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【発明の名称】 車両用蒸気圧縮式冷凍サイクル
【発明者】 【氏名】岩波 重樹

【氏名】宇野 慶一

【氏名】松野 孝充

【要約】 【課題】エンジンから動力を得る圧縮機を有する空調装置を備える車両において、ドライバビリティを十分に向上させる。

【解決手段】電磁クラッチをOFFとする第1しきい値Θを車速に応じて定常スロットル開度曲線Loと略相似形状を有する動力カット曲線L1に沿って変化さる。これにより、ドライバビリティを十分に向上させることができる。なお、定常スロットル開度曲線Loとは、無風状態で、かつ、平坦な道路を走行する際の車速とスロットル開度(エンジン負荷)との関係を示すものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両走行用の駆動源(E/G)から動力を得て冷媒を吸入圧縮する圧縮機(100)を有する車両用蒸気圧縮式冷凍サイクルであって、前記駆動源(E/G)の負荷を検出する負荷検出手段(505)と、車両速度を検出する車速検出手段(506)と、前記負荷検出手段(505)の検出値が所定の第1しきい値(Θ)以上となったときに、前記圧縮機(100)の消費動力を低減させる消費動力低減手段(110)とを備え、前記第1しきい値(Θ)は、車両速度に対する前記第1しきい値(Θ)の増加率が車両速度が大きくなるほど大きくなるように選定されることを特徴とする車両用蒸気圧縮式冷凍サイクル。
【請求項2】 車両走行用の駆動源(E/G)から動力を得て冷媒を吸入圧縮する圧縮機(100)を有する車両用蒸気圧縮式冷凍サイクルであって、前記駆動源(E/G)の負荷を検出する負荷検出手段(505)と、車両速度を検出する車速検出手段(506)と、前記負荷検出手段(505)の検出値が所定の第1しきい値(Θ)以上となったときに、前記圧縮機(100)の消費動力を低減させる消費動力低減手段(110)とを備え、前記第1しきい値(Θ)は、車両速度によって決定される前記駆動源(E/G)の負荷に所定数を乗じた値に略等しくなるように、前記車速検出手段(506)により検出された車両速度に基づいて選定されることを特徴とする車両用蒸気圧縮式冷凍サイクル。
【請求項3】 車両走行用の駆動源(E/G)から動力を得て冷媒を吸入圧縮する圧縮機(100)を有する車両用蒸気圧縮式冷凍サイクルであって、前記駆動源(E/G)の負荷を検出する負荷検出手段(505)と、車両速度を検出する車速検出手段(506)と、前記負荷検出手段(505)の検出値が所定の第1しきい値(Θ)以上となったときに、前記圧縮機(100)の消費動力を低減させる消費動力低減手段(110)とを備え、前記第1しきい値(Θ)は、前記第1しきい値(Θ)と車両速度との関係が二次関数にて近似されるように、前記車速検出手段(506)により検出された車両速度が大きくなるほど大きくなるように選定されることを特徴とする車両用蒸気圧縮式冷凍サイクル。
【請求項4】 前記負荷検出手段(505)の検出値が、前記第1しきい値(Θ)より小さい所定の第2しきい値(θ)以下となったときに、前記消費動力低減手段(110)を停止させる動力復帰手段(S160)を有しており、さらに、前記第2しきい値(θ)は、前記第1しきい値(Θ)と前記第2しきい値(θ)との差(Δθ)が前記車速検出手段(506)により検出された車両速度が大きくなるほど大きくなるように選定されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用蒸気圧縮式冷凍サイクル。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両走行用の駆動源(エンジン)から動力を得て冷媒を吸入圧縮する圧縮機を有する車両用蒸気圧縮式冷凍サイクルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両用蒸気圧縮式冷凍サイクル(以下、冷凍サイクルと略す。)を用いた車両用空調装置では、一般的に、電磁クラッチ等の動力を断続可能に伝達する動力伝達手段を介して走行用のエンジンが発揮する動力の一部を圧縮機に供給している。
【0003】このため、比較的排気量の小さなエンジンでは、加速時や登坂時等のエンジン負荷が大きくなるときには、走行用駆動力が不足するので、十分な加速感を得ることができず、ドライバビリティ(アクセルペダルの操作量に対する車両速度の変化)が悪化してしまう。
【0004】そこで、例えば特公平3−58927号公報に記載の発明では、スロットル開度から加速時や登坂時等の加速状態を判定し、スロットル開度が所定のしきい値を超えたときに、電磁クラッチをOFFとしてエンジンから圧縮機への動力の伝達を遮断している。
【0005】このとき、上記公報に記載の発明では、通常走行速度(時速15km以上)においては、上記のしきい値を車両速度に対して線形変化させている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、発明者等は、ドライバビリティを向上させるべく、上記公報に記載の発明も含めて種々の冷凍サイクルについて検討したが、ドライバビリティを十分に向上させることが困難であった。
【0007】なお、ドライバビリティを十分に向上させる手段として、発明者等は、車両速度によらず、現在のスロットル開度(以下、このスロットル開度を原開度と呼ぶ。)から原開度の数パーセント以上大きくなったときに、車両が加速状態に移行したものと見なして電磁クラッチをOFFするものを試作検討したが、車両のスロットル開度は、車両が一定速度で走行しているときであっても変化するので、上記試作検討品では、電磁クラッチが頻繁にON−OFFを繰り返すため、却って、ドライバビリティが悪化してしまった。
【0008】本発明は、上記点に鑑み、ドライバビリティを十分に向上させることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、車両走行用の駆動源(E/G)から動力を得て冷媒を吸入圧縮する圧縮機(100)を有する車両用蒸気圧縮式冷凍サイクルであって、駆動源(E/G)の負荷を検出する負荷検出手段(505)と、車両速度を検出する車速検出手段(506)と、負荷検出手段(505)の検出値が所定の第1しきい値(Θ)以上となったときに、圧縮機(100)の消費動力を低減させる消費動力低減手段(110)とを備え、第1しきい値(Θ)は、車両速度に対する第1しきい値(Θ)の増加率が車両速度が大きくなるほど大きくなるように選定されることを特徴とする。
【0010】これにより、ドライバビリティを十分に向上させることが可能となる。
【0011】請求項2に記載の発明では、車両走行用の駆動源(E/G)から動力を得て冷媒を吸入圧縮する圧縮機(100)を有する車両用蒸気圧縮式冷凍サイクルであって、駆動源(E/G)の負荷を検出する負荷検出手段(505)と、車両速度を検出する車速検出手段(506)と、負荷検出手段(505)の検出値が所定の第1しきい値(Θ)以上となったときに、圧縮機(100)の消費動力を低減させる消費動力低減手段(110)とを備え、第1しきい値(Θ)は、車両速度によって決定される駆動源(E/G)の負荷に所定数を乗じた値に略等しくなるように、車速検出手段(506)により検出された車両速度に基づいて選定されることを特徴とする。
【0012】これにより、ドライバビリティを十分に向上させることが可能となる。
【0013】請求項3に記載の発明では、車両走行用の駆動源(E/G)から動力を得て冷媒を吸入圧縮する圧縮機(100)を有する車両用蒸気圧縮式冷凍サイクルであって、駆動源(E/G)の負荷を検出する負荷検出手段(505)と、車両速度を検出する車速検出手段(506)と、負荷検出手段(505)の検出値が所定の第1しきい値(Θ)以上となったときに、圧縮機(100)の消費動力を低減させる消費動力低減手段(110)とを備え、第1しきい値(Θ)は、第1しきい値(Θ)と車両速度との関係が二次関数にて近似されるように、車速検出手段(506)により検出された車両速度が大きくなるほど大きくなるように選定されることを特徴とする。
【0014】これにより、ドライバビリティを十分に向上させることが可能となる。
【0015】請求項4に記載の発明では、負荷検出手段(505)の検出値が、第1しきい値(Θ)より小さい所定の第2しきい値(θ)以下となったときに、消費動力低減手段(110)を停止させる動力復帰手段(S160)を有しており、第2しきい値(θ)は、第1しきい値(Θ)と第2しきい値(θ)との差(Δθ)が車速検出手段(506)により検出された車両速度が大きくなるほど大きくなるように選定されることを特徴とする。
【0016】これにより、ドライバビリティを損なうことなく、圧縮機(100)の消費津力を復帰することができる。
【0017】因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0018】
【発明の実施の形態】本実施形態は、本発明に係る冷凍サイクルを車両用空調装置に適用したものであって、図1は本実施形態に係る冷凍サイクルRcの模式図である。
【0019】図1中、100は走行用のエンジン(駆動源)200から動力を得て冷媒を吸入圧縮する圧縮機であり、110はエンジンE/Gが発揮する動力の一部を圧縮機100に断続可能に伝達する電磁クラッチ(動力伝達手段)である。なお、120は、エンジンE/Gから圧縮機100に動力を伝達するVベルトである。
【0020】200は圧縮機100から吐出した冷媒と外気とで熱交換して冷媒を凝縮(冷却)する凝縮器(放熱器)であり、300は凝縮器200から流出した冷媒を減圧する減圧器であり、400は減圧器300にて減圧された冷媒と室内に吹き出す空気とを熱交換して冷媒を蒸発させることにより室内に吹き出す空気を冷却する蒸発器である。
【0021】なお、本実施形態では、減圧器300として圧縮機100に吸入される冷媒の加熱度が所定値となるように開度が調節される温度式膨張弁を採用している。
【0022】また、501は室内空気の温度を検出する室温センサ(内気温度検出手段)であり、502は室外空気の温度を検出する外気温センサ(外気温度検出手段)であり、503は蒸発器300を通過した直後の空気温度(蒸発器300温度)を検出する蒸発温度センサ(蒸発温度検出手段)であり、504は乗員が希望する室内温度を手動操作により設定する温度設定パネル(温度設定手段)である。
【0023】505は、エンジンE/Gに吸入空気を供給する吸気管に配設された吸気絞り用のスロットルバルブの開度を検出することによりエンジンE/Gの負荷を検出するポテンショメータ(負荷検出手段)であり、506は車両速度を検出する車速センサ(車速検出手段)である。
【0024】そして、各センサ501〜503の検出温度、温度設定パネル504の設定値、ポテンショメータ505が検出したスロットル開度、及び車速センサ506が検出した車速は、電子制御装置(ECU)500に入力されており、ECU500はこれら入力値に基づいて予め設定されたプログラムに従って電磁クラッチ110、エアミックスドア(図示せず。)、空調用送風機及び吹出モードドア(図示せず。)等の空調制御手段を制御する。
【0025】次に、本実施形態に係る特徴的作動を述べる。
【0026】図2は本実施形態に係る特徴的作動を示すフローチャートであり、空調装置の始動と同時に、各センサ501〜503の検出温度、温度設定パネル504の設定値、ポテンショメータ505が検出したスロットル開度、及び車速センサ506が検出した車速がECU500に読み込まれる(S100)。
【0027】そして、図3の実線L1に示すマップから検出した車速に対応するスロットル開度(以下、このスロットル開度を第1しきい値Θと呼ぶ。)を演算するとともに、検出したスロットル開度が第1しきい値Θ以上であるか否かを判定し(S110)、検出したスロットル開度が第1しきい値Θ未満のときには、通常空調制御モードを実行する(S120)。
【0028】ここで、通常空調制御モードとは、センサ501〜503の検出温度及び温度設定パネル504の設定値に基づいてエアミックスドア、空調用送風機及び吹出モードドア等の空調制御手段を制御することを言う。
【0029】一方、S110にて検出したスロットル開度が第1しきい値Θ以上であると判定されたときには、電磁クラッチ110をOFFとしてエンジンE/Gから圧縮機100への動力を供給を停止して圧縮機100で消費する動力を低減(0と)する(S130)。
【0030】次に、再び、車速及びスロットル開度を検出し(S140)、図3の一転鎖線L2に示すマップから検出した車速に対応するスロットル開度(以下、このスロットル開度を第2しきい値θと呼ぶ。)を演算するとともに、検出したスロットル開度が第2しきい値θ以下であるか否かを判定する(S150)。
【0031】そして、検出したスロットル開度が第2しきい値θより大きい間は、電磁クラッチ110をOFFとして圧縮機100で消費する動力を低減し(0とし)、検出したスロットル開度が第2しきい値θ以上となったときには、電磁クラッチ110をONとして圧縮機100を稼働(状態を復帰)させる(S160)。
【0032】次に、図3に示すマップについて説明する。
【0033】図3の破線は無風状態で、かつ、平坦な道路を走行する際の車速とスロットル開度(エンジン負荷)との関係を示すグラフ(以下、定常スロットル開度曲線Loと呼ぶ。)を示すものであり、車速が上昇すると、空気抵抗や摩擦抵抗等が増大していくため、車速の増加に対してスロットル開度(エンジン負荷)が二次関数的に増大していく。
【0034】そこで、第1しきい値Θと車速との関係を示す実線L1(以下、動力カット曲線L1と呼ぶ。)の形状を、定常スロットル開度曲線Loの形状と略相似形状とするとともに、動力カット曲線L1により決定されるスロットル開度(第1しきい値Θ)が定常スロットル開度曲線Loにより決定されるスロットル開度より大きくなるように第1しきい値Θを選定している。
【0035】また、第2しきい値θ(図3の曲線L2)は、第1しきい値Θと第2しきい値との差Δθが車速が大きくなるほど大きくなるように選定されている。このため、第2しきい値θと車速との関係を示すグラフ(動力復帰曲線L2)も動力カット曲線L1と同様に、定常スロットル開度曲線Loの形状と略相似形状となるように選定されている。
【0036】次に、本実施形態の特徴を述べる。
【0037】図3の定常スロットル開度曲線Loに示されるように、エンジンE/Gが発揮する動力と車速とは、線形的に変化するものではない。したがって、本実施形態のごとく、第1しきい値Θを車速に応じて定常スロットル開度曲線Loと略相似形状を有する動力カット曲線L1に沿って変化させれば、ドライバビリティを十分に向上させることができる。
【0038】なお、車速はスロットル開度に比べて、その変化が緩慢であるので、「発明が解決しようとする課題」の欄で述べたような電磁クラッチ110が頻繁にON−OFFを繰り返すといったハンチング現象は発生しない。
【0039】また、第2しきい値θは、第1しきい値Θと第2しきい値θとの差Δθが車速が大きくなるほど大きくなるように選定されているので、ドライバビリティを損なうことなく、圧縮機100への動力の供給を復帰することができる。
【0040】(その他の実施形態)上述の実施形態では、動力カット曲線L1の形状を定常スロットル開度曲線Loと略相似形状としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、車速Vに対する第1しきい値Θの増加率(ΔΘ/ΔV)が、車速が大きくなるほど大きくなるように第1しきい値Θを選定してもよい。
【0041】また、車速によって決定されるエンジンE/Gの負荷(定常スロットル開度曲線Loによって決定されるスロットル開度)に所定数を乗じた値に略等しくなるように第1しきい値Θ(動力カット曲線L1)を選定してもよい。
【0042】また、定常スロットル開度曲線Loは二次関数にて近似することができることから、第1しきい値Θと車速との関係(動力カット曲線L1)を二次関数的に変化するように第1しきい値Θ(動力カット曲線L1)を選定してもよい。
【0043】また、上述の実施形態では、エンジン負荷をスロットル開度にて検出したが、エンジン負荷を検出する負荷検出手段は、これに限定されるものではなく、吸気管の吸入負圧やエンジン回転数の変化等により検出してもよい。
【0044】また、車両変速機のギヤポジション毎に第1しきい値Θ及び第2しきい値θを決定するマップ(動力カット曲線L1及び動力復帰曲線L2)を変更してもよい。
【0045】また、上述の実施形態では、第1しきい値Θ及び第2しきい値θを決定するマップ(動力カット曲線L1及び動力復帰曲線L2)は連続した滑らかな曲線であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、図4に示すように、複数本の直線にて近似的に表された曲線であってもよい。
【0046】また、上述の実施形態では、電磁クラッチ110を断続することより、圧縮機100の消費動力を低減する消費動力低減手段を構成したが、電磁クラッチ110に代えて周知の可変容量式の圧縮機を用いて圧縮機100の消費動力を低減(可変)してもよい。
【0047】また、本発明はガソリンエンジンにその適用が限定されるものではなく、ディーゼルエンジン等のその他の駆動源に対しても適用することができる。
【0048】なお、本発明は、車速が0km/hから全域に渡って適用されるものではなく、少なくとも車速が約5km/h以上において適用されるものである(勿論、車速0km/hから適用してもよい)。このため、例えば、車速0km/hから5約5km/h未満においては、図5に示すように、第1しきい値Θを上述の動力カット曲線L1により決定されるスロットル開度より大きくしてもよい。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成12年11月8日(2000.11.8)
【代理人】 【識別番号】100100022
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋二 (外2名)
【公開番号】 特開2002−144859(P2002−144859A)
【公開日】 平成14年5月22日(2002.5.22)
【出願番号】 特願2000−340654(P2000−340654)