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【発明の名称】 レーザーシステムにより加工する浸透性ゴム印の印面部材
【発明者】 【氏名】中澤 幸利

【要約】 【課題】彫刻カスや有害な強臭ガスを発生させずに、しかも高精度に浸透性ゴム印をレーザー加工する。

【解決手段】予め外形を形成した浸透性を有するメチルビニルシリコーンゴムの印面部材12を印面保持部材11に口金14を介して取り付けるとともにホルダー11を彫刻用治具16に取り付け、この彫刻用治具16をテーブル上に位置決め部材を介して位置決めしてレーザー光線による印面彫刻を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱可塑性樹脂またはシリコーン系の合成ゴムの発泡体にて形成したことを特徴とするレーザーシステムにより加工する浸透性ゴム印の印面部材。
【請求項2】 前記熱可塑性樹脂はポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、あるいはポリビニルアルコールから成るレーザーシステムにより加工する浸透性ゴム印の印面部材。
【請求項3】 前記シリコーン系の合成ゴムは、フェニルメチルシリコーン、メチルシリコーンまたは変性シリコーンから成る請求項1記載のレーザーシステムにより加工する浸透性ゴム印の印面部材。
【請求項4】 前記発泡体は、硬度30〜40°、気孔径は5〜60μm、空孔率は50〜70%の範囲内である請求項1記載のレーザーシステムにより加工する浸透性ゴム印の印面部材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はレーザーシステムにより加工する浸透性ゴム印の印面部材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から行われている印面の加工には、例えば特開昭52−41023号公報に開示された発明が知られている。この発明は、図7で示す逆版文字43を形成した文字母型33を加熱して、図8に示す印版31の凹部41に嵌め込んだ熱可塑性の樹脂素材から成る印面版34の印面に圧着することにより、印面版34の印面を溶融軟化させて凹凸の印面32を形成するものである。
【0003】他の例として、特公平7−137410号公報に係る発明が知られている。この発明は、図9に示すように、外ケース37内にクッション38を介して印面保持部材39を嵌合し、前記両者間に保護ケース14をバネ15を介して摺動可能に嵌合させた、前記印面ホルダー39下端に熱可塑性の液浸透式印面版40を嵌め込み、この印面版40の面に対して、逆版文字44を形成した文字母型45を加熱し圧着することにより印面版40の面を溶融軟化させて凹凸の印面を形成するものである。
【0004】しかしながら、前記従来の印面の加工方法は、いずれの場合も逆版文字を形成した文字母型を用いていることから、印面を加工する前に文字母型を製作しなければならないことと、文字母型の製作に多大な日時が必要となるという問題があり、本願発明者はこの問題を解決するために既に特開平10−278214号公報に開示された印面の加工方法及び印版の製造方法を提案している。
【0005】この発明は、ゴム印の印面部材として約110℃にて溶融するEVAの発砲性合成ゴムを用い、図10に示すようにテーブル27上に直接に取り付けてレーザー光線により印面を彫刻するものである。印面部材21の上方には左右方向に移動するロボットフレーム5が配置され、ロボットフレーム5の側面にはローラー8を介して前後方向に移動するレーザー光線1の照射装置2と空気源9から供給されるエアーの噴射ノズル10とが設けられており、照射装置2から印面部材21の面に照射されるレーザー光線1のレーザースポット1aはテーブル27の上下動により調整され、レーザースポット1aに対するエアー17の噴射方向は位置調整クランプ13により噴射ノズル10の位置を調整することにより行われるようになっている。
【0006】この装置を用いたゴム印の彫刻は、先ず平板状印面部材21をテーブル27上に載置した後、テーブル27の上下動にて印面におけるレーザースポット1aを調整するとともにレーザースポット1aに対するエア噴射ノズル10の噴射方向を調整する。その後に図示しない制御部を作動させて彫刻を開始する。彫刻により発生した有害ガスや彫刻カスは噴射ノズル10からの噴射エア17にて吹き飛ばされて吸込口23に吸い込まれ、集塵脱臭装置24にて浄化処理された後、大気中に放出される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記レーザー光線を用いた印面加工においては、印面加工に用いられている印面部材が発泡性合成ゴムから成ることによりレーザー加工時に強臭の有害ガスやタール状の彫刻カスが発生し、有害ガスは職場環境を初め、近隣地域の自然環境に大きな影響を及ぼすために強力な脱臭装置27を設備しなければならないという問題がある。また脱臭装置を設備しても完全に脱臭することができないために浸透性ゴム印製造の普及に大きな障害となっていた。
【0008】また、印面から発生するタール状の彫刻カスは印面に付着するとインクに混じってインクを変色させる恐れがあるので、このカスを除去するために図示しない洗浄及び乾燥処理装置を設ける必要がある他、洗浄した後に廃液を処理する装置まで設けなければならないという問題がある。
【0009】その他に、印面部材として発泡性合成ゴムを用いた場合は、真空による強制含浸にてインクを含浸させるのが一般的的である。このためには真空含浸機が必要となり、またインクを適量にするために複雑なインクの除去処理が必要になるという問題がある。
【0010】さらに、従来の加工方法では、彫刻、脱臭、洗浄、乾燥の多くの工程と、彫刻後に印面保持部材のサイズに合わせて印面をカットするという多くの工程が必要になる。またこのような方法では、印面の突出量等に関わる彫刻の深さが、加工する機械の状態や加工条件の設定等により変動するため、製品の品質にばらつきが生じやすく、品質を大きく左右するという問題がある。
【0011】よって本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、ゴム印をレーザー加工にて彫刻する際にタール状の彫刻カスや有害ガスを発生させずに、しかも高精度にかつ安定した品質が得られる印面部材の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る発明は、熱可塑性樹脂またはシリコーン系の合成ゴムの発泡体にて形成したことを特徴とする。
【0013】請求項1記載の発明によれば、メチルビニルシリコーンゴム等の発泡体はレーザー光線にて加工する際に発生するガスが無害であり、また臭気はごく僅かであるために脱臭装置を設備する必要がない。また、加工時に発生する彫刻カスは完全燃焼して灰になるために灰はエアにて吹き飛ばした後、吸引してフィルターを通すことにより回収処理することができる。これにより従来の印面部材を用いた場合に発生していたタール状の彫刻カスを洗浄し乾燥する装置が不要となる。従って、洗浄や乾燥のための工程を削減することがが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図6は本発明の実施の形態に係り、図1は印面保持部材を挿着した彫刻用治具の断面図、図2は印面部材の斜視図、図3は印面保持部材に印面部材を取り付けた断面図、図4は印面保持部材に印面部材を取り付けた斜視図、図5は彫刻用治具をテーブルに取り付けた斜視図、図6はゴム印の組立断面図である。
【0015】本実施の形態にて使用する印面の加工装置は図10に示すように、印面部材を取り付けるテーブル27の上方に左右方向に移動するロボットフレーム5が配置され、ロボットフレーム5の側面を左右のローラ8を介して前後方向に移動するレーザー光線の照射装置2とエアーの噴射ノズル10とが設けられている。
【0016】照射装置2から照射されるレーザー光線の印面に対すれレーザースポット1aはテーブルの上下動により調整が可能であり、噴射ノズル10のレーザースポット1aに対するエアー17の噴射方向はノズルクランプ13により調整が可能となっている。
【0017】また、装置の側方には噴射されたエアの吸込口23が設けられ、吸込口23は集塵装置24に連結されていて、彫刻時に印面から発生したガスや彫刻カスは噴射ノズル10からの噴射エア17にて吹き飛ばさると同時に吸込口23に吸い込まれ、集塵装置24に送られて彫刻カスが集塵されるように構成されている。
【0018】本実施の形態にて用いる印面部材は、熱可塑性樹脂またはシリコーン系の発泡体にて形成したものを使用する。また、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂あるいはポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0019】また、前記シリコーン系の合成ゴムとしてフェニルメチルシリコーン、メチルシリコーンまたは変性シリコーンを適用することができる。
【0020】前記発泡体については、硬度30〜40°、気孔径5〜60μm、空孔率50〜70%の範囲のものを使用するのが好適である。なお、以上の範囲の発泡体により、レーザーシステムにて加工する印面の加工精度について、所要の精度が得られるとともに浸透性ゴム印について要求される適度なインクの吸引保持力を維持することができる。
【0021】なお、この印面部材を用いた場合はレーザー加工した際に強臭の有害ガスが発生しないため集塵装置24内に脱臭装置が設けられていない。また彫刻カスは燃焼して粉状になるため、従来のようにタール状彫刻カスが発生しない。従ってタール状彫刻カスを除去するための洗浄装置や乾燥装置も設けられていない。
【0022】また、前記加工装置に対する印面部材の取り付けについては、従来はテーブル27上に板状の印面部材を直接セツトしていたが、本発明においては印面部材を印面保持部材にセットし、その印面保持部材を彫刻用治具に固定したうえで彫刻用治具をテーブル上に位置決め部材を介してセットするものである。
【0023】図1に示すように、印面部材12は、前記メチルビニルシリコーンゴム等のシリコーン系発泡合成ゴムからなり、後述の口金受け13の大径端に載置するとともに口金内径に挿入しうる外径を有する厚めの円板の一方の平面部における円周に沿って後述の装着口金にて係止するためのリング状の一段低い係止段付き部を形成している。なお、印面部材12全体の形状は、例えば成形型等を用いて全数が均一な寸法になるように予め形成しておく。
【0024】この印面部材12を取り付ける印面保持部材11は、図3に示すように2段の円筒状に形成された口金受け部13と、口金受け部13の大径側に嵌着される円筒状の口金14とからなっており、口金受け部13の大径側には図6に示すように印面部材12が口金14にて装着され、小径側の外径は後述のホルダーAに嵌着され、内径はインク軸25が挿入される部分となっている。
【0025】彫刻用治具16は、図1及び5に示すように直方体の上下面が側方に張出した張出部16aを形成した断面略H形のものであり、その上面における1乃至複数箇所に印面保持部材11の装着穴18が設けられ、装着穴18内には印面保持部材11の口金受け13に形成された段付部が当接することにより印面保持部材11に取り付けられた印面部材12の印面が同一面になるように段付部が形成されており、側面の直交する2辺が印面部材12の位置決め基準面となっている。
【0026】この彫刻用治具16を加工テーブル27に取り付ける場合は、図5に示すように加工テーブル上に固定されたL形位置決め部材19の直交2辺に前記彫刻用治具16の直交2辺を当接させるだけで高精度にかつ容易に位置決めすることができるようになっている。
【0027】次に、印面保持部材11に印面部材12を取り付けるとともに印面保持部材11を彫刻用治具16に装着し、さらにレーザー加工装置のテーブル面にセットして印面を彫刻する手順及びゴム印の組立手順について説明する。
【0028】先ず図3に示すように、外形が予め形成された印面部材12を複数の印面保持部材11の口金受け13における大径端に載置するとともに印面部材12に口金14を被せて押し込むことにより印面部材12の係止段付部20が口金14のU字形係止部15により押圧され、同時に口金14の開口部が口金受け13の外径に嵌着される。これにより印面保持部材11に取り付けられた印面部材12の印面22がU字形曲折部15の端部から0.1〜0.2mmの規定範囲内にてほぼ均一に突出した状態となる。なお印面部材の突出量は規定量より多いと押印時にインクが出すぎ、少ないと押印が困難になる。
【0029】次に、図1に示すように、印面部材12が取り付けられた複数個の印面保持部材11を彫刻用治具16の装着孔18に装着する。この場合、印面保持部材11を彫刻用治具16の装着穴18の最深部まで挿入することにより口金受け13の段付部が装着付穴18の段付部に当接して印面保持部材11の装着高さが同一になり、各印面部材12の印面22が同一面になる。
【0030】次に、図5に示すように、ホルダーが挿着された彫刻用治具16を加工テーブル27の面に取り付ける。この場合は、加工テーブル27に固定されたL形位置決め部材19の直交2辺に対して彫刻用治具16の直交2辺を当接させることにより容易にかつ高精度に位置決めすることができる。
【0031】次に、レーザー照射装置2から照射されるレーザー光線1の印面に対するレーザースポット及びエア噴射ノズル10のレーザースポットに対する噴射方向の調整を行い、図示しない自動制御装置の指令により装置の各部を作動させ自動制御しつつ印面の彫刻を開始する。彫刻開始と同時に発生するガスや彫刻カスはエア噴射ノズル10からの噴出エアにて吹き飛ばされると同時に吸込口23に吸い込まれ、集塵装置24にて集塵され、浄化されたエアが大気中に放出される。この場合彫刻時に発生するガスは無害であり、また臭気はごく僅かであるために脱臭装置を設備する必要がない。
【0032】彫刻が終了した印面部材12はホルダー11とともに彫刻用治具16から取り外して印面部材にインクを自然含浸させた後、組立工程に入る。ゴム印の組立は、図6に示すように口金受け13に袴26及びバネ29を取り付け、口金受け13の小径側外径をホルダーAに強引に押し込んで円周溝13aを嵌着させる。
【0033】これにより袴26はバネ29に押されてその開口端が印面12より前方に突出した状態となる。さらに口金受け13の小径側内径にインク軸25を挿入し、インク軸25の突出端部にインクキャップ30を被せるとともにインクキャップ30の端部を口金受け13の小径端部に嵌着させる。この後はホルダーAの後端側にホルダーBを嵌着し、前端側に印面キャップCを嵌着して組み立てが完了する。なお組立予定外の印面保持部材11は印面部材12を取り付けたまま予備部品として保管しておく。
【0034】完成したゴム印は図6に示すとおりで、常時は袴26がバネ29にて前方に押出されていることにより印面保持部材11に取り付けられた印面部材12の印面22が袴26の開口端より後退した位置にあり、押印の際に袴26を押印面に当てて押圧することにより袴26は押されて後退し、印面22が露出して押印が可能となる。押印後は袴26がバネ29にて押し出されて元の状態に戻る。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、メチルビニルシリコーンゴム等の発泡体にて形成した印面部材を用いることにより、レーザー加工の際に印面部材から発生するガスが強臭のない無害ガスとなり、脱臭装置が不要となる。さらに、彫刻カスがタール状にならずに完全燃焼して灰になるために灰はフィルターで回収処理することが可能となる。これにより従来の加工において発生していたタール状の彫刻カスを洗浄し乾燥するための工程が不要になるとともに、洗浄や乾燥装置も不要となり、工程数を削減し、製造の工期を短縮することが可能となる。
【0036】また、印面部材は予め外形を成形しておき、これを用いてホルダーにセットした状態で直接に印面加工をすることにより印面突出量のばらつきが減少するとともに、彫刻後に印面部材の外形加工をする必要がなくなる。従って、そのまま本体に組み込んで製品にすることができ、組立工数を削減することが可能となる。
【0037】また印面部材を取り付けたホルダーは、彫刻用治具に取り付けた後、加工テーブル面に対して位置決め部材を介して取り付けることにより印面部材を高精度にかつ容易に取り付けることが可能となる。これによりレーザー加工の専門的な知識がなくても印面加工をすることが可能となる。以上によりゴム印の品質が保証され、品質管理が容易になる。
【出願人】 【識別番号】597049008
【氏名又は名称】株式会社中沢商会
【出願日】 平成12年11月9日(2000.11.9)
【代理人】 【識別番号】100069420
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 武
【公開番号】 特開2002−144687(P2002−144687A)
【公開日】 平成14年5月22日(2002.5.22)
【出願番号】 特願2000−341828(P2000−341828)