| 【発明の名称】 |
産業用ロボットの防振制御方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】掃部 雅幸
【氏名】久保田 哲也
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| 【要約】 |
【課題】制御装置の応答性能はほぼ同等として、制御装置のコストや演算量を大幅に低減する。
【解決手段】産業用ロボットのサーボシステムにおいて、ロボットの各軸の制御系を、位置ループと速度ループのPI制御に加え、ロボットの機械要素の弾性変形量にのみ補償を加える防振制御とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 産業用ロボットのサーボシステムにおいて、ロボットの各軸の制御系を、位置ループと速度ループのPI制御に加え、ロボットの機械要素の弾性変形量にのみ補償を加える防振制御とすることを特徴とする産業用ロボットの防振制御方法。 【請求項2】 産業用ロボットのサーボシステムにおいて、ロボットの各軸の制御系を、位置ループと速度ループのPI制御に加え、ロボットの機械要素の弾性変形のみを補償する防振制御とし、その補償パラメータを(4−NJ)ωa2JMRG(NJは慣性比、ωaは反共振周波数、JMはモータ回転軸の慣性モーメント、RGは減速機の減速比)とすることを特徴とする産業用ロボットの防振制御方法。 【請求項3】 機械要素の弾性変形の補償に、オブザーバによる推定値を用いる請求項1又は2記載の産業用ロボットの防振制御方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、制御装置のコストや演算量を低減することを可能とする産業用ロボットの防振制御方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ロボットの大型化、高速化、大可搬重量化が進むにつれ、それまで剛体で近似していたアームやその他の機械要素の柔軟性が無視できなくなる。ロボットの各軸の制御系は、それまで図4に示すようなセミクローズドループで構成されていたが、現在の産業界では図5に示すような機械要素の弾性変形と変形速度を補償する防振制御が広く用いられている(例えば、特開昭61−255415号公報)。このような防振制御を行えば、各軸における4つの極を4つのゲインで自由に配置できるため、高速応答を保ちながらオーバーシュートの低減や振動の抑制が大きく改善されることになる。 【0003】しかし、ロボットの各軸に、機械要素の弾性変形や変形速度を観測するセンサを取り付けることは、コストやメンテナンスを考えれば得策ではなく、多くの産業用ロボットにおいては、図6に示すようなオブザーバによってそれらの推定値を計算し補償している。したがって、従来の防振制御をロボットに実装する場合には、高容量の記憶装置や集積装置が必要となり制御装置のコストが高くなる。また、それまで比較的容易に調整できた位置と速度の比例ゲインkp、kvに比べ、図7からもわかるように防振制御ゲインksp、ksvの調整は直感的でなく、膨大な労力と経験や勘が必要となる。 【0004】なお、上記の図4、図5のブロック図において、RGは減速機の減速比、JMはモータ回転軸の慣性モーメント、JAはアームの慣性モーメント、θMはモータの角度、θAはアームの角度、θSは減速機のねじれ角、DEは減速機の減衰係数、KEは減速機のばね定数、TComは制御系からのトルク指令値、Tは実際にモータに送られるトルク値、kpは位置ループの比例ゲイン、kvは速度ループの比例ゲインである。また、図5のブロック図において、kspはねじれ角のフィードバックゲイン、ksvはねじれ角速度のフィードバックゲインである。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の諸点に鑑みなされたもので、本発明の目的は、従来の防振制御ほどには制御装置のコストがかからず、ゲイン調整が容易で、しかも、従来の防振制御と同等程度の性能を有する産業用ロボットの防振制御方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の産業用ロボットの防振制御方法は、産業用ロボットのサーボシステムにおいて、ロボットの各軸の制御系を、位置ループと速度ループのPI(比例・積分)制御に加え、ロボットの機械要素の弾性変形量にのみ補償を加える防振制御とするように構成されている(図1参照)。 【0007】また、本発明の産業用ロボットの防振制御方法は、産業用ロボットのサーボシステムにおいて、ロボットの各軸の制御系を、位置ループと速度ループのPI制御に加え、ロボットの機械要素の弾性変形のみを補償する防振制御とし、その補償パラメータを(4−NJ)ωa2JMRG(NJは慣性比、ωaは反共振周波数、JMはモータ回転軸の慣性モーメント、RGは減速機の減速比)とすることを特徴としている(図1参照)。 【0008】本発明の制御方法においては、ロボットの各軸に機械要素の弾性変形を測定するセンサを取り付け、その測定値を用いて補償を加える構成としてもよいが、センサのコストやメンテナンスを考慮した場合、機械要素の弾性変形の補償にオブザーバによる推定値を用いることが好ましい。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能なものである。本発明では、ロボットの各軸の制御系を、図1に示すブロック線図のように位置ループと速度ループのPI(比例・積分)制御に加え(図1では比例制御のみ描画)、アームやその他の機械要素の弾性変形のみを補償する簡易防振制御とする。なお、図1のブロック図において、RGは減速機の減速比、JMはモータ回転軸の慣性モーメント、JAはアームの慣性モーメント、θMはモータの角度、θAはアームの角度、θSは減速機のねじれ角、DEは減速機の減衰係数、KEは減速機のばね定数、TComは制御系からのトルク指令値、Tは実際にモータに送られるトルク値、kpは位置ループの比例ゲイン、kvは速度ループの比例ゲイン、kspはねじれ角のフィードバックゲインである。ただし、防振制御ゲインは、一意的に以下の数1に示す値とする。ここで、NJは慣性比、ωaは反共振周波数である。 【0010】 【数1】
【0011】この機械+制御系のθrefからθAへの伝達関数H2(s)は、以下の数2のようになる。ただし、機械系の減衰DEは、微小であるので無視した。 【0012】 【数2】
【0013】kp、kvの二つのゲインでは、この4次システムの4つの極を自由に配置することはできないが、制御性能上、望ましい配置にすることは可能である。上記の数2に示す式ではkp、kvを以下の数3に示す(1)式のように選べば、4つの極を四重実根に配置できる。 【0014】 【数3】
【0015】4次システムの場合、4つの極が四重実根の配置ならば、システムの応答は、最も高速で絶対にオーバーシュートしない。上述した図5に示す従来の防振制御の場合、4つの極を四重実根に配置するゲインは、以下の数4のようになる。このとき、機械+制御系のθrefからθAへの伝達関数H1(s)は、以下の数5に示す(2)式のようになる。 【0016】 【数4】
【0017】 【数5】
【0018】本発明の防振制御における(1)式と従来の防振制御における(2)式との違いは、従来の防振制御では四重根位置ω1を自由に調整できるが、本発明の防振制御の場合、四重根位置はωaで固定されることである。したがって、同じオーバーシュートしない応答であっても、従来の防振制御を用いた方が高速な応答を実現できる。図2は、本発明の防振制御における(1)式と従来の防振制御における(2)式による、ステップ応答を示している。シミュレーション条件は、ωa=12π[rad/sec]である。従来の防振制御の整定時間は、本発明の防振制御のそれに比べ、(ω1/ωa)倍速いことがわかる。しかし、ロボット実機に搭載された制御装置において、ω1をあまり大きくしようとすると、非モデル化誤差の影響で系は振動的になり、ついには不安定となる。そのため、ω1の設定には限界がある。 【0019】「メカトロサーボ系制御」(森北出版)p.60−66には、『メカトロサーボ系を1次系で表し、その系の過渡応答に振動が生じず(オーバーシュート条件)に、かつサンプリング時間間隔相当の無駄時間を導入した系の遮断周波数が、無駄時間を含まない系の遮断周波数fc1よりも低下しない(遮断周波数条件)という二つの条件を満足する』サンプリング周波数fsには、以下の数6の関係があると記載されている。 【0020】 【数6】
【0021】この解析的・経験則的条件式を、速度ループに当てはめると、速度ループの過渡応答に振動が生じず、かつ、離散化誤差を含む系の遮断周波数が離散化誤差のない系の遮断周波数よりも低下しない条件は、以下の数7のようになる。 【0022】 【数7】
【0023】さて、kvに従来の防振制御の四重実根ゲインを代入すると、以下の数8のようになる。速度ループが振動しないための四重根位置ω1の条件は、少なくとも数8に示す式を満たすことである。 【0024】 【数8】
【0025】産業用ロボットでは、速度ループのサンプリング周波数fsは、コストパフォーマンスを考慮するとせいぜい2kHz(=500μs)程度である。また、ロボット反共振周波数ωaは、通常6×2π〜10×2πrad/secである。よって、ω1/ωaの値は数9のようになる。したがって、従来の防振制御を用いても、応答の立ち上がり速度は本発明の防振制御に対しせいぜい1.5倍程度にしか改善できないことがわかる。 【0026】 【数9】
【0027】つぎに、本発明の防振制御(図1の制御系)、従来の防振制御(図5の制御系)、古典的な従来の制御(図4の制御系)により、ロボット手先の位置θAのステップ応答をシミュレーションした。制御ゲインの値は、システムを連続系で近似したときに、θAが絶対にオーバーシュートせず、θAの応答が最も速くなるように調整し、さらに、離散化条件を考慮したときにも速度ループにオーバーシュートがないよう調整した。シミュレーション条件は、ωa=20π[rad/sec]、NJ=12である。 【0028】シミュレーション結果を図3に示す。図3において、実線が本発明の防振制御、破線が従来の防振制御、一点鎖線が古典制御である。いずれの制御則でも、オーバーシュートしない立ち上がりの速い応答ではあるが、整定時間は従来の防振制御、本発明の防振制御、古典制御の順で速い。古典制御の整定時間は慣性比NJが小さくなれば本発明の防振制御との差は小さくなり、NJが大きくなれば差は大きくなる。多関節ロボットの場合、慣性比は様々に変化するため、古典制御では常に立ち上がりに優れた応答性能を発揮することはできない。また、従来の防振制御と本発明の防振制御では、固有振動数ωaが低くなれば整定時間の差は大きくなり、ωaが高くなれば整定時間の差は小さくなり、ωa=36π[rad/sec]付近でその差は0となる。ただし、二つの制御系で整定時間の差は相対的には非常に小さく、実用上は致命的な差とはならない。 【0029】 【発明の効果】本発明は上記のように構成されているので、つぎのような効果を奏する。本発明の制御方法に従えば、これまで従来の防振制御を実現するために必要となっていた制御装置のコストを大幅に削減することができる。また、従来の防振制御では防振制御ゲインksp、ksvの調整に膨大な時間と手間を要していたが、本発明の制御方法では上記の(1)式に基づきゲインを決定するので、ゲイン調整の時間と手間を省くことができる。そして、その制御性能は、従来の防振制御とほぼ同等程度にまで調整可能であり、防振制御を全く行わない古典的な制御方法に比べれば、大きく改善される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000974 【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年3月7日(2001.3.7) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100076705 【弁理士】 【氏名又は名称】塩出 真一 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−264056(P2002−264056A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月18日(2002.9.18) |
| 【出願番号】 |
特願2001−63228(P2001−63228) |
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