| 【発明の名称】 |
電動機制御装置および再粘着制御方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】渡邉 朝紀
【氏名】山下 道寛
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| 【要約】 |
【課題】本発明の課題は、速度センサを用いずに、電動機が空転・滑走した場合の再粘着制御を適切に行うことである。
【解決手段】電動機制御装置1は、各誘導電動機の入力端に備えられた電流センサ30によって検出された電流に基づいて、各誘導電動機に発生した空転あるいは滑走を検出する。そして、各誘導電動機に流入する負荷トルク電流Iqに基づいて、空転・滑走発生前のトルクが推定され、再粘着後、再度の空転・滑走を発生させることなく、誘導電動機10の負荷トルクを推定トルクにまで速やかに上昇あるいは下降させる。したがって、一旦空転・滑走が発生した後、再度、空転・滑走発生前の状態に復帰する時間が短縮され、スムーズに復帰させることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】給電ラインに複数並列に接続された誘導電動機を、ベクトル制御による給電によって一括して制御する電動機制御装置であって、前記複数の誘導電動機を1つの仮想電動機とみなし、前記給電電流の挙動に基づいて、前記仮想電動機の負荷トルクを推定するトルク推定手段を備え、前記複数の誘導電動機それぞれが駆動する駆動軸の空転あるいは滑走が発生した場合に、前記負荷トルクに基づく再粘着制御を行うことにより、前記駆動軸の回転速度検出手段を設けることなく再粘着制御を行うことを特徴とする電動機制御装置。 【請求項2】給電ラインに複数並列に接続された誘導電動機を、ベクトル制御による給電によって一括して制御する電動機制御装置であって、前記複数の誘導電動機それぞれに流入する電流を検出する電流検出手段と、前記電流検出手段によって検出された電流の挙動に基づいて、前記複数の誘導電動機それぞれの負荷トルクを推定するトルク推定手段と、を備え、前記複数の誘導電動機それぞれが駆動する駆動軸の空転あるいは滑走が発生した場合に、当該駆動軸を駆動する誘導電動機の前記負荷トルクに基づく再粘着制御を行うことにより、前記車軸の回転速度検出手段を設けることなく再粘着制御を行うことを特徴とする電動機制御装置。 【請求項3】給電ラインに複数並列に接続された誘導電動機を1つの仮想電動機とみなし、ベクトル制御による給電によって一括して制御する際に、前記複数の誘導電動機それぞれが駆動する駆動軸の空転あるいは滑走が発生した場合に、前記給電電流の挙動に基づいて、前記仮想電動機の負荷トルクを推定するとともに、推定した負荷トルクに応じた再粘着制御を行うことを特徴とする再粘着制御方法。 【請求項4】給電ラインに複数並列に接続された誘導電動機を、ベクトル制御による給電によって一括して制御する際に、前記複数の誘導電動機それぞれが駆動する駆動軸の空転あるいは滑走が発生した場合に、前記複数の誘導電動機それぞれに流入する電流の挙動に基づいて、前記複数の誘導電動機それぞれの負荷トルクを推定するとともに、推定した負荷トルクに応じた再粘着制御を行うことを特徴とする再粘着制御方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、誘導電動機を動力とする電動機構における電動機制御装置およびその再粘着制御方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、誘導電動機を動力とする電動機構(電車の駆動機構等)において、誘導電動機(以下、単に「電動機」という。)を制御する際に、駆動軸(電車の車軸等)の回転速度を速度センサによって検出し、検出された速度に基づいて、電動機に対する給電を制御する電動機制御装置が知られている。 【0003】図10は、速度センサを用いて、空転・滑走の検出および再粘着制御を行う電動機制御装置100の制御部の構成を示す図である。図10において、電動機制御装置100は、電動機110(111〜114)、インバータ120、電流センサ130、ベクトル制御演算器140、粘着制御演算部160を備えている。さらに、粘着制御演算部160は、各電動機の回転速度(速度センサの出力信号)に基づいて空転・滑走の発生を検出する検出回路161を備えている。なお、電流センサ130からフィードバックされる電流値(Ia,Ib)は、インバータから出力される電流が電流指令に基づく値(目的値)に制御されているか否かを把握するためにのみ利用される。 【0004】この速度センサを用いる方式の電動機制御装置100においては、例えば、電車の電動機を制御する場合、電車の床下の車輪間に設けられた電動機110(111〜114)に速度センサが備えられ、車軸を駆動する電動機111〜114の回転速度(ωr-1〜ωr-4)が検出される。 【0005】速度センサは、図示しないが、主に、電動機に組み込まれたコイルおよびコイルに発生する誘導起電力を検出する起電力検出部から構成される。そして速度センサは、検出した起電力に基づく信号(速度センサ信号)を検出回路161に出力する。図11は、図10の電動機制御装置100に備えられる検出回路161の一例を示す図である。 【0006】電動機の速度センサによって車軸の回転速度を検出する原理は以下の通りである。速度センサは、電動機軸に嵌め込まれた歯車と、これと対向するように電動機の固定子側に固定されたコイル及び増幅器とから構成される。電動機軸が回転すると、速度センサのコイルと歯車の“山”が対向するか、或いは“谷”が対向するかによって、速度センサの歯車とコイルの間の距離が変化し、コイルのインダクタンスが変化する。このため、コイルに一定電圧を加えると、流れる電流の大きさがコイルに対向する歯車の山谷に合わせて変化する。これを増幅器にて波形整形し、コイルに対向する歯車の歯に対応した矩形波の電圧又は電流信号を得る。さらに、得られた電圧又は電気信号に基づいて所定の処理を行うことにより電動機の回転速度を検出し、検出した回転速度をさらに電動機と車軸の回転数比で割ることによって車軸速度を検出する。 【0007】電動機制御装置100においては、この検出された回転速度に基づいて、粘着制御演算部160の検出回路161によって、車軸の空転・滑走が検出される。また、このとき、粘着制御演算部160において誘導電動機のトルク電流を調整するための信号(トルク電流指令)がベクトル制御演算器140に出力され、誘導電動機100のトルクが制御される。 【0008】この速度センサを用いる電動機制御装置100には、以下のような問題があった。速度センサが車軸の回転速度を検出する場合、車軸の歯車の歯(歯幅4mm程度)が磁束を切る際にコイルに発生する微小な誘導起電力を検出しなければならず、精密に誘導起電力の検出を行う必要があった。また、起電力検出部はIC等のデバイスを多数備えているため、電動機付近のような環境条件の厳しい場所に配設された場合、故障が発生しやすかった。さらに、微小信号である速度センサ信号には、電動機110の制御動作に伴うノイズがのりやすく、検出回路の動作にエラーが生じやすかった。 【0009】また、速度センサは、上述の通りコイル等の検出機構を備えるため、比較的大型となり、車輪間の限られたスペースに配設される場合には、電動機110の占有スペースを圧迫することとなっていた。そのため、電動機110の大型化が阻まれ、電動機110の出力を制限する要因となっていた。 【0010】このような問題を解決すべく、近年、速度センサを用いない電動機制御方法が開発されつつある。 【0011】図12は、複数の電動機を給電する総電流に基づいて、複数の電動機を一括して制御する電動機制御装置200の制御部を示す概略図である。図12に示す電動機制御装置200は、図10に示す電動機制御装置100において、速度センサを用いて車軸を駆動する電動機111〜114の回転速度を検出する代わりに、電流センサ230を用いて電動機211〜214を給電する総電流を検出する。そして、電流センサ230によって検出された総電流に基づいて、ベクトル制御演算器240が電動機211〜214に印加する電圧を算出し、インバータ220に指示信号を出力する。このようにして、インバータ220が電動機211〜214を1つの仮想電動機210として制御する。 【0012】この電流センサを用いる電動機制御装置200の場合、電流センサ230は、もともとインバータの制御に必要なもので、速度センサがない分、電動機211〜214の大型化を図ることができ、電動機211〜214の高出力化が可能となる。また、電流センサ230は、一般的に耐環境性に優れている。このような利点から、電流センサと速度センサを用いる方法に代えて、電流センサのみによって電動機を制御する方法の実用化が期待されている。 【0013】しかし、電流センサを用いる電動機制御装置において車軸等の空転・滑走が発生した場合、従来、速度センサを用いて行われていた空転滑走検出および再粘着制御は適用できないため、適切な方法で再粘着を行う必要がある。 【0014】ここで、電流センサを用いる電動機制御装置のうち、現在、既に開発されているものは、上述した電動機制御装置200と同様の、1つの制御部により複数の電動機を制御するものである。尚、この制御においては、複数の電動機を1つの電動機と仮想する。そして、当該仮想電動機を給電する電流、即ち、インバータ等から複数の電動機に流出する総電流を検出することによって、複数の電動機を制御している。そのため、仮想電動機の回転速度(より正確には仮想電動機の回転速度として想定される回転速度)を算出(想定)することは可能であるが、各電動機の回転速度の差を算出することができない。したがって、仮想電動機の回転速度の変化に基づいて、仮想電動機の回転加速度を算出(想定)し、この回転加速度に基づいて車軸の空転あるいは滑走が検出・制御されている。 【0015】しかしながら、各電動機の回転速度の差を算出(想定)せず、仮想電動機の回転加速度を算出(想定)して車軸の空転あるいは滑走を検出・制御する場合、各車軸等の微少な空転あるいは滑走が検出できず、また、複数の電動機に駆動される各車軸のうちの1つが空転あるいは滑走したことを直ちに検出することができなかった。したがって、空転・滑走が発生した場合に適切な再粘着制御を行うことができなかった。 【0016】また、従来の他の方法としては、再粘着に要するトルクを直接推定せず、電動機の発生トルクを変動させながら、再粘着に適するトルクを探知する手法がある。しかしこの方法では、空転・滑走が発生した場合に、再粘着が迅速に行えないという問題があった。 【0017】本発明の課題は、速度センサを用いずに、電動機が空転・滑走した場合の再粘着制御を適切に行うことである。 【0018】 【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、給電ラインに複数並列に接続された誘導電動機を、ベクトル制御による給電によって一括して制御する電動機制御装置であって、前記複数の誘導電動機を1つの仮想電動機とみなし、前記給電電流の挙動に基づいて、前記仮想電動機の負荷トルクを推定するトルク推定手段(例えば、図1の再粘着制御演算部60)を備え、前記複数の誘導電動機それぞれが駆動する駆動軸の空転あるいは滑走が発生した場合に、前記負荷トルクに基づく再粘着制御を行うことにより、前記駆動軸の回転速度検出手段を設けることなく再粘着制御を行うことを特徴としている。 【0019】また、請求項3記載の再粘着制御方法は、給電ラインに複数並列に接続された誘導電動機を1つの仮想電動機とみなし、ベクトル制御による給電によって一括して制御する際に、前記複数の誘導電動機それぞれが駆動する駆動軸の空転あるいは滑走が発生した場合に、前記給電電流の挙動に基づいて、前記仮想電動機の負荷トルクを推定するとともに、推定した負荷トルクに応じた再粘着制御を行う。 【0020】請求項1および請求項3記載の発明によれば、駆動軸の空転あるいは滑走が発生した場合に、空転あるいは滑走の発生を検知した時、発生する直前、或いは発生した直後の前記仮想電動機の負荷トルクを直接推定し、当該負荷トルクに基づいた再粘着制御を行うため、空転あるいは滑走が発生した後、迅速に再粘着させることができる。以下簡明のため、空転あるいは滑走を検知した直前の負荷トルクを推定することとして説明するが、空転あるいは滑走の発生時あるいは発生直後の負荷トルクを推定することとしてもよい。また、空転あるいは滑走後、再度の空転あるいは滑走を発生させることなく、スムーズに再粘着させることができる。 【0021】請求項2記載の発明は、給電ラインに複数並列に接続された誘導電動機を、ベクトル制御による給電によって一括して制御する電動機制御装置であって、前記複数の誘導電動機それぞれに流入する電流を検出する電流検出手段(例えば、図1の電流センサ31〜34)と、前記電流検出手段によって検出された電流の挙動に基づいて、前記複数の誘導電動機それぞれの負荷トルクを推定するトルク推定手段(例えば、図1の粘着制御演算部60)と、を備え、前記複数の誘導電動機それぞれが駆動する駆動軸の空転あるいは滑走が発生した場合に、当該駆動軸を駆動する誘導電動機の前記負荷トルクに基づく再粘着制御を行うことにより、前記車軸の回転速度検出手段を設けることなく再粘着制御を行うことを特徴としている。 【0022】また、請求項4記載の再粘着制御方法は、給電ラインに複数並列に接続された誘導電動機を、ベクトル制御による給電によって一括して制御する際に、前記複数の誘導電動機それぞれが駆動する駆動軸の空転あるいは滑走が発生した場合に、前記複数の誘導電動機それぞれに流入する電流の挙動に基づいて、前記複数の誘導電動機それぞれの負荷トルクを推定するとともに、推定した負荷トルクに応じた再粘着制御を行う。 【0023】請求項2および請求項4記載の発明によれば、複数の誘導電動機のうちの一部に空転あるいは滑走が発生した場合に、当該空転あるいは滑走を検出でき、さらに、空転あるいは滑走が発生する直前の各誘導電動機の負荷トルクを直接推定し、当該負荷トルクに基づいた再粘着制御を行うため、空転あるいは滑走が発生した後、迅速に再粘着させることができる。また、空転あるいは滑走後、再度の空転あるいは滑走を発生させることなく、スムーズに再粘着させることができる。 【0024】 【発明の実施の形態】以下、図を参照して本発明に係る電動機制御装置の実施の形態を詳細に説明する。 【0025】まず、構成を説明する。図1は、本発明を適用した電動機制御装置1の制御部の構成を示す概略図である。図1において、電動機制御装置1の制御部は、電車の誘導電動機を制御するために備えられ、主に、誘導電動機11〜14(以下、誘導電動機を総称して、適宜、誘導電動機10という。)、インバータ20、電流センサ31〜34(以下、電流センサを総称して、適宜、電流センサ30という。)、ベクトル制御演算器40、座標変換部50、粘着制御演算部60から構成される。 【0026】誘導電動機11〜14は、3相誘導電動機であり、インバータ20によって、各誘導電動機のu,v,wの3つの巻線に一次電圧(後述する電圧指令値)が印加されることにより、一次電流Iu,Iv,Iwがそれぞれ流入される(以下、適宜、誘導電動機11〜14の個別のIu,Iv,IwをそれぞれIu-11〜Iu-14,Iv-11〜Iv-14,Iw-11〜Iw-14という。また、後述するIdおよびIqについても、同様に表現する。)。すると、巻線u,v,wによって発生される回転磁界によって、回転子が回転し、回転子と連動する車軸が駆動される。また、誘導電動機11〜14は、インバータ20によって、一括して制御される。 【0027】インバータ20には、ベクトル制御演算器40から、誘導電動機11〜14それぞれの3つの巻線u,v,wに印加する指定電圧Vu*,Vv*,Vw*(以下、「電圧指令値」という。)が入力される。そして、インバータ20は、入力された電圧指令値に従って出力電圧を調整し、誘導電動機11〜14に給電する。 【0028】電流センサ31〜34は、誘導電動機11〜14の入力端に設けられ、各誘導電動機に流入する一次電流Iu,Iv,Iwをそれぞれ検出する。即ち、電流センサ31〜34は、誘導電動機11〜14それぞれのu,v,wの3つの巻線(3相巻線)に流入する電流Iu,Iv,Iwを検出する。ここで、Iu,Iv,Iwは、電流センサ31〜34によって誘導電動機11〜14のそれぞれについて検出されるが、各誘導電動機のIu,Iv,Iwについて同様の処理がなされるため、代表して、誘導電動機11のIu-11,Iv-11,Iw-11について説明する。なお、図1においても誘導電動機11に係る電流のみを示し、他の誘導電動機に係る電流は図示を省略する。 【0029】ベクトル制御演算器40には、座標変換部50から誘導電動機11〜14に対応する電流のd軸,q軸成分Id-11〜Id-14,Iq-11〜Iq-14がそれぞれ入力され、また、不図示の電流指令演算部から電流指令値Id*,Iq*がそれぞれ入力される。このId*,Iq*は、電流指令演算部において算出された、誘導電動機11〜14に入力指示される総電流ベクトルのd軸,q軸成分をそれぞれ示す値である。ただし、Iq*には、粘着制御演算部60から入力されるトルク電流指令値(後述)が加味された後にベクトル制御演算部40に入力される。また、Iq-11〜Iq-14は、各誘導電動機のトルク電流成分を表している。なお、本実施の形態において、電流指令演算部は定電流制御を行うものとして説明する。この場合、各誘導電動機の負荷にばらつきが生じても、Id*,Iq*としては一定値が指示されることとなる。 【0030】そして、ベクトル制御演算器40は、Id-11〜Id-14,Iq-11〜Iq-14,Id*,Iq*に基づいて、各誘導電動機のu,v,wの3つの巻線に印加する電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を算出し、インバータ20に出力する。 【0031】また、ベクトル制御演算器40は、誘導電動機11〜14の電流成分Id-11〜Id-14,Iq-11〜Iq-14をそれぞれ粘着制御演算部60に出力する。 【0032】座標変換部50には、電流センサ31〜34が検出した各誘導電動機の3相巻線のそれぞれに流入する電流値Iu,Iv,Iwのが入力される。そして、この電流値Iu,Iv,Iwを磁気的に等価なa,bの2つの巻線(2相巻線)に流入する電流成分Ia,Ib(2相静止座標a−b上の電流ベクトルの各軸成分)に2相−3相変換する。さらに、座標変換部50は、Ia、Ibを回転子の角速度ω1で回転するd−q座標上の電流ベクトルの各軸成分Id,Iqに変換してベクトル制御演算器40に出力する。 【0033】粘着制御演算部60は、ベクトル制御演算器40から誘導電動機11〜14の電流成分Id,Iqが入力されると、電流成分Id,Iqに基づいて、各誘導電動機が空転あるいは滑走しているか否かを判定し、空転あるいは滑走が発生している場合に、ベクトル制御演算器40に、空転あるいは滑走を解消するためのトルク電流指令(以下、トルク電流指令により示される値をトルク電流指令値という。)を出力する。トルク電流指令は、電流指令演算部からベクトル制御演算器40に入力される電流指令値Iq*に対し、空転・滑走が発生した場合にトルク電流を引き下げ、再粘着させるためのフィードバック信号である。 【0034】ここで、図2および図3を参照して、粘着制御演算部60が各誘導電動機の電流成分Id,Iqに基づいて空転あるいは滑走を検出し、再粘着させる方法について説明する。なお、説明を簡単にするために、電動機制御装置1によって2つの誘導電動機m,nを制御するものとして説明する。図2(a)は、空転・滑走が発生していない場合の誘導電動機m,nに流入する電流ベクトルIm,InおよびIm,Inの和である総電流ベクトルIの関係を示すベクトル図であり、図2(b)は、誘導電動機nが空転した場合の電流ベクトルIm,Inおよび総電流ベクトルIの関係を示すベクトル図である。また、図2におけるV1は、総電流ベクトルIに対する一次電圧ベクトル、φ2は、二次鎖交ベクトルであり、この二次鎖交ベクトルφ2が、d軸と一致するように座標設定されている。 【0035】図2(a)、(b)において、ベクトル制御演算器40が定電流制御を行うため、総電流ベクトルIの振幅(総電流ベクトルIの長さ)は一定となる。ここで、誘導電動機nが空転した場合、電流ベクトルInの振幅およびd軸となす角が変化する。即ち、図2(a)の電流ベクトルInから図2(b)の電流ベクトルInへ変化する。すると、(総電流ベクトルI)=(電流ベクトルIm)+(電流ベクトルIn)であるため、電流ベクトルImが、電流ベクトルInの変化を打ち消すように変化する。その結果、総電流ベクトルIの振幅は一定となる。したがって、従来の誘導電動機m,nを1つの仮想電動機として定電流制御する場合、総電流ベクトルIのみに基づいて空転あるいは滑走を検出するため、誘導電動機m,nのいずれかにおいて発生した空転・滑走を検出できなかった。一方、本発明においては、各誘導電動機毎の電流ベクトルIm,Inをそれぞれ解析するため、総電流ベクトルIの振幅が変化しない場合であっても、誘導電動機nにおいて発生した空転あるいは滑走を検出できることとなる。 【0036】また、図3は、定電流制御される場合に、誘導電動機nが空転した際の、誘導電動機m,nが発生するトルク(τe-m,τe-n)、実際の負荷トルク(τl-m,τl-n)および誘導電動機m,nのd軸,q軸電流(Id-m,Iq-m),(Id-n,Iq-n)の関係を示す図である。なお、図3中、τe-mとτl-mは、誘導電動機mが空転していないことから一致している。図3において、時刻t=1で誘導電動機nが空転すると、誘導電動機nの負荷トルクτl-nが減少する。すると、減少した負荷トルク分のトルクを下げるようにトルク電流が減少し、トルク電流の減少分(Iq-nの減少分)は、誘導電動機mのトルク電流の増加分(Iq-mの増加分)として配分されることとなる(図2のdIq参照)。そのため、誘導電動機mのトルク(τe-m)が増加する。この現象を放置した場合、誘導電動機mに過度のトルクがかかり、誘導電動機mも空転し得る。即ち、全軸空転が発生し得る。 【0037】以下、まず粘着制御演算部60が空転あるいは滑走を検出する際の具体的な第1〜第3の方法について説明する。第1の方法では、粘着制御演算部60は、誘導電動機m,nそれぞれに流入する電流振幅の差(図2のdIq)を検出し、この電流振幅の差が所定値以上となった場合に、空転あるいは滑走が発生していると判定する(図4(a)にこの場合の粘着制御演算部60を示す。)。また、粘着制御演算部60は、誘導電動機m,nに流入する電流の位相差(図2のdθ)が所定値以上となった場合に、空転あるいは滑走が発生していると判定する(図4(b)にこの場合の粘着制御演算部60を示す。)。 【0038】即ち、図2において、粘着制御演算部60は、ベクトル制御演算器40から入力された誘導電動機m,nの一次電流ベクトルIm,Inを解析することによって、誘導電動機m,nに流入する電流振幅(q軸成分)の差dIq(=Iq-m−Iq-n)を検出し、dIqが所定値以上の場合に空転あるいは滑走が発生したと判定する。また、粘着制御演算部60は、ベクトル制御演算器40から入力された誘導電動機m,nの一次電流ベクトルIm,Inとd軸とがなす角θ1,θ2の差(位相差)dθを検出し、位相差dθが所定値以上の場合に空転あるいは滑走が発生したと判定する。なお、電流振幅の差に基づいて車軸の空転あるいは滑走を検出する場合、電流振幅のd軸成分あるいは電流ベクトルIm,Inそれぞれの全振幅の差に基づいて空転あるいは滑走を検出することも可能である(以下説明を省略するが、第2の方法(電流振幅の時間変化に基づく検出方法)および第3の方法(第1と第2の方法の組合せによる検出方法)においても同様に空転あるいは滑走の検出が可能である。)。 【0039】第2の方法では、粘着制御演算部60は、誘導電動機m,nそれぞれに流入する電流振幅の時間変化dIq-m/dt,dIq-n/dtを検出し、この電流振幅の時間変化が所定値以上となった場合に、空転あるいは滑走が発生したと判定する(図5(a)にこの場合の粘着制御演算部60を示す。)。また、粘着制御演算部60は、誘導電動機m,nに流入する電流の位相時間変化が所定値以上となった場合に、空転あるいは滑走が発生したと判定する(図5(b)にこの場合の粘着制御演算部60を示す。)。 【0040】即ち、図2において、粘着制御演算部60は、ベクトル制御演算器40から入力された誘導電動機m,nの一次電流ベクトルIm,Inを解析することによって、誘導電動機m,nに流入する電流振幅の時間変化dIq-m/dt,dIq-n/dtを検出し、dIq-m/dt,dIq-n/dtが所定値以上の場合に空転あるいは滑走が発生したと判定する。また、粘着制御演算部60は、位相差dθの時間変化dθ/dtを検出し、dθ/dtが所定値以上の場合に空転あるいは滑走が発生したと判定する。なお、図2より、dθ1/dtあるいはdθ2/dtを検出し、これらが所定値以上であるか否かを判定することによっても、空転あるいは滑走を検出することが可能である。 【0041】第3の方法では、粘着制御演算部60は、第1および第2の方法によって検出される電流差dIqまたは位相差dθおよび電流振幅の時間変化dIq-m/dt,dIq-n/dtまたは位相差dθの時間変化dθ/dtが所定値以上であるか否かの条件を組み合わせて判定することによって、車軸の空転あるいは滑走を検出する(図6にこの場合の粘着制御演算部60を示す。)。 【0042】例えば、電流差dIqおよび電流振幅の時間変化dIq-m/dt,dIq-n/dtが所定値以上である場合に空転滑走を検出することとしたり、電流の位相差dθおよび電流位相の時間変化dθ1/dt,dθ2/dtが所定値以上である場合および電流差dIqが所定値以上である場合にも空転滑走を検出するといった組み合わせが可能である。 【0043】続いて、空転あるいは滑走が発生した場合に、粘着制御演算部60が再粘着を行う方法について説明する。誘導電動機10を含む駆動系の状態方程式は、以下の(1)〜(3)式で表される。 【0044】 【数1】
【0045】 【数2】
【0046】 【数3】
ただし、【数4】
【0047】ここで、I:一次電流ベクトル(総電流ベクトル)、V1:一次電圧ベクトル、φ2:2次鎖交磁束ベクトル、ω1:一次角周波数(角速度)、ωr:回転子角周波数(角速度)、ωs:すべり角周波数、r1:一次抵抗、r2:二次抵抗、L1:一次インダクタンス、L2:二次インダクタンス、M:相互インダクタンス、J:駆動系慣性モーメントである。 【0048】上記(1)式より、誘導電動機nの車軸とレールとの接線力に相当する負荷トルクτl-nは、次式(4)で表される。 【0049】 【数5】
【0050】(4)式において、誘導電動機nの発生トルクτe-2は、次式(5)を用いて近似できる。なお、φ2dは、磁束指令値である。 【0051】 【数6】
【0052】また、(4)式において、dωr-n/dtは、速度センサによって回転速度ωrを検出しないことから、次式(6)によって推定する。 【0053】 【数7】
【0054】すべり角周波数ωs-nは、粘着走行時において、次式(7)によって表される。 【0055】 【数8】
【0056】誘導電動機nが実際に空転した後、その空転を検知するまでの短時間においては、φ2d-nは殆ど変化しない。そのため、すべり角周波数ωs-nの微分形を次式(8)によって近似できる。 【0057】 【数9】
【0058】(4)式に(5)〜(7)式を適用すると、空転あるいは滑走によって変化した負荷トルクτl-n’が推定できる。粘着制御演算部60は、空転・滑走が発生した場合、一旦、負荷トルクを所定値まで変化させ、再粘着したと判定した後、推定負荷トルクτl-n’に基づくトルク電流指令値をベクトル制御演算部40に出力する。そして、粘着制御演算部60は、再度空転・滑走を発生させることなく、速やかに負荷トルクを空転・滑走前のトルク状態に復帰させる。具体的な復帰方法としては、例えば特願平9−68987号「電気車再粘着制御装置」の図8に開示されているものがある。したがって、空転が発生した後には、空転が発生する前の速度に到達する時間が短縮され、また、スムーズに加速できるため、空転の発生によるダイヤの乱れ、乗客の乗り心地の悪化等を防ぐことができる。また、滑走が発生した後には、速やかに滑走発生前の制動状態に復帰させることができる。 【0059】次に、動作を説明する。誘導電動機10によって電車の車軸が駆動されると、電流センサ30によって誘導電動機10に流入する電流値Iu,Iv,Iwが検出される。次に、座標変換部50によって、この電流値Iu,Iv,Iwがd−q座標上の電流ベクトル(Id,Iq)に変換され、ベクトル制御演算器40に入力される。 【0060】尚、電流が平衡している場合には、Iu,Iv,Iwのうち二つを用いればよく、(Iu,Iv)より(Id,Iq)への変換式として、例えば次の式が知られている。 【数10】
ここにθはU相電流と磁束のなす角を示す。 【0061】次に、ベクトル制御演算器40が、電流指令演算部から入力された電流指令値Id*,Iq*および座標変換部50から入力されたId,Iqに基づいて電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を算出し、インバータ20に出力する。そして、インバータ20によって、各誘導電動機に電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に基づく電圧および電流が出力される。 【0062】また、ベクトル制御演算器40によってId,Iqが粘着制御演算部60に入力され、粘着制御演算部60によって所定方法(上記第1〜第3のいずれかの方法)による空転滑走検出が行われる。さらに、粘着制御演算部60によって、空転・滑走発生前(上述した通り、発生時あるいは発生直後であってもよい。)の負荷トルクが推定され、再粘着後、再度の空転・滑走を発生させることなく、速やかに空転・滑走発生前の最適な負荷トルクに復帰される。 【0063】以上のように、本実施の形態における電動機制御装置1は、各誘導電動機の入力端に備えられた電流センサ30によって検出された電流に基づいて、各誘導電動機に発生した空転あるいは滑走を検出する。そして、各誘導電動機に流入する負荷トルク電流Iqに基づいて、空転・滑走発生前のトルクが推定され、再粘着後、再度の空転・滑走を発生させることなく、誘導電動機10の負荷トルクを推定トルクにまで速やかに上昇あるいは下降させる。 【0064】したがって、一の制御部によって複数の誘導電動機を制御する場合にも、それぞれの誘導電動機に発生する空転あるいは滑走を確実に検出できる。また、速度センサを用いて誘導電動機の回転速度を検出することなく、電流センサ30によって検出された電流に基づいて個々の誘導電動機の空転・滑走を検出できる。 【0065】また、各誘導電動機に空転・滑走が発生した場合、当該誘導電動機に流入する電流に基づいて、当該誘導電動機が空転・滑走した時、直前、あるいは直後の負荷トルクが推定される。したがって、一旦空転・滑走が発生した後、再度、空転・滑走発生前の状態に復帰する時間が短縮され、スムーズに復帰させることができるため、空転・滑走の発生によるダイヤの乱れ、乗客の乗り心地の悪化を防ぐことができる。 【0066】なお、粘着制御演算部60は、以下のような構成とすることも可能である。即ち、粘着制御演算部60は、誘導電動機11〜14に流入する電流Iu,Iv,Iwに基づいて、誘導電動機11〜14の速度を推定する。そして、粘着制御演算部60は、内部に備える検出回路において、従来の電動機制御方法である、速度センサによって検出した誘導電動機の回転速度に基づく空転滑走検出あるいは再粘着制御において、速度センサの検出信号の代わりに、推定した速度に基づく空転滑走検出あるいは再粘着制御を行うこととしてもよい。 【0067】ここで、速度センサを用いないベクトル制御における速度推定の方法はいくつか知られている。例えば、1999年11月に開催された「第36回サイバネティックス利用国内シンポジウム」の論文番号522「速度センサレスベクトル制御の車両駆動への応用」では次式を紹介している。 【数11】
【0068】図7は、推定速度に基づく空転滑走検出を行う場合の粘着制御演算部60に備えられる検出回路の構成を示すブロック図である。図7の粘着制御演算部60は、図10に示す従来の検出回路において、速度センサによって検出した各誘導電動機の回転速度v1〜v4に代えて、誘導電動機11〜14に流入する電流Iu,Iv,Iwから推定した回転速度v1’〜v4’について、図11の各部と同様に処理することにより空転滑走を検出する。このような構成とした場合、従来の速度センサを備えた電動機制御装置においても、本実施の形態における電流センサ30および座標変換部50を備え、ベクトル制御演算器40の処理プログラム等を変更することにより、従来の検出回路を活用しつつ、ベクトル制御による適切な電動機制御を実現することができる。 【0069】また、本実施の形態において、粘着制御演算部60には、ベクトル制御演算器40から各誘導電動機の電流に関する情報(Id,Iq)が入力される構成としたが、ベクトル制御演算器40を介さずに各誘導電動機に設けられた電流センサ30から、直接Iu,Iv,Iwのうち少なくとも二つの電流値が入力されることとし、粘着制御演算部60がベクトル制御演算器40とは独立して空転・滑走を検出可能または再粘着制御可能な構成としてもよい。 【0070】電流Iu,Iv,Iwのうち例えばIuとIvを用いて静止座標系の電流ベクトル(Ia,Ib)を求めることができる。 【数12】
誘導電動機m、nの電流ベクトルを(Ia-m,Ib-m),(Ia-n,Ib-n)とすると、電流の差は例えば、|Ia-m−Ia-n|+|Ib-m−Ib-n|や(Ia-m−Ia-n)2+(Ib-m−Ib-n)2で表すことができ、これが一定値を超えたことをもって空転あるいは滑走と判定する。またIa,Ibの値より電流の振幅を次式で求めることができ、これをもとに判定することとしてもよい。 【数13】
図8は、このような構成とする場合の電動機制御装置1の制御部の一例を示す図である。 【0071】さらに、本実施の形態において、電流指令演算部は定電流制御を行うこととして説明したが、定電流制御でない場合にも、本発明の適用が可能である。またここでは1つのインバータより給電される電動機を2個の場合として説明したが、複数の電動機であっても同様に本発明を適用できる。図9は、図2の例(電動機制御装置1によって2つの誘導電動機m,nを制御する例)において、定電流制御でない場合に、誘導電動機nが空転した際の電流ベクトルIm,Inおよび総電流ベクトルIの関係を示すベクトル図である。定電流制御でない場合、空転していない誘導電動機mの電流ベクトルは変化せず、空転している誘導電動機nの電流ベクトルのみ、その振幅および位相が変化する。したがって、各電流ベクトルIm,Inの変化あるいは総電流ベクトルIの変化を解析することによって、各誘導電動機の空転・滑走が検出できる。 【0072】 【発明の効果】請求項1および請求項3記載の発明によれば、駆動軸の空転あるいは滑走が発生した場合に、空転あるいは滑走が発生する直前の前記仮想電動機の負荷トルクを直接推定し、当該負荷トルクに基づいた再粘着制御を行うため、空転あるいは滑走が発生した後、迅速に再粘着させることができる。また、空転あるいは滑走後、再度の空転あるいは滑走を発生させることなく、スムーズに再粘着させることができる。 【0073】請求項2および請求項4記載の発明によれば、複数の誘導電動機のうちの一部に空転あるいは滑走が発生した場合に、当該空転あるいは滑走を検出でき、さらに、空転あるいは滑走が発生する直前の各誘導電動機の負荷トルクを直接推定し、当該負荷トルクに基づいた再粘着制御を行うため、空転あるいは滑走が発生した後、迅速に再粘着させることができる。また、空転あるいは滑走後、再度の空転あるいは滑走を発生させることなく、スムーズに再粘着させることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000173784 【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
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| 【出願日】 |
平成12年7月25日(2000.7.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100090033 【弁理士】 【氏名又は名称】荒船 博司 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−44804(P2002−44804A) |
| 【公開日】 |
平成14年2月8日(2002.2.8) |
| 【出願番号】 |
特願2000−224213(P2000−224213) |
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