| 【発明の名称】 |
動力出力装置およびその制御方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】高岡 俊文
【氏名】西垣 隆弘
【氏名】小島 正清
【氏名】金井 弘
【氏名】阿部 眞一
【氏名】小林 幸男
【氏名】長瀬 健一
【氏名】原田 修
【氏名】山口 勝彦
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| 【要約】 |
【課題】ハイブリッド車両において発電するための負荷運転状態からアイドリングまたはモータリング等の無負荷運転状態に変化する過渡期においてショックが生じていた。
【解決手段】エンジンに発電機が機械的に結合されたハイブリッド式の動力出力装置について、負荷運転状態から無負荷運転状態に移行する過渡期に、発電機の出力トルクが急変しないように制御する。一手段として負荷運転状態における内燃機関の最低回転数を無負荷運転状態における回転数よりも200rpm程度大きな回転数に設定する。こうすることにより、負荷運転状態から無負荷運転状態にエンジンの回転数が滑らかに変化するようになり、エンジンの回転数に基づいてPI制御されている発電機のトルクの急変を抑えることができるため、該トルクの急変が原因となるショックを低減することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、出力軸を有する原動機と、前記原動機の出力軸および前記駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と、前記駆動軸に出力されるトルクおよび回転数に対応した駆動軸目標動力状態を設定する駆動軸目標動力状態設定手段と、前記駆動軸目標動力状態および原動機の運転効率に基づいて、前記原動機から出力すべきトルクおよび回転数に対応した原動機目標動力状態を設定する原動機目標動力状態設定手段と、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力すると共に、前記電動機を該動力の出力過程で生じるエネルギの循環を考慮して設定された所定トルク以上のトルクで駆動可能な動力状態で該原動機が運転されるよう該原動機、該電動機および前記動力調整手段を制御する制御手段とを備える動力出力装置。 【請求項2】 請求項1記載の動力出力装置であって、前記動力調整手段により調整される電力の少なくとも一部と、前記電動機による動力の入出力に必要な電力の少なくとも一部とを充放電可能な蓄電手段を備え、前記制御手段は、前記原動機を前記原動機目標動力状態で運転すると共に、該原動機から出力される動力と前記蓄電手段から充放電される電力とを変換して前記駆動軸に出力される動力が前記駆動軸目標動力状態となるよう該原動機、前記電動機および前記動力調整手段を制御する動力制御手段と、該動力制御手段による制御により前記電動機が前記所定トルク未満のトルクで駆動されるとき、該電動機が該所定トルク以上のトルクで駆動されるよう前記動力制御手段で用いられる前記原動機目標動力状態を修正する原動機目標動力状態修正手段とを備える動力出力装置。 【請求項3】 前記原動機目標動力状態修正手段は、前記原動機目標動力状態を、動力が同一で回転数が大きな動力状態に修正する手段である請求項2記載の動力出力装置。 【請求項4】 請求項3記載の動力出力装置であって、さらに前記原動機目標動力状態修正手段により原動機目標動力状態が修正されたとき、前記原動機から出力される動力を略同一に保持した状態で前記原動機の運転状態を前記修正された原動機目標動力状態に移行するよう該原動機と前記電動機と前記動力調整手段とを制御する移行制御手段を備える動力出力装置。 【請求項5】 請求項4記載の動力出力装置であって、前記原動機は、吸気管の開口面積と吸気バルブの開閉タイミングとを変更可変な内燃機関であり、前記移行制御手段は、前記吸気管の開口面積を所定の開口面積に保った状態で前記吸気バルブの開閉タイミングを徐々に変更するに伴って前記動力調整手段により調整される電力を徐々に変更することにより前記原動機の運転状態を前記修正された原動機目標動力状態に移行する手段である動力出力装置。 【請求項6】 請求項3記載の動力出力装置であって、さらに前記原動機目標動力状態修正手段により原動機目標動力状態が修正されたとき、トルクに対して回転数を優先して前記原動機の運転状態を前記修正された原動機目標動力状態に移行するよう該原動機と前記電動機と前記動力調整手段とを制御する移行制御手段を備える動力出力装置。 【請求項7】 請求項6記載の動力出力装置であって、前記原動機は、吸気管の開口面積を変更可変な内燃機関であり、前記移行制御手段は、前記原動機の回転数が前記修正された原動機目標動力状態に対応する回転数に移行するよう前記動力調整手段により調整される電力を変更する回転数移行手段と、該回転数移行手段による変更により前記原動機の回転数の移行が行われたとき、該原動機から前記修正された原動機目標動力状態に対応するトルクが出力されるよう前記吸気管の開口面積を調節するトルク移行手段とを備える動力出力装置。 【請求項8】 請求項6記載の動力出力装置であって、前記原動機は、吸気バルブの開閉タイミングを変更可変な内燃機関であり、前記移行制御手段は、前記原動機の回転数が前記修正された原動機目標動力状態に対応する回転数に移行するよう前記動力調整手段により調整される電力を変更する回転数移行手段と、該回転数移行手段による変更により前記原動機の回転数の移行が行われたとき、該原動機から前記修正された原動機目標動力状態に対応するトルクが出力されるよう吸気バルブの開閉タイミングを調節するトルク移行手段とを備える動力出力装置。 【請求項9】 駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、出力軸を有する原動機と、前記原動機の出力軸および前記駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と、前記駆動軸に出力されるトルクおよび回転数に対応した駆動軸目標動力状態を設定する駆動軸目標動力状態設定手段と、前記駆動軸の回転数および前記原動機の出力する動力と、前記電動機を前記駆動軸からの動力の出力過程で生じるエネルギの循環を考慮して設定された所定トルク以上のトルクで駆動できる前記原動機の動力状態との関係を記憶した記憶手段と、前記駆動軸の回転数を入力する回転数入力手段と、前記駆動軸目標動力状態に基づいて設定される前記原動機が出力すべき動力と、前記入力された駆動軸の回転数に基づいて、前記記憶手段に記憶された関係を参照して得られる前記原動機の動力状態を、前記原動機目標動力状態として設定する原動機目標動力状態設定手段と、前記原動機を前記原動機目標動力状態で運転すると共に、前記電動機および動力調整手段を用いて、前記原動機目標動力状態を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力する制御手段とを備える動力出力装置。 【請求項10】 駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、出力軸を有する原動機と、前記原動機の出力軸および前記駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、前記出力軸に動力を入出力する電動機と、前記駆動軸に出力されるトルクおよび回転数に対応した駆動軸目標動力状態を設定する駆動軸目標動力状態設定手段と、前記駆動軸目標動力状態および原動機の運転効率に基づいて、前記原動機から出力すべきトルクおよび回転数に対応した原動機目標動力状態を設定する原動機目標動力状態設定手段と、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力すると共に、前記電動機を該動力の出力過程で生じるエネルギの循環を考慮して設定された所定トルク以下のトルクで駆動可能な動力状態で該原動機が運転されるよう該原動機、該電動機および前記動力調整手段を制御する制御手段とを備える動力出力装置。 【請求項11】 請求項10記載の動力出力装置であって、前記動力調整手段により調整される電力の少なくとも一部と、前記電動機による動力の入出力に必要な電力の少なくとも一部と、を充放電可能な蓄電手段を備え、前記制御手段は、前記原動機を前記原動機目標動力状態で運転すると共に、該原動機から出力される動力と前記蓄電手段から充放電される電力とを変換して前記駆動軸に出力される動力が前記駆動軸となるよう該原動機、前記電動機および前記動力調整手段を制御する動力制御手段と、該動力制御手段による制御により前記電動機が前記所定トルクよりも大きいのトルクで駆動されるとき、該電動機が該所定トルク以下のトルクで駆動されるよう前記動力制御手段で用いられる前記原動機目標動力状態を修正する原動機目標動力状態修正手段とを備える動力出力装置。 【請求項12】 前記原動機目標動力状態修正手段は、前記原動機目標動力状態を、動力が同一で回転数が小さな動力状態に修正する手段である請求項11記載の動力出力装置。 【請求項13】 駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、出力軸を有する原動機と、前記原動機の出力軸および前記駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、前記出力軸に動力を入出力する電動機と、前記駆動軸に出力されるトルクおよび回転数に対応した駆動軸目標動力状態を設定する駆動軸目標動力状態設定手段と、前記駆動軸の回転数および前記原動機の出力する動力と、前記電動機を前記駆動軸からの動力の出力過程で生じるエネルギの循環を考慮して設定された所定トルク以下のトルクで駆動できる前記原動機の動力状態との関係を記憶した記憶手段と、前記駆動軸の回転数を入力する回転数入力手段と、前記駆動軸目標動力状態に基づいて設定される前記原動機が出力すべき動力と、前記入力された駆動軸の回転数に基づいて、前記記憶手段に記憶された関係を参照して得られる前記原動機の動力状態を、前記原動機目標動力状態として設定する原動機目標動力状態設定手段と、前記原動機を前記原動機目標動力状態で運転すると共に、前記電動機および動力調整手段を用いて、前記原動機目標動力状態を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力する制御手段とを備える動力出力装置。 【請求項14】 前記所定トルクは、値0である請求項1ないし13いずれか記載の動力出力装置。 【請求項15】 前記所定トルクは、前記駆動軸の回転数に基づいて定まるトルクである請求項1ないし13いずれか記載の動力出力装置。 【請求項16】 前記所定トルクは、前記原動機の効率に基づいて定まるトルクである請求項1ないし13いずれか記載の動力出力装置。 【請求項17】 請求項2ないし9,11,12,13いずれか記載の動力出力装置であって、前記蓄電手段を充放電する目標電力を設定する目標電力設定手段と、前記原動機から出力される動力を動力源として駆動する補機とを備え、前記原動機目標動力状態設定手段は、前記駆動軸目標動力状態と前記目標電力と前記補機の駆動に必要な動力とに基づいて原動機目標動力状態を設定する手段であり、前記所定トルクは、前記目標電力と前記補機の駆動に必要な動力とに基づいて定まるトルクである動力出力装置。 【請求項18】 請求項1ないし17いずれか記載の動力出力装置であって、前記動力調整手段は、前記出力軸に結合される第1の回転軸、前記駆動軸に結合される第2の回転軸およびこれらと異なる第3の回転軸を有し、該3つの回転軸のうちいずれか2つの回転軸の動力状態が決定されると、該決定された動力状態に基づいて残余の回転軸の動力状態が決定される3軸式動力入出力手段と、前記第3の回転軸に動力を入出力する第2の電動機とを備える動力出力装置。 【請求項19】 出力軸を有する原動機と、前記原動機の出力軸および駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機とを備え、前記駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、(a)前記駆動軸に出力されるトルクおよび回転数に対応した駆動軸目標動力状態を設定し、(b) 前記駆動軸目標動力状態および原動機の運転効率に基づいて、前記原動機から出力すべきトルクおよび回転数に対応した原動機目標動力状態を設定し、(c)前記原動機から出力された動力を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力すると共に前記電動機を該動力の出力過程で生じるエネルギの循環を考慮して設定された所定トルク以上のトルクで駆動可能な動力状態で該原動機が運転されるよう該原動機、該電動機および前記動力調整手段を制御する動力出力装置の制御方法。 【請求項20】 請求項19記載の動力出力装置の制御方法であって、前記動力出力装置は、更に、前記動力調整手段により調整される電力の少なくとも一部と、前記電動機による動力の入出力に必要な電力の少なくとも一部と、を充放電可能な蓄電手段を備え、前記ステップ(c)は、(c1)前記原動機を前記原動機目標動力状態で運転すると共に、該原動機から出力される動力と前記蓄電手段から充放電される電力とを変換して前記駆動軸に出力される動力が前記駆動軸目標動力状態となるよう該原動機,前記電動機および前記動力調整手段を制御し、(c2) 該制御により前記電動機が前記所定トルク未満のトルクで駆動されるとき、該電動機が該所定トルク以上のトルクで駆動されるよう前記ステップ(c1)で用いられる前記原動機目標動力状態を修正するステップとを備える動力出力装置の制御方法。 【請求項21】 出力軸を有する原動機と、前記原動機の出力軸および駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と前記駆動軸の回転数および前記原動機の出力する動力と、前記電動機を所定トルク以上のトルクで駆動できる前記原動機の動力状態との関係を記憶した記憶手段と、を備え、前記駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、(a)前記駆動軸に出力されるトルクおよび回転数に対応した駆動軸目標動力状態を設定し、(b)前記駆動軸目標動力状態に基づいて設定される前記原動機が出力すべき動力と、入力された駆動軸の回転数に基づいて、前記記憶手段に記憶された関係を参照して得られる前記原動機の動力状態を、前記原動機目標動力状態として設定し、(c)前記原動機を前記原動機目標動力状態で運転すると共に、前記電動機および動力調整手段を用いて、前記原動機目標動力状態を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力する動力出力装置の制御方法。 【請求項22】 駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、出力軸を有する原動機と、前記原動機の出力軸および前記駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と、前記駆動軸に出力されるトルクおよび回転数に対応した駆動軸目標動力状態を設定する駆動軸目標動力状態設定手段と、前記駆動軸目標動力状態および原動機の運転効率に基づいて、前記原動機から出力すべきトルクおよび回転数に対応した原動機目標動力状態を設定する原動機目標動力状態設定手段と、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力すると共に、前記電動機を該動力出力装置全体のエネルギ効率を考慮して設定された所定トルク以上のトルクで駆動可能な動力状態で該原動機が運転されるよう該原動機、該電動機および前記動力調整手段を制御する制御手段とを備える動力出力装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、動力出力装置およびその制御方法に関し、詳しくは、駆動軸に動力を出力する動力出力装置およびこうした動力出力装置の制御方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、原動機から出力される動力をトルク変換して駆動軸に出力する動力出力装置としては、流体を利用したトルクコンバータと変速機とを組み合わせてなるものが用いられていた。この装置におけるトルクコンバータは、原動機の出力軸と変速機に結合された回転軸との間に配置され、封入された流体の流動を介して両軸間の動力の伝達を行なう。このようにトルクコンバータでは、流体の流動により動力を伝達するため、両軸間に滑りが生じ、この滑りに応じたエネルギ損失が発生する。このエネルギ損失は、正確には、両軸の回転数差とその時に動力の出力軸に伝達されるトルクとの積で表わされ、熱として消費される。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】したがって、こうした動力出力装置を動力源として搭載する車両では、両軸間の滑りが大きくなるとき、例えば発進時や登り勾配を低速で走行するときなどのように大パワーが要求されるときには、トルクコンバータでのエネルギ損失が大きくなり、エネルギ効率が低いものとなるという問題があった。また、定常走行時であっても、トルクコンバータにおける動力の伝達効率は100パーセントにならないから、例えば、手動式のトランスミッションと較べて、その燃費は低くならざるを得ない。 【0004】本発明の動力出力装置は、上述の問題を解決し、原動機から出力される動力を高効率に駆動軸に出力する装置を提供することを目的の一つとする。 【0005】なお、出願人は、上述の問題に鑑み、流体を用いたトルクコンバータを用いるのではなく、出力軸を有する原動機と、回転軸を有する発電機と、原動機の出力軸と発電機の回転軸と駆動軸とにキャリア,サンギヤおよびリングギヤがそれぞれ結合されたプラネタリギヤと、発電機と電動機とに接続されたバッテリとを備え、原動機から出力される動力やバッテリに蓄えられた電力を所望の動力として駆動軸に出力するものを提案している(特開昭50−30223号公報)。 【0006】この提案の動力出力装置では、任意の運転ポイントで運転されている原動機から出力される動力はプラネタリギヤにより発電機に伝達される動力と駆動軸に伝達される動力とに分配される。原動機から出力された動力を回転数を低減しつつトルクアップして駆動軸に出力する場合には、発電機に伝達された動力を電力として回生し、この電力を用いて駆動軸に結合された電動機を駆動して駆動軸にトルクを付加する。逆に、原動機から出力される動力をトルクを低減しつつ回転数を増して駆動軸に出力する、いわゆるオーバードライブモードの場合には、電動機に伝達された動力を電力として回生し、この電力を用いて発電機を電動機として駆動する。電動機が駆動軸に結合していることを考えると、オーバードライブモードにおいては、電動機で回生された電力が発電機に供給されるものの、該発電機を駆動して得られる動力の一部はプラネタリギヤを介して駆動軸に出力される際に、再び電動機により電力として回生されることになり、エネルギの一部が電動機,発電機,プラネタリギヤ,電動機の順に循環する循環路を形成してしまう。こうしたエネルギの循環は、循環するエネルギの量が大きくなると、それに伴って原動機からプラネタリギヤを介して直接駆動軸に出力される損失の小さなエネルギが小さくなるから、装置全体のエネルギ効率を低下させる。 【0007】そこで、本発明の動力出力装置およびその制御方法は、こうした原動機から出力される動力の一部を電気エネルギの形態を経ることにより所望のトルクおよび回転数からなる動力にトルク変換して駆動軸に出力する動力出力装置において、原動機から駆動軸にエネルギが出力される過程においてエネルギの循環路が形成されることによる装置全体のエネルギ効率の低下を防止することを目的の一つとする。 【0008】 【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本発明の動力出力装置およびその制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。 【0009】本発明の動力出力装置は、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、出力軸を有する原動機と、前記原動機の出力軸および前記駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と、前記駆動軸に出力されるトルクおよび回転数に対応した駆動軸目標動力状態を設定する駆動軸目標動力状態設定手段と、前記駆動軸目標動力状態および原動機の運転効率に基づいて、前記原動機から出力すべきトルクおよび回転数に対応した原動機目標動力状態を設定する原動機目標動力状態設定手段と、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力すると共に、前記電動機を該動力の出力過程で生じるエネルギの循環を考慮して設定された所定トルク以上のトルクで駆動可能な動力状態で該原動機が運転されるよう該原動機、該電動機および前記動力調整手段を制御する制御手段とを備えることを要旨とする。 【0010】制御手段は、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力すると共に、前記電動機を該動力出力装置全体のエネルギ効率を考慮して設定された所定トルク以上のトルクで駆動可能な動力状態で該原動機が運転されるよう該原動機、該電動機および前記動力調整手段を制御する制御手段としてもよい。 【0011】この本発明の動力出力装置は、原動機の出力軸および駆動軸に結合される動力調整手段が、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する。電動機は、原動機の駆動軸に動力を入出力する。原動機目標動力状態設定手段は前記駆動軸目標動力状態および原動機の運転効率に基づいて、前記原動機から出力すべきトルクおよび回転数に対応した原動機目標動力状態を設定する。制御手段は、前記原動機目標動力状態を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力すると共に、前記電動機を所定トルク以上のトルクで駆動可能な動力状態で該原動機が運転されるよう該原動機、該電動機および前記動力調整手段を制御する。 【0012】ここでいう「動力」は、軸に作用するトルクとその軸の回転数との積の形態で表わされ、単位時間当たりに出力されるエネルギの大きさをいう。これに対し、「動力状態」とは、ある動力を与えるトルクおよび回転数の組み合わせによって定まる運転状態をいうものと定義する。従って、ある「動力」を与える「動力状態」は、トルクおよび回転数の組み合わせにより無数に存在することになる。こうした「動力」および「動力状態」の意味は、後述する本発明の動力出力装置の制御方法においても同様である。なお、動力出力装置は、各瞬間ごとにおけるエネルギのやりとり、言い換えれば単位時間当たりのエネルギ収支を基準として制御されるため、以下、「エネルギ」という用語は単位時間当たりのエネルギ、即ち「動力」と同義の用語として用いる。同様に、単位時間当たりの電気エネルギを意味する「電力」と「電気エネルギ」も同義の用語として用いる。 【0013】こうした本発明の動力出力装置によれば、電動機が所定トルク以上のトルクで駆動可能となるよう制御されるから、エネルギが電動機,動力調整手段,電動機の循環路を循環する動作となっても、所定の大きさのエネルギ以上のエネルギの循環を抑制することができる。例えば、所定トルクを値0とすればエネルギの循環を防止することができ、所定トルクが負の値の所定値であればそれに対応するエネルギ以上の大きさのエネルギの循環を防止することができる。この結果、原動機から機械的に直接駆動軸に出力される損失の小さなエネルギが大きくなるから、装置全体のエネルギ効率を向上させることができる。 【0014】上記発明における電動機および制御手段に代えて、前記出力軸に動力を入出力する電動機と、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力すると共に、前記電動機を該動力の出力過程で生じるエネルギの循環を考慮して設定された所定トルク以下のトルクで駆動可能な動力状態で該原動機が運転されるよう該原動機、該電動機および前記動力調整手段を制御する制御手段とすることもできる。 【0015】電動機が出力軸に動力を入出力するものである構成において、電動機が出力軸に正のトルクを出力しているときは、該電動機は出力軸に結合された動力調整手段から電力の供給を受けていることになる。また、こうして電動機により出力軸に付加された動力の一部は、動力調整手段により再び電力として回収されることになる。つまり、このとき原動機から出力された動力は、動力調整手段、電動機、動力調整手段という循環路を循環することになる。 【0016】上述の構成からなる動力出力装置によれば、電動機が所定トルク以下のトルクで駆動可能となるよう制御されるから、所定の大きさのエネルギ以上のエネルギの循環を抑制することができる。例えば、所定トルクを値0とすればエネルギの循環を防止することができ、所定トルクが正の値の所定値であればそれに対応するエネルギ以上の大きさのエネルギの循環を防止することができる。 【0017】なお、エネルギの循環は駆動軸の回転数と原動機の回転数との回転数の差に応じて生じるものであり、エネルギの循環の許容される範囲は原動機の効率等と関連して生じるものであるから、本発明の動力出力装置において、前記所定トルクは、前記駆動軸の回転数に基づいて定まるトルクであるものとしたり、前記原動機の効率に基づいて定まるトルクであるものとしたりすることもできる。 【0018】また、駆動軸に動力を入出力する電動機を備える本発明の動力出力装置において、前記動力調整手段により調整される電力の少なくとも一部と、前記電動機による動力の入出力に必要な電力の少なくとも一部と、を充放電可能な蓄電手段を備え、前記制御手段は、前記原動機を前記原動機目標動力状態で運転すると共に、該原動機から出力される動力と前記蓄電手段から充放電される電力とを変換して前記前記駆動軸に出力される動力が前記駆動軸目標動力状態となるよう該原動機、前記電動機および前記動力調整手段を制御する動力制御手段と、該動力制御手段による制御により前記電動機が前記所定トルク未満のトルクで駆動されるとき、該電動機が該所定トルク以上のトルクで駆動されるよう前記動力制御手段で用いられる前記原動機目標動力状態を修正する原動機目標動力状態修正手段とを備えるものとすることもできる。 【0019】この態様の動力出力装置は、蓄電手段が、必要に応じて、動力調整手段により調整される電力の少なくとも一部と、電動機による動力の入出力に必要な電力の少なくとも一部とを充放電する。そして、制御手段が備える動力制御手段は、原動機を前記原動機目標動力状態で運転すると共に、該原動機から出力される動力と前記蓄電手段から充放電される電力とを変換して前記駆動軸に出力される動力が前記駆動軸目標動力状態となるよう該原動機、前記電動機および前記動力調整手段を制御する。制御手段が備える原動機目標動力状態修正手段は、こうした動力制御手段による制御により電動機が前記所定トルク未満のトルクで駆動されるとき、該電動機が該所定トルク以上のトルクで駆動されるよう前記動力制御手段で用いられる前記原動機目標動力状態を修正する。こうした態様の動力出力装置によれば、原動機目標動力状態を修正することにより電動機を所定トルク以上のトルクで駆動することができる。 【0020】この制御手段が動力制御手段と原動機目標動力設定手段とを備える態様の本発明の動力出力装置において、前記原動機目標動力状態修正手段は、前記原動機目標動力状態を動力が同一で回転数が大きな動力状態に修正する手段であるものとすることもできる。こうすれば、原動機から出力されるエネルギを変更することなくエネルギの循環を抑制することができる。 【0021】上述した動力出力装置における電動機および原動機目標動力状態修正手段に代えて、前記出力軸に動力を入出力する電動機と、該動力制御手段による制御により前記電動機が前記所定トルクよりも大きいのトルクで駆動されるとき、該電動機が該所定トルク以下のトルクで駆動されるよう前記動力制御手段で用いられる前記原動機目標動力状態を修正する原動機目標動力状態修正手段とを備えるものとすることもできる。また、前記原動機目標動力状態修正手段は、前記原動機目標動力状態を動力が同一で回転数が小さな動力状態に修正する手段であるものとすることもできる。 【0022】こうした原動機目標動力状態を動力が同一で回転数が大きな動力状態に修正する態様の動力出力装置において、さらに、前記原動機目標動力状態修正手段により原動機目標動力状態が修正されたとき、前記原動機から出力される動力を略同一に保持した状態で前記原動機の運転状態を前記修正された原動機目標動力状態に移行するよう該原動機と前記電動機と前記動力調整手段とを制御する移行制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、過渡時でも原動機から出力される動力を一定に保つことができる。こうした態様の動力出力装置において、前記原動機は吸気管の開口面積と吸気バルブの開閉タイミングとを変更可変な内燃機関であり、前記移行制御手段は前記吸気管の開口面積を所定の開口面積に保った状態で前記吸気バルブの開閉タイミングを徐々に変更するに伴って前記動力調整手段により調整される電力を徐々に変更することにより前記原動機の運転状態を前記修正された原動機目標動力状態に移行する手段であるものとすることもできる。 【0023】また、原動機目標動力状態を動力が同一で回転数が大きな動力状態に修正する態様の動力出力装置において、さらに前記原動機目標動力状態修正手段により原動機目標動力状態が修正されたとき、トルクに対して回転数を優先して前記原動機の運転状態を前記修正された原動機目標動力状態に移行するよう該原動機と前記電動機と前記動力調整手段とを制御する移行制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、トルクに対して回転数を優先して移行させるから、2段階以上の移行となり、容易に制御することができる。この態様の動力出力装置において、前記原動機は吸気管の開口面積を変更可変な内燃機関であり、前記移行制御手段は、前記原動機の回転数が前記修正された原動機目標動力状態に対応する回転数に移行するよう前記動力調整手段により調整される電力を変更する回転数移行手段と、該回転数移行手段による変更により前記原動機の回転数の移行が行われたとき、該原動機から前記修正された原動機目標動力状態に対応するトルクが出力されるよう前記吸気管の開口面積を調節するトルク移行手段とを備えるものとしたり、あるいは、この態様の動力出力装置において、前記原動機は吸気バルブの開閉タイミングを変更可変な内燃機関であり、前記移行制御手段は、前記原動機の回転数が前記修正された原動機目標動力状態に対応する回転数に移行するよう前記動力調整手段により調整される電力を変更する回転数移行手段と、該回転数移行手段による変更により前記原動機の回転数の移行が行われたとき、該原動機から前記修正された原動機目標動力状態に対応するトルクが出力されるよう吸気バルブの開閉タイミングを調節するトルク移行手段とを備えるものとすることもできる。以上で説明した種々の移行制御手段は、出力軸に動力を入出力する電動機を備える動力出力装置においても同様に適用可能なものである。 【0024】本発明の動力出力装置は、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、出力軸を有する原動機と、前記原動機の出力軸および前記駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と、前記駆動軸に出力されるトルクおよび回転数に対応した駆動軸目標動力状態を設定する駆動軸目標動力状態設定手段と、前記駆動軸の回転数および前記原動機の出力する動力と、前記電動機を前記駆動軸からの動力の出力過程で生じるエネルギの循環を考慮して設定された所定トルク以上のトルクで駆動できる前記原動機の動力状態との関係を記憶した記憶手段と、前記駆動軸の回転数を入力する回転数入力手段と、前記駆動軸目標動力状態に基づいて設定される前記原動機が出力すべき動力と、前記入力された駆動軸の回転数に基づいて、前記記憶手段に記憶された関係を参照して得られる前記原動機の動力状態を、前記原動機目標動力状態として設定する原動機目標動力状態設定手段と、前記原動機を前記原動機目標動力状態で運転すると共に、前記電動機および動力調整手段を用いて、前記原動機目標動力状態を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力する制御手段とを備えるものとすることもできる。 【0025】かかる動力出力装置は、上記記憶手段に記憶された関係を参照することにより、前記電動機を所定トルク以上のトルクで駆動できる動力状態を原動機目標動力状態として設定する。この結果、電動機を所定トルク以上のトルクで駆動することが可能となり、エネルギの循環を防止することができる。また、かかる動力出力装置によれば、エネルギの循環を防止するための制御が容易に実現できる利点もある。さらに、動力出力装置の運転状態が変化した場合に、電動機のトルクに比較して緩やかに変動する駆動軸の回転数を用いて制御を行うため、動力出力装置の運転状態を滑らかに制御することもできる。 【0026】上述した動力出力装置における電動機および記憶手段に代えて、前記出力軸に動力を入出力する電動機と、前記駆動軸の回転数および前記原動機の出力する動力と、前記電動機を前記駆動軸からの動力の出力過程で生じるエネルギの循環を考慮して設定された所定トルク以下のトルクで駆動できる前記原動機の動力状態との関係を記憶した記憶手段と、を備える動力出力装置とすることもできる。 【0027】これらの動力出力装置における前記所定のトルクは、先に説明した動力出力装置と同様、値0としてもよいし、駆動軸の回転数に基づいて定まるトルクや、原動機の効率に基づいて定まるトルクとしてもよい。 【0028】なお、以上で説明した種々の動力出力装置のうち、蓄電手段を備える動力出力装置においては、前記蓄電手段を充放電する目標電力を設定する目標電力設定手段と、前記原動機から出力される動力を動力源として駆動する補機とを備え、前記原動機目標動力状態設定手段は前記駆動軸目標動力状態と前記目標電力と前記補機の駆動に必要な動力とに基づいて原動機目標動力状態を設定する手段であり、前記所定トルクは前記目標電力と前記補機の駆動に必要な動力とに基づいて定まるトルクであるものとすることもできる。 【0029】本発明の動力出力装置において、前記動力調整手段は、前記出力軸に結合される第1の回転軸、前記駆動軸に結合される第2の回転軸およびこれらと異なる第3の回転軸を有し、該3つの回転軸のうちいずれか2つの回転軸の動力状態が決定されると、該決定された動力状態に基づいて残余の回転軸の動力状態が決定される3軸式動力入出力手段と、前記第3の回転軸に動力を入出力する第2の電動機とを備えるものとすることもできる。 【0030】本発明の動力出力装置の制御方法は、出力軸を有する原動機と、前記原動機の出力軸および駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機とを備え、前記駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、(a)前記駆動軸に出力されるトルクおよび回転数に対応した駆動軸目標動力状態を設定し、(b) 前記駆動軸目標動力状態および原動機の運転効率に基づいて、前記原動機から出力すべきトルクおよび回転数に対応した原動機目標動力状態を設定し、(c)前記原動機から出力された動力を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力すると共に前記電動機を該動力の出力過程で生じるエネルギの循環を考慮して設定された所定トルク以上のトルクで駆動可能な動力状態で該原動機が運転されるよう該原動機、該電動機および前記動力調整手段を制御することを要旨とする。 【0031】こうした本発明の動力出力装置の制御方法によれば、電動機が所定トルク以上のトルクとなるよう制御されるから、エネルギが電動機,動力調整手段,電動機の循環路を循環する動作となっても、所定の大きさのエネルギ以上のエネルギの循環を抑制することができる。例えば、所定トルクを値0とすればエネルギの循環を防止することができ、所定トルクが負の値の所定値であればそれに対応するエネルギ以上の大きさのエネルギの循環を防止することができる。この結果、原動機から機械的に直接駆動軸に出力される損失の小さなエネルギが大きくなるから、装置全体のエネルギ効率を向上させることができる。なお、エネルギの循環は駆動軸の回転数と原動機の回転数とによって生じるものであり、エネルギの循環の許容される範囲は原動機の効率等と関連して生じるものであるから、本発明の動力出力装置の制御方法においても、前記所定トルクは、前記駆動軸の回転数に基づいて定まるトルクであるものとしたり、前記原動機の効率に基づいて定まるトルクであるものとしたりすることもできる。 【0032】こうした本発明の動力出力装置の制御方法において、前記動力出力装置は、更に、前記動力調整手段により調整される電力の少なくとも一部と、前記電動機による動力の入出力に必要な電力の少なくとも一部と、を充放電可能な蓄電手段を備え、前記ステップ(c)は、(c1)前記原動機を前記原動機目標動力状態で運転すると共に、該原動機から出力される動力と前記蓄電手段から充放電される電力とを変換して前記駆動軸に出力される動力が前記駆動軸目標動力状態となるよう該原動機,前記電動機および前記動力調整手段を制御し、(c2) 該制御により前記電動機が前記所定トルク未満のトルクで駆動されるとき、該電動機が該所定トルク以上のトルクで駆動されるよう前記ステップ(c1)で用いられる前記原動機目標動力状態を修正するステップとを備えるものとすることもできる。 【0033】また、本発明の動力出力装置の制御方法は、出力軸を有する原動機と、前記原動機の出力軸および駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と前記駆動軸の回転数および前記原動機の出力する動力と、前記電動機を所定トルク以上のトルクで駆動できる前記原動機の動力状態との関係を記憶した記憶手段と、を備え、前記駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、(a)前記駆動軸に出力されるトルクおよび回転数に対応した駆動軸目標動力状態を設定し、(b)前記駆動軸目標動力状態に基づいて設定される前記原動機が出力すべき動力と、入力された駆動軸の回転数に基づいて、前記記憶手段に記憶された関係を参照して得られる前記原動機の動力状態を、前記原動機目標動力状態として設定し、(c)前記原動機を前記原動機目標動力状態で運転すると共に、前記電動機および動力調整手段を用いて、前記原動機目標動力状態を前記駆動軸目標動力状態に変換して前記駆動軸から出力するものとしてもよい。 【0034】こうした態様の動力出力装置の制御方法によれば、原動機目標動力を修正することにより電動機を所定トルク以上のトルクで駆動することができる。また、上述の動力出力装置の制御方法において、電動機を所定トルク以下のトルクで駆動するものとすれば、駆動軸に動力を入出力する電動機に代えて、出力軸に動力を入出力する電動機を備える動力出力装置について、該制御方法を適用することもできる。 【0035】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例としての動力出力装置110の概略構成を示す構成図、図2は実施例の動力出力装置110の部分拡大図、図3は実施例の動力出力装置110を組み込んだ車両の概略構成を示す構成図である。説明の都合上、まず図3を用いて、車両全体の構成から説明する。 【0036】図3に示すように、この車両は、ガソリンを燃料として動力を出力するエンジン150を備える。このエンジン150は、吸気系からスロットルバルブ166を介して吸入した空気と燃料噴射弁151から噴射されたガソリンとの混合気を吸気弁152を介して燃焼室154に吸入し、この混合気の爆発により押し下げられるピストン155の運動をクランクシャフト156の回転運動に変換する。ここで、スロットルバルブ166はアクチュエータ168により開閉駆動される。点火プラグ162は、イグナイタ158からディストリビュータ160を介して導かれた高電圧によって電気火花を形成し、混合気はその電気火花によって点火されて爆発燃焼する。 【0037】このエンジン150は、吸気弁152の開閉タイミングBTを変更する開閉タイミング変更機構153を備える。この開閉タイミング変更機構153は、吸気弁152を開閉駆動する図示しない吸気カムシャフトのクランク角に対する位相を進角または遅角することにより吸気弁152の開閉タイミングBTを調整する。なお、吸気カムシャフトの位相の進角および遅角は、吸気カムシャフトのポジションを検出するカムシャフトポジションセンサ173により検出される信号に基づいて、後述する電子制御ユニット170によるフィードバック制御によって行なわれる。 【0038】このエンジン150の運転は、電子制御ユニット(以下、EFIECUと呼ぶ)170により制御されている。EFIECU170には、エンジン150の運転状態を示す種々のセンサが接続されている。例えば、スロットルバルブ166の開度(ポジション)TVPを検出するスロットルバルブポジションセンサ167、エンジン150の負荷を検出する吸気管負圧センサ172、吸気カムシャフトのポジションを検出するカムシャフトポジションセンサ173、エンジン150の水温を検出する水温センサ174、ディストリビュータ160に設けられクランクシャフト156の回転数と回転角度を検出する回転数センサ176及び回転角度センサ178などである。なお、EFIECU170には、この他、例えばイグニッションキーの状態STを検出するスタータスイッチ179なども接続されているが、その他のセンサ,スイッチなどの図示は省略した。 【0039】エンジン150のクランクシャフト156は、後述するプラネタリギヤ120やモータMG1,モータMG2に結合されており、更に駆動軸112を回転軸とする動力伝達ギヤ111を介してディファレンシャルギヤ114に結合されている。したがって、動力出力装置110から出力された動力は、最終的に左右の駆動輪116,118に伝達される。モータMG1およびモータMG2は、制御装置180に電気的に接続されており、この制御装置180によって制御される。制御装置180の構成は後で詳述するが、内部には制御CPUが備えられており、シフトレバー182に設けられたシフトポジションセンサ184やアクセルペダル164に設けられたアクセルペダルポジションセンサ164a,ブレーキペダル165に設けられたブレーキペダルポジションセンサ165aなども接続されている。また、制御装置180は、上述したEFIECU170と通信により、種々の情報をやり取りしている。これらの情報のやり取りを含む制御については、後述する。 【0040】図1に示すように、実施例の動力出力装置110は、大きくは、エンジン150、エンジン150のクランクシャフト156にプラネタリキャリア124が機械的に結合されたプラネタリギヤ120、プラネタリギヤ120のサンギヤ121に結合されたモータMG1、プラネタリギヤ120のリングギヤ122に結合されたモータMG2およびモータMG1,MG2を駆動制御する制御装置180から構成されている。 【0041】プラネタリギヤ120およびモータMG1,MG2の構成について、図2により説明する。プラネタリギヤ120は、クランクシャフト156に軸中心を貫通された中空のサンギヤ軸125に結合されたサンギヤ121と、クランクシャフト156と同軸のリングギヤ軸126に結合されたリングギヤ122と、サンギヤ121とリングギヤ122との間に配置されサンギヤ121の外周を自転しながら公転する複数のプラネタリピニオンギヤ123と、クランクシャフト156の端部に結合され各プラネタリピニオンギヤ123の回転軸を軸支するプラネタリキャリア124とから構成されている。このプラネタリギヤ120では、サンギヤ121,リングギヤ122およびプラネタリキャリア124にそれぞれ結合されたサンギヤ軸125,リングギヤ軸126およびクランクシャフト156の3軸が動力の入出力軸とされ、3軸のうちいずれか2軸へ入出力される動力が決定されると、残余の1軸に入出力される動力は決定された2軸へ入出力される動力に基づいて定まる。なお、このプラネタリギヤ120の3軸への動力の入出力についての詳細は後述する。 【0042】リングギヤ122には、動力の取り出し用の動力取出ギヤ128が結合されている。この動力取出ギヤ128は、チェーンベルト129により動力伝達ギヤ111に接続されており、動力取出ギヤ128と動力伝達ギヤ111との間で動力の伝達がなされる。 【0043】モータMG1は、同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石135を有するロータ132と、回転磁界を形成する三相コイル134が巻回されたステータ133とを備える。ロータ132は、プラネタリギヤ120のサンギヤ121に結合されたサンギヤ軸125に結合されている。ステータ133は、無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、ケース119に固定されている。このモータMG1は、永久磁石135による磁界と三相コイル134によって形成される磁界との相互作用によりロータ132を回転駆動する電動機として動作し、永久磁石135による磁界とロータ132の回転との相互作用により三相コイル134の両端に起電力を生じさせる発電機として動作する。なお、サンギヤ軸125には、その回転角度θsを検出するレゾルバ139が設けられている。 【0044】モータMG2も、モータMG1と同様に同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石145を有するロータ142と、回転磁界を形成する三相コイル144が巻回されたステータ143とを備える。ロータ142は、プラネタリギヤ120のリングギヤ122に結合されたリングギヤ軸126に結合されており、ステータ143はケース119に固定されている。モータMG2のステータ143も無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されている。このモータMG2もモータMG1と同様に、電動機あるいは発電機として動作する。なお、リングギヤ軸126には、その回転角度θrを検出するレゾルバ149が設けられている。 【0045】次に、モータMG1,MG2を駆動制御する制御装置180について説明する。図1に示すように、制御装置180は、モータMG1を駆動する第1の駆動回路191、モータMG2を駆動する第2の駆動回路192、両駆動回路191,192を制御する制御CPU190、二次電池であるバッテリ194から構成されている。制御CPU190は、1チップマイクロプロセッサであり、内部に、ワーク用のRAM190a、処理プログラムを記憶したROM190b、入出力ポート(図示せず)およびEFIECU170と通信を行なうシリアル通信ポート(図示せず)を備える。この制御CPU190には、レゾルバ139からのサンギヤ軸125の回転角度θs、レゾルバ149からのリングギヤ軸126の回転角度θr、アクセルペダルポジションセンサ164aからのアクセルペダルポジション(アクセルペダルの踏込量)AP、ブレーキペダルポジションセンサ165aからのブレーキペダルポジション(ブレーキペダルの踏込量)BP、シフトポジションセンサ184からのシフトポジションSP、第1の駆動回路191に設けられた2つの電流検出器195,196からの電流値Iu1,Iv2、第2の駆動回路192に設けられた2つの電流検出器197,198からの電流値Iu2,Iv2、バッテリ194の残容量を検出する残容量検出器199からの残容量BRMなどが、入力ポートを介して入力されている。なお、残容量検出器199は、バッテリ194の電解液の比重またはバッテリ194の全体の重量を測定して残容量を検出するものや、充電・放電の電流値と時間を演算して残容量を検出するものや、バッテリの端子間を瞬間的にショートさせて電流を流し内部抵抗を測ることにより残容量を検出するものなどが知られている。 【0046】また、制御CPU190からは、第1の駆動回路191に設けられたスイッチング素子である6個のトランジスタTr1ないしTr6を駆動する制御信号SW1と、第2の駆動回路192に設けられたスイッチング素子としての6個のトランジスタTr11ないしTr16を駆動する制御信号SW2とが出力されている。第1の駆動回路191内の6個のトランジスタTr1ないしTr6は、トランジスタインバータを構成しており、それぞれ、一対の電源ラインL1,L2に対してソース側とシンク側となるよう2個ずつペアで配置され、その接続点に、モータMG1の三相コイル(UVW)34の各々が接続されている。電源ラインL1,L2は、バッテリ194のプラス側とマイナス側に、それぞれ接続されているから、制御CPU190により対をなすトランジスタTr1ないしTr6のオン時間の割合を制御信号SW1により順次制御し、三相コイル134の各コイルに流れる電流を、PWM制御によって擬似的な正弦波にすると、三相コイル134により、回転磁界が形成される。 【0047】他方、第2の駆動回路192の6個のトランジスタTr11ないしTr16も、トランジスタインバータを構成しており、それぞれ、第1の駆動回路191と同様に配置されていて、対をなすトランジスタの接続点は、モータMG2の三相コイル144の各々に接続されている。したがって、制御CPU190により対をなすトランジスタTr11ないしTr16のオン時間を制御信号SW2により順次制御し、各コイル144に流れる電流を、PWM制御によって擬似的な正弦波にすると、三相コイル144により、回転磁界が形成される。 【0048】以上構成を説明した実施例の動力出力装置110の動作について説明する。実施例の動力出力装置110の動作原理、特にトルク変換の原理は以下の通りである。エンジン150を回転数Ne,トルクTeの運転ポイントP1で運転し、このエンジン150から出力されるエネルギPeと同一のエネルギであるが異なる回転数Nr,トルクTrの運転ポイントP2でリングギヤ軸126を運転する場合、すなわち、エンジン150から出力される動力をトルク変換してリングギヤ軸126に作用させる場合について考える。この時のエンジン150とリングギヤ軸126の回転数およびトルクの関係を図4に示す。 【0049】プラネタリギヤ120の3軸(サンギヤ軸125,リングギヤ軸126およびプラネタリキャリア124(クランクシャフト156))における回転数やトルクの関係は、機構学の教えるところによれば、図5および図6に例示する共線図と呼ばれる図として表わすことができ、幾何学的に解くことができる。なお、プラネタリギヤ120における3軸の回転数やトルクの関係は、上述の共線図を用いなくても各軸のエネルギを計算することなどにより数式的に解析することもできる。本実施例では説明の容易のため共線図を用いて説明する。 【0050】図5における縦軸は3軸の回転数軸であり、横軸は3軸の座標軸の位置の比を表わす。すなわち、サンギヤ軸125とリングギヤ軸126の座標軸S,Rを両端にとったとき、プラネタリキャリア124の座標軸Cは、軸Sと軸Rを1:ρに内分する軸として定められる。ここで、ρは、リングギヤ122の歯数に対するサンギヤ121の歯数の比であり、次式(1)で表わされる。 【0051】 【数1】
【0052】いま、エンジン150が回転数Neで運転されており、リングギヤ軸126が回転数Nrで運転されている場合を考えているから、エンジン150のクランクシャフト156が結合されているプラネタリキャリア124の座標軸Cにエンジン150の回転数Neを、リングギヤ軸126の座標軸Rに回転数Nrをプロットすることができる。この両点を通る直線を描けば、この直線と座標軸Sとの交点で表わされる回転数としてサンギヤ軸125の回転数Nsを求めることができる。以下、この直線を動作共線と呼ぶ。なお、回転数Nsは、回転数Neと回転数Nrとを用いて比例計算式(次式(2))により求めることができる。このようにプラネタリギヤ120では、サンギヤ121,リングギヤ122およびプラネタリキャリア124のうちいずれか2つの回転を決定すると、残余の1つの回転は、決定した2つの回転に基づいて決定される。 【0053】 【数2】
【0054】次に、描かれた動作共線に、エンジン150のトルクTeをプラネタリキャリア124の座標軸Cを作用線として図中下から上に作用させる。このとき動作共線は、トルクに対してはベクトルとしての力を作用させたときの剛体として取り扱うことができるから、座標軸C上に作用させたトルクTeは、平行な2つの異なる作用線への力の分離の手法により、座標軸S上のトルクTesと座標軸R上のトルクTerとに分離することができる。このときトルクTesおよびTerの大きさは、次式(3)および式(4)によって表わされる。 【0055】 【数3】
【0056】動作共線がこの状態で安定であるためには、動作共線の力の釣り合いをとればよい。すなわち、座標軸S上には、トルクTesと大きさが同じで向きが反対のトルクTm1を作用させ、座標軸R上には、リングギヤ軸126に出力するトルクTrと同じ大きさで向きが反対のトルクとトルクTerとの合力に対し大きさが同じで向きが反対のトルクTm2を作用させるのである。このトルクTm1はモータMG1により、トルクTm2はモータMG2により作用させることができる。このとき、モータMG1では回転の方向と逆向きにトルクを作用させるから、モータMG1は発電機として動作することになり、トルクTm1と回転数Nsとの積で表わされる電気エネルギPm1をサンギヤ軸125から回生する。モータMG2では、回転の方向とトルクの方向とが同じであるから、モータMG2は電動機として動作し、トルクTm2と回転数Nrとの積で表わされる電気エネルギPm2を動力としてリングギヤ軸126に出力する。 【0057】ここで、電気エネルギPm1と電気エネルギPm2とを等しくすれば、モータMG2で消費する電力のすべてをモータMG1により回生して賄うことができる。このためには、入力されたエネルギのすべてを出力するものとすればよいから、エンジン150から出力されるエネルギPeとリングギヤ軸126に出力されるエネルギPrとを等しくすればよい。すなわち、トルクTeと回転数Neとの積で表わされるエネルギPeと、トルクTrと回転数Nrとの積で表わされるエネルギPrとを等しくするのである。図4に照らせば、運転ポイントP1で運転されているエンジン150から出力されるトルクTeと回転数Neとで表わされる動力状態を、トルク変換して、同一のエネルギでトルクTrと回転数Nrとで表わされる動力状態としてリングギヤ軸126に出力するのである。前述したように、リングギヤ軸126に出力された動力は、動力取出ギヤ128および動力伝達ギヤ111により駆動軸112に伝達され、ディファレンシャルギヤ114を介して駆動輪116,118に伝達される。したがって、リングギヤ軸126に出力される動力と駆動輪116,118に伝達される動力とにはリニアな関係が成立するから、駆動輪116,118に伝達される動力は、リングギヤ軸126に出力される動力を制御することにより制御することができる。 【0058】図5の共線図の状態のときのエネルギの流れを図7に模式的に示す。図中の通路の太さは、エネルギの大きさを示す。図示するように、エンジン150は、燃料(実施例ではガソリン)が持つ化学エネルギをエンジン150の効率を乗じた機械エネルギ(回転動力)としてクランクシャフト156に出力する。プラネタリギヤ120は、エンジン150から出力された機械エネルギをプラネタリキャリア124から入力し、この機械エネルギを上述の動作共線の釣り合いの関係に基づいてサンギヤ軸125とリングギヤ軸126とに分配する。サンギヤ軸125に取り付けられたモータMG1は、発電機として機能して、プラネタリギヤ120によりサンギヤ軸125に分配された機械エネルギをモータMG1の効率を乗じた電気エネルギPm1として回生し、この電気エネルギPm1をバッテリ194やモータMG2に供給する。リングギヤ軸126に取り付けられたモータMG2は、プラネタリギヤ120により分配された機械エネルギを保有するリングギヤ軸126に、モータMG1から供給される電気エネルギPm1をモータMG1の効率を乗じた機械エネルギを出力する。したがって、バッテリ194の充放電は行なわれず、モータMG1により回生された電気エネルギPm1のすべてがモータMG2に供給されるものとすれば、エンジン150からクランクシャフト156に出力された機械エネルギは、プラネタリギヤ120を介してリングギヤ軸126に直接出力される経路と、モータMG1とモータMG2とにより電気エネルギを経由してリングギヤ軸126に出力される経路との2つの経路を通ってリングギヤ軸126に出力されることになる。実施例の動力出力装置110では、図5の共線図の状態においては、こうした2つの経路を通ることにより、エンジン150に出力された動力を所望の動力状態にトルク変換してリングギヤ軸126に出力することができるのである。なお、図7の模式図では、モータMG1により回生された電気エネルギPm1の一部を用いてバッテリ194を充電するものとしたが、逆に、バッテリ194から電気エネルギを取り出してモータMG1により回生される電気エネルギPm1と合わせてモータMG2に供給するものとしてもよい。 【0059】図5に示す共線図ではサンギヤ軸125の回転数Nsは正であったが、エンジン150の回転数Neとリングギヤ軸126の回転数Nrとによっては、図6に示す共線図のように負となる場合もある。このときには、モータMG1では、回転の方向とトルクの作用する方向とが同じになるから、モータMG1は電動機として動作し、トルクTm1と回転数Nsとの積で表わされる電気エネルギPm1を消費する。一方、モータMG2では、回転の方向とトルクの作用する方向とが逆になるから、モータMG2は発電機として動作し、トルクTm2と回転数Nrとの積で表わされる電気エネルギPm2をリングギヤ軸126から回生することになる。この場合、モータMG1で消費する電気エネルギPm1とモータMG2で回生する電気エネルギPm2とを等しくすれば、モータMG1で消費する電気エネルギPm1をモータMG2で丁度賄うことができる。 【0060】図6の共線図の状態のときのエネルギの流れを図8に模式的に示す。図示するように、図8の模式図では、プラネタリギヤ120は、エンジン150から出力される機械エネルギをプラネタリキャリア124に入力すると共にモータMG1により出力される機械エネルギをサンギヤ軸125に入力し、これらの機械エネルギの和を動作共線の釣り合いの関係に基づいてリングギヤ軸126に出力する。リングギヤ軸126に取り付けられたモータMG2は、発電機として機能して、プラネタリギヤ120によりリングギヤ軸126に出力された機械エネルギの一部をモータMG2の効率を乗じた電気エネルギPm2として回生し、この電気エネルギPm2をバッテリ194やモータMG1に供給する。したがって、バッテリ194の充放電は行なわれず、モータMG2により回生された電気エネルギPm2のすべてがモータMG1に供給されるものとすれば、エンジン150からクランクシャフト156に出力された機械エネルギは、モータMG1,プラネタリギヤ120,モータMG2,モータMG1の順に形成される循環路を経由してリングギヤ軸126に出力されることになる。実施例の動力出力装置110では、図6の共線図の状態においては、こうしたエネルギの循環路を形成することにより、エンジン150に出力された動力を所望の動力状態にトルク変換してリングギヤ軸126に出力することができるのである。図6の共線図において、リングギヤ軸126の回転数Nrが大きくなったときやエンジン150のトルクTeを大きくしたときなどには、図9の模式図に示すように、上述の循環するエネルギが大きくなってモータMG1およびモータMG2による損失が大きくなり、エンジン150から出力される機械エネルギのうちプラネタリギヤ120を介して直接リングギヤ軸126に出力される損失の小さなエネルギが小さくなるから、動力出力装置110のエネルギ効率は低下する。こうした大きなエネルギの循環がエネルギ効率からみて好ましくないのは、上述の「発明が解決しようとする課題」の欄でも記載した。なお、図8や図9の模式図では、モータMG2により回生された電気エネルギPm2の一部を用いてバッテリ194を充電するものとしたが、逆に、バッテリ194から電気エネルギを取り出してモータMG2により回生される電気エネルギPm2と合わせてモータMG1に供給するものとしてもよい。 【0061】次に、上述の大きなエネルギの循環を回避するトルク制御の実際について図10に例示するトルク制御ルーチンに基づき説明する。本ルーチンは、動力出力装置110が起動されたときから所定時間毎(例えば、48msec毎)に繰り返し実行されるものである。本ルーチンが実行されると、制御装置180の制御CPU190は、まず、リングギヤ軸126の回転数Nrを読み込む処理を実行する(ステップS100)。リングギヤ軸126の回転数Nrはレゾルバ149により検出される回転角度θrから求めることができる。 【0062】続いて、アクセルペダルポジションセンサ164aによって検出されるアクセルペダルポジションAPを入力する処理を行なう(ステップS102)。アクセルペダル164は運転者が出力トルクが足りないと感じたときに踏み込まれるものであるから、アクセルペダルポジションAPは運転者の欲している出力トルク(すなわち、駆動輪116,118に出力すべきトルク)に対応するものとなる。アクセルペダルポジションAPを読み込むと、読み込んだアクセルペダルポジションAPとリングギヤ軸126の回転数Nrとに基づいてリングギヤ軸126に出力すべきトルクの目標値であるトルク指令値Tr*を導出する処理を行なう(ステップS104)。また、こうして導出されたトルク指令値Tr*とリングギヤ軸126の回転数Nrとの積からリングギヤ軸に出力すべきエネルギPrを算出する(ステップS106)。ここで、駆動輪116,118に出力すべきトルクを導出せずに、リングギヤ軸126に出力すべきトルクを導出するのは、リングギヤ軸126は動力取出ギヤ128,動力伝達ギヤ111およびディファレンシャルギヤ114を介して駆動輪116,118に機械的に結合されているから、リングギヤ軸126に出力すべきトルクを導出すれば、駆動輪116,118に出力すべきトルクを導出する結果となるからである。なお、実施例では、リングギヤ軸126の回転数NrとアクセルペダルポジションAPとトルク指令値Tr*との関係を示すマップを予めROM190bに記憶しておき、アクセルペダルポジションAPが読み込まれると、読み込まれたアクセルペダルポジションAPとリングギヤ軸126の回転数NrとROM190bに記憶したマップとに基づいてトルク指令値Tr*の値を導出するものとした。このマップの一例を図11に示す。 【0063】次に、残容量検出器199により検出されるバッテリ194の残容量BRMを読み込み(ステップS108)、読み込んだバッテリ194の残容量BRMに基づいてバッテリ194を充放電する電力(充放電エネルギPb)を設定する(ステップS110)。このように、バッテリ194の残容量BRMに基づいて充放電エネルギPbを設定するのは、バッテリ194の充電可能な電力や放電可能な電力は残容量BRMによって変化し、適正な充電電圧や放電電圧,充電電流や放電電流も残容量BRMによって変わるからである。図12にバッテリ194の残容量BRMと充電可能な電力との関係の一例を示す。図中、閾値BLと閾値BHは、実施例におけるバッテリ194の適正な領域を示すものである。実施例では、バッテリ194の残容量BRMが閾値BLを下回ったときに残容量BRMに基づいて求められる充電エネルギを充放電エネルギPbとして設定し、残容量BRMが閾値BHを上回ったときに残容量BRMに基づいて求められる放電エネルギを充放電エネルギPbとして設定する。なお、実施例では、充放電エネルギPbは、充電エネルギのときには正の値として、放電エネルギのときには負の値として設定するものとし、バッテリ194の各残容量BRMに対して実験等により最適な充放電エネルギPbを求め、それを予めROM190bにマップ(図示せず)として記憶しておき、バッテリ194の残容量BRMに対応する充放電エネルギPbをROM190bに記憶したマップから導出するものとした。 【0064】充放電エネルギPbを導出すると、制御CPU190は、リングギヤ軸126に出力すべきエネルギとして算出したエネルギPrと導出した充放電エネルギPbとエンジン150から出力される動力により駆動する図示しない補機(例えば、エアコンのコンプレッサや冷却水のポンプなど)の駆動に必要な補機駆動エネルギPhとの和として必要エネルギPnを算出し(ステップS112)、この必要エネルギPnをプラネタリギヤ120やモータMG1,モータMG2などによるトルク変換の効率ηtで割ってエンジン150から出力すべきエネルギPeを算出する(ステップS114)。そして、求めたエネルギPeに基づいてエンジン150の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを設定する処理を行なう(ステップS116)。ここで、エンジン150から出力するエネルギPeはそのトルクTeと回転数Neとの積に等しいから、エネルギPeと目標回転数Ne*と目標トルクTe*との関係はPe=Ne*×Te*となる。この関係を満足するエンジン150の目標トルクTe*と目標回転数Ne*との組み合せは無数に存在する。そこで、実施例では、実験などにより各エネルギPeに対してエンジン150ができる限り効率の高い状態で運転され、かつエネルギPeの変化に対してエンジン150の運転状態が滑らかに変化する運転ポイントを目標トルクTe*と目標回転数Ne*との組み合わせとして求め、これを予めROM190bにマップとして記憶しておき、エネルギPeに対応する目標トルクTe*と目標回転数Ne*との組み合わせをこのマップから導出するものとした。このマップについて、更に説明する。 【0065】図13は、エンジン150の運転ポイントとエンジン150の効率との関係を示すグラフである。図中曲線Bはエンジン150の運転可能な領域の境界を示す。エンジン150の運転可能な領域には、その特性に応じて効率が同一の運転ポイントを示す曲線α1ないしα6のような等効率線を描くことができる。また、エンジン150の運転可能な領域には、トルクTeと回転数Neとの積で表わされるエネルギが一定の曲線、例えば曲線C1−C1ないしC3−C3を描くことができる。こうして描いたエネルギ一定の曲線C1−C1ないしC3−C3に沿って各運転ポイントの効率をエンジン150の回転数Neを横軸として表わすと図14のグラフのようになる。 【0066】図示するように、出力するエネルギPeが同じでも、どの運転ポイントで運転するかによってエンジン150の効率は大きく異なる。例えばエネルギ一定の曲線C1−C1上では、エンジン150を運転ポイントA1(トルクTe1,回転数Ne1)で運転することにより、その効率を最も高くすることができる。このような効率が最も高い運転ポイントは、出力エネルギ一定の曲線C2−C2およびC3−C3ではそれぞれ運転ポイントA2およびA3が相当するように、各エネルギ一定の曲線上に存在する。図13中の曲線(動作曲線)Aは、これらのことに基づき、スロットルバルブ166の前後で吸入空気に若干の圧力差が生じるようスロットルバルブ166の開度TVPを調節した状態で、かつ、各エネルギPeに対してエンジン150の効率ができる限り高くなる運転ポイントを連続する線で結んだものである。スロットルバルブ166の前後で吸入空気に若干の圧力差が生じるようスロットルバルブ166を調節する理由については後述する。実施例では、こうして得られる動作曲線A上の各運転ポイント(トルクTe,回転数Ne)とエネルギPeとの関係をマップとしたものを用いてエンジン150の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを設定した。 【0067】ここで、動作曲線Aを連続する曲線で結ぶのは、エネルギPeの変化に対して不連続な曲線によりエンジン150の運転ポイントを定めると、エネルギPeが不連続な運転ポイントを跨いで変化するときにエンジン150の運転状態が急変することになり、その変化の程度によっては、目標の運転状態にスムースに移行できずノッキングを生じたり停止してしまう場合があるからである。したがって、このように動作曲線Aを連続する曲線で結ぶと、動作曲線A上の各運転ポイントがエネルギ一定の曲線上で最も効率が高い運転ポイントとならない場合もある。なお、図13中、トルクTeminと回転数Neminとにより表わされる運転ポイントAminは、エンジン150から出力可能な最小エネルギの運転ポイントである。 【0068】こうしてエンジン150の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると、設定した目標トルクTe*とトルク指令値Tr*とを用いて次式(5)によりモータMG2のトルク指令値Tm2*を計算する(ステップS118)。ここで、式(5)は、エンジン150が目標回転数Ne*と目標トルクTe*との運転ポイントで定常運転されトルク指令値Tr*のトルクがリングギヤ軸126に定常的に出力されるときにモータMG2に設定されるトルク指令値Tm2*を求める式であり、図5や図6の共線図における動作共線の釣り合いから求めることができる。 【0069】 【数4】
【0070】続いて、リングギヤ軸126の回転数Nrに基づいて閾値Trefを導出し(ステップS120)、算出したトルク指令値Tm2*と閾値Trefとを比較する(ステップS122)。閾値Trefは、図8や図9の模式図を用いて説明したエネルギの循環の許容範囲の最大値をモータMG2のトルクの最低値として表わすものであり、図5や図6の共線図と共に説明したように、リングギヤ軸126の回転数Nrに関連つけられて設定される。実施例では、例えば、図15に例示するリングギヤ軸126の回転数Nrと閾値Trefとの関係を示すマップを予めROM190bに記憶しておき、回転数Nrが与えられると、この回転数Nrに対応する閾値Trefを導出するものとした。なお、リングギヤ軸126の回転数Nrが小さいときには大きなエネルギによる循環が生じにくいため、実施例では、リングギヤ軸126の回転数Nrが閾値Nref未満のときには閾値TrefにモータMG2から出力可能な最小のトルクTminを設定するものとした。 【0071】トルク指令値Tm2*が閾値Trefより小さいときには、許容範囲外の大きなエネルギによる循環が生じ、動力出力装置110のエネルギ効率の低下が顕著になると判断し、閾値TrefがモータMG2から出力されるトルクTm2とみなして次式(6)によりエンジン150の目標トルクTe*を計算して再設定し(ステップS124)、この再設定された目標トルクTe*でエネルギPeを除して目標回転数Ne*を再設定する(ステップS126)。 【0072】 Te*←(Tr*−Tref)×(1+ρ) …(6) 【0073】図16に再設定される前後の目標トルクTe*や目標回転数Ne*の関係を例示する。再設定される前の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とがトルクTe3と回転数Ne3とにより表わされる動作曲線A上の運転ポイントP3となるよう設定されているときを考えると、閾値Trefは式(5)で求められるトルク指令値Tm2*より大きいから、上式(6)により再設定される目標トルクTe*はトルクTe3より小さなトルクTe4として算出され、この再設定された目標トルクTe*でエネルギPeを除して得られる回転数Ne4を目標回転数Ne*に設定するから、エンジン150の目標とする運転ポイントは、運転ポイントP3からエネルギが同一の曲線上の運転ポイントP4に変更されることになる。なお、このようにエンジン150の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを閾値Trefを用いて再設定することにより、エンジン150が再設定された目標回転数Ne*と目標トルクTe*とで表わされる運転ポイントで定常運転されたときには、モータMG2からは閾値Trefのトルクが出力されることになり、許容範囲内の大きさのエネルギの循環にすることができる。 【0074】一方、トルク指令値Tm2*が閾値Tref以上のときには、エネルギの循環が形成されないか、形成されても許容範囲内であると判断し、エンジン150の目標トルクTe*や目標回転数Ne*の再設定は行なわない。 【0075】エンジン150の目標トルクTe*や目標回転数Ne*の再設定を行なった後、あるいはトルク指令値Tm2*が閾値Tref以上であると判断された後は、回転数Neに代えて目標回転数Ne*を用いて上式(2)によりサンギヤ軸125の目標回転数Ns*を設定する(ステップS128)。そして、設定した各設定値を用いてモータMG1,モータMG2およびエンジン150の各制御を行なう(ステップS130ないしS134)。実施例では、図示の都合上、モータMG1,モータMG2およびエンジン150の各制御を別々のステップとして記載したが、実際には、これらの制御は同時に平行的にかつ総合的に行なわれる。例えば、制御CPU190が割り込み処理を利用して、モータMG1とモータMG2の制御を同時に平行して実行すると共に、通信により指示を受けたEFIECU170によりエンジン150の制御も同時に行なわせるのである。 【0076】モータMG1の制御(図10のステップS130)は、図17に例示するモータMG1の制御ルーチンによりなされる。このモータMG1の制御ルーチンは、上述したように、制御CPU190により割り込み処理を利用して所定時間毎(例えば、8msec毎)に繰り返し実行されるものである。このルーチンが実行されると、制御装置180の制御CPU190は、まず、サンギヤ軸125の回転数Nsを読み込むと共に(ステップS140)、読み込んだ回転数Nsを用いて次式(7)によりモータMG1のトルク指令値Tm1*を設定する処理を行なう(ステップS141)。ここで、サンギヤ軸125の回転数Nsはレゾルバ139により検出されるサンギヤ軸125の回転角度θsから求めることができる。式(7)中の右辺第1項は図5および図6の共線図における動作共線の釣り合いから求められ、右辺第2項は回転数Nsの目標回転数Ns*からの偏差を打ち消す比例項であり、右辺第3項は定常偏差をなくす積分項である。したがって、モータMG1のトルク指令値Tm1*は、定常状態(回転数Nsの目標回転数Ns*からの偏差が値0のとき)では、動作共線の釣り合いから求められる右辺第1項に等しく設定されることになる。なお、式(7)中のK1およびK2は、比例定数である。 【0077】 【数5】
【0078】続いて、レゾルバ139により検出されるサンギヤ軸125の回転角度θsを読み込み(ステップS142)、読み込んだ回転角度θsからモータMG1の電気角θ1を求める処理を行なう(ステップS143)。実施例では、モータMG1として4極対の同期電動機を用いているから、θ1=4θsを演算することになる。そして、電流検出器195,196により、モータMG1の三相コイル134のU相とV相に流れている電流Iu1,Iv1を検出する処理を行なう(ステップS144)。電流はU,V,Wの三相に流れているが、その総和はゼロなので、二つの相に流れる電流を測定すれば足りる。次に、こうして得られた三相の電流を用いて座標変換(三相−二相変換)を行なう(ステップS145)。座標変換は、永久磁石型の同期電動機のd軸,q軸の電流値に変換することであり、次式(8)を演算することにより行なわれる。ここで座標変換を行なうのは、永久磁石型の同期電動機においては、d軸およびq軸の電流が、トルクを制御する上で本質的な量だからである。もとより、三相のまま制御することも可能である。 【0079】 【数6】
【0080】次に、2軸の電流値に変換した後、モータMG1におけるトルク指令値Tm1*から求められる各軸の電流指令値Id1*,Iq1*と実際各軸に流れた電流Id1,Iq1との偏差を求め、各軸の電圧指令値Vd1,Vq1を求める処理を行なう(ステップS146)。すなわち、まず以下の式(9)の演算を行ない、次に次式(10)の演算を行なうのである。ここで、Kp1,Kp2,Ki1,Ki2は、各々係数である。これらの係数は、適用するモータの特性に適合するよう調整される。なお、電圧指令値Vd1,Vq1は、電流指令値I*との偏差ΔIに比例する部分(式(10)右辺第1項)と偏差ΔIのi回分の過去の累積分(右辺第2項)とから求められる。 【0081】 【数7】
【0082】その後、こうして求めた電圧指令値をステップS145で行なった変換の逆変換に相当する座標変換(二相−三相変換)を行ない(ステップS148)、実際に三相コイル134に印加する電圧Vu1,Vv1,Vw1を求める処理を行なう。各電圧は、次式(11)により求める。 【0083】 【数8】
【0084】実際の電圧制御は、第1の駆動回路191のトランジスタTr1ないしTr6のオンオフ時間によりなされるから、式(11)によって求めた各電圧指令値となるよう各トランジスタTr1ないしTr6のオン時間をPWM制御する(ステップS149)。 【0085】ここで、モータMG1のトルク指令値Tm1*の符号を図5や図6の共線図におけるトルクTm1の向きを正とすれば、同じ正の値のトルク指令値Tm1*が設定されても、図5の共線図の状態のようにトルク指令値Tm1*の作用する向きとサンギヤ軸125の回転の向きとが異なるときには回生制御がなされ、図6の共線図の状態のように同じ向きのときには力行制御がなされる。しかし、モータMG1の力行制御と回生制御は、トルク指令値Tm1*が正であれば、ロータ132の外周面に取り付けられた永久磁石135と三相コイル134に流れる電流により生じる回転磁界とにより正のトルクがサンギヤ軸125に作用するよう第1の駆動回路191のトランジスタTr1ないしTr6を制御するものであるから、同一のスイッチング制御となる。すなわち、トルク指令値Tm1*の符号が同じであれば、モータMG1の制御が回生制御であっても力行制御であっても同じスイッチング制御となる。したがって、図17のモータMG1の制御ルーチンで回生制御と力行制御のいずれも行なうことができる。また、トルク指令値Tm1*が負のときには、ステップS142で読み込むサンギヤ軸125の回転角度θsの変化の方向が逆になるだけであるから、このときの制御も図17のモータMG1の制御ルーチンにより行なうことができる。 【0086】次に、モータMG2の制御処理(図10のステップS132)について図18に例示するモータMG2の制御ルーチンに基づき説明する。このモータMG2の制御ルーチンも制御CPU190により割り込み処理を利用して所定時間毎(例えば、8msec毎)に繰り返し実行されるものである。モータMG2の制御処理は、モータMG2のトルク指令値Tm2*を次式(12)により設定した後、モータMG1の制御ルーチンのステップS142ないしS149の処理と同様の処理(ステップS152ないしS159)を行なうことにより行なわれる。すなわち、レゾルバ149により検出されるリングギヤ軸126の回転角度θrを読み込み(ステップS152)、読み込んだ回転角度θrからモータMG2の電気角θ2を計算(θ2=4θr)により求め(ステップS153)、続いてモータMG2の各相電流を電流検出器197,198を用いて検出し(ステップS154)、その後、座標変換(ステップS155)および電圧指令値Vd2,Vq2の演算を行ない(ステップS156)、更に電圧指令値の逆座標変換(ステップS158)を行なって、モータMG2の第2の駆動回路192のトランジスタTr11ないしTr16のオンオフ制御時間を求め、PWM制御を行なう(ステップS159)。 【0087】 【数9】
【0088】ここで、モータMG2もトルク指令値Tm2*の向きとリングギヤ軸126の回転の向きとにより力行制御されたり回生制御されたりするが、モータMG1と同様に、力行制御も回生制御も共に図18のモータMG2の制御処理で行なうことができる。なお、実施例では、モータMG2のトルク指令値Tm2*の符号は、図5の共線図の状態のときのトルクTm2の向きを正とした。 【0089】次に、エンジン150の制御(図10のステップS134)について説明する。エンジン150は、その目標とする運転ポイントが目標トルクTe*と目標回転数Ne*とによって設定されると、設定された運転ポイントで定常運転状態となるようエンジン150のトルクTeと回転数Neとが制御される。具体的には、制御CPU190から通信によりEFIECU170に指示を送信し、燃料噴射弁151からの燃料噴射量やスロットルバルブ166の開度TVPを増減して、エンジン150の出力トルクが目標トルクTe*に、回転数が目標回転数Ne*になるように徐々に調整するのである。なお、上述した式(7)に示すように、エンジン150の回転数NeはモータMG1によるサンギヤ軸125の回転数Nsの制御によって行なわれるから、エンジン150の制御は、エンジン150から目標トルクTe*が出力されるようスロットルバルブ166の開閉制御と吸入空気量に対する空燃比制御と開閉タイミング変更機構153による吸気弁152の開閉タイミングBTの制御となる。 【0090】エンジン150の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とが図13や図16の動作曲線A上の運転ポイントとして設定されたときには、エンジン150の制御は、実施例では、予めROM190bに記憶されたマップにより、エンジン150から出力すべきエネルギPe(目標回転数Ne*,目標トルクTe*)に対応するスロットルバルブ166の開度TVPと吸気弁152の開閉タイミングBTとを導出し、その開度TVPとタイミングBTとなるようアクチュエータ168と開閉タイミング変更機構153とを駆動する制御となる。なお、予めROM190bに記憶されたマップは、エンジン150から出力すべきエネルギPeと、このエネルギPeを出力する動作曲線A上の運転ポイントでエンジン150が効率よく運転されるスロットルバルブ166の開度TVPと吸気弁152の開閉タイミングBTとの関係を予め実験により求めて得たものである。 【0091】エンジン150の目標回転数Ne*や目標トルクTe*が図10のトルク制御ルーチンのステップS124およびS126で再設定されたときには、エンジン150の制御は、前述のマップを用いてエネルギPeに対応するスロットルバルブ166の開度TVPとなるようアクチュエータ168を駆動すると共に、図19に例示する開閉タイミング制御ルーチンにより吸気弁152の開閉タイミングBTの制御が行なわれる。この開閉タイミング制御ルーチンは、EFIECU170により割込処理を利用して所定時間毎(例えば、20msec毎)に繰り返し実行される。本ルーチンが実行されると、EFIECU170は、まず、回転数センサ176により検出されるエンジン150の回転数Neを読み込み(ステップS160)、読み込んだ回転数Neとエンジン150から出力すべきエネルギPeとに基づいて開閉タイミングBTの目標値(目標開閉タイミング)BT*を設定する(ステップS162)。実施例では、エンジン150を設定したスロットルバルブ166の開度TVPで回転数Neとなるよう運転したときにエネルギPeが出力される開閉タイミングBTを予め実験などにより求めてマップとしてEFIECU170が備える図示しない内部ROMに記憶しておき、エネルギPeと回転数Nrとが与えられると、このエネルギPeと回転数Nrに対応する開閉タイミングBTを目標開閉タイミングBT*として導出するものとした。 【0092】開閉タイミングBTとエンジン150の動作曲線との関係の一例を図20に示す。図中、曲線Aは開閉タイミングBTが進角側にも遅角側にも変更されていない標準位置にある前述した動作曲線Aであり、曲線Dは開閉タイミングBTを80゜まで進角させたときのエンジン150の動作曲線であり、曲線Eは開閉タイミングBTを120゜まで遅角させたときのエンジン150の動作曲線である。上記角度は、吸気弁152が閉じた時点でのクランクシャフトの回転角をピストン155が最下点に来る、いわゆる下死点を基準として表したものである。図示するように、エンジン150から一定のエネルギPeを出力するのであれば、開閉タイミングBTを遅角させることによりエンジン150の運転ポイントを高回転で低トルク側に移行させることができる。すなわち、エンジン150の回転数Neに応じて開閉タイミングBTを遅角させることによって、エンジン150の運転ポイントをエネルギPeが一定の曲線上で高回転で低トルク側に移行させることができる。実施例では、こうした関係を用いて、エンジン150がエネルギPeが一定の曲線上で高回転で低トルク側に移行するよう目標開閉タイミングBT*を設定するのである。 【0093】図13と図14とを用いて動作曲線Aを説明する際に、スロットルバルブ166の前後で吸入空気に若干の圧力差が生じるようスロットルバルブ166の開度TVPを調節する理由についてここで説明する。図21は、吸入空気量Gaとスロットルバルブ166の開度TVPとの関係を例示する説明図である。図中曲線Fはエンジン150が1000rpmで回転しているときの吸入空気量Gaとスロットルバルブ166の開度TVPとの関係であり、曲線Gはエンジン150が2000rpmで回転しているときの吸入空気量Gaとスロットルバルブ166の開度TVPとの関係である。スロットルバルブ166の開度TVPを大きくしても吸入空気量Gaが増加しなくなるポイントF1,G1は、各回転数Neにおいてスロットルバルブ166の前後の圧力差がなくなるポイントである。このようにスロットルバルブ166の前後で圧力差がなくなるポイントはエンジン150の回転数Neにより定まる。 【0094】いま、スロットルバルブ166の前後で圧力差が生じないスロットルバルブ166の開度TVPおよび1000rpmの回転数のポイントF3でエンジン150を運転している場合を考える。このスロットルバルブ166の開度TVPを保持した状態でモータMG1の回転数制御により2000rpmの回転数でエンジン150が運転されるようにすると、エンジン150は、吸入空気量GaがポイントF3に比して増加するポイントG3で運転されることになる。エンジン150は吸入空気量Gaにストイキな燃料が噴射されることにより運転されるから、エンジン150から出力するエネルギPeは吸入空気量Gaとリニアな関係となる。したがって、ポイントF3からポイントG3への変更は、エンジン150の回転数Neが大きくなるに伴ってエンジン150から出力されるエネルギPeも増加する変更となる。 【0095】一方、スロットルバルブ166の前後で若干の圧力差が生じるスロットルバルブ166の開度TVPおよび1000rpmの回転数のポイントF2から、このスロットルバルブ166の開度TVPを保持した状態でモータMG1の回転数制御により2000rpmの回転数でエンジン150が運転されるようにすると、運転ポイントは、吸入空気量GaがポイントF2に比してほとんど増加しないポイントG2に変更される。上述したようにエンジン150は吸入空気量Gaはエンジン150から出力されるエネルギPeとリニアな関係があるから、ポイントF2からポイントG2への変更は、エンジン150の回転数Neが大きくなってもエンジン150から出力されるエネルギPeはほとんど増加しない変更となる。 【0096】実施例では、これらのことに基づいて、エンジン150の回転数Neを増加させてもエンジン150から出力されるエネルギPeがほとんど変更しないよう、動作曲線Aをスロットルバルブ166の前後で吸入空気に若干の圧力差が生じるようスロットルバルブ166の開度TVPを調節した際の曲線として求めたのである。なお、エンジン150の回転数Neを増加してもエンジン150から出力されるエネルギPeはほとんど増加しないから、図19による開閉タイミング制御ルーチンによる吸気弁152の開閉タイミングBTの制御は、エンジン150の回転数Neの増加に伴うエネルギPeの若干の変更を調節するための制御として位置づけられる。 【0097】図19の開閉タイミング制御ルーチンに戻って、目標開閉タイミングBT*を導出すると、次に、吸気弁152の現在の開閉タイミングBTを読み込み(ステップS164)、導出した目標開閉タイミングBT*から開閉タイミングBTを減じて偏差ΔBTを算出する(ステップS166)。ここで、吸気弁152の現在の開閉タイミングBTは、カムシャフトポジションセンサ173により検出されるカムシャフトポジションから求めることができる。そして、開閉タイミング変更機構153により吸気弁152の開閉タイミングBTを偏差ΔBTだけ変更して(ステップS168)、本ルーチンを終了する。 【0098】以上説明した実施例の動力出力装置110によれば、エネルギの循環の許容範囲内となるよう運転することができる。この結果、エンジン150からプラネタリギヤ120を介して直接リングギヤ軸126に出力される損失の小さなエネルギを大きくするから、装置全体のエネルギ効率を向上させることができる。しかも、エネルギの循環の許容範囲をリングギヤ軸126の回転数Nrに基づいて設定するから、より適切な許容範囲を設定することができる。 【0099】実施例の動力出力装置110では、エネルギの循環の許容範囲を設定する閾値Trefをリングギヤ軸126の回転数Nrに基づいて設定したが、エネルギの循環の許容範囲は、動力出力装置110全体の効率により定まるものであるから、動力出力装置110全体の効率を左右する因子、例えば、エンジン150の運転ポイントの効率に基づいて閾値Trefを設定するものとしてもよい。また、このエネルギの循環の許容範囲は、エンジン150から出力すべきエネルギPeによっても変化するから、バッテリ194を充放電する充放電エネルギPbや補機の駆動に必要な補機駆動エネルギPhに基づいて閾値Trefを設定するものとしてもよい。さらに、これらの各因子を重畳的に用いて閾値Trefを設定するものとしてもよい。 【0100】また、実施例の動力出力装置110では、エネルギの循環の許容範囲を設定する閾値Trefをリングギヤ軸126の回転数Nrに基づいて設定したが、リングギヤ軸126の回転数Nrに拘わらず一定の値に設定するものとしてもよい。例えば、閾値Trefに値0を設定するものとしてもよい。こうすれば、モータMG2は常に電動機として動作するから、電動機として動作するが発電機としては動作しないモータをモータMG2に用いることができる。 【0101】実施例の動力出力装置110では、トルク指令値Tr*と目標トルクTe*とが設定されたときにこの設定値を用いて動作共線の釣り合いの関係からモータMG2のトルク指令値Tm2*を算出し、これをリングギヤ軸126の回転数Nrに基づいて定まる閾値Trefと比較してエネルギの循環の許容範囲内にあるかを判断したが、実際にリングギヤ軸126に出力されているトルクTrとエンジン150から出力されているトルクTeとモータMG2から出力されているトルクTm1とを検出して循環するエネルギの大きさを求め、これが許容範囲内にあるか否かを判断するものとしてもよい。この場合で、許容範囲内にないと判断されたときには、許容範囲内になるまで比較的小さな回転数の変化量ΔNずつエンジン150の回転数Neを大きくするよう制御するものとしてもよい。こうすれば、エンジン150の運転状態が変化しているときなどの過渡時でもエネルギの循環を許容範囲内とすることができる。 【0102】実施例の動力出力装置110では、バッテリ194の充放電や補機の駆動を考慮してエンジン150から出力すべきエネルギPeを求めたが、バッテリ194の充放電を行なわない構成やエンジン150から出力される動力を動力源として駆動する補機を備えない構成では、リングギヤ軸126に出力すべきエネルギPrを効率ηtで割った値をエンジン150から出力すべきエネルギPeとしてもよい。 【0103】実施例の動力出力装置110では、エンジン150の目標回転数Ne*や目標トルクTe*が再設定されたときには、スロットルバルブ166の開度TVPを保持した状態でエンジン150の回転数Neの増加に伴って吸気弁152の開閉タイミングBTを遅角することにより、エネルギPeが一定の曲線上でエンジン150の運転ポイントを変更したが、まずエンジン150の回転数Neを目標回転数Ne*となるよう変更し、その後エンジン150から出力されるエネルギがエネルギPeとなるよう吸気弁152の開閉タイミングBTを調節するものとしてもよく、あるいは、エンジン150の回転数Neを目標回転数Ne*となるよう変更した後にエンジン150から出力されるエネルギがエネルギPeとなるようスロットルバルブ166の開度TVPを調節するものとしてもよい。なお、こうした変形例では、吸気弁152の開閉タイミングBTやスロットルバルブ166の開度TVPをモータMG1のトルク指令値Tm1*などによって推定されるエンジン150のトルクTeによってフィードバック制御するのが好ましい。 【0104】実施例の動力出力装置110では、リングギヤ軸126に出力された動力をリングギヤ122に結合された動力取出ギヤ128を介してモータMG1とモータMG2との間から取り出したが、図22の変形例である動力出力装置110Aに示すように、リングギヤ軸126を延出してケース119から取り出すものとしてもよい。また、図23の変形例である動力出力装置110Bに示すように、エンジン150側からプラネタリギヤ120,モータMG2,モータMG1の順になるよう配置してもよい。この場合、サンギヤ軸125Bは中空でなくてもよく、リングギヤ軸126Bは中空軸とする必要がある。こうすれば、リングギヤ軸126Bに出力された動力をエンジン150とモータMG2との間から取り出すことができる。 【0105】次に本発明の第2の実施例である動力出力装置110Cについて説明する。図24は、第2実施例の動力出力装置110Cの構成の一部を例示する部分構成図である。図24に示すように、第2実施例の動力出力装置110Cは、モータMG2のロータ142がクランクシャフト156に取り付けられている点およびモータMG1とモータMG2の配置が異なる点等を除いて第1実施例の動力出力装置110と同一の構成をしている。このため、図24では第1実施例の動力出力装置110の構成を例示する図に相当する図1のうち同一の部分である制御装置180等を省略した。また、第2実施例の動力出力装置110Cを車両に搭載したときには図3に例示する構成と同一の構成となる。したがって、第2実施例の動力出力装置110Cの構成のうち第1実施例の動力出力装置110と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。なお、明示しない限り第1実施例の説明の際に用いた符号はそのまま同じ意味で用いる。 【0106】第2実施例の動力出力装置110Cでは、図24に示すように、エンジン150側からモータMG2,プラネタリギヤ120,モータMG1の順に配置されている。プラネタリギヤ120のサンギヤ121に結合されたサンギヤ軸125CにはモータMG1のロータ132が取り付けられており、プラネタリキャリア124には、第1実施例の動力出力装置110と同様に、エンジン150のクランクシャフト156が取り付けられている。このクランクシャフト156には、モータMG2のロータ142と、クランクシャフト156の回転角度θeを検出するレゾルバ157とが取り付けられている。プラネタリギヤ120のリングギヤ122に取り付けられたリングギヤ軸126Cは、その回転角度θrを検出するレゾルバ149が取り付けられているだけで、動力取出ギヤ128に結合されている。 【0107】第2実施例の動力出力装置110Cは、その配置が第1実施例の動力出力装置110と異なるが、第1実施例の動力出力装置110と同様に、モータMG1の三相コイル134は制御装置180の第1の駆動回路191に、モータMG2の三相コイル144は第2の駆動回路192に接続されている。また、図示しないが、レゾルバ157も信号ラインにより制御装置180の制御CPU190の入力ポートに接続されている。 【0108】第2実施例の動力出力装置110Cは次のように動作する。エンジン150を回転数Ne,トルクTeの運転ポイントP1で運転し、エンジン150から出力されるエネルギPe(Pe=Ne×Te)と同じエネルギPr(Pr=Nr×Tr)となる回転数Nr,トルクTrの運転ポイントP2でリングギヤ軸126Cを運転する場合、すなわち、エンジン150から出力される動力をトルク変換してリングギヤ軸126Cに作用させる場合について考える。この状態の共線図を図25および図26に例示する。 【0109】図25の共線図における動作共線の釣り合いを考えると、次式(13)ないし式(16)が導き出される。即ち、式(13)はエンジン150から入力されるエネルギPeとリングギヤ軸126Cに出力されるエネルギPrの釣り合いから導き出され、式(14)はクランクシャフト156を介してプラネタリキャリア124に入力されるエネルギの総和として導き出される。また、式(15)および式(16)はプラネタリキャリア124に作用するトルクを座標軸Sおよび座標軸Rを作用線とするトルクに分離することにより導出される。 【0110】 【数10】
【0111】この動作共線がこの状態で安定であるためには、動作共線の力の釣り合いがとれればよいから、トルクTm1とトルクTcsとを等しく、かつ、トルクTrとトルクTcrとを等しくすればよい。以上の関係からトルクTm1およびトルクTm2を求めれば、次式(17)および式(18)のように表わされる。 【0112】 【数11】
【0113】したがって、モータMG1により式(17)で求められるトルクTm1をサンギヤ軸125Cに作用させ、モータMG2により式(18)で求められるトルクTm2をクランクシャフト156に作用させれば、エンジン150から出力されるトルクTeおよび回転数Neで表わされる動力状態をトルクTrおよび回転数Nrで表わされる動力状態にトルク変換してリングギヤ軸126Cに出力することができる。なお、この共線図の状態では、モータMG1は、ロータ132の回転の方向とトルクの作用方向が逆になるから、発電機として動作し、トルクTm1と回転数Nsとの積で表わされる電気エネルギPm1を回生する。一方、モータMG2は、ロータ142の回転の方向とトルクの作用方向が同じになるから、電動機として動作し、トルクTm2と回転数Nrとの積で表わされる電気エネルギPm2を消費する。 【0114】図25の共線図の状態のときのエネルギの流れを図27に模式的に示す。図示するように、図27の模式図では、プラネタリギヤ120は、エンジン150から出力される機械エネルギとモータMG2により出力される機械エネルギとの和のエネルギをプラネタリキャリア124に入力し、この機械エネルギを動作共線の釣り合いの関係に基づいてサンギヤ軸125Cとリングギヤ軸126Cとに分配する。サンギヤ軸125Cに取り付けられたモータMG1は、発電機として機能して、プラネタリギヤ120によりサンギヤ軸125Cに出力された機械エネルギをモータMG1の効率を乗じた電気エネルギPm1として回生し、この電気エネルギPm1をバッテリ194やモータMG2に供給する。したがって、バッテリ194の充放電は行なわれず、モータMG1により回生された電気エネルギPm1のすべてがモータMG2に供給されるものとすれば、エンジン150およびモータMG2からクランクシャフト156に出力された機械エネルギの一部は、モータMG2,プラネタリギヤ120,モータMG1,モータMG2の順に形成される循環路を経由してリングギヤ軸126cに出力されることになる。実施例の動力出力装置110では、図25の共線図の状態においては、モータMG2からクランクシャフト156に機械エネルギを出力することで上述の循環路を形成することにより、エンジン150に出力された動力を所望の動力状態にトルク変換してリングギヤ軸126Cに出力することができるのである。このようなエネルギの循環が動力出力装置のエネルギ効率からみて好ましくないことは、既に述べた。なお、図27の模式図では、モータMG1により回生された電気エネルギPm1の一部を用いてバッテリ194を充電するものとしたが、逆に、バッテリ194から電気エネルギを取り出してモータMG1により回生される電気エネルギPm1と合わせてモータMG2に供給するものとしてもよい。 【0115】図25に示す共線図ではサンギヤ軸125Cの回転数Nsは正であったが、エンジン150の回転数Neとリングギヤ軸126Cの回転数Nrとによっては、図26に示す共線図のように負となる場合もある。このときには、モータMG1は、ロータ132の回転の方向とトルクの作用する方向とが同じになるから、電動機として動作し、トルクTm1と回転数Nsとの積で表わされる電気エネルギPm1を消費する。一方、モータMG2は、ロータ142の回転の方向とトルクの作用する方向とが逆になるから、発電機として動作し、トルクTm2と回転数Nrとの積で表わされる電気エネルギPm2をリングギヤ軸126Cから回生することになる。 【0116】図26の共線図の状態のときのエネルギの流れを図28に模式的に示す。図示するように、図28の模式図では、エンジン150からクランクシャフト156に出力された機械エネルギの一部は発電機として機能するモータMG2により電気エネルギPm2に変換されて、電動機として機能するモータMG1やバッテリ194に供給される。プラネタリギヤ120は、エンジン150から出力される機械エネルギの残余をプラネタリキャリア124から入力すると共にモータMG1により出力される機械エネルギをサンギヤ軸125Cから入力し、これらの機械エネルギの和を動作共線の釣り合いの関係に基づいてリングギヤ軸126Cに出力する。したがって、バッテリ194の充放電は行なわれず、モータMG2により回生された電気エネルギPm2のすべてがモータMG1に供給されるものとすれば、エンジン150からクランクシャフト156に出力された機械エネルギは、モータMG2,モータMG1により電気エネルギの形態を介してリングギヤ軸126Cに出力される経路と、プラネタリギヤ120を介して直接リングギヤ軸126Cに出力される経路とを通ってリングギヤ軸126に出力されることになる。このときは、図27に示したようなエネルギの循環路は形成されない。図28の模式図では、モータMG2により回生された電気エネルギPm2の一部を用いてバッテリ194を充電するものとしたが、逆に、バッテリ194から電気エネルギを取り出してモータMG2により回生される電気エネルギPm2と合わせてモータMG1に供給するものとしてもよい。 【0117】以上説明したように第2実施例の動力出力装置110Cは、モータMG2の取り付け位置が異なるだけで第1実施例の動力出力装置110と同様にエンジン150から出力される動力をトルク変換してリングギヤ軸126Cに出力することができる。但し、第1実施例ではモータMG2で電気エネルギを回生しているときにエネルギの循環路が形成されるのに対し(図8)、第2実施例ではモータMG2が力行しているときにエネルギの循環路を形成する点で相違する。したがって、第2実施例の動力出力装置110Cにおけるトルク制御ルーチンは、基本的には第1実施例の動力出力装置110が実行する図10のトルク制御ルーチンと同様であるが、ステップS122における判断が次の通り相違する。 【0118】第2実施例においては、エネルギの循環を防止するためにはモータMG2で電気エネルギを回生する必要があるから、エンジン目標トルクTe*の修正をするか否かの判定(ステップS122)は、「Tm2*>Tref?」で判断する必要がある。Tm2*はモータMG2のトルク指令値であり(ステップS118)、Trefは所定の閾値である。そして、Tm2*がTrefよりも大きいとき、即ちモータMG2が力行しているときに、エンジン目標トルクTe*の修正をするのである(ステップS124)。なお、所定の閾値Trefは、第1実施例においては図15のグラフで定められる負のトルクを用いており、本実施例でも同様にエネルギの循環量が許容範囲となるようなトルクの閾値を実験的に設定することになる。かかるトルクは、概ね図15のグラフを正負反転させたグラフに近いものとなっている。 【0119】また、モータMG1の取り付け位置が異なることに伴って、ステップS118のトルク指令値Tm2*の計算はトルクTrとトルクTeとに代えてトルク指令値Tr*と目標トルクTe*とを用いて上述の式(18)により求める必要があり、ステップS120の閾値Trefの導出に用いるマップ(図15)も変更する必要がある。また、ステップS124のエンジン150の目標トルクTe*の再設定は、次式(19)により算出する必要がある。 【0120】 Te*←(1+ρ)×Tr*−Tref …(19) 【0121】また、第2実施例の動力出力装置110Cでは、モータMG2がクランクシャフト156に取り付けられているから、図17のモータMG1の制御ルーチンのステップS140およびS141の処理に代えて図29に例示するモータMG1の制御ルーチンのステップS241に示すように上式(17)のトルクTrに代えてトルク指令値Tr*を用いて算出した値をモータMG1のトルク指令値Tm1*に設定する処理を行ない、図18のモータMG2の制御ルーチンのステップS150の処理に代えて図30に例示するモータMG1の制御ルーチンのステップS250およびS251に示すように、エンジン150の回転数Neを読み込み、読み込んだ回転数Neを用いて次式(20)により算出される値をモータMG1のトルク指令値Tm2*に設定する処理を行なう必要がある。なお、式(20)中の右辺第1項は図25および図26の共線図における動作共線の釣り合いから求められ、右辺第2項は回転数Neの目標回転数Ne*からの偏差を打ち消す比例項であり、右辺第3項は定常偏差をなくす積分項である。したがって、モータMG2のトルク指令値Tm2*は、定常状態(回転数Neの目標回転数Ne*からの偏差が値0のとき)では、動作共線の釣り合いから求められる右辺第1項に等しく設定されることになる。なお、式(20)中のK3およびK4は、比例定数である。 【0122】 【数12】
【0123】以上説明したように、第2実施例の動力出力装置110Cでは、電気エネルギの形態を介してリングギヤ軸126Cに出力するエネルギを許容範囲内となるよう運転することができる。この結果、エンジン150からプラネタリギヤ120を介して直接リングギヤ軸126Cに出力する損失の小さなエネルギを大きくすることができるから、装置全体のエネルギ効率を向上させることができる。しかも、電気エネルギの形態を介してリングギヤ軸126Cに出力するエネルギの許容範囲をリングギヤ軸126Cの回転数Nrに基づいて設定するから、より適切な許容範囲を設定することができる。 【0124】第2実施例の動力出力装置110Cでは、電気エネルギの形態を介してリングギヤ軸126Cに出力するエネルギの許容範囲を設定する閾値Trefをリングギヤ軸126の回転数Nrに基づいて設定したが、電気エネルギの形態を介してリングギヤ軸126Cに出力するエネルギの許容範囲は、動力出力装置110C全体の効率により定まるものであるから、動力出力装置110C全体の効率を左右する因子、例えば、エンジン150の運転ポイントの効率に基づいて閾値Trefを設定するものとしてもよい。また、この電気エネルギの形態を介してリングギヤ軸126Cに出力するエネルギの許容範囲は、エンジン150から出力すべきエネルギPeによっても変化するから、バッテリ194を充放電する充放電エネルギPbや補機の駆動に必要な補機駆動エネルギPhに基づいて閾値Trefを設定するものとしてもよい。さらに、これらの各因子を重畳的に用いて閾値Trefを設定するものとしてもよい。 【0125】また、第2実施例の動力出力装置110Cでは、電気エネルギの形態を介してリングギヤ軸126Cに出力するエネルギの許容範囲を設定する閾値Trefをリングギヤ軸126Cの回転数Nrに基づいて設定したが、リングギヤ軸126Cの回転数Nrに拘わらず一定の値に設定するものとしてもよい。例えば、閾値Trefに値0を設定するものとしてもよい。こうすれば、モータMG2は常に電動機として動作するから、電動機として動作するが発電機としては動作しないモータをモータMG2に用いることができる。 【0126】第2実施例の動力出力装置110Cでは、バッテリ194の充放電や補機の駆動を考慮してエンジン150から出力すべきエネルギPeを求めたが、バッテリ194の充放電を行なわない構成やエンジン150から出力される動力を動力源として駆動する補機を備えない構成では、リングギヤ軸126Cに出力すべきエネルギPrを効率ηtで割った値をエンジン150から出力すべきエネルギPeとしてもよい。 【0127】第2実施例の動力出力装置110Cでは、第1実施例の動力出力装置110と同様に、エンジン150の目標回転数Ne*や目標トルクTe*が再設定されたときには、スロットルバルブ166の開度TVPを保持した状態でエンジン150の回転数Neの増加に伴って吸気弁152の開閉タイミングBTを遅角することにより、エネルギPeが一定の曲線上でエンジン150の運転ポイントを変更したが、まずエンジン150の回転数Neを目標回転数Ne*となるよう変更し、その後エンジン150から出力されるエネルギがエネルギPeとなるよう吸気弁152の開閉タイミングBTを調節するものとしてもよく、あるいは、エンジン150の回転数Neを目標回転数Ne*となるよう変更した後にエンジン150から出力されるエネルギがエネルギPeとなるようスロットルバルブ166の開度TVPを調節するものとしてもよい。なお、こうした変形例では、吸気弁152の開閉タイミングBTやスロットルバルブ166の開度TVPをモータMG1のトルク指令値Tm1*などによって推定されるエンジン150のトルクTeによってフィードバック制御するのが好ましい。 【0128】第2実施例の動力出力装置110Cでは、エンジン150とモータMG1とによりモータMG2を挟持する配置としたが、図31の変形例の動力出力装置110Dに示すように、モータMG1とモータMG2とでエンジン150を挟持する配置としてもよい。また、第2実施例の動力出力装置110Cでは、リングギヤ軸126Cに出力された動力をリングギヤ122に結合された動力取出ギヤ128を介してモータMG1とモータMG2との間から取り出したが、図32の変形例の動力出力装置110Eに示すように、リングギヤ軸126Eを延出してケース119から取り出すものとしてもよい。 【0129】次に本発明の第3の実施例である動力出力装置について図33および図34を用いて説明する。第3実施例における動力出力装置のハードウェアとしての構成は、第1実施例における動力出力装置の構成(図1から図3)と同一である。本実施例では、トルク制御ルーチンが第1実施例と相違する。以下、第3実施例におけるトルク制御ルーチンについて説明する。 【0130】図33は第3実施例におけるトルク制御ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンは第1実施例におけるトルク制御ルーチンと同様、動力出力装置110が起動されたときから所定時間毎(例えば、48msec毎)に、制御装置180の制御CPU190により繰り返し実行されるものである。 【0131】トルク制御ルーチンが実行されると、CPU190は、リングギヤ軸126の回転数NrおよびアクセルペダルポジションAPを読み込み(ステップS300、S302)、これらの値に基づいてリングギヤ軸126に出力すべきトルクの目標値であるトルク指令値Tr*を導出する(ステップS304)。また、こうして導出されたトルク指令値Tr*とリングギヤ軸126の回転数Nrとの積からリングギヤ軸に出力すべきエネルギPrを算出する(ステップS306)。 【0132】次に、CPU190は、バッテリ194の残容量BRMを読み込み(ステップS308)、この値に基づいてバッテリ194を充放電する電力Pbを設定する(ステップS310)。また、該電力PbにステップS306で算出したリングギヤ軸126から出力すべきエネルギPr、および種々の補機を駆動するためのエネルギPhを加えることにより必要エネルギPnを算出した後(ステップS312)、この必要エネルギPnをトルク変換の効率ηtで割ってエンジン150から出力すべきエネルギPeを算出する(ステップS314)。ここまでの処理は、第1実施例におけるトルク制御ルーチン(図10)と同一である。 【0133】次のステップにおいて、CPU190はエンジン150の目標回転数ne*、目標トルクte*の設定をする(ステップS316)。第1実施例では、図13に示した動作曲線Aをマップとしたものを用いることによりエンジン150が最も効率よく運転できる回転数およびトルクを目標回転数Ne*、目標トルクTe*とした。第3実施例では、第1実施例と同様の方法により目標回転数ne*、目標トルクte*を算出するのである。次のステップでは図34に示すマップを用いて求められる回転数の修正量ΔNを目標回転数ne*に加え、最終的な目標回転数Ne*を算出する(ステップS318)。また、こうして算出された最終的な目標回転数Ne*で、エンジン150から出力すべきエネルギPeを割ることにより、最終的な目標トルクTe*を算出する(ステップS318)。以下、この目標回転数Ne*の算出について説明する。 【0134】エンジン150を最も効率よく運転できる動力状態を目標回転数ne*および目標トルクte*として設定し、これらの値に基づいてモータMG2のトルク指令値Tm2*を計算した場合には、第1実施例におけるトルク制御ルーチンにおいて説明した通り、許容範囲を越えるエネルギの循環を生じる場合もある。第1実施例ではモータMG2のトルク指令値Tm2*に基づいてこのようなエネルギの循環が生じているか否かを判断し、エネルギの循環が生じている場合には、エンジン150の目標回転数Ne*、目標トルクTe*を修正するという一種のフィードバック制御を行っていた(図10のステップS122,S124,S126)。 【0135】一方、エンジン150の目標回転数ne*の修正量ΔNは、動力出力装置が運転状態にない場合であっても算出することができる。修正量ΔNの算出は、エンジン150から出力すべきエネルギPeおよびリングギヤ軸126の回転数Nrを仮定した上で、第1実施例で説明した図10のステップS116からステップS126までの演算を行えばよい。従って、エネルギPeおよび回転数Nrを種々の値に設定して、上記演算を行うことにより、エンジン150の回転数の修正量ΔNは予めマップとして求めておくことができる。このマップの例を図34に示す。図34は、上記演算により算出したエンジンの目標回転数ne*の修正量ΔNを、横軸に車速をとり、縦軸にエンジン出力エネルギPeをとって表したものである。なお、駆動輪116、118とリングギヤ軸126は機械的に結合されており、車速即ち駆動輪116,118の回転数とリングギヤ軸126の回転数Nrとは等価なパラメータであるから、横軸を回転数Nrとして表すものとしてもよい。 【0136】車速がSPDである場合を例にとり、図34の内容について説明する。図34は、例えば点Q1に相当する車速およびエンジン出力エネルギPeが要求された場合、エンジン150の目標回転数をΔN1だけ増すべきことを意味している。つまり、点Q1に相当するエネルギPeをエンジン150から出力する際に、図13に示した動作曲線により求めた目標回転数ne*、目標トルクte*でエンジン150を運転しては、モータMG2のトルク指令値Tm2*が低くなりエネルギの循環が生じてしまうため、エンジン150の回転数ne*をΔN1だけ増した回転数を目標回転数Ne*とする必要があることを示している。 【0137】上記補正量ΔN1の意味を図16を用いて説明する。図16に示した通り、エンジン150から出力すべき要求エネルギがPeであるとき、エンジン150を最も効率のよいポイントで運転しようとすれば、動作曲線A上の運転ポイントを選択することになるから、図16の点P3、即ち回転数Ne3、トルクTe3で運転することになる。ここで、点P3でエンジン150を運転した場合には、エネルギの循環が生じており、この循環を許容範囲に抑えるためには、エンジン150の回転数をNe4まで増大する必要があったとする。当然このときエンジン150から出力すべきエネルギはPeで一定であるから、図16に示す通りエンジン150の出力トルクはTe4まで減少することになる。図34における点Q1が上記状態に相当するとすれば、図34における回転数の補正量ΔN1は図16にいうNe4−Ne3となる。 【0138】図34における点Q1でエンジン150が運転された場合と同様、点Q2で運転された場合には回転数の補正量はΔN2、点Q3に対してはΔN3・・・という具合に、図34のマップからそれぞれエンジン150の回転数の補正量を求めることができるようになっている。なお、本実施例では、これらの補正量はΔN1>ΔN2>・・・となっている。そして、点Q5で運転される場合には、エンジン150の回転数の補正量ΔNは値0となる。つまり、このときエンジン150は図13の動作曲線によって求められる回転数で運転すればよいことを意味している。 【0139】本実施例における図34のマップはエネルギの循環のみならず、動力出力装置全体の運転効率も加味して作成されている。つまり、図34のマップでは点Q1よりもエンジン出力エネルギを小さくしていくにつれてエンジン回転数の修正量ΔNが小さくなっているが、これはエンジン出力エネルギが小さい場合にはエネルギの循環による損失も小さくなるため、エンジン150を運転効率のよい運転ポイントで運転した方が動力出力装置の運転効率上好ましいからである。もっとも、このように出力エネルギが低い場合でも、エネルギの循環を完全になくすようにエンジン150の回転数を増大するマップを用いるものとしてもよい。 【0140】図34では、エンジン150の回転数の補正量をΔN1からΔN4までの4段階で与えるマップを示しているが、このマップは値0とΔN1の二値的なものとしてもよいし、更に段階を増やしほぼ連続的に変化するようなものとしてもよい。また、回転数の補正量ではなくエンジン150の目標回転数Ne*を直接与えるマップとしてもよいし、トルクの補正量または目標トルクTe*を与えるマップとしてもよい。なお、このマップは、本実施例では制御CPU190内のROM190bに記憶されており、その形式は、車速およびエンジン出力エネルギについて、それぞれ数点離散的な値を選択し、これら各点に対応したエンジン150の回転数の補正量を有するテーブル形式となっている。 【0141】トルク制御ルーチンの説明に戻る。エンジン150の目標回転数Ne*、目標トルクTe*を設定した後(ステップS318)、サンギヤ軸の目標回転数Nsを設定する(ステップS320)。これらの処理は、第1実施例において図10で説明した処理(ステップS120、S128)と同一である。本実施例では、エンジン150の回転数について、エネルギの循環が生じない値を与えるマップ(図34)に基づいてエンジン150の目標回転数Ne*、目標トルクTe*を設定しているため(ステップS318)、第1実施例におけるトルク制御ルーチンのようにモータMG2のトルク指令値Tm2*に応じてエンジン150の目標回転数Ne*、目標トルクTe*を補正するようなフィードバック制御(図10のステップS122,S124,S126)は必要ない。 【0142】次に、CPU190は、こうして設定された諸量に基づいて、モータMG1、モータMG2およびエンジン150の制御処理を実行する(ステップS322,S324,S326)。これらの処理も第1実施例におけるトルク制御ルーチンと同一である(ステップS130,S132,S134)。 【0143】以上で説明した動力出力装置は、図34に示したマップを用いて、エンジン150、モータMG1,MG2の運転をいわゆるフィードフォワード制御することによって、エネルギの循環を生じない状態で駆動軸126から動力を出力することができる。しかも、以下に示す通り、動力出力装置を滑らかに制御することが比較的容易に実現できる利点がある。つまり、第1実施例におけるトルク制御ルーチンのように、モータMG2のトルク指令値によるフィードバック制御を行った場合、このトルク指令値はアクセルペダルポジションAP等に基づいて算出されるため頻繁に変動し、また急激に変動することがあるが、本実施例では比較的緩やかに変動する車速に基づくフィードフォワード制御を採用しているため、エンジン150の運転状態も緩やかに変化することになり、動力出力装置を全体として滑らかに制御することが可能となるのである。 【0144】なお、上述のフィードフォワード制御においては、エンジン150,モータMG1,MG2の運転効率等を用いて、図34のマップを用意することになる。この際、製造誤差その他の原因により、製造されるエンジン150,モータMG1,MG2ごとに運転効率等は異なることを考えれば、各動力装置ごとに上記運転効率等を計測した上で、個別のマップを用意することが望ましいが、これは非常に困難であり現実的ではない。従って、ある特定の運転効率等に基づいて設定されたマップを各動力装置で用いるものとすればよい。製造上の原因による運転効率等のバラツキは比較的小さいため、かかる手段を採用してもエネルギの循環を十分抑制することができる。 【0145】さらに、上記バラツキによる影響を回避するために、動力出力装置の運転状態を監視し、その結果に基づいて上記マップを補正する学習機能をもたせてもよい。まず、トルク制御ルーチンにおいて、上記マップに基づいて定められた状態で運転をしつつ、モータMG2のトルク値Tm2*が所定の閾値Trefを越えない様にエンジン150の運転状態をフィードバック制御する。このようなフィードバック制御が行われたときは、前記マップの値が不適当であったことを意味しているため、フィードバック制御後のエンジン150の回転数に基づいて前記マップを書き換えるのである。かかる機能をもたせれば、動力出力装置の運転に伴って上記バラツキによる影響を回避することができる。 【0146】本実施例のトルク制御ルーチンは、第2実施例におけるハードウェア構成(図24)を備える動力出力装置に適用することもできる。このとき、第2実施例で説明した通り、エネルギの再循環を回避するためには、モータMG2で電力を回生する必要があり、エンジン150の出力トルクを高くする必要がある。言い換えれば、エンジン150の目標回転数Ne*を図13の動作曲線により定まる回転数ne*よりも低くする必要がある。従って、図34のマップにおけるΔN1〜ΔN4の各値がそれぞれ負の値となる点で上述した第3実施例と相違する。 【0147】第1実施例の動力出力装置110や第2実施例の動力出力装置110Cあるいはこれらの変形例では、FR型あるいはFF型の2輪駆動の車両に適用するものとしたが、図35の変形例の動力出力装置110Fに示すように、4輪駆動の車両に適用するものとしてもよい。この構成では、リングギヤ軸126に結合していたモータMG2をリングギヤ軸126より分離して、車両の後輪部に独立して配置し、このモータMG2によって後輪部の駆動輪117,119を駆動する。一方、リングギヤ軸126は動力取出ギヤ128および動力伝達ギヤ111を介してディファレンシャルギヤ114に結合されて前輪部の駆動輪116,118を駆動する。このような構成の下においても、前述した図10のトルク制御ルーチンを実行することは可能である。 【0148】以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。 【0149】例えば、上述した各実施例では、エンジン150としてガソリンエンジンを用いたが、その他に、ディーゼルエンジンや、タービンエンジンや、ジェットエンジンなど各種の内燃あるいは外燃機関を用いることもできる。 【0150】また、各実施例では、3軸式動力入出力手段としてプラネタリギヤ120を用いたが、一方はサンギヤと他方はリングギヤとギヤ結合すると共に互いにギヤ結合しサンギヤの外周を自転しながら公転する2つ1組の複数組みのプラネタリピニオンギヤを備えるダブルピニオンプラネタリギヤを用いるものとしてもよい。この他、3軸式動力入出力手段として3軸のうちいずれか2軸に入出力される動力を決定すれば、この決定した動力に基づいて残余の1軸に入出力される動力を決定されるものであれば如何なる装置やギヤユニット等、例えば、ディファレンシャルギヤ等を用いることもできる。また、3軸式動力入出力手段と発電機とからなる動力調整手段に代えていわゆるクラッチモータを用いた、電気分配式の動力出力装置に適用するものとしてもよい。電気分配式の動力出力装置としては、例えば特開平9−47011に示す構成が挙げられる。 【0151】さらに、各実施例では、モータMG1およびモータMG2にPM形(永久磁石形;Permanent Magnet type)同期電動機を用いたが、回生動作および力行動作の双方が可能なものであれば、その他にも、VR形(可変リラクタンス形;Variable Reluctance type)同期電動機や、バーニアモータや、直流電動機や、誘導電動機や、超電導モータや、ステップモータなどを用いることもできる。 【0152】あるいは、各実施例では、第1および第2の駆動回路191,192としてトランジスタインバータを用いたが、その他に、IGBT(絶縁ゲートバイポーラモードトランジスタ;Insulated Gate Bipolar mode Transistor)インバータや、サイリスタインバータや、電圧PWM(パルス幅変調;Pulse Width Modulation)インバータや、方形波インバータ(電圧形インバータ,電流形インバータ)や、共振インバータなどを用いることもできる。 【0153】また、バッテリ194としては、Pbバッテリ,NiMHバッテリ,Liバッテリなどを用いることができるが、バッテリ194に代えてキャパシタを用いることもできる。 【0154】以上の実施例では、動力出力装置を車両に搭載する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、船舶,航空機などの交通手段や、その他各種産業機械などに搭載することも可能である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年10月13日(1997.10.13) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100096817 【弁理士】 【氏名又は名称】五十嵐 孝雄 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−17005(P2002−17005A) |
| 【公開日】 |
平成14年1月18日(2002.1.18) |
| 【出願番号】 |
特願2001−123976(P2001−123976) |
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