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【発明の名称】 防汚性ポリカーボネート板
【発明者】 【氏名】田中 尚樹

【氏名】小池 匡

【要約】 【課題】ポリカーボネート基板上に光触媒活性材料層を有し、かつ長期耐候性および層間密着性に優れる耐久性の良好な防汚性ポリカーボネート板を提供すること。

【解決手段】ポリカーボネート基板と、その上に順次設けられた耐候層、有機−無機複合傾斜膜および光触媒活性材料層とを有する積層体からなり、上記耐候層として分子内に耐候性成分を有するアクリル系重合体を含む層を用いてなる防汚性ポリカーボネート板である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリカーボネート基板と、その上に順次設けられた耐候層、有機−無機複合傾斜膜および光触媒活性材料層とを有する積層体からなり、上記耐候層が、分子内に耐候性成分を有するアクリル系重合体を含む層であることを特徴とする防汚性ポリカーボネート板。
【請求項2】 ポリカーボネート基板がシート状または中空構造を有するものである請求項1に記載の防汚性ポリカーボネート板。
【請求項3】 有機−無機複合傾斜膜が、有機高分子化合物と金属酸化物系化合物とが化学的に結合した複合体を含み、かつ金属成分の含有率が該膜の厚み方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有するものであって、実質上、光触媒活性材料層との界面では金属酸化物系化合物成分のみからなり、かつ耐候層に当接している面では有機高分子化合物成分のみからなる請求項1または2に記載の防汚性ポリカーボネート板。
【請求項4】 有機−無機複合傾斜膜が、(A)分子中に加水分解により金属酸化物と結合し得る金属含有基を有する有機高分子化合物と共に、(B)加水分解により金属酸化物を形成し得る金属含有化合物を加水分解処理してなるコーティング剤を塗布して形成されたものである請求項1、2または3に記載の防汚性ポリカーボネート板。
【請求項5】 (A)成分の有機高分子化合物が、(a)分子中に加水分解により金属酸化物と結合し得る金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体と、(b)金属を含まないエチレン性不飽和単量体を共重合させてなるものである請求項4に記載の防汚性ポリカーボネート板。
【請求項6】 (B)成分の金属含有化合物が、一般式(I)
1m-n12n …(I)
(式中のR1は非加水分解性基、R2は加水分解性基、M1は金属原子を示し、mは金属原子M1の価数であり、nは0<n≦mの関係を満たす整数である。)で表される化合物または縮合オリゴマーである請求項4または5に記載の防汚性ポリカーボネート板。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は防汚性ポリカーボネート板に関し、さらに詳しくは、ポリカーボネート基板表面に耐候層、有機−無機複合傾斜膜および光触媒活性材料層が順次設けられた積層体であって、耐候性、透明性、層間密着性などに優れると共に、光触媒機能が発現され、優れた防汚性が付与されてなるポリカーボネート板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】光触媒活性材料(以下、単に光触媒と称すことがある。)は、そのバンドギャップ以上のエネルギーの光を照射すると、励起されて伝導帯に電子が生じ、かつ価電子帯に正孔が生じる。そして、生成した電子は表面酸素を還元してスーパーオキサイドアニオン(・O2-)を生成させると共に、正孔は表面水酸基を酸化して水酸ラジカル(・OH)を生成し、これらの反応性活性酸素種が強い酸化分解機能を発揮し、光触媒の表面に付着している有機物質を高効率で分解することが知られている。このような光触媒の機能を応用して、例えば脱臭、防汚、抗菌、殺菌、さらには廃水中や廃ガス中の環境汚染上の問題となっている各種物質の分解・除去などが検討されている。
【0003】また、光触媒のもう1つの機能として、該光触媒が光励起されると、例えば国際特許公開96/29375号公報に開示されているように、光触媒表面は、水との接触角が10度以下となる超親水化を発現することも知られている。このような光触媒の超親水化機能を応用して、例えば高速道路の防音壁やトンネル内照明、街路灯などに対する自動車の排ガスに含まれるススなどによる汚染防止用に、あるいは自動車のボディーコートやサイドミラー用フィルム、防曇性、セルフクリーニング性窓ガラス用などに光触媒を用いることが検討されている。
【0004】このような光触媒としては、これまで種々の半導体的特性を有する化合物、例えば二酸化チタン、酸化鉄、酸化タングステン、酸化亜鉛などの金属酸化物、硫化カドミウムや硫化亜鉛などの金属硫化物などが知られているが、これらの中で、二酸化チタン、特にアナターゼ型二酸化チタンは実用的な光触媒として有用である。この二酸化チタンは、太陽光などの日常光に含まれる紫外線領域の特定波長の光を吸収することによって優れた光触媒活性を示す。
【0005】光触媒からなる層をプラスチックなどの有機基材上に設ける場合、光触媒を直接コーティングすると、光触媒作用により該有機基材が短時間で劣化するのを免れないという問題が生じる。したがって、例えばプラスチック基板上に光触媒層を設ける場合、光触媒作用によるプラスチック基板の劣化を防止するためや、プラスチック基板に対する密着性を向上させるために、例えば特開2001−38858号に記載されているように通常シリコーン樹脂やアクリル変性シリコーン樹脂などからなる中間層が設けられている。しかしながら、このような中間層を用いても、該中間層が有機置換基を有することから、光触媒作用に対する耐性は十分ではなく、比較的短期間、例えば1〜3年程度でプラスチック基板が劣化するという問題があった。
【0006】一方、本発明者らは、先に、新規な機能性材料として種々の用途、例えば塗膜や、有機材料と無機または金属材料との接着剤、有機基材と光触媒塗膜との間に設けられ、有機基材の劣化を防止する中間膜や、有機基材と無機系または金属系材料層との密着性を向上させる中間膜などの用途に有用な、厚さ方向に組成が連続的に変化する有機−無機複合傾斜材料を見出した(特願平11−264592号)。
【0007】この有機−無機複合傾斜材料は、有機高分子化合物と金属系化合物との化学結合物を含有する有機−無機複合材料であって、該金属系化合物の含有率が材料の厚み方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有し、上記の各種用途に有用な新規な材料である。
【0008】このような傾斜材料を中間膜として、プラスチック基板と光触媒層との間に介在させた場合、プラスチック基板との密着性に優れ、しかも表面はほぼ金属系化合物であるため、光触媒層との密着性がよい上、該中間膜が光触媒作用により劣化しにくく、プラスチック基板を保護することが可能である。
【0009】しかしながら、プラスチック基板がポリカーボネート板である場合、このポリカーボネート基板は耐候性に乏しいことから、その表面に有機−無機複合傾斜膜を介して光触媒層を設けた場合、光触媒層および有機−無機複合傾斜膜の厚みは、それぞれ100nm程度であるため、紫外線が基板まで到達し、1年程度で基板の黄変や白化を引き起こす。一方、ポリカーボネート板自身に耐候性を付与したものが知られているが、これらは一般に基材中に低分子量かつ基材と化学結合を有さない耐候剤が単に練りこまれた添加型のものであるため、経時的に耐候剤のブリードが起こったり、あるいは、該基板表面は一様に耐候剤で覆われているわけでなく、耐候剤が点在している構造であるため、耐候剤の存在が少ない部位においては同様に紫外線により激しく劣化し、光触媒層やその中間膜などの塗膜を設けた場合、中間膜と基材との界面での塗膜の剥がれ等を誘発していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような事情のもとで、ポリカーボネート基板上に光触媒層を有し、かつ長期耐候性および層間密着性に優れる耐久性の良好な防汚性ポリカーボネート板を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の耐久性の良好な防汚性ポリカーボネート板を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート基板上に、分子内に耐候性成分を有するアクリル系重合体を含む耐候層、有機−無機複合傾斜膜および光触媒活性材料層を順次設けることにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】すなわち、本発明は、(1)ポリカーボネート基板と、その上に順次設けられた耐候層、有機−無機複合傾斜膜および光触媒活性材料層とを有する積層体からなり、上記耐候層が、分子内に耐候性成分を有するアクリル系重合体を含む層であることを特徴とする防汚性ポリカーボネート板、(2)ポリカーボネート基板がシート状または中空構造を有するものである上記(1)に記載の防汚性ポリカーボネート板、(3)有機−無機複合傾斜膜が、有機高分子化合物と金属酸化物系化合物とが化学的に結合した複合体を含み、かつ金属成分の含有率が該膜の厚み方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有するものであって、実質上、光触媒活性材料層との界面では金属酸化物系化合物成分のみからなり、かつ耐候層に当接している面では有機高分子化合物成分のみからなる上記(1)または(2)に記載の防汚性ポリカーボネート板、【0013】(4)有機−無機複合傾斜膜が、(A)分子中に加水分解により金属酸化物と結合し得る金属含有基を有する有機高分子化合物と共に、(B)加水分解により金属酸化物を形成し得る金属含有化合物を加水分解処理してなるコーティング剤を塗布して形成されたものである上記(1)、(2)または(3)に記載の防汚性ポリカーボネート板、(5)(A)成分の有機高分子化合物が、(a)分子中に加水分解により金属酸化物と結合し得る金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体と、(b)金属を含まないエチレン性不飽和単量体を共重合させてなるものである上記(4)に記載の防汚性ポリカーボネート板、および(6)(B)成分の金属含有化合物が、一般式(I)
1m-n12n …(I)
(式中のR1は非加水分解性基、R2は加水分解性基、M1は金属原子を示し、mは金属原子M1の価数であり、nは0<n≦mの関係を満たす整数である。)で表される化合物または縮合オリゴマーである上記(4)または(5)に記載の防汚性ポリカーボネート板、を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の防汚性ポリカーボネート板において用いられるポリカーボネート基板としては、シート状のもの、あるいは中空構造を有するものを好ましく挙げることができる。シート状ポリカーボネート基板の厚さについては特に制限はないが、通常1〜30mm、好ましくは2〜20mmの範囲のものが用いられる。また、中空構造を有するポリカーボネート基板としては、例えばハニカム型サンドイッチ板や、図1の斜視図において、(a)および(b)に示す構造のサンドイッチ板、(c)に示すグリッド板などを挙げることができる。これらの中空構造を有するポリカーボネート基板の厚さについては特に制限はないが、通常2〜30mm、好ましくは4〜20mmの範囲のものが用いられる。
【0015】このポリカーボネート基板は、その上に設けられる耐候層との密着性を向上させる目的で所望により、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、酸素プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの中で一般にコロナ放電処理法が効果および操作性などの面から、好ましく用いられる。
【0016】本発明においては、このポリカーボネート基板の表面に、まず、分子内に耐候性成分を有するアクリル系重合体を含む耐候層が設けられる。上記分子内に耐候性成分を有するアクリル系重合体としては、例えば官能基を有するアクリル系重合体の該官能基に、それと反応し得る官能基を有する耐候剤を反応させることにより、アクリル系重合体の分子内に耐候性成分を導入したものであってもよいし、あるいは分子内に重合性ビニル基を有する耐候剤とアクリル系モノマーとを共重合させることにより、アクリル系重合体の分子内に耐候性成分を導入したものであってもよい。これらの中で、製造しやすさなどの点から、後者の共重合法により得られた分子内に耐候性成分を有するアクリル系重合体が好適である。
【0017】次に、共重合法により、分子内に耐候性成分を有するアクリル系重合体の製造について説明する。この共重合法においては、原料モノマーとして、分子内に重合性ビニル基を有する耐候剤およびアクリル系モノマーが用いられる。ここで、分子内に重合性ビニル基を有する耐候剤としては、例えば分子内に重合性ビニル基を有する、紫外線吸収性化合物や光安定性化合物を挙げることができる。前記分子内に重合性ビニル基を有する紫外線吸収性化合物の例としては、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシ)プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ビニルオキシカルボニルメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物が挙げられる。また、分子内に重合性ビニル基を有する光安定性化合物の例としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどのヒンダードアミン系化合物が挙げられる。これらの分子内に重合性ビニル基を有する耐候剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】一方、アクリル系モノマーとしては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステル、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】本発明においては、前記のモノマー以外に、所望により、多官能モノマー、架橋性官能基を有するモノマーおよびその他のモノマーを用いることができる。ここで、多官能モノマーの例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この多官能モノマーを用いることにより、得られるアクリル系重合体に架橋構造が形成され、密着性や耐候性などを向上させることができる。
【0020】また、分子内に架橋性官能基を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアクリルエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド類、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この分子内に架橋性官能基を有するモノマーを用いることにより、得られるアクリル系重合体に、後述の架橋性化合物と反応する架橋点を形成させることができる。
【0021】一方、その他のモノマーの例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類、塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのN,N−ジアルキル置換アクリルアミド類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】前記の重合性ビニル基を有する耐候剤、アクリル系モノマーおよび所望により用いられる各種モノマーを、公知の方法、すなわちラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル共重合させることにより、分子内に耐候性成分を有するアクリル系重合体が得られる。このアクリル系重合体における耐候性成分の含有量は、耐候性能やその他物性などの点から、0.1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%の範囲が好ましい。
【0023】このようなアクリル系重合体の好ましい市販品の具体例としては、日本触媒(株)製、「ユーダブルUV−G300」、「同UV−G101」、「同UV−G10」、「同UV−G714」等を挙げることができる。
【0024】本発明において、前記ポリカーボネート基板上に耐候層を形成させるには、まず、適当な溶剤に前記アクリル系重合体および所望により架橋性化合物を溶解させて塗工液を調製する。この際、本発明の目的が損なわれない範囲で、各種の添加剤、例えば滑剤、帯電防止剤、耐ブロッキング剤、界面活性剤、柔軟剤、可塑剤、着色剤などを添加することができる。
【0025】前記架橋性化合物としては、例えばイソシアネート系化合物、メラミン系化合物、尿素系化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物、アミド系化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられる。これらの架橋性化合物を用いて、アクリル系重合体を架橋する場合、該アクリル系重合体としては、架橋点を有するものが用いられる。そして、架橋構造が形成されることにより、前述のように密着性や耐候性が向上する。
【0026】また、適当な溶剤の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール等のアルコール系溶剤などが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0027】このようにして得られた塗工液を、従来公知の方法、例えばディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、ポリカーボネート基板上に塗工し、加熱処理して硬化させることにより、耐候層を形成することができる。この耐候層の厚さとしては、通常2〜20μm、好ましくは2〜10μmの範囲で選定される。
【0028】このようにして形成された耐候層は、化学結合により分子内に耐候性成分が導入されたアクリル系重合体を含むことから、単に耐候性成分とアクリル系重合体とを混合したものを含む層とは異なり、耐候性成分がブリードアウトしたり、揮散したりすることが抑制されると共に、均質に分布しているので、耐候性に優れ、かつその寿命も長い。また、この耐候層は、その上に設けられる有機−無機複合傾斜膜との密着性を向上させる目的で、その表面にコロナ放電処理を施すことができる。
【0029】本発明の防汚性ポリカーボネート板においては、このようにしてポリカーボネート基板上に設けられた耐候層上に有機−無機複合傾斜膜を形成する。上記有機−無機複合傾斜膜は、有機高分子化合物と金属酸化物系化合物とが化学的に結合した複合体を含み、かつ金属成分の含有率が該膜の厚み方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有するものである。このような複合傾斜膜は、(A)分子中に加水分解により金属酸化物と結合し得る金属含有基(以下、加水分解性金属含有基と称すことがある。)を有する有機高分子化合物と共に、(B)加水分解により金属酸化物を形成し得る金属含有化合物を加水分解処理してなるコーティング剤を用いて形成させることができる。
【0030】前記(A)成分の加水分解性金属含有基を有する有機高分子化合物は、例えば(a)加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体と、(b)金属を含まないエチレン性不飽和単量体を共重合させることにより、得ることができる。
【0031】上記(A)(a)成分である加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体としては、一般式(II)
【0032】
【化1】

【0033】(式中、R3は水素原子またはメチル基、Aはアルキレン基、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、R4は加水分解性基または非加水分解性基であるが、その中の少なくとも1つは加水分解により、(B)成分と化学結合しうる加水分解性基であることが必要であり、また、R4が複数の場合には、各R4はたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよく、M2はケイ素、チタン、ジルコニウム、インジウム、スズ、アルミニウムなどの金属原子、kは金属原子M2の価数である。)で表される基を挙げることができる。
【0034】上記一般式(II)において、R4のうちの加水分解により(B)成分と化学結合しうる加水分解性基としては、例えばアルコキシル基、イソシアネート基、塩素原子などのハロゲン原子、オキシハロゲン基、アセチルアセトネート基、水酸基などが挙げられ、一方、(B)成分と化学結合しない非加水分解性基としては、例えば低級アルキル基などが好ましく挙げられる。
【0035】一般式(II)における−M24k-1で表される金属含有基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリ−n−プロポキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリ−n−ブトキシシリル基、トリイソブトキシシリル基、トリ−sec−ブトキシシリル基、トリ−tert−ブトキシシリル基、トリクロロシリル基、ジメチルメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、トリイソシアナトシリル基、メチルジイソシアナトシリル基など、トリメトキシチタニウム基、トリエトキシチタニウム基、トリ−n−プロポキシチタニウム基、トリイソプロポキシチタニウム基、トリ−n−ブトキシチタニウム基、トリイソブトキシチタニウム基、トリ−sec−ブトキシチタニウム基、トリ−tert−ブトキシチタニウム基、トリクロロチタニウム基、さらには、トリメトキシジルコニウム基、トリエトキシジルコニウム基、トリ−n−プロポキシジルコニウム基、トリイソプロポキシジルコニウム基、トリ−n−ブトキシジルコニウム基、トリイソブトキシジルコニウム基、トリ−sec−ブトキシジルコニウム基、トリ−tert−ブトキシジルコニウム基、トリクロロジルコニウム基、またさらには、ジメトキシアルミニウム基、ジエトキシアルミニウム基、ジ−n−プロポキシアルミニウム基、ジイソプロポキシアルミニウム基、ジ−n−ブトキシアルミニウム基、ジイソブトキシアルミニウム基、ジ−sec−ブトキシアルミニウム基、ジ−tert−ブトキシアルミニウム基、トリクロロアルミニウム基などが挙げられる。この(a)成分のエチレン性不飽和単量体は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】一方、上記(b)成分である金属を含まないエチレン性不飽和単量体としては、例えば一般式(III)
【0037】
【化2】

【0038】(式中、R5は水素原子またはメチル基、Xは一価の有機基である。)で表されるエチレン性不飽和単量体、好ましくは一般式(III−a)
【0039】
【化3】

【0040】(式中、R5は前記と同じであり、R6は炭化水素基を示す。)で表されるエチレン性不飽和単量体、あるいは上記一般式(III−a)で表されるエチレン性不飽和単量体と、必要に応じて添加される密着性向上剤としての一般式(III−b)
【0041】
【化4】

【0042】(式中、R7は水素原子またはメチル基、R8はエポキシ基、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有する炭化水素基を示す。)で表されるエチレン性不飽和単量体との混合物を挙げることができる。
【0043】上記一般式(III−a)で表されるエチレン性不飽和単量体において、R6で示される炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基を好ましく挙げることができる。炭素数1〜10のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、および各種のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。炭素数3〜10のシクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基などが、炭素数6〜10のアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基などが、炭素数7〜10のアラルキル基の例としては、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチチル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0044】この一般式(III−a)で表されるエチレン性不飽和単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】前記一般式(III−b)で表されるエチレン性不飽和単量体において、R8で示されるエポキシ基、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有する炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基を好ましく挙げることができる。上記置換基のハロゲン原子としては、塩素原子および臭素原子がよい。上記炭化水素基の具体例としては、前述の一般式(III−a)におけるR6の説明において例示した基と同じものを挙げることができる。
【0046】前記一般式(III−b)で表されるエチレン性不飽和単量体の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3−グリシドキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2−ブロモエチル(メタ)アクリレートなどを好ましく挙げることができる。
【0047】また、前記一般式(III)で表されるエチレン性不飽和単量体としては、これら以外にもスチレン、α−メチルスチレン、α−アセトキシスチレン、m−、o−またはp−ブロモスチレン、m−、o−またはp−クロロスチレン、m−、o−またはp−ビニルフェノール、1−または2−ビニルナフタレンなど、さらにはエチレン性不飽和基を有する重合性高分子用安定剤、例えばエチレン性不飽和基を有する、酸化防止剤、紫外線吸収剤および光安定剤なども用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】また、一般式(III−a)で表されるエチレン性不飽和単量体と一般式(III−b)で表されるエチレン性不飽和単量体とを併用する場合は、前者のエチレン性不飽和単量体に対し、後者のエチレン性不飽和単量体を1〜100モル%の割合で用いるのが好ましい。
【0049】前記(a)成分の加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体と(b)成分の金属を含まないエチレン性不飽和単量体とを、ラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル共重合させることにより、(A)成分である加水分解性金属含有基を有する有機高分子化合物が得られる。
【0050】一方、(B)成分の加水分解により金属酸化物を形成し得る金属含有化合物(加水分解性金属含有化合物)としては、一般式(I)
1m-n12n …(I)
(式中のR1は非加水分解性基、R2は加水分解性基、M1は金属原子を示し、mは金属原子M1の価数であり、nは0<n≦mの関係を満たす整数である。)で表される化合物又はその縮合オリゴマーが用いられる。
【0051】上記一般式(I)において、R1が複数ある場合は、複数のR1は同一であっても異なっていてもよく、R2が複数ある場合、複数のR2は同一であっても異なっていてもよい。R1で示される非加水分解性基としては、例えばアルキル基、アリール基、アルケニル基などが好ましく挙げられ、R2で示される加水分解性基としては、例えば水酸基、アルコキシル基、イソシアネート基、塩素原子などのハロゲン原子、オキシハロゲン基、アセチルアセトネート基などが挙げられる。また、M1で示される金属原子としては、例えばケイ素、チタン、ジルコニウム、インジウム、スズ、アルミニウムなどが挙げられる。
【0052】この一般式(I)で表される化合物又はその縮合オリゴマーとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシランなど、並びにこれらに対応するテトラアルコキシチタンおよびテトラアルコキシジルコニウム、さらにはトリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウムなどの金属アルコキシド、あるいは金属アルコキシドオリゴマー、例えば市販品のアルコキシシランオリゴマーである「メチルシリケート51」、「エチルシリケート40」(いずれもコルコート社製商品名)、「MS−51」、「MS−56」(いずれも三菱化学社製商品名)など、さらにはテトライソシアナトシラン、メチルトリイソシアナトシラン、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシランなどが挙げられるが、この(B)成分としては、金属のアルコキシドが好適である。本発明においては、この加水分解性金属含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】本発明においては、アルコール、ケトン、エーテルなどの適当な極性溶剤中において、前記(A)成分の有機高分子化合物および(B)成分である少なくとも1種の加水分解性金属含有化合物からなる混合物を塩酸、硫酸、硝酸などの酸、あるいは固体酸としてのカチオン交換樹脂を用い、通常0〜100℃、好ましくは20〜60℃の温度にて加水分解処理し、固体酸を用いた場合には、それを除去したのち、さらに、所望により溶剤を留去または添加し、塗布するのに適した粘度に調節して塗工液からなるコーティング剤を調製する。温度が低すぎる場合は加水分解が進まず、高すぎる場合は逆に加水分解・重合反応が速く進みすぎ、制御が困難となり、その結果得られる傾斜塗膜の傾斜性が低下するおそれがある。
【0054】無機成分は、その種類によっては塗工液調製後も、加水分解、重縮合が徐々に進行して塗布条件が変動する場合があるので、塗工液に不溶の固体の脱水剤、例えば無水硫酸マグネシウムなどを添加することにより、ポットライフの低下を防止することができる。この場合、塗工液は、該脱水剤を除去してから、塗布に用いる。
【0055】次に、このようにして得られた塗工液からなるコーティング剤を、ポリカーボネート基板上に設けられた耐候層上に、乾燥後の平均厚みが40〜300nmの範囲になるように、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などの公知の手段により塗膜を形成し、公知の乾燥処理、例えば40〜150℃程度の温度で加熱乾燥処理することにより、所望の有機−無機複合傾斜膜が形成される。
【0056】この複合傾斜膜の平均厚みが40nm未満では中間膜としての機能が充分に発揮されず、耐久性の防汚性ポリカーボネート板が得られにくいし、300nmを超えると傾斜膜の形成は困難である。
【0057】このようにして形成された有機−無機複合傾斜膜においては、表面層は、複合膜中の金属成分の含有率はほぼ100%であって、耐候層方向に逐次減少していき、基材近傍ではほぼ0%となる。すなわち、該有機−無機複合傾斜膜は、実質上、耐候層に当接している面が有機高分子化合物成分のみからなり、もう一方の開放系面が金属酸化物系化合物成分のみからなっている。
【0058】このような傾斜構造の確認は、例えば傾斜膜表面にスパッタリングを施して膜を削っていき、経時的に膜表面の炭素原子と金属原子の含有率を、X線光電子分光法などにより測定することによって、行うことができる。
【0059】この複合傾斜膜における金属成分の含有量としては特に制限はないが、金属酸化物換算で、通常5〜98重量%、好ましくは20〜98重量%、特に好ましくは50〜90重量%の範囲である。有機高分子化合物の重合度や分子量としては、製膜化しうるものであればよく特に制限されず、高分子化合物の種類や所望の傾斜膜物性などに応じて適宜選定すればよい。
【0060】この有機−無機複合傾斜膜は、その上に設けられる光触媒活性材料層との密着性を向上させる目的で、その表面にコロナ放電処理を施すことができる。
【0061】本発明の防汚性ポリカーボネート板においては、このようにして形成された有機−無機複合傾斜膜上に光触媒活性材料層が設けられる。この光触媒活性材料層に用いられる光触媒活性材料としては特に制限はなく、従来公知のもの、例えば二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTi49)、チタン酸ナトリウム(Na2Ti613)、二酸化ジルコニウム、α−Fe23、酸化タングステン、K4Nb617、Rb4Nb617、K2Rb2Nb617、硫化カドミウム、硫化亜鉛などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、二酸化チタン、特にアナターゼ型二酸化チタンは実用的な光触媒活性材料として有用である。この二酸化チタンは、太陽光などの日常光に含まれる紫外線領域の特定波長の光を吸収することによって優れた光触媒活性を示す。
【0062】本発明における光触媒活性材料層には、光触媒活性を促進させる目的で、上記光触媒活性材料と共に、所望により従来公知の光触媒促進剤を含有させることができる。この光触媒促進剤としては、例えば白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族金属が好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この光触媒促進剤の添加量は、光触媒活性の点から、通常、光触媒活性材料と光触媒促進剤との合計重量に基づき、1〜20重量%の範囲で選ばれる。
【0063】有機−無機複合傾斜膜上に光触媒活性材料層を形成させる方法としては特に制限はなく、様々な方法を用いることができるが、例えば真空蒸着法、スパッタリング法などのPVD法(物理気相蒸着法)や金属溶射法などの乾式法、塗工液を用いる湿式法などを好ましく挙げることができる。
【0064】乾式法としては、装置や操作が簡単である点から、特に金属溶射法が好適である。この金属溶射法は、光触媒活性材料をガス燃焼炎を使用して溶融し、微粒子状にして複合傾斜膜上に吹き付け、光触媒活性材料層を形成させる方法である。この方法においては、光触媒活性材料と共に、光触媒促進剤を用いる場合には、光触媒活性材料と光触媒促進剤との混合物を溶融して、複合傾斜膜上に吹き付けてもよいし、あるいはまず光触媒活性材料の溶融物を複合傾斜膜上に吹き付け、さらにその上に光触媒促進剤の溶融物を吹き付けてもよい。
【0065】一方、塗工液を用いる方法においては、適当な溶媒中に、光触媒活性材料および必要に応じて用いられる光触媒促進剤やコロイド粒子などの無機系バインダーを含む分散液からなる塗工液を調製し、この塗工液を複合傾斜膜上に、公知の方法、例えばディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などにより塗布し、自然乾燥または加熱乾燥することにより、光触媒活性材料層を形成させる方法などを用いることができる。また、光触媒促進剤を用いる場合、例えば光触媒活性材料および所望により用いられるコロイド粒子などの無機系バインダーを含む塗工液を複合傾斜膜上に塗布し、光触媒活性材料の塗膜を形成させたのち、溶存酸素が除去された光触媒促進剤の金属イオンを含む水溶液に、前記の複合傾斜膜上に光触媒活性材料の塗膜が形成されたプラスチックフィルムを浸漬し、光を照射して、該金属イオンを塗膜面に沈積させる光デポジション法により、光触媒活性材料の塗膜上に光触媒促進剤層を設けることによって、光触媒活性材料層を形成させることもできる。
【0066】前記塗工液の調製において必要により用いられる無機系バインダーとしては、バインダーとしての機能を発揮し得るものであればよく、特に制限されず、従来公知のもの、例えばケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タングステン、スズ、タンタルなどの金属の酸化物や水酸化物、あるいは上記金属の中から選ばれた2種以上の金属の複合酸化物や複合水酸化物などを挙げることができる。この無機系バインダーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該塗工液には、光触媒活性材料層形成用の塗工液に使用される従来公知の他の添加成分、例えばシリコーン樹脂や変性シリコーン樹脂、シランカップリング剤などを含有させることができる。
【0067】本発明の防汚性ポリカーボネート板においては、光触媒活性材料層の厚みは、通常5nm〜2μmの範囲で選定される。この厚みが5nm未満では光触媒機能が十分に発揮されないし、2μmを超えると厚みの割には光触媒機能の向上効果が認められない。好ましい厚みは10nm〜2μmであり、特に20nm〜1μmの範囲が好ましい。
【0068】本発明の防汚性ポリカーボネート板は、ポリカーボネート基板上に耐候層を介して設けられた有機−無機複合傾斜膜上に光触媒活性材料層が形成されており、そして、該複合傾斜膜が、実質上、光触媒活性材料層との界面では金属酸化物系化合物成分のみからなり、かつ耐候層に当接している面では有機高分子化合物成分のみからなるため、基材と複合傾斜膜との密着性および光触媒活性材料層と複合傾斜膜との密着性が極めて良好である。また、光触媒活性材料層との界面において、複合傾斜膜が実質上金属酸化物系化合物成分のみであるため、光触媒活性材料層の光触媒機能による複合傾斜膜の劣化が抑制される。
【0069】さらに、ポリカーボネート基板と複合傾斜膜との間に耐候層が設けられているため、光触媒活性材料層および複合傾斜膜を透過してきた紫外線によるポリカーボネート基板の劣化を効果的に抑制することができる。また、耐候層表面の紫外線による劣化が小さいため、光触媒活性材料層および複合傾斜膜は長期にわたり基板上から脱落することがなく、防汚性が維持される。なお、複合傾斜膜を介さずに、耐候層上に直接光触媒活性材料層を設けた場合、該耐候層は光触媒活性材料層の光触媒作用により、短期間で劣化する。
【0070】このような構成の本発明の防汚性ポリカーボネート板は、カーボンアーク式サンシャインウエザーメーターによる促進耐候性試験において、1800時間以上の耐候性を有し、長期間防汚性能を維持することができる。図2は、本発明の防汚性ポリカーボネート板の構成の1例を示す断面図であって、該防汚性ポリカーボネート板10は、ポリカーボネート基板1の表面に耐候層2を介して有機−無機複合傾斜膜3が設けられ、さらにその上に光触媒活性材料層4が形成された構造を有している。
【0071】本発明の防汚性ポリカーボネート板は、鉄道や高速道路の遮音板などの交通部材、カーポート屋根、窓、簡易ハウスの間仕切り板、採光板などの建築部材等に好適に用いられる。
【0072】
【実施例】次に、本発明を、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0073】なお、各例における諸特性は、以下に示す方法に従い求めた。
(1)中間膜の傾斜性XPS装置「PHI−5600」[アルバック・ファイ(株)製]を用い、アルゴンスパッタリング(4kV)を3分間隔で施して膜を削り、膜表面の炭素原子と金属原子の含有率を、X線光電子分光法により測定し、傾斜性を調べた。
【0074】(2)製品の耐候性光触媒膜付ポリカーボネート板について、JIS K7350に準じたカーボンアーク式サンシャインウエザーメーター試験法[試験機:スガ試験機(株)製のサンシャインウエザーメーター「S300」]により、促進耐候試験(光源:225W/m2、サイクル:照射102分間、照射+降雨18分間の2時間1サイクル、ブラックパネル温度:63±3℃、相対湿度:55±5%)を行い、下記のように表面状態を観察すると共に、ヘイズ値、水接触角および黄変度を測定した。良否の判定は以下に示す(イ)〜(ニ)にて行い、いずれか一つ以上が規定値を超えた場合の試験時間をその製品における劣化時間とした。
【0075】(イ) 表面状態キーエンス(株)製、表面形状測定顕微鏡「VF−7500」にて1250倍で表面状態を観察し、塗膜の剥離や亀裂の有無などを確認し、次の判定基準で評価した。
○:塗膜の剥離、亀裂なし×:塗膜の剥離、亀裂のいずれかあるいは両方が発生【0076】(ロ) ヘイズ値日本電色(株)製ヘイズメーター「NDH2000」を用い、JIS K7361に準拠して行った。初期の透明性の維持のためには、初期に対するヘイズ値の上昇度が5%未満であることが好ましい。
【0077】(ハ) 水接触角エルマ販売(株)製接触角測定器「G−1−1000」を用い、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下で測定した。防汚性維持のためには、接触角が10°未満であることが好ましい。
【0078】(ニ) 黄変度(株)島津製作所製可視紫外分光光度計「UV2100」を用い、JIS K7103に準拠して測定した。初期に対するYI値の上昇度(ΔYI)が3%未満であることが黄変が少なく好ましい。
【0079】実施例1チタンテトライソプロポキシド120gをエタノール100gに溶解した溶液に、濃塩酸25g、水5gとエタノール50gの混合溶液を撹拌しながらゆっくり滴下した。この溶液を室温で6時間撹拌し、無機成分液(a)を得た。メチルメタクリレート10.9gおよびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.36gの混合溶液に、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.1gを溶解させた後、撹拌しながら75℃で3時間反応させて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が約7万の共重合体(A)を得た。この共重合体1.0gをメチルイソブチルケトン100mlに溶解させ、10g/L濃度の有機成分溶液(b)を得た。
【0080】メチルイソブチルケトン40mlに有機成分溶液(b)10ml、2−エトキシエタノール40mlを加えた後、無機成分液(a)10mlをゆっくり撹拌しながら加えて塗工液(c)を調製した。アクリルポリオール系のハルスハイブリッド樹脂[日本触媒(株)製「ユーダブルUV−G300」]10gおよび硬化剤[住友バイエルウレタン(株)製「スミジュールN3200」]1.3gを、酢酸エチル7gと1−エトキシ−2−プロパノール18gとの混合溶剤に完全に溶解させ、耐候層用塗工液(d)を調製した。
【0081】基材として、ポリカーボネート板[筒中プラスチック工業(株)製「ポリカエースEC100」、100mm×100mm×5mm]を用い、その表面に前記耐候層用塗工液(d)をスピンコート(300rpm、20秒間)したのち、80℃のファインオーブン中で18時間加熱処理して、厚み3.5μmの耐候層を形成した。次いで、この耐候層上に、前記塗工液(c)をスピンコート(1500rpm、20秒間)したのち、80℃で15時間加熱処理して、厚み60nmの光触媒中間膜を形成した。なお、この際、耐候層と光触媒中間膜との密着性を向上させるために、該耐候層に予め5万J/m2程度のコロナ放電処理を施してもよい。また、前記光触媒中間膜は、XPS測定結果(図3)より、傾斜性を有する膜であることが分かった。
【0082】次に、この光触媒中間膜上に、石原産業(株)製光触媒液「STK−211」をスピンコート(1500rpm、20秒間)したのち、80℃で1時間加熱処理して、厚み50nmの光触媒膜を形成し、光触媒膜付ポリカーボネート板を作製した。なお、この際、光触媒膜と光触媒中間膜との密着性を向上させるために、該光触媒中間膜に1万J/m2程度のコロナ放電処理を施してもよい。諸特性を表1に示す。
【0083】この光触媒膜付ポリカーボネート板について、カーボンアーク式サンシャインウエザーメーターによる促進耐候性試験を行なった結果、3000時間経過後も光触媒膜および中間膜の剥離・亀裂発生などは皆無であった。初期に対するヘイズ値の上昇度は5%未満であった(初期0.39%に対して3.44%)。水接触角は5°であり超親水性を示し、またΔYI=0.21であり黄変は見られなかった。
【0084】実施例2実施例1における基材として、ポリカーボネート板の代わりに、ポリカーボネート製の2枚の基板間に同じくポリカーボネート製の多数のリブをサンドイッチ状に一体成形することで中空コア部を有するポリカーボネート板を用いた以外は、実施例1と同様にして、光触媒膜付中空構造ポリカーボネート板を作製した。ここで、光触媒中間膜は、XPS測定結果(図4)から、傾斜性を有する膜であることが確認された。諸特性を表1に示す。
【0085】この光触媒膜付中空構造ポリカーボネート板について、カーボンアーク式サンシャインウエザーメーターによる促進耐候性試験を行なった結果、3000時間経過後も光触媒膜および中間膜の剥離・亀裂発生などは皆無であり、ヘイズ値の上昇度は5%未満であった(初期29.08%に対して33.10%)。水接触角は5°であり超親水性を示し、またΔYI=1.57であり黄変は見られなかった。
【0086】実施例3実施例1において、耐候層形成時におけるスピンコートの回転数を1000rpmとし、厚み1.48μmの耐候層を形成した以外は、実施例1と同様にして、光触媒膜付ポリカーボネート板を作製した。ここで、光触媒中間膜は、XPS測定結果(図5)から、傾斜性を有する膜であることが確認された。諸特性を表1に示す。
【0087】この光触媒膜付ポリカーボネート板について、カーボンアーク式サンシャインウエザーメーターによる促進耐候性試験を行なった結果、1800時間経過後の観察で塗膜の剥離・亀裂はほとんど認められず、ヘイズ値上昇度は5%未満であった(初期0.40%に対し5.30%)。水接触角は9°、またΔYI=2.83であり黄変はほとんど認められなかった。
【0088】実施例4耐候層として以下に示すアクリル共重合体Aを用いた以外は実施例1と同様にして光触媒膜付ポリカーボネート板を作成した。ここで得られた耐候層の厚みは4.25μmであった。尚、アクリル共重合体Aおよび該塗工液(e)の詳細な調製方法は以下の通りである。
【0089】まず、メチルメタクリレート9.12g、メタクリル酸2―ヒドロキシエチル2.59g、重合性のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「RUVA−93」(大塚化学(株)製)1.83g、重合性ヒンダードアミン系光安定剤「LA−82」(旭電化工業(株)製)1.86gおよび2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.22gを混合溶解させた後、75℃で3時間反応させて紫外線吸収剤および光安定化剤を分子内に有するアクリル共重合体Aを得た。
【0090】次に、該アクリル共重合体A5gと硬化剤 [住友バイアルウレタン(株)製、「スミジュールN3200」] 1gを、酢酸エチル7gと1−エトキシ−2−プロパノール18gとの混合溶剤に完全に溶解させ、耐候層用塗工液(e)を調製した。
【0091】光触媒中間膜はXPS測定結果(図6)から傾斜性を有する膜であることが確認された。諸特性を表1に示す。この光触媒膜付ポリカーボネート板について、カーボンアーク式サンシャインウエザーメーターによる促進耐候試験を行った結果、3000時間経過後も光触媒および中間膜の剥離・亀裂発生などは皆無であり、ヘイズ値上昇度は5%未満であった(初期0.51%に対して5.20%)。水接触角は8°であり超親水性を示し、ΔYI=1.81であり黄変は見られなかった。
【0092】比較例1実施例1において、耐候層を基板上に設けなかったこと以外は、実施例1と同様にて、光触媒膜付ポリカーボネート板を作製した。ここで、光触媒中間膜は、XPS測定結果(図7)から、傾斜性を有する膜であることが確認された。諸特性を表1に示す。
【0093】この光触媒膜付ポリカーボネート板について、カーボンアーク式サンシャインウエザーメーターによる促進耐候性試験を行なった結果、300時間経過時点ですでに塗膜の亀裂および剥離が見られた。ヘイズ値上昇度は5%以上であった(初期0.39%であったのに対し13.91%)。水接触角は15゜であり、またかなりの黄変が見られた(ΔYI=11.26)。
【0094】比較例2実施例1において、基材に耐候層付ポリカーボネート板を用いず、代わりに耐候剤添加型ポリカーボネート板(筒中プラスチック工業(株)製「ポリカエースEC100U」、100mm×100mm×3mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、光触媒膜付ポリカーボネート板を作製した。ここで、光触媒中間膜はそのXPS測定結果(図8)から、傾斜性を有する膜であることが確認された。諸特性を表1に示す。
【0095】この光触媒膜付ポリカーボネート板について、カーボンアーク式サンシャインウエザーメーターによる促進耐候性試験を行なった結果、900時間経過時点で黄変は見られなかった(ΔYI=1.83)が、塗膜の剥離・亀裂が見られた。ヘイズ値上昇度は5%以上であり(初期0.57%であったのに対して6.51%)、水接触角は18°であった。
【0096】比較例3実施例1において、光触媒中間膜を設けずに、耐候層上に直接光触媒膜を設けた以外は、実施例1と同様にして、光触媒膜付ポリカーボネート板を作製した。諸特性を表1に示す。
【0097】この光触媒膜付ポリカーボネート板について、カーボンアーク式サンシャインウエザーメーターによる促進耐候性試験を行なった結果、300時間経過時点で黄変は見られなかったが(ΔYI=0.74)、塗膜の剥離が確認され、ヘイズ値上昇度は5%以上であり(初期0.46%であったのに対し7.88%)、水接触角も20°であった。
【0098】
【表1】

【0099】
【発明の効果】本発明によれば、ポリカーボネート基板表面に、分子内に耐候性成分を有するアクリル系重合体を含む耐候層、有機−無機複合傾斜膜および光触媒活性材料層を順次設けることにより、耐候性、透明性、層間密着性などに優れると共に、光触媒機能が発現され、優れた防汚性が付与されてなるポリカーボネート板が得られる。この防汚性ポリカーボネート板は、実使用10年以上の防汚性および透明性を有している。
【出願人】 【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部日東化成株式会社
【出願日】 平成13年6月1日(2001.6.1)
【代理人】 【識別番号】100080850
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 静男
【公開番号】 特開2002−361807(P2002−361807A)
【公開日】 平成14年12月18日(2002.12.18)
【出願番号】 特願2001−167155(P2001−167155)