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【発明の名称】 平版印刷用湿し水組成物
【発明者】 【氏名】石川 努

【要約】 【課題】印刷用湿し水であって、各種版材に適合性があり、版材に対応して入れ替えの必要がなく、作業環境にも好適で印刷トラブルの無いものを提供する。

【解決手段】下記の一般式(I)(化1),(II)(化2)及び(III)(化3)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する一般式(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記の一般式(I)(化1),(II)(化2)及び(III)(化3)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする平版印刷用湿し水組成物。
一般式(I)
【化1】

a,b,d,eは炭素数1〜10のアルキレン鎖を表し、これらa,b,d,eはヒドロキシル基で置換されても良く、エーテル結合又は重合度5〜20のポリエチレンオキシドを含んでいてもよい。又、a,b,d,eは夫々同一でも異なっていてもよい。X及びYは水素原子、ヒドロキシル基、カルボキシアルキル基、スルホアルキル基、ヒドロキシアルキル基の何れかを表し、X及びYは同一でも異なっていてもよい。
一般式(II)
【化2】

一般式(III)
【化3】

n=5〜10000の整数一般式(II)及び(III)において、R,R,Rは夫々同じでも異なっていてもよく、水素原子又は下記式(化4)を表す。又、fは炭素数2〜10のアルキレン基を表し、これらアルキレン基はヒドロキシル基で置換されていてもよく、エーテル結合又は重合度5〜30のポリエチレンオキシド基を含んでいてもよい。g,h,iは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、夫々同一でも異なっていてもよい。
【化4】

【請求項2】 2,4,7,9―テトラメチルー5―デシンー4,7―ジオール又はそのエチレンオキシド付加物を含有することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷用湿し水組成物。
【請求項3】 下記の一般式(IV)(化5)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項2に記載の平版印刷用湿し水組成物。
一般式(IV)
【化5】

Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、EOはエチレンオキサイド鎖を、POはポリプロピレンオキサイド鎖を表す。又、m及びnは重合度を表し、m/(m+n)=0.4〜0.7である。
【請求項4】 エチレングリコールモノーtert―ブチルエーテルを含有することを特徴とする請求項2に記載の平版印刷用湿し水組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、平版印刷版のオフセット印刷に用いる湿し水に関するものである。
【0002】
【従来の技術】 平版印刷における印刷版は、その版上に油性インキとの親和性を持つ画像部と、油性のインキとは反撥するが水とは親和性を持つ非画像部を持っている。平版印刷は画像部と非画像部のこのような特性の違いにより、インキ供給ローラーによって版面に与えられたインキは画像部へ、湿し水供給ローラーによって与えられた湿し水は非画像部へ転移されるため、同一平面上での印刷が可能となっている。従って、良い印刷物を得るためには、画像部には充分にインキが乗る反面、非画像部はインキを全く受付けないことが望ましく、そのためには画像部と非画像部の親油性と親水性の差が充分に大きいことが必要である。このため使用する版材や印刷機、印刷方法に応じた種々の不感脂化処理が検討されている。
【0003】一般に平版印刷に使用される印刷版としては、アルミニウムを支持体としたPS版や、銀塩拡散転写法を利用する版材などが知られている。これらの版材は夫々の特徴に応じて、印刷の目的に合わせた使分けが行われている。例えば、印刷する枚数が多い場合は耐刷性に優れたPS版を使用し、印刷枚数が少ない場合は耐刷力は強くないが、安価である銀塩拡散転写法による印刷版を使用するといったように、印刷目的に合わせて使用版材を変えることが一般的に行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、このようにタイプの違う版材に同一の湿し水を用いると諸々の問題が生じてしまう。例えば銀塩拡散転写法印刷版は、画像部の親油性と非画像部の親水性の差がPS版ほどには充分に大きくないため、印刷枚数が多くなった場合や、印刷機のローラーに汚れが生じるなどして湿し水の供給が不安定になってしまった場合などには、印刷中に非画像部にもインキが付着してしまう所謂地汚れが発生しやすくなる。通常はこのような問題が発生するのを防ぐために、銀塩拡散転写法印刷版用の湿し水にはコロイダルシリカなどの無機微粒子を添加して版面の親水性を高める方法が用いられている。この銀塩拡散転写法印刷版用の湿し水をPS版の印刷に用いると、無機微粒子の影響によりPS版画像部の親油性低下を招き、インキが盤面に乗り難くなるため印刷品質低下の原因となってしまう。
【0005】このように無機微粒子の入った湿し水はPS版の印刷には不適であるため、PS版用の湿し水には親水化剤としてカルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロースなどが添加されているのが一般的である。しかし、このようなPS版用の湿し水を銀塩拡散転写法印刷版の印刷に用いると充分な不感脂化効果が得られずに地汚れが発生し易くなってしまうという問題がある。
【0006】このように使用する版材に応じてその版材専用の湿し水が用いられるのが一般的であるが、セルロース類と無機微粒子の両方を併用し、且つ使用する版材に応じて希釈率を変更することで、PS版と銀塩拡散転写法印刷版の両方に使用可能とした湿し水も提案されている。この共用湿し水の場合は、上記の弊害を避けるために、版材に応じた希釈率で使用することが必要である。これはPS版の印刷に使用する場合には、添加されている無機微粒子の悪影響を受けないように、銀塩拡散転写法印刷版に使用するときよりも薄い湿し水に調整することが必要となるためである。従って、一台の印刷機で両タイプの版を使用したい場合には、別タイプの版に交換する毎に湿し水も入れ替える必要があり、作業能率の点で改善が求められていた。
【0007】本発明の第1の目的は、各種版材に適合性を有し、版材が混在する印刷環境においても湿し水を入れ替える必要が全くない共用湿し水を提供することである。
【0008】また、別の問題として、通常湿し水に添加されるイソプロピルアルコール(IPA)が環境上望ましくないと云う問題がある。印刷時に発生する地汚れなどのトラブルを防ぐためには、湿し水中に好適な親水化剤が添加されているというだけでは足りず、この親水化剤を印刷中に版面に充分に行渡らせることが必要となる。このため版面に湿し水を広がり易くする目的で、IPAを湿し水に添加して盤面を濡れ易くすると云う方法がとられることが多い。しかしながら、IPAは沸点が低く、蒸発し易いことと、有機溶剤予防規則における第二種有機溶剤であることから、湿し水に5〜25重量%を添加するという通常の使用方法では、作業環境改善のための装置の設置が必要である。
【0009】本発明に第2の目的は、IPAのような作業環境上好ましくない有機溶剤を使用しなくとも、地汚れなどの印刷トラブルを起こすことなく、各種版材を用いた印刷が可能な共用湿し水を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】 上記の目的は次に示す構成により達成される。即ち本発明は、下記の一般式(I)(化6),(II)(化7)及び(III)(化8)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする平版印刷用湿し水組成物である。
一般式(I)
【化6】

a,b,d,eは炭素数1〜10のアルキレン鎖を表し、これらa,b,d,eはヒドロキシル基で置換されていても良く、エーテル結合又は重合度5〜20のポリエチレンオキハシドを含んでいてもよい。又、a,b,d,eは夫々同一でも異なっていてもよい。X及びYは水素原子、ヒドロキシル基、カルボキシアルキル基、スルホアルキル基、ヒドロキシアルキル基の何れかを表し、X及びYは同一でも異なっていてもよい。
一般式(II)
【化7】

一般式(III)
【化8】

n=5〜10000の整数一般式(II)及び(III)において、R,R,Rは夫々同じでも異なっていてもよく、水素原子又は下記式(化9)を表す。又、fは炭素数2〜10のアルキレン基を表し、これらアルキレン基はヒドロキシル基で置換されていてもよく、エーテル結合又は重合度5〜30のポリエチレンオキシ基を含んでいてもよい。g,h,iは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、夫々同一でも異なっていてもよい。
【化9】

【0011】
【発明の実施の形態】 以下、本発明について詳細に説明する。一般式(I)で表される化合物の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
(I−1)
【化10】

(I−2)
【化11】

(I−3)
【化12】

(I−4)
【化13】

(I−5)
【化14】

(I−6)
【化15】

(I−7)
【化16】

(I−8)
【化17】

(I−9)
【化18】

(I−10)
【化19】

(I−11)
【化20】

【0012】これらの一般式(I)で表される化合物は、市販品として入手可能な、一級アミンとジグリシジル化合物を重付加反応させることにより、容易に合成することができる。
【0013】一般式(II)又は(III)で表される化合物は、グルコース基本単位化学構造当たりの下記式(化21)の導入率が0.001〜2のものを特に好ましく用いることができる。
【化21】

これらの化合物の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
(II−1)
【化22】

式中Rのうち、nに対して0.005〜0.05モルは下記式(化23)を表し、残りはHを表す。又mは1〜10の整数を表す。
【化23】

(II−2)
【化24】

式中Rのうち、nに対して0.005〜0.05モルは下記式(化25)を表し、残りはHを表す。
【化25】

(II−3)
【化26】

式中Rのうち、nに対して0.005〜0.05モルは下記式(化27)を表し、残りはHを表す。
【化27】

【0014】これらの一般式(II)又は(III)で表される化合物は、カチオン性セルロース又はカチオン性澱粉として市販されており、具体的にはライオン株式会社より「レオガード」シリーズ(「レオガード」はライオン株式会社の登録商標)として、日澱化学株式会社より「ペトロサイズ」シリーズ(「ペトロサイズ」は日澱化学株式会社の登録商標)や「Excell」シリーズ(「Excell」は日澱化学株式会社の登録商標)として市販されているものを入手することが出来る。
【0015】本発明の湿し水には、これらの一般式(I)〜(III)で表される化合物の少なくとも一種を使用液1リットル当たり0.001g〜3.0g含有させることが好ましい。特に1リットル当たり0.02g〜1.0gの範囲で含有させたときに、銀塩拡散転写法印刷版における非画像部の親水性を適性に保ちつつ、同時にPS版においても画像部の親油性を低下させることなく、非画像部に適切な親水性を持たせる効果が高い。このように親油性と親水性の差が大きく現れる効果により、印刷中に非画像部にインキが付着してしまう地汚れや、画像部にインキが乗らなくなるといった印刷トラブルを回避でき、安定した印刷を行うことが出来る。
【0016】多量の印刷物を刷る場合は、耐刷力のあるPS版を用いると共に、印刷速度を上げて時間当たりの印刷枚数を増やすことがよく行われる。非画像部全体に渡って充分に湿し水が行き渡る前に印刷が行われると、非画像部にもインキが付着してしまい、地汚れ発生の原因となり易い。このため高速印刷を行う場合は、広がり速度が速い湿し水を使用することが必要である。従来のIPAを添加した湿し水は充分に広がり速度が速かったために、このようなことはあまり問題とならなかった。しかし近年は環境への負荷が大きいという理由でIPAを使用しない傾向にあり、IPA添加に変わる何らかの方法により湿し水の広がり速度を改善することが必要である。
【0017】本発明の湿し水はIPAを添加せずとも、2,4,7,9―テトラメチルー5―デシンー4,7―ジオール又はそのエチレンオキシド付加物を添加することにより、湿し水の広がり速度を改善できるため、高速印刷にも適した湿し水を得ることが出来る。2,4,7,9―テトラメチルー5―デシンー4,7―ジオールは溶解性が悪いため、エチレンオキシド付加物の形で添加することが溶解性の点では好ましい。このエチレンオキシド付加物は、エチレンオキシド付加モル数が多いほど、溶解性が良い傾向がある。しかし、エチレンオキシド付加モル数が多いほど、広がり速度の改善効果は弱い傾向にある。このため迅速に版面全体に湿し水を行き渡らせる効果の高い、エチレンオキシド付加モル数が0〜5の2,4,7,9―テトラメチルー5―デシンー4,7―ジオールが、本発明の湿し水には最適である。
【0018】湿し水は、流通性の便を考えると、可能な限り濃縮された原液で供給され使用時に希釈して用いる形態であることが望まれる。しかし、このように湿し水の広がり速度の改善のためには、エチレンオキシド付加モル数が小さく溶解性のあまり良くない2,4,7,9―テトラメチルー5―デシンー4,7―ジオールを使用する必要があり、あまり濃縮度を上げることが出来ない。流通性の点から原液の濃縮度は20倍以上であることが望ましいが、2,4,7,9―テトラメチルー5―デシンー4,7―ジオール又はそのエチレンオキシド付加物を含有した湿し水をこのような倍率まで濃縮すると2層分離を生じたりするため、使用時に均一な希釈液を調整することが困難である。
【0019】このため本発明の湿し水に、2,4,7,9―テトラメチルー5―デシンー4,7―ジオール又はそのエチレンオキシド付加物を添加する場合は、下記の一般式(IV)(化28)で表される化合物又はエチレングリコールモノーtert―ブチルエーテルを可溶化剤として添加することが望ましい。
一般式(IV)
【化28】

Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、EOはエチレンオキサイド鎖を、POはポリプロピレンオキサイド鎖を表す。又、m及びnは重合度を表し、m/(m+n)=0.4〜0.7である。
【0020】一般式(IV)で表されるの化合物のうち、エチレンオキサイド鎖の割合が多いものは可溶化剤としての効果が高いが、その一方で画像部の樹脂に悪影響を及ぼす傾向がある。逆にポリプロピレンオキサイド鎖の割合が多いものは、可溶化剤としての効果が低い傾向にある。又、エチレンオキサイド鎖の割合が低いのもでも、分子量が大きいものは、やはり画像部の樹脂に悪影響が出やすい傾向がある。
【0021】そこで本発明者が行った種々研究の結果、夫々の重合度の総和(m+n)が20以下のものが本発明の湿し水に特に好ましく使用できることが判明した。一般式(IV)で表されるの化合物のうち、特に好ましいものの具体例としては、ブタノール(EO)・(PO)付加物、エタノール(EO)・(PO)付加物が挙げられる。これらの可溶化剤を添加することにより、溶解度の低い2,4,7,9―テトラメチルー5―デシンー4,7―ジオールや、付加モル数が1〜5のエチレンオキシド付加物を可溶化することが可能となり、濃縮度の高い澄明な湿し水原液を作成することができる。これら可溶化剤を、湿し水の使用液1リットル当たり1〜60gの割合で添加することにより、50倍以上にまで濃縮した原液を作成することが可能となり、運搬・保管性に優れた製品とすることができる。
【0022】この他に、本発明の湿し水には必要に応じて親水性高分子化合物を添加することができる。具体的な化合物としては、カルボキシメチルセメロース(CMC)、アラビアガム、澱粉誘導体(デキストリン、酵素変性デキストリン、アルファー化澱粉、リン酸澱粉、カルボキシメチル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉など)、繊維誘導体(カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなど)、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールなどが挙げられる。
【0023】本発明の湿し水には有機酸、無機酸及びそれらの塩が使用できる。これらは湿し水のpH緩衝剤として作用すると共に、インキの中から溶け出してくる脂肪酸などが非画像部に付着して感脂性となるのを防ぎ、版面を適度にエッチングする効果が見られる。具体的な有機酸としては、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、ぎ酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、乳酸、酢酸、グルコン酸、蓚酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。無機酸としては、リン酸、硝酸、硫酸、ポリリン酸などが挙げられ、これらはアルカリ金属塩、アンモニウム塩などとして良好に用いられる。更に、これらの効果を高めるために有機アミン類を加えることも望ましい。
【0024】又、本発明の湿し水には湿潤剤を加えることも望ましい。湿潤剤を加えることにより、版面の水が乾き難くなり、非画像部の汚れをより効果的に防ぐことができる。湿潤剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、グリコール酸、ピログルタミン酸などが挙げられる。
【0025】又、本発明の湿し水にはキレート剤を加えることも望ましい。キレート剤を加えることで、濃縮された湿し水原液を希釈する際の希釈水に含まれるカルシウムイオンを隠蔽して不要な析出の発生を抑えたり、印刷の際にも印刷用紙からの炭酸カルシウムの影響を抑えることができ、良好な印刷を行うことができる。好ましいキレート剤としては、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ニトリロトリ酢酸、L―グルタミンジ酢酸などが挙げられ、これらはアルカリ金属塩などの塩として添加されても良い。
【0026】又、本発明の湿し水には防腐剤を加えることも望ましい。湿し水中の親水性高分子は微生物の影響で徐々に分解され粘性が次第に低下してしまうため、防腐剤や防黴剤を添加しておくことが望ましい。具体的な化合物としてはサリチル酸、フェノール、フェノールパラ安息香酸ブチル、デヒドロ酢酸ナトリウム、4―イソチアゾロン−3−オン、1,2―ベンズイソチアゾリンー3―オンなどが挙げられる。
【0027】又、本発明の湿し水には防錆剤を加えることも望ましい。印刷機のローラーは常に湿し水によって影響を受ける。長期使用によっても印刷機を傷めないためには防錆剤の使用が望ましく、具体的な化合物としては、硝酸塩、1H―ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0028】
【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明する。表1に示した組成で、サンプル1〜11の各湿し水を調整した。
【表1】

【0029】〔印刷テスト〕調整した各サンプル湿し水を使用して、印刷機TOKO OFFSET 8000(東京航空計器株式会社製)にて、PS版及び銀塩拡散転写版を用いて印刷速度6,000枚/時で各試験夫々10,000枚の印刷を行い、印刷品質を観察し、評価を行った。評価項目は次の通りである。夫々の評価結果は表2に示した。
【0030】非画像部の汚れ:刷り上がった印刷物を観察し、非画像部での汚れ発生状況をみた。
〇:10,000枚の印刷を行っても印刷物に汚れは認められなかった。
×:1,000枚程度の印刷を行った時点から非画像部に汚れが認められた。
【0031】画像部のインキの乗り:刷り上がった印刷物のインキの乗りを観察し、印刷版画像部の感脂性への影響をみた。
〇:10,000枚の印刷を行っても印刷物のインキの乗りが良好。
×:1,000枚程度の印刷を行った時点から、画像部のインキの乗りが悪くなった。
【0032】〔高速印刷テスト〕前記印刷テストと同条件で印刷速度のみを、8,000枚/時及び10,000枚/時と変化させて高速印刷を行い、各湿し水サンプルが印刷安定性に与える影響をみた。本試験は通常高速印刷で使用されるPS版のみで行った。その結果を表2に示した。
【0033】印刷安定性:刷り上がった印刷物を観察し、高速印刷時における印刷品質への影響をみた。
〇:10,000枚/時の高速印刷を行っても印刷物に汚れは認められなかった。
△:8,000枚/時の高速印刷にて、5,000枚目位から非画像部に汚れが認められた。
【0034】〔濃縮試験〕各湿し水組成について、濃縮倍率を変えて原液作製を試み、夫々どの程度まで濃縮した原液が作製できるかを見た。
【0035】濃縮性:夫々2層分離を生じたものは不可とした。
〇:50倍以上の濃縮が可能△:50倍未満、20倍以上の濃縮が可能×:20倍濃縮の原液作製が不可【0036】
【表2】

【0037】表2に示したように、一般式(I)〜(III)で表される化合物のうち、何れかを含む本発明の湿し水(サンプルNo.1〜6)を用いて印刷を行った場合は、版材として銀塩拡散転写版、PS版のどちらを使用しても、IPAを使用することなく、印刷品質の良い印刷物を作製することができた。これに対して、一般的なPS版用湿し水であるサンプルNo.7及びNo.9や、コロイダルシリカを含む銀塩拡散転写版用の湿し水(サンプルNo.8)を用いた場合は、別の版を使用したときに印刷品質に問題を生じた。
【0038】又、2,4,7,9―テトラメチルー5―デシンー4,7―ジオールのエチレンオキサイド付加物を含有したサンプルNo.1の湿し水は、含有していないサンプルNo.4に比べて、高速印刷を行った際の印刷安定性に優れていることが判る。
【0039】又、2,4,7,9―テトラメチルー5―デシンー4,7―ジオールのエチレンオキサイド付加物を含有した湿し水において、ブタノールEO・PO付加物やエチレングリコールモノーtert―ブチルエーテルといった可溶化剤も含有しているサンプルNo.1及びサンプルNo.6は、何れの可溶化剤も含有していないサンプルNo.5に比べて濃縮性が優れていることが判る。これに対して、比較例のサンプルNo.11は、各種版材に対する適合性の点では優れているが、可溶化剤を含有しているにも拘わらず、濃縮性の点で非常に劣っていることが判る。
【0040】
【発明の効果】以上述べたように本発明の請求項1の湿し水は、銀塩拡散転写版のPS版のどちらにも優れた適合性を有し、各種の版材が混在する印刷条件においても、湿し水を交換することなく同一の湿し水で品質の良い印刷を行うことができる。又、同時に作業環境への負荷が大きいIPAを使用せずとも適正な印刷品質を維持することが可能となる。
【0041】又、請求項2によれば、請求項1の効果の他に、IPAを使用しなくても、湿し水の広がり速度を改善できるため、高速印刷に適した湿し水が得られる。
【0042】更に、請求項3,4によれば、20倍以上に濃縮度を上げても、2層分離を生じることなく、使用時に均一な希釈液を調整することが容易である。又、溶解度の低い2,4,7,9―テトラメチルー5―デシンー4,7―ジオールや、付加モル数が1〜5のエチレンオキサイド付加物を可溶化でき、濃縮度の高い澄明な湿し水原液を作製でき、運搬・保管性に優れた製品が得られる。又、流通の利便性が確保できる。
【出願人】 【識別番号】000211097
【氏名又は名称】中外写真薬品株式会社
【出願日】 平成12年11月17日(2000.11.17)
【代理人】 【識別番号】100063842
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 三雄 (外1名)
【公開番号】 特開2002−144752(P2002−144752A)
【公開日】 平成14年5月22日(2002.5.22)
【出願番号】 特願2000−350632(P2000−350632)