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【発明の名称】 ポリテトラフルオロエチレン樹脂の成形方法及び成形物品
【発明者】 【氏名】山下 正憲

【氏名】山本 勝年

【要約】 【課題】3次元的形状を有する成形物品をも製造できるポリテトラフルオロエチレン樹脂の成形方法を提供する。

【解決手段】粒状樹脂及びそれを分散させ、樹脂成分の密度より小さい密度を有する分散媒を含んで成る分散樹脂組成物を遠心力場に供給して、遠心力場に配置した成形型内に粒状樹脂を充填して成形物品を得ることを特徴とする、粒状樹脂から成形物品を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリテトラフルオロエチレン又は変性ポリテトラフルオロエチレンの粒子を主成分とする粒状樹脂から成形物品を製造する成形方法であって、前記粒状樹脂を、界面活性剤を添加した水性媒体である分散媒中に分散して成る分散樹脂組成物を準備する工程、遠心力場に配置した成形型内に前記分散樹脂組成物を供給する工程、所定の時間及び加速度にて遠心力を適用する工程、並びにその後成形物品を取り出す工程を含んでなる成形方法。
【請求項2】 成形物品から分散媒を除去する乾燥工程を更に含んで成る請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】 成形物品の形状を安定化する形状安定化工程を更に含んで成る請求項1又は2に記載の成形方法。
【請求項4】 粒状樹脂と分散媒の密度差は、少なくとも0.1g/mlである請求項1〜3のいずれかに記載の成形方法。
【請求項5】 遠心力場の遠心力の加速度は少なくとも1000gである請求項1〜4のいずれかに記載の成形方法。
【請求項6】 分散樹脂組成物はイオン性界面活性剤を更に含む請求項1〜5のいずれかに記載の成形方法。
【請求項7】 テトラフルオロチレンを乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン又は変性ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液を分散樹脂組成物として用いる請求項1〜6のいずれかに記載の成形方法。
【請求項8】 分散樹脂組成物はバインダー成分を更に含む請求項1〜7のいずれかに記載の成形方法。
【請求項9】 成形物品は3次元的形状を有する請求項1〜8のいずれかに記載の成形方法。
【請求項10】 請求項1〜9のいずれかに記載の方法により製造される成形物品。
【請求項11】 二次加工を加えない表面に、走査型電子顕微鏡観察により直径2〜5μm程度の寸法の粒状構造が観察される請求項10記載の成形物品。
【請求項12】 請求項1〜7及び9のいずれかに記載の方法に従い、仮焼結後に得られる成形物品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遠心力を利用して液中に分散したポリテトラフルオロエチレン(以下、本明細書において、PTFEと称する。)樹脂を成形型に高密度で充填して成形し、その後一連の加熱処理を施して3次元的形状の物を得る成形方法、及びその一連の方法によって得られる成形物品に関する。
【0002】
【従来の技術】PTFEは溶融温度での粘度が1012oiseと極めて高く、射出成形が不可能な樹脂とされている。そこで、PTFEモールディング・パウダーを用いて成形物品を製造する場合の一般的な成形方法として、乾燥した粒状あるいは粉状樹脂を円柱又は角柱のような比較的簡単な形状のキャビティを有する金型内に充填して例えば約30MPaの比較的大きな圧力を加えて圧縮した後、例えば360℃程度の温度で焼成する方法が採用されている。この方法では、粒状樹脂間のエア抜きのため、例えばφ50mm×h50mmのサイズの円柱状の成形物品を製造する場合でも圧縮成形するには数分以上を要する。リング等の簡単な形状の物品の成形では自動圧縮成形も実施されているが、均一な密度を有する成形物品に圧縮成形することは一般に困難である。
【0003】また、連続的に圧縮工程、加熱工程及び冷却工程を実施するラム押出成形法も知られているが、この方法では、押出方向(又は長手方向)に垂直な断面が一定パターンの形状、例えば比較的単純な2次元的形状を有する物品しか製造できない。
【0004】別の成形方法としてペースト押出成形法があるが、この方法で例えばPTFEファインパウダーを用いて成形物品を製造する場合、乾燥した粉状樹脂に油性の助剤を添加していわゆる含油ペーストを調製してこれを押し出し、その後、乾燥・焼成の工程を経て、棒、チューブ又はシート等の比較的単純な形状の成形物品が製造される。このような含油ペーストを成形型に充填して圧縮成形することによって3次元的形状を有する物品を製造しようと試みる場合、圧力伝達性は良くなるが、得られる成形物品における歪みが不均一になることが多い。特に機械的強度が要求される物品の用途には、そのような成形物品は実用的とは言えない。ファインパウダーはPTFE未焼成生テープ(JISK6885)に見られるように、焼成前では粒子相互が付着して圧力がかかって剪断力が働くと粒子同士が絡み合い繊維が発生する。この繊維が存在するため、型の中での流動性は低下し、焼成したときの収縮が阻害されてしまう。
【0005】このように、上述の成形方法によって得られる成形物品は、筒状、柱状又はシート状のような比較的単純な形状、即ち、2次元的形状を有する物品である。従って、通常の汎用樹脂の射出成形品に見られるような、比較的複雑な種々の形状の物品、例えば2次元方向に加えて長手方向でも変化してよいディメンションを有する物品、即ち、いわゆる3次元的形状を有する物品を得るには、上述の成形方法によって得られた単純な形状の成形物品に、切削、溶接等の2次加工を施す必要がある。
【0006】上述のような成形方法に対して、アイソスタティック成形法では、3次元的形状を有する成形物品を製造できるが、物品において割れが発生しやすく、長い成形時間を必要とし、また、この成形法で製造される物品は、通常物体の表面の曲率が急変しない形状の成形物品であり、例えば歯車、ネジのような外側表面に凹凸を有する3次元的形状の、いわゆる型物を製造することは全く容易ではない。
【0007】また2次加工を施すにせよ、寸法が3mm以下の物体の場合、次のような問題がある。単純な形状にしか対応できない旋盤加工でも、寸法精度が金属などの切削に比べて悪くなる。チャッキングの難しさから、フライスによる3次元的形状の加工は困難で、工具の大きさと送りピッチから決まるカッターマークの深さも面の大きさに比べて大きくなり、平滑な面が得にくい。さらに溶接による方法では小さい部品の位置合わせは非常に困難で、実用化されていない。これらの理由で、通常のプラスチック射出成形で得られるような、小さな比較的複雑な形状を有するPTFE製の物体を精度良く製造することは2次加工でも実用的レベルには達していない。
【0008】ところで、遠心力を利用して口径の大きいPTFE管を製造する方法が特開昭第54−3160号公報にて提案されている。この方法では、PTFE樹脂の水性分散体を回転管内で遠心力場に供して沈降させ、沈降物に含まれる水性媒体を乾燥により除去した後、これを焼成することにより、口径の大きいPTFE管を得ている。この方法では、管のような2次元的形状を有する大きい中空の物品を製造できるが、中実体は得られない。また、複雑な3次元的形状を有する成形物品を得ることもできない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明が解決しようとする課題は、板、円筒、チューブ、棒又は角形のブロック等のような単純な形状ではない3次元的形状を有する成形物品をも製造できるPTFE及びフィラーを含むPTFEの成形方法を提供することである。そのような成形方法を用いて3次元的形状を有する成形物品を精度良く製造できることによって、上述のように切削、溶接等の2次加工工程を経ることなく、所望の形状の成形物品を製造できる。従って、3次元的形状を有する成形物品を効率的に製造することが可能となる。また、切削、打ち抜き加工を用いる必要がある場合には経済的理由から製造できない、全体として小さい3次元的形状を有する成形物品を得ることもできる。また、3次元的形状を有する多孔体や傾斜材料も製造できる。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決してPTFE成形物品を製造するために、本発明は、PTFE又は変性PTFEの粒子を主成分とする粒状樹脂を水又は水性媒体の分散媒中に分散して成る分散樹脂組成物を調製及び/又は準備する工程、遠心力場に配置した成形型内に前記分散樹脂組成物を供給する工程、所定の時間及び加速度にて遠心力を適用する工程、乾燥・焼成あるいは仮焼結など熱的処理工程、並びにその後成形物品を取り出す工程を含んでなる成形方法を提供する。更に、本発明は、この成形方法により製造される成形物品も提供する。
【0011】分散樹脂組成物には、PTFE又は変性PTFEの粒状樹脂を分散媒中に分散させるための界面活性剤、好ましくはイオン系の界面活性剤が含まれ、更に、場合によって、フィラー及び/又は結合剤などの役割を果たすポリマー粒子も含むことができる。
【0012】本発明において用いる遠心力場とは、粒状樹脂に作用する重力が無限小であると考えることができる程度に大きい遠心力が分散樹脂組成物に作用する場であり、本発明に用いることができる遠心力の加速度は、具体的には少なくとも1000g(gは重力加速度)、好ましくは少なくとも5000gである。遠心力の加速度の上限は特に限定されるものではないが、一般に本発明の方法を実施する装置の材料及び装置自体の機械的強度によって制限され、一例では20000gである。
【0013】尚、円運動又は回転運動の軸は基本的に重力の方向と一致させること、即ち、遠心力の方向が重力の方向に対して垂直となることが操作性からは望ましいが、遠心力の加速度が重力の加速度に比べて桁違いに大きいため、軸は、他の方向、例えば重力の方向に対して平行又は斜めの方向であってもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の方法における各処理工程の流れは、図9のフローチャートに示しているように、成形品を型から取り出す工程が5種類あり、成形に用いる粒状樹脂の成分によって大きく2系統に分類される。1つは、粒状樹脂の主成分としてPTFE又は変性PTFEを用いる第1の系統(図9における■〜■)であり、もう1つは、粒状樹脂の主成分としてPTFE又は変性PTFEの他にポリマー成分を用いる第2の系統(図9における■)である。なおフィラー成分はいずれの系統にも添加して用いることができる。
【0015】このうちの第1の系統は、遠心力成形後、成形物品を成形型から取り出す時点と、乾燥工程及び/又は焼成工程を行う時点との前後関係によって、更に4種の方法に分類される。第1の方法(図9における■の方法)は、遠心力成形の後で、成形物品を成形型の中に入れたままで乾燥し、その後焼成工程を経た後、成形物品を成形型から取り出す方法である。第2の方法(図9における■の方法)は、第1の方法と同様にして乾燥までを行った後に仮焼結工程を行い、成形物品を成形型から取り出す方法である。第3の方法(図9における■の方法)は、第1の方法と同様にして乾燥までを行った後に成形物品を成形型から取り出して、成形物品を焼成工程に付する方法である。第4の方法(図9における■の方法)は、第1の方法と同様にして遠心力成形を行った後、成形物品を成形型から取り出して乾燥を行い、その後成形物品を焼成工程に付する方法である。また、上述した第2の系統(図9における■)の方法を、本明細書において便宜上、本発明の第5の方法と称する。
【0016】A.分散樹脂組成物について:分散樹脂組成物は、基本的には粒状樹脂を、界面活性剤を添加した分散媒中に分散させることによって調製される。
1)基本樹脂 粒状樹脂は、フッ素樹脂を粒状化したものであって、特にPTFE又は変性PTFEの粒子を用いることが好ましい。変性PTFEは、テトラフルオロエチレンに他の変性成分を加えて共重合させて得られるポリマーである。そのような変性成分としては、例えば、式1:R1FC=CF2 (式1)
[式中、R1は−Rf、−Rf−X'、−O−Rf、又は−O−Rf−X'であって、−Rfは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、−Rf−は炭素数1〜10の2価の線状パーフルオロアルキレン基、及びX'はH又はClである。]、式2:Cl2C=CF2 (式2)、式3:R2R3C=CH2 (式3)
[式中、R2はF、−Rf、又は−Rf−X、R3はHまたはF、或いは式4であり、Rf及びRf'は式1の規定と同じである。]、式4:【化1】

X及びX’はそれぞれF若しくはClであり、Z及びZ’はそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基若しくはフルオロアルキル基である。]
並びに式5:CF2=CF−O−X''' (式5)
[式中、X'''は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基または炭素数4〜9のパーフルオロアルコキシアルキル基である。]で示されるパーフルオロビニルエーテル(例えば、特開2001−048922に開示されている化合物)を挙げることができる。分散樹脂組成物中の粒状樹脂の含量は、粒成樹脂の分散状態を維持できる限り、特に限定されるものではないが、組成物全体の体積基準で一般的には1〜60%、好ましくは10〜55%である。また、所望する粒子寸法のPTFE粒子又は変性PTFE粒子に好適な界面活性剤を添加して水又は水性分散媒中に分散させることによって、分散樹脂組成物を調製することもできる。以下の説明ではPTFEあるいは変性PTFEを単にPTFEという。
【0017】2)フィラーこの他に、本発明の分散樹脂組成物には、場合によって、粒状物質としてフィラー成分を含むことができる。シール材や摺動材の用途ではPTFEの機械的特性を改善するなどの目的のため、PTFEの焼成温度である360〜380℃では溶融あるいは分解しないフィラーをPTFEに混ぜて利用することが多いが、本発明の方法によればフィラーを含む成形体を得ることも可能である。使用し得るフィラー成分には、金、銅などの金属、合金の微小粉体、酸化チタン、2硫化モリブデン、などの無機化合物の微小粉体、炭素あるいは黒鉛の微小粉末等がある。
【0018】3)バインダー本発明の第5の方法では、分散樹脂組成物中にバインダー成分が含まれる。バインダー成分は、乾燥工程付近の温度で活性化しまた形状安定化工程の温度で分解するものが好ましい。バインダーとして使用し得るポリマー成分には、アクリル系ポリマー、ビニル系ポリマー等がある。粒状樹脂がPTFEのようなフッ素系樹脂である場合、特に好ましいバインダー成分は、100℃程度以下のガラス転移温度を有し、360℃〜380℃では分解してしまうものであり、具体的には、メタアクリル酸エステル共重合体をバインダー成分として例示できる。このバインダー成分は以下に述べる工程中の固形化処理工程に供すると、バインダー成分が活性化して粒状樹脂の一体性がより向上し、機械的強度がより高まり、型から抜き出すときの割れが減少するなど、後工程での成形物品のハンドリング性がより向上する。
【0019】以下の説明では、分散樹脂組成物とは、樹脂成分のほかに上述のようなフィラー、バインダー成分を含むこともあるものとする。また粒状樹脂或いは粒子についても同様である。
【0020】4)分散媒分散媒は、粒状樹脂をその中で分散させることができる媒体であれば特に限定されるものではなく、通常は水性媒体が用いられる。水性媒体としては、水、水に溶解できる他の物質を含む水溶液及び水と親水性溶媒との混合溶液の群から選ばれるものを使用してよい。使用し得る親水性溶媒の例には、例えばアルコール類、エチレングリコール、トルエンなどがある。
【0021】5)界面活性剤界面活性剤は、粒状樹脂やフィラー、有機ポリマー粒子を分散媒中に分散させるために用いられ、分散媒中に粒状樹脂(樹脂粒子)を分散させた状態において、界面活性剤が個々の樹脂粒子の表面に付着することによって個々の樹脂粒子の表面に電荷を付与し、樹脂粒子どうしの間に電気的排斥力を働かせるという機能を有する。従って、本発明に用いる界面活性剤は、カチオン、あるいはアニオンのイオン系界面活性剤の群から選ばれることが好ましい。特にPTFEに対しては含フッ素カルボン酸系または含フッ素スルホン酸系のアニオン性界面活性剤があげられ、代表的な化合物としては式6:X(CF2CF2(CH2A (式6)
あるいは、式7:X(CF2CFCl)(CH2A (式7)
で示される化合物があげられる。ここでXは水素、フッ素または塩素原子を、nは3〜10の整数を、mは0〜4の整数を、Aはカルボキシル基、スルホン酸基もしくはそれらのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を表す。その他には高級脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリルエーテルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル及びアルキルアリルエーテル硫酸エステル類なども使用できる。また、フィラーやポリマー成分の分散に用いるにもアニオン系界面活性剤が好ましく、既知のアニオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤を組み合わせたものを使用することができる。以下の説明では主としてアニオン界面活性剤を使った例で説明するが、PTFE粒子をカチオン処理したものを用いる場合には、他のフィラーやポリマーの粒子成分に対しても、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩などから選ばれるカチオン系界面活性剤を用いればよい。
【0022】なお界面活性剤はイオン系を必要とするが、PTFEの濃度を増すための曇点濃縮法に伴い使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテル類(エチレンオキシド単位は一部プロピレンオキシド単位で置き換えられていてもよい)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類(エチレンオキシドの単位は一部プロピレンオキシドとのブロック単位でもよい)、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸のモノグリセライド類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン及びその誘導体などのノニオン系界面活性剤を含んでもよい。
【0023】6)分散状態と粒子の密度など以上のような分散樹脂組成物において、粒状樹脂並びに場合によってフィラー成分および/またはバインダー成分から形成される粒子成分の分散状態は、本発明の方法を実施するに際して、遠心力場に供給するまでは安定しているのが好都合であるが、遠心力場に供給された後は、遠心力の作用によって速やかに成形型内部に向かって粒子成分が移動するのが好ましい。
【0024】このため本発明では、主たる分散質である粒状樹脂の密度が分散媒の密度よりも大きくなるように分散樹脂組成物を調製し、そのような分散樹脂組成物を遠心力場に供給することによって分散樹脂組成物に遠心力を適用して、主たる分散質である粒状樹脂を遠心力の向き(遠心力を発生させる回転運動の半径方向外向き)に移動させ、従って分散媒は粒状樹脂と入れ替わりに遠心力の加速度の向きと逆向きに移動させて、この遠心力場に配置した成形型の中に粒状樹脂を充填する。従って、使用する粒状樹脂及び分散媒については、粒状樹脂の密度が分散媒の密度よりも大きくなるように選択する。
【0025】具体的には、粒状樹脂の密度(真密度)は分散媒の密度よりも大きく、密度差が好ましくは少なくとも0.1g/ml、より好ましくは少なくとも0.2g/mlであるのが好ましい。さらに、分散樹脂組成物中には、所望により、好適なフィラー成分及び/又はポリマー成分を添加することもできるが、分散質として、フィラー及び/又はポリマー粒子を添加する場合には、それらのフィラー及び/又はポリマー粒子も上記の粒状樹脂と同様の密度(真密度)を有することが好ましい。しかし、物質により密度は異なるので、具体的には次のような関係が成り立つことが好ましい。
【0026】フィラーは、陰イオン系界面活性剤によって水中に分散されており、水よりも大きい密度を有し、水中でフィラー及びPTFEの両種の粒子に働く遠心力とストークス抵抗との比がほぼ等しいこと、つまり【数1】
(ρPTFE−ρ)dPTFE≒(ρ−ρ)d (数式1)
[ρは分散媒である水の密度、ρPTFE及びdPTFEはPTFE粒子の密度及び直径;ρ及びdはフィラー成分の密度及び直径である。]で示されるものであることが好ましい。このような粒子は遠心力場においてもPTFEとの実質的に均一な混在が可能である。
【0027】また、分散樹脂組成物中にバインダー成分を含む本発明の第5の方法では、好ましい有機物バインダー成分は、陰イオン系界面活性剤で水中に分散しており、分散媒よりも大きいが、PTFE粒子よりも小さい密度を有する粒状成分であって、水中で両種の粒子に働く遠心力とストークス抵抗との比がほぼ等しいこと、つまり【数2】
(ρPTFE−ρ)dPTFE≒(ρ−ρ)d (数式2)
は分散媒である水の密度、ρPTFE及びdPTFEはPTFE粒子の密度及び直径;ρ及びdはバインダー粒子の密度及び直径である。]で示されるものであることが好ましく、そのようなバインダー成分は、PTFEと実質的に均一に混在でき、また遠心力場でも均一性が保たれ、その結果、成形型内においても粒状樹脂とバインダー成分が均一に充填された成形物品を得ることができる。
【0028】フィラー及びバインダーに関して上記の数式の条件が満たされない場合には、水性分散液における固形分濃度を40〜60%に濃縮することによって、この発明の方法(後述するPTFEの体積密度を40%程度に高める方法に記載した方法)が適用できる。このように、粒子成分としてはPTFE及び/又は変性PTFEの他に、フィラー及び/又はバインダー成分を追加することができる。
【0029】7)フッ素樹脂の分散本発明の方法を最も好都合に適用できるのは、粒状樹脂が2.1g/cm以上の密度を有するPTFEである分散樹脂組成物を使う場合であり、分散している樹脂粒子が球形又はそれに近い形態であるのが特に好ましい。例えば、そのような分散樹脂組成物は、PTFEを製造するための乳化重合が終わった時に得られる乳化液であってよく、この場合、組成物の質量基準で例えば15〜35%の樹脂が含まれており、界面活性剤(例えばパーフルオロオクタン酸アンモニウム)によって安定に分散している。
【0030】上記の乳化液の場合、分散液中の粒子として例えば平均粒子径0.25μm程度のシャープな粒度分布を示すPTFE粒子である上に、分散媒も水性媒体であるので、本発明のための分散樹脂組成物として最も好適である。更に、このようなPTFE粒子の寸法は0.25μm程度と極めて小さいため、比較的小さい寸法の成形型の中にも容易に充填することができる。
【0031】このように重合後に得られる乳化液をそのまま本発明の方法に適用できることは、重合後に粉末を得るために通常行われている、凝析、乾燥等の処理を実施せずに、即ち、粒状樹脂が1次粒子のままであっても本発明の方法を適用できるという利点がある。なお別法では、分散媒を減らすことによって濃縮して得られる分散樹脂組成物(例えば樹脂の質量基準で50〜73%(体積基準で30〜55%) まで濃縮したもの)を使用することもできる。
【0032】バインダー成分は、分散樹脂組成物中に例えば0.1〜10質量%混在させてもよい。バインダー成分が乳化重合により得られる場合は、重合生成物である乳化物をそのまま分散樹脂組成物と混合して用いることもできる。
【0033】8)粒子の形状粒状樹脂、フィラー及びポリマー粒子は、必要に応じて乳化剤の存在下で、分散媒中に分散できる程度の粒状の形態を有していればよく、その形状は特に限定されるものではないが、後述する安息角の観点からも、球状又はそれに近い形状であるのが特に好ましい。
【0034】本発明での成形で粒子に働く力は、例えば1cmの立方体に10,000gの遠心力で沈降した成形物の底部には約200Nの力が働くので、圧力に換算するなら最大部分でも約2MPa程度で、射出成形や、通常のPTFEの圧縮成形に比較して1桁小さいので粒子を押しつぶしてまで型の中に詰め込むことはできない。しかし、型の中にはできる限り高密度に粒子を充填することが、成形後の割れを防止するために望ましい。このためには、粒子形状は球形に近く、また粒子の粒度分布ができるだけシャープな単一のピークを有することが好ましい。実際アスペクト比が1.2、遠心式粒子径測定機で測定して直径の中央値が0.20μm、標準偏差0.09μmのPTFE粒子の分散樹脂組成物を用いて、本発明の方法により成型型に充填した場合、体積充填率は65〜70%になり、同一径の球を最密に充填したときに得られる74%に近い値が達成されることを確認した。このように高い充填率に成形したものは、後述する焼成工程で自己収縮作用が働き高密度なまた高精度な製品が得られる。
【0035】本発明においては、遠心力を使うことにより溶融樹脂の射出成形のような形状対応性を持たせることを狙っているが、これを実現する原理は、上記の分散媒中の粒子が電荷を帯びていることにより、型の内部に沈降堆積するときの安息角が実質的に0゜になることにある。PTFEの乳化重合生成物を用いる場合には、分散媒中の粒子のうちPTFEは陰イオン系の界面活性剤が付着した状態で乳化重合が終了するので、他の粒子成分も同じ極性の界面活性剤を用いて分散媒に溶かせば、容易に電荷を帯びた状態になる。実際フッ素樹脂以外の有機物高分子も同じ陰イオン系の界面活性剤が付着した状態で重合を完了することが多い。これらの粒子は球形に近い形状をしたものが多い点についても、本発明に用いるのに好ましい。
【0036】B.遠心力について:本発明の方法によれば、遠心力場、即ち、遠心力が作用する場に配置した成形型内に分散樹脂組成物を供給し、PTFE、あるいは必要に応じて加えたフィラー、バインダーからなる粒子状物質を成形型内に充填することによって、成形型に対応する3次元的形状を有する成形物品を形成することができる。
【0037】遠心力場は、種々の遠心力発生装置を用いて形成することができるが、構造が簡単で、最も普及しており、低コストで利用できる遠心力発生装置として、遠心分離装置を用いることができる。市販されている回分式の遠心分離装置によれば、100,000g程度の加速度を適用できるものもある。
【0038】C.遠心力による充填:遠心力を適用する成形は、基本的には、遠心力発生装置の遠心力を適用する容器内に成形型を入れ、容器内における成形型の位置及び姿勢を成形型の入口(成形型内に樹脂を導入するための入口)が遠心力発生装置の回転中心を向くように設定して、遠心力発生装置を回転させる前又は回転中に、容器内に分散樹脂組成物を供給して遠心力の作用下(遠心力場)で成形型内に粒状樹脂を充填して行う。
【0039】1)型内への充填 本発明の分散樹脂組成物を遠心力場に供給すると、粒状樹脂の密度が分散媒の密度よりも大きいため、粒状樹脂に作用する遠心力が分散媒に作用する遠心力より大きくなる結果、粒状樹脂は遠心分離装置の回転中心から半径方向外向きに分散媒中を移動する、即ち、遠心力場にて沈降する。従って、遠心力発生装置の容器内に成形型を予め配置しておき、そのように沈降してくる粒状樹脂を成形型の開口部を介して捕捉することによって、成形型内に含まれていた分散媒を沈降してくる粒状樹脂によって置き換え、成形型内に粒状樹脂を充填することができる。成形が終了した時には、成形型内のキャビティには粒状樹脂が充填され、また沈降物以外には上澄み液としての分散媒が存在する。
【0040】2)遠心力成形の特徴1 通常の射出成形や圧縮成形が圧力勾配によって物質を運動させて、従って圧力という空間内の面を通して働く面積力を利用して充填を行い成形するのに対して、本発明は個々の粒子に働く体積力の1種である遠心力を利用して充填を行い成形することが1つの特徴であると表現することができる。圧力を利用して充填を行う場合には、個々のPTFE粒子どうしが相対的な位置を変化させながら移動するため、PTFE粒子どうしが相互に擦り合わされることによってPTFE粒子の表面に繊維化(フィブリル化)が生じやすい。PTFE粒子の表面に繊維化が生じると、PTFE粒子が溶融するまでの間でPTFE粒子相互間の流動性が悪くなり、更に充填密度も低下する傾向がある。ところが、本発明のように、遠心力を適用してPTFE粒子を沈降させて充填を行う場合には、PTFE粒子が充填されて相互に接触する状態に至るまでの間は、個々のPTFE粒子どうしが相互に反発しあって擦れあうことはなく、また相対的な位置をあまり変化させることなく移動して充填が行われ、PTFE粒子が相互に接触する状態まで充填されると、その後は粒子同士が接触した状態が保持されて、PTFE粒子がその粒子の寸法よりも大きな距離を擦れて動くような相対運動ができなくなるので、充填の際に不均一性をもたらす繊維化の発生を防止することができる。この結果、上述のような高い空間充填率が実現できるし、焼成時の自己収縮でも均一に収縮できるため高い寸法形状精度が実現できている。
【0041】3)遠心力成形の特徴2 遠心力を利用して行う成形である本発明のもう1つの特徴は、複雑な3次元的形状を有する成形型に粒状樹脂を充填でき、その形状対応性は射出成形にも匹敵する成形方法であるということである。
【0042】本発明の方法において、成形型内への粒状樹脂の充填率を可能な限り高くするために、本発明の分散樹脂組成物に用いる粒状樹脂の粒子は分散媒中における安息角が可能な限り小さいこと、実質的に0°の安息角を有することが好ましい。例えば、遠心分離装置を遠心力発生装置として用い、粒状樹脂としてのPTFE樹脂及び分散媒としての水を含む分散樹脂組成物を沈降させる場合について、図1を参照して説明すると、矢印rで示される向きに遠心力が作用すると、樹脂粒子は遠心力の作用する向きに沈降する。粒子が、分散媒中における安息角として正の値の安息角を有する一般的な粒子の場合には、粒子は成形型の底部11の表面に盛り上がって堆積する。本発明において用いる分散樹脂組成物の場合には、粒状樹脂の粒子は例えばアニオン系界面活性剤によって個々の粒子の表面が負電荷を帯びているので、個々の粒子は相互の電気的反発力によって互いに反発する。従って、図1の中央部から左側にわたる部分に示すように、成形型の底部11の表面に盛り上がるように堆積するのではなく、図1の右側部分に示すように、遠心力の作用する方向に対して垂直な面である平面方向に移動する余裕がある場合には、粒子どうしの間隔をあけてその平面方向に散らばろうとする。沈降する粒子の数が増えると、粒子が成形型の底部11の表面に散らばって、底部11の表面全体を覆うに至った後に、遠心力の作用する方向についての上下方向に積み重なる堆積を開始する。
【0043】このように分散媒中における安息角が可能な限り小さく、特に実質的に0°であるので、集合した樹脂粒子は遠心力の作用する方向に対して垂直な面に沿って移動することができるので、遠心力の作用する方向に対して垂直又はそれに近い角度の面を被覆するように並んだ状態で粒状樹脂を充填することができる。
【0044】遠心力の方向に沿った成形型21の断面を模式的に示す図2を参照して具体的に説明すると、キャビティ23のどの空隙部分を粒状樹脂25が充填する場合であっても、キャビティ内に入ってきた粒状樹脂はキャビティの最奥部から順に密に充填され、従って、遠心力rの方向に対して垂直な方向よりも内側方向(即ち、矢印a1及び矢印a2により示されるOからの方向(即ち、図では上下方向)より左側向きの方向、従って、中心に近づく方向)に移動する必要はない。従って、ある成形型において、そのキャビティを充填するために遠心力を受けて成形型内で粒状樹脂が移動する場合、遠心力に垂直な方向より内側方向に移動する必要がある空隙部分を含まないキャビティを有する場合には、本発明の方法によって成形型のキャビティ内に粒状樹脂を実質的に完全に充填できる。
【0045】本発明において、重力に比べて桁違いに大きな、例えば1000g以上の遠心力を用いる場合には、粒子に主として働く力は遠心力であると考えることができ、遠心力の作用する方向からこれに垂直な方向まで粒子を移動させて充填を行うことは、上述のように比較的容易である。このときに、分散媒中での見かけ上の安息角が0°になる現象が観察される。
【0046】この現象には、遠距離から作用する遠心力以外に、近距離で作用する電気的反発力が関与していることは上述したとおりであるが、分散系において分散粒子の表面に例えば陰イオン系界面活性剤分子が付着して、各分散粒子の表面が負電荷を帯びている場合には、個々の粒子間に電気的な反発力が作用する。そのような粒子が接触凝集合体を形成するに至らないが、密に凝集している状態では、粒子は新たに遠心力を受けて入ってきた粒子の電気的反発力によって押される状態となり、安息角が0゜になるが、成形型内部の壁面形状が図3に示すような場合には、遠心力が作用する方向と逆の方向、即ち、遠心力が作用する方向に対して垂直な面よりも、その遠心力を発生させる回転運動の中心に近い領域へ向かう方向へも移動できるようになる。
【0047】図3は、理解しやすいように、成形型の大きさに比べて粒子の大きさを模式的に大きく描いたものであって、成形型の内部空間は入口部Aから底部Cを介して奥部Bへ連絡している。このような型では最初に奥部Bに空気だまりがないようにあらかじめ分散媒を入れておくか、あるいは、図示しないが入口側につながる空気が抜けられる程度の小さな隙間を設けておく必要がある。図3(a)に示すように遠心力を受けて入口部Aから入った粒子は底部Cに至るが、この状態では、個々の粒子の電気的反発力により反発しあって相互に凝着固化していないので、遠心力の作用する方向に対して垂直な方向へ粒子は容易に移動することができる。底部Cに到達する粒子の数が増加してくると、奥部Bの近くに位置する粒子は電気的反発力によって押される形で図3(b)に示すように奥部Bの中を遠心力の作用する方向に逆らう向きへ上昇することができる。このような粒子の動きは、底部C、入口部Aが粒子によって完全に充填され尽くすまで続き、遠心力の作用する方向に逆らう向きに延びる奥部Bにも粒子が充填される。B部の幅は1mm以下であっても、粒子を奥部Bへ充填できることが実験的に確認された。奥部Bへ充填できるということは、見かけ上の安息角が負になっていると表現することもできる。
【0048】入口の開口部で閉塞が起きない限り、また充填すべき粒子が型の入り口の外側に存在する限り、成形型の内部において各壁面に向かう全ての方向に粒子は充填されていき、その際に、成形型の内部に充填される粒子と同体積の溶媒が成形型の開口部から成形型の外部へ出ていく。粒子同士の距離がイオン反発力による分散状態を保てない程度の距離まで接近したときには、粒子同士の凝着が生じる。この充填プロセスが最終的に成形型の内部に粒子が凝着充填され尽くされるまで続き、成形型内に充填された粒子及び分散媒によって、成形型の内部空間の3次元的形状に対応する形状を有する成形物品が得られる。
【0049】本発明では基本的には、成形型からの抜き出しが可能な全ての3次元的形状に対応でき、形状の自由度は溶融樹脂の射出成形に匹敵する。さらに、溶融型を用いる場合には、射出成形では抜き勾配がとれないため成形できない形状にも対応可能である。また、場合に応じては成形型の入口は複数個設けてもよい。溶融樹脂の射出成形とは異なり、成形型からの抜き出しについてはこの発明独特の手法があり、これについては後述する。
【0050】4)複層・継ぎ足しまた、本発明の方法の1つの態様では、最初に特定の種類の樹脂である第1の粒状樹脂を含む分散樹脂組成物を用いて遠心力で成形型内に第1の粒状樹脂を充填し、第1の樹脂部分を形成した後、回転を停止して、この分散樹脂組成物の上澄み液を容器から取り出し第2の種類の樹脂からなる粒状樹脂を含む別の分散媒樹脂組成物を容器に供給して、同様の操作によって、第2粒状樹脂を成形型内に充填することによって、2種の粒状樹脂が積層した成形品を形成することができる。あるいは同様の手法にて、3種以上の種類の樹脂を用いることによって、3層以上の粒状樹脂が積層した成形品を形成することもできる。この場合、分散媒は、同種のものであっても、異なる種類のものであってもよい。
【0051】複層の成形をする場合を除いて、通常は1回の分散樹脂組成物の供給で充填成形するのが望ましいが、本発明の別の態様において、分散樹脂組成物を回分的に容器に供給する場合、キャビティの体積が大きい成形型を用いる時には、1回に供給される分散樹脂組成物ではキャビティを完全に充填できないことがある。その場合、同じ組成の分散樹脂組成物を複数回にわたって供給する必要がある。この場合も、先の別の分散樹脂組成物を充填する場合と同様に、第1回目の分散樹脂組成物を容器に供給して遠心力で型内部に樹脂そのほかの粒子成分を沈降させ、その後、上澄み液を容器から取り出して、第2回目の分散媒樹脂組成物を容器に供給して、同様の操作によって、粒状樹脂を成形型内に充填する。これを繰り返すことによって、キャビティの体積が大きい成形型に粒状樹脂を充填することができる。別法では、遠心力場にて分散樹脂組成物を容器に連続的に供給し、容器から上澄み液を連続的に取り出すことによって、粒状樹脂を成形型内に連続的に供給できる。
【0052】このように、一回の分散樹脂組成物の供給で完全に充填を完了するか、あるいは分散樹脂組成物の供給と充填を繰り返し継続して最終的に成形型内に粒状樹脂を実質的に完全に充填して成形物品が得られると、容器の運動を停止して容器内から成形型を取り出す。
【0053】5)型遠心力発生装置の容器内において、成形型は、成形型の入口が回転軸に対向し、成形型の底が回転軸の反対側を向くように配置することが好ましい。遠心力をかける場合には回転軸のまわりでのバランスをとるため回転軸に対して対称な位置に同様の寸法及び形状を有する容器及び成形型を配するのが望ましい。このため回転軸を中心とする円筒内に複数個の成形型を配置することが常態である。
【0054】また、同様の効果を与える方法として、例えば図7(a)〜(c)に示すように、可撓性のある材料、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等からなる細長いテープ状の基材に、所定の間隔を置いて、テープ幅よりも小さい平面寸法を有する多数の成形型を取り付けたものを用いることによって、寸法の小さな成形物品を一回の成形工程にて多数個製造することができる。また、個々の成形型については、同一の3次元形状を有する成形物品が必要な場合にはすべて同一の型としてもよいし、異なる3次元形状を有する成形物品が複数種類必要な場合にはそのような複数の異なる3次元形状に対応する型を有する成形型とすることもできる。長いテープの形態の成形型は、図7(a)に示すように、遠心力発生装置内に例えばらせん状に巻回した状態で配置することによって、装置を運転する際にすべての成形型に対して遠心力を均等に作用させ、その結果、個々の成形型において所望する成形を行うことができる。このようなテープ形態の成形型の例としては、縦断面図を、図7(b)に示すように、テープ状の基材71の下側表面にプレス箔型などからなる成形型72を取り付ける態様や、図7(c)に示すように、二層のテープ状基材71及び76の間にプレス箔型などからなる成形型77を取り付ける態様を挙げることができる。いずれの場合であっても成形型の入口73・78は作用する遠心力の中心方向を向くように設けられる。このような成形型を用いて成形した成形物品は、その後乾燥及び焼成工程に付される。個々の成形物品は位置決めされた形になっているので、後工程でのハンドリングは容易になる。
【0055】成形型は所望の成形物品の構造に対応するキャビティを有するいずれの適当な構造であってもよく、キャビティ内に通じる少なくとも1つの開口部を有する。成形型は、例えば一体型の構造、2分割以上に分割できる割型構造、あるいは開口部が位置する側とは異なる側が全面的に開く構造(例えば、図4(a)に示すように、底部の蓋部分47を分離して開くことができる構造)としてもよい。また、成形型を構成する材料は、金属、シリコーンゴム、石膏等であってよく、これらは割型に好都合である。一体型の場合には、ワックス、プラスチック、低融点金属(例えばハンダ)、アルミニウム、肉厚の薄い鉄等、熱、酸、アルカリ、溶剤等で容易に溶融、溶解又は分解できる材料を用いてもよい。
【0056】なお便宜上型と容器を分けて説明したが、遠心力をかけることができる構造であれば型と容器を一体にした構造を用いることも、この発明の範囲に属することは明らかである。
【0057】D:充填後の処理1)後工程の共通事項遠心力を利用した充填による成形が完了した後には、容器の運動を停止して容器内から成形型を取り出す。次の工程は基本的には乾燥と焼成である。ここでは図9を参照して、本発明の成形方法の具体的な処理工程について説明する。
【0058】図9に示す第1の方法〜第5の方法について共通する事項として、形成された成形物品は分散媒を含んでいるので、分散媒の除去工程即ち、乾燥工程に供して分散媒を除去する。具体的には加熱或いは減圧下に置くことによって実施してよい。尚、この乾燥工程は、第1〜第3の方法のように成形型から成形物品を取り出す前に実施しても、あるいは第4および第5の方法のように取り出した後から実施してもよく、いずれを選択するかは、成形物品の形状を保持しながら成形物品を成形型から取り出すことができるか否かを主に考慮して判断する。即ち、分散媒を含んだ状態で成形型から取り出しても、成形物品の形状が損なわれることがない場合には、成形型から成形物品を取り出した後に乾燥してよく、逆に、分散媒を含んだ状態で成形型から取り出すと成形物品の形状が損なわれることがある場合には、成形型内に成形物品が存在した状態で乾燥すればよい。勿論、成形物品の形状が損なわれることなく成形型から成形物品を取り出せる場合でも、成形型内に成形物品が存在した状態で乾燥してよい。このように、上述の本発明の成形方法は、成形物品から分散媒を除去する乾燥工程を更に含んで成る。
【0059】次の共通の工程は焼成である。本発明の方法によって遠心力場で得られた直後の成形物において、粒状粒子やフィラーは分散媒を含む状態であっても一体に凝集して成形体となるが、粒子間の結合は比較的弱い。従って、最終的にPTFE成形品としての実用強度を有することが必要な場合には、融点以上の温度、つまり360℃〜380℃の範囲の温度まで昇温して粒状樹脂間の空隙を最小限まで減少させて、全ての隣り合う粒子が溶融して連結した状態を作る最終的な形状安定化工程としての焼成工程が含まれる。
【0060】実用的な強度を有する成形品は焼成工程を経ており、かつ成形型の外部に取り出された物体であるが、物体を成形型から取り出すのは、(1)焼成後、(2)仮焼結後、(3)乾燥後、(4)成形直後、及び(5)固形化処理後、のいずれかの段階から選択して実施することができる。これらの取り出しは、図9に示すフローチャートの中で各番号に対応する工程において実施することができる。なお、PTFE成形品としての強度が特に弱いことを要求する用途には、(2)仮焼結工程(3)乾燥工程で処理を終えた成形品を焼成工程を経ずに利用することができる。
【0061】第1の方法以外の場合は、最終的な形状安定化工程の前に成形型から取り出すので、中間的な安定化処理を行うことが必要である。中間的な安定化処理としては、成形だけ(方法4)、成形及び乾燥(方法3)、成形及び仮焼結(方法2)、バインダーを添加した成形及び結合処理(例えば、熱処理)(方法5)のいずれかを選択できる。これらの方法の中から、成形物体の形状、大きさ(厚さ)、成形型の種類や分離構造を考慮して適した方法を選択することができる。
【0062】乾燥と収縮成形物品の乾燥は、粒状樹脂及び分散媒の性質に応じて、いずれの適当な方法で実施してもよい。例えば、分散媒が水である場合、空気中で105℃〜130℃に加熱するか、あるいは真空引きで行うことができる。加熱(加温)と真空引きを組み合わせることも可能である。経験的には、成形物品の寸法が小さなものは、真空引きも可能であるが、数mm以上の寸法を有する場合では加熱が望ましい。特に、寸法の大きな成形物品を真空乾燥すると、成形物体内部に気泡が発生し、これが減圧下で成長し、焼成しても空孔として残ってしまうことがあるからである。この工程においては分散媒が蒸発するため質量は減少するが、成形物の体積収縮はほとんどないとみなすことができる。
【0063】3)焼成と収縮本発明の方法によって成形型内に充填された粒状樹脂の成形物品は、乾燥後、焼成のような形状安定化工程に供すると、通常その体積は充填直後の状態と比較して減少する。例えば、本発明の方法によって成形型内にPTFE粒状樹脂を充填して賦形しその後乾燥して焼成した場合、成形物品の寸法は、充填後の寸法を基準にして遠心力の作用する方向には約5〜10%、これに対して垂直な方向に約10〜12%収縮し、全体として約30%体積は収縮する。即ち、焼成することにより密度が高い成形物品を得ることができる。好ましい態様では、従来方法つまり、圧縮成形法、ラム成形法、及びペースト押し出し法で得られるのと同等以上の密度を有する成形物品を提供する。なお、後述する仮焼結や固形化処理の工程ではわずかな体積収縮が起きる。
【0064】4)成型物の取り出し実質的に安定な形状を有する成形物品を成形型から取り出すのはいずれの適当な方法で実施してもよい。通常、この取り出しは、成形型が加熱されている場合には、冷却後に実施する。具体的には、成形型を複数のピースから成る割型としておいて、割型を分割して賦形された樹脂を取り出してよい。成形型の開口部が十分に大きく、抜き勾配があり成形物品を直接取り出せる場合には、成形直後(方法4)や乾燥直後(方法3)にそのまま開口部から取り出すことができる。また、形状安定化工程の前には取り出せないが、形状安定化工程によって生じる収縮のためにそのまま取り出せるような場合(方法1,2,5)では、成形型の中に成形物品を入れたままで形状安定化工程を実施し、その後に後取り出してもよい。
【0065】別法では、成形型を破壊(機械的に破壊すること、化学的に溶解すること及び分解すること、熱的に溶融すること、物理的に溶解すること等を含む)することによって賦形された樹脂を取り出してよい。この方法は図9の5つの方法のすべてに適用できる。
【0066】(1)の第1の方法によれば、乾燥工程の後、成形物品を成形型の中に入れたままの状態で、最終的形状安定化処理である焼成工程に供する。焼成工程とその後の冷却で成形物品の体積は収縮するが、特に冷却時に成形型と得るべき樹脂成形体とが空間的に干渉しない形状の場合には型の中で形状安定化が可能である。このような形状の例としては、例えば図10(a)に示すような円錐台等の外側表面に凹部を有さない凸多面体や、放射状の形状を有する3次元的形状がある。これらの形状の場合には、成形型の中で全工程を実施することができ、最終製品と同じ強度を有する安定な成形物品を抜き出すため、取り扱い性がよい。
【0067】(2)の第2の方法によれば、乾燥工程の後、成形物品を仮焼結処理に付して成形型から取り出し、それから焼成工程に供する。仮焼結処理は、バインダー成分を用いず、PTFE単独、あるいはPTFEとフィラーよりなる分散液を用いて成形した場合に、成形物品を成形型に入れた状態で、PTFEの平均溶融温度より10℃程度低い温度(310〜325℃)に30分〜数時間保ち、樹脂粒子の表面だけが溶けて相互に融着した状態にした後、型から取り出す処理である。
【0068】この第2の方法の場合は、成形後すぐ取り出す第4の方法の場合や、乾燥後に取り出す第3の方法の場合と比べて、成形物品は硬さ及び粘ばさが相対的に増しており、第3の方法や第4の方法の場合の成形物品と比べて、強度があるのでハンドリング性に優れた物品が得られる。この方法は上記の第1の方法と同様な形状に対して採用できるが、収縮が小さいため型との干渉が少なく、より広範囲の形状に対して適用可能である。
【0069】ここで仮焼結処理の例を示す。
例1. 乾燥後320℃にて30分間の仮焼結処理を行った。得られた成形物品は、比重1.562(体積充填率67.9%)であり、ほとんど収縮していなかった。また、白墨よりも硬く、粘い状態になった。
例2. 315℃にて1時間の仮焼結処理を行った。得られた成形物品は、比重1.57(体積充填率68.3%)であり、ほとんど収縮していなかった。この成形物品は例1によって得られた成形物品と同様の状態を示した。
例3. 例1の処理をした成形物品に、更に327℃にて30分間の仮焼結処理を行った。得られた成形物品は、比重1.647(体積充填率71.6%)であり、体積収縮率は(71.6−67.9)/67.9=5.4%であった。例1の成形物品より硬い物品が得られた。
【0070】5)乾燥・充填直後の取り出し(3)の第3の方法によれば、乾燥工程の後、成形物品を成形型から取り出し、最終的形状安定化処理である焼成工程に供する。この方法の場合は、溶媒の蒸発温度は樹脂成分の溶融温度よりも100℃以上低いので、質量減少はあるが体積収縮は実質的にはないと考えることができる。
【0071】(4)の第4の方法によれば、遠心力成形の後、成形物品を成形型から取り出して乾燥工程に付し、その後最終的形状安定化処理である焼成工程に供する。この方法の場合は、成形直後の成形物品中には溶媒が含まれており、離型した樹脂を含む成形体の体積収縮は実質的にないと考えることができる。従って、これらの2つの方法では抜き勾配がある成形型や柔軟性を有する成形型あるいは溶解型を用いると取り出すことができる。
【0072】なお、収縮時に成形型と干渉する形状の例としては、例えば図10(b)に示すような、円錐台の底面に孔がある形状や、外側表面に凹部を有したり、又は2以上の凸部を有する凸多面体などの形状を有する3次元的形状がある。これらの形状の場合には、最終的な形状安定化の前に成形型から抜き出しておくことが必要である。成形型からの抜き出しは、成形後、乾燥後、仮焼結後又は固形化処理後のいずれかの時点で行うことができる。乾燥後及び成形後に抜き出す場合には体積収縮はほとんどない。仮焼結後に抜き出す場合には2〜5%程度の体積収縮が生じ得る。結合助剤を用いる固形化処理後に抜き出す場合には、1〜数%程度の体積収縮が生じ得る。抜き出しは、成形型を溶解させて行うこともできるし、成形型を溶解しない場合には体積収縮を見込んで成形型の分割ができるようにして型を設計することによって行うこともできる。
【0073】E:バインダー成分を利用する方法(方法5)
上述の方法3及び方法4のように、成形後及び乾燥後の取り出しは型を開くことによって、或いは型を融解することによって抜き出すことができる。この場合でも、形状が複雑になる場合には、以下に記載する方法によって、成形体の強度を高めた後で抜き出すのが、その後の工程での操作性が向上し、割れが発生しにくくなるため、好ましい。
【0074】(5)の第5の方法では、分散樹脂組成物中にバインダー成分が含まれる。粒状樹脂がPTFEのようなフッ素系樹脂である場合、特に好ましいバインダー成分は、100℃程度以下のガラス転移温度を有し、360℃〜380℃では分解してしまうものであり、これを分散樹脂組成物中に例えば0.1〜10質量%混在させてもよい。バインダー成分の有機物高分子としてはアクリル樹脂が好適に用いることができる。数式2に示した関係がほぼ成り立つようにするには、フッ素樹脂成分に比べてアクリル樹脂の密度は小さいので、フッ素樹脂粒子の約5倍以上の粒子径を有する乳化分散物を用いて、両者を混合すればよい。PTFEやフィラーとバインダー成分の占める体積に対するバインダー成分の体積は5%以下とし、遠心力で成形型内部に沈降した物質を納めたまま、60℃以上200℃以下、好ましくは120〜140℃の温度に30分から1時間保つ。この状態では水は完全には抜けきってはいない。しかしこのような径の大きいバインダー成分は、温度のため柔らかくなり僅かに溶融して活性化するので、この粒子をコアとしてこの表面により小さなPTFEやフィラーの粒子が部分的に融着して、比較的大きな寸法の粒子が形成され、比較的大きな凝集した2次粒子がPTFE粒子を主とする樹脂組成物の中に点状に形成されるため、バインダーとしての有機物高分子が無添加の場合に比べて成形物品に作用する剪断力による成型物内部での滑りが防止されて、強度が上昇し、結果的にハンドリング性が高まる。
【0075】F:より多量のバインダー成分を添加する方法(方法5の2)
方法5においてバインダー成分の割合が5〜30体積%と更に高くなるように配合すると、PTFEよりも大きい寸法のバインダー粒子相互間の融着が起こり、融着し合ったバインダー粒子が編み目のようにつながることによってPTFEの粒状構造の移動が妨げられるため、ポリマーの割合が5%以下の微量の場合よりも強固な固まりとなり、成形物品のハンドリング性がより向上する。従って複雑な形状の成形体を型から分離しやすくなる。しかし、実際には、数式2で表される関係を満たすこと、すなわち、PTFEとバインダーとの間における粒子径と密度との関係を遠心力とストークス抵抗の比を合致させることは困難であるので、バインダー成分を増やすと、遠心力による分離が起きやすく、先にPTFEが沈降し、後にバインダー成分が沈降する傾向、或いはこの逆になる傾向がある。このような分離を防ぐには、水性分散液におけるPTFEの濃度を30〜55体積%に高めるとよいことがわかった。
【0076】PTFEの体積密度を40%程度に高めるには、(a)2〜3ヶ月程度の期間静置した後、上澄みを捨てる方法、(b)400g以下の遠心力をかけてバッチで数時間遠心分離する方法、並びに(c)ノニオン界面活性剤を用いる曇点濃縮法による方法がある。
【0077】形状が複雑な型に対してこの方法を実施するにあたっては、1次粒子に付いた陰イオン系界面活性剤の反発力が作用できている状態で濃縮し、溶媒中の粒子の体積密度を40%程度に高めたフッ素樹脂ディスパージョンと、同様の体積密度のアクリルディスパージョンを体積比で例えば8:2に混合して得た分散樹脂組成物を用いて遠心力成形を行う。この場合には、密度が高いため、相異なる粒子の移動が妨げられ干渉沈降が起きて、両方の樹脂が混ざったまま一体に型の中に凝集する。これを例えば125℃で1時間放置した後、成形型から分離すると、バインダー粒子(アクリル樹脂粒子)同士が編み目のようにつながり、方法2よりも割れにくい成形体として取り出すことができる。なお、この干渉沈降を利用する方法はバインダーだけでなくフィラーに対しても適用できることは明らかである。
【0078】尚アクリル樹脂のバインダーを用いる場合、バインダー成分を30体積%以上に増やすと、5〜30体積%の場合と同様にハンドリング性が良くなる性質を有することに加えて、焼成することによってポーラスな(多孔質の)PTFEの焼成体を得ることができ、ガスは通すが水は通さない3次元的形状を持った成形物品を形成することができる。
【0079】G:追加事項1 本発明の方法で最終工程の焼結を経た成形物は、いずれの段階で型から分離したものであっても、切削、研削あるいは研磨を加えない表面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察すると、その表面には、写真(図13)で示すように、差し渡しの長さが2〜5μm程度の寸法の粒界が隣接している状態が観察される。本発明の成形方法の最大の特徴は、成形後焼成して得られた成形品を、機械加工せずに利用することにあり、本発明の方法によって得られたものと機械加工で得られたものの区別はSEMで判別できる。
【0080】H:追加事項2: フィラー成分及びバインダー成分を添加せず、PTFEのみを用いて成形する場合、第2の方法(図9における(2))や、第3の方法(図9における(3))によれば、成形物品をスティック状の形態として容易に作成できる。このスティック状の成形体は、PTFEのみを用いて繊維化を生じることなく、1次粒子の凝集体であることが特徴的である。これは、微小な粒子を飛び散らない程度に弱く固めたものであって、外部から過大な力が加わらなければ、その3次元的形状を保持することができる。通常の焼成品の場合には比重や強度が問題となるが、上記のような成形物品の場合には比重や強度が問題とならないので、本発明の遠心成形によって得られる成形物品は種々のファイン系の粒子に適用できる。
【0081】また、通常のファインパウダーを圧縮して固めたものは、凝析の工程を経ているため繊維化した部分が含まれており、凝集によって形成された粒子であるためその寸法は大きい。これに対して、上記のような遠心成形によって得られるスティック状の成形物品は、白墨のように力がかかると粒子が脱落していく性質があり、例えば特定の対象物品の表面に上記のようなスティック状の成形物品を擦りつけるだけで、その対象物品の表面にPTFEが付着し、PTFE被膜が形成される。従って、その対象物品の表面をPTFEの潤滑性によって滑り易くすることができる。このような処理は、固体潤滑剤として電線と絶縁被覆の間のすべり性を高める用途などに適しており更にドライ状態で実施できるので、使用しやすく、適用範囲も広い。
【0082】5)実験方法 本発明の方法は、成形型を配置した容器内に、遠心力場にて分散樹脂組成物を供給できる、いずれの適当な装置を用いて実施してもよい。望ましくは、遠心力方向と容器の軸心が一致するような遠心機を使用する。しかし、以下に示す実施例の実験では、高い遠心力が簡単に得られるため、アングル型の遠心分離装置を用いた。図5(a)に示すように、遠心沈降管51を容器として用いて、その底部に成形型53を配置し、遠心沈降管に分散樹脂組成物55を入れる(図5(a)参照)。この状態から回転軸57の回りで遠心沈降管51を回転させて遠心力rが作用する遠心力場を発生させ、成形型53の開口部を有する面53aが回転運動の中心を向くようにして粒状樹脂を成形型内に充填する。成形が終了した時には、成形型内のキャビティには粒状樹脂が充填され、また、成形型自体は、沈降した粒状樹脂内に埋没した状態となり、沈降物以外には上澄み液としての分散媒が存在する。(図5(b)参照)。
【0083】尚、図示した態様では、遠心沈降管51は、回転していない場合には、図5(a)に示すように、傾いた状態に置かれ、その底部に成形型が配置される。遠心沈降管51の回転が所定の回転数に達すると、図5(b)に示すように、遠心沈降管の底部は円滑な球面であり型も底面は円形にしてあるので、底部に配置された成形型53が回転の中心から最も遠い箇所に位置するように移動できるようになっている。
【0084】
【実施例】実施例1:ネジ構造を有する成形物品のPTFEからの製造(方法4)
図6(a)に模式的断面図にて示すネジ穴(M12、深さ7mm)に対応するキャビティを形成したアルミニウム製成形型を、その開口部が上向きになるように内容積70mlのポリカーボネート製遠心分離装置用ボトル(図5に示す円筒状の丸底容器51と同様のもの)の底部に配置し、ダイキン工業製PTFEファインパウダーF−201の製造途上で乳化重合が終了した時に得られるPTFE粒状樹脂が分散した水性分散液(PTFE濃度:約30質量%、残りは実質的に水)約40mlを分散樹脂組成物としてボトルに注いだ。このボトルをアングル型遠心分離装置に装着し、7500gの遠心力場で5分かけて粒状樹脂を成形型内に充填した。
【0085】遠心力の印加と同時に成形型は移動してその軸はほぼ遠心力方向に一致し、アルミニウム成形型内及びその周囲に粒状樹脂が沈降し、図5(b)に示す状態と同様の状態となった。上澄みの水を捨てアルミニウム成形型の周りに沈降したPTFEを割って成形物が入った成形型を取り出し、型の表面に付着したPTFEを拭き取った。その後、アルミニウム成形型を希塩酸で溶解して、粒状樹脂が凝集した成形物品を得てそれを水洗し、125℃に加熱して水分を除去して乾燥し、その後、365℃で焼成して形状安定化工程を実施した。
【0086】図6(b)に模式的に側面図を示すように、得られたネジの外径は10.6〜10.7mm、長さ6.6mmであり、密度は2.15g/mlであった。寸法的には収縮したものの、最終的に得られた成形物品のネジの形状は満足できる程度に成形型の形状に対応していた。従って、寸法的な収縮率を予め見越して計算し、目的とする成形物品のディメンションより大きいディメンションを有するキャビティを成形型に形成しておいて、そのような成形型に粒状樹脂を本発明の方法によって充填して成形した後に、乾燥して形状安定化すれば、目的とするディメンションを有する成形物品を得ることができる。尚、顕微鏡観察によると、得られた成形物品の凸部の表面には微細なクラックが認められた。
【0087】実施例2:ネジ構造を有する成形物品のPTFEからの製造(方法4)
遠心力を15,000gとし、2〜3分かけて成形型に粒状樹脂を充填した以外は、実施例1を繰り返し、実質的に同様の結果を得た。
【0088】実施例3:ネジ構造を有する成形物品のPTFEからの製造(方法5)
実施例1にて説明したPTFE粒状樹脂が分散した水性分散液40mlに、平均粒子径が626nmのメタクリル酸エステル共重合体粒子を40.5質量%含む水性分散液を0.5ml混合した以外は、実施例1と同様にして成形型内に粒状樹脂を充填して成形した。上澄みの水には僅かに白濁した粒子が残ったが、上澄み液を除去して105℃で乾燥した。
【0089】次に、ボトルからアルミニウム成形型を取り出し、その周囲に付着した粒状樹脂を除去したが、実施例1の場合と比較して、付着樹脂は割れ難く、少し粘ばさがあった。アルミニウム成形型を塩酸で溶解した後、水洗し、その後、メタクリル酸エステル共重合体を除去するために380℃で焼成し、実施例1と同様の寸法及び密度を有する成形物品を得た。尚、凸部の表面のクラックは認められなかった。
【0090】実施例4:首部を有する円柱状成形物品の製造(方法1)
図4(b)に示すような首部49を有する円柱状成形物品に対応するキャビティを有する成形型(図4(a))を準備した。実施例1と同様に、遠心分離装置用ボトルの底部に成形型の開口部が上向きとなるように配置し、実施例1と同じ分散樹脂組成物40mlを用いて13,600gの遠心力場にて2.5分間粒状樹脂を成形型内に充填した。充填後、上澄みを捨て、成形型の周囲に付着したPTFEを除去して、成形型内に粒状樹脂が充填されたまま105℃で乾燥し、その後、365℃で焼成した。成形型からの成形物品の取り出しは、成形型の底部の底板47を外して焼成品を取り出すことにより実施した。
【0091】円柱状部分である成形物品本体の上面(部分45)と首部である小さい円柱状部分の側面(部分49)は、実質的に直角で交わっていた。これは、遠心力の方向に対して垂直な方向にも粒状樹脂を充填できていることを意味する。得られた成形物品の密度は2.16g/mlで、収縮率は遠心力方向に5.8%、遠心力方向に垂直な方向(直径方向)に11.7%であった。また、表面にクラックは認められなかった。尚、成形型の底部に瞬間接着剤で底板を接着するときに20〜50μm程度の僅かな隙間を故意に設けたが、隙間に入った薄い部分は動きにくいため、乾燥及び焼成工程による収縮時に本体部分から切り離されて、本体部分にバリは付着していなかった。従って、この成形方法においてバリ取りは不要である。
【0092】実施例5:首部を有する円柱状成形物品の製造遠心力の加速度を7500g、充填時間を5分とした以外は実施例4を繰り返した。得られた成形物品の密度は2.17g/mlで、収縮率は遠心力方向に7.3%、これに垂直な方向に13.1%であった。
【0093】実施例6:別の濃度の異なる分散樹脂組成物(方法1)
実施例1と同じファインパウダーF−201用水性分散液(PTFE濃度:約30質量%)を約1ヶ月静置して上澄み(清澄部分)を除いた水性分散液(PTFE濃度:約49質量%(約30体積%))30mlを遠心加速度15,000gで1.5分間粒状樹脂を充填して成形した以外は実施例4と同様に実施した。得られた成形物品の密度は2.15g/mlで、収縮率は遠心力方向に5.8%、これに垂直な方向(直径方向)に11.2%であった。この結果から、分散樹脂組成物の樹脂含量が大きい場合にも成形可能なことが判る。
【0094】実施例7:実施例1と同じ水性分散液を内径27mmの円筒状ガラス管容器にその70体積%まで注入し、スイングローター式(円筒状ガラス管容器の中心軸の方向と遠心力場発生のための回転の軸の方向が回転中には直角になる)の遠心分離装置で3000rpm(1530g)48分運転した。ガラス管を取り出すと上澄み液は透明になり、底部に粒状樹脂が固形分としてほぼ固まり、流動性はあるが沈降した粒状樹脂を含む部分がこの上に形成されていた。透明な上澄み液のみを抜き取り、流動性のある沈降した部分は残して、さらに新しい水性分散液を液面が最初の高さになるように注ぎ足して注ぎ、同じ運転条件で運転した。この操作を合計4回繰り返し、5回目(加速度480g)には固まった固形分だけを試験管中に残し、流動性のある部分を取り除いた。
【0095】容器に入った状態で、容器内の沈降物を125℃で8時間乾燥した後、365℃で焼成して試験管から取り出した。焼成物品の密度は2.14〜2.16g/mlであったまた、焼成物品の試験管内径に対する平均での収縮率は12.2%であった。尚、注ぎ足すことによっても焼成物品には肉眼ではっきり見える層状境界面は生じなかった。従って、本発明の方法において、回分的に分散樹脂組成物を容器内に供給して粒状樹脂を成形型内に回分的に充填する場合であっても、成形物品には境界面は発生しないと考えることができる。
【0096】実施例8:微小成形品図8(a)に示す平面形状及び図8(b)に示す側面形状を有する成形型であって、図8(c)に示すような縦断面形状で、入口φ0.3mm、本体φ1.0mm、高さ1.0mmの寸法を有するキャビティを有するアルミニウム製の成形型を用いて、遠心加速度10000gで11分間遠心成形を行った。その他の条件は実施例4と同じとして、焼成後取り出した。図8(d)に示すような斜視図の形状の成形物品が得られ、その寸法は、成形型の寸法に対して直径、高さとも僅かに小さくなっていた。この寸法のPTFE成形物品を機械加工によって作成することはほとんど不可能である。
【0097】実施例9:入口の小さな成形品図12(a)に示す平面形状を有する成形型であって、図12(c)に示すようなR付きの直方体形状の本体部分に円柱形状の首部が接続されている形状の成形物品に対応するアルミニウム製の成形型を用いて、8分の成形時間にて実施例8と同様にして成形を行った。尚、キャビティ入口の直径の寸法はφ2.0mmであり、キャビティの本体部分は8.0mm×6.0mm及び2.5mmの高さの寸法を有していた。比重は比重計の誤差を含むと2.16〜2.21g/mlであった。この例では開口部と本体の断面積比は約15倍であるが、R部、直線部ともにうねりのない成形体が得られた。この実施例も切削加工では困難な3次元的形状に属する。尚、図12に示すように直線に稜線をつけた場合にも、この方法が適用できることは明らかであるが、同様のものをPTFEで機械加工することは工業レベルでは不可能である。
【0098】実施例10:遠心力に逆らう充填と方法5の2実施例10は、遠心力に逆らう方向への充填を行う例を、図11を参照して説明する。工業用ファインパウダー(PTFE)F201の原料を乳化重合して得られる分散液を重力下で静置して濃縮して得た質量濃度62%(体積濃度41.5%)の水性分散液と、平均粒子径約0.45μm、質量濃度約40%(体積濃度約36%)のメタアクリル酸エステル共重合体の水性分散液とを体積比で3:1に混合した。遠心成形用の装置(アングル型の遠心分離装置)の4つの容器にそれぞれ同じ成形型(図11(b)に示す型)を入れた。うち一つは型を横転させて他の3つは入り口が上を向くように配置して置き、素早く10,000gの遠心力を10分かけた。そのうちの1個の成形型は容器内で横転したまま、図11(a)に示すような状態で全体の沈降物が得られた。
【0099】他の3個の成形型については実施例4と同様に通常の状態で沈降物が得られた。なおこの場合4個の容器内の上澄みは僅かに白濁していた。成形型の外側に着いた樹脂を除去し、125℃で90分乾燥させた後、底を開けて入口から押し出して成形体を取り出した。この成形体について、直径の収縮はほとんど見られなかったが、割れることなく取り出せた。このことは、得られた成形体が、その一部を押しても、全体的な3次元的形状を保持したまま成形型から出てくるだけの強度を有することを意味する。また、全ての成形型内に隙間なく樹脂は充填されていた。この成形体を380℃で焼成したところ、成形体の比重は2.15であった。このことは、図11(c)に示すように、成形型において、遠心力がかかる方向と逆の方向へ膨らみを有する部分にも十分に充填できたことを意味する。
【0100】実施例10:実施例10は、界面活性剤の追加添加によって高密度充填を達成する例について説明する。この例でも、PTFEファインパウダーF201の原料となる乳化重合直後の分散液(粒子成分は30質量%)を使用した。界面活性剤はパーフルオロオクタン酸アンモニウムを10質量%含む水溶液を使用した。型は実施例4で用いたものと同じ寸法形状のものを用い、実施例と同様に成形した。遠心加速度は13,600gで5分間遠心力をかけた。表面に付いた沈降物を完全に除去して型に成形物を入れたまま乾燥後、365℃〜380℃で焼成した物の質量Mi(g)を測定し、成形前に測定していた型の質量mi(g)と容積Vi(ml)から体積充填率を、数式3:(Mi−mi)/2.3/Vi (数式3)
で算出した。界面活性剤の添加量を変化させた3通りの例(a)、(b)及び(c)について実験し、表1に示す結果が得られた。但し、(a)の例では界面活性剤の添加量は0である。この結果、界面活性剤を添加することにより、充填密度が上がり、焼成時の密度も2.18(g/ml)までのものが得られた。
【0101】
【表1】

【0102】
【発明の効果】PTFEにおける従来の圧縮成形法や、一般のプラスチックスの射出成形法のように圧力を介して型の中に樹脂を充填する方法とは異なり、陰イオン系界面活性剤の作用で水中に分散したPTFE等の粒子同士が遠心力で濃縮されてくると互いに反発し合う作用が働き、水中においては安息角が実質的に負になる現象を利用して、複雑な3次元的形状の成形型の中に粒子を充填し、型の中に粒子を積み上げることによって成形体を得るようにしたものである。溶融粘度が高すぎて射出成形が不可能であったPTFEでも、射出成形で得られるのと同等の形状が成形可能となった。
【0103】複雑な3次元形状を有する成形型に室温でフッ素樹脂のような体積弾性率が小さい粒状樹脂を通常の機械的圧縮を利用する方法で充填すると、大きな圧力と圧力勾配が必要となり、繊維化が進行し内部の残留応力が不均一になる。その結果、焼成後には寸法変化が激しく、また焼成後の密度も本来の樹脂の密度2.15は得られず、2.10以下にしかならない。
【0104】一方、本発明の遠心力を利用する方法によれば、押し付ける力は小さいが、遠心力によって全体として均一な力を作用させることができ、粒子相互が擦れあうためにおきる繊維化が発生しないので、粒子は球形を保持したまま最密充填に近い状態で充填される。その後乾燥し、必要に応じて焼成のような形状安定化を施すときには、遠心力方向とこれに垂直な方向での収縮率の差はあるものの、キャビティ内の位置による収縮率の差は小さいため、形状変化性は安定しており寸法・形状精度が良く、また、密度の高い成形物品が得られる。その結果、縦、横及び高さの寸法が1mm程度の3次元的形状の小さい部品をPTFEによって成形できる。
【0105】更に、割型を用いる場合、機械的圧力による成形では一般にパーティングラインにバリが出やすい。しかしながら、本発明の方法のように遠心力により充填して成形する方法では、作用する遠心力が機械的圧力と比較して小さいために、狭い隙間に粒状樹脂は入っていくが、極端に薄い部分は乾燥やその他の工程において割れて成形体本体から剥がれてしまうのでバリは実質的に発生しない。また、本発明の方法では、成形型表面の転写性は実質的に問題にならず、更に、形状安定化のために焼成する場合には、成形物品の表面のミクロな凹凸は焼成時に修正されるので表面の仕上げも簡単である。従って表面粗度が比較的大きい安価な成形型を利用できる。
【出願人】 【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
【出願日】 平成13年5月16日(2001.5.16)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外2名)
【公開番号】 特開2002−337167(P2002−337167A)
【公開日】 平成14年11月27日(2002.11.27)
【出願番号】 特願2001−146602(P2001−146602)