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【発明の名称】 変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置
【発明者】 【氏名】鈴木 敬介

【氏名】川辺 武俊

【要約】 【課題】IVT変速フィードバック制御と、アイドル回転数フィードバック制御が行われる車両において、クリープ走行制御中に2つのフィードバック制御系の干渉を抑制することが可能であり、これにより走行環境の変化や車重の変化にかかわらず所望の特性が得られるクリープ走行制御を実現することができる変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置を提供すること。

【解決手段】ドライバ運転操作検出手段と、運転状態検出手段と、機関回転数検出手段と、IVT変速パラメータ検出手段と、アイドル回転数フィードバック制御実行判定手段と、クリープ走行制御実行判定手段と、機関回転数補正手段と、IVT変速パラメータ補正手段と、アイドル回転数目標値演算手段と、IVT変速目標値演算手段とを備え、少なくとも、前記IVT変速パラメータ補正手段を、クリープ走行制御実行判定手段がクリープ走行制御の実行を判定した場合には、IVT変速パラメータ検出手段により検出されるIVT変速パラメータを、機関回転数検出手段の出力に基づいて機関回転数が目標値に収束するように補正する手段とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 変速比を無段階に変化させることができる無段変速機構(以下、CVTと記す)と、該CVTの入出力軸間に介装された遊星歯車機構と、変速比無限大を含む変速比範囲で動力を伝達する動力循環モードを実現することができる第1の断続機構と、CVTのみで動力を伝達する直結モードを実現することができる第2の断続機構とからなる変速比無限大無段変速機(以下、IVTと記す)を備えた車両であって、ドライバの運転操作を検出するドライバ運転操作検出手段と、少なくとも車速を含む車両の運転状態を検出する運転状態検出手段と、機関の回転数を検出する機関回転数検出手段と、前記IVTの変速パラメータを検出するIVT変速パラメータ検出手段と、前記運転状態検出手段と、前記ドライバ運転操作検出手段と、前記機関回転数検出手段の出力に基づいて、機関のアイドル回転数フィードバック制御の実行を判定するアイドル回転数フィードバック制御実行判定手段と、該アイドル回転数フィードバック制御実行判定手段と、前記ドライバ運転操作検出手段と、前記運転状態検出手段の出力に基づいて、クリープ走行制御の実行を判定するクリープ走行制御実行判定手段と、該クリープ走行制御実行判定手段と、前記IVT変速パラメータ検出手段と、前記機関回転数検出手段の出力に基づいて、機関回転数の補正を行う機関回転数補正手段と、前記クリープ走行制御実行判定手段がクリープ走行制御の実行を判定した場合には、前記IVT変速パラメータ検出手段により検出されるIVT変速パラメータを、前記機関回転数検出手段の出力に基づいて機関回転数が目標値に収束するように補正するIVT変速パラメータ補正手段と、前記アイドル回転数フィードバック制御実行判定手段と、前記機関回転数補正手段の出力に基づいて、アイドル回転数の目標値を演算するアイドル回転数目標値演算手段と、前記クリープ走行制御実行判定手段と、前記IVT変速パラメータ補正手段の出力に基づいて、所定の目標値を実現するようにIVT変速制御の目標値を演算するIVT変速目標値演算手段と、を備えていることを特徴とする変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置。
【請求項2】 請求項1に記載の変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記機関回転数補正手段は、前記クリープ走行制御実行判定手段がクリープ走行制御の実行を判定した場合には、前記IVT変速パラメータ検出手段の出力に基づいてIVT変速パラメータが目標値に収束するよう、前記機関回転数検出手段で検出される機関回転数を補正する手段としたことを特徴とする変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置。
【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記IVT変速パラメータ検出手段を、IVT変速パラメータとして少なくともCVT変速比を検出する手段としたことを特徴とする変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置。
【請求項4】 請求項1ないし請求項3に記載の変速比無限大無段変速機の制御装置において、前記IVT変速目標値演算手段を、目標駆動力を実現するようにIVT変速制御の目標値を演算する手段としたことを特徴とする変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置。
【請求項5】 請求項1ないし請求項3に記載の変速機無限大無段変速機の変速制御装置において、前記IVT変速目標値演算手段を、目標車速を実現するようにIVT変速制御の目標値を演算する手段としたことを特徴とする変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置。
【請求項6】 請求項1ないし請求項5に記載の変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記IVT変速パラメータ補正手段を、前記機関回転数検出手段の出力が増加傾向の場合には減少方向にIVT変速パラメータの補正を行い、前記機関回転数検出手段の出力が減少傾向の場合には増加方向にIVT変速パラメータの補正を行う手段としたことを特徴とする変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置。
【請求項7】 請求項1ないし請求項6に記載の変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記IVT変速パラメータ補正手段を、前記機関回転数検出手段の出力の2階微分値が増加傾向の場合には増加方向にIVT変速パラメータの補正を行い、前記機関回転数検出手段の出力の2階微分値が減少傾向の場合には減少方向にIVT変速パラメータの補正を行う手段としたことを特徴とする変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置。
【請求項8】 請求項1ないし請求項7に記載の変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記機関回転数補正手段を、前記IVT変速パラメータ検出手段の出力が増加傾向の場合には減少方向に機関回転数の補正を行い、前記IVT変速パラメータ検出手段の出力が減少傾向の場合には増加方向に機関回転数の補正を行う手段としたことを特徴とする変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動力経路が機械的に結合した状態で減速比=∞、すなわち出力を中立状態にできる変速比無限大無段変速機(以下、IVT:Infinitely VariableTransmissionの略称)を備えた車両の制御装置、特に、クリープトルク制御の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】従来、変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置としては、特開平10−267117号公報に記載のものが知られている。
【0003】この従来公報には、変速比を無段階に変化させることができる無段変速機構(CVT)と、CVTの入出力軸間に介装された遊星歯車機構と、変速比無限大を含む変速比範囲で動力を伝達する動力循環モードを実現することができる第1の断続機構と、CVTのみで動力を伝達する直結モードを実現することができる第2の断続機構とからなる変速比無限大無段変速機(IVT)を備えた車両において、車速が所定値以下の時、駆動輪に所定の大きさの出力トルクが発生するようにトロイダル変速機構を制御すると共に、非走行レンジから走行レンジへのレンジ切り替え時から所定時間の間の上記出力トルクの大きさを、前記所定時間が経過した後に比べて小さくなるように前記トロイダル変速機構を制御するというクリープトルク制御技術が記載されている。
【0004】また、加速時等に、エンジン回転数の変動量に基づいて無段変速機構の変速比を制御することによりトルクや車体の振動を吸収するという考え方が、特開平11−63184号公報に記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のIVTのクリープトルク制御にあっては、IVTを備えた車両で車速が所定値以下の時には変速比(あるいは油圧)を制御することにより、ある程度のクリープトルクを発生させることができるが、走行環境にかかわらず所定量の変速補正(あるいは油圧補正)を行う制御構成となっていたため、この決められた補正量によるクリープ制御では、路面状況や傾斜等の走行環境の如何により、発進車速や発進駆動トルクが得られないことがあるというように、クリープ走行の特性が異なってしまうという問題点があった。
【0006】また、仮に走行環境によらず同一のクリープ走行特性を実現するために、従来技術に対して、変速(あるいは油圧)制御を所定の目標値(駆動トルクあるいは車速)を実現するようにフィードバック制御するような構成を付加したとしても、そもそも同じアクセル足離し条件の下で行われるアイドル回転数フィードバック制御と、変速(あるいは油圧)のフィードバック制御が干渉してしまう場合があり、制御干渉により目標値が大きく振動してしまうことがあるという問題点があった(図10参照)。
【0007】また、このような場合に、従来の特開平11−63184号公報や特開平9−14414号公報に示されるような、エンジン回転数の変動量に基づいて無段変速機構の変速比を制御する方法を用いることも考えられるが、変速比を補正することはそのままエンジン回転数を変化させることにつながり、その変化したエンジン回転数に基づいてアイドル回転数フィードバック制御が補償を行うため、やはりアイドル回転数フィードバック制御と、変速(あるいは油圧)のフィードバック制御が干渉してしまう可能性があるという問題点があった。
【0008】本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、IVT変速フィードバック制御と、アイドル回転数フィードバック制御が行われる車両において、クリープ走行制御中に2つのフィードバック制御系の干渉を抑制することが可能であり、これにより走行環境の変化や車重の変化にかかわらず所望の特性が得られるクリープ走行制御を実現することができる変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、図1のクレーム概念図に示すように、変速比を無段階に変化させることができるCVTと、該CVTの入出力軸間に介装された遊星歯車機構と、変速比無限大を含む変速比範囲で動力を伝達する動力循環モードを実現することができる第1の断続機構と、CVTのみで動力を伝達する直結モードを実現することができる第2の断続機構とからなるIVTを備えた車両であって、ドライバの運転操作を検出するドライバ運転操作検出手段と、少なくとも車速を含む車両の運転状態を検出する運転状態検出手段と、機関の回転数を検出する機関回転数検出手段と、前記IVTの変速パラメータを検出するIVT変速パラメータ検出手段と、前記運転状態検出手段と、前記ドライバ運転操作検出手段と、前記機関回転数検出手段の出力に基づいて、機関のアイドル回転数フィードバック制御の実行を判定するアイドル回転数フィードバック制御実行判定手段と、該アイドル回転数フィードバック制御実行判定手段と、前記ドライバ運転操作検出手段と、前記運転状態検出手段の出力に基づいて、クリープ走行制御の実行を判定するクリープ走行制御実行判定手段と、該クリープ走行制御実行判定手段と、前記IVT変速パラメータ検出手段と、前記機関回転数検出手段の出力に基づいて、機関回転数の補正を行う機関回転数補正手段と、前記クリープ走行制御実行判定手段がクリープ走行制御の実行を判定した場合には、前記IVT変速パラメータ検出手段により検出されるIVT変速パラメータを、前記機関回転数検出手段の出力に基づいて機関回転数が目標値に収束するように補正するIVT変速パラメータ補正手段と、前記アイドル回転数フィードバック制御実行判定手段と、前記機関回転数補正手段の出力に基づいて、アイドル回転数の目標値を演算するアイドル回転数目標値演算手段と、前記クリープ走行制御実行判定手段と、前記IVT変速パラメータ補正手段の出力に基づいて、所定の目標値を実現するようにIVT変速制御の目標値を演算するIVT変速目標値演算手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】請求項2記載の発明では、請求項1に記載の変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記機関回転数補正手段は、前記クリープ走行制御実行判定手段がクリープ走行制御の実行を判定した場合には、前記IVT変速パラメータ検出手段の出力に基づいてIVT変速パラメータが目標値に収束するよう、前記機関回転数検出手段で検出される機関回転数を補正する手段としたことを特徴とする。
【0011】請求項3記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記IVT変速パラメータ検出手段を、IVT変速パラメータとして少なくともCVT変速比を検出する手段としたことを特徴とする。
【0012】請求項4記載の発明では、請求項1ないし請求項3に記載の変速比無限大無段変速機の制御装置において、前記IVT変速目標値演算手段を、目標駆動力を実現するようにIVT変速制御の目標値を演算する手段としたことを特徴とする。
【0013】請求項5記載の発明では、請求項1ないし請求項3に記載の変速機無限大無段変速機の変速制御装置において、前記IVT変速目標値演算手段を、目標車速を実現するようにIVT変速制御の目標値を演算する手段としたことを特徴とする。
【0014】請求項6記載の発明では、請求項1ないし請求項5に記載の変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記IVT変速パラメータ補正手段を、前記機関回転数検出手段の出力が増加傾向の場合には減少方向にIVT変速パラメータの補正を行い、前記機関回転数検出手段の出力が減少傾向の場合には増加方向にIVT変速パラメータの補正を行う手段としたことを特徴とする。
【0015】請求項7記載の発明では、請求項1ないし請求項6に記載の変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記IVT変速パラメータ補正手段を、前記機関回転数検出手段の出力の2階微分値が増加傾向の場合には増加方向にIVT変速パラメータの補正を行い、前記機関回転数検出手段の出力の2階微分値が減少傾向の場合には減少方向にIVT変速パラメータの補正を行う手段としたことを特徴とする。
【0016】請求項8記載の発明では、請求項1ないし請求項7に記載の変速比無限大無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記機関回転数補正手段を、前記IVT変速パラメータ検出手段の出力が増加傾向の場合には減少方向に機関回転数の補正を行い、前記IVT変速パラメータ検出手段の出力が減少傾向の場合には増加方向に機関回転数の補正を行う手段としたことを特徴とする。
【0017】
【発明の作用および効果】請求項1記載の発明にあっては、アイドル回転数フィードバック制御実行判定手段において、運転状態検出手段と、ドライバ運転操作検出手段と、機関回転数検出手段の出力に基づいて、機関のアイドル回転数フィードバック制御の実行が判定され、クリープ走行制御実行判定手段において、アイドル回転数フィードバック制御実行判定手段と、ドライバ運転操作検出手段と、運転状態検出手段の出力に基づいて、クリープ走行制御の実行が判定される。そして、アイドル回転数制御側では、機関回転数補正手段において、クリープ走行制御実行判定手段と、IVT変速パラメータ検出手段と、機関回転数検出手段の出力に基づいて、機関回転数の補正が行われ、アイドル回転数目標値演算手段において、アイドル回転数フィードバック制御実行判定手段と、機関回転数補正手段の出力に基づいて、アイドル回転数の目標値が演算される。一方、IVT変速制御側では、IVT変速パラメータ補正手段において、クリープ走行制御実行判定手段がクリープ走行制御の実行を判定した場合には、IVT変速パラメータ検出手段により検出されるIVT変速パラメータが、機関回転数検出手段の出力に基づいて機関回転数が目標値に収束するように補正され、IVT変速目標値演算手段において、クリープ走行制御実行判定手段と、IVT変速パラメータ補正手段の出力に基づいて、所定の目標値を実現するようにIVT変速制御の目標値が演算される。
【0018】すなわち、IVT変速フィードバック制御と、アイドル回転数フィードバック制御が行われる車両において、クリープ走行制御を行う場合には、少なくとも、IVT変速目標値の演算に用いる変速パラメータ補正量を演算する際に、検出した機関回転数に基づいて補正する構成であるため、クリープトルクを得るIVT変速フィードバック制御の開始域で機関回転数が変化しても、その後、IVT変速パラメータの補正により機関回転数が目標値に収束してゆく。言い換えると、アイドル回転数制御側でのフィードバック制御量がIVT変速パラメータの補正によって小さくなってゆき、この結果、クリープ走行制御中に2つのフィードバック制御系が干渉するのを抑制することが可能である。
【0019】よって、IVT変速制御側では、所定の目標値を実現するフィードバック制御の採用により、走行環境の変化や車重の変化にかかわらず所望の特性が得られるクリープ走行制御を実現することができる。
【0020】請求項2記載の発明にあっては、機関回転数補正手段において、クリープ走行制御実行判定手段がクリープ走行制御の実行を判定した場合には、IVT変速パラメータ検出手段の出力に基づいてIVT変速パラメータが目標値に収束するよう、機関回転数検出手段で検出される機関回転数が補正される。
【0021】すなわち、クリープ走行制御を行う場合は、IVT変速目標値の演算に用いる変速パラメータ補正量は、検出した機関回転数に基づいて演算され(請求項1)、アイドル回転数目標値の演算に用いる機関回転数補正量は、検出したIVT変速パラメータに基づいて演算される(請求項2)。
【0022】よって、IVT変速パラメータの補正により機関回転数が目標値に収束する特性となり、機関回転数の補正によりIVT変速パラメータが目標値に収束する特性となり、2つのフィードバック制御に伴う機関回転数の変化とIVT変速パラメータの変化とが互いに目標値に収束するように抑え込まれるため、クリープ走行制御中に2つのフィードバック制御系の干渉を高いレベルで抑制することが可能である。
【0023】請求項3に記載の発明にあっては、IVT変速パラメータ検出手段において、IVT変速パラメータとして少なくともCVT変速比が検出される。
【0024】よって、クリープ走行時のように低車速で車輪速が低い値しか示さない場合でも変速比を高精度に検出することができ、その結果、IVTの変速比制御を精度良く実現することができる。
【0025】請求項4に記載の発明にあっては、IVT変速目標値演算手段において、目標駆動力を実現するようにIVT変速制御の目標値が演算される。
【0026】よって、路面状態や勾配等の走行環境の変化や車重の変化にかかわらず、常に同様の駆動力特性を実現することができる。
【0027】請求項5に記載の発明にあっては、IVT変速目標値演算手段において、目標車速を実現するようにIVT変速制御の目標値が演算される。
【0028】よって、路面状態や勾配等の走行環境の変化や車重の変化にかかわらず、常に同様の車速特性を実現することができる。
【0029】請求項6に記載の発明にあっては、IVT変速パラメータ補正手段において、機関回転数検出手段の出力が増加傾向の場合には減少方向にIVT変速パラメータの補正が行われ、機関回転数検出手段の出力が減少傾向の場合には増加方向にIVT変速パラメータの補正が行われる。
【0030】すなわち、例えば、IVT変速パラメータをCVT変速比とした場合、検出した機関回転数が増加するとCVT変速比が減少方向(アップシフト方向)に補正され、アップシフトにより機関回転数が下げられる。逆に、検出した機関回転数が減少するとCVT変速比が増加方向(ダウンシフト方向)に補正され、ダウンシフトにより機関回転数が上げられる。つまり、機関回転数を目標値に収束させる方向にCVT変速比を変化させる補正が行われることになる。
【0031】よって、クリープ走行制御中、機関回転数を目標値に収束させながらIVT変速フィードバック制御が行われることになり、2つのフィードバック制御系の干渉を高レベルで抑制できる。
【0032】請求項7に記載の発明にあっては、IVT変速パラメータ補正手段において、機関回転数検出手段の出力の2階微分値が増加傾向の場合には増加方向に変速パラメータの補正が行われ、機関回転数検出手段の出力の2階微分値が減少傾向の場合には減少方向に変速パラメータの補正が行われる。
【0033】すなわち、例えば、IVT変速パラメータをCVT変速比とした場合、検出した機関回転数の2階微分値、つまり、機関回転数加速度が増加するとCVT変速比が減少方向(アップシフト方向)に補正され、アップシフトにより機関回転数が下げられる。逆に、検出した機関回転数加速度が減少するとCVT変速比が増加方向(ダウンシフト方向)に補正され、ダウンシフトにより機関回転数が上げられる。つまり、機関回転数の変化に対し応答良く機関回転数を目標値に収束させる方向にCVT変速比を変化させる補正が行われることになる。
【0034】よって、クリープ走行制御中、機関回転数を応答良く目標値に収束させながらIVT変速フィードバック制御が行われることになり、2つのフィードバック制御系の干渉をさらに高レベルで抑制できる。
【0035】請求項8に記載の発明にあっては、機関回転数補正手段において、IVT変速パラメータ検出手段の出力が増加傾向の場合には減少方向に機関回転数の補正が行われ、IVT変速パラメータ検出手段の出力が減少傾向の場合には増加方向に機関回転数の補正が行われる。
【0036】すなわち、例えば、IVT変速パラメータをCVT変速比とした場合、検出したCVT変速比が増加(ダウンシフト方向に変化)すると機関回転数が減少方向に補正され、逆に、検出したCVT変速比が減少(アップシフト方向に変化)すると機関回転数が増加方向に補正されるというように、CVT変速比の変化による機関回転数の変化を予測して、機関回転数の目標値を変化させる補正が行われることになる。
【0037】よって、クリープ走行制御中、IVT変速パラメータの変化による機関回転数の変化があっても、この機関回転数の変化に先行して機関回転数の目標値が補正されることで、IVT変速パラメータの変化に対しフィードバック制御量が小さく抑えられたアイドル回転数制御が行われることになり、2つのフィードバック制御系の干渉を高レベルで抑制できる。
【0038】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)この実施の形態1は、請求項1,2,3,5,6,7,8項に対応するものであり、所定の目標車速を実現するようにクリープ制御を行う場合の例である。
【0039】まず、構成を説明すると、図2は実施の形態1における変速比無限大無段変速機を示す全体構成図で、エンジンに連結されるIVT入力軸1と駆動輪に連結されるIVT出力軸2との間に、ハーフトロイダルで構成されたダブルキャビティ式のトロイダル型無段変速機構4(無段変速機構:CVT)と、一定変速機5(一定減速機)と、シングルプラネタリ型の遊星歯車機構6が配置されている。なお、前記IVT出力軸2と駆動輪との間にはディファレンシャル3が介装されている。
【0040】前記トロイダル型無段変速機構4は、入力軸1に連結される2組の入力ディスク41,41と、出力ベルト機構42に連結される2組の出力ディスク43,43と、入出力ディスク41,43の間に挟持される各2個のパワーローラ44,44を有して構成されている。このパワーローラ44,44は、それぞれがトラニオン45,45(図3参照)に支持されていて、このトラニオン45,45を傾転軸方向に僅かに変位させることでパワーローラ44,44に傾転力を与え、制御指令に応じた傾転角となるまで傾転させることにより、パワーローラ44,44の傾転角により決まるCVT変速比を無段階に変化させる。
【0041】前記一定変速機5は、IVT入力軸1に固定された入力ギア51と、これに噛み合うと共にIVT出力軸2上に回転可能に支持された出力ギア52による減速ギア機構により構成されている。
【0042】前記遊星歯車機構6は、IVT出力軸2上に回転可能に支持されたサンギア61と、ピニオンを支持するピニオンキャリア62と、IVT出力軸2に固定されたリングギア63により構成されている。
【0043】前記遊星歯車機構6のピニオンキャリア62と一定変速機5の出力ギア52との間に動力循環モードクラッチ8(第1の断続機構)が配置され、前記トロイダル型無段変速機構4の出力ベルト機構42とIVT出力軸2との間にCVT直結モードクラッチ9(第2の断続機構)が配置されている。前記CVT直結モードクラッチ9の締結力は、第1油圧サーボ91へ第1ソレノイドバルブ92から供給される油圧で決まり、前記動力循環モードクラッチ8の締結力は第2油圧サーボ93へ第2ソレノイドバルブ94から供給される油圧で決まる。
【0044】前記一定変速機5の入力ギア51の歯部に近接する位置にはCVT入力回転センサ10が配置され、前記トロイダル型無段変速機構4の出力ベルト機構42に近接する位置にはCVT出力回転センサ11が配置され、前記IVT出力軸2に設けられたセンサ歯車13の歯部に近接する位置には出力回転センサ12(車速センサ)が配置されている。
【0045】図3はIVTの変速を管理する油圧系の機械的構成図である。パワーローラ44はトラニオン45で背面から支えられている。トロイダル型無段変速機構4での変速は、トラニオン45を平衡点から上下に変位させることにより行い、この変位によりパワーローラ44と入出力ディスク41,43の回転方向ベクトルに差異が発生してパワーローラ44は傾転する。
【0046】前記トラニオン45は、油圧サーボ30のサーボピストン31とつながっており、油圧サーボ30のHi側シリンダ30a内の油とLow側シリンダ30b内の油の差圧で変位する。Hi側シリンダ30aの油圧とLow側シリンダ30bの油圧はシフトコントロールバルブ46で制御する。
【0047】前記シフトコントロールバルブ46は、バルブ内のスプール46Sが変位することにより、ライン圧ポート46Lから供給される油をHi側ポート46Hi又はLow側ポート46Loの一方に流し、他方のLow側ポート46Lo又はHi側ポート46Hiからドレーンポート46Lへ油を流出させることで油圧サーボ30内の差圧を変化させる。
【0048】また、前記トラニオン45の一つには、プリセスカム35が取り付けられており、プリセスカム35には溝が切ってある。プリセスカム35の溝はLリンク38の片端に接しており、Lリンク38の片端はIリンク37の片端に自由支持されている。そのためトラニオン45の変位と傾転角がIリンク37にフィードバックされる。Iリンク37のもう片端はステップモータ36につながっており、先ほどのシフトコントロールバルブ46のスプール46SはIリンク37上に自由支持されている。従って、ステップモータ36の変位とプリセスカム35からのフィードバックとからスプール46Sの変位は決まる。
【0049】図4はIVT電子制御系を示す図で、入力情報に基づいて制御指令を出力するIVTコントローラ20と、前記パワーローラ44を支持するトラニオン45を動作させる変速制御アクチュエータとしてのステップモータ36と、前記動力循環モードクラッチ8の締結と解放の制御アクチュエータであるロークラッチソレノイド21と、前記CVT直結モードクラッチ9の締結と解放の制御アクチュエータであるハイクラッチソレノイド22を備えている。
【0050】前記IVTコントローラ20には、図外のインヒビタースイッチからのレンジ信号と、前記CVT入力回転センサ10からのCVT入力回転信号と、前記CVT出力回転センサ11からのCVT出力回転信号と、前記出力回転センサ12からの出力軸回転(車速)信号と、図外のスロットル開度センサからのスロットル開度信号と、図外のアイドルスイッチからのアイドルSW信号と、図外のブレーキスイッチからのブレーキSW信号と、油温センサ24からの油温センサ信号と、その他の信号と、エンジン制御コントローラ25からの目標アイドル回転数とアイドル制御中フラグの情報が入力される。
【0051】前記IVTコントローラ20では、動力循環モードクラッチ8の締結によりIVT変速比が無限大のGNPを含んで動力を伝達する動力循環モードと、CVT直結モードクラッチ9の締結によりトロイダル型無段変速機構4の出力に応じて動力を伝達するCVT直結モード(=動力直結モード)とを、IVT変速比が一致する回転同期点(RSP;モード切換点ともいう)等で切り換えるクラッチ切換制御が行われ、その演算処理結果に基づき第2ソレノイドバルブ94のロークラッチソレノイド21と第1ソレノイドバルブ92のハイクラッチソレノイド22に対して制御指令が出力される。また、目標IVT入力回転数と検出される出力回転数(実IVT出力回転数)により目標IVT変速比を決め、それを実現するようにトロイダル型無段変速機構4の変速比を制御する変速比制御が行われ、演算処理結果に基づき、ステップモータ36に対して制御指令が出力される。
【0052】次に、図5に示すIVT変速比特性(縦軸を1/IVT変速比=出力軸回転数/入力軸回転数とし、横軸をCVT変速比とする。)について説明する。動力循環モードの場合、遊星歯車機構6のピニオンキャリア62は動力循環モードクラッチ8の締結によりIVT入力回転数が一定変速機5により減速された一定回転数で回り、サンギア61はCVT変速比の変化に応じて回転数が変わり、リングギア63の回転は変速比無限大無段変速機の出力軸回転となる。よって、CVT変速比がハイからローへ変化するのに応じて、IVTの出力軸回転は、後退→中立→前進となる。また、CVT直結モードの場合、遊星歯車機構6のピニオンキャリア62は動力循環モードクラッチ8の解放により自由に回転でき、リングギア63はCVT直結モードクラッチ9の締結によりサンギア61と結合し、同一の回転数で回転する。よって、CVT変速比がローからハイへ変化するのに応じて、IVT変速比は、前進方向のロー→ハイとなる。以上により、CVT変速比と1/IVT変速比の関係は、図5に示すようになる。
【0053】次に、作用を説明する。
【0054】[クリープ制御処理]図6〜図9はIVTコントローラ20で行われるクリープ制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、基本的には所定時間毎(例えば10msec)に演算が行われるものとする。
【0055】図6はアイドル回転数フィードバック制御実行判定処理を示すフローチャートである(アイドル回転数フィードバック制御実行判定手段)。
【0056】図6において、ステップ801では、アクセル踏み込み量APOを検出し、ステップ802では、検出したアクセル踏み込み量APOが0かどうかを判断し、0でない場合はステップ809へ進み、APO=0と判断したときはステップ803へ進む(ドライバ運転操作検出手段)。
【0057】ステップ803では、機関回転数Neを検出する(機関回転数検出手段)。
【0058】続くステップ804では、アイドル回転数制御の基本目標値NSET0を読み込み、ステップ805では、検出した機関回転数Neが基本目標値NSET0に所定値αを加えた値より小さいかどうかを判断する。ここで、αはアイドル回転数制御を行う機関回転数の範囲で示す定数で、例えば150(rpm)などの値である。ステップ804でNOの場合はステップ809へ進み、YESの場合はステップ806へ進む。
【0059】ステップ806では、車速VSPを検出し(運転状態検出手段)、ステップ807では、検出した車速VSPがアイドル回転数制御を行う上限車速VSP_ISCより小さいかどうかを判断し、NOの場合はステップ809へ進み、YESの場合はステップ808へ進む。
【0060】ステップ808では、アイドル回転数フィードバック制御の実行を判断するフラグISCFB=1(実行)とし、本制御を終了する。
【0061】ステップ809では、アイドル回転数フィードバック制御の実行を判断するフラグISCFB=0(不実行)とし、本制御を終了する。
【0062】図7はクリープ走行制御実行判定処理を示すフローチャートである(クリープ走行制御実行判定手段)。
【0063】図7において、ステップ901では、アイドル回転数フィードバック制御の実行を判断するフラグISCFBが1かどうかを判断し、ISCFB≠1と判断したときはステップ905へ進み、ISCFB=1と判断したときはステップ902へ進む。
【0064】ステップ902では、ドライバのブレーキ操作に基づくブレーキスイッチBRKSWを検出し、ステップ903では、検出したBRKSWが0かどうかを判断する(ドライバ運転操作検出手段)。BRKSW=0のときはステップ904へ進み、BRKSW≠0と判断したときはステップ906へ進む。
【0065】ステップ904では、クリープ走行制御の実行を判断するフラグCRPFLGを1とし、終了する。また、ステップ905では、クリープ走行制御の実行を判断するフラグCRPFLGを0とし、終了する。
【0066】ステップ906では、車速VSPを検出し、ステップ907では、検出した車速VSPがクリープ走行を行う下限の車速VSP_CRPより小さいかどうかを判断する(運転状態検出手段)。VSP≧VSP_CRPと判断したときはステップ904へ進み、VSP<VSP_CRPと判断したときはステップ908へ進む。
【0067】ステップ908では、クリープ走行制御の実行を判断するフラグCRPFLGを2(GNP停止状態)とし、終了する。
【0068】図8はアイドル回転数フィードバック制御処理を示すフローチャートであり、図8において、ステップ1001では、アイドル回転数制御の基本目標値NSET0を読み込む。
【0069】ステップ1002では、クリープ走行制御の実行を判断するフラグCRPFLG=1かどうかを判断し、CRPFLG=1のときはステップ1003へ進み、CRPFLG≠1と判断したときには、ステップ1010へ進む。
【0070】ステップ1003では、機関回転数Neを検出し、ステップ1004では、アイドル回転数目標値演算で用いる機関回転数フィードバック量を演算するためのゲインの基本値(L0)を演算する。このL0は、固定値でも良いし、車速VSPから求まるテーブル値としても良い。
【0071】ステップ1005では、変速パラメータ(CVT変速比G)を読み込み、ステップ1006では、ステップ1004で演算したL0を関数g(G)を用いて補正してフィードバックゲインLを演算する。ここで関数g(G)は、Gが増加傾向の時・・・g()は減少傾向Gが減少傾向の時・・・g()は増加傾向となるような関数である。
【0072】ステップ1007では、フィードバックゲインLと機関回転数Neを用いてフィードバック量FB_ISCを演算する(機関回転数補正手段)。
【0073】ステップ1008では、ステップ1001で読み込んだアイドル回転数制御の基本目標値NSET0とFB_ISCから補正後のアイドル回転数目標値NSETを演算する(アイドル回転数目標値演算手段)。
【0074】ステップ1009では、演算したアイドル回転数目標値NSETを所定のRAMにセットし、終了する。
【0075】ステップ1010では、CRPFLG=2であるかどうかを判断し、CRPFLG=2と判断したときは、車両はGNPで停止する状態であるため、ステップ1011でアイドル回転数目標値NSETを基本目標値NSET0とし、ステップ1009で演算したNSETを所定のRAMにセットし、終了する。
【0076】また、ステップ1010でCRPFLG≠2と判断したときは、クリープ走行やGNP停止状態ではないため、何もせずに終了する。この場合は、車両はアイドル回転数フィードバック制御を行っていない走行状態であるため、エンジン回転数は目標値に制御されるものではなく、ドライバのアクセル操作やIVTの変速比に基づいて結果的に決まる値となる。また、本フローチャートで所定のRAMにセットしたアイドル回転数目標値NSETを達成するためのアイドル回転数制御手段はここに示していないが、別のルーチンで実行されるものとする。
【0077】図9はIVT変速フィードバック制御処理を示すフローチャートであり、図9において、ステップ1101では、クリープ走行制御の実行を判断するフラグCRPFLG=1かどうかを判断し、CRPFLG=1であると判断したときは、ステップ1102へ進み、CRPFLG≠1と判断したときは、ステップ1111へ進む。
【0078】ステップ1102では、変速パラメータ(CVT変速比G)を読み込み、ステップ1103では、IVT変速目標値演算で用いるIVT変速パラメータフィードバック量を演算するためのゲインの基本値K0を演算する。
【0079】ステップ1104では、機関回転数Neを検出し、ステップ1105では、ステップ1103で演算したゲイン基本値K0を関数f(Ne)を用いて補正してフィードバックゲインKを演算する。ここで関数f(Ne)は、Neが増加傾向の時・・・f()は減少傾向Neが減少傾向の時・・・f()は増加傾向Neの2階微分値が増加傾向の時・・・f()は増加傾向Neの2階微分値が減少傾向の時・・・f()は減少傾向となるような関数である。
【0080】ステップ1106では、フィードバックゲインKとCVT変速比Gを用いて変速比フィードバック量FB_IVTを演算する(IVT変速パラメータ補正手段)。
【0081】ステップ1107では、目標クリープ車速tVSP_CRPを算出し、ステップ1108では、実車速VSPを検出し、ステップ1109では、目標クリープ車速tVSP_CRP,実車速VSP,機関回転数Neと変速比フィードバック量FB_IVT,CVT変速比Gから目標CVT変速比tGを演算する。
【0082】ステップ1110では、演算した目標CVT変速比tGを所定のRAMにセットし、終了する。
【0083】ここで、ステップ1109での演算の1例としては、【式1】

なる演算があげられる。ここで、a,a,b,bは定数である。
【0084】ステップ1101でCRPFLG=1でないと判断した場合にはステップ1111へ進み、ステップ1111では、CRPFLG=2であるかどうかを判断し、CRPFLG=2と判断した場合には、車両はGNPで停止する状態であるため、ステップ1112で目標CVT変速比tGにGNPに達成する変速比Ggnpを代入し、ステップ1110で演算したtGを所定のRAMにセットし、本制御を終了する。
【0085】ステップ1111でCRPFLG≠2と判断したときは、クリープ走行やGNP停止状態ではないため、何もせずに終了する。この場合は、車両はクリープ走行制御を行っていない通常の走行状態であるため、IVTの目標変速比は、車速やアクセル踏み込み量に基づいて別のルーチンで算出されるものとする。また、本フローチャートで所定のRAMにセットしたIVT変速目標値tGを達成するためのIVT変速制御手段はここに示していないが、別のルーチンにより実行されるものとする。
【0086】[クリープ制御作用]IVTを備えた車両では、動力循環モードクラッチ8を締結し、CVT直結モードクラッチ9を解放したいわゆる「動力循環モード」で、CVT変速比をある所定値に制御することにより、変速比とエンジンを直結した状態で車両を停止することができるという特長を持つ。この点を「ギアード・ニュートラル・ポイント:GNP」と呼ぶ。IVTでは、GNPを実現できるためにトルクコンバータの機械的な特性により実現できていた「クリープ走行」を行うためには、IVTの変速比(或いは速度比=1/IVT変速比、或いはCVT部の変速比)を積極的に制御する必要性が生じてくる。ここで、IVTはトルクコンバータがないため、従来のトルクコンバータ付きの車両と比較して低車速での車両の運動を高精度に制御することが可能であり、この特長を生かすためにはクリープ走行制御中にフィードバック制御を行い、走行環境の変化(路面状態、勾配等)や、車重の変化によらず所望の特性を実現することが効果的である。
【0087】しかし、クリープ走行状態というのは、ドライバがアクセルペダルから足を離している状態であり、エンジンは一般的に「アイドル回転数制御」と呼ばれる回転数フィードバック制御を行っている。
【0088】いま、所望の特性のクリープ走行を実現するためにフィードバックによるIVT変速制御を単純に付加すると、2つのフィードバック制御系が干渉を生じる場合があり、場合によっては、図10に示すように、大きく振動してしまうことがある。これは、ブレーキOFF時にクリープトルクを得るためにIVT変速フィードバック制御側でIVT変速比をアップシフト方向に制御すると、アップシフトに伴いエンジン回転数が低下する。一方、アイドル回転数制御側ではエンジン回転数が低下したのに伴いこれを目標回転数まで引き上げる制御が行われる。このエンジン回転数の上昇によりIVT変速比がダウンシフト方向となり、目標変速比より小さくなるため、IVT変速フィードバック制御側ではさらにアップシフト方向へのフィードバック制御が行われる。このように2つのフィードバック制御系で目標値と実際値との偏差を無くすフィードバック制御動作が繰り返されることになり、結果的に、図10に示すように、エンジン回転数もIVT速度比も車速も時間の経過に従い振幅を増すような振動的特性となってしまう。
【0089】これに対し、IVTの変速目標値演算で用いるIVT変速パラメータ補正量をエンジン回転数に基づいて補正するか、或いは、IVTの変速目標値演算で用いるIVT変速パラメータ補正量をエンジン回転数に基づいて補正しつつエンジンのアイドル回転数目標値演算で用いる機関回転数補正値をIVT変速比(或いは速度比、或いはCVT部の変速比)で補正することにより、2つのフィードバック制御系の干渉を抑制することが可能である。このうち、後者を採用したのがこの実施の形態1であり、これにより、図11に示すように、発進開始時にはクリープトルクを得るIVT変速比制御とアイドル回転数制御の干渉により多少は振動的になるものの、時間の経過と共に、エンジン回転数もIVT速度比もそれぞれの目標値に収束する補正効果が発揮され、所定の目標値(ここでは車速)に実応答が収束するクリープ走行制御を実現することができる。
【0090】なお、本実施の形態1では請求項2に対応して、図8,図9によって、IVT変速パラメータに基づく機関回転数フィードバックゲインの補正と、機関回転数に基づくIVT変速パラメータフィードバックゲインの補正の両者を行うものとしたが、これは図9(機関回転数に基づくIVT変速パラメータフィードバックゲインの補正)のみを行う構成としても良い。
【0091】(実施の形態2)次に、実施の形態2について説明する。この実施の形態2は、請求項1,2,3,4,6,7,8項に対応するものであり、所定の目標駆動トルクを実現するようにクリープ制御を実現する場合である。
【0092】図6から図8は実施の形態1と同様とし、図9の代わりに図12を用いる。また、図12中のステップ1201からステップ1206とステップ1211,ステップ1212は図9と同様なので説明を省略する。
【0093】ステップ1207では、目標クリープ駆動トルクtTd_CRPを算出し、ステップ1208では、トルクセンサを用いて実駆動トルクTdを検出する。
【0094】ステップ1209では、目標クリープ駆動トルクtTd_CRP,実駆動トルクTd,機関回転数Neと変速比フィードバック量FB_IVT,CVT変速比Gから目標CVT変速比tGを演算し、ステップ1210では、ステップ1209で演算した目標CVT変速比tGを所定のRAMにセットし、本制御を終了する。ここで、演算の一例としては、【式2】

なる演算が挙げられる。ここで、C,Cは定数である。
【0095】なお、本実施の形態2では、実駆動トルクをトルクセンサで検出する構成としたが、これは推定値でもよく、具体的には図3のHi側シリンダ油圧30aとLow側シリンダ油圧30bの差圧を検出して、その検出値から推定するものとしても良い。ここで、本フローチャートで所定のRAMにセットしたIVT変速目標値tGを達成するためのIVT変速制御手段はここに示していないが、別のルーチンで実行されるものとする。
【0096】効果的には、実施の形態1と同様に、2つのフィードバック制御系の干渉を制御することが可能であり、これにより所定の目標値(ここでは駆動トルク)を実現するクリープ走行制御を実現することができる。
【0097】なお、実施の形態1と同様に、本実施の形態2においても請求項2に対応して、図8,図12によってIVT変速パラメータに基づく機関回転数フィードバックゲインの補正と、機関回転数に基づくIVT変速パラメータフィードバックゲインの補正の両者を行うものとしたが、これは図12(機関回転数に基づくIVT変速パラメータフィードバックゲインの補正)のみを行う構成としても良い。
【0098】また、実施の形態1,2とも、検出する変速パラメータ、変速制御の目標値ともCVT変速比Gとしたが、これはIVT速度比としても良いし、それらを混在して用いても良い。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成12年7月28日(2000.7.28)
【代理人】 【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟 (外1名)
【公開番号】 特開2002−36916(P2002−36916A)
【公開日】 平成14年2月6日(2002.2.6)
【出願番号】 特願2000−228591(P2000−228591)