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【発明の名称】 電動工具のシール部材
【発明者】 【氏名】畝山 常人

【要約】 【課題】電動工具において、本体ハウジングとギヤハウジングとの間に介装されたシール部材は、従来紙製やゴム製のものが用いられていた。紙製シール部材では、毛細管現象によりグリースの漏れを完全には防止することができないという問題があった。また、ゴム製のシール部材では化学反応により劣化する問題があった。本発明では、これら従来の問題が生じないシール部材を提供する。

【解決手段】四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材とするシール部材1を用いる。このシール部材1によれば、紙製シール部材のような毛細管現象による洩れはなく、ゴム製パッキンのような化学反応を起こすこともない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電動工具のハウジングのシール部をシールするシール部材であって、四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材とするシール部材。
【請求項2】 電動工具の電動モータを内装した本体ハウジングと、該本体ハウジングに組み付けられ、前記電動モータの回転を減速するための減速ギヤ装置を内装したギヤハウジングとの間に介装して該両ハウジングの組み合わせ部をシールするシール部材であって、四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材とするシール部材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば電気ドリルや電動ドライバ等の電動工具において、シール部をシールするためのシール部材に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の電動工具には、電動モータを内装する本体ハウジングと、電動モータの回転を減速するための平歯車列や遊星歯車列等(減速ギヤ装置)、あるいは動力を断続するためのクラッチ機構(以下、単に歯車列等という)を内装したギヤハウジングを有し、このギヤハウジングは本体ハウジングの前部に取り付けられている。このような電動工具の場合、ギヤハウジングには内装した歯車列等の潤滑をするためグリース等の潤滑剤が充填されており、このグリース等の漏れを防止するため、本体ハウジングとギヤハウジングの組み合わせ部には通常シール部材が介装されている。従来、上記シール部材には、主に紙製のものやゴム製のものが用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のシール部材では次のような問題があった。ギヤハウジングに充填したグリースは通常油分が分離しやすいため、従来の紙製のシール部材では、その繊維組織により毛細管現象が発生して油分が浸み出してしまい、その結果グリースの劣化が著しい問題があった。また、ゴム製のシール部材は、グリースに含有される成分により化学反応を起こしてそのシール性能が劣化しやすい問題があった。そこで、本発明は、電動工具のシール部をシールするためのシール部材であって、紙製シール部材やゴム製シール部材における上記のような問題のないシール部材を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】このため、本発明は、前記各請求項に記載したシール部材とした。請求項1記載のシール部材によれば、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)製のフィルム材を素材としているため、紙製シール部材のような毛細管現象による例えばグリースまたはその分離した油分の浸み出しは発生せず、これにより充填したグリース等の劣化を抑制することができる。また、四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材としているので、ゴム製シール部材のようなグリース等に対する化学反応を起こすことがなく、これにより良好なシール状態を長期間にわたって維持することができる。
【0005】請求項2記載のシール部材によれば、紙製シール部材のような毛細管現象による例えばグリースまたはその分離した油分の浸み出しは発生せず、また、ゴム製シール部材のようなグリース等に対する化学反応を起こすことがないので、本体ハウジングとギヤハウジングとの間のシール状態を長期間にわたって維持することができる。さらに、一般に紙製のシール部材は0.5mm程度の厚さがあるため、本体ハウジングに対してギヤハウジングを固定するための固定ねじの締め付けにより厚さ方向(電動工具の機長方向)に圧縮変形してしまい、その結果本体ハウジングとギヤハウジングの機長方向の相対位置が一定しないという問題が発生するが、請求項2記載のシール部材によれば、四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材としているので、例えば0.1mm〜0.3mm程度の薄いフィルム状態のシール部材を利用することができるので、本体ハウジングに対するギヤハウジングの機長方向の相対位置が安定する。
【0006】また、ゴム製シール部材は、ゴムを素材とする弾性体であり、かつ0.2mm程度の薄物を入手しにくいため固定ねじの締め付け力が一定せず、その結果、固定ねじの締め付け力不足の原因になる場合があるが、請求項2記載のシール部材によれば、四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材としているので、0.2mm程度の薄物を容易に入手することができ(市場流通性がよい)、この程度の薄物を用いることにより固定ねじの締め付け力を得ることができる。さらに、四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材としているので、ゴム製シール部材に比して温度安定性および耐熱性が高く、例えば−100℃〜260℃の環境下においても性状が安定しているとともに、例えば−80℃の環境下においても十分な柔軟性が維持されるため、本体ハウジングおよびギヤハウジングの合わせ面の加工痕や微細な傷に十分になじんで密着する。このことから、請求項2記載のシール部材によれば、様々な過酷な環境下においても良好なシール性を得ることができる。
【0007】また、四フッ化エチレン樹脂製フィルム材を素材としているので、ゴム製シール部材に比して難燃性、耐候性が高い。また、四フッ化エチレン樹脂製フィルム材を素材とするシール部材であるので非粘着性を有し、このため当該シール部材の交換あるいは当該電動工具の分解修理等において作業性に優れている。さらに、四フッ化エチレン樹脂製フィルム材を素材とするシール部材であるので高い弾性復元力(圧縮が解除された時に、原寸に戻ろうとする性質)を有しており、この点でも良好なシール性を長期間にわたって維持することができる。また、四フッ化エチレン樹脂製フィルム材を素材とするシール部材であるので熱膨張係数が高く、この点で高温下においても高いシール性を発揮する。
【0008】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態を図1および図2に基づいて説明する。図1は、本実施形態のシール部材1によりシール部がシールされた電動工具10の内部構造を示している。本実施形態では電動工具10の一例としての電動スクリュウドライバを例示する。この電動工具10は、本体ハウジング2に内蔵した電動モータ3を駆動源としており、この電動モータ3の回転出力は、平歯車4〜6および噛み合いクラッチ7を経てスピンドル8に伝達する。平歯車4〜6および噛み合いクラッチ7は、本体ハウジング2の前部に中間プレート9を介して取り付けたギヤハウジング11に内装されている。平歯車4〜6により電動モータ3の回転が減速されるのであり、これが特許請求の範囲に記載した減速ギヤ装置に相当する。中間プレート9は、本体ハウジング2の内部とギヤハウジング11の内部を区画する機能を有している。この中間プレート9には、軸受け12を介して電動モータ3の出力軸3aが回転可能に支持され、軸受け13を介してクラッチ軸14の後部が回転可能に支持されている。クラッチ軸14に平歯車6が固定されている。この平歯車6に形成したクラッチ歯7a〜7aに対して、スピンドル8の後端面に形成したクラッチ歯7b〜7bが噛み合うと、噛み合いクラッチ7が接続され、これにより電動モータ3の回転がスピンドル8に伝達される。スピンドル8の先端側には、ソケット付きの先端工具8aが装着されている。以上説明した、電動モータ3の出力軸3aからスピンドル8に至る動力伝達機構については、従来公知の技術であるので詳しい説明を省略する。
【0009】さて、ギヤハウジング11には、その容積のおよそ4〜6割程度の量のグリース(図示されていない)が充填されている。このグリースにより、主として出力軸3a、平歯車4〜6および噛み合いクラッチ7等の潤滑がなされる。このグリースの漏れを防止するため、ギヤハウジング11と中間プレート9との間のシール部(ギヤハウジング11の端面と中間プレート9の接合面)にはシール部材1が挟み込まれている。この接合面が特許請求の範囲に記載した本体ハウジング2とギヤハウジング11との組み合わせ部に相当する。このシール部材1は、四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材として形成されており、厚さ0.2mmの薄板形状を有している。このシール部材1が図2に単独で示されている。図示するようにこのシール部材1の外形は、ギヤハウジング11の端面形状に合わせて切断されている。このシール部材1の周囲3箇所には、ギヤハウジング11を本体ハウジング2に対して固定するための固定ねじ15を挿通するための挿通孔1a〜1aが形成されている。従って、ギヤハウジング11は、3本の固定ねじ15〜15により本体ハウジング2の前部に固定されている。中間プレート9は、ギヤハウジング11と本体ハウジング2との間にシール部材1とともに共締めされている。各固定ねじ15は、ギヤハウジング11に形成した挿通孔11aに挿通されて、本体ハウジング2の前端面に形成したねじ孔2aに締め込まれている。
【0010】以上説明した本実施形態のシール部材1によれば、四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材として形成されているため、従来の紙製シール部材のような毛細管現象によるグリースの油分の浸み出しは発生せず、これによりギヤハウジング11に充填したグリースの漏れを確実に防止することができる。また、四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材として形成されているため、従来のゴム製シール部材のようなグリースの成分により化学反応を起こすことがないので、本体ハウジング2とギヤハウジング11との間の良好なシール状態を長期間にわたって維持することができる。さらに、従来紙製のシール部材は0.5mm程度の厚さがあるため、本体ハウジング2に対してギヤハウジング11を固定するための固定ねじ15〜15の締め付けにより厚さ方向(電動工具の機長方向、図1において左右方向)に圧縮変形してしまい、その結果本体ハウジング2とギヤハウジング11の機長方向の相対位置が一定しないという問題が発生するが、本実施形態のシール部材1は、厚さ僅か0.2mmの薄いフィルム状のものであるので、本体ハウジング2に対するギヤハウジング11の機長方向の相対位置が安定する。
【0011】また、ゴム製シール部材は、ゴムを素材とする弾性体であり、かつ0.2mm程度の薄物を入手しにくいため、一般的には0.5mm程度の厚さを有していた。厚さが厚く、かつ厚さ方向に大きく弾性変形するので、固定ねじの締め付け力が一定せず、その結果固定ねじの締め付け力が不足する場合があった。これに対して、本実施形態のシール部材1は、四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材としており、これは市場流通性がよく一般的に容易に入手することができるので、これを素材としてシール部材1を形成することにより、固定ねじ15〜15を安定した締め付け力で締め付けることができ、これにより固定ねじ15〜15の緩みを確実に防止することができる。
【0012】さらに、上記シール部材1は、四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材としているので、従来のゴム製シール部材に比して温度安定性および耐熱性が高く、例えば−100℃〜260℃の環境下においても性状が安定しているとともに、例えば−80℃の環境下においても十分な柔軟性が維持されるため、本体ハウジング2およびギヤハウジング11の合わせ面の加工痕や微細な傷に十分になじんで密着する。このことから、本実施形態のシール部材1によれば、様々な過酷な環境下においても良好なシール性を得ることができる。
【0013】また、本実施形態のシール部材1は、四フッ化エチレン樹脂製フィルム材を素材としているので、従来のゴム製シール部材に比して難燃性、耐候性に優れている。また、四フッ化エチレン樹脂製フィルム材を素材とするシール部材1であるので非粘着性を有し、このため当該シール部材1の交換あるいは当該電動工具10の分解修理等における作業性に優れている。さらに、四フッ化エチレン樹脂製のフィルム材を素材とするシール部材1であるので高い弾性復元力(圧縮が解除された時に、原寸に戻ろうとする性質)を有しており、この点でも良好なシール性を長期間にわたって維持することができる。また、四フッ化エチレン樹脂製フィルム材を素材とするシール部材であるので熱膨張係数が高く、この点で高温下においても高いシール性を発揮する。
【0014】以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、本体ハウジング2とギヤハウジング11との間に介装するシール部材1を例示したが、本願発明に係るシール部材はその他のシール部にも適用することができる。また、グリースに限らず、液状のオイル、圧縮空気、水等その他の内容物の漏れを防止するためのシール部に用いることができ、それぞれ前記と同様の作用効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
【出願日】 平成12年10月30日(2000.10.30)
【代理人】 【識別番号】100064344
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 英彦 (外3名)
【公開番号】 特開2002−137177(P2002−137177A)
【公開日】 平成14年5月14日(2002.5.14)
【出願番号】 特願2000−331282(P2000−331282)