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【発明の名称】 列車ブレーキ制御装置
【発明者】 【氏名】恩田 和彦

【氏名】近松 秀明

【要約】 【課題】列車の通常走行時に影響を与えることなく、ブレーキ動作時間を短縮して空走時間を削減できるようにする。

【解決手段】前方予告信号を受信したATC車上装置20は、前方予告リレー(ANR)29によって接点機構(ANR)を駆動させ、ブレーキ継電器部30の両側前方予告リレー(FANR)34により接点機構(FANR)を駆動させて、ブレーキ指令線(SB1)へブレーキを設定する信号を出力し、ブレーキ設定部38によりブレーキノッチがB1の予備ブレーキ出力状態とする。予備ブレーキ出力を行うことにより、ブレーキシューが車輪に近接した状態になるため、その後ATCブレーキを動作させるとブレーキ動作時間が短縮されて、列車の空走時間を削減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行する列車に制動をかけるブレーキ機構の制御を行う列車ブレーキ制御装置において、前記列車の走行中に前方閉塞区間の制限速度が現在の閉塞区間の制限速度よりも低い場合にこれを検知する検知手段と、前記検知手段の検知に基づいて前記ブレーキ機構を作動させ、前記列車がほとんど減速しない程度の予備ブレーキ出力を行う予備ブレーキ出力手段と、を備えていることを特徴とする列車ブレーキ制御装置。
【請求項2】 前記検知手段は、ATC装置による前方予告信号を検知するものであることを特徴とする請求項1に記載の列車ブレーキ制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、列車ブレーキ制御装置に関し、より詳しくは、走行する列車に制動をかけるブレーキ機構の制御を行う列車ブレーキ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ATC(自動列車制御)車上装置などにおけるATCブレーキ動作時には、各装置での処理時間が加算され、信号受信からブレーキ動作が開始されるまでに時間を要していたため、列車の空走が発生していた。例えば、全空走時間のうちブレーキ装置の動作時間が約半分を占有している上、信号受信処理時間や速度照査処理時間の短縮による空走時間の削減については既に限界に達している。そこで、従来の列車ブレーキ制御装置では、機械的ブレーキの動作時間を短縮するため、初込め装置というものが用いられている。この初込め装置とは、ブレーキが作用しない程度にブレーキシリンダに常に圧力をかけておくことにより、ブレーキの動作時間を短縮するものであった。なお、近年の列車ブレーキでは、例えば、特開平8−205317号公報に記載されているような全電気式ブレーキが普及しつつある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した初込め装置を用いた従来の列車ブレーキ制御装置にあっては、ブレーキシリンダへの圧力調整如何によってブレーキが常に動作している状態となるため、本来ならブレーキが動作しない通常走行時であってもエネルギーロスやブレーキシューの加熱あるいは磨耗といった影響が出る問題があった。また、上記のような初込め装置を用いなければ、ブレーキの動作時間を短縮することができず、列車の空走時間が削減できないという問題があった。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、列車の通常走行時に影響を与えることなく、ブレーキ動作時間を短縮して空走時間を削減することができる列車ブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1記載の発明は、走行する列車に制動をかけるブレーキ機構の制御を行う列車ブレーキ制御装置において、前記列車の走行中に前方閉塞区間の制限速度が現在の閉塞区間の制限速度よりも低い場合にこれを検知する検知手段と、前記検知手段の検知に基づいて前記ブレーキ機構を作動させ、前記列車がほとんど減速しない程度の予備ブレーキ出力を行う予備ブレーキ出力手段と、を備えていることを特徴とする。これによれば、検知手段により前方閉塞区間の制限速度が現在の閉塞区間の制限速度よりも低い場合を検知すると、予備ブレーキ出力手段がブレーキ機構を作動させて列車がほとんど減速しない程度の予備ブレーキ出力を行うため、列車の通常走行に影響を与えることなくブレーキ動作時間を短縮することが可能となり、列車の空走時間を削減することができる。請求項2記載の発明は、請求項1に記載の列車ブレーキ制御装置において、前記検知手段は、ATC装置による前方予告信号を検知するものであることを特徴とする。これによれば、検知手段は、ATC装置による前方予告信号を検知するものとしたため、ATC車上装置でATCブレーキ動作を行う際に、列車の通常走行に影響を与えることなくブレーキ動作時間を短縮することが可能となり、列車の空走時間を削減することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る列車ブレーキ制御装置の構成を説明するブロック図である。図1の列車ブレーキ制御装置は、地上子から送られてきたATC信号を受信するATC受電器10、ATC車上装置20、およびATC車上装置20からのブレーキ指令に基づいてブレーキ機構に駆動信号を送る予備ブレーキ出力手段としてのブレーキ継電器部30などを備え、さらにそのATC車上装置20は、ATC受信部22、速度照査部24、共通部26、および検知手段としての受信共通部28などで構成されている。ATC受信部22は、ATC受電器10で受信されたATC信号に基づいて、現在の閉塞区間の制限速度を示すATC現示と、前方閉塞区間の制限速度が現在の閉塞区間の制限速度よりも低い(下位)にある場合の前方予告信号とを出力するものである。速度照査部24は、ATC受信部22からのATC現示による現在の閉塞区間の制限速度と列車の現在の走行速度とを比較して、現在の閉塞区間の制限速度の方が下位である場合にATCブレーキ出力を行うものである。共通部26は、速度照査部24からATCブレーキ出力があると、ATCブレーキリレー(BR)27により接点機構(BR)を駆動させるものである。受信共通部28は、ATC受信部22から前方予告信号受信出力を受け、前方予告リレー(ANR)29により接点機構(ANR)を駆動させるものである。ブレーキ継電器部30は、ブレーキ出力リレーを使ってブレーキシリンダを駆動するものである。例えば、ATCブレーキ動作時には、前述した接点機構(BR)を駆動させると、車両側ATCブレーキリレー(FBR)32によって図1には図示していない(図2参照)の接点機構(FBR)を駆動させ、ブレーキ指令線へブレーキノッチ指令(B5など)を出力する。また、本実施の形態の特徴である予備ブレーキ出力時には、前述した接点機構(ANR)を駆動させることにより、車両側前方予告リレー(FANR)34が接点機構(FANR)を駆動して、ブレーキ指令線(SB1)へ列車が直接減速度を発生しない程度のブレーキノッチ指令(ブレーキ最小出力:B1)を出力するものである。
【0006】図2は、図1のATC車上装置20とブレーキ継電器部30のリレーによって出力されるブレーキノッチ指令とそれによってブレーキシリンダの圧力調整を行う電磁弁とを示した本実施の形態のブレーキシステムの図であり、図中に図1と同一符号が付してあるものは、同一部又は相当部であって、重複説明を省略する。また、図3は、図2の各ブレーキノッチに対応する電磁弁の加圧順序とその結果であるブレーキ減速度との関係を示す図であり、図中の○印は、各電磁弁の加圧の有無を示している。図2に示すように、ATC車上装置20によりATCブレーキ出力があると、ATCブレーキリレー(BR)27により接点機構(BR)を駆動させ、さらに、車両側ATCブレーキリレー(FBR)32によって接点機構(FBR)を駆動させて、ダイオードD2,D3を介してブレーキ指令線へブレーキノッチ指令を出力する。ここでは、図3に示すように、ATCブレーキ出力のブレーキノッチをB5とすると、3つある電磁弁のうち(SBV1,SBV3)を作用させることにより、B5ブレーキ減速度となる(β×5/7[km/h/s])。これ以外のブレーキノッチ指令が出力された場合は、図3に示すような組み合わせで電磁弁を作用させ、所望のブレーキ減速度を得るようにする。また、図2のATC車上装置20において前方予告信号を受信した場合は、予備ブレーキ出力が行われる。すなわち、前方予告リレー(ANR)29によって接点機構(ANR)を駆動し、さらに、車両側前方予告リレー(FANR)34によって接点機構(FANR)を駆動させることにより、ダイオードD1を介してブレーキ指令線へブレーキノッチを設定するための信号を出力する。そして、ブレーキ設定部38の出力に上記信号を割り込ませ、ブレーキノッチを制御する。ここでは、図3に示すように、予備ブレーキ出力のブレーキノッチは、ブレーキ最小出力のB1とし、3つある電磁弁のうちの第1電磁弁(SBV1)のみを作用させることで、3つの電磁弁全てを作用させた場合の1/7のブレーキ減速度となるようにする(β×1/7[km/h/s])。なお、上記したダイオードD1〜D3は、ブレーキノッチ指令信号がブレーキ継電器部30へ流入するのを防止するものである。
【0007】図4は、電磁弁の作用により列車に制動をかけるブレーキ機構の一構成例を示す図で、(a)はニュートラル状態を示す図、(b)はブレーキノッチB1の状態を示す図、(c)はブレーキノッチB5の状態を示す図である。図4に示すように、本実施の形態のブレーキ機構は、車輪40に対して制動力を与えるブレーキシュー42、そのブレーキシュー42を支持して駆動させる支持軸44、支持軸44の他端部に固定され、ブレーキシリンダ48内を移動可能に内接しているピストン46、ピストン46とブレーキシリンダ48との間の支持軸44の周りに配置され、ブレーキシュー42を図4の左方向へ常時付勢する圧縮ばねなどの弾性部材50、およびブレーキシリンダ48内を加圧するための流動体(ガスやオイルなど)を選択的に注入することによってブレーキ力の調整を行う電磁弁36などで構成されている。電磁弁36は、ここでは3種類(SBV1,SBV2,SBV3)とし、各電磁弁によって発生するブレーキ力(車輪40に対するブレーキシュー42の押圧力)を変え、その電磁弁を組み合わせて用いることにより、ブレーキノッチB1〜B7までの7段階のブレーキ力が得られるようにしている(図3参照)。
【0008】次に、動作について説明する。例えば、通常は、ATC現示により現在走行中の閉塞区間よりも前方閉塞区間の方が制限速度が低いことを示す前方予告信号を受信すると、運転台のランプが点灯して前方閉塞区間の現示が下位であることを運転士に告げる。列車の運転士は、これを見て手動でブレーキをかけ、予備減速を行うことで下位現示区間進入時の乗り心地の向上等が行われる。運転士がこのブレーキ操作を失念したり、操作が遅れた場合は、ATC装置側で自動的にブレーキをかけて制限速度まで減速させるようになっている。本実施の形態の列車ブレーキ制御装置では、図1に示すように、前方予告信号をATC受電器10を介してATC車上装置20が受信すると、ATC受信部22から受信共通部28に前方予告信号が送られ、前方予告リレー(ANR)29によって接点機構(ANR)を駆動させる。そして、ブレーキ継電器部30の車両側前方予告リレー(FANR)34により接点機構(FANR)を駆動させて、ブレーキ指令線(SB1)へブレーキ設定用の信号を出力する。ブレーキ設定部38では、図3に示すように、ブレーキノッチがB1であれば3つある電磁弁のうちの第1電磁弁(SBV1)のみを作用させる信号をブレーキ指令線(SBV1)を介してそれぞれの電磁弁36a,36b,・・・を励磁させる。これにより、図4(a)に示すニュートラル状態から、図4(b)に示す予備ブレーキ出力状態に移行させることができる。このように、予備ブレーキ出力を予め行っておくことにより、ブレーキシュー42が車輪40に近接した状態となり、図4(c)に示す次の段階でATCブレーキ(あるいは、運転士による手動ブレーキ)を動作させても、ブレーキシュー42の動作範囲が狭くて済むことから、ブレーキ動作時間が短縮できる。しかも、従来の初込め装置のようにブレーキシリンダに常に圧力をかけるのとは異なり、前方予告信号を受信した場合(列車を減速させる可能性のある場合)にのみブレーキシリンダに圧力をかけるので、エネルギーロスやブレーキシューの加熱あるいは磨耗等を必要最小限に抑えることができる。
【0009】上記した予備ブレーキ出力後は、ATC現示により運転士が手動ブレーキをかけて現在の走行速度が制限速度以下となるようにする。ここで、運転士が失念等で手動ブレーキをかけ忘れたり、かけるタイミングが遅れて走行速度が制限速度以上になった場合は、速度照査部24がこれを検知してATCブレーキを動作させる。これにより、各閉塞区間に定められた制限速度以下で列車を確実かつ安全に運行することができる。上記した予備ブレーキ出力状態は、ATCブレーキや運転士による手動ブレーキが解除されたり、列車を加速させた時点で図4(a)に示すようなニュートラル状態に戻るようにする。これにより、ブレーキシュー42が車輪40に常に接触する、いわゆる引きずり状態が解消されるので、エネルギーロスやブレーキシューの加熱あるいは磨耗を無くすことができる。以上説明したように、本実施の形態によれば、前方閉塞区間の現示が現在の閉塞区間よりも下位現示であることを示す前方予告信号を受信すると、ATC車上装置から直接減速度が発生しない程度の予備ブレーキ出力を行って、車輪にブレーキシューを近接させるようにしたので、ブレーキ動作時間が短縮され、空走時間を削減することができる。また、本実施の形態によれば、従来からの初込め装置を用いる必要が無くなった。なお、本実施の形態では、予備ブレーキ出力にブレーキ減速度が(β×1/7)となるブレーキノッチB1を採用したが、ブレーキシューを車輪に接触しない程度に接近させた新たなブレーキノッチ状態を採用し、予備ブレーキ出力時にこの状態となるように設定しても勿論良い。また、本実施の形態では、採用したブレーキノッチがB1〜B7までの7段階としたが、勿論これに限定されるものではなく、任意の段階のブレーキノッチを採用することができる。
【0010】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明によれば、検知手段により前方閉塞区間の制限速度が現在の閉塞区間の制限速度よりも低い場合を検知すると、予備ブレーキ出力手段がブレーキ機構を作動させて列車がほとんど減速しない程度の予備ブレーキ出力を行うので、列車の通常走行に影響を与えることなくブレーキ動作時間を短縮することが可能となり、列車の空走時間を削減することができる。また、請求項2の発明によれば、検知手段をATC装置による前方予告信号を検知するものとしたので、ATC車上装置でATCブレーキ動作を行う際に、前方予告信号を利用することにより、列車の通常走行に影響を与えずに簡易にブレーキ動作時間を短縮することが可能となり、列車の空走時間を削減することができる。
【出願人】 【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
【出願日】 平成12年6月19日(2000.6.19)
【代理人】 【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
【公開番号】 特開2002−10402(P2002−10402A)
【公開日】 平成14年1月11日(2002.1.11)
【出願番号】 特願2000−183599(P2000−183599)