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【発明の名称】 静電駆動式のインクジェットヘッド
【発明者】 【氏名】八木 浩

【氏名】百瀬 芳正

【要約】 【課題】シリコンエッチングにより表出する結晶面の形状精度の高い、シリコン基板の加工方法、及びこの方法で形成した基板を用いた高い生産性をもつ静電駆動式のインクジェットヘッドを提供すること。

【解決手段】チョクラルスキー法で製造したシリコン単結晶から作られたシリコン基板上に、熱酸化法により保護膜を形成する工程と、保護膜を部分的に除去する工程と、除去後に表出するシリコンをエッチングする工程を有するシリコン基板加工において、前記シリコン基板中に含まれる格子間酸素濃度を14×1017atoms/cm3以下とすることにより実現する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】チョクラルスキー法で製造したシリコン単結晶から作られるシリコン基板上に熱酸化法により保護膜を形成する工程と、保護膜を部分的に除去する工程と、除去後に表出するシリコンをエッチングする工程を有するシリコン基板加工において、前記シリコン基板中に含まれる格子間酸素濃度が14×1017atoms/cm3以下であるシリコン基板を構成要素に含むことを特徴とする、静電駆動式のインクジェットヘッド。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリコン基板を構成要素にもつインクジェットヘッドに関し、特にエッチングにより表出する結晶面の形状精度に優れたシリコン基板を用いた、静電駆動式のインクジェットヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】インクジェットヘッドとしては、インク液滴を吐出させるためのメカニズムに応じて各種の方式のものが提案されている。例えば、ヒータを加熱してインクを沸騰させ、それによって生じる気泡圧でインク液滴を吐出する方式のインクジェットヘッド、あるいはインクを貯留した圧力室に貼り付けられた圧電素子に電圧を印加することにより圧力室の容積を膨張および収縮させて、インク液滴を吐出する方式のインクジェットヘッドがある。さらに、静電気力を利用してインクを貯留した圧力室の容積を変化させて、インク液滴の吐出を行う静電駆動式のものもある。
【0003】これら各種のインクジェットヘッドのうち、静電駆動式のインクジェットヘッドは小型・高密度化に適している。また、静電駆動式のインクジェットヘッドは、印字品質に優れ、かつ、長寿命であるという利点もある。この種のインクジェットヘッドでは、図1に示すように、シリコン基板からなるキャビティープレート3(第1の基板)、ガラス基板4(第2の基板)、およびガラス基板からなるノズルプレート2(第3の基板)の3枚の基板が接合された構造をしている。キャビティープレート3には複数のノズル溝22、および底壁が振動板5として機能する凹部7、および共通電極17が形成されている。
【0004】ガラス基板4において、各々の振動板5に対峙する部分には、振動室12を構成することになる凹部13が形成され、この凹部13の底面には、振動板5に対峙する個別電極14が構成されている。従って、共通電極17と各個別電極14に対してドライバ20から駆動信号を出力すると、この駆動信号に基づいて振動板5が振動し、圧力室6のインクがノズル溝22からインク液滴として吐出される。
【0005】このようなインクジェットヘッドにおいて、キャビティープレート3に凹部7を形成する方法について説明する。シリコン基板面に形成された保護膜を部分開口後、KOHのようなアルカリ溶液を用いてエッチングする場合、図3に示すようにエッチングレートのきわめて遅い(111)面は凹部の斜面としてエッチング進行に伴い表出してくる。
【0006】また、底壁は振動板となる部分で、エッチング時間をコントロールすることにより規定厚み寸法が得られる。振動板の幅は厚み同様、振動板の剛性に影響するパラメーターであり、(111)面との交差境界で決定されるものである。(111)面が平坦であれば図3に示すように交差境界線も直線になり、振動板の規定幅寸法を精度良く、安定して得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしこれまでのように酸素濃度の高いシリコン基板を用いた場合、保護膜形成時に受ける熱処理により、基板内部に多くの析出欠陥が生じる。図4に示すように、析出欠陥層においては異方性エッチングの際、(111)面が荒れ、(100)面と(111)面との交差境界にうねりが生じ、振動板の幅寸法がばらつくことになる。これによって振動板幅の規定幅寸法を安定して得ることが困難となり、シリコン基板加工歩留まりの低下要因となっていた。
【0008】本発明は上記の問題点に鑑みて、その目的とするところは、エッチングにより表出する結晶面の形状精度が高いシリコン基板を用いることにより、高い生産性をもつ静電駆動式のインクジェットヘッドを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本発明の静電駆動式インクジェットヘッドでは、チョクラルスキー法で製造したシリコン単結晶から作られるシリコン基板上に熱酸化法により保護膜を形成する工程と、保護膜を部分的に除去する工程と、除去後に表出するシリコンをエッチングする工程を有するシリコン基板加工において、前記シリコン基板中に含まれる格子間酸素濃度が14×1017atoms/cm3以下であるシリコン基板を構成要素に含むことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】(全体構成)図1は、インクジェットヘッドの一部の分解斜視図、図2はその部分断面図である。なお、本形態のインクジェットヘッドは、従来技術で説明したインクジェットヘッドと基本的な構成が共通するので、同じく図1を参照して説明する。
【0011】図1および図2に示すように、インクジェットヘッド1は、インク液滴と基板の端部に設けたインクノズルから吐出させるエッジインクジェットタイプであり、静電駆動方式のものである。インクジェットヘッド1は、キャビティープレート3(第1の基板)、ガラス基板4(第2の基板)、およびノズルプレート2(第3の基板)が接合された構造をしている。
【0012】キャビティープレート3はシリコン基板であり、その表面には、複数のインクノズル21を構成するための複数のノズル溝22がキャビティープレート3の一方端から平行かつ等間隔で形成されている。キャビティープレート3の表面には、底壁が振動板5として機能する圧力室6を構成することになる凹部7、この凹部7の後部に設けられたインク供給口8を構成することになる細溝9、各々の圧力室6にインクを供給するためのインクリザーバ10を構成することになる凹部11がエッチングによって形成されている。
【0013】キャビティープレート3において、ノズル溝22が形成されたプレート表面の一方端と反対側の端部にはインク供給孔24となる多数のインク供給溝23が形成されている。
【0014】また、キャビティープレート3の表面には金属膜からなる共通電極17が形成されている。
【0015】インク供給孔24には接続パイプを介してインクタンク等の外部のインク供給源(図示せず。)が接続され、インク供給源からインク供給孔24を介してインクリザーバ10にインクが供給される。キャビティープレート3の下面は鏡面研磨によって平坦化されており、ガラス基板2に対する取付け面とされている。
【0016】このキャビティープレート3の上面(溝形成側の基板表面)に接合されるノズルプレート2としては、ホウ珪酸ガラス基板などを用いることができる。このノズルプレート2およびキャビティープレート3を重ね合わせることにより、これらのプレート2、3の間に、インクノズル21、圧力室6、インク供給口8、インクリザーバ10およびインク供給孔24が区画形成される。
【0017】キャビティープレート3の下面に接合されるガラス基板4は、シリコン基板と熱膨張率が近いホウ珪酸ガラス基板を用いることができる。ガラス基板4において、各々の振動板5に対峙する部分には、振動室12を構成することになる凹部13が形成されている。この凹部13の底面には、振動板5に対峙する個別電極14が配置されている。個別電極14は、ITOからなるセグメント電極部15、リード部18および端子部16を備え、セグメント電極部15はリード部18を介して端子部16に接続されている状態にある。なお、端子部16を除くセグメント電極部15およびリード部18は絶縁膜で被覆される場合もある。
【0018】キャビティープレート2に形成した各圧力室6の底面を規定している振動板5は、実質的な電極として機能し、等価回路的には、電極(振動板5)と各個別電極14の端子部16との間にはドライバ20が接続されている。ドライバ20によって個別電極14に印加すると、印加された個別電極14と対峙している振動板5が静電気力によって振動し、これに伴って圧力室6の圧力が変動してインクノズル21からインク液滴が吐出される。
【0019】例えば、正の電圧パルスを印加して個別電極14の表面を正の電位に帯電させると、対応する振動板5の下面は負の電位に帯電される。従って、振動板5は静電気力によって吸引され下方に撓む。次に、個別電極14へ印加している電圧パルスをオフにすると、振動板5が形状復帰力によって元の位置に復帰する。この復帰動作によって、圧力室6の内圧が急激に上昇して、インクノズル21からインク液滴が吐出される。そして、振動板5が下方に撓むことにより、インクがインクリザーバ10からインク供給口8を経由して、圧力室6に補給される。
【0020】ここで、キャビティープレート3はそれ自身が導電性を持つため、キャビティープレート3自身とドライバ20を接続することにより振動板5に電圧を供給することができ、振動板5を電極として機能させることができる。
【0021】(シリコン基板の加工方法)次に、インクジェットヘッドに用いるシリコン基板の加工方法を説明する。
【0022】まず、結晶面方位が(100)で、厚みが220μmで、抵抗率が1Ω・cm以下のP型のチョクラルスキーシリコン基板を用意する。このシリコン基板の両面を鏡面研磨し、所定の厚さ、例えば、厚さが100μmのシリコン基板(キャビティープレート3用のシリコン基板)を作製する。このシリコン基板を、1000℃で水蒸気を含む酸素雰囲気下で約9時間熱酸化させて、その表面にSiO2膜を形成する。
【0023】次に、SiO2膜の表面に所定のパターンに形成したレジストマスク(図示せず。)およびフッ酸系エッチング液でSiO2膜の一部を除去した後、残ったSiO2膜をマスクとしてシリコン基板の表面を例えば、アルカリ溶液等によりエッチングする。その結果、シリコン基板の表面には、インクノズル21、インク供給口8、インクリザーバ10等を構成することになる凹部が形成される。これにより、図1に示した形状のキャビティープレート3が得られる。
【0024】このとき、エッチングに使用するシリコン基板としては、基板内に不純物として含まれる格子間酸素濃度が11〜17×1017atoms/cm3の範囲のものとし、エッチング後に形成される振動板の幅寸法ばらつき及び、析出欠陥密度との関係については図5の通りの結果が得られている。これによると、格子間酸素濃度で14×1017atoms/cm3を越えるあたりより振動板の幅寸法ばらつきは増加傾向を示す。
【0025】また、ライトエッチング法により確認される析出欠陥密度においても14×1017atoms/cm3を越えるあたりより増加傾向にあることが確認されている。これらのことから、格子間酸素濃度の増加に依存して発生する基板内の析出欠陥は、振動板の幅寸法ばらつきを増加させるといえるが、逆に格子間酸素濃度の低目管理により析出欠陥の発生抑制が可能となり、このことは振動板の幅寸法ばらつきを低減することができるのと同じである。このようにして得られたキャビティープレート3は、再度熱酸化し、その表面にSiO2膜を形成する。
【0026】(その他の形態)なお、上記形態では、インク液滴を基板の端部に設けたインクノズルから吐出させるエッジインクジェットタイプであるが、基板の上面に設けたインクノズルからインク液滴を吐出させるフェイスインクジェットタイプであっても良い。
【0027】また、本発明のシリコン加工方法は、静電駆動式のインクジェットヘッドに限らず、センサーあるいはマイクロマシーニングのような、シリコン基板にダイアフラムを形成する際にも適用できる。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るシリコン基板加工方法では、加工に使用するシリコン基板について不純物として含まれる格子間酸素濃度を制限することにより、熱履歴に伴う酸素起因の結晶欠陥の発生を一定量以下に抑え、異方性エッチング時に表出する結晶面の形状精度を安定的に高めることができる。その結果、ある規定形状寸法におけるシリコン基板の加工歩留りを、安定して高めることが可能となり、それらを構成要素に含む静電駆動式のインクジェットヘッドの生産性向上が図れる。
【出願人】 【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
【出願日】 平成12年12月12日(2000.12.12)
【代理人】 【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉 (外1名)
【公開番号】 特開2002−178523(P2002−178523A)
【公開日】 平成14年6月26日(2002.6.26)
【出願番号】 特願2000−377697(P2000−377697)