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【発明の名称】 安全クラッチを具える電動工具
【発明者】 【氏名】ローランド シェール

【氏名】ハンス ベーニ

【要約】 【課題】大きなトルク上昇においてのみ動力伝達を遮断することのできる、安全クラッチを具える電動工具を実現することにある。

【解決手段】電動工具において、モータのトルク(M)及び入力電流(I)を実測する。マイクロプロセッサ(1)の第1演算ユニット(2)により、モータの入力電流(I)からモータ特性曲線(3)に基づいて出力トルク(M’)を算出し、または実測トルク(M)にフィルタ処理を施して出力トルク(M’)を算出する(M’)にマップする。算出トルク(M’)を、マイクロプロセッサ(1)の制御ユニット(7)において実測トルク(M)と比較し、両者の差(△)が所定のしきい値を超える際に安全クラッチを作動させて動力伝達を遮断する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 モータを含む動力伝達経路内に、マイクロプロセッサ(1)により電気的に制御可能な安全クラッチを具え、マイクロプロセッサ(1)にモータの実測入力電流(I)を入力し、第1演算ユニット(2)により前記実測入力電流(I)からモータ特性曲線(3)に基づいてモータの出力トルクを算出し、その算出トルク(M’)をマイクロプロセッサ(1)の制御ユニット(7)に第1入力値として入力し、該算出トルク(M’)が所定のしきい値を超える際に安全クラッチに対する制御信号(θ)を出力して動力伝達を遮断する電動工具において、前記制御ユニット(7)に第2入力値としてモータの実測トルク(M)を入力し、該制御ユニット(7)により実測トルク(M)を算出トルク(M’)と比較し、実測トルク(M)及び算出トルク(M’)の差(△)が所定のしきい値を超える際に制御ユニット(7)から安全クラッチに対する前記制御信号(θ)を出力することを特徴とする電動工具。
【請求項2】 請求項1記載の電動工具において、モータの実測回転速度(n)をマイクロプロセッサ(1)における第2演算ユニット(5)に入力し、該第2演算ユニット(5)により実測回転速度(n)から摩擦特性曲線(6)に基づいて摩擦トルクを算出することを特徴とする電動工具。
【請求項3】 請求項2記載の電動工具において、前記第1演算ユニット(2)で算出したモータの出力トルクと、前記第2演算ユニット(5)で算出した摩擦トルクとを加算点(4)において加算してモータの算出トルク(M’)とすることを特徴とする電動工具。
【請求項4】 モータを含む動力伝達経路内に、マイクロプロセッサ(1)により電気的に制御可能な安全クラッチを具え、マイクロプロセッサ(1)の制御ユニット(7)により、モータの出力トルクが所定のしきい値を超える際に、前記安全クラッチに対する制御信号(θ)を出力して動力伝達を遮断する電動工具において、前記制御ユニット(7)に、モータの実測トルク(M)にフィルタユニット(8)による電子的フィルタ処理を施して得られた算出トルク(M’)を第1入力値として入力すると共にモータの実測トルク(M)自体を第2入力値として入力し、前記制御ユニット(7)により実測トルク(M)を算出トルク(M’)と比較し、実測トルク(M)及び算出トルク(M’)の差(△)が所定のしきい値を超える際に該制御ユニット(7)から安全クラッチに対する前記制御信号(θ)を出力することを特徴とする電動工具。
【請求項5】 請求項1〜4の何れか一項に記載の電動工具において、前記制御ユニット(7)に、遅延/フィルタ回路(8)を接続したことを特徴とする電動工具。
【請求項6】 モータを含む動力伝達経路内に、マイクロプロセッサ(1)により電気的に制御可能な安全クラッチを具える電動工具の制御方法であって、モータの入力電流(I)からモータ特性曲線(3)に基づいてモータの出力トルクを算出し、またはモータの実測トルク(M)にフィルタ処理を施してモータの出力トルクを算出し、かくして得られた算出トルク(M’)を実測トルク(M)と比較し、算出トルク(M’)及び実測トルク(M)の差(△)が所定のしきい値を超える際にマイクロプロセッサからとの安全クラッチに対する制御信号(θ)を出力して動力伝達を遮断することを特徴とする制御方法。
【請求項7】 請求項6記載の制御方法において、実測トルク(M)を一定のしきい値と比較する工程を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項8】 請求項6又は7に記載の制御方法において、マイクロプロセッサ(1)によりモータにおけるロータの制動を制御する工程を含むことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ドリル、チゼル等の、少なくとも回転運動を伴う電動工具に関し、特に、工具の回転が妨害されるブロッキング等の危険な作動状態において、モータから工具スピンドルへの動力伝達を遮断するための安全クラッチを具える電動工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】コンクリート部材等のドリル作業に際し、回転状態の工具が補強鉄筋に当接すること等により、電動工具にはブロッキングが発生する。その際に電動工具に突発的に大きなトルクが作用し、その反動で工具ハウジングが工具軸線周りの回転を生じるために使用者が負傷する恐れがある。通常、過大なトルクは動力伝達経路中のスリップクラッチにより制限される。
【0003】ドイツ特許第3707052号明細書は、ハウジングの回転運動を加速度センサにより検出し、その検出値が所定のしきい値を超える際にマイクロプロセッサにより安全クラッチを作動させて動力伝達を遮断する電動工具を記載している。その前提条件は、電動工具の周囲にハウジングの自由運動を許容するスペースが確保できることである。この条件は、壁の至近箇所でドリル作業を行う場合には満たすことができない。このような場合には作業者が電動工具と壁面との間に手を挟む恐れがあるため、純機械的なスリップクラッチが付加的に必要となる。更に、この方法では比較的大きな演算能力と高価なマイクロプロセッサとが不可欠である。
【0004】米国特許第5563482号明細書は、回転速度センサによりオンラインでモータ回転速度を検出すると共に、別のセンサによりモータの入力電流を測定する電動工具を記載している。この場合、マイクロプロセッサにより、入力電流からモータ回転速度を算出しつつ、ハードウェア/ソフトウェア制御によりモータのトルクを制御する。許容トルクを超えた場合にはモータへの入力電流を遮断するが、ロータの質量慣性によりハウジングのねじれが許容限度を超える恐れがある。
【0005】ドイツ特許第4334933号明細書は、ハウジングの回転振動を加速度センサにより検出し、時間窓の内部で零点通過がない場合に安全クラッチにより動力伝達を遮断する電動工具を記載している。この場合には、僅かな振動条件下では比較的小さいトルク上昇でも動力伝達が意に反して遮断される恐れがある。
【0006】
【発明の課題】本発明の課題は、大きなトルク上昇においてのみ動力伝達を遮断することのできる、安全クラッチを具える電動工具を実現することにある。
【0007】
【課題の解決手段】この課題を解決するために、本発明は、独立請求項に記載された電動工具及びその制御方法を特徴とするものである。なお、本発明の有利な実施形態については、従属請求項に記載したとおりである。
【0008】本発明は、マイクロプロセッサにより電気的に制御可能な安全クラッチを具える電動工具において、基本的にモータのトルク及び入力電流を測定する。第1の実施形態では、マイクロプロセッサにモータの実測入力電流を入力し、第1演算ユニットにより前記実測入力電流からモータ特性曲線に基づいてモータの出力トルクを算出し、その算出トルクをマイクロプロセッサの制御ユニットに第1入力値として入力し、該算出トルクが所定のしきい値を超える際に安全クラッチに対する制御信号を出力して動力伝達を遮断する。その際、制御ユニットに第2入力値としてモータの実測トルクを入力し、制御ユニットにより実測トルクを算出トルクと比較し、実測トルク及び算出トルクの差が所定のしきい値を超える際に制御ユニットから安全クラッチに対する制御信号を出力するものである。
【0009】ロータの慣性質量や動力伝達経路のねじり剛性等で規定される動力伝達経路の動的挙動に基き、モータ電流が一次又は数次のフィルタ処理により時間的に遅延してトルク変化に反応するが、この動的挙動は定常的な算出トルクが関与するものでないため、実測トルクと算出トルクとの差を、トルク上昇を代表するパラメータとして使用することが可能である。
【0010】本発明を実施するにあたり、モータの実測回転速度をマイクロプロセッサにおける第2演算ユニットに入力し、該第2演算ユニットにより実測回転速度から摩擦特性曲線に基づいて摩擦トルクを算出するのが有利である。この場合には、第1演算ユニットにより算出したモータの出力トルクと、第2演算ユニットにより算出した摩擦トルクとを加算点において加算してモータの算出トルクとすることにより、制御の精度を向上することが可能である。
【0011】第2の実施形態において、実測トルクは、ローパスフィルタ等による電子的なフィルタ処理を施してマイクロプロセッサに入力する。ローパスフィルタは、入力電流から定常的に算出されるトルクと同様、時間的に遅延してトルク変化に反応するものである。
【0012】マイクロプロセッサの制御ユニットにおいて、実測トルクを一定のしきい値と比較し、そのしきい値を超える際に安全クラッチを作動させて動力伝達を遮断するのが有利である。
【0013】更に、マイクロプロセッサの制御ユニットに、遅延及び/又はフィルタ回路を接続するのが有利である。それにより、使用者にとって危険なハウジングのねじれを引き起こさない程度の短いトルクピークに際しては、動力伝達の意に反する遮断を防止することが可能である。
【0014】本発明においては、マイクロプロセッサにより、安全クラッチを作動させて動力伝達を遮断する機能に加えて、制動手段を作動させてモータのロータ制動を制御することが可能である。この場合には、例えば補助巻線を付加接続し、ロータ巻線の残留電圧を転極した主巻線に供給する。
【0015】
【好適な実施形態】以下、本発明を図示の実施形態について更に具体的に説明する。
【0016】本発明による電動工具は、制御可能な制動手段を設けたモータを含む動力伝達経路中に、電気的に制御可能な安全クラッチを配置したものである。これらの構成要素は図示を省略する。図1に示す実施形態において、マイクロプロセッサ1には、モータの実測トルクM、入力電流I及び回転速度nを入力する。マイクロプロセッサ1の第1演算ユニット2において、モータの入力電流Iからモータ特性曲線3に基づいて出力トルク値を予測し、その予測値を出力する。マイクロプロセッサ1の第2演算ユニット5において、モータの回転速度nから摩擦特性曲線6に基づいて摩擦トルク値を予測し、その予測値を出力する。これらの予測値を加算点4において加算し、算出トルクM’として出力する。マイクロプロセッサ1の制御ユニット7に算出トルクM’と実測トルクMとを入力する。制御ユニット7において、算出トルクM’及び実測トルクMの差△を所定のしきい値と比較する。制御ユニット7は、算出トルクM’及び実測トルクMの差△がしきい値を超える際に、マイクロプロセッサ1に接続されている安全クラッチ及び制動手段とに対する制御信号θを出力信号として発生させる。
【0017】図2に示す実施形態においては、マイクロプロセッサ1に入力された実測トルクMを電子的なフィルタ回路8により時間的に遅延させ、その遅延信号を算出トルクM’としてマイクロプロセッサ1の制御ユニット7に入力する。制御ユニット7には実測トルクMも入力する。制御ユニット7において、算出トルクM’及び実測トルクMの差△を所定のしきい値と比較する。制御ユニット7は、算出トルクM’及び実測トルクMの差△がしきい値を超える際に、マイクロプロセッサ1に接続されている安全クラッチ及び制動手段に対する制御信号θを出力信号として発生させる。
【出願人】 【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【出願日】 平成13年8月23日(2001.8.23)
【代理人】 【識別番号】100072051
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 興作 (外1名)
【公開番号】 特開2002−137178(P2002−137178A)
【公開日】 平成14年5月14日(2002.5.14)
【出願番号】 特願2001−252750(P2001−252750)