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【発明の名称】 光ディスク基板の成形方法及び成形装置
【発明者】 【氏名】上田 恵司

【要約】 【課題】1回の成形動作で同時に複数成形される光ディスク基板の特性を個別に制御しながら成形することを可能とさせ、特性が良好でかつ複数の成形基板間の特性ばらつきが小さい光ディスク基板を成形できる光ディスク基板成形方法及びその成形装置を提供する。

【解決手段】固定金型と複数個の可動金型を重ねる型締めを行い、複数個のキャビティを形成させて複数個の光ディスク基板を同時に成形する光ディスク基板射出成形方法において、キャビティ中へ溶融樹脂を射出充填する操作を、複数のキャビティ同時に行うのでなく、初めに射出装置から最も遠い位置にあるキャビティのみに対して行い、この操作が完了した後にひとつ手前のキャビティへ射出充填し、そしてさらに1つ手前のキャビティと、最も射出装置から遠いキャビティからひとつずつ順次射出充填操作を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】固定金型と複数個の可動金型を重ねる型締めを行い、複数個のキャビティを形成させて複数個の光ディスク基板を同時に成形する光ディスク基板射出成形方法において、キャビティへ溶融樹脂を射出充填する操作を、最初に射出装置から最も遠い位置にあるキャビティのみに対して行い、この操作が完了した後に一つ手前のキャビティへ射出充填し、そしてさらに一つ手前のキャビティと、最も射出装置から遠いキャビティから一つずつ順次射出充填操作を行うことを特徴とする光ディスク基板の射出成形方法。
【請求項2】請求項1の光ディスク基板射出成形法による光ディスク基板成形装置において、一つのキャビティへ溶融樹脂の射出充填を行っている間、他のキャビティへ樹脂が流入することを阻止する、溶融樹脂の充填制御手段を有することを特徴とする光ディスク基板成形装置。
【請求項3】請求項2の光ディスク基板成形装置において、一つのキャビティへの溶融樹脂の充填が完了し、そのキャビティのゲートを閉止させる操作と連動して、次に溶融樹脂が充填されるキャビティへのゲートを開く操作を行う、溶融樹脂の充填制御手段を有することを特徴とする光ディスク基板成形装置。
【請求項4】請求項2及び請求項3の光ディスク基板成形装置において、その射出装置側及び型締め装置側の双方に光ディスク基板の鏡面を形成させるキャビティ鏡面、あるいは光ディスク基板上に情報を転写させるスタンパを装着させるためのスタンパ鏡面を有する中間可動金型について、上記中間可動金型が有する二つの鏡面をそれぞれ個別に温調する温調回路を有することを特徴とする光ディスク基板成形装置。
【請求項5】請求項2乃至請求項4の射出成形装置の中間可動金型において、中間可動金型の中心部にあり、その射出装置側のキャビティのゲートを閉止して光ディスク基板の中心穴を形成させると共に、型締め機構側にあるキャビティへ溶融樹脂を導入させるためのランナーが形成されている中間ゲートカッターについて、この中間ゲートカッター各々を個別に温調させるための温調回路が設けられていることを特徴とする光ディスク基板成形装置。
【請求項6】請求項2乃至請求項5の光ディスク基板成形装置を用いる請求項1の光ディスク基板射出成形方法において、冷却工程が完了した後に金型を開いて成形品を取り出す際に、最初に最も射出装置に近い位置にあるキャビティを開いて光ディスク基板とランナー部分を取り出して後、順次型締め機構側のキャビティを開いて光ディスク基板を取り出すことを特徴とする光ディスク基板成形方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、光ディスク基板成形方向及びその成形装置に関するものであり、光ディスク基板のように中央部に開口が形成され、その形状精度や低内部歪み等の品質に対して、高度な要求がなされている成形品の成形方法及びその成形装置として有効なものである。
【0002】
【従来の技術】CD系やMO系、そしてDVD系等の様々な種類の光ディスクが読みとり専用、追記用、書き換え用それぞれの用途に応じた型で利用されている。このような光ディスクに用いられる基板は、生産効率やコストの点よりポリカーボネートを主とする樹脂を材料として射出成形法あるいは射出圧縮成形法で成形、生産されている。これらの光ディスク基板の成形方法はいずれも、金型を閉止して形成したキャビティ内に、溶融させた材料樹脂を充填し、金型から取り出せる温度になるまで溶融樹脂を金型内で冷却・固化させて所定の基板形状にまで成形する。なおキャビティ内には、光ディスクに必要な情報をピット列あるいは案内溝として刻み込まれたスタンパがセットされており、上述した溶融樹脂をキャビティ内へ充填してから固化させるまでの工程中に、成形される光ディスク基板上にスタンパに刻まれた必要な情報を転写させる。そして、金型内で成形された光ディスク基板は、金型内における冷却工程が完了した後、金型から取り出され、成形以降の次工程へ受け渡される。
【0003】ところが光ディスクの利用範囲が拡大し、その結果、需要が増大して生産量が増大するに従い、光ディスクの製造コスト低減の要求もまた厳しくなり、様々な視点からコスト低減のための試みがなされている。このような製造コスト低減に応えるためには、成形サイクルの短縮して成形能率を向上させることが有効である。そして成形サイクル短縮に関する試みは成形機や金型、さらには成形した光ディスク基板を型外から取り出す取り出し装置等のハード面、及び成形条件設定といったソフト面の双方で様々に行われ、すでに使用する成形材料の材料特性上の限界にまで進んでいる。
【0004】しかし、さらなる光ディスク基板の製造コスト低減に対する要求、言い換えると成形サイクル短縮への要求に際限はない。そのような要求に応えるひとつの方法として、光ディスク基板の多数個取りが検討されている。これは1回(1サイクル)の成形動作によって複数の光ディスク基板を同時に成形することによって、1枚あたりの成形所要時間を短縮させる試みで、複数個のキャビティが同一平面内に横に並べられた構成、つまり複数の金型を横に並べた構成を有する射出成形装置が使用されているのが一般的である。しかしこのような射出成形装置では、複数のキャビティ(金型)が横に並べられているために金型投影面積が大きくなり、そのため、これらを取り付ける成形機の金型取り付け板面積(タイバー間距離)をあわせて大きくするだけでなく、キャビティ(金型)を閉止する型締め力も同時に大きくしなければならない。言い換えると上述したような成形基板の多数個取り成形のためには大型の射出成形機が必要となる。このことは成形機の導入コスト及びその設置面積の増大を招き、製造コスト低減という目的からすれば不利である。
【0005】上記問題を解決して光ディスク基板を成形する方法として、特開平9−207171号公報に記載された「中央部に開口が形成された成形品の射出成形法及びその射出成形装置」があり、このものでは、複数のキャビティを有する装置構成と、1回の成形動作によって同時に複数の光ディスク基板を成形するものであることに関しては従前のそれと同様であるが、複数のキャビティ(金型)を横方向配置するのではなく、型締め方向に重ねて配置した、所謂スタック成形金型構成を有していること、また基板中心部に中央穴を成形工程中に打ち抜くことが可能な構成を有していることに特徴がある。そのため、既存の小型射出成形機を利用して複数の光ディスク基板を同時に成形することが可能であるという利点を有している。
【0006】
【従来技術の問題点】上記特開平9−207171号公報の「中央部に開口が形成された成形品の射出成形法及びその射出成形装置」は、中央部に開口が形成された成形品を同時に複数成形することが可能なだけでなく、既存の小型射出成形機を利用することで設備コストを抑えられる点で極めて優れたものであるが、しかしこのものは実際に光ディスク基板、特にその基板特性そのものが良好で、かつ複数の基板間の特性ばらつきを小さく抑えることが要求される光ディスク基板、例えばDVDあるいはそれ以上の高密度記録用光ディスク基板の成形に適用するには、非常に大きな問題が残されている。この問題は、1回の成形動作で複数のキャビティ中に溶融樹脂を充填して複数の成形品を成形する場合、異なるキャビティで成形された成形品間の特性を均一にさせることが困難なことである。特にこの成形法では、複数のキャビティを横方向でなく型締め方向に重ねて配置させているため、各キャビティ中に充填される樹脂は、キャビティ間で異なる長さの流動経路を流動した後にそのキャビティに充填されるため、異なるキャビティ間で成形された成形品の特性を均一にさせることが極めて困難となる。
【0007】上記の困難についてさらに詳しく説明すると、上述した手法でN個のキャビティを使用して成形する場合、最も射出装置側に近い位置に配置された第1キャビティには射出装置先端のノズル部分から射出されて通常のスプルーランナー部分を流動した樹脂が充填される。そして射出装置側から2番目に配置された第2キャビティにはスプルーランナー部分に加えて第1中間可動型の厚みと同じ長さを持つ第1中間ゲートカッター内のランナー部分を流動した樹脂が充填される。そしてさらに第3キャビティにはスプルーランナーと第1及び第2可動金型の厚みを加えた長さのランナーを流動した樹脂が充填される。このように、射出装置側から数えて第n番目のキャビティには、スプルーランナー部分と(n−1)個分の中間可動金型厚みを加えた長さのランナー部分を流動した樹脂が充填されることになる。また、上記の充填操作は全て共通の射出装置で行っているために、第n番目のキャビティの最外周端まで樹脂が到達した(充填完了した)時点において、それ以降の第(n+α)番目のキャビティでは、第nキャビティよりさらに長い経路を流動する樹脂が充填されるため、充填操作が未完な状態であり、また手前の第(n−α)番目のキャビティでは、すでに充填操作が完了している一方で、射出装置がまだ充填操作を続けているためにキャビティ内に過度に充填圧力が加えられている状態、言い換えると樹脂が過度に充填されようとしている状態となる。その結果として、例えば第n番目のキャビティで成形される成形品の特性が最も良好となるように射出装置の充填条件を設定すると、そのキャビティより射出装置側のキャビティでは最適条件より樹脂が過充填された成形品、また型締め装置側のキャビティでは最適条件より充填不足の成形品が得られることになる。そしてこれらの成形品は、最適条件とは異なる設定で樹脂の充填が行われて成形されることになるため、第n番目のキャビティで成形された成形品よりもその特性が当然劣ってしまう。さらにこれらの成形品は、その成形品が成形されたキャビティ位置の最適充填キャビティからの遠近に応じて異なる充填条件で成形された成形品となるため、全て相互に異なる成形品特性を有する成形品となる。つまり上記の手法を用い、1回の成形動作で得られたN個の成形品は、N個全てが互に異なる特性を有することとなる。
【0008】上記方法で光ディスク基板を成形する場合、1回の成形動作で複数の光ディスク基板が得られることは、製造コスト低減に極めて有効である。しかし光ディスク基板については、同時にその基板特性について定められた特性仕様を満足させることが厳密に要求され、特にDVDあるいはそれ以上の高密度記録用光ディスク基板の場合では、上述した特性仕様の許容幅も極めて狭い範囲に定められている。そのため、複数のキャビティ間で成形される成形品特性が本質的にばらついてしまう上記成形方法は、成形品品質の制御の面から考慮すると、決して適切な成形方法ではない。
【0009】1回の成形動作で得られる複数の成形品間の特性ばらつきを抑制する手法として、通常の多数個取り金型では、溶融樹脂が流動する流路を金型中で分岐させて射出装置から各キャビティへ樹脂が全て同じ距離だけ流動して充填されるように各キャビティへの樹脂流路長さを設計する、また各キャビティ内へ樹脂が流入する状態を全てのキャビティで均一にするために樹脂流路の流路長だけでなくその流路断面積についても各キャビティ毎に配慮した手法が採られている。さらに形状等の理由によって樹脂が流入しにくいキャビティには、キャビティへ樹脂を流入させる流入口(ゲート)を複数設ける流路設計を行って全てのキャビティに対する樹脂の充填操作を同時に完了させる手法もある。
【0010】しかし光ディスク基板成形の場合、基板中にウェルドライン(樹脂が流動した流動状態の痕跡。互いに異なる方向の樹脂流れが衝突する部分で特に顕著に出現するもの)が形成されると、それが直接的に光ディスクの信号不良の原因となるため、キャビティへ樹脂を流入させる流入口(ゲート)については、必ずキャビティの中心部に設けて、樹脂をキャビティ中心から基板外周端まで均一に(同心円状に広がるように)流動させる樹脂流路の設計を行っている。そのため、上述したように複数のキャビティを横方向でなく型締め方向に重ねて配置する、所謂スタック成形金型では、溶融流路を金型中で分岐させて射出装置から各キャビティへ樹脂が全て同じ距離だけ流動して充填されるように各キャビティへの樹脂流路長さを設計するか、あるいは各キャビティ内へ樹脂が流入する状態を全てのキャビティで均一にするために樹脂流路の流路長だけでなくその流路断面積やゲートの位置及び数について各キャビティ毎に配慮する手法を採用することで、1回の成形動作で得られる複数の成形品間の特性ばらつきを抑えることは、金型構造的に不可能といえる。
【0011】
【解決しようとする課題】本発明は上記の問題を鑑みてなされたもので、1回の成形動作で得られる複数の成形品間の特性ばらつきを抑制することが、金型構造的に極めて困難な、複数のキャビティを横方向でなく型締め方向に重ねて配置する、所謂スタック成形金型を用いた光ディスク基板成形装置において、複数のキャビティに対して同時に樹脂の充填操作を行うのでなく、ひとつのキャビティずつ順次充填操作を行うことが可能な成形装置の構成と成形方法を与えることによって、1回の成形動作で同時に複数成形される光ディスク基板の特性を個別に制御しながら成形することを可能とさせ、特性が良好でかつ複数の成形基板間の特性ばらつきが小さい光ディスク基板を成形できるように、光ディスク基板成形方法及びその成形装置を工夫することをその課題とするものである。
【0012】
【課題解決のために講じた手段】
【解決手段1】(請求項1に対応)解決手段1は、固定金型と複数個の可動金型を重ねる型締めを行い、複数個のキャビティを形成させて複数個の光ディスク基板を同時に成形する光ディスク基板射出成形方法において、キャビティ中へ溶融樹脂を射出充填する操作を、複数のキャビティに同時に行うのでなく、初めに射出装置から最も遠い位置にあるキャビティのみに対して行い、この操作が完了した後にひとつ手前のキャビティへ射出充填し、そしてさらに1つ手前のキャビティと、最も射出装置から遠いキャビティからひとつずつ順次射出充填操作を行うことによって、1回の成形動作で複数の光ディスク基板を同時に成形する場合においても、各々の成形基板特性を個別に制御可能な射出充填操作を行うことである。
【0013】
【解決手段2】(請求項2に対応)解決手段2は、解決手段1の光ディスク基板射出成形法により成形を行う光ディスク基板成形装置において、あるキャビティへ溶融樹脂の射出充填を行っている間、他のキャビティへ樹脂が流入することを阻止する、溶融樹脂の射出充填制御手段を備えることによって、あるキャビティに対する射出充填操作が、他のキャビティへの射出充填操作に影響を及ぼすことを避け、各々のキャビティにて射出充填制御及び成形される光ディスク基板特性の制御を適切に行うことである。
【0014】
【解決手段3】(請求項3に対応)解決手段3は、解決手段2の光ディスク基板成形装置において、あるキャビティ中への溶融樹脂の充填が完了し、そのキャビティのゲートを閉止させる操作と連動して、次に溶融樹脂が充填されるキャビティのゲートを開く操作を行う、溶融樹脂の射出充填制御手段を備えることによって、各キャビティ毎に行う射出充填操作の切り替え動作を、短時間に行い、成形サイクル全体を短く抑えることである。
【0015】
【解決手段4】(請求項4に対応)解決手段4は、解決手段2及び解決手段3の光ディスク基板成形装置において、その射出装置側及び型締め装置側の双方に光ディスク基板の鏡面を形成させるキャビティ鏡面あるいは光ディスク基板上に情報を転写させるスタンパを装着させるためのスタンパ鏡面を有する中間可動金型について、上記のひとつの中間可動金型が有するふたつの鏡面をそれぞれ個別に温調する温調回路を設けて各キャビティ個別に最適なキャビティ温調を行うことによって、各キャビティ個別に射出充填制御及び成形される光ディスク基板特性制御を最適に行わせることである。
【0016】
【解決手段5】(請求項5に対応)解決手段5は、請求項2乃至請求項4の射出成形装置の中間可動金型において、中間可動金型の中心部にあり、その射出装置側のキャビティのゲートを閉止して光ディスク基板の中心穴を形成させると共に、型締め機構側にあるキャビティへ溶融樹脂を導入させるためのランナーが形成されている中間ゲートカッターについて、この中間ゲートカッター各々を個別に温調させるための温調回路を設けて各中間ゲートカッター個別に最適なランナー部分の温調を行うことによって、各キャビティ個別に射出充填制御及び成形される光ディスク基板特性制御を最適に行わせるとともに、ランナー部分の冷却操作を適切に行うことである。
【0017】
【解決手段6】(請求項6に対応)解決手段6は、解決手段2乃至解決手段5の光ディスク基板成形装置を用いた、請求項1の光ディスク基板射出成形方法において、冷却工程が完了した後に金型を開いて成形品を取り出す際に、初めに最も射出装置に近い位置にあるキャビティを開いて光ディスク基板とランナー部分を取り出し、続いて順次型締め機構側のキャビティを開いて光ディスク基板を取り出す手順で行うことによって、金型全体として必要な型開量を小さく抑制し、本発明の成形方法による光ディスク基板成形を既存の小型成形装置でも可能とすることである。
【0018】
【実施の形態】本発明による光ディスク基板の成形方法並びに成形装置について、その手順に従って説明する。なお以下に説明する実施例はひとつの中間可動金型と2つのキャビティを有する成形装置について述べているが、それ以上の中間可動型及びキャビティを有する構成についても、本実施例に述べる内容をほぼそのまま繰り返し展開するだけで説明可能である。本発明による成形装置0の金型1を開いた状態を図1に示している。金型は固定金型10、中間可動金型20、可動金型30から構成され、また成形装置0は図示されている金型1に加えて固定金型の左手にある射出装置(図示せず)と可動金型30の右手にある型締め装置(図示せず)から構成されている。本発明による光ディスク基板の成形方法は、まず成形装置0の型締め装置(図示せず)を使用して金型1を閉止する(図2)。次に図3の金型中心部周辺の拡大図に示すように、射出装置(図示せず)が前進し、ノズル2が固定金型10のスプルーブッシュ11を所定のノズルタッチ圧力P1で押しつける。スプルーブッシュ11は圧力P1より小さい圧力P2以上のノズルタッチ圧力を受けると所定ストロークだけ前進し、ノズルタッチ圧力が所定の圧力P2以下になると戻しバネ12によって初期位置まで後退する、前後に摺動可能な構成を有している。そしてノズル2に押されたスプルーブッシュ11は、図3に示すように中間可動金型20の中間ゲートカッター21を押接するまで前進してスプルーブッシュ11内のスプルーランナー13と中間ゲートカッター内の中間ランナー22を接続させ、同時に固定金型10と中間可動金型20の間に形成される第1キャビティ14の第1ゲート15を閉止する。そしてノズル2より溶融樹脂(図示せず)がスプルーランナー13を通して金型1内へ射出充填されるが、この時前進したスプルーブッシュ11によって第1ゲート15が閉止されているので溶融樹脂は第1キャビティ14内へは流入せず、中間ランナー22を流動して中間可動金型20と可動金型30の間に形成される第2キャビティ31内に流入する。
【0019】そして第2キャビティ31内への溶融樹脂の流入・充填が進んで第2キャビティ31内への射出充填が完了すると、図4に示すように、ゲートカッター32が所定ストロークだけ前進して第2キャビティ31の第2ゲート33を閉止する。またこのときエジェクターピン34もゲートカッター32の前進動作と連動して同じ前進量だけ前進し、中間ランナー22の第2キャビティ側の開口部23を閉止する。さらに上述したゲートカッター32の前進動作と連動して、ノズル2のノズルタッチ圧力を所定の圧力P3まで減圧する。このノズルタッチ力P3は、溶融樹脂を金型1中へ充填させる射出圧力に抗してノズル2とスプルーブッシュ11を押接し続けられるだけ高く、かつスプルーブッシュの戻りバネ12のバネ力によってスプルーブッシュ11が初期位置に後退するだけ低い圧力に設定されている。その結果、ノズル2とスプルーブッシュ11は後退して第1ゲート15が開き、溶融樹脂が第1キャビティ14内への流入を開始する。このとき第2キャビティへ31の第2ゲート33は既に閉止されているので、第1キャビティ14への充填操作によって第2キャビティ31への充填操作及び第2キャビティで成形される光ディスク基板の特性は影響を受けることはない。
【0020】そして第1キャビティ14内への溶融樹脂の流入・充填が進んで第1キャビティ14内への射出充填が完了すると、図5に示すように、ゲートカッター32がさらに所定ストロークだけ前進し、それに押されて中間ゲートカッター21が前進して、第1ゲート15を閉止し、射出装置(図示せず)が溶融樹脂を金型1中に射出充填する操作が完了する。またこのときもエジェクターピン34はゲートカッター32の前進動作と連動して同じ前進量だけ前進し、中間ランナー22の第2キャビティ側の開口部23周囲の状態をそのまま保持する。上記の射出充填操作は、上記のように第1、第2キャビティそれぞれに対して個別の射出充填操作を行っているので、各キャビティそれぞれに最適な条件を設定して射出充填を行うことが可能であり、また各充填操作が他方のキャビティへの充填操作、さらには成形される光ディスク基板の特性に影響を与えることがない。そのため、両キャビティで成形される光ディスク基板の特性を良好に、かつキャビティ間の特性差を小さくすることが可能になる。また、射出充填操作に要する時間について、全キャビティ同時に射出充填する場合と比較すると、両手法ともに最終的な溶融樹脂の充填量及び使用する射出装置における溶融樹脂の射出率に違いはない。また各キャビティ間への射出充填切り換え操作についても、上記のように一つのキャビティのゲート閉止及び次のキャビティへのゲート開・射出充填開始操作を連動させて行っているためにタイムロスがなく、本発明のように複数のキャビティに対して個別に射出充填操作を行う場合でも、全キャビティに同時に射出充填する場合と比較して射出充填時間が延びることはない。
【0021】そして以上のような手順で第1、第2キャビティ双方への溶融樹脂の射出充填操作が完了し、キャビティ内に充填された溶融樹脂を所定時間冷却させる冷却工程に進む。そして主にこの射出充填操作完了前後における成形装置0の型締め装置(図示せず)による型締め操作の効果によって、スタンパにピット列あるいは案内溝として刻まれている必要な情報が成形基板上に転写される。なお上記実施例においてスタンパ16,24は、固定金型10と中間可動金型20の型締め装置側の鏡面に、内周部をそれぞれスタンパ内周ホルダー17,25、また外周側を真空吸引法で保持、装着されている。
【0022】また本発明においては、固定金型10の固定鏡面(スタンパ鏡面)ブロック18、中間可動金型20の鏡面ブロック26、スタンパ鏡面ブロック27、さらに可動金型30の鏡面ブロック35をそれぞれ個別に温調する温調回路(図示せず)を備えており、型閉〜射出充填〜冷却工程に到る全工程中にかけて、金型1中の全ての光ディスク基板が成形されるキャビティの鏡面側及び情報面側(スタンパ側)をそれぞれ最適な温度設定で温調することが可能となり、成形される光ディスク基板の特性を良好にさせると同時に、成形基板間の特性ばらつきを小さく抑えることができる効果がある。
【0023】さらに本発明においては、従来一般的に行われているスプルーブッシュ11とゲートカッター32に温調回路(図示せず)を設けてこれらを温調するだけでなく、中間ゲートカッター21にも専用の温調回路(図示せず)を設けて中間ランナー22部分を最適な温度設定で温調し、第2キャビティ31への溶融樹脂の射出充填操作及び冷却工程中における中間ランナー22部分及びその前後の冷却操作を最適化することによって、成形される光ディスク基板の特性を向上させるだけでなく、冷却工程完了後の型開並びに成形された光ディスク基板・ランナーの取り出し操作を安定的に確実に行うことが可能となる。
【0024】そして、キャビティ内へ充填された溶融樹脂が金型内で所定の冷却時間冷却された後、成形装置0の型締め装置(図示せず)によって金型が開く。この時、本発明では、図6に示すように、まず金型1の連結スリーブ3に設けられた中間可動金型開閉機構4によって中間可動金型20と可動金型30の型閉状態を保ち、固定金型10と中間可動金型20の間の第1キャビティのみ型開する。なお上記の型開操作の際には、固定金型10のスプルーブッシュ11とスタンパ内周ホルダー17間のエアースリット(図示せず)から離型用エアーブローを吹き出させて、成形された光ディスク基板5を固定金型10から離型させて中間可動金型20側に支持させる。また同時に、スプルーランナー13と中間ランナー22部分に充填された樹脂が一体化となって固化したランナー6も中間可動金型20側に支持される。
【0025】続いて図7に示すように、中間ゲートカッター21と第1エジェクタースリーブ28間のエアースリット(図示せず)から吹き出す離型用エアー及び第1エジェクタースリーブ28の突き出し操作によって光ディスク基板5は、中間可動金型20からも離型される。また同時に突き出し操作が行われるエジェクターピン34によってランナー6も中間可動金型20から離型される。そして中間可動金型20からも離型された光ディスク基板5とランナー6は、成形品取り出し装置(図示せず)によって成形装置外へ取り出されて以降の工程へ投入される。そして第1キャビティ14からの成形品取りだしが完了すると、図8に示すように、第1エジェクタースリーブ28とエジェクターピン34が初期位置まで後退するとともに、中間可動金型開閉機構4によって中間可動金型20は、射出装置(図示せず)側へ移動して第2キャビティー31を開き、さらに固定金型10まで移動して第1キャビティ14を形成する。なおこの動作時に中間可動金型20のスタンパ内周ホルダー25と中間ゲートカッター21間のエアースリット(図示せず)から離型用エアーの吹き出しが行われ、第2キャビティー31で成形された光ディスク基板7は、中間可動金型20から離型されて可動金型30側に支持される。また、光ディスク基板7の中心穴を形成させるために打ち抜かれる中間ゲートカッター21とゲートカッター32の間の部分に充填された樹脂が固化した打ち抜き片8は、ゲートカッター32先端部スラグ溜まり36に設けられた逆テーパ部によってゲートカッター32の先端部に支持される。
【0026】続いて図9に示すように、ゲートカッター22と第2エジェクタースリーブ37間のエアースリット(図示せず)から吹き出す離型用エアー及び第2エジェクタースリーブ37の突き出し操作によって光ディスク基板7は、可動金型30からも離型される。また第2エジェクタースリーブ37は光ディスク基板7とともに、スラグ溜まり36に支持されている打ち抜き片8も同時に突き出す機構を有しており、打ち抜き片8も可動金型30から離型される。そして可動金型30から離型された光ディスク基板7は、成形品取り出し装置(図示せず)によって成形装置外へ取り出されて以降の工程へ投入される。またこの時打ち抜き片8はそのまま下に落下、排出される。
【0027】本発明による手順の型開乃至成形品取り出し操作は、型開閉方向に複数配置されたキャビティによって成形された成形品を、全てのキャビティを同時に開いた上で同時に取り出すのでなく、1キャビティずつ順次開いた上で一つずつ成形品を取り出す操作を行っているので、金型全体として必要な型開き量を小さく抑えることが可能となり、既存の小型成形装置を活用することが可能である。そして以上のような手順で型開〜成形品取り出し操作を行った後、成形装置0の型締め装置(図示せず)によって可動金型30は射出装置(図示せず)側へ移動、金型1全体を閉止し(図2)、次サイクルの成形動作を行う。
【0028】
【発明の作用効果】この発明の作用効果を、各請求項毎に整理すれば次のとおりである。
1.請求項1に係る発明について固定金型と複数個の可動金型を重ねる型締めを行い、複数個のキャビティを形成させて複数個の光ディスク基板を同時に成形する光ディスク基板射出成形方法において、キャビティ中へ溶融樹脂を射出充填する操作を、複数のキャビティ同時に行うのでなく、初めに射出装置から最も遠い位置にあるキャビティのみに対して行い、この操作が完了した後に一つ手前のキャビティへ射出充填し、そしてさらに一つ手前のキャビティと、最も射出装置から遠いキャビティから一つずつ順次射出充填操作を行うことによって、1回の成形動作で複数の光ディスク基板を同時に成形する場合においても、各々の成形基板特性を個別に制御可能な射出充填操作を行っているので、特性が良好でかつ基板間の特性ばらつきが小さい光ディスク基板を製作することができる。
【0029】2.請求項2に係る発明について請求項1の光ディスク基板射出成形法による光ディスク基板成形装置において、一つのキャビティへ溶融樹脂の射出充填を行っている間、他のキャビティへ樹脂が流入することを阻止する溶融樹脂の射出充填制御手段を備えているので、一つのキャビティへの射出充填操作が他のキャビティへの射出充填操作に影響を及ぼすことが避けられ、各々のキャビティについて、射出充填操作の制御及び成形される光ディスク基板特性の制御を適切に行うことができる。
【0030】3.請求項3に係る発明について請求項2の光ディスク基板成形装置において、一つのキャビティへの溶融樹脂の充填が完了し、そのキャビティのゲートを閉止させる操作と連動して、次に溶融樹脂が充填されるキャビティのゲートを開く操作を行う、溶融樹脂の射出充填制御手段を備えているので、各キャビティ毎に行う射出充填操作の切り替え動作を、短時間に行い、成形サイクル全体を短く抑えることができる。
【0031】4.請求項4に係る発明について請求項2又は請求項3の光ディスク基板成形装置において、その射出装置側及び型締め装置側の双方に光ディスク基板の鏡面を形成させるキャビティ鏡面あるいは光ディスク基板上に情報を転写させるスタンパを装着するスタンパ鏡面を有する中間可動金型について、一つの中間可動金型が有する二つの鏡面をそれぞれ個別に温調する温調回路を備えていて、各キャビティ個別に最適なキャビティ温調を行っているので、各キャビティ個別に射出充填制御及び成形される光ディスク基板特性制御を最適に行うことが可能である。
【0032】5.請求項5に係る発明について請求項1乃至請求項4の射出成形装置の中間可動金型において、中間可動金型の中心部にあり、その射出装置側のキャビティのゲートを閉止して光ディスク基板の中心穴を形成させると共に、型締め機構側にあるキャビティへ溶融樹脂を導入させるためのランナーが形成されている中間ゲートカッターについて、この中間ゲートカッター各々を個別に温調するための温調回路を備えていて、各中間ゲートカッター個別に最適なランナー部分の温調を行っているので、各キャビティ個別に行う射出充填制御及び成形される光ディスク基板特性制御を最適に行うと同時に、ランナー部分の冷却操作を適切に行うことができる。
【0033】6.請求項6に係る発明について請求項2乃至請求項5の光ディスク基板成形装置を用いた請求項1の光ディスク基板射出成形方法において、冷却工程が完了した後に金型を開いて成形品を取り出す際に、初めに最も射出装置に近い位置にあるキャビティを開いて光ディスク基板とランナー部分を取り出し、続いて順次型締め機構側のキャビティを開いて光ディスク基板を取り出す手順で行っているので、金型全体として必要な型開量を小さく抑え、本発明の成形方法による光ディスク基板成形を既存の小型成形装置で行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
【出願日】 平成13年2月22日(2001.2.22)
【代理人】 【識別番号】100110386
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 敏雄
【公開番号】 特開2002−240104(P2002−240104A)
【公開日】 平成14年8月28日(2002.8.28)
【出願番号】 特願2001−46969(P2001−46969)