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【発明の名称】 アクチュエータおよびそれを用いたグラビア彫刻装置
【発明者】 【氏名】小川 秀明

【要約】 【課題】圧電素子から構成されるアクチュエータにおいて、電圧に対する変位量の線形特性が良好なアクチュエータを提供する。

【解決手段】アクチュエータは、内部に収納空間を有するケース部材と、ケース部材内に積層して収納された圧電素子61と、圧電素子61の伸縮する一端側に当接して配置され、ケース部材に対し進退可能に設けられたロッド部材62と、ロッド部材62を圧電素子側に付勢するバネ部材63と、を備える。バネ部材63を装着した空間は、ケース部材と圧電素子61や樹脂64などにより略気密に遮蔽されており、当該空間内に潤滑剤としてシリコンオイル66を充填してある。電圧を印加してロッド部材62を駆動する際にバネ部材63の歪みにより生じる摩擦はシリコンオイル66により低減されるため、印加電圧に対する変位量が安定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電圧を印加して圧電素子を変位させ、当該変位を駆動力とするアクチュエータであって、内部に空間を有するケース部材と、電圧印加可能に配線された状態で前記ケース部材内に積層して保持された圧電素子と、前記圧電素子の伸縮方向の一端部に当接した状態で、前記ケース部材に対し進退可能に保持されたロッド部材と、前記ロッド部材を前記圧電素子側に向かって付勢するように、前記ケース部材内に設けられたバネ部材と、を備え、前記バネ部材の配置された空間を略密閉するとともに、当該空間に対し潤滑剤を充填したことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】 前記バネ部材は1以上の皿バネであり、前記潤滑剤はシリコンオイルであることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】 請求項1または2に記載のアクチュエータをグラビア彫刻のための彫刻針の駆動に用いたことを特徴とするグラビア彫刻装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、圧電素子を用いたアクチュエータと、このアクチュエータを用いてグラビアシリンダーに対し彫刻を行う彫刻針を駆動するグラビア彫刻装置に関する。
【0002】
【従来の技術】グラビアシリンダーにグラビア印刷用のセルを形成する装置の1つとして、ダイヤモンド製のバイト(彫刻針)を備えたスタイラスの振動により当該シリンダー表面を機械的に彫刻するグラビア彫刻装置がある。このグラビア彫刻装置では、主走査方向に回転するシリンダーに対し前記スタイラスを備えた彫刻ヘッドをシリンダー軸芯方向に沿って副走査移動させることで前記シリンダー上を走査して彫刻を行う。このグラビア彫刻装置では、彫刻針の振動量に応じて前記セルの大きさ(深さや幅)が可変される。そしてグラビア印刷では、前記セルの大きさにより転写するインキ量が決まり、画像の濃淡を表現することができる。
【0003】本出願人が出願した特開平11―227149号に係る発明では、従来の電磁駆動に代えて前記彫刻針の振動をピエゾ素子により行う彫刻ヘッド装置が開示されている。この従来装置では、ピエゾ素子を用いて彫刻針を固着した振動板を駆動することにより彫刻針を微細に高速駆動することができるので、グラビア彫刻装置には最適なものである。
【0004】上記のようなピエゾ素子を用いたアクチュエータとしては種々のものが存在するが、一般的な構成としてはピエゾ素子のような圧電素子を積層し、この積層した圧電素子の伸縮側一端に接して進退駆動するようにロッド部材が設けられている。そしてロッド部材はバネにより圧電素子に向かって常時付勢された状態になっており、圧電素子に電圧が印加されれば前記付勢力に抗してロッド部材が押し出されるように構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが本出願人は上記のようなアクチュエータを用いた場合、印加電圧の高低に対し微小な応答特性の差異が生じることを発見した。例えば本出願人が実験した一例としては、Piezosystem jena社製の型番PA50/12NVのアクチュエータに対し±2Vの印加電圧を加えた場合のアクチュエータによる駆動変位量は162×10-3μm/Vであり、同±20Vの印加電圧を加えた場合では227×10-3μm/Vであった。このように電圧範囲によって変位量に差があり、この特性は非線形な特性であるため一般的な線形制御器では補償しきれない。従って上記のような圧電素子をグラビア彫刻装置などに用いる場合は、よく使われる振幅領域でゲインを調整し、その他の領域では特性の悪化を妥協して使用していた。このため図3に示すようにステップ応答の特性が悪化するという問題があった。
【0006】図3は所定のステップ状の彫刻信号を印加した際の彫刻針の変位量をプロットしたグラフである。図3(A)に示すように電圧変化ステップの小さいところで応答性能が良好な場合であれば、彫刻針の実際の変位量は目標変位量(彫刻信号のステップに相当)に追随して問題がない。一方、図3(B)で示すように電圧変化ステップの大きいところで応答性能が悪ければ、彫刻針の実際の変位量は目標変位量に対するズレが大きくなる。このためセルサイズが変動して画像の再現性に問題が生じる。
【0007】本出願人は上記現象を調査した結果、前記応答特性の原因が前記ロッド部材に付勢力を与えるバネの摩擦にあることを突きとめた。すなわち前記アクチュエータは微細な駆動力を与えることを目的としたものであるため当然ながら部品自体も小型に構成している。そのため前記ロッド部材に付勢力を与えるバネについても、薄くて装着が容易な皿バネを複数枚組み合わせて用いている。このため皿バネが歪む際の摩擦によって応答特性が微小ながら可変することが判明した。
【0008】本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、簡易な方法で前記特性を改善したアクチュエータを提供することを目的とし、これにより当該アクチュエータをグラビア彫刻装置に用いた場合の応答特性等を改善することができるものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、電圧を印加して圧電素子を変位させ、当該変位を駆動力とするアクチュエータであって、内部に空間を有するケース部材と、電圧印加可能に配線された状態で前記ケース部材内に積層して保持された圧電素子と、前記圧電素子の伸縮方向の一端部に当接した状態で、前記ケース部材に対し進退可能に保持されたロッド部材と、前記ロッド部材を前記圧電素子側に向かって付勢するように、前記ケース部材内に設けられたバネ部材と、を備え、前記バネ部材の配置された空間を略密閉するとともに、当該空間に対し潤滑剤を充填したことを特徴とする。
【0010】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアクチュエータであって、前記バネ部材は1以上の皿バネであり、前記潤滑剤はシリコンオイルであることを特徴とする。
【0011】請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のアクチュエータをグラビア彫刻のための彫刻針の駆動に用いたことを特徴とするグラビア彫刻装置である。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず図1(A)は本発明に係るグラビア彫刻装置の正面概要図である。図において、グラビア彫刻装置は、両端に着脱孔hが開口した円筒状のグラビアシリンダーsに画像を彫刻する装置であって、グラビアシリンダーsを保持する第1支持部1および第2支持部2と、保持されたグラビアシリンダーに対し彫刻を行う彫刻ヘッド3と、前記第1支持部1および第2支持部2ならびに彫刻ヘッド3を支持するフレーム4とからなる。
【0013】第1支持部1は、グラビアシリンダーsの一端の着脱孔hに嵌装する円錐形のコーン部材10と、コーン部材10を回転可能に支持する固定支持台11と、コーン部材10を駆動プーリ等を介して回転駆動させる駆動手段12とからなる。第2支持部材2は、グラビアシリンダーsの他端側の着脱孔hに嵌装するコーン部材20と、前記コーン部材20を回転自在な状態で前記コーン部材10に対し対向して支持する移動支持台21と、からなり、前記移動支持台21は、フレーム4上に配置したレール22に沿って左右方向に移動可能に構成されている。この構成により種々の長さのグラビアシリンダーsを第1支持部1と第2支持部2との間で支持することができる。なお第1支持部1と第2支持部2との間で支持されたグラビアシリンダーsは前記駆動手段12の駆動によって回転させることができる。
【0014】彫刻ヘッド3は、グラビアシリンダーsの表面に向かって彫刻針を振動させる彫刻針駆動手段30と、彫刻針駆動手段30を支持するヘッド本体31と、ヘッド本体31を支持する副走査テーブル32と、を備える。前記ヘッド本体31は副走査テーブル32上においてグラビアシリンダーsの表面に向かって進退可能に構成されている。また副走査テーブル32は、フレーム4に配置したレール32に沿ってグラビアシリンダーsの軸線方向に沿って移動可能に構成されており、図示しないボールネジなどの駆動手段により駆動される。
【0015】図1(B)は前記彫刻針駆動手段30をグラビアシリンダーの軸線方向から見た拡大断面図である。図において彫刻針駆動手段30は、ベース部50と、ベース部50に立設した支持部51と、支持部51の上端に一端を固定した鋼などからなる振動板52と、振動板52の自由端側に設けられたダイヤモンドバイトなどからなる彫刻針53と、前記ベース部50に固定され前記振動板52に対し押圧力を与えるアクチュエータ54と、前記アクチュエータ54の周囲に設けられ、当該アクチュエータを冷却するための放熱手段55と、からなる。この実施の形態では、彫刻針53を固着した振動板52が従来のスタイラスに相当し、この振動板の振動に従って彫刻針がグラビアシリンダーsの表面を彫刻する。
【0016】前記アクチュエータ54はピエゾ素子などの圧電素子を備えた駆動手段であり、電圧の印加により進退するロッド部54aが振動板52の裏面側に近接配置されている。この状態でアクチュエータ54に対し所定の電圧を印加するとロッド部54aが振動板52を押圧して歪ませる。これにより振動板52に固着された彫刻針がグラビアシリンダーsの表面を彫刻する。本グラビア彫刻装置では、画像データに基づいて約10kHz程度の周期で振動板を振動させて所望の彫刻がなされる。
【0017】図2はアクチュエータ54の断面図である。図においてアクチュエータ54は、内部に収納空間を有するケース部材60と、ケース部材内に積層して収納された圧電素子61と、圧電素子61の伸縮する一端側に当接して配置され、前記ケース部材60に対し進退可能に設けられたロッド部材62と、前記ロッド部材を圧電素子側に付勢するバネ部材63と、を備える。
【0018】ケース部材60は、略円筒形のケース本体60aと、このケース本体に嵌合する蓋体60bとからなり、蓋体60bには前記ロッド部材62が進退可能なように嵌装される貫通孔が形成されている。また貫通孔には前記ロッド部材62が略気密状態で挿通されるようにシーリング部材60cでシーリングされている。なおケース本体60aと蓋体60bとの間もシーリングされている。
【0019】圧電素子61は電圧の印加により寸法変位を生じるピエゾ素子などが積層配置されたものであり、複数の素子を積層することで個々の微小な変位量が加算されるように構成されている。すなわち図2では電圧の印加により圧電素子61が図の右側方向に伸びる。この圧電素子61はケース本体60a内において樹脂64により固定されている。また圧電素子61には前記ケース本体60の一方の開口側より電圧印加用のリード線65が接続されている。
【0020】ロッド部材62は、前記蓋体60bの貫通孔に嵌装されており、その一端は台座形状になっていて前記圧電素子61の伸縮側一端に当接している。このロッド部材62の台座部62aと前記蓋体60bとの間にはバネ部材63が配置されていて、ロッド部材62を常時圧電素子61側に付勢している。
【0021】バネ部材63は前記ロッド部材62が十分貫通可能な貫通孔を有する略円盤状の皿バネ複数枚からなり、当該複数枚の皿バネを前記ロッド部材62に対し遊嵌してロッド部材62と蓋体60bとの間に圧装している。このバネ部材63を装着した空間は、前記ケース部材60と圧電素子61や樹脂64などにより略気密に遮蔽されており、本実施の形態では当該空間内に潤滑剤としてシリコンオイル66を充填してある。
【0022】この実施の形態では、前記リード線65より圧電素子61に対し所定の電圧を印加すると、ロッド部材62をバネ部材63の付勢力に抗してケース外方へ押し出す。この際、バネ部材の歪みにより生じる摩擦はシリコンオイル66により低減されるため、印加電圧に対する変位量が安定する。前述した同じ市販のアクチュエータを用いて本出願人が実験したところ、シリコンオイル66の充填により、±2Vの印加電圧を加えた場合の同アクチュエータによる駆動変位量は214×10-3μm/Vと改善され、同±20Vでの駆動変位量225×10-3μm/Vとほぼ同レベルになった。これによりアクチュエータとしての非線形性が改善され、従来よりも広い電圧範囲でステップ応答特性が良好になった。
【0023】上記実施の形態では、前記アクチュエータ54はグラビア彫刻装置に用いているが、これ以外の装置に使用してもよい。特に制御信号に応じて線形的に微小な変位量を高速で駆動させる装置に用いることができる。また上記実施の形態では、バネ部材として皿バネを用いているが、他のバネを用いても改善の効果を期待することができる。
【0024】
【発明の効果】本発明におけるアクチュエータによれば、アクチュエータの電圧に対する変位量の特性が改善され、広い範囲での応答特性が良好になる。従って、当該アクチュエータを彫刻針の駆動に用いたグラビア彫刻装置では、広い範囲において彫刻信号に対する応答性が良好になり、再現性のよい画像を形成することができるという効果がある。
【出願人】 【識別番号】000207551
【氏名又は名称】大日本スクリーン製造株式会社
【出願日】 平成13年1月17日(2001.1.17)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−210909(P2002−210909A)
【公開日】 平成14年7月31日(2002.7.31)
【出願番号】 特願2001−8389(P2001−8389)