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【発明の名称】 積層板の製造方法
【発明者】 【氏名】狩場 力

【氏名】塩見 和義

【要約】 【課題】表面粗さ、反りが小さく、寸法変化率及びそのバラツキも小さい積層板を生産性良く製造すること。

【解決手段】熱硬化性樹脂を含浸したシート状プリプレグを一対の鏡面板に挟んで熱盤間で加熱・加圧し、加圧を解除した無圧化状態で冷却して積層板を製造する方法において、プリプレグの硬化度が70%以上で100%未満の範囲にある時点で無圧化状態にし 無圧化状態での冷却を、鏡面板と加熱・加圧した積層板とを解体せずに保温しながら行なう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱硬化性樹脂を含浸したシート状プリプレグを一対の鏡面板に挟んで熱盤間で加熱・加圧し、加圧を解除した無圧化状態で冷却することにより、積層板を製造する方法において、上記無圧化状態にする時点を、下式で示すプリプレグの硬化度が70%以上で100%未満の範囲にある時点とし 無圧化状態での冷却を、鏡面板と加熱・加圧した積層板とを解体せずに保温しながら冷却することを特徴とする積層板の製造方法。
CF=Tg1/Tg2×100CF :プリプレグの硬化度(%)
Tg1:無圧化とする時点のプリプレグのガラス転移点(℃)
Tg2:完全硬化したプリプレグのガラス転移点(℃)
【請求項2】 積層板が、ガラス繊維基材にエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグを用いた、プリント配線板用の銅張積層板である請求項1記載の積層板の製造方法。
【請求項3】 複数枚のシート状プリプレグを、一対の鏡面板に挟む請求項1又は2記載の積層板の製造方法。
【請求項4】 熱盤に、複数組の鏡面板を挿入する請求項1〜3のいずれかに記載の積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、積層板の製造方法に関し、特にプリント配線板用基板に適した銅張積層板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】プリント配線板用基板等に使用されている積層板は、シート状基材に熱硬化性樹脂を含浸した後、Bステージまで硬化した単数または複数の組のプリプレグを一対の鏡面板に挟み、これをプレス熱盤で加熱・加圧して板状にプレス成形することにより製造されている。
【0003】上記積層板の製造工程において、プリプレグの片面または両面に銅箔を配置するとプリント配線板用の銅張積層板が得られ、銅箔の替わりに離型フイルム等を使用すると絶縁板用の積層板が得られる。
【0004】ところで、近年、エレクトロニクス機器の軽薄短小化にともないプリント配線用基板への電子部品の高密度実装が進展し、プリント配線板のファインパターンが進んでいる。このため、銅張積層板は銅箔表面の表面粗さが小さく、銅張積層板の加工工程において反りが小さく、寸法変化率及びそのバラツキが小さいものが望まれている。
【0005】従来、銅箔表面の表面粗さが小さく、寸法変化率の小さい銅張積層板を製造する方法として、プレス成形工程において加熱・加圧完了後に、成形圧力を無圧化状態にして、無圧化状態で放冷する方法が知られている(特公昭62−1827号公報)。この方法によると、加熱・加圧完了まで成形圧力が加わっているため、銅箔表面の表面粗さを小さくすることができるという利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従来の方法は、加熱完了までを加圧した状態で成形するために、プリプレグ硬化時に成形歪が大きく残留するという問題がある。このため、寸法変化率は未だ大きく不十分であるばかりでなく、寸法変化率のバラツキも大きいという欠点がある。また、プリプレグ硬化時に成形歪が大きく残留するために反りが大きくなる欠点もあった。更に、プレス成形を加熱完了まで行なうため、プレス成形時間が長くなり、生産性が悪いという問題もあった。
【0007】そこで、この発明は、銅箔表面の表面粗さが小さく、加工工程において反りが小さく、寸法変化率及びそのバラツキが小さく、主にファインパターンに適した銅張積層板を生産性よく提供することを技術的課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、この発明は、熱硬化性樹脂を含浸したシート状プリプレグを一対の鏡面板に挟んで熱盤間で加熱・加圧し、加圧を解除した無圧化状態で冷却して積層板を製造する方法において、上記無圧化状態にする時点を、下式で示すプリプレグの硬化度が70%以上で100%未満の範囲にある時点とし 無圧化状態での冷却を、鏡面板と加熱・加圧した積層板とを解体せずに保温しながら冷却するようにしたものである。
CF=Tg1/Tg2×100CF :プリプレグの硬化度(%)
Tg1:無圧化とする時点のプリプレグのガラス転移点(℃)
Tg2:完全硬化したプリプレグのガラス転移点(℃)
【0009】この発明においては、上記のように、無圧化状態にする時点は、プリプレグの硬化度が70%以上で100%未満の範囲にある時点である。これは、プリプレグの硬化度が70%未満ではプリプレグ樹脂の硬化反応が不十分であり、無圧化状態にした時点でデラミネーション(層間剥離)やボイドが発生する欠点が生じるからである。また、銅箔表面の表面粗さが大きくなる欠点が生じる。一方、プリプレグの硬化度が100%となると、硬化反応が完了するまで加圧状態で保たれることとなり、反りが大きくなって、寸法変化率及びそのバラツキが大きくなる欠点が生じる。
【0010】また、この発明においては、無圧化状態での冷却を、鏡面板と加熱・加圧した積層板とを解体せずに行う必要がある。これは、無圧化状態での冷却を鏡面板と加熱・加圧した積層板とを解体した後に行った場合、積層板の冷却速度が速くなり、所定の硬化度が得られなくなるからである。また、冷却時に積層板の支持体がなくなるので、反りが大きくなる欠点が生じる。
【0011】また、この発明においては、プリプレグを完全硬化させるために保温しながら冷却を行っている 積層板を所定の硬化度にするためには、加熱・加圧を行なったプレス機を使用する方法や別の加熱装置を使用して完全硬化する方法も考えられる。しかしながら、前者はプレス機の加熱・加圧成形のサイクル数が減少し、生産性が低下する。また、後者は別の加熱装置が必要となり、生産性や経済性の面でやはり好ましくない。
【0012】また、保温しながら冷却する方法としては、保温シートで被う方法や真空ボックス中で冷却する方法等を採用することができ、特に限定するものではない。また、保温条件は、プリプレグが完全硬化するように、適時設定すればよい。
【0013】なお、完全硬化したプリプレグのガラス転移点とは、プリプレグの硬化反応が完了した時点のプリプレグのガラス転移点をいう。具体的には、プレス成形工程において、所定温度で加熱・加圧成形を継続した場合に到達するプリプレグのガラス転移点(積層板のガラス転移点)の最高温度をいう。通常、積層板は後工程で受ける熱によるプリプレグ樹脂の硬化収縮の影響を最小限にするために、プレス成形工程または積層板の加工工程前に熱処理を行ないプリプレグの硬化度が100%として使用される。
【0014】この発明においては、熱硬化性樹脂を含浸したシート状プリプレグとしてガラス繊維や紙、アラミド、ポリエステル等の無機または有機繊維をマット、不織布、織布にした基材に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸した後、Bステージまで硬化したものを使用することができる。特に、剛直性が高く成形歪が残留し易いガラス繊維と、接着性が優れ樹脂硬化時に揮発性成分の発生が少なく、デラミネーションの発生因子の少ないエポキシ樹脂とを組み合わせたものが好ましい。
【0015】この発明に係る積層板の製造工程は、次の通りである。まず、上記熱硬化性樹脂を含浸したシート状プリプレグを用意する。次いで、目的とする厚さの積層板となるように、上記プリプレグを単数または複数枚を重ね合わせ、必要に応じてプリプレグの両面に離型フイルム等の離型シートまたは銅箔等の金属箔を重ね合わせ、一対のステンレス製等の鏡面板に挟み込み、これを単数または複数枚にして、プレス熱盤間に挿入し、加熱・加圧成形する。加熱温度及び圧力はプリプレグの成形時の樹脂流動性及び硬化速度により適時調整する。
【0016】次に、加熱・加圧してプリプレグの硬化度が100%になる前に成形圧力を解除し、積層板と鏡面板等の自重のみの無圧化した状態にする。
【0017】そして、無圧化した状態での冷却は、鏡面板と積層板とを解体しない状態でプレス機より取り出した直後に保温しながら冷却する。保温に、保温シートを用いる場合は、断熱性に優れたものがよく、成形温度以上の耐熱性を有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0018】この発明は、プリプレグの硬化後期を無圧化状態で拘束せずに行なうため、樹脂の硬化収縮が自由になり、硬化時の成形歪を最小限にすることができる。これにより、反りが小さく、寸法変化率及びそのバラツキが小さいものが得られると考えられる。また、積層板及び鏡面板の自重のみの適度な荷重が加わっていることが、表面粗さの低下並びに反りの抑制に寄与しているものと考えられる。
【0019】また、この発明では、加熱完了前にプレス成形を完了するため、プレス成形時間を短縮することができる。
【0020】
【実施の形態】以下に、この発明の実施例1〜2と、比較例1〜2、従来例1を示す。まず、プリプレグAとして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に対し、硬化剤としてジシアンジアミドを2重量部、硬化促進剤としてイミダゾールを1重量部を配合した固形分50重量%のワニスをガラス織布(210g/m2 )に含浸し、樹脂付着量42%のものを用意した。
【0021】このプリプレグAを3枚重ね合わせ、その両面に18μm厚の銅箔を重ね合わせ、この構成物を厚さ10mmのステンレス製鏡面板に挟みこんだ1組をクッション材を介してプレス熱盤間に挿入した。熱盤温度160℃、成形圧力4.9MPaで、成形時間が35分間のものを実施例1、90分間のものを実施例2、30分間のものを比較例1、150分間のものを比較例2、120分間のものを従来例1とし、成形した直後にプレス圧力を解除して、直ちにプレス機より取り出した。
【0022】そして、実施例1、2と比較例1、2については、プレス機より取り出した直後にガラスウールシートで覆って24時間後に積層板の温度が室温(20℃)になるように保温冷却した。徒来例1については、プレス機より取り出した直後に自然放冷した。
【0023】硬化度の測定は、実施例、比較例並びに従来例共に、プレス成形時に別の熱盤間で同一構成で成形した銅張積層板を解圧直後に鏡面板と分離解体し、積層板を水に浸漬急冷した積層板のガラス転移点をDMA法にて側定し(測定方法はJIS C 6481 5.17.2)、完全硬化させた比較例2で得られた銅張積層板のガラス転移点と比較して行った。
【0024】表面粗さの測定は、得られた銅張積層板の表面をJIS B 0601に準拠し、十点平均粗さRzで表示した。
【0025】寸法変化率及び寸法変化率のバラツキの測定は、次の通り行った。まず、510×510mmサイズの試験片の四隅に1mm径の穴を開け、各穴間の寸法を測定し、初期寸法とする。次いで、銅箔をエッチング除去した後、150℃で30分間加熱処理し、試験片の穴間の寸法を初期寸法に対する寸法変化率を算出し、その平均値で表した。なお、寸法変化率のバラツキは穴間をn=50個測定した時の標準偏差δn−1で表した。
【0026】反りの測定は 上記寸法変化率に測定した加熱処理後の試験片の反り量を測定し、その平均値を表した。以上の実施結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】表1の結果から、プレス成形工程においてプリプレグの硬化度を70%以上で100%未満の範囲でプレス成形圧力を無圧化状態とし、鏡面板と積層板とを解体せずに保温冷却した場合、ボイドまたはデラミネーションの発生がなく、銅箔表面の表面粗さが小さく、加工工程において反りが小さく、寸法変化率及びそのバラツキが小さい銅張積層板が得られることを確認することができた。
【0029】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、ボイドまたはデラミネーションの発生がなく、銅箔表面の表面粗さが小さく、また加工工程において反りが小さく、寸法変化率及びそのバラツキも小さく、主にファインパターンに適した銅張積層板を生産性良く提供することができる。
【出願人】 【識別番号】591045703
【氏名又は名称】利昌工業株式会社
【出願日】 平成13年3月9日(2001.3.9)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二 (外2名)
【公開番号】 特開2002−264157(P2002−264157A)
【公開日】 平成14年9月18日(2002.9.18)
【出願番号】 特願2001−67192(P2001−67192)