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【発明の名称】 脆性材料の割断方法及び割断によって得られるブロック
【発明者】 【氏名】栗山 和也
【氏名】安江 洋一
【課題】スムーズかつ安価に脆性材料を割断することができる脆性材料の割断方法を提供する。

【解決手段】脆性材料1の外表面2に等方静水圧を加え、上記脆性材料1を上記外表面2に垂直な所定の割断面3の両側にそれぞれ当該割断面3から離反する方向に引張応力を発生させ、上記脆性材料1を上記割断面3を境にして反対方向に変形させて割断する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 脆性材料(1)の外表面(2)に等方静水圧を加え、上記外表面(2)に垂直な所定の割断面(3)の両側にそれぞれ当該割断面(3)から離反する方向に引張応力を発生させ、上記脆性材料(1)を上記割断面(3)を境にして反対方向に変形させて割断することを特徴とする脆性材料の割断方法。
【請求項2】 応力拡大係数K1c=0.5〜9を与えて上記脆性材料(1)を割断することを特徴とする請求項1の脆性材料の割断方法。
【請求項3】 上記脆性材料(1)のL/dは1000〜10であることを特徴とする請求項1又は請求項2の脆性材料の割断方法。
【請求項4】 上記脆性材料(1)の外表面(2)に接触するように配置された弾性体(6)を用いて、等方静水圧を加えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの脆性材料の割断方法。
【請求項5】 上記請求項1〜請求項4のいずれかの割断方法を用いて脆性材料を割断して得られるブロックであって、円柱状の脆性材料(1)をその軸心方向に垂直な第1の割断面(3a)に沿って円板状部材(20)に割断し、この円板状部材(20)をその軸心を通り上記第1の割断面(3a)に垂直な第2の割断面(3b)に沿って割断して得られ、上記第1の割断面(3a)と平行な断面の形状が1本の円弧と2本の直線とから成る略扇形であることを特徴とする割断によって得られるブロック。
【請求項6】 上記脆性材料(1)は、多結晶シリコンであることを特徴とする請求項5の割断によって得られるブロック。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、多結晶シリコンやガラスなどの脆性材料の割断方法及び割断によって得られるブロックに関するものである。
【0002】
【従来の技術】多結晶シリコンなどの脆性材料から成る比較的長尺の円柱状部材を、複数個の短尺の円柱状部材に割断する方法が特公昭61−13958号公報に開示されている。この割断方法では、図13(a)に示すように、円柱状部材31を剛体筒32に嵌合し、剛体筒32の外周表面を加圧して円柱状部材31と剛体筒32の両者に軸線方向の変形を加え(図13(b)を参照)、ヤング率の相違に基づく両者の変形差によって円柱状部材31を割断している。割断は円柱状部材31の外周部に形成したノッチ33の底部からノッチ33の深さ方向34に向かって進行し、円柱状部材31は、最終的に軸心方向に略垂直な割断面に沿って割断される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の割断方法では、剛体筒32を圧力伝達媒体として円柱状部材31の外周表面を加圧するので、剛体筒32と円柱状部材31との接触状態をほぼ均一にするために、円柱状部材31の外径精度を0.1〜0.2mm以下とする必要がある。そのため、円柱状部材31の外周表面に高精度の表面加工を施す必要があり、加工コストが高くなるという問題がある。また、外径精度が悪いと剛体筒32と円柱状部材31との接触状態にばらつきが生じるので、円柱状部材31に加えられる圧力にもばらつきが生じる。その結果、発生する引張応力もばらつくため、割断面が荒くなるという問題もある。
【0004】また、剛体筒32をその外周表面から静水圧のみで加圧するため、加圧力が高くなる。そのため、高価な加圧設備が必要になるという問題がある。具体的には上記割断方法では、1000kg/cm2 程度の圧力が必要であるが、これはシール等の問題から冷間等方圧加圧装置(Cold Isostatic Pressing装置:CIP装置)などの特殊で高価な設備を使用する以外、不可能な圧力である。
【0005】この発明は、上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、スムーズかつ安価に脆性材料を割断することができる脆性材料の割断方法を提供することにあり、また他の目的は、その割断方法によって脆性材料を割断して得られる割断面が滑らかで比較的小型のブロックを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び効果】そこで請求項1の脆性材料の割断方法は、脆性材料1の外表面2に等方静水圧を加え、上記外表面2に垂直な所定の割断面3の両側にそれぞれ当該割断面3から離反する方向に引張応力を発生させ、上記脆性材料1を上記割断面3を境にして反対方向に変形させて割断することを特徴としている。
【0007】上記請求項1の脆性材料の割断方法では、脆性材料1の外表面2に静水圧が加えられるので、発生する引張応力がほぼ均一になり、スムーズに脆性材料1を割断できると共に、割断面3が滑らかになる。また、カッタのような切断工具を用いずに脆性材料1を割断するので、切粉が生じることはなく、短時間で割断することができる。
【0008】また請求項2の脆性材料の割断方法は、応力拡大係数K1c=0.5〜9を与えて上記脆性材料1を割断することを特徴としている。
【0009】さらに請求項3の脆性材料の割断方法は、上記脆性材料1のL/dは1000〜10であることを特徴としている。
【0010】上記請求項2又は請求項3の脆性材料の割断方法では、小さな圧力で効率よく脆性材料1を割断することができる。したがって、高価な加圧設備が不要になり、コストの低減を図ることが可能となる。
【0011】上記請求項4の脆性材料の割断方法は、上記脆性材料1の外表面2に接触するように配置された弾性体6を用いて、等方静水圧を加えることを特徴としている。
【0012】上記請求項4の脆性材料の割断方法では、ゴムなどの弾性体6を用いたことによって脆性材料1の外表面2の表面精度が悪くても弾性体が変形して外表面2に接触するので、高精度の表面処理が不要となり、加工コストが削減され、安価に脆性材料1を割断することができる。また、弾性体6を用いたことによって脆性材料1の外表面2との接触状態が剛体筒の場合に比べて向上するので、圧力が確実に脆性材料1に伝達され、加圧力を低減することができる。これによって、高価な加圧設備が不要となり、コストの低減を図ることができる。
【0013】請求項5の割断によって得られるブロックは、上記請求項1〜請求項4のいずれかの割断方法を用いて脆性材料を割断して得られるブロックであって、円柱状の脆性材料1をその軸心方向に垂直な第1の割断面3aに沿って円板状部材20に割断し、この円板状部材20をその軸心を通り上記第1の割断面3aに垂直な第2の割断面3bに沿って割断して得られ、上記第1の割断面3aと平行な断面の形状が1本の円弧と2本の直線とから成る略扇形であることを特徴としている。
【0014】上記請求項5の割断によって得られるブロックは、割断面3a、3bが滑らかで比較的小型のブロックとなるので、溶解炉への素材充填効率が良くなる。
【0015】請求項6の割断によって得られるブロックは、上記脆性材料1は、多結晶シリコンであることを特徴としている。
【0016】上記請求項6の割断によって得られるブロックは、シリコンインゴットの製造に好適である。
【0017】
【発明の実施の形態】次に、この発明の脆性材料の割断方法及び割断によって得られるブロックの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の脆性材料の割断方法の原理を説明するための断面図である。
【0018】脆性材料1をその外表面2に対して略垂直な所定の割断面3に沿って割断する場合、外表面2に等方静水圧を加える。この等方静水圧によって、脆性材料1は等方静水圧の方向に圧縮される一方、割断面3に対して垂直方向に伸長される。そして、割断面3の両側にそれぞれ割断面3から離反する方向に引張応力Fが発生し、脆性材料1は割断面3を境にして反対方向に変形して割断される。尚、割断に際しては脆性材料1の外表面2の近傍に断面V字状のノッチ4を形成しており、割断面3はノッチ4の底部を通る位置に設定される。
【0019】ここで、脆性材料1の割断のメカニズムについて説明する。材料の脆性の度合を示す指標として、応力拡大係数K1がある。応力拡大係数K1は、亀裂を含む材料に応力が加わっている場合に、亀裂の底付近の局部応力状態を表わす量である。特に、亀裂が成長を開始するとき、すなわち材料の破壊が始まるときの応力拡大係数は、K1cで表わされる。そして、特定の温度及び荷重速度での脆性材料1の応力拡大係数K1は、作用圧力σ、亀裂の深さ(ノッチ4の深さ)dを用いて次式で表される。
【0020】
K1=C・σ・d1/2 (Cは常数)・・・(1)
【0021】さらに、脆性材料1を無限平板と考えると、応力拡大係数K1は次式のようになる。
【0022】
K1=1.12・σ・(π・d)1/2 ・・・(2)
【0023】また、文献よりガラスの応力拡大係数K1cは0.8MN/m3/2 、シリコンの応力拡大係数K1cは1.1MN/m3/2 である。したがって、超硬刃で深さd=0.1mmのノッチ4を形成した場合に、脆性材料1が応力拡大係数K1cで割れるための作用圧力σは、ガラスについては40.3MPa(408kgf/cm2 )であり、シリコンについては55.4MPa(565kgf/cm2)である。
【0024】また、他の脆性材料1の応力拡大係数K1cは、アルミナ(Al2 3 )が3〜4、ジルコニア(ZrO2 )が約8.5、高密度窒化けい素(Si3 4 )が6〜7、高密度炭化けい素(SiC)が3〜4、ヘキサアロイが約4.6である。したがって、脆性材料1の外表面2に応力拡大係数K1c=0.5〜9を与えると、小さな加圧力で割断できることが本願発明者の実験によって確認された。
【0025】さらに、亀裂の深さをd、亀裂の深さ方向に沿った脆性材料1の長さ(割断方向長さ)をLとおくと、L/d=1000〜10の場合に、小さい加圧力で割断できることが本願発明者の実験によって確認された。尚、脆性材料1の横断面形状が円形の場合、亀裂は全周にわたって形成してもよいし、一部だけに形成してもよい。また、亀裂の横断面形状は、図1に示すようなV字状だけでなく、略U字状でもよい。
【0026】このように小さな加圧力で効率よく脆性材料1を割断できるので、高価な加圧設備が不要となり、コストの低減を図ることが可能となる。
【0027】図2は、割断装置5の概略的構成を示す構成図であり、(a)は断面図であり、(b)は正面図である。割断装置5は、圧力伝達媒体6と、拘束治具7と、加圧部材8とを備える。圧力伝達媒体6は、弾性体から成り、上側部材9と下側部材10とを重ね合わせて構成され、直方体の外形を有する。上側部材9と下側部材10とは、相対向する位置にそれぞれ溝部9aと溝部10aとを有する。溝部9aと溝部10aとは、共に横断面が半円形であり、長手方向に沿って一端面から他端面まで直線的に形成されている。したがって、上側部材9と下側部材10とを重ね合わせると溝部9aと溝部10aとが連通して円柱状の空間11が形成され、この空間11に円柱状の脆性材料1が嵌入されて保持される。尚、脆性材料1は、その両端が圧力伝達媒体6の端面から突出した状態で保持される。
【0028】拘束治具7は、圧力伝達媒体6の左右側面と下面とに接触する拘束面を有し、この拘束面によって側方と下方への圧力伝達媒体6の変形を拘束するものである。また、加圧部材8は、圧力伝達媒体6の上面に接触するように配置され、圧力伝達媒体6を加圧すると共に、上方への圧力伝達媒体6の変形を拘束するものである。尚、圧力伝達媒体6を構成する弾性体としては、例えば硬さTR90(ヤング率3.8)のウレタンゴム(タイガースポリマー株式会社製の「タイプレン」)を用いる。したがって、圧力伝達媒体6は、拘束治具7と加圧部材8とによって左右方向と上下方向への変形が拘束され、円柱状の脆性材料1の軸方向にのみ変形可能である。このように圧力伝達媒体6の左右側面と上下面とを拘束したことによって、脆性材料1の外周面2に等方静水圧を加えることができる。
【0029】このように、脆性材料1の外周面2に充分な等方静水圧を加えることができるので、発生する引張応力がほぼ均一になり、スムーズに脆性材料を割断できると共に、割断面は滑らかで非常に美しい表面となっている。また、カッタのような切断工具を用いずに脆性材料1を割断するので、切粉が生じることはなく、短時間で割断することができる。
【0030】また、圧力伝達媒体6としてゴムなどの弾性体を用いたことによって円柱状の脆性材料1の外周面2の表面精度が悪くても弾性体が変形して外周面2に接触するので高精度の表面処理が不要となり、加工コストが削減され、安価に脆性材料1を割断することができる。さらに、弾性体を用いたことによって脆性材料1の外周面2との接触状態が従来の技術におけるアクリルなどの剛体筒32を用いた場合に比べて向上するので、圧力が確実に脆性材料1に伝達され、加圧力を低減することができる。これによって、高価な加圧設備が不要となり、コストの低減を図ることができる。
【0031】図3は、破断変位と破断荷重とゴム硬さとの関係を示すグラフである。このグラフは、縦60mm、横70mm、高さ60mmの圧力伝達媒体6を使用して、直径20mmの円柱状の脆性材料(ガラス)1を割断した場合の測定結果を示している。尚、ノッチ4の深さdは2mmとした。グラフにおいて丸印を付したものが破断したことを示している。グラフから破断荷重は4000kg程度であることが分かり、このときの面圧は106kg/cm2 である。これは、アクリルを圧力伝達媒体6として用いて割断を行った場合の必要圧力の約半分の圧力で割断できることを示している。なお、同図から弾性体、すなわちゴムの硬さは、HRBの80〜100程度が好ましいことが明らかである。
【0032】また、直径100mm、長さ300mmのASIMI品の場合の必要圧力は、必要治具の相似比が径に比例し、面圧が一定であるとすると、受圧面積×面圧=(10×3.14×30)×106=100tonとなり、弾性体(ゴム)を用いても静水圧下での割断を実現することができることが判明した。
【0033】次に、割断装置5の割断メカニズムについて検討する。ガラスから成る円柱状の脆性材料1は、加圧部材8からの荷重Pによって側圧を受けると共に、圧力伝達媒体6であるゴムの長手方向(脆性材料1の軸方向)への変形によって引張応力Fを受ける。この引張応力Fと側圧Pとの関係は、側圧Pによる静止摩擦係数をμとすると、F=μPとなる。
【0034】摺接する2つの部材i、jが共に伸びようとするとき、ヤング率の差ε(i−j)はεi−εj=(νi×P/Ei)−(νj×P/Ej)で表わされる。そして、摩擦係数が1となるときには、部材iの表面にはみかけ上ε(i−j)×Eiの応力が作用する。ここで、ε1をガラスの歪み、ε2をアクリルの歪み、ε3をゴムの歪み、ν1をガラスのポアソン比(=0.35)、ν2をアクリルのポアソン比(=0.4)、ν3をゴムのポアソン比(=0.4)、E1をガラスのヤング率(=6000)、E2をアクリルのヤング率(=300)、E3をゴムのヤング率(=30)とする。
【0035】ガラス−アクリル間のヤング率の差ε(1−2)は、ε1−ε2=0.00127×Pであり、ガラス表面に発生する応力σ(1−2)は、ε(1−2)×E1=7.62Pである。ガラス破断時の応力が4kgであるとすると、ガラス表面の応力は30.5kgとなる。
【0036】また、ガラス−ゴム間のヤング率の差ε(1−3)は、ε1−ε3=0.013×Pであり、ガラス表面に発生する応力σ(1−3)は、ε(1−3)×E1=78Pである。ガラス破断時の応力が4kgであるとすると、ガラス表面の応力は312kgとなる。
【0037】一方、破壊力学の方程式はK1c=1.12・σ・(π・d)1/2 であり、破壊応力σは4.03kgである。
【0038】上記応力σ(1−2)、σ(1−3)の値は、ガラスとアクリルの伸びの差又はガラスとゴムの伸びの差がすべてガラスに付与されたと仮定して求めた理論値である。したがって、実際には、低荷重下でのアクリルやゴムの伸びはガラスに伝達されないため、理論値と実験値との間では大きな数値の差が発生する。そこで、この差について検討する。
【0039】図4は、ゴムの変形モードを説明するための模式図である。図4(a)は、ゴムが変形していない初期状態を示している。まず、静止摩擦力を越えるまでの歪みはガラスに伝達されないと仮定すると、Fcritical=μ×Pcritical(μ=0.4)より、この間の側圧Pは割断に寄与しない(図4(b)参照)。また、図4(c)に示すように、ゴムの先端部の中央部が凸に変形すると、先端部の応力が低下し、割断に寄与しない。この2つの変形モードによって、ゴムの変形の全てがガラスの割断に寄与していないと考えられる。
【0040】一方、ゴムの有効歪みは、上記理論値に基づき、ε=σ/E=4.03/6000=6.7×10-4である。これに対応するゴムの応力は、6.7×10-4×30=0.02kgであり、総変位は0.02mmである。したがって、確実にゴムの変位をガラスに伝達することができれば、非常に小さい変位でガラスを破断することができる。
【0041】上述した割断メカニズムにおいては、ゴムとガラスの伸びの差による応力成分と、純粋な側圧成分との2つの要因が分離できていないと考えられる。そこで、割断荷重の低減と割断メカニズムの検討を狙って、割断条件を変更していくつかの割断試験を行った。図5は、割断条件と割断荷重との関係を示すグラフである。
【0042】図5において、「従来」とは、従来の技術の欄で説明したように圧力伝達媒体としてアクリルの円筒を用いた場合であり、この場合の割断荷重は約4000kgである。また、「ゴム拘束」とは、図2を参照して説明したように圧力伝達媒体としてゴムを用いた場合であり、この場合の割断荷重は「従来」の場合よりはやや大きいが、約4000kgである。
【0043】「真空グリス」とは、「ゴム拘束」の条件に加えて、ゴム(圧力伝達媒体6)とガラス(脆性材料1)との間にグリスを充填した場合である。グリスを充填したのは、グリスによってガラスとゴムとの間の摩擦を低減し、ゴムの伸びの差を減少させるためである。すなわち、ゴムの伸びを均一にしてゴムの変位を均等にガラスに伝達させることを意図したものである。この場合、割断荷重の低減効果はなく、逆に割断荷重は「ゴム拘束」の場合よりも増加している。これは、グリスが潤滑の役割をしたため、ゴムの変位がガラスに伝達されにくくなったためと考えられる。
【0044】「局所荷重」とは、「ゴム拘束」の条件に加えて、ガラス(脆性材料1)の割断位置近傍、すなわちノッチの近傍に加わる側圧を向上させた場合である。側圧の向上は、図2に示す割断装置5における加圧部材8に代えて、図6(a)に示すように押圧面に突起12aを有する加圧部材12を用いることによって実現される。突起12aは、図6(b)に示すように横断面が略半円形であり、脆性材料1の軸方向に略直交する方向に延びて形成されている。したがって、この突起12aが脆性材料1に形成したノッチの上方に位置するように加圧部材12を配置して圧力伝達媒体6を加圧することによって、ノッチ近傍に加わる側圧が向上する。この場合は、「ゴム拘束」の場合に比べて割断荷重を約40%低減することができた。
【0045】「曲げ成分付与」とは、「ゴム拘束」の条件に加えて、ガラス(脆性材料1)に曲げ成分を加えた場合である。曲げ成分の付与は、図7に示すように加圧部材8の押圧面と圧力伝達媒体6の上面との間に一対の鋼製のスペーサ13、13を介在させて加圧することによって実現される。スペーサ13、13は、脆性材料1の割断位置を中心として脆性材料1の軸方向に沿ってほぼ等間隔に配置される。したがって、割断位置よりも両端側の側圧が大きくなるため、脆性材料1には側圧のみならず曲げ成分が付与されることになる。この場合は、「ゴム拘束」の場合に比べて割断荷重を約1/4の1000kg程度にすることができた。
【0046】尚、図5には示されていないが、「X方向拘束」という条件での割断試験も行った。「X方向拘束」とは、「ゴム拘束」の条件に加えて、圧力伝達媒体6であるゴムのX方向(脆性材料1の軸方向)の変位も拘束した場合である。これは、図8に示すように圧力伝達媒体6の端面であって脆性材料1の軸方向に直交する2つの端面に、拘束治具14、14を配置することによって実現される。この場合は、ゴムの軸方向の変位量が低下したことによって側圧が上昇するものと考えられるが、実際は割断荷重の低減効果はなかった。
【0047】以上の試験結果に基づいて割断メカニズムについて検討する。側圧成分のみで割断が発生する荷重は、図5の「従来」の場合の約2倍で、約8000kgである。ノッチの底部に付与された応力がσcになったときに割断が発生すると考えると、σc=σp+σd+σbとなる。ここで、σp=側圧分=f(p)、σd=伸び分=R(P,形状,ポアソン比)、σb=曲げ成分=S(P,支点間距離)である。支点間距離とは、図7に示す鋼製スペーサ13、13の中心間の距離である。
【0048】「従来」の場合は、σpとσdが同程度であり、σc=σp+σdであるため、必要な割断荷重Pは側圧成分のみの場合の約1/2の4000kgとなる。また、曲げ成分が付与されると、その分だけ割断荷重が減少することが分かる。
【0049】上述した本発明の割断方法を使用すれば、ガラスなどの脆性材料1の比較的小さなブロックを得ることができる。例えば、図9(a)に示すように円柱状の脆性材料1をその軸心方向に垂直な第1の割断面3a、3aに沿って割断し、円板状部材20を得る。次に、図9(b)に示すように円板状部材20をその軸心を通り第1の割断面3aに垂直な第2の割断面3bに沿って割断し、ブロック21を得る。
【0050】円板状部材20の割断は、図10に示すように、円板状部材20とほぼ同径の円柱状の収納空間を備えた拘束治具22に円板状部材20をセットして行う。円板状部材20は、一対の圧力伝達媒体23、24で挟持された状態で拘束治具22にセットされる。圧力伝達媒体23、24は、ウレタンゴムなどの弾性体から成り、円板状部材20とほぼ同径の円板状に形成されている。円板状部材20の上面には、図9(b)に示すように、中心から半径方向に延びる複数本のノッチ4を放射状に予め形成しておく。そして、図示しない押圧手段を用いて上側の圧力伝達媒体23を介して円板状部材20を加圧する。これによって、円板状部材20の周面が拘束された状態で、上面に等方静水圧が加えられる。そして、円板状部材20は、上述した割断の原理に従って第2の割断面3bに沿って割断される。
【0051】このブロック21は、第1の割断面3aと平行な断面の形状が1本の円弧と2本の直線とから成る略扇形であり、比較的小さなブロックである。このように、割断面が滑らかで比較的小型のガラスのブロック21を得ることができるので、溶解炉への素材充填効率が良くなる。また、脆性材料1として多結晶シリコンを用いた場合、得られるブロック21はシリコンインゴットの製造に好適である。
【0052】尚、図11に示すように、円板状部材20の上面にノッチ4を格子状に形成しておけば、割断によって直方体状のブロックを得ることができる。また、円板状部材20の上面にノッチを形成する代わりに、図12に示すように、円板状の本体部25の押圧面25aに切込み刃26を形成した加圧部材27を、円板状部材20の上面に直接押し当てて加圧してもよい。
【出願人】 【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
【出願日】 平成13年1月18日(2001.1.18)
【代理人】 【識別番号】100084629
【弁理士】
【氏名又は名称】西森 正博
【公開番号】 特開2002−210729(P2002−210729A)
【公開日】 平成14年7月30日(2002.7.30)
【出願番号】 特願2001−10089(P2001−10089)