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【発明の名称】 プラスチック成形品の製造方法
【発明者】 【氏名】沢田 清孝

【氏名】山中 康生

【氏名】渡部 順

【氏名】原田 知広

【要約】 【課題】金型内でキャビテイ形状を高精度に転写したプラスチック成形品が、金型から取り出された後に精度低下を生じてしまうことを防止できるように冷却処理の仕方を工夫する。

【解決手段】プラスチック成形品の製造過程の樹脂冷却時において、所定温度範囲のうちの下限温度よりも5℃以上の範囲で、3℃/min以下の冷却速度で徐冷を行う工程を備えていることにより、偏肉形状をした成形品の薄肉部と厚肉部の冷却速度の差を可及的に小さくし、全体としてほぼ均一に冷却を進行させることができる。また、偏肉形状をした成形品で、薄肉部と厚肉部で冷却状態を均一にするだけでなく、一定温度での保持によって、所望の形状を形成させた時に生じた内部応力の不均一が緩和され、プラスチックレンズの場合には形状精度に加えて屈折率分布も著しく低減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】プラスチック成形品の製造過程の樹脂冷却時において、所定温度範囲の下限温度よりも5℃以上の範囲で、3℃/min以下の冷却速度で徐冷を行う工程を備えていることを特徴とするプラスチック成形品の製造方法。
【請求項2】上記の徐冷を行う工程において、所定温度範囲で一定温度の保持を15分間以上実施することを特徴とする請求項1のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項3】上記所定温度範囲が、使用する樹脂材料のガラス転移温度を基準として−65℃から±0℃の範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項4】樹脂材料を金型内で所望の成形品形状に成形加工し、金型から取り出し、その温度が上記所定温度範囲の下限値以上にあるプラスチック成形品に対して、徐冷を行う工程を実施することを特徴とする請求項1乃至請求項3のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項5】樹脂材料を金型内で所望の成形品形状に成形加工し、金型から取り出し、その温度が所定温度範囲の下限値以下にあるプラスチック成形品に対して、再度昇温させてその昇温温度で所定時間保持した後に、徐冷を行う工程を実施することを特徴とする請求項1乃至請求項3のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項6】樹脂材料を金型内で所望の成形品形状に成形加工する際の金型温度が、成形品の金型から取り出す時において、徐冷を行う工程を実施する上限温度と略一致していることを特徴とする請求項4のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項7】内部温度を制御された装置内に、プラスチック成形品を収納し、徐冷を行う工程を実施することを特徴とする請求項4または請求項5のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項8】プラスチック成形品が内部を移動可能であって、その移動方向に温度分布が制御されている装置によって、徐冷を行う工程を実施することを特徴とする請求項4または請求項5のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項9】所望の成形品形状に成形加工する金型と、徐冷を行う装置との間が、内部温度を制御可能な装置で覆っていて、プラスチック成形品を金型から取り出した時に、成形品温度が上記装置で所定温度範囲の下限値以上に制御されることを特徴とする請求項4のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項10】所望の成形品形状に成形加工する金型と、徐冷を行う装置との間に、温度制御された気体をプラスチック成形品に吹き付ける対流伝熱装置を設けてあり、プラスチック成形品を金型から取り出した時に、成形品温度が上記対流伝熱装置によって所定温度範囲の下限値以上に制御されることを特徴とする請求項4のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項11】所望の成形品形状に成形加工する金型と、徐冷を行う装置との間に、赤外線をプラスチック成形品に照射する輻射伝熱装置を設けてあり、プラスチック成形品を金型から取り出した時に、成形品温度が上記輻射伝熱装置によって所定温度範囲の下限値以上に制御されることを特徴とする請求項4のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項12】請求項1乃至請求項11の何れかのプラスチック成形品の製造方法で製造されたレンズ、ミラー、プリズム等の光学素子。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高精度なプラスチック成形品(特にレンズ、ミラー等の光学素子)の製造方法に関するものであり、複写機、ファクシミリ、レーザビームプリンタ等の光走査系に用いられるプラスチックレンズの製造方法として特に有効なものである。
【0002】
【従来の技術】レーザ方式のデジタル複写機、プリンタ、又はファクシミリ装置の光書き込みユニットには、レーザービームの結像、及び各種補正機能を有する矩形状のレンズ、或いはミラー等の光学素子が用いられている。近年これらの光学素子は、製品のコストダウンの要求でガラスからプラスチック製へと変化し、また複数の機能を最小限の素子で実現するため、その転写面形状も球面のみならず複雑な非球面形状を有するようになってきており、また、レンズの場合には、そのレンズ形状はレンズ厚が厚く、また長手方向でレンズ厚が一定ではない偏肉形状である場合が多くなってきている。そして、これらの製造方法は、製造コストが低く大量生産に適した射出成形法を用いることが一般的である。射出成形法で製造する際は、加熱溶融された樹脂材料を金型内に射出充填し、冷却固化させる工程において、金型内の樹脂圧力や樹脂温度が均一になることが、所望の形状精度を確保するために望ましい。しかし、レンズ厚が偏肉形状の場合、充填された樹脂の冷却速度が長手方向の各部で異なり、体積収縮量に差が生じるために形状精度が悪化する不具合があり、また、レンズ厚が大きい場合には、樹脂の冷却過程で体積収縮量が大きいためにひけが発生しやすくなる。このひけ発生を防止するために射出圧力を大きくすると(樹脂の充填量を多くすると)、内部歪みが大きくなり光学性能に悪影響を及ぼす不具合が生じている。
【0003】このような問題に対処する方法として、以下の2つの方法が考えられている。そのうちの一つは、金型温度を樹脂のガラス転移点温度(Tg点)以上に高くし、充填された樹脂の冷却速度が長手方向の各部でできるだけ一定になるように熱変形温度以下になるまで徐冷する方法である。この成形方法は、樹脂温度を均一に保ったまま冷却されるために形状精度、内部歪みも良好な成形品を得ることができる。このようなものの一例として、特開平7−205239号公報にプラスチックレンズの製造方法があり、このものは、予め金型キャビテイ面が成形用熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱された金型に、溶融樹脂を射出した後、金型キャビテイを加圧しながら、金型キャビテイ面温度を成形用熱可塑性樹脂の熱変形温度より10℃高い温度以下まで冷却した後、成形品を金型キャビテイより取り出し、その後、成形用熱可塑樹脂の熱変形温度以上に加熱した炉に入れて、3分間以上保持した後、徐冷を行い、成形品を得るものである。
【0004】他の一つは、金型内に溶融樹脂を射出充填した後に、レンズ面以外の面を構成するキャビテイ駒を樹脂から離隔する方向に移動させ、その箇所に優先的にひけを発生させることでレンズ面の形状精度を向上させる成形方法であり、この成形方法は、低圧で成形するために高い形状精度とともに内部歪みの少ない良好な成形品を得ることができるものである(例えば、特開平11−28745号公報)。また、他の例として特願平11−345992号に記載されているものがある。この例は、所定温度範囲(使用する樹脂のガラス転移温度を基準として−40℃から−10℃の範囲)で、徐冷工程を実施することにより、内部の屈折率分布を低減させるものである。
【0005】
【従来技術の問題】しかし近年、デジタル複写機、プリンタ等の高画質化に伴い、光学素子に要求される精度が高くなり、そのため上記の高精度成形法でも要求精度を十分に満足させ得ないものもある。図1を参照しながら上記従来の高精度成形法を用いても精度低下が生じる原因を説明する。従来の高精度成形法を用いて、所望のキャビテイ形状を高精度に転写し、樹脂を冷却した後、型開きを行ってプラスチック成形品を取り出す時、成形品温度と金型周囲の雰囲気温度(通常は室温)との差が非常に大きく(光学素子の場合には一般的に100℃以上)、この大きな温度差のため、成形品は急激に冷やされる。そのため、偏肉形状をした成形品(例えば、図中の凸レンズ、凹レンズのような光学素子)の場合には、薄肉部と厚肉部で冷却状態が大きく異なってくる。つまり、薄肉部では冷却速度が大きいめ固化が速く進行し、厚肉部では冷却速度が小さいため固化が遅れる。このため、薄肉部では収縮量が小さく、厚肉部では収縮量が大きくなり、その結果この収縮量の差により、成形品が微小な歪みを生じてその精度が低下(特に形状精度の低下)する。したがって、従来の高精度成形法を用いて高精度の成形がなされ、また、金型内でキャビテイ形状を成形品側に高精度に転写し、さらに内部の均一性が保たれているにも関わらず、金型から取り出した後に精度低下が生じてしまうことになる。
【0006】
【解決しようとする課題】そこで、本発明は、金型内でキャビテイ形状を成形品側に高精度に転写して、内部の均一性を保って成形されたものが金型から取り出された後に精度低下を生じてしまうことを防止できるように、プラスチック成形品の製造方法における成形品の冷却処理の仕方を工夫することをその課題とするものである。
【0007】
【課題解決のために講じた手段】
【解決手段1】(請求項1に対応)解決手段1は、プラスチック成形品の製造過程の樹脂冷却時において、所定温度範囲のうちの下限温度よりも5℃以上の範囲で、3℃/min以下の冷却速度で徐冷を行う工程を備えていることである。
【作用】所定温度範囲のうちの下限温度よりも5℃以上の範囲で、3℃/min以下の冷却速度で徐冷を行うことにより、偏肉形状をした成形品の薄肉部と厚肉部の冷却速度の差を可及的に小さくし、全体としてほぼ均一に冷却を進行させることができる。
【0008】
【解決手段2】(請求項2に対応)解決手段2は、解決手段1における徐冷工程において、所定温度範囲内で一定温度に15分間以上保持することである。
【作用】偏肉形状をした成形品で、薄肉部と厚肉部で冷却状態を均一にするだけでなく、一定温度での保持によって、所望の形状を形成させた時に生じた内部応力の不均一が緩和され、プラスチックレンズの場合には形状精度に加えて屈折率分布も著しく低減される。
【0009】
【実施態様1】(請求項3に対応)実施態様1は、解決手段1または解決手段2における所定温度範囲が、使用する樹脂材料のガラス転移温度を基準として−65℃から±0℃の範囲であることである。
【作用】上記の冷却速度で徐冷を行う工程を備えていることにより、偏肉形状をした成形品でも、薄肉部と厚肉部で冷却状態が大きく異なることはなく、均一に冷却が進行し、これにより、薄肉部と厚肉部との収縮量が不均一になるという、形状精度低下要因を無くすことができ、非常に高精度な成形品を製作することができるが、この徐冷を行う所定温度範囲を、成形樹脂材料のガラス転移温度を基準として−65℃から±0℃の範囲にするのが最も適当であることが実験的に確認された。
【0010】
【実施態様2】(請求項4に対応)実施態様2は、解決手段1、解決手段2、実施態様1について、成形金型の外へ取り出されて、所定温度範囲の下限値以上にあるプラスチック成形品に対して、上記の徐冷を行う工程を実施することである。
【0011】
【実施態様3】(請求項5に対応)実施態様3は、解決手段1、解決手段2、実施態様1について、成形金型から取り出されて、所定温度範囲の下限値以下にあるプラスチック成形品に対して、再度昇温させてその昇温温度で所定時間保持した後に上記徐冷を行う工程を実施することである。
【作用】成形金型から取り出されて、所定温度範囲の下限値以下にあるプラスチック成形品に対して、再度昇温させ、その温度で保持し、その後、徐冷を行う工程を実施することにより、多数の成形品を一纏めにして、一定温度での保持、その後の徐冷工程を実施できるから、その生産性が向上される。
【0012】
【実施態様4】(請求項6に対応)実施態様4は、実施態様2(請求項4に対応)について、樹脂材料を金型内で所望の成形品形状に成形加工する際の金型温度を、成形品が金型からの取り出し時において、上記徐冷工程での上限温度と略一致させたことである。
【0013】
【実施態様5】(請求項7に対応)実施態様5は、実施態様2(請求項4に対応)、実施態様3(請求項5に対応)について、内部温度を制御される装置内にプラスチック成形品を収納して、上記徐冷を行うことである。
【0014】
【実施態様6】(請求項8に対応)実施態様6は、実施態様2(請求項4に対応)、実施態様3(請求項5に対応)について、プラスチック成形品が内部を移動可能であって、その移動方向に温度分布が制御されている装置で、徐冷を行う工程を実施することである。
【0015】
【実施態様7】(請求項9に対応)実施態様7は、実施態様2(請求項4に対応)について、所望の成形品形状に成形加工する金型と徐冷を行う装置との間を、内部温度を制御される装置で覆い、プラスチック成形品を金型から取り出した時に、内部温度を制御可能な上記装置で成形品温度を所定温度範囲の下限値以上に制御することである。
【0016】
【実施態様8】(請求項10に対応)実施態様8は、実施態様2(請求項4に対応)について、所望の成形品形状に成形加工する金型と徐冷を行う装置との間に、温度制御された気体をプラスチック成形品に吹き付ける対流伝熱装置を設け、プラスチック成形品を金型から取り出した時に、上記対流伝熱装置により成形品温度を所定温度範囲の下限値以上に制御することである。
【0017】
【実施態様9】(請求項11に対応)実施態様9は、所望の成形品形状に成形加工する金型と徐冷を行う装置との間に、赤外線をプラスチック成形品に照射する輻射伝熱装置を設け、プラスチック成形品を金型から取り出した時に、上記輻射伝熱装置により成形品温度を所定温度範囲の下限値以上に制御することである。
【0018】
【発明の実施の形態】次いで、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。本発明によるプラスチック成形品の製造方法における、樹脂温度変化の様子を図2に示している。溶融状態の樹脂もしくはブランク状態の樹脂から、所望の形状に形成した後、樹脂を冷却する過程において、所定温度範囲のうち5℃以上の範囲で、3℃/min以下の冷却速度で徐冷を行う。このものは、徐冷速度一定の下での徐冷時間を違えた例を徐冷方法1、徐冷方法2、徐冷方法3として示し、さらに、徐冷開始温度を一段下げた例を徐冷方法4として示している。この4つの除冷方法の例示は、その除冷開始温度、除冷時間について具体例を示すものではなく、所定温度範囲、すなわちTgから(Tg−65)℃の範囲での除冷を、その除冷開始温度、除冷時間について様々な態様で行えるものであることを模式的に示すものである。この冷却速度で徐冷を行う工程を備えていることにより、偏肉形状をした成形品でも、薄肉部と厚肉部で冷却状態が大きく異なることはなく、均一に冷却が進行する。そのため、薄肉部と厚肉部との収縮量が不均一になるという、形状精度低下要因を無くすことができ、非常に高精度な成形品を製作することができる。徐冷を行う所定温度範囲は、実験的研究の結果、使用する樹脂材料のガラス転移温度を基準として−65℃から±0℃の範囲であることが適していることが明らかとなった。なお、この所定温度範囲のすべての温度域を徐冷する必要はなく、その徐冷時間は個々の成形品に要求される精度により、適宜決めればよい。ただし、徐冷時間が短いほど、その効果は小さい。本発明は特に形状精度の向上を目的としているが、内部均一性も同時に向上し、プラスチックレンズの場合には屈折率分布も低減できる。
【0019】また、本発明によるプラスチック成形品の製造方法における、他の樹脂温度変化の様子を図3に示している。これは、溶融状態の樹脂もしくはブランク状態の樹脂から所望の形状に形成した後、樹脂を冷却する過程において、所定温度範囲内の5℃以上の範囲で、3℃/min以下の徐冷に加えて、一定温度での保持を行っているものである。この一定温度での保持を所定時間(15分間以上)行うことにより、偏肉形状をした成形品で、薄肉部と厚肉部で冷却状態を均一にするだけでなく、所望の形状を形成させた時に生じた内部応力の不均一が、一定温度での保持によって緩和され、プラスチックレンズの場合には形状精度に加えて屈折率分布が非常に低減された成形品を製作することができる。
【0020】本発明によるプラスチック成形品の製造方法の実施例1を図4に示している。この実施例は、樹脂材料を金型内で所望の成形品形状に成形加工する工程を射出成形法で行ったものである。この時の金型温度は、徐冷を行う工程を実施する上限温度と略一致する一定温度で制御されている。溶融樹脂を金型内に射出し、樹脂を冷却して後、プラスチック成形品を金型から取り出し、その後に、内部温度を制御された装置A内(汎用の恒温漕、オーブン等)にプラスチック成形品を収納し、これで徐冷工程を実施するか、又は、プラスチック成形品が内部を移動可能であって、その移動方向に温度分布が制御されている装置Bによって、当該装置B内をプラスチック成形品を移動させて徐冷を行う。射出成形時の金型温度が徐冷工程を実施する温度範囲の上限温度と略一致しており、金型温度を単純に一定温度に制御するものであるから、金型温度について特別複雑な制御を行う必要はなく、したがって、金型は簡易なものでよく、金型コストも低減される。また、プラスチック成形品を金型から取り出した後、徐冷を実施する工程を、内部温度が制御される装置として、汎用設備の恒温槽を用いることにより、低コストで非常に高精度な成形品を製作することができる。徐冷を実施する工程に、プラスチック成形品が内部を移動可能であって、その移動方向に温度分布が制御されている装置を用いることにより、所望の形状に成形加工した成形品を連続的に徐冷することが可能であり、したがって、高い生産性の下で高精度な成形品を製作することができる。
【0021】本発明によるプラスチック成形品の製造方法の実施例2を図5に示している。この実施例2では、樹脂材料を金型内で所望の成形品形状に成形加工する射出成形法でプラスチック成形品を成形し、成形したプラスチック成形品を金型から取り出した後に、ほぼガラス転移温度から第1段の徐冷を行い、その後、一定温度で15分間以上保持し、その後、第2段の徐冷を行っている。金型外で一定温度に保持することにより、金型によって拘束されることなしに、プラスチック成形品の内部応力の不均一を緩和しやすくなるから、プラスチックレンズの場合には、形状精度が高く、かつ、屈折率分布が著しく低減された成形品を製作することができる。
【0022】プラスチック成形品の製造方法の実施例3を図6に示している。この実施例3は、所望の成形品形状に成形加工する金型と徐冷を行う装置との間が、内部温度を制御された装置で覆われていて、成形品温度が所定温度範囲の下限値以下に急激に低下することを防止している。この実施例3では、プラスチック成形品を金型から取り出した時に、所定温度範囲の下限値以上の温度に保った状態で、徐冷を行う工程へ成形品を移動させることができ、これによって、急冷による成形品精度の低下を防ぐことができる。
【0023】プラスチック成形品の製造方法の実施例4を図7に示している。この実施例4は、プラスチック成形品を射出成形する金型と、徐冷を行う装置との間に、温度制御された気体をプラスチック成形品に吹き付ける装置C、または赤外線をプラスチック成形品に照射する装置Dを設けることで、成形品温度が所定温度範囲の下限値以下になるのを防止している。プラスチック成形品を金型から取り出した時に、所定温度範囲の下限値以上の温度に保った状態で、徐冷を行う工程へ成形品を移動させることができる。これらは、比較的簡易な装置で、成形品の温度を所定温度範囲の下限値以上に保つことができ、これによって、急冷による成形品精度の低下を防ぐことができる。
【0024】プラスチック成形品の製造方法の実施例5を図8に示している。この実施例では、金型内で所望の成形品形状に成形加工した後、成形品を金型から取り出し、徐冷を行う工程を実施する温度範囲の上限温度以下に温度が下がったとき、そのプラスチック成形品を、内部温度が制御される装置、またはその内部を成形品を移動させることが可能でかつ、その移動方向の温度分布が制御されている装置で、ガラス転移温度(Tg)までいったん昇温させ、その昇温温度で一定時間保持した後、徐冷を行う工程を実施するものである。これらは、一定温度保持の時間が必要なため、サイクルは長くなる。しかし、金型と徐冷を行う工程を実施する装置との間に、特別な装置を新たに導入することなしに、高精度な成形品を製作することができる。
【0025】プラスチック成形品の製造方法の実施例6を図9に示している。この実施例では、金型内で所望の成形品形状に成形加工した後、成形品を金型から取り出して室温まで下げ、室温まで温度が低下したプラスチック成形品を、再び徐冷温度範囲の上限まで昇温させてその昇温温度で一定時間保持した後、徐冷を行う工程を実施するものである。また、この実施例には、内部温度が制御される装置を用いて、多数の成形品を同時に一定温度で保持した後、徐冷を行う工程を実施することができるので、生産性が非常に高いという利点がある。
【0026】本発明によるプラスチック成形品の製造方法をプラスチックレンズに適用した場合の、成形品精度測定結果を図10のグラフに示している。図10(b)は、図10(a)にプラスチックレンズの形状測定結果を示しているが、細線で示すグラフで示す従来例の形状精度はレンズ中央と左右両端部との差が極めて大きく、これに対して、太線のグラフで示す本発明の実施品の形状精度は、レンズ中央と左右両端部の差が極めて小さい。また、図10(c)は同プラスチックレンズの屈折率分布測定結果を示しているが、細線で示すグラフで示す従来例の屈折率は、そのレンズ中央と左右両端部における差が極めて大きく、これに対して、太線のグラフで示す本発明の実施品の屈折率は、そのレンズ中央と左右両端部でその差が極めて小さい。以上のことから、この発明によるプラスチック成形品の製造方法は従来成形法に比して、成形品の形状精度を大幅に向上させ、さらに内部応力の不均一が緩和されて屈折率分布がほぼ均一である成形品を製作できる。したがって、この発明の製造方法によって製作されたプラスチックレンズを用いることで、非常に優れた光学性能(結像性能)の光学系を製作することができる。
【0027】
【発明の効果】以上の、この発明の効果を、主な請求項毎に整理すれば、次のとおりである。
1.請求項1に係る発明の効果プラスチック成形品の製造過程の樹脂冷却時において、所定温度範囲のうちの少なくとも5℃以上の範囲で、3℃/min以下の冷却速度で徐冷を行う工程を備えていることにより、成形品各部の冷却を均一に冷却を行うことができ、非常に形状精度が高い高精度成形品を得ることができる。
2.請求項2に係る発明の効果徐冷を行う工程において、所定温度範囲で一定温度の保持を15分間以上実施することにより、所望の形状を形成させた時に生じた内部応力の不均一を緩和することができ、高い形状精度に加えて内部均質性に優れた成形品を製作することができる。
3.請求項3に係る発明の効果所定温度範囲が、使用する樹脂材料のガラス転移温度を基準として−65℃から±0℃の範囲であることにより、形状精度、内部均一性を一層向上させることができる。
4.請求項4に係る発明の効果樹脂材料を金型内で所望の成形品形状に成形加工する工程と、プラスチック成形品を金型から取り出した後に徐冷を行う工程との2つの工程に分けることにより、高い生産性の下で、高精度の成形品を製作することができる。
5.請求項5に係る発明の効果金型内で所望の成形品形状に成形加工した後、金型から取り出して室温まで温度が低下したプラスチック成形品を、再度昇温させ一定温度で保持し、その後、徐冷を行う工程を実施することにより、多数の成形品を一纏めにして、一定温度の保持、及びその後の徐冷工程を実施できるから、その生産性が向上される。
6.請求項6に対応する作用効果樹脂材料を金型内で所望の成形品形状に成形加工する工程において、金型温度が、成形品の徐冷を行う工程の上限温度と略一致していることにより、金型からの成形品取り出し時の急冷を防ぐことができるとともに、金型温度は一定温度で制御されるものであるから、金型に複雑な温度制御を行う必要はないので簡易な金型となり金型費が低減される。
7.請求項7に係る発明の効果内部温度を制御可能な装置として、汎用設備の恒温槽を用いることができるので、低コストな設備の導入で非常に高精度な成形品を製作することができる。
8.請求項8に係る発明の効果プラスチック成形品が内部を移動可能であって、その移動方向に温度分布が制御されている装置を使用することにより、所望の形状に成形加工した成形品を連続的に徐冷することが可能であるから、高い生産性の下で、高精度な成形品を製作することができる。
9.請求項9に係る発明の効果プラスチック成形品を金型から取り出した時に、所定温度範囲の下限値以上の温度に保った状態で、徐冷を行う工程へ成形品を移動させることができるから、急冷による成形品の精度低下を防ぐことができる。
10.請求項10に係る発明の効果プラスチック成形品を金型から取り出した時に、所定温度範囲の下限値以上の温度に保った状態で、徐冷を行う工程へ成形品を移動させることが比較的簡易な装置でできる。
11.請求項11に係る発明の効果プラスチック成形品を金型から取り出した時に、所定温度範囲の下限値以上の温度に保った状態で、徐冷を行う工程へ成形品を移動させることが比較的簡易な装置でできる。
12.請求項12に係る発明の効果本発明のプラスチック成形品の製造方法で製造されたレンズ、ミラー、プリズム等の光学素子は、形状精度とともに、内部均一性(屈折率分布)も良好で、光学性能にも優れたものである。
【出願人】 【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
【出願日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【代理人】 【識別番号】100110386
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 敏雄
【公開番号】 特開2002−283426(P2002−283426A)
【公開日】 平成14年10月3日(2002.10.3)
【出願番号】 特願2001−85478(P2001−85478)