| 【発明の名称】 |
金属板ラミネート用ポリエステルフィルム、およびこれを用いてなる金属板、金属容器 |
| 【発明者】 |
【氏名】楠 幹夫
【氏名】日置 正信
【氏名】乾 由起子
【氏名】氈受 彰
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| 【要約】 |
【課題】金属板との熱ラミネート性、缶の成形性、特に絞り成形やしごき成形等の高次加工性に優れ、さらに内容物の保味保香性にも優れたフィルムラミネート金属缶に好適なフィルム提供する。
【解決手段】ポリエステルA層とポリエステルB層とを積層してなる少なくとも2層以上の積層フィルムであって、■A層が、PBT又はこれを主体とするポリエステル(I)90〜45質量%と、PET又はこれを主体とするポリエステル(II)10〜55質量%とからなり、A層中の(I)と(II)のエステル交換指数が1〜10%であり、■B層が、(I)25〜55質量%と(II)75〜45質量%とからなり、B層中の(I)と(II)のエステル交換指数が7%以下であり、■A層とB層がそれぞれ、200〜223℃に(I)の融点を、230〜256℃に(II)の融点を有するフィルム。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリエステルA層とポリエステルB層とを積層してなる少なくとも2層以上の積層フィルムであって、■ポリエステルA層が、ポリブチレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステル(I)90〜45質量%と、ポリエチレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステル(II)10〜55質量%とからなり、A層中のポリエステル(I)と(II)のエステル交換指数が1〜10%であり、■ポリエステルB層が、ポリエステル(I)25〜55質量%とポリエステル(II)75〜45質量%とからなり、B層中のポリエステル(I)とポリエステル(II)のエステル交換指数が7%以下であり、■ポリエステルA層とB層がそれぞれ、200〜223℃にポリエステル(I)の融点を、230〜256℃にポリエステル(II)の融点を有することを特徴とする金属板ラミネート用フィルム。 【請求項2】 A層とB層の厚み比R(R=A層厚み/B層厚み)が0.5〜5である請求項1に記載の金属板ラミネート用フィルム。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の金属板ラミネート用フィルムのA層が直接又は接着剤を介して金属板に積層されてなるフィルムラミネート金属板。 【請求項4】 請求項3に記載のフィルムラミネート金属板を用いて成形された金属容器。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は金属板ラミネート用ポリエステルフィルム、およびそれを用いたフィルムラミネート金属板および金属容器に関し、特に、金属板にラミネートして得られるフィルムラミネート金属板が、絞り成形やしごき成形等に使用することができるポリエステルフィルム、およびそれを用いたフィルムラミネート金属板および金属容器に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、金属缶の内外面に腐食防止の目的で、熱硬化性樹脂を主成分とする溶剤型の塗料が塗布されていた。しかし、溶剤型塗料は塗膜を形成するために高温での加熱が必要であり、その時に多量の溶剤が発生するため、作業の安全性および環境の面からも問題があった。そのため、最近は溶剤を用いない腐食防止法として、熱可塑性樹脂による金属板の被覆が提案され、熱可塑性樹脂の中でも特にポリエステルは加工性、耐熱性等に優れることから、ポリエステルをベースとした金属板ラミネート用フィルムの開発が進められている。 【0003】フィルムを金属板に被覆する方法としては、熱可塑性樹脂を溶融させて直接金属上に押出す方法や、熱可塑性樹脂フィルムを直接、又は接着剤を介して熱圧着する方法がある。中でも、熱可塑性樹脂フィルムを用いる方法は、樹脂の取扱いが容易で作業性に優れ、かつ、樹脂膜厚の均一性にも優れるために有効な手法とされている。また、接着剤を介した方法では環境面やコストの問題があるために、フィルムを直接熱圧着する方法が有利であり注目されている。 【0004】熱可塑性樹脂フィルムを被覆した金属缶は、鋼板、アルミ板等の金属板(メッキ等の表面処理を施したものを含む)に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートした、ラミネート金属板を成形加工して製造される。このような用途に用いられる熱可塑性樹脂フィルムには、■金属板との熱ラミネート性がよいこと、■缶の成形性に優れていること、つまり、缶の成形時にフィルムの剥離、亀裂、ピンホール等の発生がないこと、■缶成形後の印刷、レトルト殺菌処理および長期の保存の際に脆化しないこと、■内容物の保味保香性に優れること等の数々の特性が同時に要求される。 【0005】このような金属板ラミネート用ポリエステルフィルムとしては、熱ラミネート性を付与し、缶の成形性を向上させる目的で、他の成分を混合したり、共重合する等、いくつかの方法が提案されている。例えば、(イ)ポリエチレンテレフタレート(PET)に他の成分を共重合したものが特公平8−19245号公報、特公平8−19246号公報、特許第2528204号公報等に、また、(ロ)融点が210〜245℃のエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする共重合ポリエステル99〜60重量%とポリブチレンテレフタレート(PBT)もしくはその共重合体1〜40重量%を配合したものが、特許第2851468号公報、特開平5−186612号公報、特開平5−186613号公報にそれぞれ開示されている。また、(ハ)融点が210〜245℃のエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする共重合ポリエステル99〜50重量%とPBTもしくはその共重合体1〜50重量%を配合した層を含む多層フィルムにおいて、そのエステル交換率を3%以上としたもの(特開平10−315412号公報、特開平11−207909号公報)が開示されている。 【0006】しかしながら、(イ)ではPETを共重合化し、低融点化、低結晶化することにより熱ラミネート性と成形性は改良されるものの、缶成形後の熱処理およびレトルト殺菌処理時に脆化し、耐衝撃性が低下するという問題があった。 【0007】また、(ロ)ではPBT系の樹脂を配合することにより、熱ラミネート性と上記の缶の脆化や耐衝撃性は向上するが、金属との熱ラミネート性や接着性が十分ではなく、特に絞り成形やしごき成形等の高次加工成形性が十分ではなかった。 【0008】また(ハ)では共重合PETを表層にし、共重合PETとPBTを主するポリエステルとの混合物を下層に積層し、その下層のポリエステル間のエステル交換指数を規定したフィルムが提案されている。しかし、表層の共重合PETの特性に基づくと思われる、レトルト後、経時的に脆化しやすく耐衝撃性が低下する問題があった。また、その低い結晶性が原因と思われる高温度で湿熱性の低下し易い問題と関連して、内容物の保護特性、レトルト白化耐性等は改良出来ていなかった。また、下層にはPBTやアジピン酸が共重合されたPBTを主とするポリエステルが50%以下しか添加されていないこと、またそのエステル交換率が3%以上で実施例ではさらに高い5%以上であることから、そのフィルムは結晶性が低く、成形加工性や金属との接着性は改善されるものの、耐レトルト性、バリアー性が低く、缶として使用される場合に不可欠な耐熱性や耐衝撃性や内容物の保護特性の面から見て総合的な特性上、まだ物足りないものであった。 【0009】これに対して、本発明者らは、先にPBT、又はこれを主体とするポリエステル(A)90〜45質量%と、PET、又はこれを主体とするポリエステル(B)10〜55質量%とからなる二軸延伸フィルムを提案している(特開平9−194604号公報、特開平10−110046号公報)。ここに提案されたフィルムは、結晶化度が高く、かつ比較的低温で熱圧着でき、しかも得られたラミネート金属板は加工性に優れている。また、レトルト殺菌処理および長時間の保存後においてもフィルムが脆化せず、耐衝撃性にも優れている。 【0010】しかし、最近、製罐速度の増大、缶サイズの大容量化、缶の薄肉化の要求が進みつつあり、絞り加工やしごき成形時の金属の変形加工比がさらに増大しつつあること、また加工治具との摩擦が更に大きくなることから、特に厳しい変形を伴う缶の胴部において上記フィルムを使用しても、ラミネート金属板の製造条件、最終缶の成形加工条件の微妙な揺らぎによってはフィルムが白化したりミクロクラックが発生したりする問題が新たに生じた。また、加工比の増大によって生じたフィルムの残留ひずみによって金属との部分的な接着不良による剥離が生じ、内容物の保護性に懸念が生ずる場合も想定された。また、製罐時の絞りしごき加工治具とフィルムとの粘着が生じ、缶成形時に缶胴部が破断する問題が指摘されるなど、更に厳しい加工条件下でも性能の維持できるフィルムへの改善が望まれるに至った。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、金属板との熱ラミネート性、缶の成形性、特に絞り成形やしごき成形等の高次加工性に優れ、さらに内容物の保味保香性にも優れたフィルムラミネート金属缶に好適な金属ラミネート用ポリエステルフィルム、ラミネート金属板およびそれを用いた金属容器を提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、結晶性の異なる2種以上ポリエステル、すなわちPBT主体のポリエステル(I)とPET主体のポリエステル(II)の特定の配合割合からなる少なくとも2種以上のポリエステル層を積層したポリエステルフィルムを用い、それぞれの層中においてポリエステル(I)とポリエステル(II)との間に生じるエステル交換反応の程度を特定範囲に調整したポリエステルフィルムを用いることにより、金属との熱ラミネート性、缶の成形性、特に絞り成形やしごき成形等に優れ、さらに耐衝撃性、保味保香性に優れた金属容器を製造し、提供できることを見出し本発明に到達した。 【0013】すなわち、本発明の要旨は次の通りである。ポリエステルA層とポリエステルB層とを積層してなる少なくとも2層以上の積層フィルムであって、■ポリエステルA層が、ポリブチレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステル(I)90〜45質量%と、ポリエチレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステル(II)10〜55質量%とからなり、A層中のポリエステル(I)と(II)のエステル交換指数が1〜10%であり、■ポリエステルB層が、ポリエステル(I)25〜55質量%とポリエステル(II)75〜45質量%とからなり、B層中のポリエステル(I)とポリエステル(II)のエステル交換指数が7%以下であり、■ポリエステルA層とB層がそれぞれ、200〜223℃にポリエステル(I)の融点を、230〜256℃にポリエステル(II)の融点を有することを特徴とする金属板ラミネート用フィルム。 【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明において、PBT主体のポリエステル(I)としてはPBT、又はこれに他の成分を共重合したものであるが、ポリエステル(II)とブレンドしたポリエステル層A、Bにおいて、ポリエステル(I)の融点は200℃以上、PBTの融点223℃以下であることが必要であり、融点が200℃より低いとポリエステルとしての結晶性が低く、結果としてフィルムの耐熱性が低下する。共重合PBTを用いる場合には、共重合割合は融点が上記範囲内となるように共重合の割合や共重合する成分の構造を選択すればよいが、全アルコール成分に対し、1,4−ブタンジオールは80モル%以上が好ましく、特に90モル%以上が好ましい。1,4−ブタンジオールが80モル%未満であると、結晶性、特に結晶化速度が低下し、レトルト処理後の耐衝撃性やバリアー特性が低下する。 【0015】共重合成分としては、特に限定されないが、酸成分としてイソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンや乳酸などが挙げられる。また、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等が挙げられる。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3官能化合物等を少量用いてもよい。これらの共重合成分は2種以上併用してもよい。 【0016】本発明のフィルムにおいて、PET主体のポリエステル(II)としては、PET、又はPETに他の成分を共重合したものを挙げることができるが、ポリエステル(I)とブレンドしたポリエステル層A、Bにおいて、ポリエステル(II)の融点は230〜256℃の範囲であることが必要であり、好ましくは236〜256℃の範囲である。さらに好ましくは、246〜256℃の範囲である。融点が230℃未満であると、結晶性が低下し、レトルト処理後に白化や白斑が発生したり、レトルト処理後の耐衝撃性が低下したりする。融点が256℃を超えると、熱ラミネート性が低下する。特に、ポリエステル(II)の融点が246℃以上であると、耐熱性、レトルト処理後の耐衝撃性および長期保存後の耐衝撃性が向上する。また、缶加工時の治具との融着トラブルや、缶胴部の加工途中における破断トラブルの低減に効果がある。 【0017】PETに共重合することができる成分としては特に限定されず、ポリエステル(I)と同様の化合物を例示できる。 【0018】本発明のポリエステルフィルムを製造するために用いられる原料ポリエステルの極限粘度は、ポリエステル(I)は0.6〜1.6、ポリエステル(II)は0.5〜0.9が好ましく、溶融混合した後の極限粘度は0.6〜1.0、特に0.75〜1.0の範囲が好ましい。極限粘度が上記範囲未満では、フィルムの実用性能が不足し、特に缶の高次加工時に破断したりクラックが発生したりすることがある。また、極限粘度が上記範囲を超える場合にはフィルムの生産工程において樹脂の溶融押出機にかかる負荷が大きくなり、生産速度を犠牲にせざるを得なかったり、押出機中の樹脂の溶融滞留時間が長くなりすぎてポリエステル樹脂間の反応が進みすぎたりして、フィルムの特性の劣化を招き、結果的にラミネートフィルムの金属板の物性低下をもたらす。また、極限粘度の高いものは、重合時間や重合プロセスが長く、コストを押し上げる要因ともなる。 【0019】原料のポリエステルの重合方法は特に限定されず、例えば、エステル交換法、直接重合法等で重合することができる。エステル交換触媒としては、Mg、Mn、Zn、Ca、Li、Tiの酸化物、酢酸塩等が挙げられる。また、重縮合触媒としては、Sb、Ti、Ge酸化物、酢酸塩等の化合物が挙げられる。重合後のポリエステルは、モノマーやオリゴマー、副生成物のアセトアルデヒドやテトラヒドロフラン等を含有しているため、減圧もしくは不活性ガス流通下、200℃以上の温度で固相重合することが好ましい。 【0020】ポリエステルの重合においては必要に応じ添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を添加することができる。酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等を、熱安定剤としては、例えばリン系化合物等を、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系の化合物等を挙げることができる。また、異なるポリエステル間の反応抑制剤として、従来知られているリン系化合物を重合前、重合中、重合後に添加することが好ましい。特に、固相重合前の溶融重合終了時に添加することがさらに好ましい。 【0021】本発明において、ポリエステルA層におけるポリエステル(I)とポリエステル(II)は、(I)/(II)=90〜45/10〜55(質量%)、好ましくは(I)/(II)=80〜50/20〜50(質量%)、さらに好ましくは(I)/(II)=70〜55/30〜45(質量%)であることが必要である。また、ポリエステルB層におけるポリエステル(I)とポリエステル(II)は、(I)/(II)=25〜55/75〜45(質量%)、さらに好ましくは(I)/(II)=30〜55/70〜45(質量%)であることが必要である。 【0022】ポリエステルA層におけるポリエステル(I)が90質量%を超えると、結晶性の高いポリエステル(I)の特性が顕著に発現して、フィルムラミネート金属板の成形性が低下し、また、耐衝撃性も悪くなる。また、金属との接着性も低下する。ポリエステル(I)が45質量%未満の場合には結晶化速度が低下し、レトルト処理後の物性が低下する。また、金属との接着性も悪くなる。特に、ポリエステル(I)の含有量が70〜55質量%の範囲の場合、ラミネート金属板の成形性、耐衝撃性、金属との接着性、レトルト処理後の物性バランスがとれ、好ましい形態である。 【0023】ポリエステルB層におけるポリエステル(I)が55質量%を超えると耐熱性が低下し、金属板を高速で、高次の絞りしごき加工を行う場合、加工治具との摩擦が大きくなり、成形性が低下する。またそれに伴い最終製品の品位が低下する。また、缶の耐食性、内容物のフレーバー維持性が悪化する。ポリエステル(I)が25質量%未満の場合には、缶の成形加工時に変形追随性が悪くなり、フィルムの白化やマイクロクラックが発生し、缶内面では耐食性、内容物の保護性が悪くなる。外面では印刷図柄の光沢度が低下したり、耐食性に問題が生じたりする。特に、ポリエステル(I)の含有量が30〜55質量%の範囲の場合、ラミネート金属板の成形性、内容物のフレーバー維持性、レトルト処理後の物性バランスがとれ、好ましい。 【0024】本発明のフィルムは、ポリエステルA層中のポリエステル(I)とポリエステル(II)のエステル交換指数(測定法は実施例に記載)が1〜10%、さらに好ましくは2〜7%であることが必要である。A層のエステル交換率が高くなり、ポリエステル(I)と(II)の構成成分のランダム化が進行した場合、特に10%を超えると、フィルムの融点が低下し、耐熱性が低下する。また、内容物の保護性も低下する。逆に1%未満の場合、ポリエチレンテレフタレート成分がその性質を保持したまま、また結晶性の高いPBTがA層中に存在するために、フィルムの変形追随性が悪く、金属板の成形加工性が低下する。一方、ポリエステルB層中のポリエステル(I)とポリエステル(II)のエステル交換指数は7%以下、好ましくは5%以下であることが必要である。B層のエステル交換率が7%を超えると、フィルムの融点が下がり、金属板の缶への成形加工の際に加工治具と粘着しやすくなり、摩擦が大きくなって缶表面が不均一になったり、最悪の場合、成形加工途上で金属の破断にいたったりする。 【0025】エステル交換指数を上記範囲内に調整する方法は特に限定されないが、押出機中でのポリエステル(I)と(II)の溶融温度や、押出機内での混練度、押出機中での滞留時間を調整する等の方法が挙げられる。溶融混合方法は特に限定されず、ブレンドした原料チップを同一の押出機中で混合溶融する方法、また、各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法等が挙げられるが、エステル交換反応の制御の面からは後者の方法が好ましい。またエステル交換はポリエステルの重合触媒の種類、量、その残存活性度によっても大きく影響される。したがって、触媒の選択、量の適正化、また、リン化合物などの触媒活性抑制剤を添加する等の技術を併用してもよい。 【0026】本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル層Aとポリエステル層Bとを積層してなる少なくとも2層以上の構造を有するものであり、かかる多層構造のフィルムは、例えば、それぞれの層を構成するポリエステル組成物を別々に溶融して押出し、固化前に積層融着させた後、二軸延伸、熱固定する方法、ポリエステルA層とB層とを別々に溶融、押出してフィルム化し、未延伸状態又は延伸後、両者を積層融着させる方法などによって製造することが出来るが、プロセスの簡便性から、複層ダイスを用い、固化前に積層融着させることが好ましい。 【0027】ポリエステルA層の厚みとB層の厚み比R(R=A層の厚み/B層の厚み)は0.5〜5の範囲が好ましい。更には、1〜4の範囲が好ましい。Rが0.5未満の場合、缶への加工時において変形追従性が悪くなる。一方、Rが5を超えると、缶成形用治具との接触面であるB層の厚みが薄くなりすぎて表面の十分な硬度が得られず、治具との粘着を生じやすくなる。 【0028】フィルムの製造方法としては、A層およびB層を構成するポリエステル(I)と(II)を夫々の適正な比率にブレンドし、A層形成用の押出機とB層形成用押出機より別々に250〜280℃の温度で3〜15分間溶融混合して押出し、夫々の層を合流させる構造を有するTダイ(複層ダイスと呼ぶ)で固化前に積層合流させた後シート状に押出し、このシートを室温以下に温度調節した冷却ドラム上に密着させて冷却し、得られた未延伸フィルムをその後同時2軸延伸機に導き、50〜150℃の温度でMDおよびTD(横方向)に夫々2〜4倍程度の延伸倍率となるよう二軸延伸し、さらにTDの弛緩率を数%として、80〜220℃で数秒間熱処理を施すことによって製造することが出来る。また、同時延伸機に導く前に、1〜1.2倍程度の予備縦延伸を施しておいてもよい。 【0029】またこのフィルムは逐次延伸法によっても製造することが出来る。その方法を概説すると、前記未延伸フィルムをロール加熱、赤外線等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。延伸は2個以上のロール周速差を利用し、ポリエステルのガラス転移点(Tg)〜Tgより40℃高い温度の範囲で2.5倍以上、3.6倍以下とするのが好ましい。縦延伸フィルムは続いて連続的に、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、横延伸はポリエステルのTg〜Tgより40℃高い温度で開始し、最高温度はポリエステルの融点(Tm)より(100〜40)℃低い温度であることが好ましい。横延伸の倍率は最終的なフィルムの要求物性に依存し調整されるが、2.7倍以上、更には3.0倍以上とするのが好ましい。さらに3.6倍以上とするのが好ましい。延伸に続く熱固定処理時にフィルム幅方向に2〜20%の伸張を加えてもよいが、この伸張率はトータルの延伸倍率の中に含まれることが好ましい。熱固定処理後、フィルムの熱収縮特性を調整するためフィルムの幅を連続的に縮める処理(リラックス処理と呼ぶ)を行いその後フィルムのTg以下に冷却して二軸延伸フィルムを得る。 【0030】延伸後の熱処理は、フィルムの寸法安定性を付与するために必要な工程であるが、その方法としては、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法等の公知の方法を用いることができる。このうち、均一に精度良く加熱できることから熱風を吹き付ける方法が最適である。 【0031】フィルム製造時や製缶時の工程通過性をよくするため、シリカ、アルミナ、カオリン等の無機滑剤を少量添加して製膜してフィルム表面にスリップ性を付与することが望ましい。さらに、フィルム外観や印刷性を向上させるため、たとえば、フィルムにシリコーン化合物等を含有させることもできる。A層とB層との積層フィルムの場合、最終金属に接着されるA層のかかる無機滑剤の含有量はB層のそれに比べ同等か、それよりも少ないことが好ましい。また各フィルムへのかかる無機滑剤の含有量は0.001〜0.5質量%、好ましくは0.1〜0.3質量%である。また、滑剤の機能と併用して、隠蔽性の目的からA層又はB層に二酸化チタンを20%程度まで添加することも出来る。特に同時二軸延伸においては40%を超える二酸化チタンを添加しても延伸フィルムを得ることができる。 【0032】本発明のポリエステルフィルムは、鋼板、アルミ等の金属板に熱ラミネートされるが、ラミネートする金属板は、クロム酸処理、リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理等の化成処理や、ニッケル、スズ、亜鉛、アルミ、砲金、真鍮、その他の各種メッキ処理などを施した鋼板を用いることができる。 【0033】本発明のフィルムには、金属板との熱圧着性及びその後の密着性を更に向上させる目的で、共押出法やラミネート加工、あるいはコーティング加工により接着層を設けることができる。接着層は乾燥膜厚で1μm以下が好ましい。接着層は、特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂やこれらの各種変性樹脂からなる熱硬化性樹脂層であることが好ましい。また、金属板と熱圧着するフィルムの反対側には、金属缶体の外観や印刷性を向上させたり、フィルムの耐熱性や耐レトルト性等を向上させるために1種もしくは2種以上の樹脂層を設けることができる。これらの層は、共押出法やラミネートあるいはコーティング加工により設けることができる。 【0034】本発明のフィルムと金属板をラミネートする方法としては、金属板を予め160〜250℃まで予熱しておき、これとフィルムとを、金属板より30℃、更には50℃以上低く温度制御されたロールによって圧接して熱圧着させた後、室温まで冷却することにより連続的に製造される。金属板の加熱方法としては、ヒーターロール伝熱方式、誘導加熱方式、抵抗加熱方式、熱風伝達方式等があげられ、特に、設備費及び設備の簡素化を考慮した場合、ヒーターロール伝熱方式が好ましい。また、ラミネート後の冷却方法については、水等の冷媒中に浸漬する方法や冷却ロールと接触させる方法を用いることができる。 【0035】以上のようにして得られた金属板は、そのまま加工処理を施してもよいが、ポリエステルの融点より10〜30℃高い温度で熱処理後急冷して、本ポリエステルフィルムを非晶状態にすることにより、さらに高い加工性を付与することができる。 【0036】金属容器としては、飲食料を充填して使用に供することができ得る形態にまで加工処理が施された金属容器及びその一部分、例えば巻き締め加工が可能な形状に成形された缶蓋も含まれる。特に、厳しいネックイン加工が施される3ピース缶(3P缶)の缶胴部材や、絞りしごき加工によって製造される2ピース缶(2P缶)の缶胴部材として用いる場合に、本発明のフィルムの優れた加工性が発揮される。本発明のフィルムを用いた金属容器は、その優れた耐レトルト性、フレーバー性、耐食性から、コーヒー、緑茶、紅茶、ウーロン茶、各種加工食品等の内容物を充填する場合に適している。 【0037】 【実施例】次に、実施例によって本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例におけるフィルムの原料、および、特性値の測定法は、次の通りである。 【0038】(1)原料ポリエステル(I) A−1:固相重合を施したPBT、IV1.08dl/g、Tm223℃、Ti触媒40ppm含有。 A−2:固相重合を施したPBT、IV0.94/g、Tm223℃、Ti触媒100ppm含有。 A−3:固相重合を施したセバシン酸(SEA)5mol%共重合PBT、IV0.92dl/g、Tm217℃、Ti触媒40ppm含有。 A−4:SEA12mol%共重合PBT、IV0.95dl/g、Tm204℃、固相重合を施していない、Ti触媒40ppm含有。 【0039】ポリエステル(II) B−1:固相重合を施したPET、IV0.75dl/g、Tm255℃、Ge触媒40ppm含有。 B−2:固相重合を施したPET、IV0.64dl/g、Tm255℃、Sb触媒100ppm含有。 B−3:イソフタル酸(IPA)5mol%共重合PET、IV0.81dl/g、Tm243℃、固相重合を施していない、Sb触媒100ppm含有。 B−4:IPA12mol%共重合PET、IV0.65dl/g、Tm226℃、固相重合を施していない、Sb触媒100ppm含有。 【0040】(2)測定法A.極限粘度(IV) フェノール/四塩化エタンの等質量混合溶媒を用いて、温度20℃、濃度0.5g/dlで測定した溶液粘度から求めた。 【0041】B.エステル交換指数(Ex) Varian社製、GEMINI2000/300核磁気共鳴装置(磁場強度7.05T)にて、13C NMRの測定を行った。測定サンプルは、フィルム60〜100mgをCF3COOD溶媒0.7mlに溶解したものを用い、指数は、エステル交換に起因するピーク(図2)の積分値から、下記式により求めた。 Ex=(Sab+Sba)/(Saa+Sbb+Sab+Sba)×100(%) 【0042】C.融点(Tm) Perkin Elmer社製DSCを用い、20℃/minで昇温時の融点を測定した。フィルムの測定サンプルは、延伸フィルムを溶融後、100℃/min以上の速度で急冷して非晶状態としたものを用いた。 【0043】D.熱ラミネート性200℃に加熱した金属ロールと、シリコンゴムロールとの間に、試料フィルムと厚みが0.21mmのティンフリースチール板とを重ね合わせて供給し、速度20m/min、線圧4.9×104N/mで加熱接着し、2sec後に氷水中に浸漬し、冷却してラミネート金属板を得た。得られた積層体から、幅18mmの短冊状の試験片(端部はラミネートせず、ラミネートされた部分がMDに8cm以上確保されるようにする)をTDに11枚切り出した。次に、この試験片のフィルム面に、JIS Z−1522に規定された粘着テープを貼り付け、島津製作所社製オートグラフで、10mm/minの速度で180度剥離試験を行い、その剥離強力を測定することにより、次の基準にしたがって接着性を評価した。 ◎:10枚以上の試験片の剥離強力が2.9N以上であるか、又は2.9N以上でフィルムが破断。 ○:5〜9枚の試験片の剥離強力が2.9N以上であるか、又は2.9N以上でフィルムが破断。 △:剥離強力が2.9N未満の試験片が7枚以上。 熱ラミネート性が△のフィルムについては、そのフィルムの最適熱ラミネート温度を求めて再度熱ラミネートし、以降の試験に供した。 【0044】E.成形性上記Dで得られたラミネート金属板のフィルム側を缶胴内面として500ml相当の2ピース缶の深絞り成形を行った時の状態を観察した。評価は、剥離、破断又は白化が目視で認められるものを××、目視では認められないが、硫酸銅水溶液に浸して金属の腐食が認められたものを×、硫酸銅水溶液に浸しても金属の腐食が認められないものを○とした。成形性で×、××の評価を受けたフィルムに関しては保味保香性が悪くなるため、その評価を実施せず、不合格と判定した。 【0045】F.耐レトルト性上記Dで得られたラミネート金属板を、125℃で30minレトルト処理後のフィルムの状態を観察した。評価は、明らかな白化又は白斑が認められるものを×、明らかではないが目視で識別可能程度の白化が認められるものを△、目視では変化が認められないものを○とした。 【0046】G.耐衝撃性上記Dで得られたラミネート金属板10枚を、(イ)125℃で30minレトルト処理後、および、(ロ)125℃で30minレトルト処理後、50℃雰囲気下で1ヶ月保存後、それぞれ、5℃の雰囲気下において、1kgの重り(先端は直径1/2inchの球面)を50cmの高さからフィルム面に落下させたときのフィルムの状態を観察し、次の基準により耐衝撃性を評価した。 ×:1枚でも剥離又は破断が目視で認められたもの。 △:目視では認められず、硫酸銅水溶液に浸して金属の腐食が認められたものが3枚以上。 ○:目視では認められず、硫酸銅水溶液に浸して腐食が認められたものが2枚以下。 ◎:目視では認められず、硫酸銅水溶液に浸しても10枚全て腐食が認められなかった。 【0047】H.保味保香性上記Eで得られた2P500ml缶胴部を用いて、蒸留水500gを充填し、市販の202径アルミEO蓋を巻き締めてこれを密封し、125℃で30minレトルト処理を行った。次に、室温まで十分に冷却した後に、内容物をパネラー50人に試飲してもらい、におい、味覚等が蒸留水と違いがないかを判断してもらい、その結果を次の基準に従って保味保香性の指標とした。 ○:両者の違いを感知した人数が5人未満。 △:両者の違いを感知した人数が5人以上10人未満。 ×:両者の違いを感知した人数が10人以上。 【0048】実施例1〜12および比較例1〜13平均粒径1.1μmのシリカを添加含有し、表1に示す組成のポリエステル(I)とポリエステル(II)とからA層とB層とを構成し、表1に示す割合で配合し、独立した2台の押出機を用い、各々溶融押出し、夫々の溶融体をTダイの出口に至る前で層状に合流積層した後、Tダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムを得た。次いで、この未延伸フィルムの端部をテンター式同時二軸延伸機のクリップに把持し、60℃の予熱ゾーンを走行させた後、温度80℃でMDに3.0倍、TDに3.3倍で同時二軸延伸した。その後TDの弛緩率を5%として、温度150℃で4秒間の熱処理を施した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ25μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムから、Dに記述した方法でラミネート金属板を得、同時に評価した。更に、上記Dで得られたラミネート金属板のフィルムの成形性を、Eに記載した方法で評価した。更にラミネート金属板の耐レトルト性、耐衝撃性、保味保香性の評価を夫々、F、G、Hに示す方法で評価した。上記試験で得られたフィルムの諸物性と各評価結果を表2に示す。なお、フィルムの各層の独立した基礎物性を測定するために、同一のポリマー組成の原料を用い、各押出機に同一の押出条件で同一の滞留時間となるよう押出して未延伸フィルムを得、BとCに示す方法でエステル交換指数と融点測定し、評価結果を表1に示した。 【0049】実施例13〜17、および比較例14〜19実施例1と同様に表1に示した未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、ロール式縦(MD)延伸機に導き、45℃から最終55℃まで予熱した後、55〜60℃で2.8倍に縦延伸した。室温に冷却後、連続的にテンター式横延伸機に導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら75℃で予熱し、80℃から90℃まで暫時昇温しながら3.6倍に横延伸した。その後150℃で4秒間熱処理を行い、続いて4%の弛緩処理を行った後冷却して巻き取り、厚さ25μmの逐次二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムから、実施例1と同様にラミネート金属板を得、同様に評価した。フィルムおよびその評価結果を表3に示す。 【0050】 【表1】
【0051】 【表2】
【0052】 【表3】
【0053】実施例1〜17で得られたフィルムは、熱ラミネート性、成形性、耐衝撃性、耐レトルト性、保味保香性に優れていたが、比較例1〜17で得られたフィルムは、上記のすべての性能を満足するものは得られなかった。 【0054】 【発明の効果】本発明によれば、優れた熱ラミネート性、成形性、特に絞り成形やしごき成形等の高次加工性を有するとともに、成形後の耐衝撃性や耐レトルト性にも優れた金属缶の被覆に好適な、金属板ラミネート用ポリエステルフィルムを提供することができる |
| 【出願人】 |
【識別番号】000004503 【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年12月12日(2000.12.12) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2002−178471(P2002−178471A) |
| 【公開日】 |
平成14年6月26日(2002.6.26) |
| 【出願番号】 |
特願2000−377385(P2000−377385) |
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