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【発明の名称】 フィルム巻層体の熱処理方法
【発明者】 【氏名】川瀬 裕子

【氏名】上田 一義

【氏名】松田 文宏

【要約】 【課題】フィルム巻層体を表層部から内部までの全域にわたって迅速にかつ均一に昇温でき、フィルム全長にわたって良好に内部応力を緩和できるフィルム巻層体の熱処理方法を提供する。

【解決手段】高周波誘導加熱によりフィルム巻層体を厚み方向全域にわたって加熱することを特徴とするフィルム巻層体の熱処理方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高周波誘導加熱によりフィルム巻層体を厚み方向全域にわたって加熱することを特徴とするフィルム巻層体の熱処理方法。
【請求項2】 周方向全周にわたって配置された高周波誘導加熱装置によりフィルム巻層体を加熱する、請求項1のフィルム巻層体の熱処理方法。
【請求項3】 周方向に部分的に配置された高周波誘導加熱装置によりフィルム巻層体を加熱する、請求項1のフィルム巻層体の熱処理方法。
【請求項4】 フィルム巻層体を回転させながら加熱する、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム巻層体の熱処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチックフィルム巻層体の熱処理方法に関し、とくに、加温した状態に保つことにより、いわゆるエージングと呼ばれる熱処理を施して残留内部応力を緩和あるいは除去するためのフィルム巻層体の熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プラスチックフィルム巻層体をエージングする方法として、温調装置により温度コントロールされた密室に巻層体を放置する方法が知られている。
【0003】しかし、このように温度コントロールされた密室に放置するだけでは、フィルム巻層体の表層部が所定の設定温度に昇温されるまでに長時間を要し、かつ、巻層体の表層から内層までを均一に昇温できず、特に巻層体の中層付近はほとんど昇温できないという問題がある。
【0004】このような熱処理は、フィルム製造過程で負荷され、巻層体の各部に残留している内部応力を緩和あるいは除去することを目的とするものであるが、上記の如く巻層体の各層が均一に昇温されないと、フィルム全長にわたってこの効果を得ることができない。内部応力が残留したままのフィルムを二次加工等に使用すると、フィルムの物性が安定しないばかりか、二次加工工程におけるシワやタルミ、フィルム破断等のトラブルの発生の原因になる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の課題は、上記のような現状に鑑み、フィルム巻層体を表層部から内部までの全域にわたって迅速にかつ均一に昇温でき、フィルム全長にわたって良好に内部応力を緩和できるフィルム巻層体の熱処理方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に係るフィルム巻層体の熱処理方法は、高周波誘導加熱によりフィルム巻層体を厚み方向全域にわたって加熱することを特徴とする方法からなる。
【0007】この熱処理方法においては、周方向全周にわたって配置された高周波誘導加熱装置によりフィルム巻層体を加熱することもできるし、周方向に部分的に配置された高周波誘導加熱装置によりフィルム巻層体を加熱することもできる。とくに部分的に配置された高周波誘導加熱装置により加熱する場合には、フィルム巻層体を回転させながら加熱することが好ましい。
【0008】上記のような本発明に係るフィルム巻層体の熱処理方法においては、高周波誘導加熱によりフィルム巻層体が加熱されるので、従来の温度コントロールされた密室での昇温に比べ、急速加熱が可能となってフィルム巻層体が短時間のうちに所定の温度に昇温されるとともに、表層から内層への熱伝達を利用する加熱方法ではなく、表層から巻芯部までの同時加熱が可能な方法であるから、表層から内層まで厚み方向全域にわたって均一に昇温させることが可能になる。したがって、迅速な熱処理と均一加熱の両方が可能になり、巻層体を形成しているフィルムの全長にわたって、効果的に内部応力が緩和される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の望ましい実施の形態、および本発明を実施した場合の効果について説明する。図1は、本発明の一実施態様に係るフィルム巻層体の熱処理方法を示している。図1において、1は、巻取コア2上にプラスチックフィルム3が所定長巻き取られたフィルム巻層体を示している。プラスチックフィルムとしては、特に限定されないが、ポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルム、ポリアミド系フィルム等が挙げられ、とくにフィルム製造過程で生じた内部応力が残留しやすい延伸フィルムに本発明は有効である。中でも二軸延伸フィルム、とくに幅方向や長手方向に内部応力が残留しやすい逐次二軸延伸フィルムに本発明は有効である。
【0010】フィルム巻層体1の周囲に、本実施態様では周方向に部分的に、高周波誘導加熱装置4が配置されている。高周波誘導加熱装置4は、調整可能な高周波電源5を備えており、高周波電源5の調整により加熱度合をコントロールできるようになっている。すなわち、上記装置4によりフィルム巻層体1は高周波誘導加熱されるが、加熱強度が高周波電源5によって調整され、それによってフィルム巻層体1の昇温すべき温度が所定の温度に制御できるようになっている。設定すべき温度や昇温時間特性は、熱処理すべきフィルム巻層体に応じて決めればよい。
【0011】また、本実施態様では高周波誘導加熱装置4が周方向に部分的に配置されているので、フィルム巻層体1が周方向に均一に加熱されるよう、フィルム巻層体1は適度に遅い速度で回転される。ただし、周方向全周にわたって高周波誘導加熱装置が配置されている場合にも、フィルム巻層体1を回転させることができる。フィルム巻層体1を回転させれば、上記加熱に加え、巻姿の修正、とくに巻層の偏心を修正する効果が得られる。
【0012】上記のようにフィルム巻層体1を高周波誘導加熱により昇温することにより、フィルム巻層体1は、表層部から内層まで厚み方向全域にわたって、迅速に、所定の温度あるいはそれに近い温度に均一に昇温される。したがって、従来方法のように温調された密室内に放置する場合に比べ、極めて短時間のうちに巻層体全体にわたって(つまり、フィルム全長にわたって)均一に所定の熱処理が施されることになる。
【0013】このような熱処理方法の効果を確認するために、厚み1.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの巻層体に、図1に示した装置を用いて本発明方法を実施したところ、以下のような優れた結果が得られた。
【0014】図2に示すように、フィルム巻層体の表面温度が所定のエージング設定温度(50℃)に到達するのに、従来の温調密室内放置の場合には約600分要していたのが、本発明に係る方法では、約50分にまで短縮できた。
【0015】また図3に示すように、フィルム巻層体の表面温度が所定のエージング温度(50℃)に到達した後10時間後に、巻層体の表面(巻芯からの距離297mm)と、巻層体を切開して、厚み方向中層部(巻芯からの距離150mm)と巻芯(巻芯からの距離0mm)の温度を測定したところ、従来方法では大きな温度差があり、とくに中層部ではほとんど常温のままで実質的に昇温されていなかったが、本発明に係る方法では、巻層体の厚み方向全域にわたって均一に50℃まで昇温されていた。
【0016】なお、図3におけるフィルム巻層体の温度測定は、フィルム巻層体の幅方向中央部で行ったものであり、巻層体の中層部や巻芯部において最も昇温されにくい箇所で測定したものである。したがって、図3に示したデータは、温度測定上最も不利な箇所で行ったものであるので、とくに本発明方法のデータに関しては、フィルム巻層体の他の部位も確実に図3に示した温度特性を有していることになる。
【0017】図2、図3から明らかなように、本発明に係る方法では、極めて迅速な昇温と、内層までの均一な昇温との両方が共に達成される。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るフィルム巻層体の熱処理方法によれば、高周波誘導加熱により、フィルム巻層体を極めて迅速に所定の温度に加熱でき、かつ、巻層体の厚み方向全域にわたって均一な温度に昇温でき、フィルム全長にわたって製造工程で負荷された内部応力を効果的に緩和することができる。とくに逐次二軸延伸のように、フィルム長手方向のリラックスが困難な延伸法にあっても、フィルムの残留内部応力を効率よく緩和できる。内部応力の緩和されたフィルムは、幅方向、長手方向に物性が均一化されているため、二次加工時のトラブル発生の防止にも大きく寄与できる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成13年3月27日(2001.3.27)
【代理人】 【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
【公開番号】 特開2002−283359(P2002−283359A)
【公開日】 平成14年10月3日(2002.10.3)
【出願番号】 特願2001−89728(P2001−89728)