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【発明の名称】 着雪防止機構付パンタグラフ装置
【発明者】 【氏名】小野寺 正之

【要約】 【課題】停車時や走行中に、構成各部への着雪を防止し、所定の押上力が保持され得るようにする。

【解決手段】加熱空気供給器9で生成された加熱空気を、第1のフレキシブルチューブ10を介して下枠組3の閉鎖空間部18内に供給して下枠組3を加熱し、下枠組3から第2のフレキシブルチューブ11を介して上枠組4の閉鎖空間部23内に供給して上枠組4を加熱する。加熱空気を、上枠組4から第3のフレキシブルチューブ32を介して集電部31に供給して舟板部材33とスリ板6とを加熱する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車体の屋根上に絶縁を保持されて固定された台枠と、導電パイプ材によって形成され、下端部を上記台枠に対して回動自在に支持されるとともに、一端側に加熱空気供給口が開口されかつ他端側に加熱空気排気口が開口された閉塞空間部を有する下枠組と、導電パイプ材によって形成され、下端部を上記下枠組の自由端に対して回動自在に連結されることによってこの下枠組とともに上記台枠に対して屈伸自在に支持されるとともに、一端側に加熱空気供給口が開口されかつ他端側に加熱空気排気口が開口された閉塞空間部を有する上枠組と、上記上枠組の自由端側に取り付けられて架線からの集電部を構成する舟板及びすり板と、加熱空気を生成して送風する加熱空気供給器と、上記加熱空気供給器と上記下枠組の加熱空気供給口とを連結する第1のフレキシブルチューブ及び上記下枠組の加熱空気排気口と上記上枠組の加熱空気供給口とを連結する第2のフレキシブルチューブとを備え、上記加熱空気供給器から供給された上記加熱空気が、上記各フレキシブルチューブを介して上記各閉塞空間部内に送り込まれることによって、上記下枠組と上枠組とを加熱することを特徴とする着雪防止機構付パンタグラフ装置。
【請求項2】 上記下枠組及び/又は上枠組には、上記閉鎖空間部に連通して加熱空気を排気する多数個の排気孔が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の着雪防止機構付パンタグラフ装置。
【請求項3】 車体の屋根上に絶縁を保持されて固定された台枠と、導電パイプ材によって形成され、下端部を上記台枠に対して回動自在に支持された下枠組と、導電パイプ材によって形成され、下端部を上記下枠組の自由端に対して回動自在に連結されることによってこの下枠組とともに上記台枠に対して屈伸自在に支持された上枠組と、上記上枠組の自由端側に取り付けられるとともに架線を摺擦するすり板が取り付けられて集電部を構成し、一端側に加熱空気供給口が開口されかつ他端側に加熱空気排気口が開口された閉塞空間部を有する舟板と、加熱空気を生成して送風する加熱空気供給器とを備え、上記加熱空気供給器から供給された上記加熱空気が、上記フレキシブルチューブを介して上記閉塞空間部内に送り込まれることによって、上記舟板を加熱することを特徴とする着雪防止機構付パンタグラフ装置。
【請求項4】 それぞれ一端側に加熱空気供給口が開口されかつ他端側に加熱空気排気口が開口された閉塞空間部が設けられた上記下枠組及び上枠組と、上記加熱空気供給器と上記下枠組の加熱空気供給口とを連結する第1のフレキシブルチューブと、上記下枠組の加熱空気排気口と上記上枠組の加熱空気供給口とを連結する第2のフレキシブルチューブと、上記上枠組の加熱空気排気口と上記舟板の加熱空気供給口とを連結する第3のフレキシブルチューブとを備え、上記加熱空気供給器から供給された上記加熱空気が、上記各フレキシブルチューブを介して上記各閉塞空間部内に送り込まれることにより、上記下枠組と上枠組及び舟板を加熱することを特徴とする請求項3に記載の着雪防止機構付パンタグラフ装置。
【請求項5】 上記舟板には、上記閉鎖空間部に連通して加熱空気を排気する多数個の排気孔が設けられたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の着雪防止機構付パンタグラフ装置。
【請求項6】 上記加熱空気供給器は、上記台枠に備えられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の着雪防止機構付パンタグラフ装置。
【請求項7】 上記加熱空気供給器は、上記車体の屋根上に備えられ、少なくとも上記下枠組と連結される第1のフレキシブルチューブ又は上記舟板と連結されるフレキシブルチューブに、電気的絶縁チューブが用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の着雪防止機構付パンタグラフ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電車等に備えられる着雪防止機構付パンタグラフ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電車や電気機関車等には、車体の屋根上に架線から電力を集電するパンタグラフ装置が備えられる。パンタグラフ装置としては、一般に各部が押し上げられた稼働状態(集電状態)において側面視形状が略菱形を呈するダブルアーム型パンタグラフ装置が用いられているが、最近では稼働状態において側面視形状が略く字状を呈するシングルアーム型パンタグラフ装置も用いられている。パンタグラフ装置は、これらダブルアーム型、シングルアーム型のいずれの形式でも、基本形態として、台枠と、下枠組と、上枠組と、舟板及びすり板等を備えて構成されている。
【0003】台枠は、碍子等を介して車体の屋根上に絶縁を保持されて固定される。下枠組は、軽量の導電パイプ材によって形成され、下端部を台枠に対して回動自在に支持される。上枠組も、軽量の導電パイプ材によって形成され、下端部を下枠組の自由端に対して回動自在に連結され、この下枠組とともに台枠に対して屈伸自在とされてなる。上枠組には、その自由端側に舟板が取り付けられ、この舟板に架線を摺擦するすり板が取り付けられて電力を集電する集電部が構成されてなる。
【0004】パンタグラフ装置は、稼働状態においてスプリングやシリンダ等を有する昇降機構によって下枠組と上枠組とが押し上げられた状態に保持されるように押上力が作用されており、架線に対してスリ板が摺擦状態を保持されるように構成されている。パンタグラフ装置においては、一般にこの押上力が4.5kg乃至6.5kgの範囲で一定になるように設定されている。
【0005】パンタグラフ装置は、何らかの原因によって上述した押上力が保持されなくなりすり板と架線との接触状態が絶たれるといった事態が生じた場合には、電力の集電が行い得なくなる。また、パンタグラフ装置は、押上力が不安定となって走行時にすり板と架線とが断接状態を繰り返した場合には、電力の集電が不安定となるとともにすり板と架線との間でスパークが発生してすり板の損耗が大きくなったり舟板の破損及び架線の切断といった重大事故を引き起こすことがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、パンタグラフ装置においては、特に降雪があった場合に各枠組や舟板等に付着した雪や氷の影響により、上述した問題が顕著に発生する。パンタグラフ装置は、各枠組や舟板等に着雪や着氷が発生すると、これらの部位が重くなって所定の押上力が保持し得なくなる。パンタグラフ装置は、例えば電車等が基地に留置されている場合には下げられて折り畳まれた状態にあり、各枠組や舟板等の上に降り積もった雪によって押上げ動作が不能となる事態が発生する。
【0007】一方、パンタグラフ装置は、待合せ等により電車等が駅で長時間にわたって停車している場合にも、各枠組や舟板等の上に降り積もった雪の重みによって押上力が低下し架線との接触状態が保持されなくなる。また、パンタグラフ装置は、電車等が走行中に各枠組や舟板等に付着した雪による重みによって、押上力が低下するとともに空力特性が変化して舟板に負の揚力が発生する。パンタグラフ装置は、このためにすり板の架線からの離線現象が頻繁に発生するといった問題があった。
【0008】従来、パンタグラフ装置の着雪対策は、電車等が停車中に積雪状態を監視し、保守要員の経験と勘とによって必要と判断した場合に除雪作業が行われていた。除雪作業は、保守要員が電車等の屋根に登って雪降治具を用いた雪降ろしや、常設の融雪装置により行われていた。屋根に登っての除雪作業は、転落や感電の危険があるとともに、結氷化した積雪の排除が困難である。融雪装置による除雪作業は、電車等を移動させる必要があるとともに限られた場所に設置されているために何処でも手軽に行い得ない。
【0009】従来のパンタグラフ装置には、一般にそれ自体に除雪装置や融雪装置が備えられていないために、電車等が走行中に各枠組や舟板等に付着した雪を排除することができない。このため、従来のパンタグラフ装置は、わずかな停車時間中に付着した雪や氷を除去することが困難であるために、ダイヤの遅れを生じさせていた。また、パンタグラフ装置は、高圧電流が流れるためにその他の部位に対して絶縁が確実に保持されなければならず、高速走行を実現しかつ騒音の発生を抑制するために構成各部の空力特性が保持されなければならない。
【0010】したがって、本発明は、基本構成を変更せず、所定の特性が保持され、簡易な構成であり、停車時ばかりでなく電車等が走行中であっても構成各部への着雪を防止し、所定の押上力が保持され得るようにした着雪防止機構付パンタグラフ装置を提供することを目的に提案されたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成する本発明にかかる着雪防止機構付パンタグラフ装置は、車体の屋根上に絶縁を保持されて固定された台枠と、下枠組と、上枠組と、上枠組の自由端側に取り付けられて架線からの集電部を構成する舟板及びすり板と、加熱空気を生成して送風する加熱空気供給器と、第1のフレキシブルチューブ及び第2のフレキシブルチューブとを備える。下枠組は、導電パイプ材によって形成され、下端部を台枠に対して回動自在に支持されるとともに、一端側に加熱空気供給口が開口されかつ他端側に加熱空気排気口が開口された閉塞空間部を有してなる。上枠組は、導電パイプ材によって形成され、下端部を下枠組の自由端に対して回動自在に連結されることによってこの下枠組とともに台枠に対して屈伸自在に支持されるとともに、一端側に加熱空気供給口が開口されかつ他端側に加熱空気排気口が開口された閉塞空間部を有してなる。パンタグラフ装置は、第1のフレキシブルチューブによって加熱空気供給器と下枠組の加熱空気供給口とが連結され、第2のフレキシブルチューブによって下枠組の加熱空気排気口と上枠組の加熱空気供給口とが連結されてなる。
【0012】パンタグラフ装置には、下枠組及び/又は上枠組に、閉塞空間部に連通する多数個の排気孔が設けられる。パンタグラフ装置には、一端側に加熱空気供給口が開口されかつ他端側に加熱空気排気口が開口された閉塞空間部を有する舟板と、加熱空気供給器と加熱空気供給口とを連結するフレキシブルチューブとが備えられる。
【0013】以上のように構成された本発明にかかる着雪防止機構付パンタグラフ装置によれば、降雪等に際して加熱空気供給器が駆動される。パンタグラフ装置は、加熱空気供給器から供給された加熱空気が、第1のフレキシブルチューブを介して下枠組の閉塞空間部内に送り込まれてこの下枠組が加熱される。パンタグラフ装置は、下枠組の閉塞空間部に送り込まれた加熱空気が、その加熱空気排気口から第2のフレキシブルチューブを介して上枠組の閉塞空間部内に送り込まれてこの上枠組が加熱される。パンタグラフ装置は、これにより停車時ばかりでなく走行時にも下枠組や上枠組の着雪が防止されて所定の押上力が保持されることから、架線との接触状態が確実に保持される。また、パンタグラフ装置は、面倒で危険な保守要員による除雪作業を行うことなく折畳み状態からの押上げ動作が確実に行われるようにして、作業の効率化を図り電車等のスムーズな運行を可能とする。
【0014】パンタグラフ装置は、各閉塞空間部から排気孔を介して加熱空気が排気されることで、下枠組や上枠組の表面に付着した着雪等をより効率的に除去する。パンタグラフ装置は、加熱空気供給器から供給された加熱空気が、フレキシブルチューブを介して舟板の閉塞空間部内に送り込まれることによってこの舟板が加熱される。パンタグラフ装置は、これにより舟板の表面に付着した着雪等がより効率的に除去され、空力特性が保持される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。実施の形態として示すパンタグラフ装置1は、押上げ状態において全体の側面視形状が略く字状を呈してなるシングルアーム型パンタグラフ装置であり、台枠2と、下枠組3と、上枠組4と、舟板5及びすり板6とを搭載した舟支え7とを備える。パンタグラフ装置1は、詳細を省略するが、台枠2に対して下枠組3と上枠組4とを昇降動作させる昇降機構8と、下枠組3と上枠組4とに加熱空気を供給する加熱空気供給器9とを備える。パンタグラフ装置1は、加熱空気供給器9と下枠組3とを連結する第1のフレキシブルチューブ10と、下枠組3と上枠組4とを連結する第2のフレキシブルチューブ11とを備える。
【0016】台枠2は、車体の屋根上に、図示を省略する複数個の碍子によって絶縁を保持した状態で取り付けられる。台枠2は、構成各部材を支持する基台部を構成するとともに、電車等が走行する際に空気抵抗を低減する作用を奏し、また非稼働状態において折り畳まれた下枠組3や上枠組4を収納する。台枠2には、昇降機構8が設置されている。
【0017】昇降機構8は、詳細を省略するが、下枠組3の基端部3aを回動自在に支持する主軸12や押上力を生成する主ばね部材13、或いは図示しない下降駆動用シリンダやダンパ等を備えて構成されている。昇降機構8は、台枠2と上枠組4とを連結するつり合いリンク14や、下枠組3と舟板5とを連結する舟支えリンク15を備えて構成されている。
【0018】主ばね部材13は、下枠組3を挟んで配置された左右一対からなり、それぞれの一端が下枠組3の基端部3aに掛け止めされるとともに他端が台枠2に固定されている。主ばね部材13は、下枠組3を図1において時計方向に付勢するように弾性力を作用させる。主ばね部材13は、この弾性力が4.5kg乃至6.5kgの範囲に設定され、パンタグラフ装置1の押上力を規定する。パンタグラフ装置1は、下枠組3と上枠組4の押上げ状態が、つり合いリンク14と舟支えリンク15とによってバランスされて保持されている。
【0019】昇降機構8は、主ばね部材13の押上力により下枠組3と上枠組4とを押上げ状態に保持するが、下降駆動用シリンダを駆動することによって下枠組3と上枠組4とを折畳み状態とする。昇降機構8は、電車等が例えば留置線に引き込まれた場合に、下降駆動用シリンダが駆動されることにより下枠組3を主ばね部材13の弾性力に抗して図1において半時計方向へと回動させて折畳み状態とする。昇降機構8は、下降駆動用シリンダにより、この状態が保持される。
【0020】下枠組3は、高圧電流を導き、軽量でかつ充分な機械的強度を有するために、円形或いは角形断面の導電性を有する金属パイプ材によって形成されている。下枠組3は、上述したように基端部3aを主軸12により回動自在に支持されるとともに、自由端部3bに上枠組4の基端部4aを回動自在に支持するリンク軸16が設けられている。下枠組3には、自由端部3bに舟支えリンク15の一端が回動自在に支持されている。
【0021】下枠組3には、両端部の近傍にそれぞれ仕切板17(17a、17b)が組み付けられることにより、内部に略全長に亘る閉鎖空間部18が構成されている。下枠組3には、閉鎖空間部18の、基端側の仕切板17aの近傍に位置して加熱空気供給口19が形成されるとともに、自由端側の仕切板17bの近傍に位置して加熱空気排気口20が形成されている。下枠組3には、その上面側に、閉鎖空間部18に連通する多数個の排気孔21が形成されている。
【0022】排気孔21は、後述するように閉鎖空間部18内から加熱空気を排気することによって、付着した雪を積極的に溶かすようにする。排気孔21は、積雪が多い下枠組3の上面に形成したが、側面側にも形成してもよい。排気孔21は、例えば開閉機構等を付設して孔径を可変可能とすることにより、電車等の運行地域や降雪状況、季節或いは温度条件等によって適宜調節され、付着した雪を効率的に除去するとともに下枠組3の全体温度の調整を可能とする。
【0023】下枠組3には、加熱空気供給口19に、一端を加熱空気供給器9に接続された第1のフレキシブルチューブ10の他端が接続されている。下枠組3には、加熱空気供給器9から供給された加熱空気が、第1のフレキシブルチューブ10を介して閉鎖空間部18内に送り込まれる。下枠組3は、送り込まれた加熱空気によって加熱されるとともに、加熱空気の一部を排気孔21を介して閉鎖空間部18から排出する。
【0024】上枠組4も、高圧電流を導き、軽量でかつ充分な機械的強度を有するために、円形或いは角形断面の導電性を有する金属パイプ材によって形成されている。上枠組4は、上述したように基端部4aをリンク軸16により回動自在に支持されるとともに、自由端4bに舟支え7を揺動自在に支持している。上枠組4には、基端部4aにつり合いリンク14の一端が回動自在に支持されている。
【0025】上枠組4には、両端部の近傍にそれぞれ仕切板22(22a、22b)が組み付けられることにより、内部に略全長に亘る閉鎖空間部23が構成されている。上枠組4には、閉鎖空間部23の、基端側の仕切板22aの近傍に位置して加熱空気供給口24が形成されるとともに、自由端側の仕切板22bの近傍に位置して加熱空気排気口25が形成されている。上枠組4には、その上面側に、閉鎖空間部23に連通する多数個の排気孔26が形成されている。
【0026】上枠組4には、加熱空気供給口24に、一端を下枠組3の加熱空気排気口20に接続された第2のフレキシブルチューブ11の他端が接続されている。上枠組4には、後述するように加熱空気供給器9から供給されて下枠組3の閉鎖空間部18内に送り込まれた加熱空気が、第2のフレキシブルチューブ11を介して閉鎖空間部23内に送り込まれる。上枠組4は、送り込まれた加熱空気によって加熱されるとともに、加熱空気の一部を排気孔26を介して閉鎖空間部23から排出する。
【0027】各排気孔26も、上述した下枠組3の排気孔21と同様に、閉鎖空間部23内から加熱空気を排気することで、上枠組4の上面に付着した雪を積極的に溶かすようにする。排気孔26も、積雪が多い上面だけではなく側面側にも形成してもよい。排気孔26も、例えば開閉機構等を付設して孔径を可変可能とすることにより、電車等の運行地域や降雪状況、季節或いは温度条件等によって適宜調節され、付着した雪を効率的に除去するとともに上枠組4の全体温度の調整を可能とする。
【0028】なお、パンタグラフ装置1は、下枠組3と上枠組4とにそれぞれ排気孔21、26を形成したが、加熱空気供給器9の送風能力により上枠組4への充分な加熱空気の供給が不足することがある。したがって、パンタグラフ装置1は、上枠組4にのみ排気孔26を形成するようにしてもよく、また下枠組3にのみ排気孔21の開口径を調整する開閉機構を設けてもよい。
【0029】舟支え7は、電車等の走行方向に対して略中央部を上枠組4に揺動自在に支持されており、その上面にダンパ27を介して一対の舟板5がそれぞれ支持されている。各舟板5は、詳細を省略するが電車等の走行に伴って揚力が生成される形態で形成されている。
【0030】第1のフレキシブルチューブ10及び第2のフレキシブルチューブ11は、それぞれ可撓性を有するとともに耐熱性、電気絶縁性を有している。パンタグラフ装置1は、下組枠3や上組枠4に、稼働状態と非稼働状態との切替動作、すなわち折畳み状態と押上げ状態とに切替操作する際に大きな変位が生じるとともに、電車等の走行に伴う振動等により比較的小さな変位が生じる。第1のフレキシブルチューブ10は、下組枠3と加熱空気供給器9との間の変位に対応して伸縮する。第2のフレキシブルチューブ11は、下組枠3と上枠組4との間の変位に対応して伸縮する。
【0031】第1のフレキシブルチューブ10と第2のフレキシブルチューブ11とは、上述した伸縮作用を奏することで、折畳み状態と押上げ状態とにおいても下組枠3や上枠組4内に加熱空気供給器9から加熱空気が安定して供給されることを可能とする。なお、第1のフレキシブルチューブ10と第2のフレキシブルチューブ11とは、振動吸収作用を奏することで、各接続部に高精度の振動吸収構造を付設することを不要とする。
【0032】加熱空気供給器9は、詳細を省略するがヒータと送風器とを備えており、台枠2上に絶縁碍子9aを介して設置されている。加熱空気供給器9は、電源が投入されることによって送風口28から加熱空気を送風する。加熱空気供給器9は、例えば折畳み状態で予備電源からの電力の供給を受けるとともに、押上げ状態では架線から集電した電力の一部の供給を受ける。勿論、加熱空気供給器9は、押上げ状態で充電が行われる予備電源からのみ電力の供給を受けるようにして変圧器や切替器等を不要に構成してもよい。
【0033】以上のように構成されたパンタグラフ装置1においては、降雪に際してその状況により加熱空気供給器9への電源投入が行われる。パンタグラフ装置1は、折畳み状態と押上げ状態にかかわらず、この電源投入操作が可能である。パンタグラフ装置1においては、電源投入により加熱空気供給器9から送風口28を介して加熱空気が第1のフレキシブルチューブ10内へと送風される。パンタグラフ装置1においては、加熱空気が、第1のフレキシブルチューブ10から加熱空気供給口19を介して閉鎖空間部18内に送り込まれる。パンタグラフ装置1においては、これにより下枠組3が加熱された状態となるとともに、加熱空気の一部を排気孔21を介して閉鎖空間部18から排出する。
【0034】パンタグラフ装置1においては、下枠組3の閉鎖空間部18内に送り込まれた加熱空気が加熱空気排気口20から排気され、この加熱空気排気口20に接続された第2のフレキシブルチューブ11を介して上枠組4へと供給される。パンタグラフ装置1においては、加熱空気が、第2のフレキシブルチューブ11から加熱空気供給口24を介して閉鎖空間部23内に送り込まれる。パンタグラフ装置1においては、これにより上枠組4が加熱された状態となるとともに、加熱空気の一部を排気孔26を介して閉鎖空間部23から排出する。
【0035】パンタグラフ装置1においては、上述したように下枠組3や上枠組4が加熱されることによって、これらに降り積もった雪や結氷を速やかに融雪して全体の質量が一定に保持されるようにする。パンタグラフ装置1においては、例えば電車等が基地に留置されて折畳み状態にある下枠組3や上枠組4に雪が降り積もっても、これを速やかに除雪することで押上げ動作が可能となる。
【0036】パンタグラフ装置1においては、待合せ等により電車等が駅で長時間にわたって停車している場合にも、下枠組3や上枠組4の積雪が防止されることで雪の重みによる押上力の低下を防止して架線との接触状態が良好に保持される。パンタグラフ装置1においては、電車等が走行中に下枠組3や上枠組4への着雪が防止されることで押上力の低下が防止され、すり板6の架線からの離線現象が抑制される。パンタグラフ装置1においては、これによって安定した電力の集電を行うとともに、スパークの発生による各部の損耗或いは架線の断線等の発生を大幅に低減する。パンタグラフ装置1においては、保守要員が車体の屋根に登って行う除雪作業を不要とすることで、安全性の向上と効率化を図るようにする。
【0037】パンタグラフ装置1においては、電車等の走行に伴って下枠組3や上枠組4の側面にも着雪が生じる。パンタグラフ装置1においては、上述したように下枠組3や上枠組4が加熱されるとともに、排気孔21、26から加熱空気が排気されている。パンタグラフ装置1においては、着雪を直接融雪するとともに、付着力を弱めることから走行風により吹き飛ばされるようにする。
【0038】パンタグラフ装置1においては、下枠組3や上枠組4の加熱媒体として空気を用いることから、絶縁処理が簡易であるとともに高圧電流の漏電等の危険性が無い。したがって、パンタグラフ装置1は、基本構成を変更せず、構造が簡易であるとともに小型軽量に構成される。
【0039】ところで、パンタグラフ装置1は、舟板5もやや幅広の部材であることから、この舟板5の上面に降り積もった雪の重みも押上力に影響を及ぼす。パンタグラフ装置1は、電車等の走行に伴って架線に付着した雪を舟板5の側面で払い飛ばすが、その一部が舟板5や各枠組3、4に付着する。パンタグラフ装置1は、このために、舟板5が傾くことにより負の揚力が発生することがある。
【0040】したがって、本発明の第2の実施の形態として図2及び図3に示したパンタグラフ装置30は、上述したパンタグラフ装置1の問題を解決してさらに信頼性の向上を図ったものであり、集電部31にも加熱空気が供給されるようにした構成に特徴を有している。なお、パンタグラフ装置30は、基本的な構成をパンタグラフ装置1と同一とすることから、対応する部位には同一符号を付すことによってその詳細な説明を省略する。
【0041】パンタグラフ装置30は、上枠組4の加熱空気排気口25から排気された加熱空気を、第3のフレキシブルチューブ32によって集電部31へと供給する。集電部31は、舟支え7と、この舟支え7に取り付けられた舟板部材33と、この舟板部材33の上面に取り付けられた一対のすり板6等によって構成される。舟板部材33は、図3に示すように機械的強度を保持するとともに軽量化を図るように矩形のパイプ材によって形成されている。
【0042】舟板部材33には、すり板6の取付部位に対応して補強板34(34a、34b)が設けられることによって、中央部に閉鎖空間部35が構成される。舟板部材33には、閉鎖空間部35の一端側に第3のフレキシブルチューブ32が連結される加熱空気供給口36が設けられるとともに、他端側に図示しない加熱空気排気口が設けられる。舟板部材33には、この閉鎖空間部35の上面及び補強板34にそれぞれ多数個の排気孔37、38が設けられている。
【0043】パンタグラフ装置30は、以上のように構成された集電部31を備えることから、加熱空気供給器9から送風された加熱空気が、第1のフレキシブルチューブ10−下枠組3−第2のフレキシブルチューブ11−上枠組4−第3のフレキシブルチューブ32のルートを介して、加熱空気供給口36から閉鎖空間部35内に供給される。パンタグラフ装置30は、これにより下枠組3と上枠組4とが加熱されるとともに、舟板部材33も加熱される。パンタグラフ装置30は、各部に積もった雪等を速やかに融雪して、所定の押上力が保持される。
【0044】パンタグラフ装置30は、排気孔37を介して舟板部材33の上面に加熱空気を供給することで、この上面に積もった雪を効率的に融雪する。パンタグラフ装置30は、排気孔38を介してすり板6の取付部位に対応する空間部内にも加熱空気が供給される。したがって、パンタグラフ装置30は、舟板部材33が全体的に効率よく加熱されるとともに、この舟板部材33を介してすり板6も加熱されるようになる。
【0045】なお、集電部31については、上述した構成に限定されるものでなく、例えば舟板が下向きのチャンネル状に形成されたものも提供されている。かかる舟板には、底面部に加熱空気の流路を適宜形成するようにすればよい。
【0046】本発明は、上述したパンタグラフ装置1、30に示したシングルアーム型パンタグラフ装置にのみ適用されるものではなく、ダブルアーム型パンタグラフ装置にも適用されることは勿論である。ダブルアーム型パンタグラフ装置は、シングルアーム型パンタグラフ装置と比較して下枠組や上枠組が細径のパイプ材によって構成されており、着雪量が比較的少ない。したがって、ダブルアーム型パンタグラフ装置においては、下枠組や上枠組に排気孔を設けず、集電部に対してより多量の加熱空気が供給されるようにしてもよい。また、ダブルアーム型パンタグラフ装置においては、加熱空気供給器9からフレキシブルチューブを介して集電部に対して直接加熱空気を供給するようにしてもよい。
【0047】上述したパンタグラフ装置1、30は、加熱空気供給器9を台枠2に対して絶縁碍子9aを介して取り付けるようにしたが、第3の実施の形態として図4に示したパンタグラフ装置40のように、この加熱空気供給器9を車体41の屋根に直接取り付けるようにしてもよい。パンタグラフ装置は、架線から高圧の電流を集電することから、加熱空気供給器9の電源を伝わって車体側に流れる危険性がある。このため、加熱空気供給器9は、絶縁碍子等の絶縁構造を介してに取り付ける必要がある。
【0048】これに対して、パンタグラフ装置40においては、加熱空気供給器9が台枠2と独立して車体41に取り付けることで、この加熱空気供給器9に縁構造が不要となり台枠2が簡易な構成となる。一方、パンタグラフ装置40は、加熱空気供給器9と下枠組3との絶縁を保持するために、これらを接続する第1のフレキシブルチューブ42に絶縁性のチューブが用いられる。パンタグラフ装置40は、加熱空気供給器9と下枠組3との間が長くなることから、長軸の第1のフレキシブルチューブ42が用いられる。
【0049】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明にかかる着雪防止機構付パンタグラフ装置によれば、降雪等に際して駆動される加熱空気供給器から下枠組や上枠組或いは舟板内に加熱空気が供給されてこれら各部を加熱する極めて簡易な構造の除雪機能或いは融雪機能を有することから、停車中ばかりでなく走行中においてもこれら各部への着雪を防止し或いは付着した雪等を排除することで所定の押上力が確実に保持されるようになる。
【0050】したがって、パンタグラフ装置によれば、架線との接触状態が確実に保持されることで、安定した電力の集電を行い、スパークの発生によるスリ板や架線の損耗を抑制し、或いは架線の断線を抑制して安全走行が行われるようにする。パンタグラフ装置によれば、保守要員が車体の屋根に登って除雪作業等を行うことなく、折畳み状態から素早く押上げ動作が行われるようにする。パンタグラフ装置によれば、各部の基本仕様を変更することは無いので従来装置と同等の物理的特性や空力特性が保持され、設備や保守等を変更する必要が無いことから設備投資等が不要である。パンタグラフ装置によれば、加熱媒体として空気を用いることで高圧電流の絶縁対応が容易であり、安全性が極めて高い。
【出願人】 【識別番号】500311624
【氏名又は名称】東洋造機株式会社
【識別番号】300052040
【氏名又は名称】小野寺 正之
【出願日】 平成12年6月30日(2000.6.30)
【代理人】 【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃 (外2名)
【公開番号】 特開2002−27608(P2002−27608A)
【公開日】 平成14年1月25日(2002.1.25)
【出願番号】 特願2000−200247(P2000−200247)