時より減少させる制動制御手段20とを備えたことを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】車両の後輪をモータ駆動する後輪駆動手段と、減速時には上記モータによって後輪の回生制動を行なう回生制動手段と、減速時には車両の前輪に制動力を与える前輪制動手段とを備えた車両の走行制御装置であって、上記後輪のスリップ状態を推定する推定手段と、上記推定手段により後輪のスリップが推定された時、上記回生制動手段による後輪の回生制動度合を非推定時より減少させる制動制御手段とを備えた車両の走行制御装置。 【請求項2】上記前輪は前輪モータに連結されると共に、該前輪モータは後輪モータより小容量に設定された請求項1記載の車両の走行制御装置。 【請求項3】上記前輪はエンジンのみに連結された請求項1記載の車両の走行制御装置。 【請求項4】上記制動制御手段は、スリップ状態の推定時に上記前輪制動手段による前輪の制動度合を増大させる請求項1記載の車両の走行制御装置。 【請求項5】上記前輪モータにはエンジンが連結されると共に、前輪モータと前輪との締結状態を切換える切換手段を備え、上記制動制御手段はスリップ状態の非推定時には、減速中の少なくとも所定期間中に上記切換手段による締結をしゃ断する一方、スリップ状態の推定時には少なくとも上記所定期間中において切換手段による締結を実行する請求項2記載の車両の走行制御装置。 【請求項6】上記推定手段による後輪のスリップ検出時には、スリップの増減に応じて車両の前後振動を抑制すべく、上記回生制動手段による制動度合の増減制御時期と、上記前輪制動手段による制動度合の増減制御時期とを所定時間異ならせるように構成した請求項4記載の車両の走行制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、制動時(減速時)に車輪のスリップを推定すると制動力(ブレーキ力)を弱めることで車輪のスリップを抑制するような車両の走行制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、上述例の車両の走行制御装置としては、例えば特開平8−98313号公報、特開平8−98314号公報および特開2000−108873号公報に記載されたものがある。 【0003】上述の特開平8−98313号公報および特開平8−98314号公報に記載のものは、電動エネルギによって車両を駆動する電動車両の制動装置であって、電動モータで駆動される前輪(駆動輪)と、従動輪としての後輪とを備えると共に、各車輪には油圧制動のためのホイールシリンダを配設し、上記電動モータの回生制動から油圧ABS(アンチスキッドブレーキシステム)制御へ移行する場合に、徐々に回生制動を弱くし、回生制動力がゼロまたはゼロに近似する値になった時、油圧制動に切替えを行なうことで、この切替えに伴なう車速変化の急変を防止するものである。 【0004】また、特開2000−108873号公報に記載のものは、バッテリの電力により駆動力を発生するモータと、内燃機関としてのエンジンとを併用して前輪を走行駆動走行するハイブリッド自動車であって、制動時に車輪のスリップ率が所定値を超えると、この車輪の制動圧を減圧して該車輪のロックを抑制するスリップ抑制手段と、減速時に上述のモータを介して電気エネルギを回収してバッテリを充電するエネルギ回収手段とを備え、スリップ抑制手段によるABS作動時には上記モータの回生制動力を大きくするものである。 【0005】しかしながら、上述の何れの従来技術においても、後輪側での回生と前輪制動とに関する技術思想は開示されていない。ところで、車両の後輪をモータ駆動する4WD車を構成し、減速時には油圧ブレーキに対して応答性が高い上記モータによって後輪の回生制動を行なうと共に、回生エネルギを回収すべく構成した場合、本来、減速時には回生エネルギを充分に回収したいにもかかわらず、減速時の上記回生制動は後輪に対して負のトルク(逆トルク)を与えるために、制動ブレーキが大きくなるので、特に低μ路等においては後輪がスリップしやすくなり、仮に、後輪がスリップすると、車両後部が左右に振れるような挙動が生じて、走行安全性が悪くなる問題点があった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】この発明は、減速時に後輪モータにより後輪の回生制動を行なう回生制動手段を備えたものであって、後輪のスリップが推定(予測または判定も含む)された時、上記回生制御手段による後輪の回生制動度合を非推定時よりも減少させることで、スリップの非発生時である通常の減速時は、後輪モータによる回生エネルギの回収を最大限に増大させると共に、スリップ発生時またはスリップ発生の可能性が大きい時は、前輪のスリップよりも、車両の挙動に対して影響の大きい、後輪のスリップを抑制することができる車両の走行制御装置の提供を目的する。 【0007】 【課題を解決するための手段】この発明による車両の走行制御装置は、車両の後輪をモータ駆動する後輪駆動手段と、減速時には上記モータによって後輪の回生制動を行なう回生制動手段と、減速時には車両の前輪に制動力を与える前輪制動手段とを備えた車両の走行制御装置であって、上記後輪のスリップ状態を推定する推定手段と、上記推定手段により後輪のスリップが推定された時、上記回生制動手段による後輪の回生制動度合を非推定時より減少させる制動制御手段とを備えたものである。 【0008】上記構成の前輪制動手段は、エンジンブレーキまたは前輪モータの回生あるいは油圧ブレーキにより構成することができ、後輪のスリップ状態を推定する推定手段は、低いμ路を予測または検出する手段あるいは実スリップ率を検出する手段を含む。 【0009】上記構成により、スリップの非推定時(非予測時または非判定時)としての通常の減速時には、上記回生制動手段が後輪を駆動するモータによって回生制動を行なうので、この後輪モータによる回生エネルギの回収を最大限に増大させることができる。 【0010】しかも、上記推定手段がモータ駆動による後輪のスリップ状態を推定(予測または判定)すると、上述の制動制御手段は上記回生制動手段による後輪の回生制動の度合を非推定時に対して減少させるので、スリップ推定時には後輪のスリップを抑制して、走行安定性を確保することができる。 【0011】この発明の一実施態様においては、上記前輪は前輪モータに連結されると共に、該前輪モータは後輪モータより小容量に設定されたものである。上記構成の前輪モータは発電機(例えば最大出力10KW程度のもの)やエンジンに直結されたエンジンスタータまたは電動モータにより構成することができる。また上記構成の車両は電気自動車(いわゆるEV)やハイブリッド車を含む。上記構成により、主に後輪から後輪モータを回生駆動させる場合に有効となる。 【0012】この発明の一実施態様においては、上記前輪はエンジンのみに連結された者である。上記構成は、前輪モータを含まない構成を意味する。上記構成により、主に後輪から後輪モータを回生駆動させる場合に有効となる。 【0013】この発明の一実施態様においては、上記制動制御手段は、スリップ状態の推定時に上記前輪制動手段による前輪の制動度合を増大させるものである。上記構成により、減速時において上述の推定手段で後輪のスリップ状態が推定(予測または判定)された時、上記制動制御手段は車両の前輪に対して制動力を与える前輪制動手段による前輪の制動度合を増大させる。この結果、スリップ推定時には後輪側の回生制動の度合が減少されるが、この場合に、前輪での制動を行なうことができ、減速時における車両の制動性を維持することができる。 【0014】この発明の一実施態様においては、上記前輪モータにはエンジンが連結されると共に、前輪モータと前輪との締結状態を切換える切換手段を備え、上記制動制御手段はスリップ状態の非推定時には、減速中の少なくとも所定期間中に上記切換手段による締結をしゃ断する一方、スリップ状態の推定時には少なくとも上記所定期間中において切換手段による締結を実行するものである。 【0015】上記構成の所定期間とは、減速要求が比較的高い減速初期に特定することができる。上記構成により、特に車速が中又は小における通常の減速時に相当するスリップ状態の非推定時においては切換手段にて前輪モータと前輪との締結がしゃ断されているので、後輪から後輪モータのみを回生駆動させることができ、このような条件下でスリップが予測または判定されると、少なくとも上記所定期間中において切換手段で前輪モータと前輪とが締結されるので、前輪入力により切換手段を介してエンジンをかけて、エンジンブレーキをきかせ、エンジンに連結された前輪モータで回生制動を行なうことができる。この結果、前輪モータの回生駆動により発生した回生エネルギの回収ができ、車両の制動性とエネルギ回収性とを向上させることができる。 【0016】この発明の一実施態様においては、上記推定手段による後輪のスリップ検出時には、スリップの増減に応じて車両の前後振動を抑制すべく、上記回生制動手段による制動度合の増減制御時期と、上記前輪制動手段による制動度合の増減制御時期とを所定時間異ならせるように構成したものである。 【0017】上記構成により、推定手段が後輪のスリップを検出した時、後輪側の回生制動手段による制動度合の増減制御時期と前輪側の制動手段による制動度合の増減制御時期とが所定時間異なるようなブレーキ制御が実行される。この結果、スリップ抑制制御による車両の前後振動を、前輪と後輪との制動制御によって抑止することができる。 【0018】 【実施例】この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。図面は車両の走行制御装置を示すが、この実施例では車両の走行制御装置をハイブリッド車に適用した例を示すので、まず図1を参照して、ハイブリッド車の機械的構成について説明する。 【0019】[ハイブリッド車の機械的構成]このハイブリッド車はバッテリ1から供給される電力により駆動される後輪モータ2(電動モータのことで以下単に後輪モータと略記する)と、ガソリン等の燃料の爆発力により駆動されるエンジン3とを併用して走行し、後述する車両の走行状態に応じて、後輪モータ2のみによる走行、エンジン3のみによる走行、または、これら両者2,3による走行が実現される。 【0020】エンジン3はトルクコンバータ4を介して切換手段としてのクラッチ5の締結により無段変速機6(いわゆるCVT)に駆動力を伝達する。無段変速機6は、エンジン3から入力された駆動力を走行状態に応じて(または運転者の操作により)所定のトルクおよび回転数に変換して、ギヤトレイン7およびフロントディファレンシャル8を介して前輪9,9に伝達する。また、エンジン3はバッテリ1を充電するために発電機10(前輪モータ)を駆動する。ここで、上記無段変速機に代えて自動変速機(いわゆるAT)を用いてもよいことは勿論である。 【0021】後輪モータ2はバッテリ1から供給される電力により駆動され、ギヤ11およびリヤディファレンシャル12を介して後輪13,13に駆動力を伝達する。エンジン3は直噴型ガソリンエンジンあるいは吸気バルブの開弁タイミングを遅延させる高熱費タイプのものが搭載され、後輪モータ2は例えば最大出力20KWのIPM同期式モータ(交流モータ)が使用され、発電機10は例えば最大出力10KWのものが使用され、バッテリ1は例えば最大30KWのニッケル水素電池が搭載される。 【0022】発電機10は、通常の場合はエンジン始動時にバッテリ1から電力が供給されてエンジン3をクランキングさせる。この発電機10として最大出力10KWのものを使用すると、従前のオルタネータ(最大出力5KW程度)と異なり、排ガス規制および燃費向上を目的としてアイドルストップさせた後に、早期にエンジン3を始動して、エンジン回転数を早く立ち上げることができる。 【0023】また、この実施例では、上述の後輪モータ2のみの駆動時には後輪13,13が駆動輪となり、前輪9,9が従動輪となる一方、上述のエンジン3のみの駆動時には前輪9,9が駆動輪となり、後輪13,13が従動輪となる。 【0024】一方、制御手段としての統括制御ECU20(以下単にECUと略記する)はCPU、ROM14、RAM15(図2参照)、インタフェース回路およびインバータ回路等を含み、エンジン3のスロットル開度TVOや点火時期や燃料噴射量等をコントロールすると共に、後輪モータ2の出力トルクや回転数Nm等をエンジン3のトルク変動や無段変速機6の変速ショックを吸収するようにコントロールする。また、ECU20は、エンジン3の作動時に発電機10にて発電された電気をバッテリ1に充電させたり、バッテリ1で後輪モータ2を駆動するように制御する。 【0025】この実施例のハイブリッド自動車にはABS(アンチスキッド・ブレーキ・システム)が搭載されている。ABSは、前輪9,9および後輪13,13に配設されたホイールシリンダに対してブレーキ液圧を供給することで、液圧ブレーキ動作を行うブレーキ装置16,17,18,19と、各ブレーキ装置16〜19へのブレーキ液圧を制御するブレーキ制御CPU30を備える。 【0026】ブレーキ制御CPU30は、ECU20がドライバのブレーキ操作時(減速時)に、各車輪のスリップ率から車輪がロックしそうな状態か否かを検出し、この状態を検出すると車輪の制動力(ブレーキ力)を弱めて車輪のロックを抑制しながら目標値にコントロールする。 【0027】[ハイブリッド車の電気的構成]図2は、この実施例のハイブリッド車の電気的構成を示すブロック図である。図2に示すように、ECU20には、車速を検出する車速センサ21からの信号、エンジン3の回転数Neを検出するエンジン回転数センサ22からの信号、エンジン3に供給される電圧を検出する電圧センサ23からの信号、エンジン3のスロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサ24からの信号いわゆるTVO、ガソリン残量センサ25からの信号、バッテリ1の蓄電残量を検出する蓄電残量センサ26からの信号、セレクトレバーによるシフトレンジを検出するシフトレンジセンサ27からの信号、ドライバによるアクセルペダルの踏込量を検出するためのアクセルストロークセンサ28からの信号、スタートスイッチ29からの信号等を入力してエンジン3に対してスロットル開度TVOや点火時期や燃料噴射量の制御等を行うと共に、後輪モータ2への電力供給量の制御等を行う。また、ECU20は、上記各種センサ信号から車両の運転状態に関するデータ、車速、エンジン回転数Ne、電圧、ガソリン残量、バッテリの蓄電残量、シフトレンジ、電力供給系等をLCD等で構成された表示部31を介して表示させる。 【0028】ブレーキ制御CPU30はプログラム記憶手段としてのROM32、データ記憶手段としてのRAM33を有し、このCPU30はECU20と双方向で通信可能に接続され、車輪速センサ34からの車輪速信号を入力して、各車輪速から推定演算される車体速VBと現在の車輪速から各車輪のスリップ量(率)を演算し、駆動輪と従動輪の車輪速変化量(率)から駆動輪がスリップしそうな状態か否かを検出し、この状態を検出するとエンジン3または後輪モータ2の出力トルクを低下させるか、あるいは目標スリップ率に収束するように制動圧をコントロールして駆動輪の加減速時のスリップを抑制する。 【0029】なお、姿勢制御装置を搭載する場合には、ヨーレートセンサ35、横方向加速度センサ36、ステアリング蛇角センサ37から各信号を入力すべく構成してもよい。 【0030】[基本運転モード]上述のECU20(制御手段)は車速Vやアクセル開度αまたはバッテリ充電量BC等に基づいて次の各種の基本運転モードを設定する。 【0031】[始動時]車両の始動時には、バッテリ1の電力を後輪モータ2に供給して、この後輪モータ2を駆動して、後輪13,13を走行させる。 【0032】[要求トルクが小さい時または車速が小さい時]要求トルクが小さい時または車速が小さい時には、バッテリ1の電力を後輪モータ2に供給して、この後輪モータ2を駆動して、後輪13,13を走行させる。 【0033】[要求トルクが大きい時または車速が大きい時]要求トルクが大きい時または車速が大きい時には、まずバッテリ1の電力を発電機10に供給し、この発電機10をモータ駆動させて、図1に示すプーリとベルトまたはスプロケットとチェーン等の動力伝達手段38を介してエンジン3をスタート(クランキング)させ、エンジン3のスタート後(完爆後)においてはエンジン出力で前輪9、9を走行させる。 【0034】この場合,バッテリ1から後輪モータ2にも電力を供給して,後輪モータ2を比較的小さいトルクで駆動して,この後輪モータ2の出力で後輪13,13を走行させてもよい。つまり前輪9,9の走行時に後輪13,13を引き摺らないようにすることが望ましい。 【0035】[減速時で、かつ車速が大きい時]減速時で、かつ車速が大きい時(例えば40km/hをしきい値として車速の大小を判定)には、後輪13,13からの車輪入力で後輪モータ2を回生駆動し、この回生エネルギをバッテリ1に供給し、かつ高回転時には負のトルクが小さいというモータの特性を考慮して、エンジンブレーキをきかせて、発電機10を回生駆動し、この回生エネルギをバッテリ1に供給する。 【0036】[減速時で、かつ車速が中または小の時]減速時で、かつ車速がしきい値(例えば40km/h)以下の時には、後輪13,13からの車輪入力で後輪モータ2を回生駆動し、この回生エネルギをバッテリ1に供給する。 【0037】[バッテリ充電量が小さくエンジン運転中の時]バッテリ1の充電量が小さく、かつエンジン運転中の時には、動力伝達手段38を介して発電機10を回生駆動し、この回生エネルギをバッテリ1に供給する。 【0038】[バッテリ充電量が小さくエンジン停止中の時]バッテリ1の充電量が小さく、かつエンジン停止中(車両停車中)の時には、クラッチ5のOFF条件下においてバッテリ1から発電機10に電力を供給し、この発電機10をモータ駆動させて、エンジン3をクランキングし、エンジン3のスタート後にはエンジン3の出力で動力伝達手段38を介して発電機10を回生駆動して、この回生エネルギをバッテリ1に供給する。以上が、ECU20により設定される基本運転モードの説明である。 【0039】しかも、上述のECU20は、減速時には後輪モータ2によって後輪の回生制動を行なう回生制動手段(図3に示すフローチャートのステップS4と、ステップS7のYES判定参照)と、減速時には車両の前輪9,9に制動力を与える前輪制動手段(図3に示すフローチャートのステップS16参照)と、後輪13,13のスリップ状態を推定(予測または判定)する推定手段(図3に示すフローチャートのステップS9,S10参照)と、この推定手段により後輪13,13のスリップが推定(予測または判定)された時、上記回生制動手段による後輪13,13の回生制動度合を非推定時より減少させる、つまりブレーキ力を弱める制動制御手段(図3に示すフローチャートのステップS11参照)と、を兼ねる。 【0040】また、上述の制動制御手段は、スリップ状態の推定時に上記前輪制動手段による前輪の制動度合を増大させる(図7に示すタイムチャートのGTbase参照)。さらに上述の制動制御手段は、スリップ状態の非推定時には、減速中の少なくとも所定期間中(所定期間とは減速要求が比較的高い減速初期を意味する)に切換手段としてのクラッチ5による前輪9とエンジン3との締結をしゃ断(図7にタイムチャートで実際のクラッチのON,OFF状態を示すクラッチOFFの部分参照)する一方、スリップ状態の推定時には少なくとも上記所定期間中においてクラッチ5による前輪9とエンジン3との締結を実行(図7にタイムチャートで示すクラッチON、エンジンブレーキONの部分参照)する。 【0041】加えて、上述の推定手段(ステップS9,S10参照)による後輪13のスリップ検出時には、スリップの増減に応じて車両の前後振動を抑制すべく、上記回生制動手段による制動度合(図7のフィードバック制御のMT参照)の増減制御時期と、上記前輪制動手段による制動度合(図7のフィードバック制御中のGT参照)の増減制御時期とを所定時間異ならせるように構成している。 【0042】すなわち、図7に示すタイムチャートにおいてモータの制御トルクMTの波状の波形部分における変化の状態と、同図の発電機の制御トルクGTの波状の波形部分における変化の状態とが互に向きが逆になるように構成されており、フィードフォワード制御からフィードバック制御に移行した時、このフィードバック制御中におけるモータの制御トルクMTと発電機の制御トルクGTとで相反する制御を実行することで、MTの増減制御時期とGTの増減制御時期とを所定時間異ならせたものである(図4に示すフローチャートのステップS36参照)。 【0043】このように構成したハイブリッド車の走行制御装置の作用を、図3、図4に示す一連のフローチャートを参照して、以下に詳述する。なお、以下の説明に用いる符号の内容は次の通りである。 【0044】α…アクセル開度Ne…エンジン回転数Nm…モータ回転数SL…スリップ率SLO…制御開始のしきい値ΔSL…スリップ率の変化率ΔSLO…スリップ率の変化率のしきい値SLst…初期スリップ率ΔSLst…スリップ開始初期のスリップ率の変化率ΔSLsto…しきい値SLα…補正値SLA…目標フィードバック値(目標スリップ率)SLD…スリップ率SLと目標フィードバック値SLAとの差SLmax…極大スリップ値SLmin…極小スリップ値V…車速VB…車体速MT…後輪モータの制御トルクMT1,MT2…要求トルク(但し、MT1>MT2)MTb…後輪モータの制御トルクベース値MTα…補正値T1…制御開始時点からの時間を計時するカウンタT0…制御終了値GT…発電機の制御トルクGTbase…発電機の制御トルクベース値RM2,IM2,DM2…後輪モータのフィードバックゲインで、BM2は比例ゲイン、IM2は積分ゲイン、DM2は微分ゲインGTF/B…発電機の制御トルクフィードバック値PG,IG,FG…発電機のフィードバックゲインで、PGは比例ゲイン、IGは積分ゲイン、DGは微分ゲイン但し、PG<PM2、IG<IM2、DG<DM2【0045】この実施例ではスリップ発生時に該スリップを収束させるためスリップ初期においてはフィードフォワード制御を実行し、スリップ後期においてはフィードバック制御を実行すべく構成している。 【0046】[スリップ初期のフィードフォワード制御]図3に示すフローチャートのステップS1で、ECU20は乗員によりスタートスイッチ29がON操作されるのを待ち、スタートスイッチ29のON時にのみ次のステップS2に移行する。 【0047】ステップS2で、ECU20は図2に示す各センサからの必要な各種のデータを入力する。次に、ステップS3で、ECU20は車速Vやアクセル開度αやバッテリ充電量BC等に基づいて前述の基本運転モードを設定する。 【0048】次に、ステップS4で、ECU20は後輪モータ2の基本制御トルクMT(詳しくは図7に示す制御トルクベース値MTb)を演算し、次のステップS5で、ECU20はエンジン3の基本制御トルクETを演算する。 【0049】図5に示すようにエンジン3の基本制御トルクETは車速Vとアクセル開度αから設定され、図6に示すように後輪モータ2の基本制御トルクMTはモータ回転数Nmで回転させるための電力量から設定される。 【0050】次に、ステップS6で、ECU20は減速中か否かを判定し、YES判定時(減速中の時)には次のステップS7に移行する一方、NO判定時にはステップS22にスキップする。 【0051】このステップS7で、ECU20は後輪モータ2の制御トルクMTが負か否かを判定し、YES判定時(後輪モータ2の回生中)には次のステップS8に移行する一方、NO判定時にはステップS22にスキップする。 【0052】上述の後輪モータ2はバッテリ1の直流電源をチョッパ回路、インバータ回路を用いて変換された三相交流電源で駆動され、後輪モータ2に対する供給電流の大きさや周波数(つまり回転数)または位相インバータ制御して、制御トルクMTを調整して、負のトルクおよび回生エネルギを得るものである。 【0053】上述のステップS8で、ECU20は各車輪速から推定演算される車体速VBと駆動輪つまり後輪13,13の現在の車輪速から各車輪のスリップ率(量)SLを演算すると共に、このスリップ率SLを微分したスリップ率の変化率ΔSLを演算する。 【0054】次に、ステップS9で、ECU20は低μ路判定を実行する。この場合、ECU20はスリップが開始した初期の変化率ΔSLst(但し、スリップが図8に示す所定値SLstとなったスリップ初期の変化率)を求めると共に、予め設定された変化率のしきい値ΔSLstoと上述の変化率ΔSLstとを比較して、低μ路か高μ路かを判定する。 【0055】つまり、ΔSLst≦ΔSLstoの時は低μであると判定され、ΔSLst>ΔSLstoの時は高μであると判定される。なお、このような低μ路判定に代えて、センサにより降雨時か否かを判定してもよく、ナビゲーション装置によりスリップしやすい道路を走行中か否かを予測してもよい。 【0056】次にステップS10で、ECU20は先のステップS9の判定結果に基づいて、低μ路か否かを判定し、YES判定時には次のステップS11に移行する一方、NO判定時には別のステップS12に移行する。 【0057】上述のステップS11で、ECU20は減速中かつ後輪モータ2の回生中において後輪のスリップ状態が推定されたことに対応して、制御トルクMTを補正する。 【0058】つまり、制御トルクベース値MTb(負の値)に対して補正地値Mα(図6、図7参照)を加算してブレーキ力を弱めるような補正後の制御トルク(MT=MTb+Mα)を求める。この補正は後輪モータ2に対する電流の大きさや周波数または位相を制御することで実行される。 【0059】次にステップS13で、ECU20は低μ路判定に基づいてABS(但し、この場合のABSは従前の油圧ブレーキによるABSと異なり、モータによるスリップ制御を意味する)制御開始のしきい値を変更する。つまり予め設定された制御開始のしきい値SLOに補正値SLα(図8参照)を加算して変更後の開始しきい値(SLO=SLO+SLα)を求める。これは早目にスリップを検出して走行安定性を図るために有効となる。 【0060】一方、上述のステップS12では、予め設定された制御開始のしきい値SLOをそのまま用いるように設定する。なお、上述のステップS10では低μ路判定を実行し、YES判定時に後輪モータ2の制御トルクMTを補正(ステップS11参照)すべく構成したが、これに代えて、高いμ路高速を判定して制御トルクMTを補正するように構成してもよいが、この場合には走行安定性向上のためにABS制御開始のしきい値SLOは補正しないことが望ましい。 【0061】次にステップS14で、ECU20はクラッチ5がONか否かを判定し、NO判定時(クラッチOFF時)には次のステップS15に移行して、このステップS15で、ECU20はクラッチ5をONにする一方、上述のステップS14でのYES判定時(クラッチON時)には別のステップS16に移行し、このステップS16で、ECU20は前輪9の制動力を強めるべく前輪モータ回生モードに設定する。つまり発電機の制御トルクベース値GTbase(負の値で、図7のタイムチャート参照)を設定する。 【0062】次にステップS17で、ECU20はスリップ率SLが所定しきい値SLOを下回わったか否かを判定する(図7参照)。このステップS17でスリップ率SLが所定しきい値SLOを下回わったとYES判定されると次のステップS18に移行し、NO判定(SL>SLOと判定)されると別のステップS23(図4参照)に移行する。 【0063】ステップS18では、スリップ率SLの変化率ΔSLが所定しきい値ΔSLOを下回わったか否かを判定する。ステップS18で変化率ΔSLが所定しきい値ΔSLOを下回わったとYES判定されると次のステップS19に移行する。スリップ率SLの変化率ΔSLは、図7に示すように、スリップ率SLが所定しきい値SLOを下回わった初期段階におけるスリップ率SLの変化度合(傾き)を表わし、変化率ΔSLが所定しきい値ΔSLOを下回わったならばスリップ率SLが急変していると判定される。ステップS18で変化率ΔSLが所定しきい値ΔSLOを下回わっていないとNO判定された時には、スリップ率SLの偏差が小さくなっているので別のステップS20に移行する。 【0064】ステップS19で、ECU20はスリップ率SLと所定しきい値SLOとの偏差が大きいスリップ初期と判定して、制動力を弱めて後輪13を回わすように後輪モータ2の制御トルクMTを要求トルクMT1(正の値)に設定する(図7参照)。 【0065】一方、ステップS20ではスリップ率SLの偏差が小さくなっているので、ECU20は後輪モータ2の制御トルクMTを要求トルクMT2(但し、MT2<MT1で、この実施例では負の値)に設定する(図7参照)。次にステップS21で、ECU20はカウンタT1をインクリメント(カウントアップのこと)して、ABS制御開始時点からの時間を計時する。 【0066】次にステップS22で、ECU20はエンジン3の制御トルクETを実現するために、スロットル開度を調整すると共に、検出された吸入空気量に対して空燃比A/F=14.7(理論空燃比)となるような燃料噴射量を設定して、吸気行程から圧縮行程において各気筒に供給し、圧縮上死点TDC付近で点火プラグにより点火させる。また、後輪モータ2の制御トルクMTを実現するために、インバータから後輪モータ2に供給する電流値および周波数を調整する。さらに、無段変速機6および発電機10を駆動する。 【0067】[スリップ後期のフィードバック制御]図4に示すフローチャートのステップS23で、ECU20はカウンタT1がゼロか否かを判定し、カウンタT1のカウント中(NO判定時)には次のステップS24に移行し、カウンタT1の非カウント中つまりT1=0の時(YES判定時)には別のステップS26に移行する。 【0068】上述のステップS24で、ECU20はカウンタT1が所定値T0(ABS制御終了時間に相当)を超えたか否かを判定する。ステップS24でカウンタT1が所定値T0を超えたとYES判定された時には、制御を終了してステップS26に移行する。 【0069】またカウンタT1が所定値T0を超えてない時(NO判定)には、制御中なので、ステップS25に移行し、このステップS25で、ECU20は制動中か否かを判定する。 【0070】ステップS25で制動中であるとYES判定されると、次のステップS27に移行し、非制動中であると判定(NO判定)されると上述のステップS26に移行する。 【0071】ステップS26では、カウンタT1がゼロ、またはカウンタT1が所定値T0を経過したこと、あるいは非制動中であることに対応して、カウンタT1をゼロにリセットした後に図3のステップS22に移行する。 【0072】一方、ステップS27では、スリップ率SLを収束させるために、ECU20は目標スリップ率SLA(図7参照)を設定する。次に、ステップS28で、ECU20はスリップ率SLと目標値SLAとの差SLDを演算する(SLD=SL−SLA)。 【0073】次にステップS29で、ECU20は極大スリップ値SLmax(図7参照)であるか否かを判定する。ステップS29で極大スリップ値SLmaxであるとYES判定された時には、ステップS30に移行し、このステップS30で、ECU20はRAM15の所定エリアに最新の極大スリップ値SLmaxを記憶する。また、ステップS29で極大スリップ値SLmaxでないと判定(NO判定)された場合にはステップS31に移行し、このステップS31で、ECU20は極小スリップ値SLmin(図7参照)であるか否かを判定する。 【0074】ステップS31で極小スリップ値SLminであるとYES判定されると、ステップS32に移行し、このステップS32で、ECU20はRAM15の所定エリアに最新の極小スリップ値SLminを記憶する。また、ステップS31で極小スリップ値SLminでないと判定(NO判定)された場合には、ステップS33に移行し、後輪モータ2の目標スリップ率SLAへのPIDフィードバック制御に用いるフィードバック制御値(トルク)MTを演算するための、比例ゲインPM2、積分ゲインIM2、微分ゲインDM2を設定する。 【0075】ステップS34で、ECU20はスリップ率SLと目標値SLAとの差SLDに応じてスリップ率SLを目標値SLAに収束させるためのPIDフィードバック制御に用いる後輪モータ2のフィードバック制御値(トルク)MTを演算する。このフィードバック制御値MTは、先のステップS33で設定された比例ゲインPM2、積分ゲインIM2、微分ゲインDM2を設定して次の[数1]により演算される。 【0076】[数1]MT=PM2・SLD+IM2・∫SLD+DM2・d/dt・SLD【0077】次に、ステップS35で、ECU20は前輪モータ回生モードの設定(ステップS16参照)が完了しており、かつクラッチ5がONになっているか否かを判定し、YES判定時には次のステップS36に移行し、NO判定時には別のステップS37に移行する。 【0078】上述のステップS37で、ECU20はクラッチ5をONにする一方、上述のステップS36では、ECU20はステップS34で求められた後輪モータ2のフィードバック制御値(トルク)MTに基づいて、前輪モータとして作用するところの発電機10の制御トルクGTを設定する。 【0079】この制御トルクGTは、後輪モータ2の制御トルクMTが極大値の時はトルクGTが極小値となるように、また後輪モータ2の制御トルクMTが極小値の時はトルクGTが極大値となるように設定される。このため、まず、次の[数2]に基づいて発電機10の制御トルクフィードバック値GTF/Bを求める。 【0080】[数2]GTF/B=PG・(−SLD)+IG∫(−SLD)+DG・d/dt・(−SLD)但し、PGは比例ゲインIGは積分ゲインDGは微分ゲインSLDはスリップ率SLと目標値SLAとの差また前輪の制動変化をゆるやかにし、走行安定性の向上を図るために、PG<PM2、IG<IM2、DG<DM2に設定する。 【0081】次に上述の制御トルクフィードバック値GTF/BをGTbaseに加算して発電機10の制御トルクGTを求める。つまりGT=GTbase+GTF/Bここで、上述のフィードバックゲインをPG<PM2、IG<IM2、DG<DM2に設定する構成に代えて、フィードバックゲインを仮にPG=PM2、IG=IM2、DG=DM2のように同一に設定しても、発電機10の最大出力10KWは後輪モータ2の最大出力20KWよりも小さいので、制御トルクGTそれ自体は必然的に小さくなる。 【0082】このようにして、ステップS36で発電機10の制御トルクGTを求めると、図7にタイムチャートで示すように、フィードバック中における後輪モータ2の制御トルクMTと発電機10の制御トルクGTとはトルク変化の向きが互に逆向きになるので、スリップ抑制制御による車両の前後振動を、トルクGTによる前輪9の制動制御と、トルクMTによる後輪13の制動制御とによって抑止することができる。なお図4の各ステップS36,S37での処理後には図3のステップS21に移行する。 【0083】図3、図4のフローチャートにより説明した走行制御のあらましを、図7に示すタイムチャートを参照して述べると、時点t1で減速が開始され、この減速時にはクラッチ5をOFFにすると共に、後輪モータ2の制御トルクベース値MTb(負の値)を設定して、該モータ2の回生駆動によりエネルギを回収する。 【0084】また時点t2で低μ路が推定されると、補正値Mαに相当する分、後輪モータ2のブレーキ力(回生制動力)を弱めると共に、クラッチON信号により所定タイムラグ後の時点t3でクラッチ5を実際に接続し、クラッチ5のONの間はエンジンブレーキにより前輪9の制動力を強めると共に、発電機10の制御トルクGTをベース値GTbaseに設定して、この負のトルクにより前輪9にブレーキをかけ、かつ前輪モータとして作用する発電機10の回生駆動により発生した回生エネルギを回収する。 【0085】さらにフィードフォワード制御においては要求トルクMT1,MT2によりスリップを収束させる一方、時点t4〜時点t5までのフィードバック制御においては後輪モータ2の制御トルクMTと発電機10の制御トルクGTとを、これらトルク変化の向きが互に逆向きになるように制御して、車両の前後振動を抑制するものである。換言すれば上記フィードバック中におけるトルクMTの極大値の時点とトルクGTの極大値の時点とが所定時間異なると共に、トルクMTの極小値の時点とトルクGTの極小値の時点とが所定時間異なるように制御するものである。なお、図7のタイムチャートにおいて、スリップが発生しなかった場合のトルクMT,GTの値は同図に仮想線x,yで示すようになる。 【0086】またステップS36ではエンジンブレーキ中に発電機10の制御トルクGTの向きが後輪モータ2の制御トルクMTの向きと逆になるようにコントロールして、車両の前後振動を抑止すべく構成したが、この構成に代えて、スロットル弁または外部EGR弁をコントロール(EGR弁を開くとポンピングロスが小さくなり、EGRを閉じるとポンピングロスが大きくなる)することによりエンジンのポンピングロスの度合を制御してもよく、あるいは無段変速機6の変速をコントロールして前輪9に対する制御トルクを制御すべく構成してもよい。 【0087】以上要するに、上記実施例の車両の走行制御装置は、車両の後輪13をモータ駆動する後輪駆動手段(後輪モータ2参照)と、減速時には上記モータ2によって後輪13の回生制動を行なう回生制動手段(ステップS4,S7参照)と、減速時には車両の前輪9に制動力を与える前輪制動手段(ステップS16参照)とを備えた車両の走行制御装置であって、上記後輪13のスリップ状態を推定する推定手段(ステップS9,S10参照)と、上記推定手段S9,S10により後輪13のスリップが推定された時、上記回生制動手段S4,S7による後輪13の回生制動度合を非推定時より減少させる制動制御手段(ステップS11参照)とを備えたものである。 【0088】上記構成により、スリップの非推定時(非予測時または非判定時)としての通常の減速時には、上記回生制動手段S4,S7が後輪13を駆動するモータ2によって回生制動を行なうので、この後輪モータ2による回生エネルギの回収を最大限に増大させることができる。 【0089】しかも、上記推定手段S9,S10がモータ駆動による後輪13のスリップ状態を推定(予測または判定)すると、上述の制動制御手段S11は上記回生制動手段S4,S7による後輪13の回生制動の度合を非推定時に対して減少させるので(ブレーキ力を弱めるので)、スリップ推定時には後輪13のスリップを抑制して、走行安定性を確保することができる。 【0090】また、上記前輪9は前輪モータ(発電機10参照)に連結されると共に、該前輪モータは後輪モータ2より小容量に設定されたものである。この構成により、主に後輪13から後輪モータ2を回生駆動させる場合に有効となる。 【0091】さらに、上記制動制御手段は、スリップ状態の推定時に上記前輪制動手段(ステップS16参照)による前輪9の制動度合を増大(図7に示すトルクGTbaseの設定およびクラッチONによるエンジンブレーキ参照)させるものである。この構成により、減速時において上述の推定手段S9,S10で後輪13のスリップ状態が推定(予測または判定)された時、上記制動制御手段は車両の前輪9に対して制動力を与える前輪制動手段S16による前輪9の制動度合を増大させる。この結果、スリップ推定時には後輪13側の回生制動の度合が減少されるが、この場合に、前輪9での制動を行なうことができ、減速時における車両の制動性を維持することができる。 【0092】しかも、上記前輪モータ(発電機10参照)にはエンジン3が連結されると共に、前輪モータと前輪9との締結状態を切換える切換手段(クラッチ5参照)を備え、上記制動制御手段はスリップ状態の非推定時には、減速中の少なくとも所定期間(減速要求が比較的高い減速初期参照)中に上記切換手段(クラッチ5参照)による締結をしゃ断(クラッチOFF参照)する一方、スリップ状態の推定時には少なくとも上記所定期間中において切換手段(クラッチ5参照)による締結(クラッチON参照)を実行するものである。 【0093】この構成により、通常の減速時に相当するスリップ状態の非推定時においては切換手段(クラッチ5参照)にて前輪モータ(発電機10参照)と前輪9との締結がしゃ断されているので、後輪13から後輪モータ2のみを回生駆動させることができ、このような条件下でスリップが予測または判定されると、少なくとも上記所定期間(減速要求が比較的高い減速初期参照)中において切換手段(クラッチ5参照)で前輪モータ(発電機10参照)と前輪9とが締結されるので、前輪入力(車輪からの入力)により切換手段を介してエンジン3をかけて、エンジンブレーキをきかせ、エンジン3に連結された前輪モータ(発電機10参照)で回生制動を行なうことができる。この結果、前輪モータ(発電機10参照)の回生駆動により発生した回生エネルギの回収ができ、車両の制動性とエネルギ回収性とを向上させることができる。 【0094】加えて、上記推定手段S9,S10による後輪13のスリップ検出時には、スリップの増減に応じて車両の前後振動を抑制すべく、上記回生制動手段S4,S7による制動度合(図7のフィードバック制御中のトルクMT参照)の増減制御時期と、上記前輪制動手段S16による制動度合(図7のフィードバック制御中のトルクGT参照)の増減制御時期とを所定時間異ならせるように構成したものである。換言すれば各トルクMT,GTの向きが互に逆になるように構成したものである。 【0095】この構成により、推定手段S9,S10が後輪13のスリップを検出した時、後輪13側の回生制動手段による制動度合の増減制御時期と前輪側の制動手段による制動度合の増減制御時期とが所定時間異なるようなブレーキ制御が実行される。この結果、スリップ抑制制御による車両の前後振動を、前輪9と後輪13との青銅制御によって抑止することができる。 【0096】図9は車両の走行制御装置の他の実施例を示し、この図9に示す実施例では図1の発電機10および動力伝達手段38を省略すると共に、エンジン3のフライホイールに直結されたスタータモータ39を設け、このスタータモータ39を前輪モータに設定したものである。なお、図9において図1と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。 【0097】このように構成しても、車両の後輪13をモータ駆動する後輪駆動手段(後輪モータ2参照)と、図3、図4で示したフローチャートの主要部を利用して、減速時には上記モータ2によって後輪13の回生制動を行なう回生制動手段S4,S7と、減速時には車両の前輪9に制動力を与える前輪制動手段(エンジンブレーキまたはブレーキ装置16,17参照)とを備えた車両の走行制御装置において、上記後輪13のスリップ状態を推定する推定手段S9,S10と、上記推定手段S9,S10により後輪13のスリップが推定された時、上記回生制動手段S4,S7による後輪13の回生制動度合を非推定時より減少させる制動制御手段S11とを備えた車両の走行制御装置を構成することができる。 【0098】この結果、スリップの非推定時(非予測時または非判定時)としての通常の減速時には、上記回生制動手段S4,S7が後輪13を駆動するモータ2によって回生制動を行なうので、この後輪モータ2による回生エネルギの回収を最大限に増大させることができる。 【0099】しかも、上記推定手段S9,S10がモータ駆動による後輪13のスリップ状態を推定(予測または判定)すると、上述の制動制御手段S11は上記回生制動手段S4,S7による後輪13の回生制動の度合を非推定時に対して減少させるので、スリップ推定時には後輪13のスリップを抑制して、走行安定性を確保することができる。 【0100】この発明の構成と、上述の実施例との対応において、この発明の後輪駆動手段は実施例の後輪モータ2に対応し、以下同様に、回生制動手段は、ECU20制御によるステップS4,S7に対応し、前輪制動手段は、ステップS16に対応し、推定手段は、ステップS9,S10に対応し、制動制御手段は、ステップS11に対応し、前輪モータは、発電機10またはスタータモータ39に対応し、切換手段は、クラッチ5に対応し、減速中の所定期間は、減速要求が比較的高い減速初期に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。 【0101】例えば、上記実施例においてはエンジン3と後輪モータ2とを備えた4WD構成のハイブリッド車を例示したが、これは内燃機関を一切有さないので、前輪モータと後輪モータとで車両を走行させる電気自動車いわゆるEVに適用してもよいことは勿論である。 【0102】 【発明の効果】この発明によれば、減速時に後輪モータにより後輪の回生制動を行なう回生制動手段を備えたものにおいて、後輪のスリップが推定(予測または判定も含む)された時、上記回生制御手段による後輪の回生制動度合を非推定時よりも減少させることで、スリップの非発生時である通常の減速時には、後輪モータによる回生エネルギの回収を最大限に増大させると共に、スリップ発生時またはスリップ発生の可能性が大きい時には、後輪のスリップを抑制することができる効果がある。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003137 【氏名又は名称】マツダ株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年8月10日(2000.8.10) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100067747 【弁理士】 【氏名又は名称】永田 良昭
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| 【公開番号】 |
特開2002−58107(P2002−58107A) |
| 【公開日】 |
平成14年2月22日(2002.2.22) |
| 【出願番号】 |
特願2000−242006(P2000−242006) |
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