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【発明の名称】 塗膜転写具におけるテープ供給リールの逆転防止機構
【発明者】 【氏名】梅山 卓

【要約】 【課題】使用中の雑音の発生が少なく、加工精度の良い形状のラチェット歯を備え、確実に逆転防止を行うことのできる塗膜転写具の供給リール逆転防止機構を提供する。

【解決手段】供給リール41に一体的に形成された係止爪71の爪部75と、それに係合するラチェット161の底面部169を所定の距離離して配置する。また、ラチェット歯162を13度乃至60度のピッチで配置する。さらに、ラチェット歯162の、周方向に伸びる垂直断面の形状を四角形に形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 塗膜転写具のケース内において、塗膜転写テープを巻き回して保持し、回転運動することにより該塗膜転写テープを供給する供給リールに一体的に形成された係止爪と、前記ケースの前記係止爪と対向する内表面上に形成され、前記供給リールの前記回転運動に伴なう前記係止爪の運動の軌跡に対応する円周上に配置され、前記係止爪に係合するラチェットからなり、前記供給リールを前記塗膜転写テープを供給する方向にのみ回転運動可能にし、反対方向の回転運動を阻止する供給リールの逆転防止機構において、前記ラチェットは底面部と該底面部より垂直に伸び、円周方向所定の間隔で設けられた複数のラチェット歯を有し、前記係止爪は、前記ラチェットの方向に伸び前記ラチェット歯に係合する爪部を有し、前記ラチェットの前記底面部に対して前記係止爪の前記爪部が対向する位置にあるとき、前記底面部と前記爪部の先端との間は所定の距離離れていることを特徴とする、供給リールの逆転防止機構。
【請求項2】 請求項1に記載の供給リールの逆転防止機構において、前記ラチェットの前記ラチェット歯は、前記円周上に13度乃至60度のピッチで配置されていることを特徴とする、供給リールの逆転防止機構。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の供給リールの逆転防止機構において、前記ラチェットの前記円周方向に伸びる垂直断面におけるラチェット歯の形状が四角形であることを特徴とする、供給リールの逆転防止機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗膜転写具におけるテープ供給リールの逆転防止機構に関し、さらに詳細に言えば、使用時の騒音の発生が少ないテープ供給リールの逆転防止機構に関する。さらに、本発明は、加工精度の良い形状を持つラチェット歯を備え、確実に逆転防止機能を行うことのできるテープ供給リールの逆転防止機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、例えば書いた文字の修正等を行う際にその部分に修正塗膜を塗布する塗膜転写具が用いられている。
【0003】図1は、従来の塗膜転写具の一例を示し、ケース3のほぼ対称な2つのケースの半部分のうち紙面垂直方向で手前側部分の一部を切り欠いて描いた、塗膜転写具1の側面図を示している。図2は、図1のA−A断面である。塗膜転写具1は、ケース3と、塗膜転写テープ31を供給する供給リール41と、転写ヘッド93と、使用後のテープを巻き取る巻き取りリール101とで大略構成されている。
【0004】図1において、符号41は、供給リール支持軸11に回転可能に嵌合された供給リールである。供給リール41は、供給リール支持軸11に嵌り、支持軸11の肩部15に載置される(図2)円筒状の軸部47を備える。この軸部47は、上側の小径部分49と下側の大径部分51とからなり、この大径部分51の基部から径方向外方へ広がる円形の外周にギア歯57を有した平板部すなわちギア部61が形成されている。供給リール41は、その下側の面43を支持軸11の肩部15に接し、下側の面43とケース側部壁5が、所定の距離を保ち平行になるように配置されている。
【0005】符号33は、塗膜転写テープ31をその外周に巻き回して保持し、供給リール41と共に回転運動をすることによって塗膜転写テープ31を供給する略円筒状に形成されたカラーである。図2において、カラー33は、供給リール41のギア部上側面45に端部を接し、軸部47の大径部51の外周に嵌合している。また、カラー33の内周と軸部47の小径部49の外周の隙間には、Oリング91が圧縮された状態で配置されている。ここで、前述したように、カラー33は回転運動によって塗膜転写テープ31を供給するが、カラー33の回転運動はOリング91との摩擦力により供給リール41に伝達され、カラー33と供給リール41は一体となって回転する。しかし、ある一定以上の抵抗力が供給リール41に作用すると、両者はスリップする。
【0006】符号111は、テープのたるみを取る際に使用する巻き取り用ボタンであり、テープにたるみが生じた場合に、図1におけるU方向と反対の方向に回転させることにより、カラー33をU方向と反対方向に回転させて、テープのたるみを巻き取るために使用される。
【0007】符号93は、ケース3の図1における左側端部に配置され、その先端部95をケース開口部9からケース3の外部に突出して配置された、転写ヘッドである。
【0008】符号101は巻き取りリールである。巻き取りリール101は、ケース側壁5に、それに垂直な方向に伸びて形成された円柱状の巻き取りリール支持軸23に回転可能に嵌合されて配置されている。巻き取りリール101は、ケース側壁5側から順番に、巻き取りリールギア部103、フランジ部105、巻き取り部107の順に、巻き取りリール支持軸23と同軸に形成されている。また、巻き取りリールギア部103は、供給リール41に噛合している。さらに、巻き取り部107の外周にはテープの先端が、適宜な方法により固定されている。
【0009】塗膜転写具1はさらに、供給リール41の逆転を防止する逆転防止機構を備えており、その逆転防止機構は、ケース側壁5に形成されたラチェット131と、供給リール41のギア部61に一体に形成され、ラチェット131に係合する係止爪71とで構成されている。これについては図3を参照して説明する。
【0010】図3(イ)は、ケース3に供給リール41が配置されている様子を図2において供給リール41の軸芯方向上部から見た平面図を示している。図3(ロ)は、図3(イ)のB−B断面端面図を示している。図3(ハ)は、図3(イ)のC−C断面端面図を示している。
【0011】供給リール41の平板部すなわちギア部61は、同一平面内に形成された、中央の内側円環部53と、内側円環部53の外側に、内側円環部53と同芯に形成された外側円環部55とを備えている。内側円環部53と外側円環部55は、内側円環部53の外周から板状で径方向に伸びた円周方向等間隔に設けられた複数のスポーク59により結合されている。外側の円環部55の外周には、ギア歯57が形成されている。そして、1つのスポーク59の供給リール41の中心側から見て左側の側面から、供給リール41の軸部47の軸芯を中心として円弧状に伸びる板状の係止爪71が形成されている。係止爪71は、図3(ハ)に示されるように、ケース側壁5に平行に伸びたアーム73を有し、その先端に爪部75が形成されている。爪部75は、ケース側壁5に垂直な方向に伸びた端面79と、端面79の端部からケース側壁5にほぼ45度をなす角度に形成された斜面77を有している。アーム73は、適度な弾力を持っていて、自由端となっている爪部75は図3(ハ)における上下方向に変位可能である。
【0012】符号131はケース側壁5に、供給リール支持軸11の軸芯を中心にして配置されたラチェットである。ラチェット131は、図3(ハ)に示されるように、ケース側壁5に形成された底部となる平面部137と、円周上に配置された複数のラチェット歯132により構成されている。ラチェット歯132は、底面部137に垂直に伸びた面135と、その垂直面135の端部からほぼ45度をなす角度に形成された斜面133を有している。
【0013】ここで、供給リール41が塗膜転写テープ31を供給する方向である図1におけるU方向に回転すると、図3(ハ)において係止爪71はZ方向に移動する。その際、係止爪の斜面77とラチェット歯の斜面133は接するが、爪部75が図のX方向へ変位するため、係止爪71のZ方向への運動は妨げられず、供給リール41は図1のU方向に回転することができる。
【0014】逆に、供給リール41が、図1のU方向と反対の方向に回転しようとすると、図3(ハ)において係止爪71は、Y方向に移動しようとする。しかし、係止爪端面79がラチェット歯垂直面135に当接し、それ以上、係止爪71は、Y方向へは移動できない。よって、供給リールギア41は、図1のU方向と反対方向には回転することができない。したがって、先述した巻き取り用ボタン111でテープのたるみ取りを行う際には、カラー33のみが逆転し、供給リール41は逆転を防止される。
【0015】尚、以上に示した塗膜転写具1は、手で持って使用するため、扱い易さの点でその大きさが制限され、供給リール41に保持された塗膜転写テープ31の初期状態の半径は、約14mm位のものが多い。
【0016】以上のような機構を持つ塗膜転写具1において、テープ供給リールの逆転防止機構には以下のような問題がある。
【0017】第一の問題点として、使用中の音の問題である。従来の係止爪71は、図3(ハ)に示す状態において、アーム73が僅かに弾性変形してその爪部75の先端81がケース側の底面137に当たっている。すなわち、係止爪71が自由な状態では、図中破線で示した位置81aにその爪部の先端は位置する。塗膜転写具1を使用する際、前述の通り、係止爪71はラチェット131に対して、図3(ハ)においてZの方向に相対運動するが、その際係止爪71の斜面77とラチェット歯の斜面133が接し、爪部75がX方向に変位し1個のラチェット歯132を乗り越える。乗り越えた直後、自由となった爪部75はその変位を元に戻し、爪部の先端部81が底面部137に衝突し音を発生させる。さらに、係止爪71とラチェット131の相対運動がある速度以上になると、爪部の先端部81が次のラチェット歯の斜面133に衝突し音を発生させる。
【0018】第二の問題点として、ラチェット歯132の形状による問題である。すなわちラチェット歯132の先端部81は鋭角状に尖った形をしている。したがって、この先端部81は成形時における精度が出し難く、歯の高さ寸法にばらつきが生じ易い。また、部品としての取り扱い時又は、組み立て時等に損傷し易い。これらが原因して、逆転防止の機能が確実に果たせない場合が生じる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、塗膜転写具1の使用中の雑音の発生が少ない逆転防止機構を提供することをその課題とする。さらに、本発明は、加工精度の良い形状で且つ、取り扱い時又は組み立て時に破損しにくい形状を持つラチェットを備え、確実に逆転防止を行うことのできる逆転防止機構を提供することをその課題とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の発明者は、一般的な塗膜転写具を用いて塗膜転写を行う際の転写速度等を考慮に入れて各種の実験を試みた。その結果、係止爪の爪部先端とラチェットの底面部との間に、隙間を設けることが騒音軽減に有効であること、ラチェット歯の間隔をある範囲に設定することにより、騒音軽減がさらに助長され、その範囲であるならばテープの巻き戻しを行ってもテープが必要以上にたるんで転写ヘッド等から外れる等の問題も生じないことを見出した。また、ラチェット歯の形状を円周方向に伸びる垂直断面での形状を略四角形とすることが加工精度上有効であることをも見出した。本発明は、以上の見知に基きなされたものである。
【0021】すなわち、本発明においては、以下のような構成を持つテープ供給リールの逆転防止機構を提供する。すなわち、塗膜転写具のケース内において、塗膜転写テープを巻き回して保持し、回転運動することにより塗膜転写テープを供給する供給リールに一体的に形成された係止爪と、係止爪と対向するケース内表面上に形成され、供給リールの回転運動に伴なう係止爪の運動の軌跡に対応する円周上に配置され、係止爪に係合するラチェットとからなり、供給リールを塗膜転写テープを供給する方向にのみ回転運動可能し、反対方向の回転運動を阻止する供給リールの逆転防止機構である。ラチェットは底面部と、底面部より垂直に伸び、円周方向所定の間隔で設けられた複数のラチェット歯を有している。係止爪は、ラチェットの方向に伸びラチェット歯に係合する爪部を有している。ラチェットの底面部に対して係止爪の爪部が対向する位置にあるとき、底面部と爪部の先端との間は所定の距離離れている。また、ラチェット歯は、円周上に13度乃至60度のピッチで配置されている。さらに、ラチェットの円周方向に伸びる垂直断面におけるラチェット歯の形状は四角形である。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を説明するが、本発明の範囲は、以下に説明される実施の形態に限定されるものではない。
【0023】尚、本発明の実施の形態における逆転防止機構が採用される塗膜転写具と、従来の技術において説明した塗膜転写具1とは、供給リール41の逆転防止機構をなすラチェットの形状以外は、各構成要素の形状及び機能は同等のものでよい。
【0024】図4(イ)は、本発明の実施の形態に係る逆転防止機構のラチェット歯151の平面図である。図4(ロ)は、図4(イ)のD−D断面図に供給リール41に一体的に形成された係止爪71が配置されている様子を示している。
【0025】符号151は、ラチェットであり、供給リール41に形成された係止爪71に係合して、供給リール41を図1におけるU方向にのみ回転可能にし、反対方向の回転運動を阻止する逆転防止機構をなしている。ラチェット151は、図4(イ)に示されるように、ケース側壁5の内面側に形成され、底面部159と、ラチェット歯152とが所定の間隔で交互に円状に形成されている。本実施の形態では、ラチェット歯152は60度のピッチで6個形成されているが、ピッチは13度乃至60度とする。
【0026】ラチェット歯152の、中心から見た断面あるいは円周方向に伸びる垂直断面での形状は、図4(ロ)に示されるように、底面部159に垂直な面153と、底面部159にほぼ45度の角度をなす斜面155を有している。また係止爪71が底面部159に対向する位置に静止して位置した場合、底面部159は爪先端部81と所定の距離h離れるようになっている。
【0027】使用時、供給リール41は、図1に示されるU方向に回転する。その際、供給リール41の係止爪71はラチェット151に対して、図4(ロ)に示されるZ方向に相対運動する。運動の際に、係止爪71の斜面77が、ラチェット歯152の斜面152に接するが、自由端の端部である爪部75はX方向に変位し、ラチェット歯152を乗り越えることが可能であり、供給リール41の運動を妨げない。爪部75が歯152を乗り越えた直後、係止爪71は爪部75のX方向の変位を元に戻すが、加速度が生じるために初期の位置を通りすぎて底面部159に近づくことになる。しかし、前述の通り、爪先端部81と底面部159は所定の距離h離れているため、爪先端部81は底面部159に衝突することは無い。
【0028】供給リール41が逆転すると、係止爪71は、図4(ロ)においてY方向にラチェット151に対して相対運動する。そして、係止爪の端面79とラチェット歯の垂直面153が当接し、そこで係止爪71の運動は妨げられる。つまり、供給リール41は、それ以上逆転することができない。
【0029】尚、ここでラチェット歯152の配置を最大60度までのピッチとしたのは次の理由による。図1に示される巻き取り用ボタン111を使用した場合、供給リール41は最大ラチェット歯152の1ピッチ分だけ逆転する可能性がある。供給リール41の逆転に伴い、それに噛合している巻き取りリール101も逆転し、巻き取り用ボタン111による巻き取り量より多く巻き取りリール101から繰り戻された場合には、テープ31にさらにたるみが生じ、テープ31が所定の位置から脱線するなどの不具合が発生する可能性が出る。しかし、各種実験を行った結果、供給リール41の60度までの逆転により最大発生しうるたるみであれば、それによる脱線等の不具合が生じないことが確かめられたからである。
【0030】また、ピッチを13度以上としたのは次の理由による。すなわち、転写速度が速かった場合、1つのラチェット歯152を乗り越えて落下する係止爪の爪部75が、次のラチェット歯152の斜面部155に当たって音を発生させる可能性がある。しかしながら、ピッチを13度以上とすると、かなり高速で、例えば1秒間に5cmの長さで転写した場合でも、音の発生がきわめて少ないことが確かめられた。
【0031】以上に、本発明に係る実施の形態における第一の形態として、係止爪71の爪部75と、ラチェットの底面部159を所定の距離h離して配置した形態を述べた。以下に第二の実施の形態としてラチェット歯の断面形状が四角形である形態を述べる。
【0032】図5は、供給リール41の軸芯方向から見た第二の実施の形態における逆転防止機構の、係止爪とラチェット歯161の断面図である。係止爪は第一の実施の形態の係止爪と同等のものであり、対応する部分に同じ符号を付ける。
【0033】符号161は、第二の実施の形態における逆転防止機構のラチェットであり、第一の実施の形態のラチェット151とほぼ同等のものであるが、ラチェット歯の断面形状が次のように異なっている。ラチェット歯162の、周方向に伸びる垂直断面の形状は、図5に示されるように、底面部162に平行な上面163と、底面部169に垂直な垂直面165、167より形成されている。
【0034】使用の際は、係止爪71が図5に示されるZ方向に、ラチェット161に対して相対運動する。その際、係止爪の斜面77が、ラチェット歯の上面163と垂直面167よりなる角に接するが、爪部75が図中X方向に変位し、係止爪71はラチェット歯162を乗り越える。
【0035】供給リール41が逆転した場合は、係止爪71が図5に示される、Y方向にラチェット161に対して相対運動し、係止爪の端面79がラチェット歯の垂直面165に当接し、係止爪71の相対運動が妨げられる。つまり、供給リール41は、それ以上逆転しない。
【0036】
【発明の効果】上記説明から分かるように、本発明によれば、ラチェットの底面部159と係止爪の爪部75を所定の距離離して配置することにより、爪部75がラチェット歯152を乗り越えた後、底面部159に衝突せず雑音の発生が軽減される。
【0037】また、ラチェット歯152を13度乃至60度のピッチで配置することにより、雑音の発生がより軽減される。また、テープのたるみ取りをするために供給リール41の巻き戻しを行っても、テープ31が所定の位置からずれ、巻き取り不良が発生することがない。
【0038】さらに、ラチェット歯162の断面形状を四角形にすることにより、製作時の加工精度が良く、部品としての取り扱い時や組み立て時に損傷し逆転防止機構が不確実になることを防止できる。
【出願人】 【識別番号】000134589
【氏名又は名称】株式会社トンボ鉛筆
【出願日】 平成12年11月8日(2000.11.8)
【代理人】 【識別番号】100064562
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 徹男 (外1名)
【公開番号】 特開2002−144789(P2002−144789A)
【公開日】 平成14年5月22日(2002.5.22)
【出願番号】 特願2000−340294(P2000−340294)