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【発明の名称】 電動工具
【発明者】 【氏名】上村 淳一

【氏名】小倉 光雄

【氏名】石川 光幸

【氏名】川崎 佳光

【氏名】小林 十郎

【氏名】衛藤 直哉

【氏名】稲川 裕人

【氏名】村上 卓宏

【氏名】佐藤 五夫

【氏名】横山 仁一

【要約】 【課題】本発明は、ギヤの衝突を緩和することで騒音を低減し、更に高トルクに耐えうる歯車機構を有する電動工具を提供することである。

【解決手段】出力軸3と歯車4との間に高強度プラスチックから成る動力伝達キー7を設け、更に動力伝達キー7と接触する出力軸3及び歯車4に平面或いはV溝を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 駆動装置と、該駆動装置の回転動力を伝達する出力軸と、該出力軸上に間隙を持って配される歯車とを備えた電動工具において、前記出力軸と前記歯車との間に弾性体から成る動力伝達キーを設け、更に該動力伝達キーと接触する前記出力軸及び前記歯車に平面或いはV溝を形成することを特徴とした電動工具。
【請求項2】 前記動力伝達キーは、高強度プラスチックであることを特徴とした請求項1記載の電動工具。
【請求項3】 前記出力軸と前記動力伝達キーとの当接面に曲率或いは勾配を設けることを特徴とした請求項1記載の電動工具。
【請求項4】 駆動装置と、該駆動装置の回転動力を伝達する出力軸と、該出力軸上に間隙を持って配される歯車とを備えた電動工具において、軸芯に平行な少なくとも1つの平面またはV溝を有する軸と、該平面または該V溝の側面に当接する面を有するプラスチックから成るキーと、該キーの他の面と当接する溝を軸穴部に有する歯車とで動力を伝達し、且つ高負荷時に該歯車の軸穴部或いは金属から成る部材と軸が接触することを特徴とした電動工具。
【請求項5】 高負荷時に前記軸と接触する部材は、前記プラスチックキーを越える強度を有する材質であることを特徴とする請求項4記載の電動工具。
【請求項6】 前記金属から成る部材は、前記軸穴部に挿入されることを特徴とする請求項4または請求項5の何れか記載の電動工具。
【請求項7】 前記金属から成る部材は、前記歯車により一体成形されることを特徴とする請求項4または請求項5の何れか記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、騒音を低減する歯車機構及び耐トルク機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の電動工具は、交流電源による加振力、歯車のピッチ誤差及び偏心等により回転変動が起き、駆動軸側の歯車と出力側の歯車がそれぞれの歯面で衝突、振動を繰り返す。この時、歯面と歯面の衝突により音が発生し、また歯面と歯面の衝突力が加振力となるため、歯車機構部以外からも騒音が発生していた。特に起動時には駆動軸側のトルクが大きいため、衝撃力も大きく、これにより大きな騒音が発生していた。そこで上記騒音を低減するため、歯車精度を向上させたり、或いは歯車歯面の形状を変更して対応していた。また、機構的にギヤ音を低減するため、動力伝達軸と歯車を結合するための歯車内径にある鋼材キーのがたを利用していた。なお、鋼材キーを用いた構成は、剪断荷重によってトルクを伝達している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】歯車精度を向上させるためには、歯車の歯切りを2回以上行う、或いはカッタの代わりに研削砥石による歯面の研磨を行うこと等があげられる。しかし、加工工数の増加による生産性の低下、それに伴いコスト高になってしまうという問題があった。
【0004】また、仮に歯車精度を向上させたとしても他部品の組立精度により歯車同士の噛み合いが悪化し、結果的に騒音が発生してしまうという問題があった。
【0005】また、鋼材キーとキー溝の隙間を利用する構成では、起動時にキー及び歯車キー溝部に加わる衝撃応力が、歯車と軸とを圧入にて結合させたものに比べ著しく高く、強度面で使用できる範囲が限定されてしまうという問題があった。
【0006】本発明の目的は、上記問題を解消し、ギヤの衝突を緩和することで騒音を低減し、更に高トルクに耐えうる歯車機構を有する電動工具を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は、駆動装置と、該駆動装置の回転動力を伝達する出力軸と、出力軸上に間隙を持って配される歯車とを備えた電動工具において、出力軸と歯車との間に弾性体から成る動力伝達キーを設け、更に動力伝達キーと接触する出力軸及び歯車に平面或いはV溝を形成することにより達成される。
【0008】上記目的は、駆動装置と、駆動装置の回転動力を伝達する出力軸と、出力軸上に間隙を持って配される歯車とを備えた電動工具において、軸芯に平行な少なくとも1つの平面またはV溝を有する軸と、平面またはV溝の側面に当接する面を有するプラスチックから成るキーと、キーの他の面と当接する溝を軸穴部に有する歯車とで動力を伝達し、且つ高負荷時に該歯車の軸穴部或いは金属から成る部材と軸が接触することにより達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】図1〜図12に示すまがりば傘歯車を用いたディスクグラインダを例にとり第1実施例を説明する。ディスクグラインダの回転は、図1に示すように駆動装置の回転子1に取付けられた小歯車2と出力軸3側に取付けられた大歯車4により減速される。出力軸3側には研削用砥石5が取付けられており、回転子1からのトルクを砥石5に伝えることで鋼材等の研削が行えるよう構成されている。図2〜図6は第1実施例の特徴部を示す幾つかの例であり、出力軸3と大歯車4の嵌合部に回転方向に動けるようにと周方向に0.005mm〜0.1mm程度の間隙6を設け、且つ高強度プラスチックキー7と出力軸との間に0.1mm〜0.5mm程度の隙間を設け、更に出力軸3及び大歯車4に軸芯に平行な少なくとも1つの平面またはV溝を持たせ、これら平面またはV溝に当接する面を有する弾性率の小さい動力伝達キーであるプラスチックキー7を設けている。なお、上述した隙間以上にすると軸と歯車との芯間がずれ動力伝達を正常な噛み合いにより行うことが難しくなる可能性がある。また、プラスチックキー7のヤング率は、3,000MPa〜30,000MPaであり、好ましくは3,000MPa〜17,000MPaであり、更に好ましくは5,000MPa〜17,000MPaとなっている。
【0010】これにより回転子1に取り付けられた小歯車2からの出力は、大歯車4、プラスチックキー7を介して出力軸3に伝達することができる。このように鋼材キーではなくプラスチックキー7を用いることで、入力時に発生する衝撃的トルクを弾性変形により吸収することができるため衝撃を緩和できる。また、プラスチックキー7は、必要な伝達トルクの大きさに応じてその個数などを適宜選択でき、しかも鋼材キーに比べて減衰能が優れているため、振動を吸収し騒音を低減することができる。また、高強度プラスチック材には、熱可塑性及び熱硬化性樹脂のうち、それらにガラス、カーボン繊維を混入させ、強度を向上させたものが望ましい。なお、熱可塑性プラスチックは熱依存性が高いため、高温下で使用されることが多い電動工具用機構部品に用いる場合には、常温時の特性を維持できない場合があるので、高温下(約150℃以上)で使用される部品の場合には注意が必要である。また、熱硬化性プラスチックは、一般的に熱可塑性プラスチックに比べて曲げ弾性率が高く、減衰特性が約1/3程度であるため、騒音低減効果が得にくい場合がある。これらのことを踏まえた上で、使用条件を満足できる強度を有する材料を選定する必要がある。
【0011】次にキー形状を図7〜図9を用いて説明する。大歯車4を出力軸3に対して円周方向に回転する構造としたため、図7に示すようにプラスチックキー7の出力軸3との接触面7aを平坦な形状とした場合、出力軸3の当接面縁部3aと接触するプラスチックキー7の接触面7aの当接部分には、他部に比べて大きな圧縮応力が生じ大きな変形を伴う。このことから、図8及び図9に示すようにプラスチックキー7の接触面7aに曲率あるいは勾配を持たせることで、大歯車4からの荷重を出力軸3面に連続的且つ均一に加わるように構成してある。これによりプラスチックキー7の耐久性を向上させることができる。
【0012】次に図10に出力軸3、大歯車4及びプラスチックキー7を図2のように配し、大歯車4を固定し、出力軸3を回転させてプラスチックキー7の変形量を比較した結果を示す。雰囲気温度は30℃で、プラスチック材にはポリアミド樹脂単体及びガラス繊維を添加したものを用いる。また、出力軸3と接するプラスチックキー7の接触面7aは平坦とする。横軸はプラスチックキー7の変形量、縦軸に出力軸3に加えたトルクを示す。常温時の曲げ弾性率3000MPaのプラスチックキーは、トルク約20N・mで0.9mmの変形量を示し、その後、出力軸3の回転角度を増やしてもトルクは上昇せず、プラスチックキー7は出力軸3の軸方向へ塑性変形し回復しなかった。本来、衝撃負荷を緩和する目的からは、曲げ弾性率の小さい方が望ましいが、負荷に十分対応可能な強度を有する材料を選定する必要がある。
【0013】次に図11に出力軸3にある回数のトルクを加えそのトルクを加えた時の各プラスチックキー7の変形量を示す。雰囲気温度は80℃とした。また負荷条件は、実際に加わるトルクを累積したものであり、条件1は20N・mを200000回繰り返し負荷したもので、条件2は条件1に更に18N・mを120000回負荷したもの、条件3は条件2に15N・mを300000回負荷したもの、条件4は条件3に12N・mを140000回負荷したものである。電動工具の種類によって異なるが、工具が高速回転するディスクグラインダ等の場合、変形量が大きくなるにつれ工具の円周方向のがたが増加し、騒音も増加する傾向を示す。従ってプラスチックキー7の変形量はなるべく少ないことが望ましい。測定結果から何れの条件においてもプラスチックキー7の接触面7aが平坦なものにおいては、曲げ弾性率が12000MPaと大きいものが最も変形量が少ないことがわかる。これに対して出力軸3と接するプラスチックキー7面の形状を図8に示すように曲率を有するものとしたもので同様に試験を行った。その結果、変形量はプラスチックキー7の接触面7aを平坦としたものに比べて約1/3となった。これはプラスチックキー7の接触面7aを平坦にした場合、出力軸3にある回転角度が生じることで、出力軸3の当接面縁部3aとプラスチックキー7との接触部に局部的に大きな圧縮応力が発生することにより,その部分が塑性変形してしまうためである。これに対して接触面7aに曲率を有するプラスチックキー7は、出力軸3が回転した際に出力軸3面に均一に接触することで、面圧が低減されるため変形量が少なくなる。このことから出力軸3の形状に合わせて曲率あるいは勾配を設定することでプラスチックキーの耐久性を向上させることができる。
【0014】次に図12にプラスチックキーにポリアミド12000MPa、曲率有のものを搭載した電動工具の騒音測定結果を示す。ここで出力軸3に大歯車4を圧入したものについて結果も合わせて説明する。なお、この結果はモータ音を含んだ歯車音であり、入力時の起動音及びある回転数での定常音とした。圧入歯車を搭載した電動工具に対して本実施例における電動工具は、起動音で5dB、定常音で2dBとそれぞれ低減されている。ここで騒音低減は、歯車の歯面の衝突により発生する大歯車4からの衝撃トルクを出力軸3に伝達する際、配設されたプラスチックキー7が、圧縮変形されると同時にプラスチックキー7の変形中の減衰効果により騒音を抑制したことにより達成されたものである。
【0015】次に図13〜図17を用いて第2実施例を説明する。図13〜図17は第2実施例の特徴部を示す幾つかの例であり、構成としては何れも少なくとも1つの平面またはV溝を有する軸3と、それに当接するプラスチックキー7を有するものであり、必要な伝達トルクの大きさに応じてその個数などを適宜選択できる。但し、大歯車4に衝撃的に高いトルクが加わった際には、プラスチックキー7にせん断応力が発生し、プラスチックキー7が破損してしまう可能性があるため、大歯車4の軸穴部に図に示すようにプラスチックキー7と出力軸3との接触面7aと平行な形状8,8aを設ける。大歯車4と一体構造とするには、鍛造,焼結,ワイヤカット等での加工,或いはプラスチックキー7の強度を超える材質の金属部材を挿入する方法で成形可能である。更にこの形状の高さはプラスチックキー7の高さよりも低く設定する必要がある。
【0016】次に図18〜図20に示すようにプラスチックのみで動力を伝達させた一例とあわせて説明する。大歯車4からプラスチックキー7、そして出力軸3にトルクを伝達する機構によりトルクが加わることで、大歯車4の回転方向に対して出力軸3は相対的に逆回転方向に回転しようとする力が働くことによりプラスチックキー7は圧縮される。低いトルクの場合には、圧縮変形のみでトルクが解放されるとプラスチックキー7も回復する。しかし更に特に衝撃的に高いトルクが加わると弾性変形範囲を超えて、プラスチックキーのみでは図18に示すようにせん断応力により亀裂9を生じる。このことから電動工具のような小型歯車に搭載できる大きさのプラスチック材では、高強度で且つ耐熱性の高いものでもキーとして使用する範囲が限られてしまう。そこで図19に示す定常回転または起動時には、大歯車4が回転することで出力軸3がプラスチックキー7とのみ接触し動力伝達されるよう構成し、図20に示すように更に高いトルクが加わった際にはプラスチックキー7が出力軸3により押しつぶされ、出力軸3は大歯車4の段差部8aと接触し、それ以上のトルクが加わったとしても大歯車4からの荷重のほとんどは図13〜図17に示すように他金属部材8を介して出力軸3に伝えられ、また図21〜図25に示すように大歯車4に荷重受け部が一体成形されている場合には、上記荷重受け部を経て出力軸3に伝えられるように構成されている。
【0017】なお、常時衝撃トルクが加わることはないため、時間経過と共にトルクが低減することで、プラスチックキー7の変形は回復しトルク伝達は再びプラスチックキー7を介すようになる。また、本構成では、トルクによりロック時に出力軸3が大歯車4の軸穴段付き部に接触する位置、またプラスチックキーとの段差量を適切に設定する必要がある。また、本構成において高負荷時に軸と接触する部材をプラスチックキー7を越える強度を有する材質としてあるのは上述したようにプラスチックキー7のみでは、出力軸3との接触により高い剪断応力が発生しプラスチックキー7が破損してしまうためであり、材質としては、特に鉄系材料が望ましく、更に高負荷の頻度が高い機種のものには鉄系材料に熱処理を施し、耐剪断強度及び摩耗性を向上させることが望ましい。
【0018】よって、上述した第2実施例のように構成すれば、駆動側歯面と出力側歯面の衝突力を緩和し、これに起因し発生する騒音を低減することが可能となると共に、キーに一定以上の荷重がかからなくすることでプラスチックキーの破損を防止しプラスチックキーの重負荷機種への適用が可能となる。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、歯車機構部における歯面と歯面の衝突力を緩和することで、低騒音化が図れると共に、高トルクに耐えうる歯車機構を有する電動工具を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
【出願日】 平成13年7月26日(2001.7.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−137179(P2002−137179A)
【公開日】 平成14年5月14日(2002.5.14)
【出願番号】 特願2001−225895(P2001−225895)