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【発明の名称】 チェーンソー
【発明者】 【氏名】吉村 一彦

【氏名】魚谷 欣弘

【氏名】藤井 雄三

【要約】 【課題】コンクリート構造物、石材、岩盤等の切断に用いられるチェーンソーであって、作業性に優れるものを提供すること。

【解決手段】駆動モータ4と、該駆動モータ4が固定される本体3と、該本体3に対して着脱可能に取り付けられるチェーンバー5と、該チェーンバー5に案内されて所定の循環経路上を走行する環状の切断用のチェーン2と、該チェーン2に駆動モータ4の回転を伝達する減速機6等の伝動手段と、チェーンに対する給水手段とを有するチェーンソーにおいて、駆動モータ4として整流子モータが用いられており、給水手段として給水量が0.8〜4リットル/分の給水手段が用いられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンクリート構造物、石材、岩盤等の切断に用いられ、駆動モータと、該駆動モータが固定される本体と、該本体に対して着脱可能に取り付けられるチェーンバーと、該チェーンバーに案内されて所定の循環経路上を走行する環状の切断用のチェーンと、該チェーンに駆動モータの回転を伝達する伝動手段と、チェーンに対する給水手段とを有するチェーンソーにおいて、前記駆動モータは電動モータであり、前記給水手段は給水量が0.8〜4リットル/分の給水手段であることを特徴とするチェーンソー。
【請求項2】 給水手段は、水量調節手段を有する請求項1に記載のチェーンソー。
【請求項3】 本体は、チェーンバーが取り付けられる台座を備えており、前記チェーンバーは、前記台座との接触面に形成された給水口と、チェーンバー内に形成され、前記給水口から流入した水を送る給水路と、該給水路によって送られた水をチェーンに向けて送り出す吐出口とを備えており、前記台座は、給水源からの水が供給される配水口と、該配水口から流入した水をチェーンバーの前記給水口に送り出す出水口とを備える請求項1または請求項2に記載のチェーンソー。
【請求項4】 台座は本体に対して着脱可能である請求項3に記載のチェーンソー。
【請求項5】 伝動手段は、電動モータの回転を減速する減速機と、該減速機から出力される回転をチェーンに伝達するスプロケットと、前記減速機からスプロケットへの回転の伝達を所定の条件で遮断するクラッチ機構とを有するものであり、該クラッチ機構は、減速機の出力軸に取り付けられた駆動側の摩擦板を備えるものであって、該摩擦板の回転を、該摩擦板に接する摩擦面を備えた被動側に、摩擦によって伝達するものであり、前記被動側の摩擦面は、前記スプロケットの軸穴の周辺にリング状に形成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のチェーンソー。
【請求項6】 スプロケットは減速機の出力軸に回転可能に支持されている請求項5に記載のチェーンソー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はコンクリート構造物、石材、岩盤等(以下、単にコンクリート等ともいう)の切断に用いられるチェーンソーに関する。
【0002】
【従来の技術】建設作業や解体作業の現場等においてコンクリート等の切断に使用されるチェーンソー200では、切断用の環状のチェーン201(以下、単にチェーンともいう)が切断部材として用いられている(図8参照)。切断用のチェーン201はチェーンソー200の本体に固定されたチェーンバー202の外周縁に沿って走行可能に取り付けられており、油圧モータなどの駆動手段でスプロケットを回転させてチェーン201を走行させると、コンクリート等を切断できる状態になる。
【0003】また、チェーンソー200は、図8に示されるように、切り粉の排出、粉塵発生の防止又は潤滑等のために必要な水を供給するホース203等の給水手段を備えている。ホース203はチェーンバー202に接続されており、チェーンバー202内には、ホース203から送り出された水を送る給水路202aが形成されている。また、チェーンバー202の外周縁には給水路によって送られた水をチェーン201に向けて送り出す吐出口202bが形成されている。したがって、チェーン201に水を供給しながらコンクリート等を切断できる。なお、コンクリートは、砂や石はもちろんのこと、鉄筋や木材などの建材と複合された状態で用いられることがある。コンクリート等の中に含めたコンクリート構造物とは、コンクリートだけで構成されるものの他、コンクリートと、上記の建材等とが複合された状態で用いられた構造物を含む概念である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、コンクリート等の切断用として実用化されているチェーンソーの駆動手段は、従来、油圧モータである。ところが、油圧モータを用いると、チェーンソーとは別体の圧力発生装置が必要である。したがって、チェーンソーの搬送や切断作業現場の移動の際に労力および時間を要し、作業性が良くないという問題がある。いわゆる高周波モータを駆動手段とするチェーンソーもあるが、この場合は高周波発生装置が必要であり、油圧モータを用いる場合と同様の問題がある。
【0005】また、例えば切断位置が壁際や狭い場所である場合、あるいは切断位置の周囲に移動困難なものがあり、切断作業に必要なスペースを確保できないような状況下では、チェーンバー202に接続した給水用のホース203が切断作業の邪魔になることがある。
【0006】本発明は、以上のような背景の下になされたものであり、コンクリート等の切断に用いるチェーンソーであって、作業性に優れるものを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような課題のうち、油圧モータに関する問題を解消するため、電動モータによって駆動されるチェーンソーを試作した。従来、電動モータによって駆動されるものはないが、その理由は、コンクリート等の切断に必要な出力を有する電動モータをチェーンソーに搭載するとチェーンソーが重くなり、作業員がチェーンソーで切断作業をすることができなくなるからである。試作したチェーンソーには、従来の油圧モータと同程度の重量の電動モータを搭載し、チェーンソーによる切断作業の作業性を損なわないようにした。
【0008】また、試作したチェーンソーの給水手段は、チェーンバーに形成された吐出口からチェーンに水を供給するものである。なお、ホースから吐出される水を単にチェーンおよびチェーンバーにかけることによって水を供給する構造もあるが、チェーンバーに形成された吐出口から水を供給する構造を用いると、切断されるコンクリート等とチェーンとの接触位置に、より近い位置から給水でき、切り粉の排出、防塵または潤滑等のために効率良く水を利用できるという利点がある。
【0009】この試作したチェーンソーを用いて、コンクリートを切断する試験を行った。試験では、チェーンへの給水量を変えながらコンクリートを切断する試験を行い、そのときに電動モータに加わる負荷の変動を測定した。測定の結果、給水量を減少させるとチェーンの回転抵抗が減少してモータの出力損失が減少することが解った。また、水の供給量を所定量より増やすと、供給された水がチェーンの走行運動に対して著しく大きな抵抗になることが判明した。そして、4リットル/分以下にすると、抵抗が減少し、搭載した電動モータによってコンクリート等の切断に必要な出力を確保できることが見出された。また吐出量が0.8リットル/分以上にすることで切断時のチェーン等の発熱や粉塵の発生を防止でき、切り粉の排出や走行するチェーンの潤滑が確保されることが解った。
【0010】これまで、給水量と供給された水の抵抗によるモータの出力損失との関係が着目されていな理由は、駆動手段として油圧モータが用いられていたことに起因すると考えられる。つまり、油圧モータであれば、モータの重量を増すことなくモータの出力等を高くして必要な出力等を確保することができる。
【0011】請求項1に記載の発明は、コンクリート構造物、石材、岩盤等の切断に用いられ、駆動モータと、該駆動モータが固定される本体と、該本体に対して着脱可能に取り付けられるチェーンバーと、該チェーンバーに案内されて所定の循環経路上を走行する環状の切断用のチェーンと、該チェーンに駆動モータの回転を伝達する伝動手段と、チェーンに対する給水手段とを有するチェーンソーにおいて、前記駆動モータは電動モータであり、前記給水手段は給水量が0.8〜4リットル/分の給水手段であることを特徴とするチェーンソーである。
【0012】コンクリート等の切断に用いられるチェーンソーを電動モータで駆動すれば、油圧モータを用いる場合に必要な圧力発生装置のような別体の装置が不要である。したがって、別体の装置の存在で切断現場の移動が制限されるということがない。また電動モータを用いれば、給電用コードの延長やプラグの抜き差しは極めて容易であり、切断現場での移動等を含めた切断作業の作業性が著しく向上する。
【0013】給水手段は水量調節手段を備えるものが好ましい。本発明に係るチェーンソーの切断対象はコンクリート等の硬いものであるが、これらの中にも、硬くて切り難いものや、軟らかくて比較的切り易いもの、粉塵が飛散しやすいものなど、種々の性質を有するものがある。したがって、水量を調節できれば、上記給水量の範囲内において、切断対象等に応じて給水量を最小限の量に調節することができ、水の抵抗を最小限にしてチェーンソーの能力を最大限引き出すことができる。
【0014】ところで、チェーンバーに形成される吐出口202b(図8参照)からチェーンに水を供給する構造にすると、水を防塵や潤滑等に有効に利用できるという利点があるが、その一方で、チェーンバー内の給水路に水を供給するホース203(図8参照)が切断作業の邪魔になるという不具合があることは先に説明した。このような不具合を解決するため、給水手段の給水経路について検討した。その結果、チェーンバーを本体に取り付ける部分に、チェーンバー内の給水路に水を送る給水構造を設けることが可能であることを見出した。
【0015】チェーンソーの本体には、チェーンバーが取り付けられる台座が備えられており、前記チェーンバーには、前記台座との接触面に形成された給水口と、チェーンバー内に形成され、前記給水口から流入した水を送る給水路と、該給水路によって送られた水をチェーンに向けて送り出す吐出口とが形成されており、前記台座に、給水源からの水が供給される配水口と、該配水口から流入した水をチェーンバーの前記給水口に送り出す出水口とが形成されていることが好ましい。
【0016】チェーンバーの給水口はチェーンバーの台座に接触している部分に形成されており、該給水口には、台座のチェーンバーに接触している部分に形成されている出水口から水が送り込まれる。この構造にすると、給水源から台座の配水口に供給された水は、台座の出水口から送り出された後、チェーンバーの給水口から給水路に送り出され、該給水路を経て吐出口からチェーンに向けて送り出される。したがって、チェーンバーの側面にホースを接続してチェーンバー内の給水路に水を送り込む必要がなくなり、今まで切断作業の邪魔になっていたホースが不要になる。このホースがなくなれば、壁際や狭い場所などにおけるチェーンソーの取扱いが容易になり、切断作業の作業性が向上する。
【0017】また、上記構造であれば、チェーンバーを本体に取り付けることで本体の出水口とチェーンバーの給水口とが接続されるため、チェーンバーの側面に給水ホースを接続する作業が不要になり、チェーンバーの交換作業などが容易になる。
【0018】なお、チェーンバーは、使用により生ずるチェーンの伸びに対応するために、本体に対して位置調節可能に取り付けられていることが多い。この場合、チェーンバーの接触面は、台座上(より具体的にはチェーンバーの接触面が接触している台座の座面上)をスライドする。スライドする面は平滑性を備えているので、台座の出水口とチェーンバーの給水口との連通部の水密性を確保しやすい。このような点でも、チェーンバーの接触面に給水口をもうけることが好ましい。なお、出水口または給水口の少なくともいずれか一方をチェーンバーのスライド方向に延びる長穴にすると、位置調整によってチェーンバーをスライドさせたときに、出水口と給水口との連通状態が確保される範囲を広げることができるので、より好ましい。
【0019】また、台座は本体に対して着脱可能であることが好ましい。出水口が形成される台座が本体に対して着脱可能であれば、出水口の部分の交換が容易である。台座が交換可能であれば、給水口の位置が異なる複数種類のチェーンバーを給水可能な状態で本体に対して取り付けることが可能であり、チェーンソーの汎用性が向上する。
【0020】また、台座が本体に対して着脱可能であれば、切断時の衝撃が加わる台座だけを高強度の素材で構成すると共に本体を軽量素材で構成することによって本体を軽量化できる。本体が軽量になれば、チェーンソーが軽量になり、チェーンソーの作業性や取扱性が向上する。あるいはより重量のある高出力の電動モータを搭載できる。例えば、本体素材としてはアルミ合金素材を、また台座の素材としてはステンレスや銅または鉄鋼材料などの構造材にメッキなどの防錆処理を施したものなどを挙げることができる。
【0021】ところで、駆動手段として電動モータを用いる場合、電動モータは油圧モータに比べて回転数が高いので、モータの出力軸とチェーンを回転させるスプロケットとの間に減速機を介在させる。従来の電動工具の中にも減速機を備えるものはあるが、本発明のチェーンソーでは従来の電動工具とは異なり、切断時に、減速機に大きな衝撃が加わる。これは、本発明のチェーンソーが鉄筋コンクリート等を切断対象にしていることに起因する。したがって、減速機の破損を防止する機構を設けた方が好ましいが、このような機構を単に設けたのではチェーンソーが大型になって切断時の作業性を低下させるおそれがある。
【0022】そこで、チェーンソーの伝動手段が、電動モータの回転を減速する減速機と、該減速機から出力される回転をチェーンに伝達するスプロケットとを有する場合は、前記減速機からスプロケットへの回転の伝達を所定の条件で遮断するクラッチ機構を備えることが好ましい。そして、該クラッチ機構は、減速機の出力軸に取り付けられた駆動側の摩擦板を備えるものであって、該摩擦板の回転を、該摩擦板に接する摩擦面を備えた被動側に、摩擦によって伝達するものであり、しかも前記被動側の摩擦面は、前記スプロケットの軸穴の周辺にリング状に形成されていることが好ましい。
【0023】クラッチ機構を設ければ、所定の大きさ以上の衝撃的な負荷がクラッチに加わる(所定の条件になる)と、該クラッチ機構が作動して減速機からチェーンへの回転の伝達が遮断される。したがって、切断時に、チェーンに大きな衝撃が加わっても減速機に衝撃的な負荷が加わることは防止され、減速機を構成する歯車等の破損が防止される。
【0024】また、本発明では、クラッチ機構の被動側の摩擦面をスプロケットに一体に形成している。このような構造にすると、クラッチ機構を小型にすることができ、チェーンソーの大型化が防止される。したがって、クラッチ機構を設けてもチェーンソーの作業性が損なわれることがない。
【0025】なお、スプロケットの支持構造としては、スプロケットを減速機の出力軸に回転可能に支持させる構造が好ましい。このようにすると、駆動側の摩擦板が固定される出力軸でスプロケットを片持ち支持でき、支持構造が簡素になる。したがって、チェーンソーの小型軽量化を図ることができ、切断時のチェーンソーの取扱性や作業性が向上する。例えば減速機の出力軸の先端に雌ねじを形成し、該雌ねじに締結するボルトを用いて、出力軸に固定された駆動側の摩擦板にスプロケットの摩擦面を押し当てる構造である。なお、減速機の出力軸と駆動側の摩擦板やスプロケットとの位置関係によっては、摩擦板やスプロケットを直接減速機の出力軸に取り付けることができない場合もある。このような場合を考慮すると、ここでいう減速機の出力軸には、減速機から出力された回転によって回転される回転軸が含まれる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態を、図面を用いて説明する。
【0027】図1及び図2に示されるチェーンソー1は、コンクリート等の切断に用いられるものであり、切断部材として切断用の環状のチェーン2を備えている。チェーンソー1の本体3にはチェーン2を駆動させる整流子モータ(電動モータ、以下、単にモータともいう)4が固定されている。また本体3には、チェーン2が所定の循環経路上を走行するように案内するチェーンバー5と、モータ4の回転をチェーンに伝達する、減速機6やスプロケット7等からなる伝動手段とが取り付けられている。また、チェーンソー1は、給水ホース8等を含む給水手段を有する。したがって、モータ4を作動させると、その回転が伝動手段を介してチェーン2に伝達されて該チェーン2が所定の循環経路上を無端走行する状態になり、給水手段によってチェーン2に水を供給しながらコンクリート等を切断できる状態になる。
【0028】図1および図2はスプロケット7等を覆うカバー30(図3参照)や水の飛散を防止するプロテクタ等を取り外した状態を示すものである。また、モータ4の給電用のコードは図示しなかった。なお、図2符号Eは本体3の肉抜き部を示している。
【0029】図3および図4に示されるように、本体3には、チェーンバー5が取り付けられている。該チェーンバー5は、本体3に着脱可能に固定される支持板(台座)9と、チェーンバー5の外側の外板10とに挟まれた状態で、固定ボルト31および固定ナット32によって固定されている。なお、符号30はチェーンバー5と共に本体3に固定されるカバー(図3のみ図示)である。
【0030】支持板9は、図4に示されるように、外形がほぼ長方形の板状の部材である。該支持板9には、本体3にねじ留めする際に用いられる穴91と、固定ボルト31が挿通される穴92と、給水手段の水路として用いられる長穴状の出水孔(配水口および出水口)93と、後述するチェーンバー5の位置調節機構に用いる長穴状の貫通穴94とが形成されている。また、外板10には固定ボルト31が挿通される穴10aが形成されている。
【0031】本体3の、支持板9が固定される位置には、チェーンバー5の位置調節機構に用いられるスクリュー棒12が取り付けられている。スクリュー棒12は本体3の前端面に形成された穴33に回転可能に取り付けられており、本体3に形成された溝34内に挿入されている。スクリュー棒12の溝34内の部分には雄ねじが形成されており、雄ねじが形成された部分にはピン13が螺合されている。ピン13の先端は支持板9の貫通穴94を通ってチェーンバー5に形成された2つの係合孔51のいずれかに挿入される。したがって、スクリュー棒12を回すとピン13が貫通穴94に沿って移動して、チェーンバー5の本体3に対する位置を調節できる。このとき、チェーンバー5の支持板9に接触している部分(接触面)5aが支持板9のチェーンバー側の座面9a上をスライドする。なお、チェーンバー5の位置調節をする場合は、通常固定ナット32を緩めてチェーンバー5がスライドしやすいようにする。また、図3および図4において本体3の符号35は、固定ボルト31が挿通される雌ねじ穴であり、符号36は、支持板9のねじ留めに用いられる雌ねじ穴である。
【0032】チェーンバー5は、図4に示されるように、3枚の板材52,53,54より構成される細長い板状の部材であり(図1及び図2参照)、本体3に固定されるチェーンバー5の基端側には両固定ボルト31,31が挿通される長穴55が形成されている。チェーンバー5を構成する3枚の板材のうち中板53は、図5に示されるように、先端側が短くなっており、中板53がない先端部には、両外板52,54に回転可能に支持される薄板状のスプロケット56が取り付けられている。該スプロケット56には、チェーンバー5の外周縁に沿って配置されるチェーン2(図1参照)が掛けられる。チェーン2はモータ4側のスプロケット7(図3参照)にも掛けられており、この状態でモータ4を作動させると、チェーン2がチェーンバー5の外周縁(所定の循環経路上)を無端走行し、コンクリート等を切断できる状態になる。なお、チェーンバー5の外周縁に形成されるチェーン2を案内する構造は周知の構造であり、その説明を省略する。
【0033】チェーンバー5内には、図5に示されるように、給水手段の給水路57が形成されている。チェーンバー5を構成する3枚の板材のうちの中板53には、細長い樹枝状に分岐した貫通部53aが形成されており、該貫通部53aを両側板52,54で挟むことで給水路57が構成されている。
【0034】給水路57の下流側は樹枝状に分かれており、各分枝水路57aの先端の吐出口58はチェーンバー5の外周縁の近傍に形成されている。また両側板52,54のうち、支持板9に接する側板52には、給水路57の上流側の端部に連通する給水口59が形成されている(図3参照)。図3に示されるように、給水口59は支持板9の出水孔93に連通しており、出水孔93から送り出された水は給水口59を経て給水路57に送り込まれ、各分水路57aの先端の吐出口58からチューン2に向けて送り出される。
【0035】給水手段は給水ホース8を有する(図1および図2参照)。給水ホース8の上流側は図示しない上水道等の給水源に接続されており、下流側の先端は、図3に示されるように、本体3に形成された貫通口37の接続穴37aに接続されている。該貫通口37は支持板9の出水孔93に連通しており、給水ホース8からの水は貫通口37から出水孔93内に配水された後、該出水孔93を経てガイドバー5の給水口59から給水路57内に送り込まれる。また、給水ホース8には、図1および図2に示されるように、弁開度の調節が可能な水量調節弁(水量調節手段)15が取り付けられており、チェーンバー5内の給水路57に送り込む水の量を調節できるようになっている。
【0036】本体3には整流子モータ4が固定されている。モータ4の定格出力は1.5kW(交流100V)、無負荷状態での定常の回転数は20000回転/分であり、その重量は8kgである。また、チェーンソー1の総重量は12kgである。なお、チェーンソー1の駆動に用いる電動モータは、チェーンソー1に搭載したときに、チェーンソー1の総重量が携帯可能な重量以下に収まり、しかも上記出力以上の出力が得られるのであれば、上記モータに限られるものではない。モータ4の出力軸41には、図3に示されるように、減速機6が取り付けられており、該減速機6の出力軸61にスプロケット7が取り付けられている。なお、本実施形態の減速機6は一組のねじれかさ歯車からなるものである。その説明は省略した。
【0037】スプロケット7は、図6に示されるように、減速機6の出力軸61に着脱可能に固定されるインナリング16と、該インナリング16に取り付けられるアウタリング17とに狭まれた状態で出力軸61に取り付けられる。
【0038】インナリング16は、出力軸61に挿通される小判形の挿通穴16aを備えており、出力軸61と一体になって回転する。また、インナリング16は、出力軸61と同軸上に位置する軸体16bと、減速機寄りの位置に形成された外形が円板形状の摩擦板16c(クラッチ機構の一部)とを有する。他方、アウタリング17は、その中央部に形成されるボルト穴17aと、スプロケット7に接触するリング状の端面17bとを有する。
【0039】スプロケット7の両側面にはリング状のガイドプレート71が取り付けられている。そして、スプロケット7は、チェーン2が掛けられる歯7aと、軸穴7bとを有する。該軸穴7bはインナリング16の軸体16bに回転可能に挿通されており、スプロケット7は軸体16bに回転可能に支持される。また、スプロケット7のインナリング16側の側面には、摩擦板16cに接する摩擦面7c(クラッチ機構の一部)が形成されている。該摩擦面7cは、軸穴7bの周囲に形成されるリング状の領域である。
【0040】インナリング16、スプロケット7およびアウタリング17は、出力軸61のねじ穴61aに締結されるボルト18によって出力軸61に取り付けられる。該ボルト18を締結すると、アウタリング17によってスプロケット7の摩擦面7cとインナリング16の摩擦板16cとが相互に押し付けられ、減速機6の出力軸61の回転をインナリング16からスプロケット7に摩擦によって伝達できる状態になる。この状態でモータ4を作動させると、スプロケット7が回転してチェーン2が回転し、コンクリート等を切断できる。
【0041】そして、例えば切断時に、チェーン2が鉄筋コンクリートの鉄筋に当たるなどして、該チェーン2に所定の大きさ以上の衝撃的な負荷が加わる(所定の条件になる)と、摩擦板16cとスプロケット7の摩擦面7cとの間に滑りが生じて出力軸61からスプロケット7への回転の伝達が遮断される。すなわち、インナリング16の摩擦板16cとスプロケット7の摩擦面7cとはクラッチ機構を構成している。滑りが生ずる条件の設定は、ボルト18の締め付け力を調節して行う。ボルトの締め付け力を調節すると、摩擦板16cとスプロケット7との間で伝達可能なトルクの最大値を調節できるからである。具体的には、伝達可能なトルクの最大値が歯車の最大伝達トルクを超えないようにするのが望ましい。なお、切断試験を行って適当なボルト18の締め付け力を定めることも可能である。
【0042】本実施形態は、インナリング16の摩擦板16cとスプロケット7の摩擦面7cとの間の摩擦によって回転を伝達する構造であるが、アウタリング17の端面17bと該端面17bに接するスプロケット7の側面との接触部をも、摩擦によって回転を伝達するクラッチ機構に用いてもよい。
【0043】以上で説明した構造のチェーンソー1を用いて切断試験を行った。この試験では、チェーンバー5の吐出口58からの水の吐出量を増減させてコンクリートを切断し、切断時のモータ4を流れる電流の電流値を測定した。電流値はモータ4に加わる負荷の増減に対応して増減する値であるので、電流値に基づいてモータ4に加わっている負荷の状態を測定できる。
【0044】まず、実際にコンクリートを切断する前に、無負荷であって、かつ給水をしない状態でチェーンソー1を作動させると、電流値は6〜7Aであった。次に、多量の水を供給すると電流値の上昇が見られた。これは、チェーンバー5の吐出口58からチェーン2に向けて供給された水が抵抗となって電流値を上昇させているものと考えられる。この後、給水量を減らして3〜4リットル/分にすると、電流値が6〜7Aに安定した。さらに給水量を減らして0.5リットル/分程度にすると、チェーン2とチェーンバー5との間で発熱して電流値が上昇する現象が現れた。この現象は給水量の不足が原因と考えられる。
【0045】続いて、コンクリートを切断する試験を行った。切断対象としてコンクリート強度の異なる2種類の試供材(コンクリート)A、Bを用意した。コンクリート強度とは、コンクリートが耐え得る1cm2あたりの荷重の大きさを表すものである。一般にコンクリート強度が高いほど、本実施形態のようなチューンソーを用いて切断する際に長時間を要する。なお、本実施形態のチェーンソーで用いているチェーンは、ダイヤモンドを利用した刃を備えるものである。
【0046】試供材Aは、コンクリート強度200kg/cm2以下のコンクリートである。コンクリート構造材としては強度的に低いものであり、コンクリート強度は煉瓦やブロックのそれに近い値である。また、試供材Bは、コンクリート強度400〜450kg/cm2以上のコンクリートであり、コンクリート構造材として一般的に使用されているものである。
【0047】試供材Aについて行った切断試験では、給水量を1〜2リットル/分以下にすると、切り粉が泥状になり、切り粉の排出を十分に行うことができない場合があった。また、試供材Bについて行った切断試験では、給水量を0.8リットル/分以下にしても、切り粉の排出を十分に行うことができた。これは、試供材Aを切断する方が試供材Bを切断する場合に比べて、単位時間あたりに発生する切り粉の量が多いことが原因であると考えられる。
【0048】試供材Bの試験結果から、給水量が0.8リットル/分以上であれば一般的な強度のコンクリートを問題なく切断できることが解った。また、試供材Aの試験結果から、試供材Aよりも単位時間あたりの切り粉の発生量が多いと考えられる煉瓦やブロックの切断についても、多量の水を供給する必要がないことが解った。なお煉瓦やブロックについて確認的に切断試験を行ったところ、給水量を3〜4リットル/分にしても切り粉の排出を十分に行うことができた。
【0049】以上の結果より、給水量は4リットル/分以下が好ましいということが解った。給水量がこの値を超えると、電流値が上昇することから解るように、供給した水がチェーンの走行の抵抗になりコンクリートの切断に利用できる出力が減少するからである。出力が減少すると、硬いコンクリートを切断する場合にチェーンが引っかかるなど、切断作業を快適に行うことができず、切断作業性が低下するおそれがある。また、給水量は0.8リットル/分以上であるのが好ましい。給水量をこれより少なくすると、切り粉の排出、粉塵発生の防止または潤滑などが不十分になるおそれがある。なお、水量調節弁15などの水量調節手段を備えている場合は、切断対象に応じて給水量を適切な量に調節して切断作業を行うことができる。他方、水量調節手段を備えていない場合は、試供材Bのような比較的軟らかいコンクリートを切断する場合を考慮して、給水量をやや多めの2〜4リットル/分程度に設定しておくのが好ましい。
【0050】ところで、本実施形態のチェーンソー1の本体3は、図7に示されるように、モータ4および伝動手段が固定される本体基部3aと、支持板9が取り付けられる本体先部3bとから構成されている。そして、本体基部3aにはボルト穴38aが、また本体先部3bにはねじ穴38bが形成されており、本体基部3aと本体先部3bはボルト38によって分離可能に締結されている。なお、図7は、本体基部3aと本体先部3bとの取り付けに関する構造を説明するものであり、肉抜き部Eや本体3に取り付けられれる給水ホース8などについては図示を省略した。
【0051】図7は、本体基部3aと本体先部3bとを分離し、減速機6の出力軸61からスプロケット7およびインナリング16を取り外した状態を示す。この状態の本体基部3aには、本体先部3bに換えてカッタユニット100を取り付けることができる。
【0052】カッタユニット100は、切断部材である円板形状のカッタ101と、チェーンソー1の本体基部3aに固定されるカッタユニット本体102と、該カッタユニット本体102に取り付けられるカバー103とを有する。カッタユニット本体102には、本体基部3aへの取り付けに用いられるねじ穴104が形成されており、本体先部3bの取り付けに用いたボルト38を用いてカッタユニット100をチェーンソー1の本体基部3aに取り付けることができる。また、カッタ101の回転軸101aを、ボルト18(図6参照)を用いて本体基部3aに固定された減速機6の出力軸61に連結する。つまり、カッタユニット本体102のねじ穴104と、本体基部3aのボルト穴38aと、ボルト18,38とを固定手段として、カッタユニット100は本体基部3aに取り付けられる。この状態でモータ4を作動させると、モータ4の回転が減速機6の出力軸61からカッタユニット100の回転軸101aに伝達されてカッタ101が回転し、コンクリート等の切断対象物を切断できる状態になる。
【0053】このように、チェーンソーの駆動手段が電動モータ4であれば、チェーンソー1の駆動部分が固定された本体基部3aを、電動カッタの駆動部分として兼用できる。従来、コンクリート等の切断の作業現場などで、チェーンソーと電動カッタの両方を用いる場合は、油圧モータで駆動されるチェーンソーと電動カッタとを準備する必要がある。これに対し、電動モータで駆動されるチェーンソーを提供できれば、チェーンソーに加えて、電動カッタのカッタユニットだけを準備することで、チェーンソーとカッタの両方を使用できる。したがって作業現場の移動等が容易になり作業性が向上する。
【0054】
【発明の効果】以上の説明から解るように、本発明によれば、コンクリート等の切断に用いられるチェーンソーであって、切断時の作業性に優れるものを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】593110580
【氏名又は名称】株式会社シブヤ
【出願日】 平成13年1月12日(2001.1.12)
【代理人】 【識別番号】100111774
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 大輔
【公開番号】 特開2002−210727(P2002−210727A)
【公開日】 平成14年7月30日(2002.7.30)
【出願番号】 特願2001−4610(P2001−4610)