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【発明の名称】 電動走行式産業用車両
【発明者】 【氏名】今村 浩二

【要約】 【課題】トランスミッションが設けられていない電動走行式のホイールローダにおいて、非常用ポンプを駆動させるための動力を容易に確保する。

【解決手段】前車体部に前部モータ41で回転する車輪9が設けられ、後車体部に後部モータ42で回転する車輪10が設けられ、ステアリング装置は、後車体部に対して前車体部を回動させるシリンダと、作動油をシリンダへ供給するポンプと、このポンプの異常時に代わりに作動油をシリンダへ供給する非常用ポンプ24とで構成され、両前部モータ41間に前部差動装置49が設けられ、前部差動装置49の左右一対のアクスルシャフト54が両前部モータ41の回転軸59に連結され、非常用ポンプ24の回転駆動軸が、動力取出用歯車67,68,69を介して、前部差動装置49の左右一方のアクスルシャフト54に連動連結されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車体が前車体部と後車体部とに分割され、上記前車体部と後車体部とが左右方向へ相対的に回動自在に連結され、上記前車体部に、左右一対の前部走行車輪と、これら前部走行車輪を個々に回転駆動させる左右一対の前部モータとが設けられ、上記後車体部に、左右一対の後部走行車輪と、これら後部走行車輪を個々に回転駆動させる左右一対の後部モータとが設けられ、上記車体にステアリング装置が設けられ、上記ステアリング装置は、後車体部に対して前車体部を左右方向へ回動させるステアリングシリンダと、ステアリングに連動して切換えられかつ上記ステアリングシリンダの動作を制御するステアリングバルブと、このステアリングバルブを介して作動流体をステアリングシリンダへ供給するステアリングポンプと、このステアリングポンプの異常時にステアリングポンプの代わりに作動流体をステアリングシリンダへ供給する非常用ポンプとで構成され、上記両前部モータ間に前部差動装置が設けられ、上記前部差動装置の左右一対のアクスルシャフトが両前部モータの回転軸に連結され、上記両後部モータ間に後部差動装置が設けられ、上記後部差動装置の左右一対のアクスルシャフトが両後部モータの回転軸に連結され、上記前部差動装置のリングギヤに歯合するピニオンと後部差動装置のリングギヤに歯合するピニオンとの間がプロペラシャフトで接続され、上記非常用ポンプの回転駆動軸が、動力取出用歯車を介して、前部または後部差動装置の左右いずれか一方のアクスルシャフトに連動連結されていることを特徴とする電動走行式産業用車両。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行車輪を個々にモータで回転駆動させることにより走行する電動走行式産業用車両に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、図9,図10に示すように、産業用車両の一例であるホイールローダ1においては、エンジン2によって各走行車輪9,10を回転駆動させることにより走行するタイプがある。すなわち、車体5は前車体部6と後車体部7とに分割され、これら前車体部6と後車体部7とは、連結軸8を介して、左右方向へ相対的に回動自在に連結されている。上記前車体部6には左右一対の前部走行車輪9が設けられ、後車体部7には、上記エンジン2と左右一対の後部走行車輪10と運転室(図示せず)とが設けられている。
【0003】上記エンジン2の動力は、トルクコンバータ32とトランスミッション12とプロペラシャフト13a,13bと前後両差動装置14,15(ディファレンシャル装置)とを介して前後各走行車輪9,10へ伝達される。
【0004】また、図8,図9に示すように、ホイールローダ1には、車体5の向きを左右へ換向させるステアリング装置17が設けられている。このステアリング装置17は、上記運転室内に設けられたステアリング18と、後車体部7に対して前車体部6を左右方向へ回動させる左右一対のステアリングシリンダ19,20と、上記ステアリング18に連動して切換えられかつ上記両ステアリングシリンダ19,20の動作を制御するステアリングバルブ21と、このステアリングバルブ21を介して作動油をタンク23から両ステアリングシリンダ19,20へ供給するステアリングポンプ22と、ステアリングポンプ22に異常が発生した場合にステアリングポンプ22の代わりに作動油をタンク23から両ステアリングシリンダ19,20へ供給する非常用ポンプ24とで構成されている。
【0005】上記ステアリングバルブ21は、ステアリングポンプ22から両ステアリングシリンダ19,20へ接続された供給流路26の途中に設けられている。また、上記ステアリングポンプ22は上記エンジン2から取り出された動力によって駆動される。また、上記非常用ポンプ24は、図10に示すように、トランスミッション12のケース33に取付けられ、トランスミッション12の出力軸から取り出された動力によって駆動される。
【0006】また、図8に示すように、上記非常用ポンプ24から吐出された作動油は、切換弁25によって、上記供給流路26に合流する合流流路27と、タンク23に回収される回収流路28とのいずれかに切り換えられて流れ込む。また、上記切換弁25は圧力スイッチ29によって切り換えられ、この圧力スイッチ29はステアリングポンプ22の吐出圧によって作動する。
【0007】これによると、通常時(すなわちステアリングポンプ22に異常が無い場合)、エンジン2を作動させることにより、ステアリングポンプ22が駆動する。そして、ステアリング18を左回転することにより、ステアリングバルブ21が中立位置Nから一方の切換位置Aへ切り換わり、ステアリングポンプ22から吐出した作動油が両ステアリングシリンダ19,20へ供給され、左側のステアリングシリンダ19のピストンロッド19aが短縮するとともに、右側のステアリングシリンダ20のピストンロッド20aが伸長する。これにより、前車体部6が、連結軸8を中心に、後車体部7に対して左方向へ回動し、以って、ホイールローダ1が左旋回する。
【0008】同様に、ステアリング18を右回転することにより、ステアリングバルブ21が他方の切換位置Bへ切り換わり、ステアリングポンプ22から吐出した作動油が両ステアリングシリンダ19,20へ供給され、左側のステアリングシリンダ19のピストンロッド19aが伸長するとともに、右側のステアリングシリンダ20のピストンロッド20aが短縮する。これにより、前車体部6が、連結軸8を中心に、後車体部7に対して右方向へ回動し、以って、ホイールローダ1が右旋回する。
【0009】上記のようにステアリングポンプ22に異常が無い場合、非常用ポンプ24はトランスミッション12の出力軸から取り出された動力によって駆動しているが、ステアリングポンプ22の吐出圧によって圧力スイッチ29がオフの状態になっているため、切換弁25が一方の切換位置Cに切り換わり、非常用ポンプ24から吐出された作動油は回収流路28を通ってタンク23へ回収される。
【0010】また、万一、ステアリングポンプ22に異常が発生して停止した場合、ステアリングポンプ22の吐出圧が低下し、圧力スイッチ29がオフからオンの状態に切り換わる。これにより、切換弁25が一方の切換位置Cから他方の切換位置Dに切り換わり、非常用ポンプ24から吐出された作動油は合流流路27を通り供給流路26へ流れ込む。これにより、ステアリングポンプ22が異常停止した場合であっても、ステアリングポンプ22の代わりに、非常用ポンプ24から両ステアリングシリンダ19,20へ作動油が供給されるため、ホイールローダ1の左旋回や右旋回が行なえる。
【0011】尚、ホイールローダ1が左旋回または右旋回する際の内外輪の回転速度差は差動装置14,15によって付与される。また、エンジン2がストップした場合、ステアリングポンプ22も停止してしまうが、ホイールローダ1を牽引することによって、トランスミッション12の出力軸が回転するため、非常用ポンプ24が駆動し、両ステアリングシリンダ19,20へ作動油が供給され、ホイールローダ1の左旋回や右旋回が可能となる。
【0012】上記のホイールローダ1は図10に示すようにエンジン2で各走行車輪9,10を回転駆動させるタイプであるが、最近では、各走行車輪9,10を個々にモータで回転駆動させる電動走行式のホイールローダが登場している。このような電動走行式のホイールローダでは、エンジンで発電機を駆動させ、発電機で得られた電力を各モータへ供給して各モータを駆動させている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような電動走行式のホイールローダでは、図10で示したようなトランスミッション12が不要となるため、非常用ポンプ24を駆動させるための動力を確保することが困難であった。
【0014】本発明は、トランスミッションが設けられていない電動走行式の産業用車両において、非常用ポンプを駆動させるための動力を容易に確保することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、車体が前車体部と後車体部とに分割され、上記前車体部と後車体部とが左右方向へ相対的に回動自在に連結され、上記前車体部に、左右一対の前部走行車輪と、これら前部走行車輪を個々に回転駆動させる左右一対の前部モータとが設けられ、上記後車体部に、左右一対の後部走行車輪と、これら後部走行車輪を個々に回転駆動させる左右一対の後部モータとが設けられ、上記車体にステアリング装置が設けられ、上記ステアリング装置は、後車体部に対して前車体部を左右方向へ回動させるステアリングシリンダと、ステアリングに連動して切換えられかつ上記ステアリングシリンダの動作を制御するステアリングバルブと、このステアリングバルブを介して作動流体をステアリングシリンダへ供給するステアリングポンプと、このステアリングポンプの異常時にステアリングポンプの代わりに作動流体をステアリングシリンダへ供給する非常用ポンプとで構成され、上記両前部モータ間に前部差動装置が設けられ、上記前部差動装置の左右一対のアクスルシャフトが両前部モータの回転軸に連結され、上記両後部モータ間に後部差動装置が設けられ、上記後部差動装置の左右一対のアクスルシャフトが両後部モータの回転軸に連結され、上記前部差動装置のリングギヤに歯合するピニオンと後部差動装置のリングギヤに歯合するピニオンとの間がプロペラシャフトで接続され、上記非常用ポンプの回転駆動軸が、動力取出用歯車を介して、前部または後部差動装置の左右いずれか一方のアクスルシャフトに連動連結されているものである。
【0016】これによると、各モータを駆動することにより、各走行車輪が回転駆動して産業用車両が走行する。ステアリングを回転することにより、ステアリングバルブが切換えられ、ステアリングポンプの作動によって、作動流体がステアリングポンプからステアリングシリンダへ供給され、ステアリングシリンダが作動する。これにより、前車体部が後車体部に対して左右方向へ回動するため、産業用車両の左旋回や右旋回が行なえる。
【0017】万一、走行中に、ステアリングポンプに異常が発生して停止した場合でも、各モータの回転軸と一体に各アクスルシャフトも回転しているため、いずれかのアクスルシャフトの回転駆動力の一部が動力取出用歯車を介して非常用ポンプの回転駆動軸へ伝達され、これにより、非常用ポンプが駆動し、ステアリングポンプの代わりに、作動流体が非常用ポンプによってステアリングシリンダへ供給される。したがって、産業用車両の左旋回や右旋回が可能となる。
【0018】このように、トランスミッションが不要な電動走行式の産業用車両であっても、非常用ポンプを駆動させるための動力を確保することができる。さらに、各モータへの電力の供給が遮断されてしまった場合であっても、産業用車両を牽引することによって、各走行車輪が外部からの力で回転し、各モータの回転軸と一体に各アクスルシャフトも回転するため、非常用ポンプが駆動し、ステアリングポンプの代わりに、作動流体が非常用ポンプによってステアリングシリンダへ供給される。これにより、牽引時においても、産業用車両の左旋回や右旋回が可能となる。
【0019】また、いずれかの走行車輪が浮いたりスリップして負荷(摩擦抵抗)が少ない状態になったとき、浮いたりスリップした走行車輪に対応するモータの駆動力が前部および後部差動装置とプロペラシャフトとを介して残りの走行車輪へ分配される。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。尚、従来のものと同じ構成を有する部材は同一の番号を付記して説明を省略する。
【0021】図5,図6に示すように、電動走行式のホイールローダ40(産業用車両の一例)の前車体部6には、左右一対の前部走行車輪9を回転駆動させる左右一対の前部モータ41が設けられている。また、後車体部7には、左右一対の後部走行車輪10を回転駆動させる左右一対の後部モータ42と、各モータ41,42に電力を供給する発電機43と、この発電機43を駆動させるエンジン44とが設けられている。尚、各走行車輪9,10側には各モータ41,42の回転速度を減らすブレーキ付き減速機47が設けられている。
【0022】また、ステアリングポンプ22は、ポンプ用プロペラシャフト45を介してエンジン44からの駆動軸46に接続されており、エンジン44の駆動力によって作動する。
【0023】図1に示すように、上記両前部モータ41間には前部差動装置49(ディファレンシャル装置)が設けられ、さらに、両後部モータ42間には後部差動装置50が設けられている。尚、上記前部差動装置49は両前部モータ41間に設けられた前部ボックス71(図2参照)内に収納されており、同様に、上記後部差動装置50は両後部モータ42間に設けられた後部ボックス72内に収納されている。
【0024】図3に示すように、上記両差動装置装置49,50はそれぞれ、ディファレンシャルケース51と、このディファレンシャルケース51にスバイダ52を介して遊転自在に支持された前後一対のピニオンギヤ53と、これらピニオンギヤ53に同時に歯合されかつディファレンシャルケース51にアクスルシャフト54を介して遊転自在に支持された左右一対のサイドギヤ55と、これらサイドギヤ55と同一軸心としてディファレンシャルケース51に固定されたリングギヤ56と、このリングギヤ56に歯合されるピニオン57とで構成されている。そして、図1,図2に示すように、各アクスルシャフト54が、対応するモータ41,42の回転軸59に連結されている。
【0025】尚、図3に示すように、両差動装置49,50は、左右方向において相対的に180°変位した状態で配置されている。また、互いに直交する上記ピニオンギヤ53とサイドギヤ55とは、歯数の等しい(すなわちギヤ比1:1)マイタ歯車として構成されている。
【0026】図1,図3に示すように、上記前部差動装置49のピニオン57と後部差動装置50のピニオン57とはプロペラシャフト60の両端部に設けられている。上記プロペラシャフト60は、前部シャフト体60aと、後部シャフト体60bと、これら両シャフト体60a,60b間に設けられている中間部シャフト体60cとに3分割されている。これら各シャフト体60a,60b,60c間はそれぞれ自在継手61,62(ユニバーサルジョイント)によって接続されている。尚、プロペラシャフト60は、前後複数の軸受け装置(図示せず)を介して、回転自在に車体5に保持されている。
【0027】また、図1〜図3に示すように、前部ボックス71の外側には、ブラケット65を介して、上記非常用ポンプ24が設けられている。この非常用ポンプ24の回転駆動軸66に第1の動力取出用歯車67が設けられており、前部差動装置49の左右いずれか一方のアクスルシャフト54に第2の動力取出用歯車68が設けられている。さらに、上記ブラケット65の内部には、上記第1および第2の動力取出用歯車67,68間に歯合する第3の動力取出用歯車69が設けられている。これにより、非常用ポンプ24の回転駆動軸66は、上記第1〜第3の動力取出用歯車67〜69を介して、前部差動装置49の左右いずれか一方のアクスルシャフト54に連動連結される。
【0028】以下、上記構成における作用を説明する。図5,図6に示すように、エンジン44で発電機43を駆動することにより、発電機43から各モータ41,42へ電力が供給され、各モータ41,42が駆動して各走行車輪9,10が回転駆動し、ホイールローダ40が走行する。通常時(すなわちステアリングポンプ22に異常が無い場合)、上記エンジン44の駆動により、ポンプ用プロペラシャフト45が回転し、ステアリングポンプ22が作動する。
【0029】また、上記各モータ41,42の駆動によって、各モータ41,42の回転軸59と一体に各アクスルシャフト54が回転し、このうち図2に示すように前部差動装置49の左右一方のアクスルシャフト54の回転駆動力の一部が、第1〜第3の動力取出用歯車67〜69を介して取り出され、非常用ポンプ24の回転駆動軸66に伝達される。これにより、回転駆動軸66が回転し、非常用ポンプ24が駆動する。
【0030】例えば、図8に示すように、ステアリング18を左回転した場合、ステアリングバルブ21が中立位置Nから一方の切換位置Aへ切り換わり、ステアリングポンプ22から吐出した作動油が両ステアリングシリンダ19,20へ供給され、左側のステアリングシリンダ19のピストンロッド19aが短縮するとともに、右側のステアリングシリンダ20のピストンロッド20aが伸長する。これにより、前車体部6が、連結軸8を中心に、後車体部7に対して左方向へ回動し、以って、ホイールローダ40が左旋回する。
【0031】同様に、ステアリング18を右回転した場合、ステアリングバルブ21が他方の切換位置Bへ切り換わり、ステアリングポンプ22から吐出した作動油が両ステアリングシリンダ19,20へ供給され、左側のステアリングシリンダ19のピストンロッド19aが伸長するとともに、右側のステアリングシリンダ20のピストンロッド20aが短縮する。これにより、前車体部6が、連結軸8を中心に、後車体部7に対して右方向へ回動し、以って、ホイールローダ40が右旋回する。
【0032】上記のようにステアリングポンプ22に異常が無い場合、非常用ポンプ24は図2に示すように前部差動装置49の左右一方のアクスルシャフト54から取り出された動力によって駆動しているが、図8に示すようにステアリングポンプ22の吐出圧によって圧力スイッチ29がオフの状態になっているため、切換弁25が一方の切換位置Cに切り換わり、非常用ポンプ24から吐出された作動油は回収流路28を通ってタンク23へ回収される。
【0033】また、万一、ステアリングポンプ22に異常が発生して停止した場合、ステアリングポンプ22の吐出圧が低下し、圧力スイッチ29がオフからオンの状態に切り換わる。これにより、切換弁25が一方の切換位置Cから他方の切換位置Dに切り換わり、非常用ポンプ24から吐出された作動油は合流流路27を通り供給流路26へ流れ込む。これにより、ステアリングポンプ22が異常停止した場合であっても、ステアリングポンプ22の代わりに、非常用ポンプ24から両ステアリングシリンダ19,20へ作動油が供給されるため、ホイールローダ40の左旋回や右旋回が行なえる。
【0034】このように、トランスミッションが不要な電動走行式のホイールローダ40であっても、非常用ポンプ24を駆動させるための動力を確保することができる。さらに、何らかの異常でエンジン2がストップして、各モータ41,42が停止してしまった場合であっても、ホイールローダ40を牽引することによって、各走行車輪9,10が外部からの力で回転し、各モータ41,42の回転軸59と一体に各アクスルシャフト54も回転するため、非常用ポンプ24が駆動し、ステアリングポンプ22の代わりに、作動油が非常用ポンプ24によってステアリングシリンダ19,20へ供給される。これにより、牽引時においても、ホイールローダ40の左旋回や右旋回が可能となる。
【0035】また、通常の走行時には、各モータ41,42の回転軸59と一体に全てのアクスルシャフト54が同方向に同回転数で回転されることから、図3に示されるように、ピニオンギヤ53は回転せず、両差動装置49,50ならびにプロペラシャフト60は、相互に駆動力を伝達することもなく空転状態になり、以て機械効率は高い(大きい)ものになる。
【0036】また走行時に、4輪のうち1輪が浮いたとき、たとえば左の前部走行車輪9が浮いたとき、この左の前部走行車輪9は負荷(摩擦抵抗)が無い(少ない)ことから高速回転しようとする。すなわち図4に示されるように、前部差動装置49における左前のアクスルシャフト54が、右前のアクスルシャフト54の回転aに比べて高速回転Aを行うことになり、その回転数差によってピニオンギヤ53が回転し、右前のアクスルシャフト54を高速回転させようとするが、このとき前部モータ41の特性が低速側ほど高トルクとなるようになっており、以て左の前部走行車輪9が高速回転するのを抑えるように働く。
【0037】さらに、前部差動装置49におけるリングギヤ56の回転数と、後部差動装置50におけるリングギヤ56の回転数とに回転数差が生じるが、このとき、前後両リングギヤ56間でプロペラシャフト60により駆動力の伝達が行われて、後部差動装置50におけるピニオンギヤ53が増速回転し、以て左の前部走行車輪9の駆動力が残りの3輪に分配されて、残り3輪を増速回転a+αさせることになる。
【0038】すなわち、各走行車輪9,10のうち、いずれかの単数個または複数個の走行車輪9,10が浮いたり、負荷(摩擦抵抗)が少ない状態になったとき、残りの走行車輪9,10に対して、4個のモータ41,42のトルクを利用でき、以て浮いた走行車輪9,10に対応するモータ41,42の駆動力を、残りの走行車輪9,10に有効に分配し得る。
【0039】上記実施の形態では、図5に示すように、産業用車両の一例としてホイールローダ40を挙げたが、フォークリフト等の他の産業用車両であってもよい。上記実施の形態では、図2に示すように、非常用ポンプ24が前部ボックス71に設けられ、非常用ポンプ24の回転駆動軸66が、第1〜第3の動力取出用歯車67〜69を介して、前部差動装置49の左右一方のアクスルシャフト54に連動連結されているが、左右他方のアクスルシャフト54に連動連結されてもよい。また、非常用ポンプ24が後部ボックス72に設けられ、非常用ポンプ24の回転駆動軸66が、第1〜第3の動力取出用歯車67〜69を介して、後部差動装置50の左右一方(または他方)のアクスルシャフト54に連動連結されてもよい。
【0040】上記実施の形態では、図2に示すように、ブラケット65に非常用ポンプ24を1台設けているが、ステアリングシリンダ19,20のサイズに応じて、図7に示すように、非常用ポンプ24を2台(または3台以上)ブラケット65に設けてもよい。
【0041】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、万一、走行中に、ステアリングポンプに異常が発生して停止した場合でも、各モータの回転軸と一体に各アクスルシャフトも回転しているため、いずれかのアクスルシャフトの回転駆動力の一部が動力取出用歯車を介して非常用ポンプの回転駆動軸へ伝達される。これにより、非常用ポンプが駆動し、ステアリングポンプの代わりに、作動流体が非常用ポンプによってステアリングシリンダへ供給される。したがって、産業用車両の左旋回や右旋回が可能となる。このように、トランスミッションが不要な電動走行式の産業用車両であっても、非常用ポンプを駆動させるための動力を確保することができる。
【出願人】 【識別番号】000003241
【氏名又は名称】ティー・シー・エム株式会社
【出願日】 平成12年7月18日(2000.7.18)
【代理人】 【識別番号】100068087
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
【公開番号】 特開2002−34105(P2002−34105A)
【公開日】 平成14年1月31日(2002.1.31)
【出願番号】 特願2000−216730(P2000−216730)