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【発明の名称】 金型構造
【発明者】 【氏名】中村 保昭

【氏名】筧 栄樹

【要約】 【課題】複数のキャビティをもつスライドコアの長さを短くすることなく、また別の油圧装置などを用いることなく、さらに形状精度を高くすることもなく、バリの発生を確実に防止する。

【解決手段】スライドコアをスライドベース30と、スライドベース30に相対移動可能に保持された複数のコア本体31とから構成し、かつ一端に傾斜面32と略平行なコア傾斜面51をもちコア本体31を押圧するスライドピン5を相対移動可能に配置した。スライドピン5によって複数のコア本体31がそれぞれ独立して押圧されるため、寸法精度の低いことによるずれが吸収され、コア本体31をそれぞれ確実に型締めできる。また球体50を配置することで、点接触となるため不特定方向の力を正規の方向に修正することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 背面に傾斜面をもち互いに対向する表面で複数のキャビティを形成する少なくとも一対のスライドコアと、該傾斜面に対向する対向傾斜面をもつ固定型と、該固定型と型締めされ該スライドコアを保持する可動型とよりなり、型締め時に該対向傾斜面が該傾斜面に当接することで該スライドコアを移動させて複数の該キャビティを形成する金型構造において、該スライドコアは、スライドベースと、該スライドコアの移動方向と平行方向に相対移動可能に該スライドベースに保持されそれぞれキャビティを形成する複数のコア本体と、一端に該傾斜面と略平行なコア傾斜面をもち該スライドコアの移動方向と平行方向に相対移動可能に該スライドベースに保持され他端が該コア本体を押圧する複数の押圧部材とからなり、複数の該コア本体はそれぞれ該押圧部材によって独立して押圧されるように構成されたことを特徴とする金型構造。
【請求項2】 前記押圧部材の他端には球体が保持され、該球体が前記コア本体を押圧することを特徴とする請求項1に記載の金型構造。
【請求項3】 前記対向傾斜面及び前記コア傾斜面の一方には球体が転動自在に保持され、該球体が前記対向傾斜面及び前記コア傾斜面の他方を押圧することを特徴とする請求項1に記載の金型構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はスライドコアをもつ金型構造に関し、詳しくはスライドコア部におけるバリ止め性に優れた金型構造に関する。
【0002】
【従来の技術】射出成形などでは、金型のキャビティは複数のコアから形成されるのが通常であり、コアどうしのパーティング面からのバリを防止する必要がある。特にゴム製品の射出成形においては、微小な隙間であっても成形材料が流出し易く、バリ止めが重要な課題となっている。またアンダーカットを有する製品を成形する場合にはスライドコアが用いられるが、スライドコアを隙間無く型締めするために、可動型による型締めの力を利用したカム、テーパ係合、特許第 2519967号公報に記載のトグルリンクなど種々の金型構造が用いられている。
【0003】例えば蛇腹形状のブーツを多数個取りで射出成形する場合には、図5及び図6に示すような金型構造が用いられている。この金型構造は、主として固定型 100、可動型 200及び左右対称の一対のスライドコア 300から構成されている。
【0004】固定型 100はランナー板 101を介して固定型取付板 102に固定されている。ランナー板 101にはノズルタッチ 103とスプルー 104が形成され、固定型 100とランナー板 101の間にはランナー 105が形成されている。そして固定型 100にはブーツの一端部を成形する固定型コア 106が保持され、固定型コア 106にはランナー 105と連通するサブスプルー 107が形成されている。
【0005】可動型 200は、図示しない油圧装置によって駆動される可動型取付板 201に固定されている。また可動型 200には可動型コア 202が保持され、図示しない油圧装置による可動型取付板 201の駆動によって図の上下方向に移動可能となっている。
【0006】スライドコア 300は、図6に示すように複数のキャビティ 302をもち、背面に傾斜面 303が形成されている。そして固定型 100には傾斜面 303に対向する対向傾斜面 108, 109が形成され、スライドコア 300は固定型 100と可動型 200の間に配置されている。
【0007】この金型構造では、可動型 200に一対のスライドコア 300が保持され、可動型200が固定型 100に近接する方向へ駆動されると、傾斜面 303が対向傾斜面 108, 109とそれぞれ係合するため、一対のスライドコア 300は互いに近接する方向へスライド移動し、図5に示すように可動型コア 202との間に所定間隙のキャビティが形成される。その状態では、一対のスライドコア 300は互いのパーティング面 304どうしが強く圧接されている。したがってパーティング面 304からの成形材料の漏れが防止され、バリを防止することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが上記した従来の金型構造では、スライドコア 300の傾斜面 303及び固定型 100の対向傾斜面 108, 109の精度、パーティング面 304の精度がバリの発生の有無を大きく左右する。しかしスライドコア 300の長手方向にこれらを精度高く形成するのは至難の技であり、方あたりによって複数のキャビティ 302のいずれかにおいてバリが発生する場合がある。
【0009】このようにバリが発生すると、バリを切除する後加工を行う必要があり、工数が多大となる。またバリが成形品中に混入して不良となる場合もあった。
【0010】そこで可動型 200を駆動する力に頼らず、スライドコア 300を直接押圧する方法も行われている。このようにすれば、スライドコア 300の傾斜面 303及び固定型 100の対向傾斜面 108, 109の精度をさほど高くしなくともバリの発生を防止することができる。
【0011】しかしこの場合は、可動型 200を駆動する油圧装置とは別の油圧装置などが必要となるために、コスト面及びスペース面で問題がある。
【0012】またスライドコア 300の長さを短くしてもバリの発生を防止できるが、この場合にはキャビティ 302の数が少なくなるために1度の成形で得られる製品の数が減少し、生産性が低下してしまう。
【0013】本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、複数のキャビティをもつスライドコアの長さを短くすることなく、また別の油圧装置などを用いることなく、さらに形状精度を高くすることもなく、バリの発生を確実に防止することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明の金型構造の特徴は、背面に傾斜面をもち互いに対向する表面で複数のキャビティを形成する少なくとも一対のスライドコアと、傾斜面に対向する対向傾斜面をもつ固定型と、固定型と型締めされスライドコアを保持する可動型とよりなり、型締め時に対向傾斜面が傾斜面に当接することでスライドコアを移動させて複数のキャビティを形成する金型構造において、スライドコアは、スライドベースと、スライドコアの移動方向と平行方向に相対移動可能にスライドベースに保持されそれぞれキャビティを形成する複数のコア本体と、一端に傾斜面と略平行なコア傾斜面をもちスライドコアの移動方向と平行方向に相対移動可能にスライドベースに保持され他端がコア本体を押圧する複数の押圧部材とからなり、複数のコア本体はそれぞれ押圧部材によって独立して押圧されるように構成されたことにある。
【0015】押圧部材の他端には球体が保持され、球体がコア本体を押圧することが望ましい。また対向傾斜面及びコア傾斜面の一方には球体が転動自在に保持され、球体が対向傾斜面及びコア傾斜面の他方を押圧するように構成することも好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の金型構造では、スライドコアはスライドベースと、複数のコア本体と、複数の押圧部材とから構成されている。複数のコア本体は、スライドコアの移動方向と平行方向に相対移動可能にスライドベースに保持されている。そして押圧部材は一端に傾斜面と略平行なコア傾斜面をもち、スライドコアの移動方向と平行方向に相対移動可能にスライドベースに保持されている。したがって型締め時に押圧部材のコア傾斜面が対向傾斜面に当接することで、複数の押圧部材はそれぞれ独立して相対移動し、複数のコア本体は押圧部材によってそれぞれ独立して押圧されるように構成されている。
【0017】つまり型締め時に対向傾斜面が傾斜面に当接してスライドコアが移動すると、複数の押圧部材のコア傾斜面も対向傾斜面に当接する。このとき複数の押圧部材はそれぞれ独立して移動するため、複数のコア本体も押圧部材によってそれぞれ独立して押圧される。したがって対向傾斜面、スライドベースなどの寸法精度が低くても、押圧部材及びコア本体の相対移動によって寸法差を吸収することができ、それぞれのコア本体は均一に型締めされることとなる。これによりパーティング面に隙間が生じるのが防止され、バリの発生を防止することができる。
【0018】押圧部材は、コア本体と別体としてもよいし、場合によってはコア本体と一体化することも可能である。また押圧部材がコア本体と別体である場合には、押圧部材のコア本体を押圧する端部に球体が保持された構成とすることが好ましい。スライドベース及び押圧部材が傾いた状態でスライド移動したとしても、球体はコア本体と点接触であるため、傾きを吸収してコア本体の移動方向を確実に正規の方向とすることができるので、バリの発生をより確実に防止することができる。
【0019】さらに対向傾斜面及びコア傾斜面の一方には球体が転動自在に保持され、球体が対向傾斜面及びコア傾斜面の他方を押圧するように構成することも好ましい。傾斜面、対向傾斜面及びコア傾斜面の寸法精度が低い場合であっても、球体による転動と点接触によって押圧部材を確実に正規の方向へ移動させることができ、バリの発生をより確実に防止することができる。
【0020】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0021】(実施例1)図1及び図2に本発明の一実施例の金型構造を示す。この金型構造は、主として固定型1、可動型2及び一対のスライドコア3から構成され、ゴム製で蛇腹形状のブーツを射出成形により形成するための金型である。
【0022】固定型1は、ランナー板10を介して固定型取付板11に固定されている。ランナー板10にはノズルタッチ12とスプルー13が形成され、固定型1とランナー板10の間にはランナー14が形成されている。そして固定型1にはブーツの一端部を成形する固定型コア15が保持され、固定型コア15にはランナー14と連通するサブスプルー16が形成されている。また固定型1には、スライドコア3の傾斜面と当接する一対の対向傾斜面17が形成されている。
【0023】可動型2は、図示しない油圧装置によって駆動される可動型取付板20に固定されている。また可動型2には可動型コア21が保持され、図示しない油圧装置による可動型取付板20の駆動によって図の上下方向に移動可能となっている。
【0024】スライドコア3は、図2に詳細を示すように、左右対称形状の一対のスライドベース30と、スライドベース30にそれぞれ保持された4対のコア本体31とから構成されている。スライドベース30の背面には、それぞれ固定型1の対向傾斜面17と当接して係合する傾斜面32が形成されている。そしてコア本体31には、それぞれキャビティを形成するキャビティ凹部33が形成されている。
【0025】スライドベース30には、4個のコア本体31がそれぞれボルト4によって保持されている。そしてボルト4の頭部とスライドベース30のボルト孔の底部との間には隙間40が形成され、コア本体31は隙間40の分だけそれぞれスライドベース30の移動方向と平行方向に相対移動可能に保持されている。そしてコア本体31の裏面側には、スライドベース30を貫通する貫通孔34がそれぞれ形成され、貫通孔34にはスライドピン5がスライド移動可能に挿通されている。なお図1には、便宜上、ボルト4の部分の断面とスライドピン5の部分の断面の両方を示しているが、このように同一断面上に両方の断面が存在するものではない。
【0026】スライドピン5の一端には鋼球50が転動自在に配置され、鋼球50はコア本体31の背面に当接している。スライドピン5の他端には、スライドベース30の傾斜面32と平行なコア傾斜面51が形成されている。またスライドピン5と貫通孔34の間には隙間52が形成され、隙間52によりスライドピン5の摺動が可能となっている。
【0027】上記のように構成された本実施例の金型構造の作用を以下に説明する。
【0028】成形の準備として可動型2、可動型コア21及びスライドコア3が固定型1に近接する方向へ駆動されると、傾斜面32が対向傾斜面17と係合することで一対のスライドベース30は互いに近接する方向(図1の左右方向)にスライド移動する。
【0029】このときスライドピン5のコア傾斜面51も対向傾斜面17と係合するので、コア本体31は鋼球50によって押圧され、対向するコア本体31どうしが互いに型締めされる。そしてスライドベース30及び固定型1の寸法誤差、あるいはコア本体31の寸法誤差により、一部のコア本体31のパーティング面35に隙間が生じようとしている場合には、そのコア本体31を押圧するスライドピン5が優先して対向傾斜面17によって押圧されるため、パーティング面35の隙間が解消される。
【0030】さらにスライドピン5と貫通孔34の間の隙間52の存在により、スライドピン5が傾いた状態となって押圧方向が不特定方向となる場合がある。しかし本実施例では、鋼球50を転動自在に配置してコア本体31を押圧している。そのため鋼球50とコア本体31とは点接触となり、不特定方向の力をパーティング面35に対して垂直な正規の方向の力としてフレキシブルに伝達することができ、コア本体31どうしを大きな力で型締めすることができる。なお、スライドピン5及びスライドベース30の寸法のばらつきが大きい場合には、鋼球50とスライドピン5の間にスペーサー53を配置してもよい。
【0031】したがって本実施例の金型構造によれば、各部材の寸法精度が低い場合であってもコア本体31を強力に型締めすることができるので、バリの発生を確実に防止することができる。
【0032】(実施例2)図3及び図4に本発明の第2の実施例の金型構造を示す。この金型構造では、鋼球50を用いずスライドピン5が直接コア本体31を押圧するようにしたこと、及び固定型1の対向傾斜面17を構成する部分をコッター6から構成したこと以外は実施例1と同様の構成であるので、実施例1と同様の部分については説明を省略する。
【0033】コッター6は固定型1にボルト60によって固定され、対向傾斜面61が形成されている。そしてコア本体31に対応する部分には、図4に示すように鋼球62が転動自在に保持され、蓋部材63がボルト64で固定されている。鋼球62は、蓋部材63に設けられた貫通孔65から僅かに突出し、スライドピン5のコア傾斜面51と当接するように構成されている。また蓋部材63の表面も対向傾斜面61の一部を構成している。なお図3には、便宜上、ボルト4の部分の断面とスライドピン5の部分の断面の両方を示しているが、このように同一断面上に両方の断面が存在するものではない。また図3には、便宜上、鋼球62の部分の断面とボルト60の部分の断面及びボルト64の部分の断面を示しているが、このように同一断面上にこれらの断面が共存するものではない。
【0034】またスライドピン5と貫通孔34の間に形成された隙間52は、スライドピン5の摺動が可能となる程度のものであり、実施例1に比べて微小な隙間52とされている。
【0035】本実施例の金型構造では 可動型2、可動型コア21及びスライドコア3が固定型1に近接する方向へ駆動されると、傾斜面32が対向傾斜面61と係合することで一対のスライドベース30は互いに近接する方向(図3の左右方向)にスライド移動する。
【0036】このときスライドピン5のコア傾斜面51には鋼球62が当接し、スライドピン5は鋼球62によって押圧される。したがって鋼球62とコア傾斜面51とは点接触となるので、対向傾斜面61とスライドベース30の傾斜面32に位置ずれが生じて押圧方向が不特定方向となったとしても、不特定方向の力をコア本体31の正規のスライド方向の力としてフレキシブルに伝達することができる。したがってコア本体31は強力に型締めされ、バリの発生を確実に防止することができる。
【0037】
【発明の効果】すなわち本発明の金型構造によれば、複数のキャビティをもつスライドコアの長さを短くすることなく、また別の油圧装置などを用いることなく、さらに形状精度を高くすることもなく、スライドコア部におけるバリの発生を確実に防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
【出願日】 平成13年5月21日(2001.5.21)
【代理人】 【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開2002−337195(P2002−337195A)
【公開日】 平成14年11月27日(2002.11.27)
【出願番号】 特願2001−151053(P2001−151053)