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【発明の名称】 電動工具
【発明者】 【氏名】森 真介

【要約】 【課題】例えば、電動ドライバドリル等の電動工具において、電動モータの回転を減速する減速装置は、従来歯車の噛み合いにより高速または低速の2段階程度の変速のみ可能な構成となっていた。本発明では、無段階で変速する無段階変速装置を内蔵した電動工具を提供する。

【解決手段】このため、内蔵する無段階変速装置10は、電動モータ4側の駆動Vプーリー11とスピンドル7側の従動Vプーリー12と、該両Vプーリー11,12間に掛け渡したVベルト13を備え、両Vプーリー11,12は、Vベルト13を挟んだ状態で軸方向に相互に変位する一対のプーリー板11a,11b、12a,12bを有し、両Vプーリー11,12において対向する一方若しくは双方のプーリー板を、Vベルト13を経て付加される回転抵抗により相互に接近離間させてそれぞれプーリー径を変化させる構成とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電動モータの出力軸とスピンドルとの間に、前記出力軸の回転を無段階に変速して前記スピンドルに伝達するための無段変速装置を内蔵した電動工具。
【請求項2】 請求項1記載の電動工具であって、無段変速装置は、電動モータ側の駆動Vプーリーとスピンドル側の従動Vプーリーと、該両Vプーリー間に掛け渡したVベルトを備え、前記両Vプーリーは、それぞれ対向する一対のプーリー板を有し、該両プーリー板間の間隔を、前記スピンドルに付加される回転抵抗に応じて変化させてそれぞれのプーリー径を変化させる構成とした電動工具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば電気ドリルや電動ドライバあるいはスピンドルを往復動させるレシプロソー等の電動工具に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、この種の電動工具には、例えば電動ドライバのようにスピンドルの出力回転数を高速または低速に切り換えるための変速装置を内蔵したものが提供されている。従来の変速装置は、使用者の手動による切り換え操作により歯車の噛み合いを切り換えることにより段階的に変速比を変化させる構成となっていた。また、出力軸に必要なトルク(出力軸に付加される回転抵抗等)に応じて自動的に歯車の噛み合いを切り換えて変速比を変化させる自動変速装置を内蔵した電動工具も提供されている。上記手動切り換え式の変速装置を内蔵した電動工具によれば、使用者の切り換え操作により例えばねじ締めを行うねじの径あるいは長さに合わせて変速比を適切に切り換えることができ、これにより電動モータの負荷を少なくしてバッテリの消費を抑えることができる。また、自動変速装置を内蔵した電動ドライバによれば、ねじ締めの初期段階では、変速装置を高速側に切り換えて低トルク高回転数で素早くねじ締めを行うことができる一方、ねじ締めの最終段階(ねじ締め抵抗が大きくなってきた段階)では、変速装置を低速側に切り換えて高トルク低回転数でねじを強固に締め込むことができた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように従来の変速装置は、駆動モータの出力を歯車の噛み合いを経て変速する構成であり、噛み合う歯車を切り換えることにより変速比を変化させる構成となっていた。このため、従来の変速装置は一般には、低速と高速の2段階でのみ変速が可能であり、必要トルクに合わせてより多段階の変速比にきめ細かく変速することができず、ましてや無段階の変速を行うことができなかった。本発明は、出力回転数を無段階でより幅広い範囲の変速比に変速させることができ、これにより必要トルクに合わせてよりきめ細かな変速を行うことができる無段階変速装置を内蔵した電動工具を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】このため、本発明は、前記各請求項に記載した構成の電動工具とした。請求項1記載の電動工具によれば、無段変速装置を内蔵しているので、従来の歯車の噛み合いによる高速または低速の2段階のみの変速装置よりも、必要トルクに合わせてよりきめ細かな変速がなされ、これによりモータの負荷を従来よりも一層低減させて、バッテリ等の電源消費を抑えることができる。
【0005】請求項2記載の電動工具によれば、スピンドルを経て入力される外部トルク(必要トルク)に応じて駆動Vプーリーと従動Vプーリーの各プーリー板がそれぞれ相互に接近または離間することにより該駆動Vプーリーと従動Vプーリーのプーリー径が無段階かつ自動的に変化し、これにより変速比が無段階かつ自動的に変化する。なお、本明細書において、プーリー径とは、駆動Vプーリーおよび従動Vプーリーの、Vベルト13が掛け渡された部分(接触する部分)における半径をいう。従って、駆動Vプーリーおよび従動Vプーリーのプーリー径は、それぞれの対向する両プーリー板の間隔が小さくなると大きくなり、両プーリー板の間隔が大きくなると小さくなる。
【0006】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。本実施形態では、電動工具の一例として充電式の電動ドライバドリル(以下、単に電動工具1という)を例示する。この電動工具1は、本体2と該本体2の機長方向中程から側方へ延びるハンドル部3を有している。ハンドル部3の下端には当該電動工具1に電源を供給するためのバッテリパック(図示省略)が装着される。本体2の後部(図示左部)には、当該電動工具1の駆動源としての電動モータ4が内蔵されている。この電動モータ4は、ハンドル部3の基部に配置したスイッチ5をオンオフさせることにより起動停止する。このスイッチ5は同じくハンドル部3の基部に配置したトリガ6を引き操作することによりオンオフさせることができる。電動モータ4の出力回転は、本発明に係る無段変速装置10および従来公知の遊星歯車列50により変速されてスピンドル7に伝達される。スピンドル7の先端は本体ハウジング2aの前端面(図示右端面)から突き出されており、この突き出し部分に、ドリルやドライバビット等の先端工具(図示省略)を装着するためのチャック8が取り付けられている。
【0007】上記無段変速装置10は、電動モータ4側の駆動Vプーリー11とスピンドル7側の従動Vプーリー12と、該両Vプーリー11,12間に掛け渡した断面V字形のVベルト13を備えている。駆動Vプーリー11は相互に対向する一対のプーリー板11a,11bを備えており、また従動Vプーリー12も相互に対向する一対のプーリー板12a,12bを備えている。プーリー板11a,11bおよびプーリー板12a,12bの相互の対向面は、それぞれVベルト13の断面形状に合わせて円錐形状に形成されている。両プーリー板11a,11b間および両プーリー板12a,12b間に形成されるV字形の溝部にVベルト13を挟み込んだ状態で該Vベルト13が駆動Vプーリー11と従動Vプーリー12との間に掛け渡されている。本実施形態において、プーリー板11a,11b,12a,12bは全て同じ形状およびサイズのものが用いられている。駆動Vプーリー11の両プーリー板11a,11bは電動モータ4の出力軸4aに形成したスプライン軸部4bに装着されている。このため、両プーリー板11a,11bは電動モータ4が起動すると一体で回転する一方、出力軸4aの軸方向に移動して相互に接近または離間可能に支持されている。
【0008】なお、電動モータ4の出力軸4aの先端側は、本体ハウジング2aに取り付けた軸受け2bにより回転可能に支持されている。また、電動モータ4の出力軸4aの基部側には止め輪4cが軸方向移動不能に取り付けられている。この止め輪4cと上記駆動Vプーリー11の出力軸基部側(図示左側)のプーリー板11aとの間には圧縮ばね14が介装されている。この圧縮ばね14により、出力軸基部側のプーリー板11aは、出力軸先端側のプーリー板11bに接近する方向に付勢されており、これにより両プーリー板11a,11b間にVベルト13が適度な力で挟み込まれている。
【0009】従動Vプーリー12は、本体ハウジング2aに取り付けた軸受け2cとギヤケース26に取り付けた軸受け2dを介して出力軸4aと平行かつ回転可能に支持された中間軸15に取り付けられている。この中間軸15は、図4に示すようにスプライン軸部15aとギヤ部15bを備えている。このスプライン軸部15aとギヤ部15bは、スプライン軸部15a側に形成した連結軸部15cを介して相互に同軸かつ回転可能に連結されている。図示左側のスプライン軸部15aに、上記従動Vプーリー12の両プーリー板12a,12bが相互に一体で回転し、かつ軸方向には相互に移動可能(相互に接近または離間可能)に支持されている。この両プーリー板12a,12b間にVベルト13の他端側が掛け渡されている。従動Vプーリー12の図示右側のプーリー板12bの背面には、可動カム部16が一体に形成されている。この可動カム部16は、中間軸15のギヤ部15bに一体に形成した固定カム部17に噛み合わされている。可動カム部16と固定カム部17は、図示するようにそれぞれ山形の噛み合い歯16a〜16a、17a〜17aを有しており、これらが交互に噛み合わされている。可動カム部16は、プーリー板12bと一体で軸方向へ変位するとともに、常時固定カム部17に噛み合わされた状態に維持される。この固定カム部17と可動カム部16の噛み合いにより、従動Vプーリー12の回転がギヤ部15bに伝達される。
【0010】スピンドル7を経て固定カム部17側に回転抵抗(ねじ締め抵抗)が付加されると、噛み合い歯16aの斜面(カム面)と噛み合い歯17aの斜面(カム面)の押圧力(摺接作用)により可動カム部16が軸方向(図示左方)に後退して固定カム部17との噛み合い状態が浅くなる(図2参照)。可動カム部16が軸方向に後退して両者16,17の噛み合いが浅くなると、両プーリー板12a,12bの間隔が小さくなって従動Vプーリー12のプーリー径が大きくなる。すると、Vベルト13が図示下方に変位するため、プーリー板11aが圧縮ばね14に抗して出力軸基部側に変位し、これにより駆動Vプーリー11のプーリー径が小さくなる。本明細書では、(駆動Vプーリー11のプーリー径)/(従動Vプーリー12のプーリー径)を当該無段変速装置10の変速比Rとして説明する。従って、駆動Vプーリー11のプーリー径が小さくなる一方、従動Vプーリー12のプーリー径が大きくなることにより当該無段変速装置10の変速比Rが小さくなる。スピンドル7を経て固定カム部17に付加される回転抵抗が大きくなるほど、可動カム部16の後退量が大きくなり、従って当該無段変速装置10の変速比Rが小さくなる。これに対してスピンドル7に回転抵抗が付加されない無負荷状態では、圧縮ばね14により駆動Vプーリー11のプーリー板11aが図示右方に戻されて該駆動Vプーリー11のプーリー径が大きくなる一方、これに伴って従動Vプーリー12のプーリー径が小さくなり、これにより当該無段変速装置10の変速比Rが大きくなる。
【0011】次に、中間軸15のギヤ部15bには、中間ギヤ20が噛み合わされている。この中間ギヤ20は、本体ハウジング2aに取り付けた軸受け2eにより回転可能に支持されている。本実施形態において、中間軸15のギヤ部15bと、中間ギヤ20の歯数比は、1:5.5(変速比5.5)に設定されている。この中間ギヤ20には小ギヤ21が同軸かつ一体に形成されている。この小ギヤ21は、前記遊星歯車列50のサンギヤとして機能している。従って、中間ギヤ20の回転数が遊星歯車列50の入力回転数となっている。小ギヤ21には3個のプラネタリギヤ22〜22が噛み合わされている。このプラネタリギヤ22〜22は、それぞれ支軸23を介してキャリア24に回転可能に支持されている。また、プラネタリギヤ22〜22は、インターナルギヤ25に噛み合わされている。このインターナルギヤ25は、本体ハウジング2aに固定したギヤケース26に回転可能に支持されている。
【0012】インターナルギヤ25の先端面には、円周方向6等分位置に合計6本(図3参照)のロックピン30〜30の先端部が係合している。各ロックピン30〜30は、ギヤケース26に軸方向へ移動可能に支持されている。また、各ロックピン30〜30は、圧縮ばね31によりインターナルギヤ25に係合する方向(図示左方)に付勢されており、これにより該インターナルギヤ25の回転が規制されている。従って、インターナルギヤ25に一定以上のトルクが付加されると、このインターナルギヤ25は上記圧縮ばね31に抗してロックピン30〜30を押し下げながら回転する(ロックが外れる)。すなわち、例えばねじ締めが完了してスピンドル7ひいてはキャリア24が回転不能な状態になると(一定以上の回転抵抗が付加されると)、プラネタリギヤ22〜22が公転できない状態となる。このため、電動モータ4の回転により各プラネタリギヤ22は支軸23を中心として自転のみし、これによりインターナルギヤ25がロックピン30〜30を押し下げながら回転する。このように、インターナルギヤ25が回転する一方、キャリア24が回転しない状態となることにより、動力の伝達経路が遊星歯車列50で遮断される。このことから、主としてインターナルギヤ25およびロックピン30〜30は、いわゆるトルクリミッタを構成している(トルク調整機能付きの遊星歯車列50)。
【0013】また、ギヤケース26にはねじ軸部26aが形成されており、このねじ軸部26aには調整プレート28が噛み合わされている。この調整プレート28と、受けプレート27との間に上記圧縮ばね31が介装されている。受けプレート27は前記ロックピン30〜30の後端に当接されている。このため、上記調整プレート28が回転すると、圧縮ばね31の付勢力を変更して、インターナルギヤ25のロックが外れるための設定トルクを一定の範囲で任意に設定することができる。調整プレート28には係合片28aが設けられており、この係合片28aはギヤケース26の前端に回転操作可能に取り付けたアダプタケース29の係合壁29aに係合している。このため、アダプタケース29を回転操作すると調整プレート28が回転して軸方向に移動し、これにより外部から設定トルクを調整することができる。なお、ギヤケース26には、鋼球33がばね付勢された状態で取り付けられている。この鋼球33はアダプタケース29の内面に周方向に沿って複数形成した係合孔29bに向けられている。この鋼球33が係合孔29bに嵌り込むことによりアダプタケース29の位置が固定される。一方、アダプタケース29に一定以上の回転操作力を加えると、ばね付勢力に抗して鋼球33が押し下げられて該アダプタケース29を任意の方向に回転させることができる。
【0014】次に、キャリア24はギヤケース26に取り付けた回転規制装置32を介してスピンドル7に接続されている。この回転規制装置32は従来より公知のものであり、本実施形態において特に変更を要しないが、以下簡単に説明する。図3にはこの回転規制装置32の構成が示されている。この回転規制装置32は、ギヤケース26に固定した外輪32aと、スピンドル7の後端部に形成したスプライン軸部7aを介して該スピンドル7に回転について連結された内輪32bを有している。外輪32aと内輪32bとの間には、キャリア24に形成した合計4本の脚部24b〜24bと、2本の係合ピン35,35が介在されている。また、内輪32bの外周面には、それぞれ周方向2等分位置に2つの係合突部32c、32cと2つの平坦面32d、32dが形成されている。この平坦面32d,32dに対向して上記係合ピン35,35が配置されている。また、各係合ピン35の周方向両側にキャリア24の脚部24b,24bが位置し、各係合突部32cの周方向両側に脚部24b,24bが位置している。
【0015】このように構成された回転規制装置32によれば、電動モータ4の起動によりキャリア24が回転すると、2本の脚部24b,24bが係合突部32c,32cに当接して内輪32bひいてはスピンドル7が回転する。すなわち、電動モータ4側からの回転は左右何れの方向の回転も、この回転規制装置32を経てスピンドル7に伝達される。しかしながら、電動モータ4を停止させた状態(キャリア24が回転しない状態)では、使用者が手でスピンドル7を回転させようとしても、係合ピン35,35が平坦面32dと外輪32aとの間に挟み込まれることにより内輪32bの回転が阻止されるため、スピンドル7の回転が阻止される。これによれば、電動モータ4を停止させた状態で、チャック8を回転させて先端工具のクランプアンクランプ操作を楽に行うことができる。
【0016】次に、スピンドル7は、軸受け7b,7cを介してギヤケース26に回転可能に支持されている。本実施形態において、遊星歯車列50による変速比は1/4に設定されている。なお、キャリア24の中心には支持孔24aが形成されており、この支持孔24aには、前記小ギヤ21の中心に形成した支持軸部21aが回転可能に挿入されている。これにより中間ギヤ20および小ギヤ21が前記軸受け2eおよび支持孔24aにより両端支持状態で回転可能に支持されている。
【0017】以上のように構成した電動工具1によれば、トリガ6を引き操作してスイッチ5をオンさせると、電動モータ4が起動する。電動モータ4が起動すると、出力軸4aおよびそのスプライン軸部4bが回転して、駆動Vプーリー11が回転する。駆動Vプーリー11の回転はVベルト13により従動Vプーリー12に伝達される。ここで、スピンドル7になんら回転抵抗が付加されない状態(無負荷状態)では、図1に示すように駆動Vプーリー11の出力軸基部側のプーリー板11aが圧縮ばね14によって出力軸先端側に変位し、これにより該駆動Vプーリー11のプーリー径が最大になる。駆動Vプーリー11のプーリー径が最大になると、従動Vプーリー12のプーリー板12a,12b間の間隔が最も大きくなって、該従動Vプーリー12のプーリー径が最小になり、その結果可動カム部16と固定カム部17の噛み合いが最も深くなる。本実施形態において、駆動Vプーリー11のプーリー径が最大となり、従動Vプーリー12のプーリー径が最小となっている無負荷状態では、両プーリー11,12のプーリー径の比率は2.1:1(変速比R=2.1)に設定されている(高速低トルクモード)。
【0018】従動Vプーリー12の回転は可動カム部16と固定カム部17の噛み合いにより中間軸15のギヤ部15bに伝達される。ギヤ部15bが回転すると、中間ギヤ20および小ギヤ21が回転する。小ギヤ21の回転によりプラネタリギヤ22〜22が回転する。プラネタリギヤ22〜22は、回転しないインターナルギヤ25に噛み合わされているので、結果的にプラネタリギヤ22〜22は、自転しながらインターナルギヤ25の内周側を公転し、これによりキャリア24が回転する。キャリア24の回転は、スプライン軸部7aを経てスピンドル7に伝達され、これによりチャック8に装着したドライバビット(先端工具)が回転する。
【0019】ドライバビットを締め込み対象のねじにセットしてねじ締めを行う場合には、一定のねじ締め抵抗が回転抵抗としてスピンドル7に付加される。このため、スピンドル7には前記無負荷状態よりも大きな出力トルクが要求される。必要なトルクは、締め込むねじの径および長さにより変化する。また、ねじ締めの進行により必要な締め付けトルクが変化する。ねじ締めに伴いスピンドル7に回転抵抗が付加されると、これが遊星歯車列50および中間ギヤ20と中間軸15のギヤ部15bの噛み合いを経て固定カム部17に伝達される。すると、前記したように可動カム部16ひいてはプーリー板12bが軸方向に後退して両カム部16,17の噛み合いが浅くなり、これにより従動Vプーリー12のプーリー径が大きくなる。従動Vプーリー12のプーリー径が大きくなると、Vベルト13の変位によりプーリー板12aが圧縮ばね14に抗して出力軸基部側(図2において左方)に変位し、これにより駆動Vプーリー11のプーリー径が小さくなり、その結果当該無段変速装置10の変速比Rが小さくなってスピンドル7の出力トルクが増大する。このようにスピンドル7に負荷される回転抵抗に合わせて従動Vプーリー12のプーリー径が徐々に大きくなる一方、これに連動して駆動Vプーリー11のプーリー板11aが圧縮ばね14に抗して出力軸基部側に変位して、そのプーリー径が徐々に小さくなることにより当該無段変速装置10の変速比Rが無段階で小さくなり、その結果スピンドル7の回転速度が低下して出力トルクが増大し(低速高トルクモードへの移行)、必要なねじ締めトルクに最適な出力トルクでスピンドル7が回転してねじ締めが進行する。
【0020】ねじ締めが最終段階に至ってねじ締め抵抗が大きくなるほど、従動Vプーリー12のプーリー径が大きくなる一方、駆動Vプーリー11のプーリー径が小さくなり、これにより無段変速装置10の変速比Rが小さくなる。図2は、無段階変速装置10の変速比Rが最も小さくなった段階を示している。この段階では、スピンドル7の回転数は最も小さく、その出力トルクは最大となる(低速高トルクモード)。本実施形態において、この段階における駆動Vプーリー11のプーリー径と従動Vプーリー12のプーリー径との比は、1:2.1(変速比R=1/2.1)に設定されている。ここで、図2(低速高トルクモード)と図1(高速低トルクモード)を比較してみると、図2に示す低速高トルクモードでは駆動Vプーリー11の両プーリー板11a,11bの間隔が最大となってそのプーリー径が最小になり、また従動Vプーリー12の両プーリー板12a,12bの間隔は最小となってそのプーリー径は最大となり、従って変速比Rは最小(変速比R=1/2.1)となっている。これに対して、図1に示す高速低トルクモードでは、駆動Vプーリー11の両プーリー板11a,11bの間隔が最小となってそのプーリー径が最大となり、また従動Vプーリー12の両プーリー板12a,12bの間隔は最大となってそのプーリー径は最小となり、これにより変速比Rは最大(変速比R=2.1)となっている。
【0021】こうして、スピンドル7の出力トルクが無段階で低速高トルクモードに移行しつつ強固にねじ締めがなされる。ねじ締めが完了してスピンドル7が回転不能な状態になると、電動モータ4とスピンドル7との間の動力伝達経路が遮断される。すなわち、ねじ締めが完了してスピンドル7が回転不能な状態になると、回転規制装置32およびキャリア24が回転不能になる一方、電動モータ4の出力回転が、無段変速装置10および中間ギヤ20によりプラネタリギヤ22〜22に伝達される。しかしながら、上記したようにキャリア24が回転不能な状態であるので、各プラネタリギヤ22は、インターナルギヤ25の内周側を公転することなく支軸23回りに自転する。各プラネタリギヤ22の自転によりインターナルギヤ25に設定値以上の大きなトルクが付加されると、該インターナルギヤ25は圧縮ばね31に抗してロックピン30〜30を押し下げつつギヤケース26に対して回転する。こうしてインターナルギヤ25が回転する一方、キャリア24ひいてはスピンドル7が回転しない状態が実現され、これにより電動モータ4の出力が遊星歯車列50において遮断された状態となって、設定トルクでねじが締め付けられる。
【0022】ねじ締め完了後、先端工具を締め込んだねじから外すと、スピンドル7は無負荷状態となるので、インターナルギヤ25がギヤケース26に対して再び固定されて電動モータ4の出力回転がスピンドル7に伝達されるとともに、無段変速装置10は図2に示す低速高トルクモードから図1に示す高速低トルクモードに一気に移行する。すなわち、スピンドル7の回転抵抗が取り除かれて無負荷状態になると、図1に示すように駆動Vプーリー11のプーリー板11aが圧縮ばね14によりプーリー板11bに接近する方向に変位し、これにより駆動Vプーリー11のプーリー径が大きくなる。すると、Vベルト13の変位により従動Vプーリー12のプーリー径が小さくなるため、当該無段変速装置10の変速比Rが大きくなって高速低トルクモードに戻される。なお、従動Vプーリー12のプーリー径が小さくなると、可動カム部16と固定カム部17の噛み合いが深くなる。
【0023】以上説明したように本実施形態の電動工具1によれば、電動モータ4の出力軸4aとスピンドル7との間に無段変速装置10が介装されており、この無段変速装置20はスピンドル7に付加されるねじ締め抵抗(外部トルク、回転抵抗)に合わせて変速比Rが自動的に変化するので、従来の平歯車の噛み合いによる2段階の変速装置に比して、よりきめ細かな変速を行うことができ、これによりこの種の電動工具の性能を高めることができる。
【0024】また、例示した電動工具1は、上記無段変速装置10に加えて遊星歯車列50を備えており、この遊星歯車列50は、スピンドル7に一定以上の外部トルクが付加された時点でインターナルギヤ25を回転させ、これにより動力伝達経路を遮断するトルクリミッタの機能を有している。このため、設定トルクでねじが締め付けられる。
【0025】以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、例示した実施形態では、無段変速装置10による第1段変速機構に加えて、中間ギヤ部15と中間ギヤ20の噛み合いによる段2段変速機構と、遊星歯車列50による第3段変速機構を有する構成を例示したが、第2段および第3段変速機構については必要に応じて設ければよい。また、プーリー板11a,11b,12a,12bは全て同じ形状およびサイズのものを用いた構成を例示したが、駆動Vプーリー側と従動Vプーリー側で異なる形状(主として円錐形状面の傾斜角度について)およびサイズのプーリー板を用いてもよい。
【0026】また、例示した実施形態では、スピンドル7に付加される外部トルクに合わせて自動的に変速比Rが変化する無段変速装置10を例示したが、手動操作により変速比Rを無段階で変化させる構成(マニュアル式)の無段変速装置とすることができる。この場合、例えばハウジング2の上面にスライドレバーを設け、該スライドレバーのハウジング2の内部側の端部を、駆動Vプーリー11の出力軸基部側のプーリー板11aに、その回転動作を阻害しないよう軸方向に変位可能に係合させて、スライドレバーの操作量に応じて該プーリー板11aを軸方向に変位させる構成とすればよい。さらに、電動工具の一例として電動ドライバドリルを例示したが、本発明に係る技術は、これらの回転工具に限らず例えばレシプロソー等の往復動切断工具にも同様に適用することができる。
【出願人】 【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
【出願日】 平成12年9月1日(2000.9.1)
【代理人】 【識別番号】100064344
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 英彦 (外3名)
【公開番号】 特開2002−66960(P2002−66960A)
【公開日】 平成14年3月5日(2002.3.5)
【出願番号】 特願2000−265746(P2000−265746)