| 【発明の名称】 |
ハイブリッド車の駆動制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】小島 真一
【氏名】大庭 秀洋
【氏名】星屋 一美
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| 【要約】 |
【課題】ハイブリッド車において、電動機の動力により車両が走行中に、内燃機関を始動する場合のショックおよび始動の遅れを防止する。
【解決手段】電動機の出力を走行のための動力伝達系統に伝達して走行している際に、その動力伝達系統に内燃機関を連結してその内燃機関を始動するハイブリッド車の駆動制御装置において、内燃機関の始動の要求を判断する始動要求判断手段と、内燃機関を始動する要求のあったことが始動要求判断手段によって判断された場合に、電動機の出力トルクを、目標とする内燃機関の回転数に基づいて決まるモータリングトルクもしくは該モータリングトルクに前記内燃機関の回転数の変化率に応じた慣性トルクを加えたトルクに相当するトルクだけ増大させるアシスト量設定手段(ステップ074)とを備えている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電動機の出力を走行のための動力伝達系統に伝達して走行している際に、その動力伝達系統に内燃機関を連結してその内燃機関を始動するハイブリッド車の駆動制御装置において、前記内燃機関の始動の要求を判断する始動要求判断手段と、前記内燃機関を始動する要求のあったことが始動要求判断手段によって判断された場合に、前記電動機の出力トルクを、目標とする内燃機関の回転数に基づいて決まるモータリングトルクもしくは該モータリングトルクに前記内燃機関の回転数の変化率に応じた慣性トルクを加えたトルクに相当するトルクだけ増大させるアシスト量設定手段とを備えていることを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。 【請求項2】 電動機の出力を走行のための動力伝達系統に伝達して走行している際に、その動力伝達系統に内燃機関を連結してその内燃機関を始動するハイブリッド車の駆動制御装置において、前記動力伝達系統に前記内燃機関を連結して内燃機関の始動制御を開始した後、内燃機関の回転数が前記電動機の回転数もしくは電動機の回転数に基づいて決まる基準値以上になったことを検出する同期検出手段と、内燃機関の回転数が電動機の回転数もしくは電動機の回転数に基づいて決まる基準値以上になったことが前記同期検出手段によって検出された場合に、前記内燃機関を始動するために増大させた電動機の出力トルクを低下させる手段と前記内燃機関を始動する際に電動機の出力トルクを増大させなかった場合にも電動機の出力トルクを低下させる手段との少なくともいずれか一方の手段とを備えていることを特徴とするハイブリッド車の駆動制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関とモータやモータ・ジェネレータなどの電力によって動作してトルクを出力する電動機とを動力源としたハイブリッド車を対象とした駆動制御装置に関し、特に内燃機関と電動機とを共に走行のための動力源として使用することのできる形式のハイブリッド車の駆動制御装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ハイブリッド車は、内燃機関のみで走行する場合の排ガスの悪化や燃費の低下を改善するために開発された車両であって、電力によって走行トルクを発生するモータあるいは発電機を兼ねたモータ・ジェネレータを、内燃機関と併せて搭載した車両である。この種の車両として、内燃機関を発電のための動力源としてのみ使用するいわゆるシリーズハイブリッド車と、内燃機関を走行のための動力源とすることもできるいわゆるパラレルハイブリッド車とが知られている。 【0003】一方、内燃機関は燃料を供給するだけでは始動せず、外力によって強制的に回転させて始動する必要がある。そのため、一般にはスタータと称されるモータを内燃機関に付設している。しかしながら上記のパラレルハイブリッド形式の車両では、走行のための動力伝達系統に、内燃機関を電動機と併せて連結できるので、電動機によって内燃機関を強制的に回転させ、これにより内燃機関を始動することができる。したがって例えば、発進時などの低車速の状態では、排ガスの悪化を防止し、かつ燃費を向上させるために、電動機によって走行し、車速がある程度高くなった時点で内燃機関を始動する場合、走行に使用していた電動機の出力トルクを内燃機関に伝達すれば、従来一般に使用されていたスタータを用いずに内燃機関を始動することが可能になる。換言すれば、スタータを廃止して部品点数の削減を図ることができる。 【0004】このような内燃機関の始動制御をおこなう装置が、特開平9−193676号公報に記載されている。この公報に記載された装置は、内燃機関を入力クラッチを介して遊星歯車機構における所定の回転要素に連結し、またモータ・ジェネレータを他の回転要素に連結し、更に第3の回転要素を出力部材とした構成の駆動装置を前提とした装置である。そしてこの従来の装置では、モータ・ジェネレータの出力によって走行している状態で、入力クラッチを係合させることにより、内燃機関にトルクを伝達し、これを強制的に回転させて内燃機関を始動している。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】上述した従来の装置によれば、スタータを用いずに内燃機関を始動することができるが、内燃機関を回転させるために前記入力クラッチを係合させると、走行のために使用されていた電動機の出力トルクの一部が、内燃機関を回転させるためのトルク(モータリングトルクおよびイナーシャトルク)として消費されるから、駆動力が一時的に低下する。すなわち入力クラッチの係合に伴って走行トルクが低下し、これがショックとして体感される可能性があった。 【0006】また一方、内燃機関を始動した後は、電動機と内燃機関とによって走行することになるので、電動機の回転数と内燃機関の回転数とが一致した後に、入力クラッチを完全に係合させるのが一般的である。しかしながら電動機と内燃機関との回転数がたとえ一致したとしても、それらの回転数の変化率(回転数の上昇率)が相互に相違していた場合には、入力クラッチを完全に係合させた後に、回転数の上昇率の低い一方の動力源すなわち電動機もしくは内燃機関が、回転数の上昇率の大きい他方の動力源によって引きずられることになる。その結果、入力クラッチを完全に係合させることに伴って走行抵抗が増大したのと同様な事態が生じ、駆動力の落ち込みに起因するショックが生じる可能性がある。 【0007】さらに電動機によって走行している際に前記入力クラッチを係合させて内燃機関の回転数を増大させるとともに、燃料を供給して内燃機関を始動した場合、内燃機関で燃焼が生じることによる出力トルクが、走行のためのトルクに付加される。したがってその際に入力クラッチが充分な伝達トルク容量を持っていれば、電動機による走行トルクに内燃機関の出力トルクが加わるために、駆動力が急激に増大し、これがショックとして体感される可能性があった。 【0008】ところで前記入力クラッチとしては、油圧によって係合させる多板式の摩擦クラッチを使用することができ、前記の公報にも入力クラッチとして多板クラッチが例示されている。この種のクラッチを係合させる場合、油圧回路に備えられたバルブを切り換え、油圧源からクラッチに油圧を供給することになる。その場合、不可避的に管路抵抗が生じるので、入力クラッチの係合指示から実際に入力クラッチが係合するまでには、時間的な遅れが生じる。 【0009】さらに入力クラッチにおいては、摩擦板同士の間や摩擦板とこれを押圧するピストンとの間などに隙間が生じているので、入力クラッチに油圧が供給され始めると、先ず、その隙間(パッククリアランス)が詰まり、しかる後に摩擦板同士の間でトルクが伝達される。このようなパッククリアランスが詰まる間は内燃機関を回転させることができないので、内燃機関を回転させる制御の時間的な遅れが生じる。このように機械構造上の遅れ要因があり、内燃機関の始動制御の応答性が悪化することがあった。 【0010】さらに内燃機関の回転数が燃料の供給によって燃焼が継続的に生じる回転数になったとしても、燃料の供給開始によって直ちに内燃機関がトルクを発生し、また連続した運転をおこなうわけではなく、内燃機関の温度や外気温度などの影響でトルクの発生までに遅れが生じる場合もある。このような遅れが、上述した入力クラッチの動作の遅れなどと相まって、内燃機関の始動制御の応答性を悪化させ、あるいは駆動力の増大が遅延することによるいわゆるもたつき感の原因となることがある。 【0011】この発明は、上記の事情を背景としてなされたものであり、電動機で走行中に内燃機関を始動する場合のショックを防止し、また応答性を向上させることのできる駆動制御装置を提供することを目的とするものである。 【0012】 【課題を解決するための手段およびその作用】上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、電動機の出力を走行のための動力伝達系統に伝達して走行している際に、その動力伝達系統に内燃機関を連結してその内燃機関を始動するハイブリッド車の駆動制御装置において、前記内燃機関の始動の要求を判断する始動要求判断手段と、前記内燃機関を始動する要求のあったことが始動要求判断手段によって判断された場合に、前記電動機の出力トルクを、目標とする内燃機関の回転数に基づいて決まるモータリングトルクもしくは該モータリングトルクに前記内燃機関の回転数の変化率に応じた慣性トルクを加えたトルクに相当するトルクだけ増大させるアシスト量設定手段とを備えていることを特徴とするものである。 【0013】したがって請求項1の発明によれば、内燃機関を始動するために電動機の出力トルクで内燃機関を回転させている場合、電動機の出力トルクあるいは内燃機関を回転させるトルクの不足を内燃機関の回転数の低下によって検出でき、またその検出結果に基づいて電動機の出力トルクを増大させるので、走行中の駆動力の一時的な不足やそれに起因するショックが防止される。 【0014】また請求項2の発明は、電動機の出力を走行のための動力伝達系統に伝達して走行している際に、その動力伝達系統に内燃機関を連結してその内燃機関を始動するハイブリッド車の駆動制御装置において、前記動力伝達系統に前記内燃機関を連結して内燃機関の始動制御を開始した後、内燃機関の回転数が前記電動機の回転数もしくは電動機の回転数に基づいて決まる基準値以上になったことを検出する同期検出手段と、内燃機関の回転数が電動機の回転数もしくは電動機の回転数に基づいて決まる基準値以上になったことが前記同期検出手段によって検出された場合に、前記内燃機関を始動するために増大させた電動機の出力トルクを低下させる手段と前記内燃機関を始動する際に電動機の出力トルクを増大させなかった場合にも電動機の出力トルクを低下させる手段との少なくともいずれか一方の手段とを備えていることを特徴とするものである。 【0015】したがって請求項2の発明によれば、内燃機関を始動するために電動機によって内燃機関を回転させている際に、電動機の出力の過不足をその回転数として常時モニターし、電動機の出力の不足によって回転数が低下した場合には、電動機の出力を増大させるので、駆動力の一時的な低下やそれに起因するショックが未然に防止される。 【0016】 【発明の実施の形態】つぎに、この発明をより具体的に説明する。この発明の駆動制御装置は、二種類の動力源、すなわち内燃機関と電力によって動作して出力する電動機とを備えたハイブリッド車の駆動力を制御するための装置である。ここで、内燃機関は、要は、燃料を燃焼させて動力を出力する動力源であり、具体的には、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは水素ガスなどの気体燃料を使用するガスエンジンなどであり、またその形式は、レシプロエンジンに限らずタービンエンジンなどであってもよい。なお、以下の説明では、内燃機関を「エンジン」と記す。 【0017】また、電動機は、要は、電力によって動作して出力する機能を有する動力源であればよく、交流永久磁石式同期型モータや直流モータなど各種のモータを使用することができ、さらには外力によって駆動されて発電する機能を併せ持ったモータ・ジェネレータを使用することができる。さらに電動機と発電機とを併用することができる。なお、以下に説明する例は、電動機としてモータ・ジェネレータを使用した例である。 【0018】この発明で対象とするハイブリッド車は、電動機の出力によって内燃機関を回転させ、その内燃機関の回転数が所定の回転数に達した際に燃料を供給することにより、内燃機関を始動する形式のハイブリッド車である。すなわち内燃機関と電動機とを、走行のための動力伝達系統に共に連結し、それぞれの出力によって走行することのできるいわゆるパラレル形式のハイブリッド車である。 【0019】その動力伝達系統は、要は、走行のための車輪に対して駆動力を伝達する機構であり、変速機を備えていなくてもよく、あるいは変速機を備えていてもよい。変速機を備えていれば、動力伝達系統において駆動力の制御をおこなうことができる。そしてその変速機としては、手動操作によって変速比を変更する手動変速機や車速およびエンジン負荷などの走行状態に応じて変速比が制御される自動変速機を使用することができる。その変速比を段階的に変化させる有段変速機のみならず、変速比が連続的に変化する無段変速機を使用することもできる。以下の例では、自動変速機を使用した例を示す。 【0020】図1は、この発明に係る駆動制御装置を模式的に示すブロック図であり、エンジン1の出力軸(すなわちクランクシャフト)2がモータ・ジェネレータ3の出力軸4に、入力クラッチ5を介して連結されている。この入力クラッチ5はこの発明におけるクラッチ手段に相当し、これらの出力軸2,4を選択的に連結するための連結機構である。より具体的には、この入力クラッチ5として、油圧によって摩擦板同士が接触させられて伝達トルク容量を持ち、その伝達トルク容量が供給される油圧に応じて増大する形式の摩擦クラッチを使用することができ、さらには湿式多板クラッチを使用することができる。この入力クラッチ5に対する油圧およびその給排を電気的に制御するための制御装置(図示せず)が設けられている。 【0021】図1に示す例におけるエンジン1は、点火時期や燃料供給量(燃料噴射量)、アイドル回転数、バルブタイミングなどを電気的に制御する形式のエンジンであり、その制御のための電子制御装置(エンジンECU)6が設けられている。この電子制御装置6はマイクロコンピュータを主体として構成された装置であり、吸入空気量やアクセルポジション、エンジン水温、エンジン回転数NE などのデータが入力され、予め記憶しているデータおよびプログラムと入力されたデータとに基づいて、点火時期などの制御量を決定して出力するように構成されている。 【0022】また上記のエンジン1は、スロットル開度を電気的に制御する電子スロットルバルブ7を備えている。この電子スロットルバルブ7は、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量やモード選択スイッチによって選択されたモード信号などの各種のデータに基づいて演算された制御量によって開度が制御されるバルブである。その制御をおこなうための電子制御装置(電子スロットルECU)8が設けられている。この電子制御装置8もマイクロコンピュータを主体にして構成されている。 【0023】モータ・ジェネレータ3は、例えばコイルを備えたステータの内周側に、出力軸4と一体のロータを回転自在に配置し、さらにロータの回転を検出するレゾルバなどを備えた公知の構造のものであり、コイルへの通電を制御することにより、ロータが正回転もしくは逆回転するとともに、そのトルクが制御され、またロータを外力によって回転させることにより起電力を生じるように構成されている。このモータ・ジェネレータ3を制御するために、マイクロコンピュータを主体とした電子制御装置(M/G−ECU)9が設けられている。この電子制御装置9には、制御データとして例えばモータ・ジェネレータ3の回転数(モータ回転数)NM が入力されている。 【0024】さらにモータ・ジェネレータ3に電流を供給し、またモータ・ジェネレータ3で発生した電力を蓄えるバッテリ10が設けられている。このバッテリ10の放電および充電を制御するために、マイクロコンピュータを主体とする電子制御装置(バッテリECU)11が設けられている。 【0025】上記のモータ・ジェネレータ3の出力軸4に変速機13の入力軸14が連結されている。この図1に示す例では、その変速機13として走行状態に基づいて変速比が制御される電子制御式の自動変速機が採用されている。すなわちこの変速機13は、スロットル開度や車速あるいはシフトパターン、シフトレンジなどのデータに基づいて変速比を決定し、その変速比を達成するようにクラッチやブレーキなどの摩擦係合装置(図示せず)を油圧によって制御するように構成されている。その制御のために、マイクロコンピュータを主体とした電子制御装置(T/M−ECU)15が設けられている。 【0026】そしてこの変速機13の出力軸16が、図示しないプロペラシャフトや車軸などを介して車輪に連結されている。したがってこの変速機13やこれに連結されたプロペラシャフトあるいはモータ・ジェネレータ3の出力軸4などがこの発明における動力伝達系統に相当している。 【0027】上記の各電子制御装置6,8,9,11,15が、マイクロコンピュータを主体としたハイブリッド制御装置(HV−ECU)17に相互にデータを通信するように接続されている。このハイブリッド制御装置17は、前記入力クラッチ5の係合・解放や伝達トルク容量の制御、およびエンジン1の燃料供給のタイミングおよび燃料供給量の制御、ならびにモータ・ジェネレータ3の駆動・回生および出力トルクの制御、変速機13による変速比の制御などを総合的におこない、ハイブリッド車の駆動力を制御するように構成されている。すなわちハイブリッド制御装置17は、その制御のために必要とするデータの入出力をおこない、またデータ処理のためのプログラムを備えている。 【0028】ハイブリッド車は、燃費を向上させ、また排ガスをクリーンにすることを主な目的として開発された車両であり、低車速時にはモータの出力で走行し、所定の車速以上での一定車速で走行する場合には、エンジンの出力で走行し、より大きい駆動力が要求される場合には、エンジンとモータとの出力で走行するなど、走行状態に応じて動力源を選択する。したがってモータによって走行している際にエンジンを始動することになるが、動力伝達系統が上述した図1に示すように構成されている場合には、モータトルクをエンジンに伝達してエンジンを回転させることにより、エンジンを始動することができる。 【0029】そこでこの発明による駆動制御装置は、以下に述べるようにエンジン1の始動を制御する。図2は、エンジン1の始動制御のためにエンジン1を動力伝達系統に連結する制御、すなわち前記入力クラッチ5の係合制御ための全体的な制御ルーチンを示すフローチャートであって、このルーチンは数ミリ秒ごとに繰り返し実行される。 【0030】先ず、ステップ001においてエンジン始動要求フラグF1 がONか否かが判断される。エンジン1の始動要求は図示しないサブルーチンによって判定される。具体的には、モータ・ジェネレータ3の出力で走行している際に車速が所定の車速に達した場合、あるいはバッテリ10の充電量が低下した場合、さらにはモータ・ジェネレータ3によって走行している際にアクセルペダル(図示せず)が大きく踏み込まれて駆動力の増大要求があった場合などにエンジン始動要求フラグF1 がONになる。 【0031】エンジン始動要求フラグF1 がONであることによりステップ001で肯定判断された場合に、エンジン始動制御フラグF2 をONにする(ステップ002)。また反対にエンジン始動要求フラグF1 がOFFであることによりステップ001で否定判断された場合には、エンジン始動制御フラグF2 がONか否かが判断される(ステップ003)。未だエンジン始動要求がないことによりエンジン始動要求フラグF1 およびエンジン始動制御フラグF2 のいずれもがOFFであれば、このステップ003で否定判断され、その場合はこのルーチンを終了する。また既にエンジン始動制御フラグF2 をONにした後に、再度、ステップ001の判断をおこなうと、エンジン始動要求フラグF1 がOFFに切り替わっているために否定判断されるが、エンジン始動制御フラグF2 が既にONになっているので、ステップ003で肯定判断される。 【0032】上記のステップ002でエンジン始動制御フラグF2 をONにした後、あるいはステップ003で肯定判断された場合には、入力クラッチ5の油圧処理(ステップ004)、モータトルク処理(ステップ005)、エンジントルク処理(ステップ006)、ダウンシフト開始許可処理(ステップ007)をおこなう。なお、これらのステップ004ないしステップ007の各処理については後述する。 【0033】ついで入力クラッチ5の係合終了判定フラグF3 がONか否かが判断される(ステップ008)。入力クラッチ5は、エンジン1を動力伝達系統に連結するためのクラッチであるから、エンジン1が燃料の供給によって回転を継続する状態になったこと、あるいはそれに伴ってモータ・ジェネレータ3のトルクを低下させ始めたことなどによって入力クラッチ5が完全に係合したことを判定することができる。そしてこのステップ008で否定判断された場合、すなわち入力クラッチ5の係合が終了していない場合には、このルーチンから抜け、ステップ004ないしステップ007の処理を継続する。また反対に入力クラッチ5の係合が終了していることによりステップ008で肯定判断された場合には、エンジン始動制御フラグF2 をOFFに切り換える制御および係合終了判定フラグF3 のON信号の出力をおこない(ステップ009)、入力クラッチ5の係合処理を終了する。 【0034】エンジン1の始動要求があった場合、入力クラッチ5を係合させてエンジン1を動力伝達系統に連結することにより、エンジン1をモータトルクによって回転させるが、その場合、駆動力の急変によるショックを防止するために、入力クラッチ5の油圧を以下に述べるように制御する。図3ないし図5は、前記のステップ004で割り込み処理される入力クラッチの油圧処理のためのサブルーチンを示している。 【0035】このサブルーチンは、図1に示すルーチンの実行に伴って数ミリ秒の間隔で繰り返し実行される。したがってステップ011ではこのサブルーチンの実行が初回であるか否かが判断される。入力クラッチ5を係合させる油圧処理が開始される場合には、このステップ011で肯定判断され、また反対に入力クラッチ5を係合させる油圧処理が既に開始している場合には、図3ないし図5に示すルーチンの実行が2回目以降になるので、ステップ011で否定判断される。 【0036】ステップ011で肯定判断された場合には、ファスト・クイック・フィルフラグ(FQFフラグ)F4 をON(ステップ012)にした後、ステップ013に進む。また入力クラッチ5の油圧処理が既に開始されていてステップ011で否定判断された場合には、直ちにステップ013に進む。 【0037】ここでFQFフラグF4 は、入力クラッチ5を係合させる初期油圧(FQF油圧)の供給を開始し、かつその供給制御が終了するまでの間、ONに設定されるフラグである。またこの初期油圧の供給制御は、入力クラッチ5における摩擦板同士(図示せず)の間の隙間やピストン(図示せず)と摩擦板との間の隙間を迅速に詰めるために、予め設定したある程度高い油圧を初期油圧として供給する制御である。ステップ013ではこの初期油圧の供給制御の開始あるいは終了を判定するために、FQFフラグF4 がONか否かが判断される。 【0038】入力クラッチ5の係合開始が判断されたことによりFQFフラグF4 がONであれば、ステップ013で肯定判断され、その場合は、初期油圧としてファスト・クイック・フィル油圧(FQF油圧)を出力することが指令される(ステップ014)。入力クラッチ5の油圧を制御するための手段として、デューティソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブ)などの電気的に制御可能なバルブを使用することができ、このようなソレノイドバルブを使用した場合には、ステップ014の制御は、指令信号を一時的に増大させる制御となる。またその指令信号は予め定めた値の信号である。なお、この指令信号は固定値である必要はなく、油温などの条件に応じてマップ値として設定した値(すなわち変数)であってもよい。 【0039】つぎにパワーオンダウンシフトフラグF5 がONか否かが判断される(ステップ015)。すなわちアクセルペダルが踏み込まれ、それに伴ってダウンシフトをおこなうべきことの判断が成立していると、このフラグF5 がONとなる。このフラグF5 の制御は自動変速機用電子制御装置15によっておこなわれる。そしてこのフラグF5 がOFFであることによりステップ015で否定判断された場合には、通常時における初期油圧の供給時間(指令時間)T1 が経過したか否かが判断される(ステップ016)。 【0040】これとは反対にダウンシフトが判断されていることによりステップ015で肯定判断された場合には、ダウンシフト用の初期油圧の供給時間(指令時間)T1’ が経過したか否かが判断される(ステップ017)。これらの指令時間T1,T1’ は、初期油圧を供給するための指令信号を出力し続ける時間であり、通常時用の指令時間T1 が、ダウンシフト時用の指令時間T1’ より短く(T1 <T1’ )設定されている。すなわちダウンシフトが判断されている場合には、初期油圧の供給時間が長くなる。 【0041】ステップ016あるいはステップ017で肯定判断された場合、すなわち初期圧を供給すべき時間が経過した場合には、FQFフラグF4 をOFFにし(ステップ018)、かつ低圧待機油圧フラグF6 をONにする(ステップ019)。これとは反対に、指令時間T1 ,T1’ が経過しないことにより、ステップ016もしくはステップ017で否定判断された場合には、ステップ108およびステップ019を飛ばしてステップ020に進む。すなわち初期油圧(FQF油圧)の供給制御を継続する。 【0042】また、FQFフラグF4 がOFFであることによりステップ013で否定判断された場合にもステップ020に進む。すなわちこの場合は、初期油圧の供給が終了しているので、ステップ014ないしステップ019を実行しない。 【0043】ステップ020では、低圧待機油圧フラグF6 がONか否かが判断される。上記の初期油圧の供給終了後、入力クラッチ5を不完全係合状態に待機させている間、ONとされるフラグであり、したがって入力クラッチ5に供給する油圧を制御して入力クラッチ5を不完全係合状態に維持している間はステップ020で肯定判断され、またその低圧待機制御が終了した後は、ステップ020で否定判断される。 【0044】低圧待機油圧フラグF6 がONとなっていることによりステップ020で肯定判断された場合には、パワーオンダウンシフトフラグF5 がONか否かが判断される(ステップ021)。このステップ021の判断は、前述したステップ015の判断と同様にしておこなわれる。そしてステップ021で否定判断されれば、通常時用の待機油圧を設定する指令信号が出力される(ステップ022)。これとは反対に、ステップ021で肯定判断された場合には、ダウンシフト用の待機油圧を設定する指令信号が出力される(ステップ023)。 【0045】ここで待機油圧とは、入力クラッチ5に前記初期油圧を供給した後、入力クラッチ5を不完全係合状態に待機させるのに要する油圧である。またその不完全係合状態は、例えば伝達トルク容量が負荷されているトルクより僅かに小さいために出力側の回転変化が生じない程度の係合状態、あるいは油圧がわずか上昇することにより、負荷トルクより伝達トルク容量が勝って出力側に回転変化が生じる係合状態である。そしてダウンシフト用の待機油圧が通常時用の待機油圧より高く設定される。 【0046】したがってダウンシフトが判断されている場合には、入力クラッチ5が、より完全係合状態に近い状態になる。なお、この低圧待機油圧の指令は、具体的には、油圧制御手段であるデューティソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブ)に対するパルス信号を出力することによりおこなわれる。またその指令信号は、通常時とダウンシフト時とで異ならせることに加え、油温に応じて変化させてもよい。 【0047】上述のようにして待機油圧の制御を開始した後、エンジン回転数NE が予め決めた基準回転数N1 になったか否かが判断される(ステップ024)。この基準回転数N1 はゼロに近い小さい値であり、したがってこのステップ024ではエンジン1が回転し始めたか否かを判断することになる。エンジン1が回転し始めることによりステップ024で肯定判断された場合には、初期油圧の供給時間(FQF時間)の学習制御が実行される(ステップ025)。この学習制御については後述する。さらにこの学習制御に続けて低圧待機油圧フラグF6 がOFFに制御され(ステップ027)、さらに油圧スイープアップフラグF7 がON制御される(ステップ028)。 【0048】一方、エンジン1が回転し始めないことによりステップ024で否定判断された場合には、待機油圧タイマのカウント値が予め定めた基準値以上になったか否かが判断される(ステップ026)。これはいわゆるガードタイマによる制御であり、待機油圧制御が不必要に長い時間継続することを防止するための制御である。したがってステップ026で肯定判断された場合には、直ちにステップ027に進んで待機圧制御を終了する。また反対に、ステップ026で否定判断された場合には、待機圧制御を継続するべき状態であるため、ステップ027およびステップ028を飛ばしてステップ029に進む。なお、低圧待機油圧フラグF6 がOFFであることによりステップ020で否定判断された場合にも直ちにステップ029に進む。低圧待機制御が終了しているからである。 【0049】ここでFQF時間の学習制御について説明する。前述したように初期油圧は、入力クラッチ5における隙間(パッククリアランス)を詰めて係合開始直前の状態にするために供給するが、その初期油圧の供給時間が短ければ、パッククリアランスが充分に詰まらず、また反対に初期油圧の供給時間が長ければ、入力クラッチ5が早期に係合してエンジン1の回転開始が過剰に早くなってしまう。そこで、初期油圧の供給終了の時点からエンジン1が回転し始めるまでの時間に基づいて初期油圧の供給時間(FQF時間)を増減し、適正な値に設定する。 【0050】具体的には、図6に示すように制御する。すなわち図6はFQF時間の学習のためのサブルーチンを示しており、前記ステップ018でFQFフラグF4 をOFFにしてからエンジン1の回転数NE が基準回転数N1 以上になってステップ024で肯定判断されるまでの時間すなわちエンジン始動時間T2 が、予め設定した基準時間τ1 を越えたか否かが判断される(ステップ051)。エンジン始動時間T2 がその基準時間τ1 以下であることによりステップ051で否定判断された場合には、ステップ052に進んでエンジン始動時間T2 が第2の基準時間τ2 未満か否かが判断される。ここで第2の基準時間τ2 は第1の基準時間τ1 より短い値(τ1 >τ2 )である。 【0051】エンジン始動時間T2 が第2の基準時間τ2 未満であれば、エンジン1が回転し始めるタイミングが早すぎることになる。これは、初期油圧(FQF油圧)の供給時間(FQF時間)T1 が長く、入力クラッチ5に初期油圧が過剰に供給されて係合が進行していることに起因している。そこで、ステップ052で肯定判断された場合には、FQF時間T1 から所定値ΔT1 を減じて、前記ステップ016で判断されるFQF時間T1 を短くする(ステップ053)。すなわち次回の初期油圧の供給時間を短くし、入力クラッチ5を解放状態に近づける。 【0052】これに対してエンジン始動時間T2 が第1の基準時間τ1 より長いことにより、ステップ051で肯定判断された場合には、入力クラッチ5を介してエンジン1に充分にトルクが伝達されていないことになる。したがってこの場合は、FQF時間T1 に所定値ΔT1 を加えて、前記ステップ016で判断されるFQF時間T1 を長くする(ステップ054)。すなわち次回の初期油圧の供給時間を長くし、入力クラッチ5を係合状態に近づける。なお、エンジン始動時間T2 が各基準時間τ1 ,τ2 の間にあって適正である場合には、FQF時間T1 の増減をおこなわず、検出されたエンジン始動時間T2 をそのまま記憶(ステップ055)し、その後にリターンする。また、ステップ053あるいはステップ054の制御をおこなった場合には、ステップ055に進んでエンジン始動時間T2 を記憶する。 【0053】つぎに入力クラッチ5の油圧のスイープアップ制御について説明する。この制御は、入力クラッチ5の油圧を次第に高くすることにより、エンジン回転数NEを滑らかに上昇させるための制御であり、上述のように待機油圧の制御を開始した後にエンジン1が回転し始めたことが検出されることにより、スイープアップ制御が開始される。具体的には図4に示すように、油圧スイープアップフラグF7 がONか否かが判断される(ステップ029)。油圧スイープアップ制御が開始していれば、ステップ029で肯定判断され、またその油圧スイープアップ制御が開始していない場合および既に終了している場合には、ステップ029で否定判断される。 【0054】入力クラッチ5の油圧を漸増させるスイープアップ制御が開始していることによりステップ029で肯定判断された場合には、パワーオンダウンシフトフラグF5 がONか否かが判断される(ステップ030)。そのステップ030は前述したステップ015やステップ021と同様な判断ステップである。ダウンシフトが判断されていることによりこのステップ030で肯定判断された場合には、エンジン回転数NE が予め定めた基準値N2 より低回転数か否かが判断される(ステップ031)。 【0055】この基準値N2 は例えばアイドリング回転数程度の値である。したがってこのステップ031で肯定判断された場合には、ダウンシフトによる駆動力の増大が要求されているにも関わらず、エンジン回転数NE が低い状態であるから、短時間でエンジン回転数NE を目標とする回転数まで上昇させるために、入力クラッチ5の油圧のスイープアップ勾配を大きくする(ステップ032)。なお、スイープアップ勾配を大きくする制御は、エンジン回転数NE がモータ回転数NM に同期するまで継続してもよい。 【0056】これに対してパワーオンダウンシフトが判断されていないことによりステップ030で否定判断された場合、あるいはパワーオンダウンシフトが判断されているもののエンジン回転数NE が基準回転数N2 以上であることによりステップ032で否定判断された場合には、入力クラッチ5の油圧のスイープアップ勾配を、前記ステップ032で設定する勾配より小さい通常の勾配に設定する(ステップ033)。なお、このステップ033で設定される通常のスイープアップ勾配は、エンジン始動制御の遅れ感が生じず、かつエンジン回転数を急速に増大させることに伴う駆動力の低下が生じないように予め定めた勾配である。したがってダウンシフトが判断されていることによりスイープアップの勾配を増大するのは、エンジン回転数NE が上記の基準値N2 に達するまでの間である。 【0057】ステップ032もしくはステップ033でスイープアップ勾配を設定した後、入力クラッチ5の油圧指令値を、設定された勾配に従ってスイープアップする(ステップ034)。具体的には、入力クラッチ5の油圧を制御するデューティ比を次第に増大もしくは減少させる。入力クラッチ5の油圧をスイープアップさせると、モータ・ジェネレータ3からエンジン1に伝達されるトルクが次第に増大するから、エンジン1の回転数NE がモータ・ジェネレータ3の回転数に次第に近づく。 【0058】したがってステップ034に続くステップ035では、エンジン回転数NE とモータ・ジェネレータ3の回転数NM との差の絶対値が基準値N3 より小さい状態が予め決めた所定時間継続しているか否かが判断される(ステップ035)。この基準値N3 は比較的小さい値であり、したがってステップ035ではエンジン回転数NE がモータ・ジェネレータ3の回転数(モータ回転数)NM に実質的に同期したか否かが判断されることになる。 【0059】エンジン回転数NE がモータ回転数NM に同期したことにより、ステップ035で肯定判断された場合には、油圧スイープアップフラグF7 をOFFにし(ステップ036)、さらに油圧最大フラグF8 をONにする(ステップ037)。すなわち入力クラッチ5の油圧のスイープアップ制御を終了し、その油圧を最大値に設定する制御を開始する。 【0060】これに対してエンジン回転数NE がモータ回転数NM よりも基準値N3 以上に低い場合やエンジン回転数NE がモータ回転数NM にほぼ一致してもその状態が継続しない場合には、ステップ035で否定判断される。この場合は、ステップ036およびステップ037を飛ばしてステップ038に進む。すなわち油圧のスイープアップ制御を継続する。また、油圧スイープアップフラグF7 がOFFであることによりステップ029で否定判断された場合には、油圧のスイープアップ制御自体を実行しないのであるから、直ちにステップ038に進む。 【0061】ステップ038では油圧最大フラグF8 がONか否かが判断される。入力クラッチ5の油圧のスイープアップ制御が終了した場合には、このフラグF8 がON制御され、それ以外の場合すなわち油圧スイープアップ制御を継続している場合や油圧を最大にする制御が終了している場合にはこのフラグF8 がOFFに設定される。したがって油圧のスイープアップ制御が終了して油圧最大フラグF8 がONに設定されていれば、ステップ038で肯定判断され、その場合は、入力クラッチ5の油圧を最大にする制御が実行される(ステップ039)。すなわち入力クラッチ5の油圧の制御指令値が最大に設定される。具体的には、指令信号のデューティ比を最大もしくは最小にして入力クラッチ5の油圧をライン圧にまで昇圧する。なお、油圧最大フラグF8 がOFFであることによりステップ038で否定判断された場合には、ステップ039を飛ばしてステップ040に進み、その直前の制御を継続する。 【0062】ついでステップ040では、入力クラッチ5の係合終了判定フラグF3 がONか否かが判断され、そのフラグF3 がONでなければ、油圧指令値を最大にする制御を継続する。また反対に入力クラッチ5の係合終了の判定フラグF3 がONになっていてステップ040で肯定判断された場合には、油圧最大フラグF8 をOFFに切り換えた後、リターンする。 【0063】以上述べた制御を実行した場合のタイムチャートを図7に示してある。エンジン始動要求フラグF1 がt1 時点でONになると、それと同時にエンジン始動制御フラグF2 およびFQFフラグF4 がONになる。そして入力クラッチ5の油圧を初期油圧(FQF油圧)に制御するための指令値が出力され、その制御が予め定めたFQF時間T1 の間、継続される。この初期油圧制御をおこなうことによって入力クラッチ5の油圧が図7に細い実線で示すように増大し、待機油圧程度の圧力に達する。 【0064】FQF時間T1 が経過したt2 時点でFQFフラグF4 がOFFになり、また低圧待機圧フラグF6 がONに制御される。この時点で入力クラッチ5の油圧の制御値は、待機油圧に相当する値に設定され、その指令値が維持される。この状態では入力クラッチ5はトルクを伝達しているものの不完全な係合状態であり、したがってエンジン1の回転数NE が直ちに増大することはない。この低圧待機油圧に維持する制御中に、後述するようにモータ・ジェネレータ3の出力トルクが増大させられ、その結果、エンジン1が回転し始める。これは、前述したようにエンジン回転数NE がゼロに近い基準値N1 以上になったことに基づいて判断される。 【0065】そしてその判断の成立したt3 時点に低圧待機油圧フラグF6 がOFFとなり、また油圧スイープアップフラグF7 がONになる。そして入力クラッチ5の油圧のスイープアップ制御が開始される。すなわち油圧指令値がスイープアップされる。入力クラッチ5の係合油圧が漸増することにより、エンジン1を回転させるトルクが増大するから、エンジン回転数NE が次第に上昇する。その結果、エンジン回転数NE とモータ回転数NM との差が所定の基準値N3 以内に収まる状態が所定時間継続すると、エンジン回転数NE がモータ回転数NM に同期したことが判定され、そのt4 時点で油圧スイープアップフラグF7 がOFFになり、また油圧最大フラグF8 がONになる。それに伴い入力クラッチ5の油圧がライン圧(油圧装置全体の元圧)まで昇圧される。 【0066】その後、走行のための動力源をモータ・ジェネレータ3からエンジン1に切り換える制御が行われ、その制御の終了と同時に入力クラッチ5の係合終了フラグF3 がONとなる。そのt5 時点にエンジン始動制御フラグF2 および油圧最大フラグF8 がOFFになる。 【0067】また一方、パワーオンダウンシフトの判断が成立した場合のタイムチャートを図8に示してある。図8において、エンジン始動要求によってエンジン始動制御フラグF2 がONになったt1 時点から所定時間の経過したt6 時点に例えばアクセルペダルが大きく踏み込まれてパワーオンダウンシフトフラグF5 がONになったとすると、初期油圧の供給制御時間が通常時用のFQF時間T1 に替えてダウンシフト用のFQF時間T1 ’が選択される。また、待機油圧が通常時の圧力より高い圧力に設定される。図8の入力クラッチ指令値を示す実線のうち太い実線がダウンシフト時の指令値を示し、細い実線が通常時の指令値を示している。さらにダウンシフトが要求されていることにより、入力クラッチ5の油圧のスイープアップ勾配が、通常時より増大させられる。図8に示す例では、エンジン回転数NE がある程度上昇したt7 時点までスイープアップ勾配を増大させている。 【0068】したがってダウンシフトの要求があった場合には、初期油圧の供給時間(FQF時間)T1 ’が長くなることにより、入力クラッチ5が通常時よりも係合状態に近くなるように制御される。また低圧待機油圧が通常時よりも高いので、入力クラッチ5の伝達トルク容量が大きくなる。その結果、エンジン1に伝達されるトルクが大きいために、エンジン1が通常時より早い時点に回転し始める。その後、入力クラッチ5の油圧のスイープアップ勾配が通常時より大きく設定されるために、エンジン1に伝達されるトルクが通常時より早く増大させられる。すなわちエンジン1の回転数が迅速に引き上げられ、エンジン回転数NE のモータ回転数NMへの同期ならびにエンジン1の始動が早期に達成される。それに伴いエンジン1による走行が早期に可能になり、駆動力の増大要求に即した制御が達成される。 【0069】つぎに前記ステップ005で実行されるモータトルクの処理について説明する。この制御は、駆動力の変化によるショックやエンジン1の始動の遅れを防止するための制御であり、エンジン1を回転させるためのモータ・ジェネレータ3のトルク制御と、エンジン1の始動が完了した後のモータ・ジェネレータ3のトルクの漸減制御とを含む。すなわち図9は、モータトルク処理サブルーチンを示すフローチャートであって、先ず、油圧最大フラグF8 がONか否かが判断される(ステップ061)。前述したようにこの油圧最大フラグF8 は、エンジン回転数NE がモータ回転数NM に同期したことが判断されることによりON制御されるフラグであり、したがってこのフラグF8 がONであればエンジン1の実質的な始動が完了してエンジン1が自らの出力で回転し、トルクを出力していることになる。これとは反対に油圧最大フラグF8 がOFFであれば、エンジン回転数NE がモータ回転数NM に同期するに到っていないことになる。 【0070】油圧最大フラグF8 がONであることによりステップ061で肯定判断された場合には、油圧最大フラグF8 がONになってから予め設定した所定時間T3 が経過したか否かが判断される(ステップ062)。この時間T3 は、エンジン回転数NE がモータ回転数NM に同期し、エンジン1に燃料が供給されてエンジン1が回転し始めた後に、エンジン1の回転が安定するに要する時間である。したがってステップ062は、エンジン回転数NE が安定することを判断する判断プロセスであり、時間の経過を判断する替わりにエンジン回転数NE の検出値に基づいてエンジン回転数NE の安定状態を判断することとしてもよい。 【0071】ステップ062で肯定判断された場合には、エンジン1の回転が安定したことになり、したがってこの場合は、モータトルク指令値をスイープダウンしてモータ・ジェネレータ3の出力トルクを次第に低下させる。これは、後述するように、モータ・ジェネレータ3による走行からエンジン1による走行に切り換えるための制御である。 【0072】一方、油圧最大フラグF8 がOFFであることによりステップ061で否定判断された場合には、モータ・ジェネレータ3によるアシストトルクの演算処理(ステップ064)、モータトルク指令演算処理(ステップ065)、モータ回転数上昇ガード処理(ステップ066)をおこなう。モータ・ジェネレータ3の動力で走行している際にエンジン1を始動する場合、エンジン1を回転させるためのトルクがモータ・ジェネレータ3に負荷される。このエンジン1を回転させて始動するのに要するトルクがアシストトルクであり、ステップ064ではこのアシストトルクを演算する。 【0073】図10はそのアシストトルク演算のサブルーチンを示すフローチャートであり、先ず、モータリングトルクを求める(ステップ071)。このモータリングトルクは、エンジン1を回転させるために要するトルクであり、エンジン1の構造や大きさおよび回転させるべき回転数などに応じて決まる。そこで図10に示す例では、エンジン回転数NE をパラメータとしたマップの形でモータリングトルクを定めておき、目標とするエンジン回転数NE に基づいてマップをサーチしてモータリングトルクを求める。 【0074】つぎにエンジン回転数NE の上昇率を演算する(ステップ072)。これは、ステップ071で求めたモータリングトルクをモータ・ジェネレータ3の出力トルクに付加した場合に生じるエンジン回転数NE の変化に基づいて演算する。具体的には、エンジン回転数NE を一定時間毎に検出し、前回の検出値と今回の検出値との差や比に基づいてエンジン回転数上昇率を演算する。こうして求められたエンジン回転数上昇率に比例定数を掛けてイナーシャトルクを演算する(ステップ073)。エンジン回転数NE を目的とする回転数にまで上昇させるには、モータリングトルクと回転変化を生じさせるイナーシャトルクとを必要とするから、上述のようにして求めたモータリングトルクとイナーシャトルクとを加えてアシストトルクとする(ステップ074)。 【0075】アシストトルクをモータ・ジェネレータ3の出力トルクに付加する場合、トルクの急変を防止するために、アシストトルクの加工処理をおこなう(ステップ075)。このアシストトルク加工処理のサブルーチンを図11にフローチャートとして示してある。このアシストトルク加工処理は、モータ・ジェネレータ3の出力トルクを増大させる際の過渡的な制御であり、したがってアシストトルクがゼロ以上の場合に実行される。すなわちステップ081でアシストトルクがゼロより大きいか否かが判断され、アシストトルクがゼロ以下であることによりステップ081で否定判断された場合には、リータンする。これに対して、アシストトルクがゼロより大きいことによりステップ081で肯定判断された場合には、今回開始したアシストトルクの加工処理としては最初のルーチンの実行か否かが判断される(ステップ082)。 【0076】ステップ082で肯定判断された場合には、アシストカウンタをクリアしてカウントを新たに開始する(ステップ083)。これとは反対に、ステップ081で否定判断された場合には、アシストカウンタによるカウントが既に開始されていることになり、したがってこの場合は、ステップ084に進んでアシストカウンタによるカウントアップをおこなう。 【0077】ついでそのアシストカウントのカウント値が予め定めた所定値より小さいか否かが判断される(ステップ085)。ここでこの所定値は、アシストトルクを等分する数である。換言すれば、トルクを複数回に分けて増大させて最終的なアシストトルクに至らしめるためのトルクの増大回数である。したがってこれに続くステップ086では、前記所定値とアシストカウンタのカウント値との比を、前記ステップ074で求めたアシストカウンタに積算し、今回の目標アシストトルクとする。すなわち、所定値を“n”とした場合、第1回目の目標アシストトルクは、前記ステップ074で求めた最終アシストトルクの(1/n)となり、第2回目は最終アシストトルクの(2/n)が目標アシストトルクとなり、最終のn回目には、目標アシストトルクが最終アシストトルクの(n/n)となる。 【0078】このステップ081ないしステップ086の制御を複数回おこなうことにより、アシストカウンタのカウント値が前記所定値に達すると、ステップ085で否定判断され、その場合、ステップ086の制御をおこなわずにリターンする。したがってアシストトルクを徐々に増大させることになる。 【0079】エンジン1を始動するためにこれを回転させるには、アシストトルクを付加したトルクをモータ・ジェネレータ3によって出力させる必要がある。そのためのモータ・ジェネレータ3のトルク制御は、ステップ065のモータトルク指令演算処理によっておこなわれる。図12は、モータトルク指令演算処理サブルーチンを示している。上述のようにしてアシストトルクが決定されると、その時点における走行のための駆動要求トルクにアシストトルクが加算され、その和がモータトルク指令値として出力される(ステップ091)。具体的には、M/G−ECU9および/またはバッテリECU11によってモータ・ジェネレータ3に対する電流値が制御される。 【0080】上述したアシストトルクは、マップから求めたモータリングトルクおよびその時点のエンジン回転数NE の変化率から求めたイナーシャトルクに基づくトルクであるが、実際の走行時には走行状態あるいはエンジン1の状態などが原因となってモータ・ジェネレータ3の出力トルクが不足する場合がある。その状況は、エンジン回転数NE の低下として現れ、また減速感として体感される場合もある。そこで、このような場合には、モータトルク指令値を増大させる。前記ステップ066はそのための制御ステップであり、その具体的な内容を図13に示してある。 【0081】図13はモータ回転数の上昇ガード処理のためのサブルーチンを示しており、先ず、ステップ101でモータ回転数NM の上昇量を演算する。これは、前記M/G−ECU9に入力されるモータ回転数NM をモニターすることにより求めることができる。ついでモータ回転数NM の上昇量が負か否かが判断される(ステップ102)。このステップ102で否定判断された場合にはモータ回転数NMが低下していないことになるので、特に制御をおこなうことなくリターンする。 【0082】これに対してステップ102で肯定判断された場合には、モータ回転数NM が低下していることになるので、演算して得られたモータ回転数上昇量の絶対値に係数を掛けて上昇マイナスガードトルクを求める(ステップ103)。ここで係数は、モータ回転数上昇量の絶対値(すなわちモータ回転数の低下量あるいは低下率)を、モータ回転数の低下を防ぐに要するトルクに置き換えるための数値であり、実験などに基づいて予め設定してある値である。このようにして求めた上昇マイナスガードトルクをモータトルク指令値に加えて、新たなモータトルク指令値とする(ステップ104)。したがってトルクの増大量は、モータ回転数NM の低下率に比例することになる。 【0083】ところで、上述したステップ064ないしステップ066におけるアシストトルクに関する処理は、油圧最大フラグF8 がONになってもエンジン回転数NEが安定するまでの間は継続する。すなわち前記ステップ062で否定判断された場合には、ステップ064に進みアシストトルクについての処理をおこなう。 【0084】上述したステップ063あるいはステップ066で決定されたモータトルク指令値は、エンジン1の回転の状態に基づいて演算して求めた値であり、モータ・ジェネレータ3が実際に出力することのできるトルクを越えている場合もある。そのため、上記のステップ063もしくはステップ066の制御に続けて以下の制御を実行する。すなわちステップ063もしくはステップ066で決定されたモータトルク指令値がモータトルクガード値を越えているか否かが判断される(ステップ067)。このモータトルクガード値は、モータ・ジェネレータ3が実際に出力することのできるトルクの上限値である。 【0085】したがってモータトルク指令値がモータトルクガード値を越えていれば、モータトルク指令値としてモータトルクガード値を採用し、かつモータトルクガードフラグF9 をONにする(ステップ068)。これとは反対にモータトルク指令値がモータトルクガード値以下であることにより、ステップ067で否定判断された場合にはステップ069に進んでモータトルクガードフラグF9 をOFFにする。 【0086】上述したアシストトルクに基づくモータトルク指令値の変化を図7および図14ならびに図15に示してある。すなわち図7に示すように、モータトルク指令値は、基本的には、駆動トルクにアシストトルクを付加したトルクとなるように設定される。またその指令値の出力は、エンジン始動制御フラグF2 がONになった後のt8 時点である。この制御は前述したステップ091に基づいている。アシストトルクをこのように駆動トルクに付加することにより、走行のための駆動力を低下させずにエンジン1を回転させることができ、エンジン1を回転させ始める際の駆動力の低下やそれに起因するショックを防止することができる。 【0087】また上述したモータ回転数上昇ガード処理をおこなった場合のモータトルク指令値の変化の一例は、図14に示すとおりであり、モータ回転数NM が低下すると、その低下率に係数を掛けたトルクがアシストトルクに付加される。その結果、モータトルク指令値は、図14に太い実線で示すように変化する。そのためエンジン1の回転数を連続して増大させることができ、エンジン始動の遅延や走行のための駆動力の増大の遅れを防止することができる。 【0088】さらに図11に示すルーチンに従った制御をおこなうことにより、アシストトルクに応じたモータトルク指令値を出力し始めた際のモータトルク指令値の変化が図15の(a)−(e)−(c)の線で示すように所定の勾配をもって変化する。すなわちモータトルクが急激に変化することがないので、ショックが有効に防止される。 【0089】ところで、図2の全体的な制御チャートに示してあるように、モータトルクの処理をおこなった後に、エンジントルク処理(ステップ006)がおこなわれる。図16はそのエンジントルク処理サブルーチンを示しており、先ず、パワーオンダウンシフトフラグF5 がONか否かが判断される(ステップ111)。この判断ステップは前述したステップ021,030と同様である。 【0090】パワーオンダウンシフトの要求があったことによりステップ111で肯定判断された場合には、エンジン回転数NE が予め定めた基準回転数N4 より大きいか否かが判断される(ステップ112)。この基準回転数N4 はその時点のモータ回転数NM より小さい回転数であり、一例としてアイドル回転数程度の値である。言い換えれば、燃料を供給することによりエンジン1がストールせずに回転し続けることのできる程度の回転数である。このステップ112で否定判断された場合にはエンジントルクに関する処理を特にはおこなわずにリターンし、また肯定判断された場合には、ステップ114に進む。 【0091】一方、ダウンシフトが要求されていないことによりステップ111で否定判断された場合には、油圧最大フラグF8 がONか否かが判断される(ステップ113)。このフラグF8 は、図5を参照して説明したように、エンジン回転数NEがモータ回転数NM に同期したことが判断された場合にONに制御されるフラグである。したがってステップ113で否定判断されれば、エンジン回転数NE がモータ回転数NM に同期していないことになるので、この場合はエンジントルクの処理に関する制御を特に行わずにリターンする。これに対してステップ113で肯定判断されれば、エンジン回転数NE がモータ回転数NM に同期したことになるので、この場合はステップ114に進む。 【0092】ステップ114では、エンジン1における燃料の噴射を開始する。すなわちダウンシフトが要求されている場合には、エンジン回転数NE がアイドル回転数程度の予め定めた基準回転数N4 に達することにより、燃料の噴射を開始する。またダウンシフトが要求されていない通常の場合には、エンジン回転数NE がモータ回転数NM に同期したことの判断が成立することにより、燃料の噴射を開始する。なお、燃料噴射装置を備えていないエンジンであれば、燃料の供給を開始する。 【0093】ついで、駆動要求トルクからモータトルク指令値を減算してエンジントルク指令値を求める(ステップ115)。駆動要求トルクは、走行のために要求されているトルクであってアクセルペダルの踏み込み量などに基づいて求められる。またモータトルク指令値は、前述したステップ065やステップ066で求められたモータトルク指令値あるいはステップ063でスイープダウンされるモータトルク指令値である。 【0094】上述した燃料噴射のタイミングが図8に示されている。すなわちパワーオンダウンシフトが要求されていてパワーオンダウンシフトフラグF5 がONになっている場合には、エンジン回転数NE がアイドル回転数程度の基準回転数N4 に達した時点t8 に燃料の噴射が開始される。これと同時に燃料噴射フラグがONに設定される。これに対してダウンシフトが要求されていない通常時には、図8に細い実線で示してあるように、油圧最大フラグF8 がONに制御されるt4 時点に燃料の供給が開始される。 【0095】また上記のようなエンジントルク処理をおこなった場合のエンジントルク指令値の変化を、図7および図14ならびに図15に示してある。エンジントルク指令値は、モータトルク指令値との和が駆動要求トルクになるように制御される。言い換えれば、エンジントルク指令値は、モータトルク指令値の低下に従って増大させられる。したがってエンジン回転数NE がモータ回転数NM に同期したことが判断されたt4 時点からエンジン回転数NE の安定が判断されるまでの所定時間T3 の間は、モータトルク指令値がその直前の値に維持され、したがってエンジントルク指令値もその間は従前と同じに維持される。 【0096】その後、モータトルク指令値がスイープダウンされるので、そのモータトルク指令値の低下量に応じてエンジントルク指令値が増大させられる。その結果、最終的には、エンジントルクによって駆動要求トルクを満たすようになり、その時点t5 にモータトルク指令値がゼロになる。これと同時に入力クラッチ係合終了フラグF3 がONになる。すなわち駆動トルクを一定に維持したまま、動力源がモータ・ジェネレータ3からエンジン1に切り換えられる。したがってエンジン1を始動し、かつ動力源をエンジン1に切り換えることに伴ってショックが発生することが防止される。 【0097】上述したように、パワーオンダウンシフトの要求があった場合、入力クラッチ5やモータトルクあるいはエンジントルクの制御を通常の場合とは異ならせる。これは、ダウンシフトによる駆動力の増大要求があるからである。しかしながらダウンシフトによる駆動力の変化は、ショックを発生させる要因になるので、モータトルクによってエンジン1を回転させている場合には、ダウンシフトを以下のように制御する。 【0098】図17は、図2に示すダウンシフト開始許可処理のサブルーチンを示しており、先ず、パワーオンダウンシフトフラグF5 がONか否かが判断される(ステップ121)。この判断ステップは前述したステップ021,030,111と同様である。このステップ121で否定判断された場合には特に制御をおこなうことなくリターンし、また反対に肯定判断された場合には、エンジン回転数NE が予め設定した基準値N4 より大きいか否かが判断される(ステップ122)。この基準値N4 はダウンシフト要求があった場合の燃料噴射タイミングを決める基準値と同じであり、したがってこのステップ122は、要は、エンジン1が実質的に始動されたか否かを判断している。なお、前記の基準値N4 は、エンジン1と変速機13との制御応答性に差があるので、必ずしも同一である必要はなく、必要に応じて異ならせてもよい。 【0099】このステップ122で否定判断された場合には特に制御をおこなうことなくリターンする。また反対に、ステップ122で肯定判断された場合には、ダウンシフト開始許可フラグF10をONにする(ステップ123)。このダウンシフト開始許可フラグF10に基づいてT/M−ECU15によってダウンシフトの制御が開始される。すなわちエンジン1に燃料が供給されてエンジン1が実質的に始動するまでダウンシフトが禁止され、エンジン1が実質的に始動した後にダウンシフトが開始される。したがってエンジン1を回転させるための負荷がモータ・ジェネレータ3にかかっている状態でダウンシフトによる駆動力の変化が生じることが回避され、そのためにショックを防止することができる。また変速時に変速機13に対する入力トルクを制御する場合、エンジン1が既に始動されてトルクを出力しているので、入力トルクの制御が容易になり、この点でも変速に伴うショックを防止できる。 【0100】ところで上述した例では、モータトルクにアシストトルクを付加する場合、アシストトルクを徐々に増大させるように制御している。これは、トルクが急激に増大することによるショックを防止するためである。一方、エンジン1を始動するのは、大きい駆動力の要求があるからである。したがってアシストトルクをモータトルクに付加する場合、ショックを悪化させない範囲でアシストトルクの増大率を大きくすることが好ましい。その例を以下に説明する。 【0101】図18は前述した図11に示すアシストトルク加工処理サブルーチンのうちのステップ086を086−1に置換したルーチンである。すなわちこのステップ086−1で実行される制御は、図10に示すステップ074で演算されたアシストトルクの所定割合のトルクを最初の指令値として出力し、その後にアシストトルクを徐々に増大させる制御である。具体的に説明すると、モータリングトルクとイナーシャトルクとの和として求められたアシストトルクにスキップアップ率を掛けて、最初に増大させるアシストトルク量を求める。このスキップアップ率は、ショックが生じない程度のトルクの増大量となるように予め設定した値である。またこのスキップアップ率は、固定値であってもよいが、車速などをパラメータとしたマップの形式で定めた値(すなわち変数)であってもよい。 【0102】このようにしてスキップアップしたモータトルク指令値を起点としてアシストトルクを徐々に増大させる。すなわち図18のステップ086−1に記載してあるように、最終的に設定するべきアシストトルクに(1−スキップアップ率)を掛け、さらにその値にアシストカウンタの上限値に対するアシストカウンタ値の比率を掛ける。これを定性的に説明すれば、アシストトルクのうちスキップアップした後の残量を、アシストカウンタ上限値で分割した値ずつ繰り返し増大させる制御をおこなうことになる。 【0103】このようなアシストトルク指令値のスキップアップをおこなった場合のモータトルク指令値の変化を図15に示してある。すなわちスキップアップすることにより、モータトルク指令値が(a)の状態から(d)で示す状態に増大する。その場合のモータトルク指令値およびモータトルクがある程度の幅で急激に増大するが、スキップアップ率を適当な値に設定することにより、ショックは生じない。その後、アシストカウンタ上限値に基づいて分割された値ずつモータトルク指令値およびモータトルクが増大する。 【0104】したがってエンジン1を回転させるトルクが迅速に増大するので、エンジン回転数NE が迅速に上昇し、エンジン1が早期にトルクを出力し、制御の遅れ感が回避される。なお、図15において、(a)−(b)−(c)で示すモータトルク指令値の変化は、図11に示す処理あるいは図18に示す処理をおこなわなかった場合の変化であり、アシストトルクが大きい場合、すなわちモータトルク指令値の変化幅が大きい場合には、出力軸トルクが一時的に大きく変化してショックが生じる可能性がある。 【0105】エンジン回転数NE を増大させる場合には、図12を参照して説明したように、モータトルク指令値を、駆動要求トルクにアシストトルクを加えた値に設定する。一方、エンジン回転数NE のモータ回転数NM に対する同期は、これらの回転数NE ,NM の差が所定値以下になる状態がある程度の時間継続することにより判断される。したがってエンジン回転数NE がモータ回転数NM を一時的に越えても直ちには同期が判断されない。そのためにエンジン1を回転させるためのアシストトルクを付加したモータトルクを出力し続けると、モータトルクが相対的に過剰となるために、ショックが生じる可能性がある。図19に示す制御は、このような不都合を回避するための制御である。 【0106】この図19に示すルーチンは、前述した図2に示すステップ005のモータトルク処理に含まれるモータトルク指令演算処理サブルーチンである。先ず、エンジン回転数NE がモータ回転数NM より大きいか否かが判断される(ステップ141)。前述したように、エンジン回転数NE をモータ回転数NM にまで引き上げるためにアシストトルクを付加するのであるから、エンジン回転数NE がモータ回転数NM に到達すれば、それ以上にエンジン回転数1を引き上げる必要はない。したがってステップ141で肯定判断された場合には、モータトルク指令値を駆動要求トルクに対応した値に設定する(ステップ142)。これとは反対にエンジン回転数NE がモータ回転数NM 以下であれば、モータトルク指令値を、駆動要求トルクとアシストトルクとを加えたトルクに対応した値に設定する(ステップ143)。 【0107】図19に示す制御をおこなった場合のモータトルク指令値の変化を図7および図20(A)に示してある。これらの図に示すように、エンジン回転数NE がモータ回転数NM を上回る範囲では、モータトルクからアシストトルクが削除され、走行のための駆動トルクのみが出力される。また再度、エンジン回転数NE がモータ回転数NM を下回ると、駆動トルクにアシストトルクが付加されたモータトルクが出力される。その結果、エンジン回転数NE がモータ回転数NM を越えている状態でアシストトルクが出力されないので、駆動力が一時的に過剰になったりそれに伴ってショックが発生したりすることが防止される。 【0108】これに対して図20の(B)に示すようにエンジン回転数NE の大小に関わらずアシストトルクを連続して出力すると、エンジン回転数NE がモータ回転数NM を上回った際に駆動トルクが過剰になり、これが原因となってショックが生じることがある。 【0109】なお、エンジン回転数NE がモータ回転数NM を上回った後、再度エンジン回転数NE がモータ回転数NM を下回ってアシストトルクを付加する場合、前述した図11に示すアシストトルク加工処理をおこなうことが好ましい。このようなトルクの加工処理をおこなえば、図20の(A)に太い実線で示すようにモータトルクが緩やかに増大するので、駆動力の急変によるショックを防止することができる。 【0110】ところで、図9を参照して説明したように、モータ・ジェネレータ3で出力することのできるトルクには限界があり、モータトルク指令値がモータ・ジェネレータ3の上限トルクを越えた場合には、モータトルクガード値をモータトルク指令値として採用する。その場合においても、モータトルクを上限値に維持すると、エンジン回転数NE がモータ回転数NM を越えることにより、駆動トルクが増大する。すなわちエンジン回転数NE がモータ回転数NM を越えると、モータトルクのうちエンジン1を回転させるために使用されていたトルクが走行のための駆動トルクに付加されるから、駆動トルクが増大し、これが原因となってショックが発生する場合がある。 【0111】図21はモータトルク指令値がモータトルクガード値に達してしまっている場合のモータトルク指令演算処理サブルーチンを示すフローチャートであり、先ず、エンジン回転数NE がモータ回転数NM を越えているか否かが判断される(ステップ151)。このステップ151で肯定判断された場合には、モータトルクガードフラグF9 がONか否かが判断される(ステップ152)。このモータトルクガードフラグF9 は、図9を参照して説明したように、モータトルク指令値がモータトルクガード値を越えている場合にONとされるフラグである。 【0112】モータトルク指令値がモータトルクガード値を越えていないことによりステップ152で否定判断された場合には、駆動要求トルクに相当するモータトルク指令値を出力する(ステップ153)。すなわちステップ152で否定判断された際の車両の状態は、モータ・ジェネレータ3の出力することのできるトルクに未だ余裕があり、かつエンジン回転数NE がモータ回転数NM を越えている状態であるから、モータトルク指令値を駆動要求トルクに相当する指令値に設定する。これは、前述した図19のステップ142と同様な制御となる。 【0113】これとは反対に、モータトルクガードフラグF9 がONであることによりステップ152で肯定判断された場合には、モータトルク限界値からアシストトルクを減算したトルクに相当するモータトルク指令値を出力する(ステップ154)。なお、モータトルク限界値から減じるトルクは、アシストトルクに限られないのであり、予め決めた値であってもよい。駆動要求トルクとアシストトルクとを加えた値がモータトルク限界値に正確に一致するとは限らないからである。 【0114】なお、エンジン回転数NE がモータ回転数NM を越えていないことによりステップ151で否定判断された場合には、駆動要求トルクにアシストトルクを加えたトルクに相当するモータトルク指令値を出力する(ステップ155)。これは、図19のステップ143と同様な制御となる。 【0115】上記のステップ154の制御を実行した場合と実行しない場合とのモータトルクの変化を図22に示してある。図22の(A)は、上記のステップ154の制御を実行した場合のモータトルクの変化を示しており、エンジン回転数NE がモータ回転数NM を越えている状態では、アシストトルクに相当するトルクがモータトルクの限界値から減じられる。したがってモータ・ジェネレータ3が出力していたトルクのうち、エンジン1を回転させるために使用されていたトルクが、これを不必要とする状態となることによりモータトルクから減じられるので、駆動トルクが相対的に増大することがなく、したがって駆動トルクの一時的な増大に伴うショックを防止することができる。これに対して、ステップ154の制御を実行しない場合には、図22の(B)に示すように、エンジン回転数NE がモータ回転数NM を越えている状態で駆動トルクが相対的に増大するので、これがショックとして体感されることがある。 【0116】ここで上述した具体例と請求項の構成との対応関係をまとめて説明する。上述したエンジン1がこの発明における内燃機関に相当し、またモータ・ジェネレータ3が電動機に相当し、さらに入力クラッチ5がこの発明のクラッチ手段に相当し、そして変速機13がこの発明の自動変速機に相当している。またモータ・ジェネレータ3の出力軸4およびこれに連結された自動変速機13ならびのその出力軸16がこの発明の動力伝達系統に相当している。 【0117】また図2に示すステップ001の機能が請求項1における始動要求判断手段に相当し、また図10に示すステップ074の機能が請求項1におけるアシスト量設定手段に相当する。請求項2に関しては、図19のステップ141および図21のステップ151の機能が同期検出手段に相当し、また「いずれか一方の手段」には、図19のステップ142および図21のステップ154の機能が相当する。 【0118】なお、上述した具体例では、モータ・ジェネレータの出力軸にエンジンの出力軸を入力クラッチを介して連結する構造のハイブリッド車を対象としたが、この発明は上記の例に限定されないのであって、歯車機構を介して内燃機関を動力伝達機構もしくは電動機に連結する構成のハイブリッド車を対象とすることができ、要は、いわゆるパラレルハイブリッド形式の駆動装置を対象とするものであればよい。したがって内燃機関と電動機との動作状態を判断する場合、上記の例では、それぞれの回転数を直接対比することとしたが、動力伝達装置と電動機もしくは内燃機関との間に歯車機構が介在されている場合には、いずれか一方の回転数と他方の回転数に基づく所定の値とを対比して電動機および内燃機関の動作状態を判断することとしてもよい。請求項1で「電動機の回転数に基づいて決まる基準値」とは、このことを意味している。 【0119】 【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明によれば、電動機によって走行している際に内燃機関を始動する場合、電動機の出力するトルクを、その走行状態を維持するのに要するトルクに、内燃機関の目標回転数に基づいて決まるトルクを加えたトルクに設定するので、走行のための駆動力の低下が防止され、内燃機関の始動に伴うショックを未然に回避することができる。 【0120】また請求項2の発明によれば、内燃機関を始動してその回転数が電動機の回転数に達した場合、それまでの走行を内燃機関の出力によって維持することができるので、電動機の出力トルクを低下させることにより、ハイブリッド車の全体としての駆動力が過剰になることを防止でき、またショックを防止できるうえに、内燃機関の始動の前後に亘ってハイブリッド車の全体としての駆動力が一定になり、そのため駆動力の急激な変化およびそれに起因するショックを防止することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年12月12日(1997.12.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100083998 【弁理士】 【氏名又は名称】渡辺 丈夫
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| 【公開番号】 |
特開2002−27611(P2002−27611A) |
| 【公開日】 |
平成14年1月25日(2002.1.25) |
| 【出願番号】 |
特願2001−129873(P2001−129873) |
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